説明

医用画像処理装置

【課題】医用撮像装置での撮像可能領域よりも広い観察対象領域についての臨床的な物理量を迅速かつ正確に求めることを可能とする。
【解決手段】MRI装置200によりその撮像可能領域よりも広い観察対象領域を複数回に分けて撮像して得られた複数のボリューム画像を個別に記憶部3に記憶しておく。主処理部1の画像解析部13は、上記の複数のボリューム画像のうちの1つを解析して臨床的な物理量(血管径や狭窄率など)を求める処理を、上記の複数のボリューム画像のそれぞれを対象として実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴診断装置(以下、MRI装置と記す)、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、CT装置と記す)、X線診断装置、あるいは超音波診断装置などの医用撮像装置(診断モダリティ)により撮像された医用画像から臨床的な物理量を求める医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤や血管狭窄の診断には、造影CTA(computed tomography angiography)、造影MRA(magnetic resonance angiography)、非造影MRA画像が用いられている。そして、上記の診断を支援するために、上記のような医用画像を自動的に解析し、血管の狭窄率などのような臨床的な物理量を求める技術が開発されている。
【0003】
ところで、上記の診断のための観察対象を全身の血管とする場合などにおいて、観察対象領域が医用撮像装置での撮像可能領域よりも大きくなることがある。そしてこの場合には、観察対象領域を複数回に分けて撮像して得られた複数の医用画像をつなぎ合わせることによって観察対象領域に対応した画像を生成し、この画像を解析することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−117669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の画像をつなぎ合わせて生成された画像においては、複数の画像の境界近傍において連結歪みが生じることがある。そしてこの連結歪みは、解析により求まる物理量に誤差を生じさせる原因となってしまう。
【0006】
また、複数の画像がそれぞれ3次元画像である場合、それらをつなぎ合わせるために例えばVolume Stitchingと呼ばれる技術が利用される。Volume Stitchingを利用した処理には非常に多くの時間を要するために診断に要する時間が長くなり、緊急時やスクリーニング時の診断には不向きである。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、医用撮像装置での撮像可能領域よりも広い観察対象領域についての臨床的な物理量を迅速かつ正確に求めることを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様による医用画像処理装置は、医用撮像装置により当該医用撮像装置での撮像可能領域よりも広い観察対象領域を複数回に分けて撮像して得られた複数の医用画像を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された複数の医用画像のうちの1つを解析して臨床的な物理量を求める処理を、前記複数の医用画像のそれぞれを対象として実施する解析手段とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医用撮像装置での撮像可能領域よりも広い観察対象領域についての臨床的な物理量を迅速かつ正確に求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理・表示装置のブロック図。
【図2】図1中の撮像領域決定部のフローチャート。
【図3】観察対象領域を設定するための表示画像の一例を示す図。
【図4】有効領域と無効長との関係を示す図。
【図5】撮像領域および有効領域の設定例を示す図。
【図6】図1中の画像解析部のフローチャート。
【図7】図1中の表示画像生成部のフローチャート。
【図8】解析の対象とする領域の一例を示す図。
【図9】解析結果を示す表示画像の一例を示す図。
【図10】解析結果を示す表示画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は本実施形態に係る画像処理・表示装置100のブロック図である。
【0013】
画像処理・表示装置100は、MRI装置200により取得された3次元画像データ(以下、ボリュームデータと記す)を処理対象とし、臨床的な物理量を得るための画像処理を実施する。画像処理・表示装置100は、臨床的な種々の物理量を得るために利用が可能であるが、ここではMRA画像から血管の狭窄率を計測する処理を行うものに関して説明することとする。
【0014】
画像処理・表示装置100は、主処理部1、通信部2、記憶部3、表示部4および操作部5を含む。
【0015】
画像処理・表示装置100は、例えば汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用いることができる。そして主処理部1は、上記のコンピュータ装置に搭載されたプロセッサに画像表示処理プログラムを実行させることにより実現することができる。上記の画像表示処理プログラムは、上記のコンピュータ装置に予めインストールされていても良いし、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどのようなリムーバブルな記録媒体に記録して、あるいはネットワークを介して上記の画像表示処理プログラムを配布され、この画像表示処理プログラムを上記のコンピュータ装置に適宜インストールされても良い。通信部2、記憶部3および表示部4としては、上記のコンピュータ装置に内蔵された通信デバイス、記憶デバイスおよび表示デバイスを利用できる。すなわち、通信部2は、例えばLANインタフェース回路などを利用できる。記憶部3は、半導体メモリやハードディスクなどを利用できる。また表示部4は液晶表示器やCRT(cathode-ray tube)などを利用できる。操作部5としては、キーボードなどの入力デバイスや、マウスなどのポインティングデバイスといった各種の操作デバイスを利用できる。なお、通信部2、記憶部3、表示部4および操作部5としては、上記のコンピュータ装置に外付けされた通信デバイス、記憶デバイス、表示デバイスおよび操作デバイスを利用しても良い。そして通信部2および表示部4については、画像処理・表示装置100に含まれずに、画像処理・表示装置100とは別体のデバイスが画像処理・表示装置100に接続されて使用されても良い。
【0016】
主処理部1は、撮像領域決定部11、医用画像管理部12、画像解析部13および表示画像生成部14を含む。
【0017】
撮像領域決定部11は、狭窄率を正確に計測するために適するボリュームデータをMRI装置200にて取得するための撮像領域を決定する。そしてこのような処理を実現するために撮像領域決定部11は、有効領域算出部11aおよび撮像領域算出部11bを含む。
【0018】
有効領域算出部11aは、ボリューム画像のうちの有効領域を算出する。なおボリューム画像とは、一回の撮像により取得されるボリュームデータが表す3次元画像を指す。また有効領域とは、狭窄率を計測するために有効な領域を指す。
【0019】
撮像領域算出部11bは、観察対象領域の全域が複数の有効領域によってカバーされるような複数の撮像領域を算出する。なお観察対象領域とは、血管狭窄に関わる病変を観察する対象となる領域を指し、狭窄率を計測する対象となる領域でもある。また撮像領域とは、MRI装置200の一回の撮像の対象とする領域を指す。
【0020】
医用画像管理部12は、ボリュームデータをMRI装置200から取得し、記憶部3に記憶させる。そして医用画像管理部12は、記憶部3に記憶されているボリュームデータを管理する。
【0021】
画像解析部13は、病変である可能性のある箇所(以下、病変箇所と記す)を判定し、その狭窄率を計測するためにボリューム画像を解析する。そしてこのような処理を実現するために画像解析部13は、血管芯線抽出部13aおよび病変判定部13bを含む。
【0022】
血管芯線抽出部13aは、ボリューム画像中に描出されている血管の芯線(以下、血管芯線と記す)および輪郭(以下、血管輪郭と記す)を抽出する。
【0023】
病変判定部13bは、血管芯線および血管輪郭を用いて病変箇所の判定およびその狭窄率の計測を行う。
【0024】
表示画像生成部14は、画像解析部13での解析の結果をボリューム画像とともに表す表示画像を生成する。
【0025】
なお、主処理部1における上記の各部は、単一のプログラムに基づいて実現されても良いし、複数のプログラムにより実現されても良い。また、主処理部1における上記の各部は、その一部または全てをロジック回路などのハードウェアにより実現することも可能である。また上記の各部のそれぞれは、ハードウェアとソフトウェア制御とを組み合わせて実現することも可能である。
【0026】
通信部2は、MRI装置200との間で種々の情報を通信する。通信部2が通信する情報には、撮像領域を指示する撮像領域情報とボリュームデータとを含む。
【0027】
記憶部3は、各種の情報を記憶する。記憶部3が記憶する情報には、MRI装置200から取得したボリュームデータと主制御部1での解析の結果を示した解析情報とを含む。
【0028】
表示部4は、主処理部1による制御の下に各種の画像を表示する。表示部4が表示する画像には、上記の表示画像を含む。
【0029】
操作部5は、操作者による各種の指示を入力する。
【0030】
次に以上のように構成された画像処理・表示装置100の動作について説明する。
【0031】
図2は撮像領域決定部11のフローチャートである。
【0032】
ステップSa1において撮像領域決定部11は、観察対象領域を設定する。この観察対象領域の設定は、例えば操作者による指示に応じて行う。具体的には例えば、撮像領域決定部11は図3に示すような位置決め画像Im1および矩形枠F1を表示部4に表示させる。そして撮像領域決定部11は、ユーザによる変更操作に応じて矩形枠F1の大きさや位置を変更し、ユーザによる確定操作がなされた際の矩形枠F1により覆われる領域に相当する領域を観察対象領域として設定する。従って操作者は、病変についての観察を行いたい領域に合致するように矩形枠F1を変更した上で確定操作を行う。
【0033】
ステップSa2において撮像領域決定部11は、無効長を設定する。無効長とは、MRI装置200における一度の撮像領域の端部において画像の歪みが大きいために狭窄率の計測に適さない領域(以下、無効領域と記す)の上記端部からの長さを指す。すなわち、MRI装置200では、撮像領域の端部において磁場歪みの影響から画像に歪みが生じ、狭窄率の計測に適さない無効領域が生じる恐れがある。MRI装置200には、磁場歪みの影響による画像歪みを補正する機能を備えたものも多いが、画像歪みを完全に無くすことは困難である。つまり、画像歪みが十分に補正される領域と補正しきれない領域とが生じ、後者の領域は無効領域となる。無効長は、このような無効領域の大きさを特定するための値である。本実施形態において無効長は、静磁場方向およびこの静磁場方向に直交した方向のそれぞれに関する無効長L1,L2をそれぞれ個別に設定することとする。無効長は、操作者の指示に応じて設定しも良いし、MRI装置200の性能を考慮して自動的に設定しても良い。ただし、無効領域の大きさはMRI装置200の性能の機種差や装置個体差に応じて変化するし、どの程度の歪みを許容するかはユーザによって異なる場合がある。そこで、無効長は典型的には操作者の指示に応じて設定することになる。ただし、操作者の指定に応じた無効長の設定と、自動での無効長の設定との双方を操作者の希望に応じて選択的に実行可能としておけば、より便利である。なお、狭窄率の計測誤差を低減するためには、無効長は大きめに設定されることが望ましい。
【0034】
ステップSa3において撮像領域決定部11は、無効長L1,L2を考慮して有効領域を算出する。具体的には撮像領域決定部11は図4に示すように、有効領域R1を、MRI装置200における撮像可能領域R2の端部の無効領域を除いた領域として算出する。なお、撮像可能領域とは、MRI装置200において1回の撮像での最大の撮像領域を指す。
【0035】
ステップSa4において撮像領域決定部11は、観察対象領域の全てが有効領域で埋め尽くされるような複数の撮像領域を算出する。具体的には例えば、撮像領域決定部11は、図5に示すような撮像領域R3-1,R3-2,R3-3,R3-4,R3-5を算出する。図5の例では、撮像領域R3-1〜R3-5のそれぞれの有効領域はR4-1〜R4-5である。そしてこれらの有効領域R4-1〜R4-5のうちの隣接するものどうしは一部が互いに重複している。そして有効領域R4-1〜R4-5によって、観察対象領域の全てが埋め尽くされている。
【0036】
ステップSa5において撮像領域決定部11は、上記のように決定した撮像領域を示した撮像領域情報を、通信部2を介してMRI装置200に送信する。そしてこれをもって撮像領域決定部11は、図2に示す処理を終了する。
【0037】
MRI装置200では、上記のように画像処理・表示装置100から送信された撮像領域情報を受信すると、この撮像領域情報に示された複数の撮像領域のそれぞれに関するボリューム撮像を個別に行う。かくしてMRI装置200では、複数回のボリューム撮像が行われ、複数のボリュームデータが取得される。
【0038】
そこで画像処理・表示装置100は、このようにMRI装置200で取得される複数のボリュームデータを医用画像管理部12によってMRI装置200から取得する。このときの通信は、MRI装置200から画像処理・表示装置100に対して要求されても良いし、画像処理・表示装置100からMRI装置200に対して要求されても良い。そして医用画像管理部12は、MRI装置200から取得した複数のボリュームデータを記憶部3に記憶させる。
【0039】
任意のタイミングにおいて、上記のように記憶部3に記憶されたボリュームデータが表すボリューム画像に関して画像解析部13が解析処理を開始する。この解析処理を開始するタイミングは例えば、複数のボリュームデータの取得が完了した直後や、あらかじめ定められた時刻や、あるいは操作者により実行が指示されたときとすることが考えられる。
【0040】
図6は画像解析部13のフローチャートである。なお図6のフローチャートは、1つの検査を処理対象として行われる処理を示す。
【0041】
ステップSb1乃至ステップSb5のループにおいて画像解析部13は、変数Pを1からnまで1つずつ増加させながらステップSb2乃至ステップSb4の処理を繰り返す。なお変数nは、処理対象とする検査における撮像領域の数である。すなわち、図5に示すように設定された撮像領域に関して撮像が行われていた場合には、変数nは「5」となる。
【0042】
ステップSb2において画像解析部13は、P番目の画像を今回の解析対象として読み出す。具体的には画像解析部13は、処理対象とする検査に関する複数のボリューム画像のうちのP番目の撮像領域に関する画像についてのボリュームデータを記憶部3から読み出す。
【0043】
ステップSb3において画像解析部13は、上記のように読み出したボリューム画像(以下、解析対象画像と記す)に描出されている血管についての血管芯線および血管輪郭を抽出する。具体的には例えば、画像解析部13はまず、操作者の指定に応じて解析対象画像中に始点を設定する。なおこのときに操作者は、解析対象画像に描出されている血管内腔に始点を指定することとする。画像解析部13は、上記の始点から血管芯線および血管輪郭を抽出する。ここでの処理には、例えば「Onno Wink, Wiro J.Niessen,“Fast Delineation and Visualization of Vessel in 3-D Angiographic Images”,IEEE Trans.Med.Imag.,Vol.19, No.4, 2000」に示されているような周知の技術を適用できる。
【0044】
ステップSb4において画像解析部13は、上記のように抽出した血管芯線および血管輪郭を用いて、病変箇所の判定およびその箇所における血管の狭窄率の計測を行う。ここでの処理には、例えば特開2005-198708に示されているような周知の技術を適用できる。具体的には、血管芯線と血管輪郭とを集めた複数の血管形状データから最小血管径を複数検出する。次にこの検出した複数の最小血管径から最小径カーブを生成する。さらに、この最小径カーブにおいて血管径が小さい領域を各血管の枝ごとに複数求め狭窄部位とする。そして、狭窄部位が存在する箇所を病変箇所とする。このように判定した病変箇所のそれぞれについて、その血管径とその前後の正常血管径との比率を利用し、狭窄率を計測する。そして画像解析部13は、病変箇所を表す病変情報と狭窄率を表す狭窄率情報とを、それを求めるために使用したボリューム画像に関連付けて記憶部3に記憶させる。
【0045】
ただし、画像解析部13は、このステップSb4の処理を解析対象画像のうちの有効領域内のみに対して実行する。ここで、有効領域の全域に対してステップSb4の処理を行っても良い。しかし、図5に示すように複数の有効領域の一部が重複している場合には、その重複領域についてステップSb4の処理が2度行われてしまうことになり、効率が悪い。そこで、有効領域R4-1〜R4-5から互いに重複しないようにそれぞれ選択した例えば図8に示すような領域R5-1〜R5-5に対してのみステップSb4の処理を行うようにすれば、より効率的である。
【0046】
n番目の撮像領域に関するボリューム画像を解析対象画像としてのステップSb2乃至ステップSb4の処理を終えてステップSb1乃至ステップSb5のループの処理が完了したならば、処理対象となっている検査に関して取得されていた複数のボリューム画像のそれぞれに関しての解析が終了している。そこでこの場合に画像解析部13は、図6に示す処理を終了する。
【0047】
任意のタイミングにおいて、上記のようになされた解析処理の結果を表示するための解析結果表示処理を表示画像生成部14が開始する。この解析結果表示処理を開始するタイミングは例えば、上記の解析処理が終了した直後や、操作者により実行が指示されたときとすることが考えられる。
【0048】
図7は表示画像生成部14のフローチャートである。
【0049】
ステップSc1において表示画像生成部14は、表示画像を生成して、これを表示部4に出力して表示させる。
【0050】
図9は表示画像の一例を示す図である。
【0051】
図9に示す表示画像には、血管画像Im2、拡大画像Im3、狭窄率提示画像Im4、マークM1,M2,M3および枠F2を含んでいる。
【0052】
血管画像Im2は、複数のボリューム画像のそれぞれのうちの領域R5-1〜R5-5に関しての拡大画像を並べて表した画像である。血管画像Im2においては、複数の拡大画像の境界において血管どうしを繋ぎ合わせる処理は行っていない。
【0053】
マークM1,M2は、血管画像Im2に重ねて示され、病変箇所を表す。
【0054】
マークM3は、血管画像Im2に重ねて示され、詳細表示の対象となっている病変箇所を表す。
【0055】
枠F2は、血管画像Im2に重ねて示され、拡大画像Im3に相当する範囲を表す。
【0056】
拡大画像Im3は、マークM3で示される病変箇所を含んだ1つのボリューム画像をMIP(maximum intensity projection)処理やSVR(shaded volume rendering)処理して得られた画像である。拡大画像Im3は、血管画像Im2よりも拡大して表示される。
【0057】
狭窄率提示画像Im4は、マークM3で示される病変箇所について計測された狭窄率を文字によって表した画像である。
【0058】
ステップSc2およびステップSc3において表示画像生成部14は、観察箇所の変更か、表示の終了の指示が操作者によりなされるのを待ち受ける。このとき操作者は、複数の病変箇所が判定されていて、既に表示画像に表されているのとは異なる病変箇所について観察したいのであれば、その病変箇所へと観察箇所を変更するように指示する。そして当該指示がなされたならば、表示画像生成部14はステップSc2からステップSc3に進む。
【0059】
ステップSc4において表示画像生成部14は、指定された別の病変箇所を詳細表示の対象とした表示画像を生成し、これを表示部4に出力して表示させることによって表示画像を更新する。
【0060】
図10は変更後の表示画像の一例を示す図である。
【0061】
図10に示す表示画像には、血管画像Im2、拡大画像Im5、狭窄率提示画像Im6、マークM1,M2,M4および枠F3を含んでいる。
【0062】
すなわち、観察対象がマークM1で示される病変箇所からマークM2で示される病変箇所に変更されたことに応じて、拡大画像Im3が拡大画像Im5に、狭窄率提示画像Im4が狭窄率提示画像Im6に、マークM3がマークM4に、さらに枠F2が枠F3にそれぞれ更新されている。
【0063】
ステップSc2およびステップSc3の待ち受け状態にあるときに表示の終了の指示がなされたならば、表示画像生成部14は図7に示す処理を終了する。
【0064】
以上のように画像処理・表示装置100によれば、画像の解析はボリューム画像のそれぞれを対象として個別に行われる。このため、連結歪みの生じていない画像に基づく高精度な解析が行える。つまり上記の実施形態では、血管径や狭窄率を高精度に計測することが可能である。
【0065】
画像処理・表示装置100では、画像解析処理において病変箇所の判定まで行っているが、これは上記のように高精度に計測された血管径に基づいて行っているために、その判定精度も向上することができる。
【0066】
しかも画像処理・表示装置100では、ボリューム画像のうちで歪みの小さい一部の有効領域内のみを解析するので、さらに高精度な解析が行える。
【0067】
画像処理・表示装置100では、複数のボリューム画像を連結する処理を行わないので、主処理部1の負荷が軽減されるとともに、解析処理に要する時間が短縮される。このため画像処理・表示装置100は、解析結果を速やかに提示することが可能であり、緊急時やスクリーニング時の診断に際しても有用である。
【0068】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0069】
病変箇所の判定は行わずに、その判断を医師等が行うための参考情報や統計情報としての臨床的な物理量を計測するだけとしても良い。
【0070】
解析結果のユーザへの提示は別の装置によって行っても良い。従って、そのような別の装置に解析結果を出力する機能を備えて、解析結果を表示する機能を省いても良い。
【0071】
解析結果を表した表示画像には、血管画像Im2のような観察対象領域の全域を表した画像を含めなくても良い。
【0072】
解析処理のために使用可能な時間が十分に確保できる場合に限って、図9,10中の血管画像Im2に代えて、複数のボリューム画像をVolume Stitchingなどを利用して連結した画像を表示画像に含めても良い。
【0073】
画像処理・表示装置が備える機能を、MRI装置、CT装置、X線診断装置、あるいは超音波診断装置などの医用撮像装置に内蔵しても良い。
【0074】
本願発明は、血管狭窄以外の任意の病変に関する解析のために適用可能である。
【0075】
本発明は、CT装置、X線診断装置、あるいは超音波診断装置などのMRI装置以外の医用撮像装置により撮像された医用画像の解析のために適用可能である。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…主処理部、2…通信部、3…記憶部、4…表示部、5…操作部、11…撮像領域決定部、11a…有効領域算出部、11b…撮像領域算出部、12…医用画像管理部、13…画像解析部、13a…血管芯線抽出部、13b…病変判定部、14…表示画像生成部、100…画像処理・表示装置、200…磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用撮像装置により当該医用撮像装置での撮像可能領域よりも広い観察対象領域を複数回に分けて撮像して得られた複数の医用画像を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の医用画像のうちの1つを解析して臨床的な物理量を求める処理を、前記複数の医用画像のそれぞれを対象として実施する解析手段とを具備したことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記解析手段により求められた前記物理量を、その物理量を求めるために解析された前記医用画像と関連付けて表す表示画像を生成する生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段により生成された前記表示画像を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記解析手段は、前記医用画像中の一部の有効領域に関してのみ解析することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
操作者の指示に応じて前記有効領域を設定する設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の医用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−115280(P2011−115280A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273745(P2009−273745)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】