説明

医用画像解析装置及び画像解析用制御プログラム

【課題】 異なる医用画像診断装置から収集された画像データに基づいて生体組織の運動機能を効率よく評価する。
【解決手段】 別途設置された医用画像診断装置から供給される被検体の時系列的な画像データに対し共通解析アルゴリズムを適用することにより、関心点設定部22は、前記画像データの中から抽出された基準画像データの心筋組織に対して複数の関心点を設定し、トラッキング処理部23は、前記基準画像データと後続する画像データとのトラッキング処理によって得られた前記関心点における心筋組織の変位情報に基づいて運動パラメータを計測する。一方、パラメータデータ生成部3は、これらの計測結果に基づいて運動パラメータの2次元分布を示すパラメータ画像データや運動パラメータの時間的変化を示すパラメータ時系列データをパラメータデータとして生成し表示部4に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像解析装置及び画像解析用制御プログラムに係り、特に、被検体から収集された時系列的な画像データを解析することによって得られる生体組織の運動パラメータに基づいてパラメータ画像データ等の生成を行なう医用画像解析装置及び画像解析用制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断は、近年のコンピュータ技術の発展に伴って実用化されたX線CT装置、MRI装置、超音波診断装置等によって急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。特に、X線CT装置やMRI装置では、生体情報の検出装置や演算処理装置の高速化及び高性能化に伴なって画像データのリアルタイム表示が可能となり、又、超音波診断装置によれば、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作でリアルタイムの2次元画像データが容易に観察できるため、生体臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
特に、近年の超音波診断分野では、時系列的に収集されたBモード画像データ等の超音波画像データを解析することによって得られる心筋組織の変位情報に基づいて、例えば、「歪み(ストレイン)」の2次元観測を可能とするストレインイメージング法が新たに開発されている。
【0004】
心臓の機能診断を目的としたストレインイメージング法では、先ず、被検体に対する超音波走査により得られた受信信号に基づいてBモード画像データを時系列的に収集し、次いで、時間方向に隣接した超音波画像データに対しパターンマッチングによるトラッキング処理を適用して心筋組織の各部における「変位」を計測する。そして、単位長さ当たりの変位量として定義される「歪み」の2次元分布を算出することによりストレイン画像データの生成を行なっている。
【0005】
又、カラードプラ法を応用して心筋組織の移動速度を2次元的に表示するTDI(Tissue Doppler Imaging)法により得られた前記移動速度の空間的な勾配から「歪速度」の2次元分布を計測し、この「歪速度」を時間積分することによってストレイン画像データを生成する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−130877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、時系列的な画像データを短時間で収集することが可能となったX線CT装置やMRI装置を用いたストレインイメージング法も検討されており、特に、これらの装置を用いたストレインイメージング法によれば、超音波診断装置では超音波の伝搬を阻害する肋骨や肺等のために困難であった断面においてはストレイン画像データの生成も容易に行なうことができる。
【0008】
即ち、診断目的や診断部位に応じストレインイメージング法に用いる医用画像診断装置を選択することによって診断に有効なストレイン画像データの生成が可能となり、又、異なる複数の医用画像診断装置による画像データに基づいて生成した各種のストレイン画像データを比較観察することにより高い診断精度を得ることができる。
【0009】
しかしながら、上述のように異なる複数の医用画像診断装置にて収集された画像データを解析してストレイン画像データを生成する場合、従来の解析装置や解析アルゴリズムは医用画像診断装置によって異なっていたため、ストレイン画像データの生成を効率よく行なうことは困難であり、又、生成された各種ストレイン画像データを精度よく比較観察することができなかった。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる医用画像診断装置の各々にて生成された生体組織の時系列的な画像データに共通の解析アルゴリズムを適用して「歪み」等の運動パラメータを計測することにより、生体組織の運動機能を効率よく評価することが可能な医用画像解析装置及び画像解析用制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の医用画像解析装置は、異なる医用画像診断装置の各々にて生成された時系列的な画像データを収集する画像データ収集手段と、前記時系列的な画像データを処理して生体組織の運動パラメータを計測する運動パラメータ計測手段と、前記運動パラメータに基づいてパラメータデータを生成するパラメータデータ生成手段と、前記パラメータデータを表示する表示手段とを備え、前記運動パラメータ計測手段は、前記医用画像診断装置の各々から収集された前記画像データを共通の解析アルゴリズムを用いて解析することにより前記運動パラメータを計測することを特徴としている。
【0012】
一方、請求項12に係る本発明の画像解析用制御プログラムは、医用画像解析装置に、異なる医用画像診断装置の各々にて生成された時系列的な画像データを収集する機能と、前記時系列的な画像データを処理して生体組織の運動パラメータを計測する機能と、前記運動パラメータに基づいてパラメータデータを生成する機能と、前記パラメータデータを表示する機能とを実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる医用画像診断装置の各々にて生成された生体組織の時系列的な画像データに予め設定された共通の解析アルゴリズムを適用して所望の運動パラメータを計測することにより、生体組織の運動機能を効率よく評価することができる。このため、診断効率と診断精度が向上し、操作者に対する負担が軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例における医用画像解析装置の機能ブロック図。
【図2】同実施例において医用画像診断装置から収集される1心拍周期の時系列的な画像データを説明するための図。
【図3】同実施例の運動パラメータ計測部にて行なわれるトラッキング処理の具体例を説明するための図。
【図4】同実施例のパラメータデータ生成部が生成するパラメータ画像データの具体例を示す図。
【図5】同実施例のパラメータデータ生成部が生成するパラメータ時系列データの具体例を示す図。
【図6】同実施例の表示部に表示される表示データの具体例を示す図。
【図7】同実施例におけるパラメータデータの生成/表示手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0016】
以下に述べる本発明の実施例における医用画像解析装置は、別途設置された医用画像診断装置からネットワーク等を介して供給される当該被検体の所定心拍周期における時系列的な画像データを収集する。次いで、予め設定された共通解析アルゴリズム(即ち、異なる複数の医用画像診断装置によって得られる画像データの各々に対して適用可能な解析アルゴリズム)に基づき、先ず、時系列的な複数の画像データの中から抽出された基準画像データの心筋組織に対し複数の関心点を所定間隔で設定し、次いで、前記基準画像データとこの基準画像データに後続する画像データとのトラッキング処理によって得られた前記関心点における心筋組織の変位量や変位方向等に基づいて「歪み」等の運動パラメータを計測する。そして、これらの計測結果に基づいて運動パラメータの2次元分布を示すパラメータ画像データや運動パラメータの時間的変化を示すパラメータ時系列データをパラメータデータとして生成し表示部に表示する。
【0017】
尚、本実施例では、心筋組織の「歪み(ストレイン)」を運動パラメータとして計測する場合について述べるが、これに限定されるものではなく、例えば、心筋組織の「変位」、「回転」、「捻れ(torsion)」、「速度」等を運動パラメータとして計測してもよい。又、これらの時間的変化を示す「歪みレート」、「回転レート」、「捻れレート」、「加速度」等を運動パラメータとしてもよく、心筋組織以外の生体組織における上述の運動パラメータであっても構わない。
【0018】
更に、本実施例では、医用画像診断装置から予め供給された所定心拍周期の時系列的な画像データの各々に対してパラメータ画像データを生成し、得られた所定心拍周期のパラメータ画像データを前記画像データに重畳して繰り返し表示(ループ表示)する場合について述べるが、運動パラメータの計測における処理速度が画像データの収集速度より速い場合には、医用画像診断装置から順次供給される画像データの各々に対してパラメータ画像データを生成し、得られたパラメータ画像データを前記画像データに重畳してリアルタイム表示してもよい。
【0019】
(装置の構成)
本発明の第1の実施例における医用画像解析装置の構成と基本動作につき図1乃至図6を用いて説明する。尚、図1は、医用画像解析装置の機能ブロック図である。
【0020】
図1に示す医用画像解析装置100は、ネットワーク10を介して各種の医用画像診断装置や画像データサーバ等から供給された所定心拍周期における心臓の時系列的な画像データを収集する画像データ収集部1と、この時系列的な画像データに基づいて当該被検体における心筋組織の運動パラメータを計測する運動パラメータ計測部2と、計測された運動パラメータに基づいて各種のパラメータデータを生成するパラメータデータ生成部3と、得られたパラメータデータを表示する表示部4と、画像データが収集された医用画像診断装置(モダリティ)の選択、運動パラメータの選択、後述の基準画像データに対する心内膜及び心外膜の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部5と、医用画像解析装置100が備える上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部6を備えている。
【0021】
画像データ収集部1は、図示しない記憶回路を備え、別途設置された超音波診断装置、X線CT装置、MRI装置等の医用画像診断装置や画像データサーバ等からネットワーク10を介して供給された所定心拍周期における心臓の時系列的な画像データが、心拍時相情報を付帯情報として前記記憶回路に一旦保存される。この場合、心電波形のR波が検出された時刻に生成された画像データには、R波タイミング情報が付加されて前記記憶回路に保存される。
【0022】
運動パラメータ計測部2は、基準画像データ抽出部21、関心点設定部22、トラッキング処理部23及びトラッキング条件保管部24を備えている。基準画像データ抽出部21は、画像データ収集部1の記憶回路に保存された時系列的な画像データを読み出し、これらの画像データの中から、例えば、R波タイミング情報が付加されている画像データを基準画像データとして抽出し表示部4に表示する。
【0023】
関心点設定部22は、表示部4において表示された上述の基準画像データに対して入力部5が設定する心内膜及び心外膜によって囲まれた心筋組織に対し複数の関心点を所定間隔で設定する。
【0024】
トラッキング処理部23は、基準画像データの心筋組織に対して所定間隔で設定された関心点の各々を中心とする所定サイズのテンプレートを形成する。そして、このテンプレートに含まれた複数の画素と前記基準画像データに後続する画像データの画素とのパターンマッチング(テンプレートマッチング)によってトラッキング処理し、前記関心点が設定された心筋組織の局所的な変位量及び変位方向を計測する。
【0025】
例えば、トラッキング処理部23は、図2に示すように画像データ収集部1の記憶回路に保存された1心拍周期T0の時系列的な画像データA1乃至AMの中から心電波形EcのR波タイミング情報を有する時刻T1の基準画像データA1を抽出し、この基準画像データA1に形成されたテンプレートと基準画像データA1に後続する時刻T2(T2=T1+δT)の画像データA2とのパターンマッチングを行なって基準画像データA1の関心点を中心とする局所的な心筋組織の画像データA2における変位量及び変位方向を計測し、更に、この変位量と変位方向に基づいて心筋組織の「歪み」を運動パラメータとして計測する。
【0026】
具体的には、基準画像データA1の心筋組織に対して所定間隔で設定された関心点の各々を中心とする2次元のテンプレートを基準画像データA1に対して形成し、このテンプレートを基準画像データA1に後続する画像データA2に対して相対的に移動させながら前記テンプレートに含まれる複数の画素と画像データA2の画素との相互相関演算を行なう。そして、最大の相関値が得られるテンプレートの画像データA2に対する相対的な移動方向及び移動距離を検出することによって関心点を中心とする心筋組織の局所的な変位量及び変位方向を計測し、更に、単位長さ当たりの変位量を「歪み」として計測する。
【0027】
基準画像データA1におけるテンプレートと画像データA2とのパターンマッチングにより上述の関心点が設定された心筋組織の局所的な「歪み」が計測されたならば、同様の手順により画像データA2と画像データA3、画像データA3と画像データA4・・・のように隣接する2つの画像データを用いたパターンマッチングにより時刻T3(T3=T1+2δT)、時刻T4(T4=T1+3δT)・・・の各々における心筋組織の局所的な「歪み」を順次計測する。
【0028】
尚、先行する画像データと後続する画像データ(例えば、画像データA2と画像データA3)を用いたパターンマッチングにより心筋組織の「歪み」を計測する場合、画像データA2のテンプレートは、関心点設定部22が画像データA1に対して設定した関心点の位置情報に基づいて形成してもよいが、画像データA1のテンプレートと画像データA2とのパターンマッチングによって計測された局所的な心筋組織の移動情報に基づいて形成してもよい。
【0029】
次に、相互相関演算による画像データのトラッキング処理につき図3を用いて更に詳しく説明する。図3(a)に示した関心点Cgは、画像データA1の心筋組織に対して所定間隔で設定された複数からなる関心点の1つであり、この関心点Cgを中心として所定サイズ(即ち、所定画素数No(No=Px・Qy))を有するテンプレートTgの画素値をf1(px、qy)、画像データA2の画素値をf2(px、qy)とすれば、相互相関係数γ12(k、s)を次式(1)によって算出することにより関心点Cgが設定された心筋組織の時間δT後における変位量と変位方向を計測することができる。
【数1】

【0030】
但し、Px及びQyはテンプレートTgのpx方向及びqy方向における画素数であり、画像データA1の心筋組織に設定された関心点Cgは、通常、テンプレートTgの略中央に位置する。この相互相関演算の結果、k=k1(図3(b)参照)及びs=s1(図示せず)においてγ12(k、s)が最大値を有する場合、画像データA1の関心点Cgで示された局所的な心筋組織は、画像データA2においてpx方向にk1画素、qy方向にs1画素だけ変位したことを示す。
【0031】
このようなトラッキング処理を画像データA1の心筋組織に設定された全ての関心点に対して行ない、これら関心点が設定された画像データA1の心筋組織におけるδT後の局所的な変位量と変位方向を計測する。次いで、2次元的に計測された変位量及び変位方向に基づき単位長さ当たりの変位量で定義される「歪み(ストレイン)」を運動パラメータとして計測する。
【0032】
更に、同様の手順により、画像データA2に後続する画像データA3乃至AMの各々に対しても同様のトラッキング処理を行ない、これらの画像データの心筋組織における局所的な「歪み」を計測する。
【0033】
図1へ戻って、運動パラメータ計測部2のトラッキング条件保管部24には、関心点設定部22が基準画像データA1の心筋組織に対して設定する関心点の間隔やトラッキング処理部23が画像データ間のパターンマッチングに使用するテンプレートサイズ等のトラッキング条件がモダリティ単位で保存されている。
【0034】
次に、パラメータデータ生成部3は、画像データ生成部31と時系列データ生成部32を備えている。
【0035】
画像データ生成部31は、複数の関心点が設定された画像データの心筋組織に対して運動パラメータ計測部2のトラッキング処理部23が計測した運動パラメータを関心点の位置情報に対応させて配列することによりパラメータ画像データを生成する。そして、上述の方法により、画像データ収集部1から供給される所定心拍周期の時系列的な画像データの各々に対応したパラメータ画像データを順次生成し、前記画像データに付加されている心拍時相情報を付帯情報として表示部4へ供給する。
【0036】
図4は、画像データ生成部31において生成されるパラメータ画像データの具体例であり、被検体の左心房LA及び左心室LVを含む断面の画像データが医用画像診断装置によって生成された場合に得られるパラメータ画像データを示している。尚、基準画像データの関心点における心筋組織をトラッキング処理することにより計測した前記関心点の運動パラメータをそのまま用いてパラメータ画像データを生成してもよいが、図4に示すように、心筋組織に沿って予め設定された計測領域R1乃至R11の各々に含まれる複数の関心点にて計測された運動パラメータの平均値(平均運動パラメータ)を用いることにより、診断に有効なパラメータ画像データを生成することができる。
【0037】
即ち、図4では、例えば、左心房LAの心筋組織に対し計測領域R1乃至R4、左心室LVの心筋組織に対し計測領域R7乃至R11、更に、左心房LAと左心室LVの境界領域に対し計測領域R5及びR6が設定され、各々の計測領域に含まれた複数の関心点にて計測される運動パラメータの平均値に基づいて前記計測領域の輝度や色調等が設定される。
【0038】
一方、図1に示したパラメータデータ生成部3の時系列データ生成部32は、画像データ収集部1から供給される所定心拍周期の時系列的な画像データにおける心筋組織に対してトラッキング処理部23が計測した所望部位の局所的な運動パラメータあるいは所望計測領域の平均運動パラメータを時間軸方向に配列することにより運動パラメータあるいは平均運動パラメータの時間的変化を示すパラメータ時系列データを生成し、得られた所定心拍周期分のパラメータ時系列データを表示部4へ供給する。
【0039】
図5は、時系列データ生成部32によって生成されるパラメータ時系列データの具体例であり、図4に示したパラメータ画像データと共に生成されるこのパラメータ時系列データでは、例えば、予め設定された左心房LAの計測領域R1及びR2において計測された平均運動パラメータの時間的変化TR1及びTR2と左心室LVの計測領域R7及びR8において計測された平均運動パラメータの時間的変化TR7及びTR8が2心拍周期において示されている。
【0040】
再び図1へ戻って、表示部4は、表示データ生成部41とモニタ42を備え、表示データ生成部41は、画像データ収集部1から供給される画像データやパラメータデータ生成部3から供給されるパラメータ時系列データ及びパラメータ画像データを重畳あるいは合成した後所定の表示フォーマットに変換して表示データを生成しモニタ42に表示する。この場合、パラメータ画像データは、上述の運動パラメータあるいは平均運動パラメータの値に対応した輝度あるいは色調によって表示される。
【0041】
即ち、表示データ生成部41は、パラメータデータ生成部3の画像データ生成部31から供給される時系列的なパラメータ画像データ及び時系列データ生成部32から供給されるパラメータ時系列データを受信し、パラメータ画像データの各々に付加されている心拍時相情報と同一の心拍時相情報を有する画像データを画像データ収集部1の記憶回路から読み出す。そして、この画像データに重畳したパラメータ画像データと上述のパラメータ時系列データを合成する。
【0042】
表示部4のモニタ42に表示された表示データの具体例を図6に示す。この表示データは、例えば、画像データ表示領域DA1と時系列データ表示領域DA2とを有し、画像データ表示領域DA1には、同一心拍時相の画像データB1に重畳されたパラメータ画像データB2が、又、時系列データ表示領域DA2には、所定心拍周期分の時系列的な画像データに基づいて生成されたパラメータ時系列データB3と前記画像データに付加された心拍時相情報に基づく心電波形B4が夫々表示される。この場合、画像データ表示領域DA1に配置される画像データB1及びパラメータ画像データB2の心拍時相を示すムービングバーMBがパラメータ時系列データB3に対して設定される。
【0043】
例えば、当該被検体から収集された1心拍周期分の画像データが画像データ収集部1から繰り返して供給される場合、画像データ表示領域DA1には、これらの画像データに基づいて生成されたパラメータ時系列データB2が前記画像データと共に動画像として繰り返し表示(ループ表示)される。このとき、画像データ表示領域DA1に表示された画像データB1及びパラメータ画像データB2の心拍時相を示すムービングバーMBは、時系列データ表示領域DA2におけるパラメータ時系列データB3の時間軸に沿って矢印の方向に移動する。
【0044】
次に、図1に示した入力部5は、操作パネル上にキーボード、トラックボール、マウス、選択ボタン、入力ボタン等の入力デバイスや表示パネルを備え、所望の画像データを生成した医用画像診断装置(モダリティ)を選択するモダリティ選択部51、運動パラメータを選択する運動パラメータ選択部52、基準画像データに対し心内膜及び心外膜を設定する内外膜設定部53等を有している。又、被検体情報の入力、画像データ収集条件の設定、パラメータデータ生成条件の設定、パラメータデータ表示条件の設定、更には、各種コマンド信号の入力等も上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。
【0045】
尚、モダリティとして、超音波診断装置、X線CT装置、MRI装置、X線診断装置、内視鏡装置等があり、運動パラメータとして、上述した「歪み」の他に、「変位」、「回転」、「捻れ(torsion)」、「速度」、「歪みレート」、「回転レート」、「捻れレート」、「加速度」等がある。
【0046】
次に、システム制御部6は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部5において入力/設定/選択された情報は前記記憶回路に保存される。そして、前記CPUは、入力部5から入力された上述の情報や自己の記憶回路に予め保管されていた情報に基づいて医用画像解析装置100の各ユニットを統括的に制御し、パラメータ画像データ及びパラメータ時系列データの生成と表示を行なう。
【0047】
(パラメータデータの生成/表示手順)
次に、本実施例におけるパラメータ画像データ及びパラメータ時系列データの生成/表示の手順につき図7のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
パラメータデータの生成に先立ち、医用画像解析装置100の操作者は、入力部5にて被検体情報を入力した後、画像データを収集するモダリティとして、例えば、「X線CT装置」を選択し、運動パラメータとして心筋組織の「歪み」を選択する。更に、画像データ収集条件の設定、パラメータデータ生成条件の設定、パラメータデータや画像データの表示条件の設定等も入力部5において設定する。そして、上述の初期設定が終了したならば、画像データの収集コマンドを入力部5にて入力する(図7のステップS1)。
【0049】
入力部5よりシステム制御部6を介して上述の被検体情報、モダリティ選択情報及び画像データ収集条件情報と画像データ収集開始コマンドを受信した画像データ収集部1は、ネットワーク10を介して接続されているX線CT装置やPACS等に対し上述の情報に基づく指示信号を送信する。そして、この指示信号に従ってX線CT装置やPACS等から供給された当該被検体の所定心拍周期における時系列的な画像データ(CT画像データ)をその付帯情報である心拍時相情報と共に自己の記憶回路に一旦保存する(図7のステップS2)。
【0050】
画像データの収集と保存を確認した操作者は、入力部5においてパラメータデータの生成開始コマンドを入力し、システム制御部6を介してこのコマンド信号を受信した運動パラメータ計測部2の基準画像データ抽出部21は、画像データ収集部1の記憶回路に保存されている時系列的な画像データの中からR波タイミング情報を有した画像データを基準画像データとして抽出し表示部4のモニタ42に表示する。
【0051】
表示部4に表示された基準画像データを観測した操作者は、入力部5の内外膜設定部53を用いて基準画像データの心筋組織に対し心内膜及び心外膜を設定する。次いで、運動パラメータ計測部2の関心点設定部22は、トラッキング条件保管部24に予め保管されたX線CT装置のトラッキング条件を読み出し、このトラッキング条件に基づき、上述の心内膜及び心外膜によって囲まれている基準画像データの心筋組織に対し複数の関心点を所定間隔で設定する(図7のステップS3)。なお、この設定は、マニュアル操作によって行うようにしてもよい。
【0052】
一方、トラッキング処理部23は、画像データ収集部1の記憶回路に保存された所定心拍周期の時系列的な画像データとトラッキング条件保管部24に予め保管されたX線CT装置のトラッキング条件を読み出す。そして、これらの画像データに含まれている基準画像データに対し前記関心点を中心とする所定サイズのテンプレートを前記トラッキング条件に基づいて設定する。次いで、このテンプレートに含まれた複数の画素と前記基準画像データに後続する画像データの画素とのパターンマッチングを行なって心筋組織の局所的な「変位」を計測し、更に、単位長さ当たりの変位量で定義される「歪み」を運動パラメータとして計測する(図7のステップS4)。
【0053】
次に、パラメータデータ生成部3の画像データ生成部31は、時系列的な画像データの各々に対して運動パラメータ計測部2のトラッキング処理部23が計測した運動パラメータを関心点の位置情報に対応させて配列することにより2次元のパラメータ画像データを生成し、時系列データ生成部32は、前記画像データの心筋組織に対してトラッキング処理部23が計測した所望部位の局所的な運動パラメータあるいはこの運動パラメータに基づく所望領域の平均運動パラメータを時間軸方向に順次配列することにより、運動パラメータあるいは平均運動パラメータの時間的変化を示すパラメータ時系列データを生成する(図7のステップS5)。
【0054】
そして、所定心拍周期の画像データに対して生成したパラメータ画像データ及びパラメータ時系列データを表示部4へ供給する。このとき、パラメータ画像データの各々は、これらのパラメータ画像データに対応した画像データに付加されている心拍時相情報を付帯情報として表示部4へ供給される。
【0055】
次に、表示部4の表示データ生成部41は、パラメータデータ生成部3の画像データ生成部31から供給される時系列的なパラメータ画像データ及び時系列データ生成部32から供給されるパラメータ時系列データを受信し、パラメータ画像データに付加されている心拍時相情報と同一の心拍時相情報を有する画像データを画像データ収集部1の記憶回路から読み出す。そして、この画像データに重畳したパラメータ画像データにパラメータ時系列データを付加して表示データを生成しモニタ42に表示する(図6参照)(図7のステップS6)。
【0056】
上述の手順によって画像データ収集部1の記憶回路に保存された所定心拍周期の画像データに対するパラメータデータの生成と表示が終了したならば、運動パラメータ計測部2は、システム制御部6から供給される制御信号に基づいて上述の所定心拍周期分の時系列的な画像データを繰り返し読み出して運動パラメータを計測し、パラメータデータ生成部3は、運動パラメータ計測部2によって計測された運動パラメータに基づきパラメータ画像データ及びパラメータ時系列データを生成して表示部4に表示する。即ち、表示部4には、所定心拍周期の画像データに対応したパラメータ画像データ及びパラメータ時系列データが繰り返し表示(ループ表示)される(図7のステップS4乃至S6)。
【0057】
以上述べた本発明の実施例によれば、異なる医用画像診断装置の各々にて生成された生体組織の時系列的な画像データに予め設定された共通の解析アルゴリズムを適用して所望の運動パラメータを計測することにより、生体組織の運動機能を効率よく評価することができる。このため、診断効率と診断精度が向上し、操作者に対する負担が軽減する。
【0058】
特に、CT画像データに基づいてパラメータデータを生成する場合、超音波画像データでは超音波の伝搬を阻害する肋骨や肺等のために困難であった心臓の断面におけるパラメータデータを容易に生成することができる。
【0059】
又、上述の実施例によれば、心筋組織に沿って設定された計測領域の関心点にて計測された複数からなる運動パラメータの平均値(平均運動パラメータ)を用いることによりノイズ等に起因する変動が抑えられ、診断に有効なパラメータ画像データを生成することができる。更に、パラメータ画像データを画像データに重畳して表示することにより、心臓の全領域に対するパラメータデータの生成領域を明確にすることができる。
【0060】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施例では、異なる医用画像診断装置にて生成された画像データを、共通の解析アルゴリズムが適用された共通の医用画像解析装置100を用いて解析することにより各種のパラメータデータを生成する場合について述べたが、前記医用画像診断装置に対応した専用の医用画像解析装置に共通の解析アルゴリズムを適用させてパラメータデータを生成してもよい。
【0061】
又、上述の実施例では、画像データ収集部1の記憶回路から繰り返し供給される所定心拍周期の画像データに基づいて生成された時系列的なパラメータ画像データを表示部4にループ表示する場合について述べたが、前記所定心拍周期の画像データに基づいて生成されたパラメータデータを保存するパラメータデータ記憶部を新たに備え、このパラメータデータ記憶部に保存されたパラメータ画像データを繰り返し読み出してループ表示してもよい。
【0062】
更に、運動パラメータの計測における処理速度が画像データの収集速度より速い場合には、医用画像診断装置から順次供給される画像データに対してパラメータデータを生成し、得られたパラメータデータをリアルタイム表示してもよい。この場合、図1の画像データ収集部1が備えた記憶回路や上述のパラメータデータ記憶部は必ずしも必要としない。
【0063】
一方、上述の実施例では、運動パラメータ計測部2のトラッキング条件保管部24に保管されたトラッキング条件に基づいて時系列的な画像データをトラッキング処理する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、当該画像データのトラッキング処理に好適なトラッキング条件を入力部5において直接設定してもよい。
【0064】
又、医用画像診断装置から供給される2次元の画像データに基づいて2次元のパラメータ画像データを生成する場合について述べたが、3次元の画像データに基づいて2次元あるいは3次元のパラメータ画像データを生成してもよく、又、3次元トラッキングを行うようにしてもよい。さらに、R波タイミング情報が付加された画像データを基準画像データとして関心点を設定する場合について述べたが、任意の心拍時相にて得られた画像データを基準画像データとしてもよい。
【0065】
更に、上述の実施例では、心筋組織の「歪み(ストレイン)」を運動パラメータとして計測する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、心筋組織の「変位」、「回転」、「捻れ(torsion)」、「速度」等を運動パラメータとして計測してもよい。又、これらの時間的変化を示す「歪みレート」、「回転レート」、「捻れレート」、「加速度」等を運動パラメータとしてもよく、心筋組織以外の生体組織における上述の運動パラメータであっても構わない。
【0066】
又、パラメータ画像データ、パラメータ時系列データ及び画像データを重畳あるいは合成することによって表示する場合について述べたが、これらのデータを単独で表示してもよい。又、医用画像診断装置にて生成された時系列的な画像データはネットワーク10を介して収集する場合について述べたが、記憶媒体を介して収集してもよく、その収集方法は特に限定されない。
【0067】
尚、図1に示した運動パラメータ計測部2及びパラメータデータ生成部3の各ユニットにて行なわれるトラッキング処理やパラメータデータの生成は、ハードウェアにて行なうことも可能であるが、これらの全てあるいはその一部は、通常、共通解析アルゴリズムに基づいたソフトウェアによって行なわれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上本発明によれば、異なる医用画像診断装置の各々にて生成された生体組織の時系列的な画像データに予め設定された共通の解析アルゴリズムを適用して所望の運動パラメータを計測することにより、生体組織の運動機能を効率よく評価することができる。このため、診断効率と診断精度が向上し、操作者に対する負担が軽減する。
【符号の説明】
【0069】
1…画像データ収集部
2…運動パラメータ計測部
21…基準画像データ抽出部
22…関心点設定部
23…トラッキング処理部
24…トラッキング条件保管部
3…パラメータデータ生成部
31…画像データ生成部
32…時系列データ生成部
4…表示部
41…表示データ生成部
42…モニタ
5…入力部
51…モダリティ選択部
52…運動パラメータ選択部
53…内外膜設定部
6…システム制御部
10…ネットワーク
100…医用画像解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる医用画像診断装置の各々にて生成された時系列的な画像データを収集する画像データ収集手段と、
前記時系列的な画像データを処理して生体組織の運動パラメータを計測する運動パラメータ計測手段と、
前記運動パラメータに基づいてパラメータデータを生成するパラメータデータ生成手段と、
前記パラメータデータを表示する表示手段とを備え、
前記運動パラメータ計測手段は、前記医用画像診断装置の各々から収集された前記画像データを共通の解析アルゴリズムを用いて解析することにより前記運動パラメータを計測することを特徴とする医用画像解析装置。
【請求項2】
前記運動パラメータ計測手段は、前記医用画像診断装置によって生成された前記時系列的な画像データをトラッキング処理することにより前記運動パラメータを計測することを特徴とする請求項1記載の医用画像解析装置。
【請求項3】
前記運動パラメータ計測手段は、前記医用画像診断装置に対応したトラッキング条件に基づいて前記画像データをトラッキング処理することを特徴とする請求項2記載の医用画像解析装置。
【請求項4】
各種医用画像診断装置に対応したトラッキング条件が予め保管されたトラッキング条件保管手段を備え、前記運動パラメータ計測手段は、前記時系列的な画像データが生成された前記医用画像診断装置に対応する前記トラッキング条件を前記トラッキング条件保管手段から読み出し、このトラッキング条件に基づいて前記画像データをトラッキング処理することを特徴とする請求項3記載の医用画像解析装置。
【請求項5】
各種医用画像診断装置に対応したトラッキング条件が予め保管されたトラッキング条件保管手段と前記時系列的な画像データが生成された前記医用画像診断装置を選択するモダリティ選択手段を備え、前記運動パラメータ計測手段は、前記モダリティ選択手段から供給されるモダリティ選択情報に基づいて前記トラッキング条件保管手段から読み出した前記医用画像診断装置に対応するトラッキング条件を用いて前記画像データをトラッキング処理することを特徴とする請求項3記載の医用画像解析装置。
【請求項6】
前記医用画像診断装置に対応したトラッキング条件を入力するトラッキング条件入力手段を備え、前記運動パラメータ計測手段は、前記トラッキング条件入力手段によって入力された前記トラッキング条件に基づいて前記画像データをトラッキング処理することを特徴とする請求項3記載の医用画像解析装置。
【請求項7】
前記パラメータデータ生成手段は、前記運動パラメータ計測手段によって計測された前記運動パラメータに基づいて2次元あるいは3次元のパラメータ画像データを生成する画像データ生成手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の医用画像解析装置。
【請求項8】
前記パラメータデータ生成手段は、前記運動パラメータ計測手段によって計測された前記運動パラメータの時間的変化を示すパラメータ時系列データを生成する時系列データ生成手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の医用画像解析装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記時系列的な画像データに基づいて生成された前記パラメータ画像データをリアルタイム表示することを特徴とする請求項1記載の医用画像解析装置。
【請求項10】
前記表示手段は、前記時系列的な画像データに基づいて生成された所定心拍周期の前記パラメータ画像データをループ表示することを特徴とする請求項7記載の医用画像解析装置。
【請求項11】
前記表示手段は、前記パラメータ画像データを前記画像データに重畳あるいは合成して同期表示することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載した医用画像解析装置。
【請求項12】
医用画像解析装置に、
異なる医用画像診断装置の各々にて生成された時系列的な画像データを収集する機能と、
前記時系列的な画像データを処理して生体組織の運動パラメータを計測する機能と、
前記運動パラメータに基づいてパラメータデータを生成する機能と、
前記パラメータデータを表示する機能とを
実行させることを特徴とする画像解析用制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−110612(P2010−110612A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46026(P2009−46026)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(505175663)ザ・ジョン・ホプキンス・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】THE JOHN HOPKINS UNIVERSITY
【Fターム(参考)】