説明

医用画像表示システム及びプログラム

【課題】医用画像の読影効率を向上させる。
【解決手段】医用画像を拡大又は縮小する旨の操作中、すなわち、マウスの左ボタンのマウスダウンイベントが取得されてから(ステップS1;YES)、マウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得されるまでは(ステップS5;YES)、医用画像上にCAD結果が表示されるとともに(ステップS2)、マウスの前後方向の移動方向及び移動量に応じて医用画像の拡大縮小処理が実行される(ステップS4)。具体的には、マウスが前に移動された場合には拡大処理、マウスが後ろに移動された場合には縮小処理が実行される。マウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得された場合には(ステップS5;YES)、医用画像上のCAD結果は非表示とされ、医用画像のみが表示部に表示される(ステップS6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像表示システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、女性の乳癌の罹患率が上昇傾向にある。乳癌は、早期に発見されれば治癒率が高い病気であり、早期発見のため、定期的に検診を行うことが推奨されている。乳癌の発見率を向上させるためには、乳房をX線撮影した画像に対してオーバーリーディングを行うことが有効であると言われている。オーバーリーディングとは、患者を撮影した医用画像を第1の医師が読影した後、第2の医師が読影を行うことである。しかし、現在、乳癌検診において、乳房画像の読影医の数は絶対的に不足しており、十分な検診を行うことができないのが実情であった。
【0003】
そのような状況の中、コンピュータ技術の発展により、コンピュータによる診断支援機能(CAD:Computer-Aided Diagnosis)が登場した。この機能は、デジタル撮影された医用画像(主にCR画像)の解析を行い、病変と思われる領域に対して注釈を付加してディスプレイ上で表示を行い、医師の読影を助ける機能である。乳房画像に対しては、腫瘤や微小石灰化等の病変の可能性がある異常陰影候補領域が検出される。デジタル画像診断においてCADの有効性が確認されており、様々なメーカから製品が出されている。
【0004】
例えば、予め指定された条件に合致する部分にマークを付けて医用画像を表示する画像処理方法において、各マークの表示/非表示を選択可能とするものが提案されている(特許文献1参照)。条件として、例えば、悪性腫瘍等の病変の疑わしい部分を全てマークする、より悪性度の高い部分に限定してマークする、最も悪性度の高い部分に限定してマークする等が挙げられる。
【0005】
一般に、医用画像上に異常陰影候補の位置を示すCAD結果が表示されている状態で、CAD結果の表示/非表示を切り替える際には、操作画面上のメニューからCAD結果の表示/非表示を選択したり、キーパッドからその旨の指示を入力したりする等、ユーザが明示的にCAD結果の表示/非表示を指示する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−159739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、医用画像上にCAD結果が表示されていると、実際に読影を行う場合には、病変部とCAD結果とが重なる可能性もあるので、読影の妨げになる場合があった。病変部とCAD結果とが重なっている場合には、CAD結果を非表示にして読影を行わなければならないため、ユーザにとって煩雑な作業となり、読影効率を低下させるという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上記の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、医用画像の読影効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の医用画像表示システムは、医用画像と当該医用画像から検出された異常陰影候補の位置を示す検出結果情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、前記医用画像の全体又は一部分を表示する表示手段と、前記医用画像中の前記表示手段に表示される表示対象領域を変更する旨の操作を受け付ける操作手段と、前記記憶手段に記憶されている医用画像及び当該医用画像に対応付けられた検出結果情報に基づいて、前記表示対象領域を変更する旨の操作中は、当該操作に応じて前記表示対象領域を変更させながら前記医用画像を前記表示手段に表示させるとともに、前記医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、前記表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、前記変更された表示対象領域で前記医用画像のみを前記表示手段に表示させる制御手段と、を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医用画像表示システムにおいて、前記表示対象領域の変更は、前記医用画像の拡大又は縮小である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の医用画像表示システムにおいて、前記表示対象領域の変更は、前記表示対象領域の移動である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、コンピュータを、医用画像の全体又は一部分を表示する表示手段、医用画像中の前記表示手段に表示される表示対象領域を変更する旨の操作を受け付ける操作手段、前記医用画像と当該医用画像から検出された異常陰影候補の位置を示す検出結果情報とを対応付けて記憶する記憶手段に記憶されている医用画像及び当該医用画像に対応付けられた検出結果情報に基づいて、前記表示対象領域を変更する旨の操作中は、当該操作に応じて前記表示対象領域を変更させながら前記医用画像を前記表示手段に表示させるとともに、前記医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、前記表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、前記変更された表示対象領域で前記医用画像のみを前記表示手段に表示させる制御手段、として機能させるためのプログラムである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のプログラムにおいて、前記表示対象領域の変更は、前記医用画像の拡大又は縮小である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のプログラムにおいて、前記表示対象領域の変更は、前記表示対象領域の移動である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表示対象領域を変更する旨の操作中は、医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、医用画像のみを表示手段に表示させるので、医用画像の読影効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】医用画像表示システムのシステム構成図である。
【図2】CAD装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】画像サーバ装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】クライアント端末の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態におけるクライアント端末において実行される医用画像表示処理Aを示すフローチャートである。
【図6】(a)は、拡大前の医用画像である。(b)は、拡大処理中の医用画像である。(c)は、拡大後の医用画像である。
【図7】第2の実施の形態におけるクライアント端末において実行される医用画像表示処理Bを示すフローチャートである。
【図8】(a)は、移動前の医用画像である。(b)は、移動処理中の医用画像である。(c)は、移動後の医用画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図6を参照して、本発明に係る医用画像表示システムの第1の実施の形態について説明する。
図1に、第1の実施の形態における医用画像表示システム100のシステム構成を示す。図1に示すように、医用画像表示システム100は、モダリティ10、CAD装置20、画像サーバ装置30及びクライアント端末40が、LAN(Local Area Network)等のネットワークNを介してデータ通信可能に接続されて構成されている。ネットワークNは、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格が適用されている。
【0018】
モダリティ10は、患者を撮影して医用画像の画像データのファイル(以下、画像ファイルという。)D1(図2参照)を生成し、この画像ファイルD1をCAD装置20及び画像サーバ装置30へそれぞれ送信する。モダリティ10としては、CR(Computed Radiography)装置、DX(Digital X-Ray)装置等が用いられる。
【0019】
CAD装置20は、モダリティ10から医用画像の画像ファイルD1を受信し、医用画像の画像解析を行い、異常陰影候補の検出を行う。そして、CAD装置20は、検出された異常陰影候補の位置を示す検出結果情報(以下、CAD結果ファイルという。)D2を生成する。
【0020】
図2に、CAD装置20の機能的構成を示す。図2に示すように、CAD装置20は、制御部21、操作部22、表示部23、通信部24、ROM(Read Only Memory)25、記憶部26を備えて構成され、各部はバス27により接続されている。
【0021】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、CAD装置20の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPUは、操作部22から入力される操作信号又は通信部24により受信される指示信号に応じて、ROM25又は記憶部26に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、RAM内に形成されたワークエリアに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0022】
操作部22は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号を制御部21に出力する。
【0023】
表示部23は、LCD(Liquid Crystal Display)により構成され、制御部21から入力される表示データに基づいて各種画面を表示する。
【0024】
通信部24は、モダリティ10、画像サーバ装置30等の外部機器との間でデータの送受信を行うインターフェースである。
【0025】
ROM25は、不揮発性の半導体メモリ等により構成され、制御プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメータやファイル等を記憶している。
【0026】
記憶部26は、ハードディスク等により構成され、各種データを記憶する。具体的には、記憶部26には、異常陰影の種類に応じた検出アルゴリズムに従って異常陰影候補の検出を行う検出プログラムが記憶されている。また、記憶部26には、画像ファイルD1、CAD結果ファイルD2が記憶される。
【0027】
制御部21は、記憶部26に記憶されている検出プログラムとの協働により、医用画像から異常陰影候補を検出し、CAD結果ファイルD2を生成する。CAD結果ファイルD2に含まれる各異常陰影候補の位置は、医用画像内において各異常陰影候補の領域(輪郭)を示すものであってもよいし、各異常陰影候補の代表点(例えば重心等)を示すものであってもよい。例えば、CAD装置20は、乳房画像から腫瘤、微小石灰化等の異常陰影候補を検出する。
【0028】
異常陰影候補の検出アルゴリズムとしては、公知のものを適用可能である。乳房画像における腫瘤の検出アルゴリズムとしては、例えば、アイリスフィルタ、ラプラシアンフィルタ等を用いた方法が適用可能である。また、微小石灰化の検出アルゴリズムとしては、例えば、モルフォロジーフィルタ、ラプラシアンフィルタ、3重リングフィルタ等を用いた方法が適用可能である。
【0029】
制御部21は、CAD結果ファイルD2を、通信部24を介して画像サーバ装置30に送信する。
【0030】
画像サーバ装置30は、PACS(Picture Archiving and Communication System)により構成され、モダリティ10から受信した画像ファイルD1等を保存し、クライアント端末40等の外部機器からの要求に応じて画像ファイルD1等を提供する。
【0031】
図3に、画像サーバ装置30の機能的構成を示す。図3に示すように、画像サーバ装置30は、制御部31、操作部32、表示部33、通信部34、ROM35、記憶部36を備えて構成され、各部はバス37により接続されている。
【0032】
制御部31は、CPU、RAM等から構成され、画像サーバ装置30の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPUは、操作部32から入力される操作信号又は通信部34により受信される指示信号に応じて、ROM35又は記憶部36に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、RAM内に形成されたワークエリアに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0033】
操作部32は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号を制御部31に出力する。
【0034】
表示部33は、LCDにより構成され、制御部31から入力される表示データに基づいて各種画面を表示する。
【0035】
通信部34は、モダリティ10、CAD装置20、クライアント端末40等の外部機器との間でデータの送受信を行うインターフェースである。
【0036】
ROM35は、不揮発性の半導体メモリ等により構成され、制御プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメータやファイル等を記憶している。
【0037】
記憶部36は、ハードディスク等により構成され、各種データを記憶する。具体的には、記憶部36には、モダリティ10から受信した画像ファイルD1と、CAD装置20から受信したCAD結果ファイルD2と、が対応付けられて記憶される。
【0038】
制御部31は、通信部34を介してモダリティ10から画像ファイルD1を取得する。また、制御部31は、画像ファイルD1を解析して得られたCAD結果ファイルD2を、通信部34を介してCAD装置20から取得する。そして、制御部31は、取得した画像ファイルD1とCAD結果ファイルD2とを対応付けて記憶部36に記憶させる。
【0039】
制御部31は、クライアント端末40から画像ファイルD1の取得要求があった場合に、要求された画像ファイルD1及び当該画像ファイルD1に対応付けられているCAD結果ファイルD2を記憶部36から読み出し、クライアント端末40に送信する。
【0040】
クライアント端末40は、画像サーバ装置30から取得した画像ファイルD1に基づいて医用画像を表示させ、当該医用画像の読影を行うための装置であって、PC(Personal Computer)等から構成される。
【0041】
図4に、クライアント端末40の機能的構成を示す。図4に示すように、クライアント端末40は、制御部41、操作部42、表示部43、通信部44、ROM45、記憶部46、メモリ47を備え、各部はバス48により接続されている。
【0042】
制御部41は、CPU、RAM等から構成され、クライアント端末40の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPUは、操作部42から入力される操作信号又は通信部44により受信される指示信号に応じて、ROM45又は記憶部46に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、RAM内に形成されたワークエリアに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0043】
操作部42は、ユーザによる操作指示を受け付ける機能部である。操作部42は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号を制御部41に出力する。例えば、操作部42は、マウスに設けられた各ボタンのダウン・アップに応じた操作信号や、マウスの移動方向及び移動量に応じた操作信号を制御部41に出力する。
【0044】
表示部43は、LCDにより構成され、制御部41から入力される表示データに基づいて各種画面を表示する。例えば、表示部43は、読影対象となる医用画像の全体又は一部分を表示する。
【0045】
通信部44は、画像サーバ装置30等の外部機器との間でデータの送受信を行うインターフェースである。
【0046】
ROM45は、不揮発性の半導体メモリ等により構成され、制御プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメータやファイル等を記憶している。
【0047】
記憶部46は、ハードディスク等により構成され、各種データを記憶する。例えば、記憶部46には、読影を行う際に医用画像を表示部43に表示させるための画像ビューワプログラム461が記憶されている。
【0048】
メモリ47は、半導体メモリ等により構成され、処理中のデータを記憶する。具体的には、メモリ47には、画像サーバ装置30から取得した画像ファイルD1及びCAD結果ファイルD2等が記憶される。
【0049】
制御部41は、通信部44を介して、画像サーバ装置30に対して、記憶部36に記憶されている医用画像の画像ファイルD1の取得要求を送信し、画像サーバ装置30から医用画像の画像ファイルD1、及び、当該画像ファイルD1と対応付けられているCAD結果ファイルD2を取得する。
【0050】
制御部41は、取得した画像ファイルD1及びCAD結果ファイルD2に基づいて、操作部42において表示対象領域を変更する旨の操作中は、当該操作に応じて表示対象領域を変更させながら医用画像を表示部43に表示させるとともに、医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、操作部42において表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、変更された表示対象領域で医用画像のみを表示部43に表示させる。
【0051】
なお、異常陰影候補の位置にマークを付加する際には、異常陰影候補領域の輪郭(境界線)を図示するようにマークを付加してもよいし(CADアウトライン)、異常陰影候補領域の代表点にマークを付加してもよい。
【0052】
ここで、医用画像中の表示対象領域の変更の一例として、医用画像を拡大又は縮小する際の操作方法について説明する。医用画像が表示部43に表示された状態で、操作画面上においてズームモードが選択されると、医用画像を拡大又は縮小する旨の操作が可能となる。ズームモードとは、医用画像の拡大又は縮小を行うモードである。
【0053】
具体的には、医用画像を拡大する場合には、ユーザは、マウスの左ボタンをダウンした状態でマウスを前(ユーザから遠ざかる向き)に移動させる。一方、医用画像を縮小する場合には、ユーザは、マウスの左ボタンをダウンした状態でマウスを後ろ(ユーザに近付く向き)に移動させる。制御部41は、マウスのダウン操作からアップ操作までの間は、マウスの前後方向の移動量に応じて医用画像の拡大縮小処理を実行する。
【0054】
次に、動作について説明する。
図5は、クライアント端末40において実行される医用画像表示処理Aを示すフローチャートである。この処理は、制御部41のCPUと、記憶部46に記憶されている画像ビューワプログラム461との協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0055】
まず、ユーザの操作部42からの操作により、読影対象となる医用画像の画像ファイルD1が選択され、制御部41の制御に従って、通信部44により、画像サーバ装置30に対して、選択された医用画像の画像ファイルD1の取得要求が送信される。そして、制御部41により、通信部44を介して、画像サーバ装置30から医用画像の画像ファイルD1及び当該画像ファイルD1と対応付けられたCAD結果ファイルD2が取得され、メモリ47上にロードされる。次に、制御部41により、医用画像の画像ファイルD1に基づいて、医用画像が表示部43に表示される。ここで、ユーザによる操作部42からの操作により、ズームモードが選択される。
【0056】
ズームモードの選択後、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの左ボタンのマウスダウンイベントが取得されたか否かが判断される(ステップS1)。マウスの左ボタンのマウスダウンイベントが取得されるまでは、待機状態となる。
【0057】
マウスの左ボタンのマウスダウンイベントが取得されると(ステップS1;YES)、制御部41により、CAD結果ファイルD2に基づいて、表示部43に表示されている医用画像上にCAD結果が表示される(ステップS2)。具体的には、制御部41により、表示部43に表示されている医用画像上の異常陰影候補の位置にマークが付加されて表示される。
【0058】
次に、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの前後方向の移動があったか否かが判断される(ステップS3)。マウスの前後方向の移動があった場合には(ステップS3;YES)、制御部41により、医用画像の拡大縮小処理が実行される(ステップS4)。具体的には、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの前後方向の移動方向及び移動量が取得される。そして、マウスが前(ユーザから遠ざかる向き)に移動された場合には、制御部41により、マウスの移動量に応じて医用画像の拡大率が算出され、マウスが後ろ(ユーザに近付く向きに移動された場合には、制御部41により、マウスの移動量に応じて医用画像の縮小率が算出される。次いで、制御部41により、算出された拡大率又は縮小率に応じて医用画像が拡大又は縮小されて表示部43に表示されるとともに、医用画像上の異常陰影候補の位置に付加されているマークについても同様の拡大率又は縮小率に応じて拡大又は縮小されて表示される。
【0059】
ステップS3においてマウスの前後方向の移動がない場合(ステップS3;NO)、又は、ステップS4の後、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得されたか否かが判断される(ステップS5)。マウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得されない場合には(ステップS5;NO)、ステップS3に戻り、ステップS3〜ステップS5の処理が繰り返される。
【0060】
ステップS5においてマウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得された場合には(ステップS5;YES)、制御部41により、表示部43に表示されている医用画像上のCAD結果(マーク)は非表示とされ、医用画像のみが表示部43に表示される(ステップS6)。
以上で、医用画像表示処理Aが終了する。
【0061】
図6(a)〜(c)に、表示部43に表示される医用画像(乳房画像)の例を示す。図6(a)は拡大前の医用画像であり、図6(b)は拡大処理中の医用画像であり、図6(c)は拡大後の医用画像である。
【0062】
図6(a)に示すように、拡大前には、医用画像上にCAD結果は表示されていない。図6(a)に示す状態で、マウスの左ボタンのダウン操作が行われると、図6(b)に示すように、医用画像上に異常陰影候補の位置を示すマークM1が表示される。
【0063】
マウスの左ボタンが押下されたままマウスが前に移動されると、移動量に応じて医用画像が拡大される。医用画像の拡大に応じて、医用画像上に表示されるマークM1も拡大される。
【0064】
マークM1が表示されている状態で、マウスの左ボタンのアップ操作が行われると、医用画像上のマークM1が非表示となる。図6(a)から図6(b)を経て図6(c)に至るまでの間、すなわち、マウスのダウン操作からアップ操作までは、医用画像上にマークM1が表示されるが、医用画像を拡大する旨の操作終了後は、医用画像のみが表示される。
【0065】
以上説明したように、第1の実施の形態における医用画像表示システム100によれば、クライアント端末40において、表示対象領域を変更する旨の操作中は、医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、医用画像のみを表示部43に表示させるので、医用画像の読影効率を向上させることができる。
【0066】
具体的には、クライアント端末40では、マウスのダウンイベントを拡大縮小処理の開始の合図とし、マウスの前後方向の移動量を用いて拡大縮小処理を行い、マウスのアップイベントを拡大縮小処理の終了の合図としている。このように、マウスにおける操作に応じて医用画像の拡大縮小処理を行うとともに、CAD結果の表示/非表示の制御を行うので、適切なタイミングでCAD結果を表示又は非表示とすることができる。医用画像の拡大縮小処理を行っている間は、CAD結果を表示させて読影医に注意を喚起することができる一方で、医用画像の拡大縮小処理が終了した後は、CAD結果を非表示として、CAD結果の表示が病変部等と重なるのを防ぐことができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態における医用画像表示システムは、第1の実施の形態に示した医用画像表示システム100と同様の構成によってなるため、図1〜図4を援用し、その構成については図示及び説明を省略する。以下、第2の実施の形態に特徴的な構成及び処理について説明する。
【0068】
クライアント端末40において行われる、医用画像中の表示部43に表示される表示対象領域の変更の一例として、表示対象領域を移動する際の操作方法について説明する。表示対象領域の移動とは、医用画像の面内において表示対象領域を移動させることをいう。医用画像が表示部43に表示された状態で、操作画面上においてパンモードが選択されると、医用画像中の表示対象領域を移動する旨の操作が可能となる。パンモードとは、医用画像中の表示対象領域の移動を行うモードである。
【0069】
具体的には、医用画像を移動させる場合には、ユーザは、マウスの左ボタンをダウンした状態でマウスを前後左右に移動させる。制御部41は、マウスのダウン操作からアップ操作までの間は、マウスの移動方向及び移動量に応じて医用画像中の表示対象領域の移動処理を実行する。例えば、ユーザがマウスの左ボタンをダウンした状態でマウスを右に移動させた場合には、医用画像中の表示対象領域は右に移動する。また、ユーザがマウスの左ボタンをダウンした状態でマウスを前(ユーザから遠ざかる向き)に移動させた場合には、医用画像中の表示対象領域は上に移動する。
【0070】
次に、動作について説明する。
図7は、クライアント端末40において実行される医用画像表示処理Bを示すフローチャートである。この処理は、制御部41のCPUと、記憶部46に記憶されている画像ビューワプログラム461との協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0071】
まず、ユーザの操作部42からの操作により、読影対象となる医用画像の画像ファイルD1が選択され、制御部41の制御に従って、通信部44により、画像サーバ装置30に対して、選択された医用画像の画像ファイルD1の取得要求が送信される。そして、制御部41により、通信部44を介して、画像サーバ装置30から医用画像の画像ファイルD1及び当該画像ファイルD1と対応付けられたCAD結果ファイルD2が取得され、メモリ47上にロードされる。次に、制御部41により、医用画像の画像ファイルD1に基づいて、医用画像が表示部43に表示される。ここで、ユーザによる操作部42からの操作により、パンモードが選択される。
【0072】
パンモードの選択後、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの左ボタンのマウスダウンイベントが取得されたか否かが判断される(ステップS11)。マウスの左ボタンのマウスダウンイベントが取得されるまでは、待機状態となる。
【0073】
マウスの左ボタンのマウスダウンイベントが取得されると(ステップS11;YES)、制御部41により、CAD結果ファイルD2に基づいて、表示部43に表示されている医用画像上にCAD結果が表示される(ステップS12)。具体的には、制御部41により、表示部43に表示されている医用画像上の異常陰影候補の位置にマークが付加されて表示される。
【0074】
次に、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの移動があったか否かが判断される(ステップS13)。マウスの移動があった場合には(ステップS13;YES)、制御部41により、医用画像中の表示対象領域の移動処理が実行される(ステップS14)。具体的には、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの移動方向及び移動量が取得される。そして、制御部41により、マウスの移動方向及び移動量に応じて移動後の表示対象領域が算出される。次いで、制御部41により、算出された表示対象領域が表示部43に表示されるとともに、医用画像上の異常陰影候補の位置に付加されているマークについても同様に移動されて表示される。
【0075】
ステップS13においてマウスの移動がない場合(ステップS13;NO)、又は、ステップS14の後、制御部41により、操作部42から出力される操作信号に基づいて、マウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得されたか否かが判断される(ステップS15)。マウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得されない場合には(ステップS15;NO)、ステップS13に戻り、ステップS13〜ステップS15の処理が繰り返される。
【0076】
ステップS15においてマウスの左ボタンのマウスアップイベントが取得された場合には(ステップS15;YES)、制御部41により、表示部43に表示されている医用画像上のCAD結果(マーク)は非表示とされ、医用画像のみが表示部43に表示される(ステップS16)。
以上で、医用画像表示処理Bが終了する。
【0077】
図8(a)〜(c)に、表示部43に表示される医用画像(乳房画像)の例を示す。図8(a)は移動前の医用画像であり、図8(b)は移動処理中の医用画像であり、図8(c)は移動後の医用画像である。
【0078】
図8(a)に示すように、移動前には、医用画像上にCAD結果は表示されていない。図8(a)に示す状態で、マウスの左ボタンのダウン操作が行われると、図8(b)に示すように、医用画像上に異常陰影候補の位置を示すマークM2が表示される。
【0079】
マウスの左ボタンが押下されたままマウスがいずれかの方向に移動されると、移動方向及び移動量に応じて表示対象領域が移動される。表示対象領域の移動に応じて、医用画像上に表示されるマークM2も移動される。
【0080】
マークM2が表示されている状態で、マウスの左ボタンのアップ操作が行われると、医用画像上のマークM2が非表示となる。図8(a)から図8(b)を経て図8(c)に至るまでの間、すなわち、マウスのダウン操作からアップ操作までは、医用画像上にマークM2が表示されるが、表示対象領域を移動する旨の操作終了後は、医用画像のみが表示される。
【0081】
以上説明したように、第2の実施の形態における医用画像表示システムによれば、クライアント端末40において、表示対象領域を変更する旨の操作中は、医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、医用画像のみを表示部43に表示させるので、医用画像の読影効率を向上させることができる。
【0082】
具体的には、クライアント端末40では、マウスのダウンイベントを移動処理の開始の合図とし、マウスの移動方向及び移動量を用いて移動処理を行い、マウスのアップイベントを移動処理の終了の合図としている。このように、マウスにおける操作に応じて表示対象領域の移動処理を行うとともに、CAD結果の表示/非表示の制御を行うので、適切なタイミングでCAD結果を表示又は非表示とすることができる。表示対象領域の移動処理を行っている間は、CAD結果を表示させて読影医に注意を喚起することができる一方で、表示対象領域の移動処理が終了した後は、CAD結果を非表示として、CAD結果の表示が病変部等と重なるのを防ぐことができる。
【0083】
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る医用画像表示システムの例であり、これに限定されるものではない。システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0084】
例えば、上記各実施の形態では、医用画像表示システム100が独立した装置としてCAD装置20を備える構成としたが、画像サーバ装置30の内部にCAD装置20を包含する形を取ってもよい。
【0085】
また、上記各実施の形態では、マウスの左ボタンのダウン・アップ操作により、表示対象領域を変更する操作の開始・終了を指示することとしたが、これに限定するものではない。操作画面上に表示されている所定のボタンの選択や、キーボードから所定のキー入力を行うことにより、表示対象領域を変更する操作の開始・終了を指示することとしてもよい。
【0086】
以上の説明では、各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体としてROMやハードディスク等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)を適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 モダリティ
20 CAD装置
21 制御部
22 操作部
23 表示部
24 通信部
25 ROM
26 記憶部
27 バス
30 画像サーバ装置
31 制御部
32 操作部
33 表示部
34 通信部
35 ROM
36 記憶部
37 バス
40 クライアント端末
41 制御部
42 操作部
43 表示部
44 通信部
45 ROM
46 記憶部
47 メモリ
48 バス
100 医用画像表示システム
461 画像ビューワプログラム
D1 画像ファイル
D2 CAD結果ファイル
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像と当該医用画像から検出された異常陰影候補の位置を示す検出結果情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記医用画像の全体又は一部分を表示する表示手段と、
前記医用画像中の前記表示手段に表示される表示対象領域を変更する旨の操作を受け付ける操作手段と、
前記記憶手段に記憶されている医用画像及び当該医用画像に対応付けられた検出結果情報に基づいて、前記表示対象領域を変更する旨の操作中は、当該操作に応じて前記表示対象領域を変更させながら前記医用画像を前記表示手段に表示させるとともに、前記医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、前記表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、前記変更された表示対象領域で前記医用画像のみを前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備える医用画像表示システム。
【請求項2】
前記表示対象領域の変更は、前記医用画像の拡大又は縮小である、
請求項1に記載の医用画像表示システム。
【請求項3】
前記表示対象領域の変更は、前記表示対象領域の移動である、
請求項1に記載の医用画像表示システム。
【請求項4】
コンピュータを、
医用画像の全体又は一部分を表示する表示手段、
医用画像中の前記表示手段に表示される表示対象領域を変更する旨の操作を受け付ける操作手段、
前記医用画像と当該医用画像から検出された異常陰影候補の位置を示す検出結果情報とを対応付けて記憶する記憶手段に記憶されている医用画像及び当該医用画像に対応付けられた検出結果情報に基づいて、前記表示対象領域を変更する旨の操作中は、当該操作に応じて前記表示対象領域を変更させながら前記医用画像を前記表示手段に表示させるとともに、前記医用画像上の異常陰影候補の位置にマークを付加して表示させ、前記表示対象領域を変更する旨の操作終了後は、前記変更された表示対象領域で前記医用画像のみを前記表示手段に表示させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項5】
前記表示対象領域の変更は、前記医用画像の拡大又は縮小である、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記表示対象領域の変更は、前記表示対象領域の移動である、
請求項4に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−110174(P2011−110174A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268281(P2009−268281)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】