説明

医用システム及び医用ウィルス対処プログラム

【課題】医用システムがコンピュータウィルスに感染した場合に安全かつ安定的なウィルス対処を可能とする技術を提供する。
【解決手段】X線診断装置、X線治療装置、X線CT装置、磁気共鳴画像装置、核医学診断装置等の被検体を診断又は治療するための医用システムにおいて、各種ソフトウェア制御手段と当該ソフトウェア制御手段と代替可能な各種ハードウェア制御手段とで制御経路を冗長化し、コンピュータウィルス毎にシステムに対する深刻度を定義する深刻度テーブルと、前記深刻度に対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶して、ファイルからコンピュータウィルスを検索し、深刻度テーブルと対処テーブルに基づきウィルス対処をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用システムのウィルス対処技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの処理速度の向上に伴って、X線診断装置、X線治療装置、X線CT装置、磁気共鳴画像装置、核医学診断装置等の被検体を診断又は治療するための医用システムにもその制御にコンピュータによるソフトウェア制御が利用されている。コンピュータは、制御プログラムを解読及び実行して制御信号を生成し、コントローラに送出する。ソフトウェア制御によると、制御信号生成前の処理を仕様に応じて自由に設計できる。また、近年の急速なネットワーク化により医用システムと他のコンピュータとの通信による連携も行われるようになってきた。
【0003】
そのため、医用システムにも所謂コンピュータウィルスに感染するおそれが生じている。コンピュータウィルスは、コンピュータが解読及び実行するプログラムや参照するデータ等のファイルに感染し、そのプログラムの実行まで潜伏し、そのプログラムの実行とともに発病する機能を有する。操作者の意図しない動作をコンピュータに実行させ、コンピュータ及び周辺機器に様々な影響を与える。
【0004】
このようなコンピュータウィルスに対処するために、PC(パーソナルコンピュータ)等には、コンピュータウィルスの感染を検出し、駆除、隔離、削除等の対処を行うソフトウェアが導入される。駆除は、ファイルに含まれるコンピュータウィルスのみを削除するものであり、隔離は、ウィルスに感染したファイルを隔離ディレクトリに移動させるものであり、削除は、感染したファイルを削除するものである。
【0005】
医用システムにも、このコンピュータウィルス対策のためのソフトウェアが医用システムにインストールされる(例えば、「特許文献1」参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−86301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医用システムは、被検体を診断又は治療するためのシステムであり、例えば被検体にX線等を曝射するため、その運用は特に安全かつ安定的でなくてはならない。
【0008】
しかし、医用システムに対して深刻な影響を与えるコンピュータウィルスとPCに対して深刻な影響を与えるコンピュータウィルスは必ずしも一致しない。PCにおいて駆除、隔離、削除可能なコンピュータウィルスであっても、医用システムにおいてそのコンピュータウィルスを駆除、隔離、削除等した場合には、その感染したファイルによっては医用システムが突然停止する等の安全面や安定性に深刻な影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、医用システムがコンピュータウィルスに感染した場合に安全かつ安定的なウィルス対処を可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、被検体の診断又は治療をするための医用手段と、前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたファイルからコンピュータウィルスを検索する検索手段と、コンピュータウィルス毎にシステムに対する深刻度の定義を記憶する深刻度テーブルと、前記深刻度に対応したウィルス対処を記憶する対処テーブルと、前記深刻度テーブルと前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、を備えること、を特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するための請求項2記載の発明は、被検体の診断又は治療をするための医用手段と、前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索し、感染したコンピュータウィルスと感染ファイルを特定する検索手段と、前記感染したコンピュータウィルスと前記感染ファイルの組み合わせに対応したウィルス対処を記憶する対処テーブルと、前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、を備えること、を特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための請求項5記載の発明は、被検体の診断又は治療をするための医用手段と、前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶するファイル記憶手段と、を有し、被検体の診断又は治療をするための医用システムを、前記記憶部に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索する検索手段と、コンピュータウィルス毎にシステムに対する深刻度を定義する深刻度テーブル、及び前記深刻度に対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶するテーブル記憶手段と、前記深刻度テーブルと前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、して機能させること、を特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するための請求項6記載の発明は、被検体の診断又は治療をするための医用手段と、前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶するファイル記憶手段と、を有し、被検体の診断又は治療をするための医用システムを、前記記憶部に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索する検索手段と、前記記憶手段に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索し、感染したコンピュータウィルスと感染ファイルを特定する検索手段と、前記感染したコンピュータウィルスと前記感染ファイルの組み合わせに対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶する記憶手段と、前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、して機能させること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によっては、コンピュータウィルス毎にシステムに対する深刻度を記憶する深刻度テーブルと深刻度に対応したウィルス対処を記憶する対処テーブルを記憶し、記憶されたファイルからコンピュータウィルスを検索して深刻度テーブルと対処テーブルに基づきウィルス対処をするようにした。これにより、医用システムに特化したウィルス対処をすることができ、医用システムの安全かつ安定した運用が可能となる。
【0015】
また、感染ファイルと深刻度、即ち感染したコンピュータウィルスと感染ファイルの組み合わせに対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶し、対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処をするようにした。これにより、コンピュータウィルス及び感染ファイルの組み合わせに対する評価が医用システムに合わせて最適化され、より安全かつ安定した運用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る医用システムの好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る医用システムの外観を示す斜視図である。
【0018】
医用システムは、医療現場で診断又は治療のために用いられるモダリティであり、X線診断装置、X線治療装置、X線CT装置、磁気共鳴画像装置(MRI装置)、核医学診断装置(SPECT装置やPET装置)等である。
【0019】
本実施形態に係る医用システムは、X線を曝射して被検体Pを透過したX線を検出するX線診断装置100である。検出したX線の強度を画素値として検出位置に応じて配列し、被検体内の画像データを得る。
【0020】
X線診断装置100には、透視モードと撮影モードがある。透視モードは、診断部位を特定するため等に用いられ、X線量は撮影モードに比べて少なく、得られた画像データをモニタMに表示させる。撮影モードは、特定部位を診断するため等に用いられ、X線量は透視モードと比べて多く、得られた画像データに画像処理を施して記憶する。
【0021】
このX線診断装置100は、天井取付部1で天井に固定されている。天井取付部1には、湾曲形状を有する支持アーム2がその一端でぶら下がり支持されている。支持アーム2と天井取付部1の接続部分には、アクチュエータが内包されており、支持アーム2は、支持されている一端を通り天井平面及び床平面と直交する軸を中心として軸回転する。
【0022】
支持アーム2には、アームホルダ3を介してCアーム4が支持されている。Cアーム4は、略C字形状を有しており、背面側が支持されている。アームホルダ3には、アクチュエータが内包されており、Cアーム4は、アームホルダ3及びCアーム4を通り天井平面及び床平面と平行な軸を中心に軸回転する。Cアーム4の背面には、Cアーム4のアーム延び方向にレールが配設されており、Cアーム4は、アームホルダ3を通りCアーム4のアーム延び方向を円周とした円周上を移動する。
【0023】
Cアーム4の一端には、X線発生部5が設置され、他端にはX線平面検出器6が設置されている。X線発生部5とX線平面検出器6とは、その向きを対向させて設置されている。
【0024】
X線発生部5は、X線を発生する真空管を有する。フィラメント(陰極)に加熱電流が供給されて電子を放出し、フィラメントとタングステン陽極との間に高電圧が印加されて電子が加速され、タングステン陽極に衝突させる。加速した電子がタングステン陽極に衝突するとX線が発生する。高電圧の印加は、例えば、高周波数インバータ方式、すなわち50/60Hzの交流電源を整流して直流とし、それを数kHz以上の高周波数の交流に変換して昇圧するとともにそれを再度整流して印加する方式のものが適用される。X線発生部5は、供給される電流によって発生するX線量が決定する。
【0025】
X線平面検出器6は、多行多列のX線検出素子を配している。X線検出素子は、画素を含み、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換型や、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形が主流である。尚、平面検出器以外にも例えばイメージ・インテンシファイアと呼ばれる蛍光面で可視化された像をカメラで撮影するものであってもよい。
【0026】
X線発生部5とX線平面検出器6との間には、被検体Pを載置する天板7が介挿される。天板7は、床に固定された天板保持部8に支持される。天板保持部8には、アクチュエータが内包され、天板7を天板保持部8から押し出し又は引き戻し移動させる。
【0027】
X線診断装置100は、支持アーム2、Cアーム4、天板保持部8、及びX線発生部5等の駆動体、並びにX線平面検出器6を、被検体の診断のための医用手段として制御する。支持アーム2、Cアーム4、及び天板保持部8を位置決めし、設定されたX線量でX線発生部5からX線を曝射させ、被検体Pを透過したX線をX線平面検出器6で検出させる。支持アーム2、Cアーム4、天板保持部8の位置決め、X線発生部5から曝射されるX線量は、X線診断装置100内部に配設される制御系により制御される。
【0028】
図2に、X線診断装置100の制御系を示す。図2は、X線診断装置100の制御系を示すブロック図である。
【0029】
X線診断装置100には、医用手段の他、入力部40とCPU10及びメモリ11を含むコンピュータとハードウェア制御部20と医用手段コントローラ30が配設されている。
【0030】
医用手段コントローラ30は、コンピュータ及びハードウェア制御部20と電気的に接続されている。コンピュータ及びハードウェア制御部20は、入力部40と電気的に接続されている。
【0031】
入力部40は、ボタンやつまみ等が配列されたコンソールである。コンピュータに対しては、ボタンやつまみの操作に対応した電気信号をコード化して入力する。ハードウェア制御部20に対しては、ボタンやつまみに対応した信号線を介してボタンやつまみの操作量に対応する電圧値や電流値を有する電気信号を入力する。
【0032】
コンピュータは、メモリ11に記憶されている各種アプリケーションを実行してソフトウェアによるX線診断装置100の制御手段として機能する。ハードウェア制御部20は、電子回路を含み構成され、ハードウェアによる装置の制御手段として機能する。
【0033】
医用手段コントローラ30は、コンピュータ又はハードウェア制御部20の制御に対応して、支持アーム2、Cアーム4、及び天板保持部8を駆動させるアクチュエータに対して電力を供給し、あるいはX線発生部5に対して電力を供給する。
【0034】
このX線診断装置100は、ソフトウェア制御又はハードウェア制御の切替えが可能となっている。
【0035】
ソフトウェア制御では、オペレータの操作に応じて入力部40からコンピュータへコード化されたコマンドが送出される。コンピュータは、プログラムの実行によりコマンドに応じて制御信号を生成し、医用手段コントローラ30に送出する。制御信号が入力された医用手段コントローラ30は、電源からの回路を制御信号に従って開き、支持アーム2、Cアーム4、天板保持部8、又はX線発生部5に電力を供給して移動させ、設定されたX線量のX線をX線発生部5に曝射させる。
【0036】
ハードウェア制御では、入力部40からハードウェア制御部20へ、各種のボタンやつまみに対応した信号線を介して、操作に対応した電流値の電気信号が送出される。ハードウェア制御部20は、送出された電気信号を制御信号に変換し、医用手段コントローラ30に送出する。制御信号が入力された医用手段コントローラ30は、電源からの回路を制御信号に従って開き、支持アーム2、Cアーム4、天板保持部8、又はX線発生部5に電力を供給して移動させ、設定されたX線量のX線をX線発生部5に曝射させる。
【0037】
コンピュータによるソフトウェア制御は、X線診断装置100を制御するアプリケーションを実行することにより実現される。メモリ11には、OSアプリケーション12a、位置決めアプリケーション14a、X線量設定アプリケーション15a、患者登録DB16、テンポラリファイル17、臨床アプリケーション18等のアプリケーションファイル及びデータファイルが記憶されている。これらアプリケーションを実行することによりコンピュータは、ソフトウェア制御部13として機能する。
【0038】
ソフトウェア制御部13は、オペレーティングシステム12と、位置決め制御部14と、X線設定制御部15とを含み構成される。オペレーティングシステム12をベースとして、医用手段コントローラ30に対して医用手段を制御する制御信号を出力する。オペレーティングシステム12は、OSアプリケーション12aの実行により機能し、入力部40やモニタM等の入出力装置やメモリの管理などアプリケーションから共通して利用される基本的機能を提供する。位置決め制御部14は、位置決めアプリケーション14aの実行により実現する。X線設定制御部15は、X線量設定アプリケーション15aの実行により実現する。
【0039】
位置決め制御部14は、支持アーム2、Cアーム4、及び天板保持部8等の駆動体の移動位置を示す制御信号を生成して医用手段コントローラ30へ送出する。
【0040】
X線量設定制御部15は、X線量を示す制御信号を生成して医用手段コントローラ30へ送出する。
【0041】
尚、位置決め制御部14とX線量設定制御部15はオペレーティングシステム12の起動環境下で別個独立のアプリケーションとして別々に起動又は停止が可能となっている。
【0042】
ハードウェア制御部20は、医用手段を直接制御する電子回路等のハードウェアであり、位置決め回路21とX線量設定回路22を備える。位置決め回路21は、入力部40から送出された電気信号を、支持アーム2、Cアーム4、又は天板保持部8の移動位置を示す制御信号に変換し、医用手段コントローラ30へ送出する。X線量設定回路22は、入力部40から送出された電気信号を、X線量を示す制御信号に変換し、医用手段コントローラ30へ送出する。
【0043】
このX線診断装置100のメモリ11には、図示しないウィルス対処プログラムとコンピュータウィルスの対処に利用されるデータファイルが記憶されている。尚、コンピュータウィルスは、感染、潜伏、発病の機能を有するプログラムであり、いわゆるアドウェアも含まれる。
【0044】
ウィルス対処プログラムを実行することにより、X線診断装置100のコンピュータは、コンピュータウィルスを検索する検索部51と、コンピュータウィルスに感染していた場合にそのウィルスの対処をするウィルス対処部52として機能する。データファイルとしては、深刻度テーブル53と対処テーブル54と各種対処ファイル55が記憶されている。
【0045】
検索部51は、コンピュータウィルスの定義ファイルを有し、メモリ11に記憶されているアプリケーションやデータファイルからコンピュータウィルスを検索する。定義ファイルは、各種コンピュータウィルスのデジタルパターンとコンピュータウィルスの名称や種類を示す情報が格納されている。コンピュータウィルスが検索されると、感染していたコンピュータウィルスと感染していたアプリケーション又はデータファイルの情報から深刻度を取得する。
【0046】
深刻度は、深刻度テーブル53を参照して取得する。図3に深刻度テーブル53を示す。図3に示すように、深刻度テーブル53は、コンピュータウィルスの名称や種類と感染ファイルとの組み合わせに深刻度を対応させている。即ち、深刻度は、コンピュータウィルスとその感染ファイルに基づく。深刻度は、そのコンピュータウィルスがそのファイルに感染した場合における、そのファイルによって実現される機能維持の困難性や、医用システムの運転維持の困難性や、医用システム内のその他ファイルへの感染拡大可能性、等により決定される。深刻度は、高中低のように複数段階に分類されている。
【0047】
例えば、検索部51は、検索の結果、X線量を制御するX線量設定アプリケーション15aにコンピュータウィルスが感染していた場合には、深刻度テーブル53を参照して深刻度「高」を取得する。臨床アプリケーション18やテンポラリファイル17にコンピュータウィルスが感染していた場合には、深刻度テーブル53を参照して深刻度「低」を取得する。患者登録DB16に悪質なコンピュータウィルスが感染していた場合には、深刻度「中」を取得する。患者登録DB16に比較的悪質性の低いコンピュータウィルスが感染していた場合には、深刻度「低」を取得する。位置決めアプリケーション14aのうち、Cアーム4の位置決めを制御するモジュールに悪質なコンピュータウィルスが感染していた場合には、深刻度「高」を取得する。位置決めアプリケーション14aのうち、Cアーム4の位置決めを制御するモジュールに比較的悪質性の低いコンピュータウィルスが感染していた場合には、深刻度「低」を取得する位置決めアプリケーション14aのうち、Cアーム4の位置決めを制御するモジュールに悪質なコンピュータウィルスが感染していた場合には、深刻度「高」を取得する。
【0048】
ウィルス対処部52は、検索部51が取得した深刻度と感染していたアプリケーション又はデータファイルの情報に合致したウィルス対処を実行する。各種対処ファイル55は、ウィルスの対処を記述したバッチファイルである。対処ファイル55毎に各種のウィルス対処が記述されている。ウィルス対処部52は、深刻度と感染していたアプリケーション又はデータファイルの情報に合致した対処ファイル55を実行する。
【0049】
対処ファイル55は、対処テーブル54を参照して取得する。図4に、対処テーブル54を示す。図4に示すように、対処テーブル54は、感染ファイルと深刻度との組み合わせにウィルス対処法を記述した対処ファイル55を対応させている。即ち、ウィルス対処法は、深刻度を介してコンピュータウィルスとその感染ファイルに基づく。
【0050】
対処ファイル55に記述されるウィルス対処の内容は、深刻度と感染ファイルに応じて異なる。
【0051】
例えば、感染ファイルがOSアプリケーション12a及び深刻度「高」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、モニタMにOSアプリケーション12aの再インストールを促すメッセージを表示し、オペレーティングシステム12を終了させる。また、感染ファイルがOSアプリケーション12a及び深刻度「中」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、医用システムの運転を継続させ、再起動時にOSアプリケーション12a中の感染ファイルを削除する。感染ファイルがOSアプリケーション12a及び深刻度「低」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、コンピュータウィルスを放置する。
【0052】
感染ファイルがX線量設定アプリケーション15a及び深刻度「高」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、X線量設定に係るソフトウェア制御の経路を終了してハードウェア制御によるハードウェア制御に移行させる。即ち、オペレーティングシステム12及びソフトウェア制御部13を停止させ、入力部40から送出されたX線量に係るコマンドをオペレーティングシステム12を介してX線量設定制御部15が受け取り、X線量設定制御部15が制御信号を生成して医用手段コントローラ30に送出させるソフトウェア制御経路を遮断する。代替して、入力部40から送出されたX線量に係る電気信号をX線量設定回路22が受け取り、制御信号に変換して医用手段コントローラ30に送出させるハードウェア制御経路に切り替える。かつ、X線量設定回路22の回路設定を透視モードに切り替える。ネットワーク上に存在する端末が指定されている場合には、当該端末にアラートを送信する。
【0053】
また、感染ファイルがX線量設定アプリケーション15a及び深刻度「中」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、医用システムの運転を継続させ、再起動時にOSアプリケーション12a中の感染ファイルを削除する。感染ファイルがX線量設定アプリケーション15a及び深刻度「中」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、コンピュータウィルスを放置する。
【0054】
感染ファイルが位置決めアプリケーション14a中のCアーム4の制御に係るモジュール及び深刻度「高」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、Cアーム4の制御に係るソフトウェア制御の経路を終了してハードウェア制御によるハードウェア制御に移行させる。即ち、位置決め制御部14中のCアーム4の制御モジュールを停止させ、入力部40から送出されたCアーム4の制御に係るコマンドをオペレーティングシステム12を介して位置決め制御部14が受け取り、位置決め制御部14が制御信号を生成して医用手段コントローラ30に送出させるソフトウェア制御経路を遮断する。代替して、入力部40から送出されたCアーム4の制御に係る電気信号を位置決め回路21が受け取り、制御信号に変換して医用手段コントローラ30に送出させるハードウェア制御経路に切り替える。又は、Cアーム4の制御自体を停止させ、手動によるCアーム4の位置決めを可能とする。
【0055】
また、感染ファイルが位置決めアプリケーション14a中のCアーム4の制御に係るモジュール及び深刻度「中」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、医用システムの運転を継続させ、再起動時にOSアプリケーション12a中の感染ファイルを削除する。感染ファイルが位置決めアプリケーション14a中のCアーム4の制御に係るモジュール及び深刻度「中」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、コンピュータウィルスを放置する。
【0056】
感染ファイルが患者情報DB16及び深刻度「高」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、ネットワーク上に存在する端末が指定されている場合には、当該端末にアラートを送信し、入力部40から送出される患者情報DB16を利用するコマンドの受け付けを禁止させる。また、感染ファイルが患者情報DB16及び深刻度「中」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、患者情報DB16中の感染ファイルを削除する。感染ファイルが患者情報DB16及び深刻度「低」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、コンピュータウィルスを放置する。
【0057】
感染ファイルが臨床アプリケーション18及び深刻度「高」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、モニタMに臨床アプリケーション18の再インストールを促すメッセージを表示し、臨床アプリケーション18を終了させて再度の起動コマンドの受け付けを禁止させる。また、感染ファイルが臨床アプリケーション18及び深刻度「中」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、臨床アプリケーション18中の感染ファイルを削除する。感染ファイルが臨床アプリケーション18及び深刻度「低」の場合に対応した対処ファイル55を実行するウィルス対処部52は、コンピュータウィルスを放置する。
【0058】
図5に、X線診断装置100のウィルス検索及びウィルス対処の動作を示す。図5は、医用システムのウィルス検索及びウィルス対処に係るアクティビティ図である。
【0059】
まず、操作者が入力部40を用いてウィルス検索の開始を要求する入力を行うと(S01)、CPU10は、ウィルス対処プログラムを起動する(S02)。ウィルス対処プログラムの起動は、予定時刻等を設定しておき、タイマー起動をするようにしてもよい。
【0060】
ウィルス対処プログラムが起動されると、CPU10は、検索部51として機能する。検索部51は、コンピュータウィルスのパターンとコンピュータウィルスの名称又は種類が記述された定義ファイルに従ってX線診断装置100内のファイルを走査してコンピュータウィルスを検索する(S03)。この定義ファイルや検索エンジンは、市販のものであってもよい。
【0061】
検索部51は、X線診断装置100内の指定された範囲のファイルを走査してコンピュータウィルスが検出されなければ(S04)、検索処理を終了する。コンピュータウィルスが走査中のファイルから検出されれば(S05)、感染ファイルの名称を取得し、定義ファイル内のコンピュータウィルスの名称又は種類を記述したモジュールからコンピュータウィルスの名称又は種類を取得する(S06)。
【0062】
感染ファイルの名称とコンピュータウィルスの名称又は種類を取得すると、検索部51は、深刻度テーブル53を読み出し、取得した感染ファイルとコンピュータウィルスの組み合わせに対応する深刻度を取得する(S07)。
【0063】
深刻度が取得されると、CPU1は、ウィルス対処部52として機能する。ウィルス対処部51は、対処テーブル54を読み出し、取得した深刻度と感染ファイルの名称の組み合わせに関連づけられた対応ファイル55を特定する(S08)。対応ファイル55を特定すると、当該対応ファイル55を読み出して実行を開始する(S09)。
【0064】
例えば、悪質なコンピュータウィルスがX線量設定アプリケーション15a中のファイルに感染したため深刻度「高」が取得されたとする。ウィルス対処部52は、「Batchfile01_02.bat」を読み出し、実行を開始する。
【0065】
ウィルス対処部52は、悪質なコンピュータウィルスがX線量設定アプリケーション15a中のファイルに感染したことによるウィルス対処を実行すると、ソフトウェア制御部13を終了させてソフトウェア制御の経路を遮断し、ハードウェア制御部20に入力部40からの電気信号が送出されるように制御経路を切替えてハードウェア制御に切り替える(S10)。さらに、オペレーティングシステム12を終了させる(S11)。
【0066】
これにより、ウィルス感染したアプリケーションは起動されず、ウィルス感染の拡大を防止でき、また、ウィルス感染による被害を最小限に食い止めることが可能となる。
【0067】
図6に、医用システムの他の構成例を示す。図6は、医用システムの他の構成を示すブロック図である。
【0068】
医用システムは、X線診断装置100といったモダリティの他、ネットワークを介して記憶装置110を含むこともできる。記憶装置110は、深刻度テーブル53及び対処テーブル54を記憶する。検索部51による深刻度の取得の際には、ネットワークを介して深刻度テーブル53を読み出し、又は記憶装置110にコンピュータウィルスと感染ファイルから深刻度を問い合わせする。ウィルス対処部52による対処ファイル55の特定の際には、ネットワークを介して対処テーブル54を読み出し、又は記憶装置110に感染ファイルの名称と深刻度から対処ファイル55を問い合わせる。
【0069】
尚、以上の実施形態においては、コンピュータウィルスと感染ファイルから深刻度を取得するようにしたが、深刻度は、コンピュータウィルスの内容と感染ファイルのみから導かれるものとした場合には、深刻度を介さずコンピュータウィルスと感染ファイルから直接対処ファイル55を特定するようにしてもよい。この場合、深刻度テーブル53と対処テーブル54を重複する深刻度及び感染ファイルを介して合成した対処ファイル54を用意すればよい。
【0070】
このように、本発明に係る医用システムでは、コンピュータウィルス毎にシステムに対する深刻度を定義する深刻度テーブルと深刻度に対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶し、記憶されたファイルからコンピュータウィルスを検索して深刻度テーブルと対処テーブルに基づきウィルス対処をするようにした。これにより、医用システムに特化した対処をすることができ、医用システムの安全かつ安定した運用が可能となる。
【0071】
また、感染ファイルと深刻度、即ち感染したコンピュータウィルスと感染ファイルの組み合わせに対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶し、対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処をするようにした。これにより、コンピュータウィルス及び感染ファイルの組み合わせに対する評価が医用システムに合わせて最適化され、より安全かつ安定した運用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態に係る医用システムの外観を示す斜視図である。
【図2】医用システムの制御系を示すブロック図である。
【図3】医用システムが備える深刻度テーブルを示す図である。
【図4】医用システムが備える対処テーブルを示す図である。
【図5】医用システムのウィルス検索及びウィルス対処に係るアクティビティ図である。
【図6】医用システムの他の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
100 X線診断装置
110 記憶装置
1 天井取付部
2 支持アーム
3 アームホルダ
4 Cアーム
5 X線発生部
6 X線平面検出器
7 天板
8 天板保持部
10 CPU
11 メモリ
12 オペレーティングシステム
12a OSアプリケーション
13 ソフトウェア制御部
14 位置決め制御部
14a 位置決めアプリケーション
15 X線量設定制御部
15a X線量設定アプリケーション
16 患者登録DB
17 テンポラリファイル
18 臨床アプリケーション
20 ハードウェア制御部
21 位置決め回路
22 X線量設定回路
30 医用手段コントローラ
40 入力部
51 検索部
52 ウィルス対処部
53 深刻度テーブル
54 対処テーブル
55 対処ファイル
M モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の診断又は治療をするための医用手段と、
前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたファイルからコンピュータウィルスを検索する検索手段と、
コンピュータウィルス毎にシステムに対する深刻度の定義を記憶する深刻度テーブルと、
前記深刻度に対応したウィルス対処を記憶する対処テーブルと、
前記深刻度テーブルと前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、
を備えること、
を特徴とする医用システム。
【請求項2】
被検体の診断又は治療をするための医用手段と、
前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索し、感染したコンピュータウィルスと感染ファイルを特定する検索手段と、
前記感染したコンピュータウィルスと前記感染ファイルの組み合わせに対応したウィルス対処を記憶する対処テーブルと、
前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、
を備えること、
を特徴とする医用システム。
【請求項3】
前記ウィルス対処は、感染したアプリケーションファイルに対応するソフトウェア制御手段による制御を代替するハードウェア制御手段の制御に切替え、若しくは手動による制御に切り替え、若しくはシステムの停止、若しくはシステムの再起動を少なくとも含むこと、
を特徴とする請求項1又は2記載の医用システム。
【請求項4】
請求項1記載の医用システムは、
前記医用手段と前記各種ソフトウェア制御手段と前記各種ハードウェア制御手段と前記記憶部と前記検索手段と前記対処手段を含む医用装置と、
前記医用装置とネットワークを介して接続され、前記深刻度テーブルと前記対処テーブルとを記憶する記憶装置と、
を備えること、
を特徴とする請求項1又は2記載の医用システム。
【請求項5】
被検体の診断又は治療をするための医用手段と、
前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶するファイル記憶手段と、
を有し、被検体の診断又は治療をするための医用システムを、
前記記憶部に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索する検索手段と、
コンピュータウィルス毎にシステムに対する深刻度を定義する深刻度テーブル、及び前記深刻度に対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶するテーブル記憶手段と、
前記深刻度テーブルと前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、
して機能させること、
を特徴とする医用ウィルス対処プログラム。
【請求項6】
被検体の診断又は治療をするための医用手段と、
前記医用手段を制御する各種ソフトウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段の少なくとも一部と代替可能に配され、前記医用手段を制御する各種ハードウェア制御手段と、
前記各種ソフトウェア制御手段を実現するアプリケーションファイルを含む各種ファイルを記憶するファイル記憶手段と、
を有し、被検体の診断又は治療をするための医用システムを、
前記記憶部に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索する検索手段と、
前記記憶手段に記憶された各種ファイルからコンピュータウィルスを検索し、感染したコンピュータウィルスと感染ファイルを特定する検索手段と、
前記感染したコンピュータウィルスと前記感染ファイルの組み合わせに対応したウィルス対処を定義する対処テーブルを記憶する記憶手段と、
前記対処テーブルに基づきウィルス対処をする対処手段と、
して機能させること、
を特徴とする医用ウィルス対処プログラム。
【請求項7】
前記ウィルス対処は、感染したアプリケーションファイルに対応するソフトウェア制御手段による制御を代替するハードウェア制御手段の制御に切替え、若しくは手動による制御に切り替え、若しくはシステムの停止、若しくはシステムの再起動を少なくとも含むこと、
を特徴とする請求項5又は6記載の医用ウィルス対処プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−15842(P2008−15842A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187141(P2006−187141)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】