説明

医用画像診断装置

【課題】医用画像診断装置において、不適切な体位にて被検体をスキャンする頻度が低減し、被検体の安全確保に優れた医用画像診断装置を提供すること。
【解決手段】医用画像診断装置としてのX線CT装置1は、スキャン位置に移送される天板5上の被検体Pの体位を現状体位として認識する体位認識部13と、スキャン計画で定められる被検体Pの体位としての計画体位と現状体位とが一致するか否かを判定する体位判定部22と、この体位判定部22によって現状体位と計画体位とが不一致であると判定された場合にその旨をユーザに表示する表示装置19と、現状体位と計画体位とが一致すると判定される場合に、天板5上の被検体Pに対してスキャンを実行するように制御するスキャン制御部20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様としての本実施形態は、被検体の断層画像を生成する医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、以下に列挙する医用画像診断装置が提案されている。
【0003】
(1)X線照射場を形成し、このX線照射場に移送された被検体を透過したX線の強度情報を用いて、被検体の断層画像を生成するX線CT(X−ray computed tomography)装置(特許文献1参照)。
【0004】
(2)静磁場と傾斜磁場を形成し、この磁場に移送された被検体にRF(ラジオ波)パルスを照射して得られるMR(核磁気共鳴)信号を用いて、被検体の断層画像を生成するMRI(magnetic resonance imaging)装置(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−095510号公報
【特許文献2】特開2009−039247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、医用画像診断装置を用いた診断では、診断の目的に応じた良好な断層画像が得られるよう、スキャン計画においてガントリのX線照射場や磁場に移送される被検体の「体位」が予め定められる。体位は、仰向け状態や横向き状態などの姿勢、X線照射場へ頭側から移送するか又は足側から移送するかという身体方向である。
【0007】
従来、診断に臨む被検体の体位とスキャン計画で予め定められた体位とが一致するか否かの判断は、ユーザによる人的判断により行われるものとなっており、それ故に体位の設定ミスが生じうるものとなっている。
【0008】
スキャン計画で定められる規定の体位と異なる体位で検査が行われると、着目している部位が断層画像に映らないとか見づらくなるといった不都合が生じる。その場合は、再度の検査が必要となって検査のスループットが悪化するのみならず、被検体の被曝線量を増大させることにもなる。更に、体位の設定ミスの見過ごし、即ち、間違った付帯情報を持った画像を用いて検査が実施されると、誤診や手術位置の取り違えにつながるおそれもある。
【0009】
また、一般に、スキャン計画においてガントリのX線照射場や磁場に移送される被検体の「被曝線量」が予め定められる。診断に臨む被検体の、ユーザによる人的判断により設定される年齢(大人又は子供)に基づく被曝線量(許容被曝線量)が、スキャン計画で予め定められた被曝線量(計画被曝線量)以下であるかの判断では、許容被曝線量と計画被曝線量正確との正確な比較ができない。よって、被検体に過剰被曝が与えられる可能性がある。特に、スキャン計画を作成する間もなくスキャンを実施する必要がある場合は、被検体の年齢が判明しないときが多いので、ユーザによる人的判断に頼るところが大きい。
【0010】
本実施形態は上記事情に鑑みてなされたもので、不適切な体位や被曝線量にて被検体をスキャンする頻度が低減し、被検体の安全確保に優れた医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本実施形態の医用画像診断装置は、被検体の画像を生成する医用画像診断装置において、スキャン位置に移送される天板上の前記被検体の体位を現状体位として認識する認識部と、スキャン計画で定められる前記被検体の体位としての計画体位と前記現状体位とが一致するか否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記現状体位と前記計画体位とが不一致であると判定された場合にその旨をユーザに報知する報知部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本実施形態の医用画像診断装置は、被検体の画像を生成する医用画像診断装置において、スキャン位置に移送される天板上の載置物の重量と、前記天板上の前記被検体の体型との少なくとも一方の特徴情報を認識する認識部と、前記特徴情報に基づく前記被検体の許容被曝線量が、前記スキャン計画で定められる前記被検体の被曝線量としての計画被曝線量以下であるか否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記許容被曝線量が前記計画被曝線量以下でないと判定した場合にその旨をユーザに報知する報知部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、不適切な体位にて被検体の断層画像が生成される頻度が低減し、被検体の安全確保に優れた医用画像診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の医用画像診断装置を示す機能ブロック図。
【図2】第1実施形態の医用画像診断装置のスキャン制限処理の流れを示すフローチャート。
【図3】(a)(b)は、第1実施形態の医用画像診断装置で表示されるメッセージを示す図。
【図4】第2実施形態の医用画像診断装置を示す機能ブロック図。
【図5】第2実施形態の医用画像診断装置のスキャン制限処理の流れを示すフローチャート。
【図6】第2実施形態の医用画像診断装置で表示されるメッセージを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の医用画像診断装置について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の医用画像診断装置を示す機能ブロック図である。
図1は、第1実施形態の医用画像診断装置、例えばX線CT装置1を示す。X線CT装置1は、スキャン位置を含むようにX線照射場を形成し、このX線照射場に移送された被検体を透過したX線の強度情報を用いて、被検体の断層画像を生成する。X線CT装置1は、寝台2、ガントリ(回転架台)3、及びコンソール4を備える。
【0017】
寝台2は、被検体Pを載置する天板5と、この天板5をガントリ3に向かって移動させる天板駆動装置6とを用いて構成される。天板5は、被検体PをX線照射場となるガントリ3に移送する。
【0018】
ガントリ3は、天板5に載置された状態の被検体Pを挿通可能に構成される回転フレーム7の内部に、ガントリ駆動装置8のほか、X線発生管9、X線検出器10、高電圧発生装置11、データ収集装置(DAS)12、及び体位認識部13を有する。
【0019】
X線発生管9とX線検出器10は、寝台2に載置された被検体Pを挟んで対向配置され、被検体Pの体軸方向と直交するチャンネル方向D1に沿って360°回転するガントリ3と一体となって回転するように構成される。このX線発生管9は、高電圧発生装置11から所要の管電圧の供給を受け、360°回転方向の任意回転位置から管電圧に応じたエネルギーのファンビームX線を被検体Pに向かって放射する。一方、X線検出器10は、複数のX線検出素子がチャンネル方向D1およびスライス方向D2の各方向に2次元配置されて成るX線検出素子アレイにより構成される。
【0020】
データ収集装置12は、ヘリカルスキャンなどでX線検出素子アレイの各X線検出素子に蓄積され、被検体Pを通過した透過X線の強度情報を保有する蓄積電荷をX線検出信号として読み出し、ディジタルデータに変換してコンソール4に送る。
【0021】
体位認識部13としての1又は複数のカメラ装置は、X線照射場となるガントリ3に天板5を介して移送される被検体Pの画像を捉え、その画像から体位(現状体位)を認識する。
【0022】
コンソール4は、前処理部14、再構成処理部15、画像記憶部16、画像処理部17、入力装置18、表示装置19、スキャン制御部20、スキャン計画記憶部21、及び体位判定部22を有する。前処理部14は、データ収集装置12から送られてくるディジタルデータに対して感度補正等の処理を施して投影データとする。投影データは、再構成処理部15に送られる。
【0023】
再構成処理部15は、前処理部14から収集した投影データを用いた再構成処理にて画像データを生成し、画像記憶部16に記憶する。画像処理部17は、画像記憶部16に記憶された画像データに基づいて画像(断層画像や3次元画像の静止画又は動画)を生成する。
【0024】
入力装置18は、画像のコントラスト、静止画/動画の切り替え及び関心領域などの各種の表示条件の設定を可能とし、表示装置19は、画像処理部17で生成された画像を表示条件に応じて表示する。
【0025】
スキャン制御部20は、ユーザ設定に基づき、天板駆動装置6、ガントリ駆動装置8、高電圧発生装置11、データ収集装置12などを制御する。
【0026】
スキャン計画記憶部21は、スキャン計画データを記憶するものであり、スキャン計画データには、被検体Pのスキャン体位(計画体位)及び被曝線量(計画被曝線量)のデータ等が含まれる。
【0027】
体位判定部22は、被検体Pが正しい体位、すなわち、スキャン計画記憶部21に記憶される計画体位で寝台2の天板5に載置されているかどうかを監視し、ユーザの体位設定不備(人的ミス)による誤った付帯情報を持った画像の生成やスキャンのやり直しを防止するスキャン制限処理を実行する。
【0028】
図2は、第1実施形態の医用画像診断装置としてのX線CT装置1の体位判定部22にて実行されるスキャン制限処理の流れを示すフローチャートである。
【0029】
図2に示すステップS101は、体位判定部22が現状体位を取得するステップである。現状体位は、体位認識部13の画像データに記録され、天板5に載置された被検体Pの言わばリアルタイムの体位である。
【0030】
ステップS102は、体位判定部22が、スキャン計画記憶部21に記憶される計画体位とステップS101で取得した現状体位とが一致するか否か(Yes/No)を判定(パターンマッチング)するステップである。
【0031】
「計画体位」は、診断の目的に応じた良好な断層画像が得られるようにスキャン計画で定められ、スキャン計画記憶部21に保存される。また、スキャン計画は、予め策定されており、ユーザの選択を受ける。スキャン計画が選択されると、そのスキャン計画で定められている計画体位がスキャン計画記憶部21に保存される。
【0032】
ここに、計画体位は、X線照射場となるガントリ3内部に天板5を介して移送される被検体Pの姿勢(仰向け状態、横向き状態など)や、その被検体Pの身体方向(X線照射場へ頭の方から移送するか又は足の方から移送するか)などの各種の体位により定義される。なお、計画体位は、基準体位(例えば、仰向け状態)に幅を加味して設定され、基準体位とみなされる所定範囲が計画体位とされる。
【0033】
ステップS103は、ステップS102で<No>と判定した場合に実行し、体位判定部22が報知部としての表示装置19に「メッセージ」を表示するステップである。「メッセージ」は、現状体位と計画体位の不一致を知らせるとともに、ユーザに選択可能な操作を提示する。
【0034】
図3は、第1実施形態の医用画像診断装置としてのX線CT装置1の体位判定部22にて表示されるメッセージを示す図である。図3(a)は、現状体位と計画体位の不一致が判定されたときのメッセージを示す図であり、図3(b)は、スキャン計画において計画体位が何ら定義されていないときのメッセージを示す図である。
【0035】
ユーザは、表示装置19に表示されるメッセージに示された操作、すなわち、「スキャン計画に現状体位を反映させる」、「被検体の体位設定をやり直す」又は「スキャン計画の選択をやり直す」の中から何れか1つの操作を選択できる。
【0036】
ユーザが「スキャン計画に現状体位を反映させる」の操作を選択することで、現状体位と計画体位の不一致が判定された場合(図3(a))にあっては、現在選択されているスキャン計画の計画体位を現状体位に変更させる。一方、ユーザが「スキャン計画に現状体位を反映させる」の操作を選択することで、スキャン計画において計画体位が何ら定義されていない場合(図3(b))にあっては、現状体位をスキャン計画の計画体位として新規に定義させる。
【0037】
ユーザが「被検体の体位設定をやり直す」の操作を選択することで、ユーザは、天板5上の被検体Pの体位設定をやり直す。また、ユーザが「スキャン計画の選択をやり直す」の操作を選択することで、ユーザは、現在選択されているスキャン計画の選択をやり直す、つまり、ステップS102の処理におけるパターンマッチングで用いられる計画体位を変更する。
【0038】
図2に示すステップS104は、ユーザにより現状体位を優先させる要求が行われたか否か(Yes/No)を体位判定部22が判定するステップである。すなわち、ステップS104は、ステップS103で「スキャン計画に現状体位を反映させる」の操作が選択されたか否かを判定するステップである。
【0039】
ステップS105は、ステップS104で<Yes>と判定した場合に実行するステップであり、体位判定部22がスキャン計画記憶部21に保存している計画体位を現状体位に変更し又は計画体位として現状体位を新規に定義するステップである。このステップS105の処理が実行された後はステップS102に移行し、被検体Pの体位に変化がない限りステップS102で<Yes>と判定される。
【0040】
ステップS104で<No>と判定した場合、すなわち、ステップS103で「被検体の体位設定をやり直す」又は「スキャン計画の選択をやり直す」の操作が選択されたと判定した場合は、ステップS105に移行せずにステップS102に移行する。そして、被検体Pの体位が再設定(修正)されたことによって、再設定後の現状体位と計画体位とが一致するものとなれば、ステップS102の処理で<Yes>と判定される。同様に、スキャン計画が再選択されて計画体位が変更されたことによって、現状体位と変更後の計画体位とが一致するものとなれば、ステップS102の処理で<Yes>と判定される。
【0041】
ステップS106は、ステップS102で<Yes>と判定した場合に実行し、体位判定部22がスキャンの実行を許可するステップである。すなわち、体位判定部22は、被検体Pの現状体位とスキャン計画の計画体位とが一致すると判定した場合に限り、スキャンの実行を許容する。言い換えると、体位判定部22は、現状体位と計画体位が一致するまで、スキャンの実行を禁止する。
【0042】
次に、X線CT装置1の効果を説明する。
【0043】
X線CT装置1にあっては、
(1)スキャンを実行しようとする時点で、X線照射場となるガントリ3ないしその回転フレーム7に天板5を介して移送される被検体Pの体位を現状体位として認識する体位認識部13と、スキャン計画で定められる被検体Pの体位を計画体位として記憶し、この計画体位と体位認識部13が認識した現状体位とが一致するか否かを判定する体位判定部22と、体位判定部22が現状体位と計画体位の不一致を判定したときは、その不一致をユーザに知らせる表示装置19(報知部)とを備える。
【0044】
すなわち、スキャンを実行しようとする時点で、スキャンによって被検体Pの断層画像を得る際、寝台2に載せられた被検体Pの体位が取得される(ステップS101)。次いで、取得された被検体Pの体位(現状体位)とスキャン計画で定められた規定の計画体位とが比較される(ステップS102)。この比較の結果、現状体位と計画体位が一致する場合は、スキャンが許可され(ステップS106)、両体位が一致しない場合は、その旨が報知される(ステップS103)。このように、診断に臨む被検体Pの体位がスキャン計画で定められた体位に合致しているかどうかの確認が、ユーザ自身の人的判断に頼ることなく、X線CT装置1側のパターンマッチングにより正確かつ確実に行なわれる。
【0045】
その結果、ユーザの人的判断による体位設定ミスを回避でき、誤った付帯情報の画像を作成してしまうことによる誤診や手術位置の取り違えを回避できる。また、意図した断層画像が得られるまでスキャンのやり直しを行うといった非効率を解消できる。よって、X線CT装置1ではスループット低下及び被検体Pの被曝線量増加を防止できる。更には、体位設定ミスの見過しも防止され、誤診や手術位置の取り違えを回避できる。要するに、X線CT装置1は、不適切な体位にて被検体Pをスキャンする頻度が低減し、被検体Pの安全確保に優れている。
【0046】
(2)体位判定部22は、現状体位と計画体位の不一致を判定したとき、現状体位によるスキャンを禁止する。すなわち、ステップS102で<Yes>と判定するまで、スキャンの実行を許可しない。このため、ユーザが現状体位と計画体位が一致しない旨の報知に万一気付かなくても、スキャン操作の続行は禁止され、(1)の効果がより実効的なものとなる。
【0047】
(3)体位判定部22は、現状体位と計画体位の不一致を判定したとき、ユーザの要求を受けたことを条件に、現状体位によるスキャンを許容する。このため、現状体位がスキャン計画に合致しない場合は、スキャンの続行を一旦禁止したうえで、ユーザの判断に基づいてその現状体位を優先させたスキャンを実行できる。従って、(1)の効果を得つつスキャン計画に拘束されない自由なスキャンが可能となる。
【0048】
以上、本発明に係る医用画像診断装置を1つの実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、本実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
【0049】
例えば、体位認識部13は、被検体Pの体位を認識するための画像を捉えるカメラ装置を用いて構成する例を示したが、この体位認識部13は、X線照射場に被検体Pを移送するための寝台2に設けられ、被検体Pの体位と相関を持つ寝台2ないしその天板5の圧力分布を捉える圧力センサを用いて構成してもよい。すなわち、体位認識部13は、寝台2等に作用する加重の分布から被検体Pの体位を認識し、この体位を用いてステップS102のパターンマッチングを行うようにしてもよい。
【0050】
或いは、体位認識部13は、被検体Pの各部に取り付けられるマーク(例えば、バーコード)と、被検体Pの体位と相関を持つそのマークの位置を捉える位置センサ(例えば、バーコード読み取り装置)とを用いて構成してもよい。すなわち、体位認識部13は、被検体Pの各部位の位置から体位を認識し、この体位を用いてステップS102のパターンマッチングを行うようにしてもよい。
【0051】
また、第1実施形態では、本発明をX線CT装置1に適用した例に基づき説明した。しかし、本発明はMRI装置その他の医用画像診断装置に適用されてもよい。例えば、静磁場と傾斜磁場を形成し、この磁場に移送された被検体PにRFパルスを照射して得られるMR信号を用いて、被検体Pの断層画像を生成するMRI装置において、その磁場に移送される被検体Pの体位を現状体位として認識する体位認識部13と、スキャン計画で定められる被検体Pの体位を計画体位として記憶するスキャン計画記憶部21と、スキャン計画記憶部21が記憶する計画体位と体位認識部13が認識した現状体位とが一致するか否かを判定する体位判定部22と、体位判定部22が現状体位と計画体位の不一致を判定したときは、その不一致をユーザに知らせる報知部とを備える構成としてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の医用画像診断装置としてのX線CT装置を示す機能ブロック図である。
【0053】
図4は、第2実施形態の医用画像診断装置としてのX線CT装置1Aを示す。X線CT装置1Aは、X線CT装置1と同様に、スキャン位置を含むようにX線照射場を形成し、このX線照射場に移送された被検体を透過したX線の強度情報を用いて、被検体の断層画像を生成する。X線CT装置1Aは、寝台2、ガントリ(回転架台)3A、及びコンソール4Aを備える。
【0054】
ガントリ3Aは、天板5に載置された状態の被検体Pを挿通可能に構成される回転フレーム7の内部に、ガントリ駆動装置8のほか、X線発生管9、X線検出器10、高電圧発生装置11、データ収集装置12、及び特徴認識部31を有する。
【0055】
特徴認識部31は、重量計測装置と、1又は複数のカメラ装置とのうち少なくとも一方を備える。重量計測装置は、天板5の下部に設けられ、天板5上の載置物の重量を認識する。天板5上に被検体Pのみが載置される場合、天板5上の載置物の重量は、被検体Pの体重となる。また、特徴認識部31としてのカメラ装置は、X線照射場となるガントリ3に移送される、天板5上の被検体Pの画像を捉え、その画像から被検体Pの体型(厚み及び肩幅等)を認識する。
【0056】
コンソール4Aは、前処理部14、再構成処理部15、画像記憶部16、画像処理部17、入力装置18、表示装置19、スキャン制御部20、スキャン計画記憶部21、許容被曝線量取得部32、及び被曝線量判定部33を有する。
【0057】
許容被曝線量取得部32は、スキャン開始直前にガントリ3Aの特徴認識部31によって認識された天板5上の載置物の重量と被検体Pの体型との少なくとも一方の特徴情報を基に、被検体Pの許容被曝線量を取得する。例えば、許容被曝線量取得部32は、特徴情報と許容被曝線量とを対応付けるテーブルを基に、特徴情報に対応する許容被曝線量を取得する。
【0058】
被曝線量判定部33は、許容被曝線量取得部32によって取得される許容被曝線量が、スキャン計画記憶部21に記憶される計画被曝線量以下(未満)であるかどうかを監視し、被検体Pの年齢(大人又は子供)の設定不備(人的ミス)による過度の被曝を被検体Pに与えることを防止するスキャン制限処理を実行する。さらに、被検体Pがスキャン計画を作成する間もなくスキャンを実施する必要のある救急被検体P1である場合は、被検体Pの年齢が判明しないときも多く、その場合、ユーザの判断によって救急被検体P1の年齢が設定される。
【0059】
なお、図4に示すX線CT装置1Aにおいて、図1に示すX線CT装置1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
図5は、第2実施形態の医用画像診断装置としてのX線CT装置1Aの被曝線量判定部33にて実行されるスキャン制限処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
図5に示すステップS201は、許容被曝線量取得部32が、スキャンを実行しようとする時点の天板5上の載置物の重量(主に被検体Pの体重)と、スキャンを実行しようとする時点の天板5上の被検体Pの体型とのうち少なくとも一方の特徴情報を基に、スキャン時点の被検体Pの許容被曝線量を取得するステップである。
【0062】
ステップS202は、被曝線量判定部33が、ステップS201で取得した許容被曝線量がスキャン計画記憶部21に記憶される計画被曝線量以下か否か(Yes/No)を判定するステップである。
【0063】
「計画被曝線量」は、診断の目的に応じた良好な断層画像が得られるようにスキャン計画で定められ、スキャン計画記憶部21に保存される。また、スキャン計画は、予め策定されており、ユーザの選択を受ける。スキャン計画が選択されると、そのスキャン計画で定められている計画被曝線量がスキャン計画記憶部21に保存される。なお、被検体Pが救急被検体P1である場合、「計画被曝線量」はデフォルト値に設定され、そのデフォルト値がスキャン計画記憶部21に保存される。
【0064】
ステップS203は、ステップS202で<No>と判定した場合に実行し、被曝線量判定部33が報知部としての表示装置19に「メッセージ」を表示するステップである。「メッセージ」は、スキャンを実行しようとする時点の特徴情報を基に取得された許容被曝線量が、スキャン計画の時点で設計された計画被曝線量を超えていることを知らせるとともに、ユーザが選択可能な操作を提示する。
【0065】
図6は、第2実施形態の医用画像診断装置としてのX線CT装置1Aの被曝線量判定部33にて表示されるメッセージを示す図である。図6は、許容被曝線量が計画被曝線量を超えていると判定されたときのメッセージを示す図である。
【0066】
ユーザは、表示装置19に表示されるメッセージに示された操作、すなわち、「スキャンを強制実行する」、「被検体の体位設定をやり直す」又は「スキャン計画の選択をやり直す」の中から何れか1つの操作を選択できる。
【0067】
ユーザが「スキャンを強制実行する」の操作を選択することで、許容被曝線量が計画被曝線量を僅かに超える場合や、救急被検体P1における計画被曝線量のデフォルト値が適正でなかった場合等に、手動で、強制的にスキャンを実行させる。ユーザが「被検体の体位設定をやり直す」の操作を選択することで、ユーザは、天板5上の被検体Pの体位設定をやり直したり、天板5上に被検体P以外の載置物が存在していないかを確認したりする。また、ユーザが「スキャン計画の選択をやり直す」の操作を選択することで、ユーザは、現在選択されているスキャン計画の選択をやり直す、つまり、ステップS202の処理における計画被曝線量を変更する。
【0068】
図5に示すステップS204は、ユーザによりスキャンを強制実行させる要求が行われたか否か(Yes/No)を被曝線量判定部33が判定するステップである。すなわち、ステップS204は、ステップS203で「スキャンを強制実行する」が選択されたか否かを判定するステップである。
【0069】
ステップS204で<No>と判定した場合、すなわち、ステップS203で「被検体の体位設定をやり直す」又は「スキャン計画の選択をやり直す」の操作が選択されたと判定した場合は、ステップS202に移行する。そして、被検体Pの体位が再設定(修正)されたことによって被検体Pの画像上の体型が変わったり、天板5上の被検体P以外の載置物が除去されたことによって天板5上の載置物の重量が変わったりすることで、減少後の許容被曝線量が計画被曝線量以下となれば、ステップS202の処理で<Yes>と判定される。同様に、スキャン計画が再選択されて計画被曝線量が変更されたことによって、許容被曝線量が変更後の計画被曝線量以下となれば、ステップS202の処理で<Yes>と判定される。
【0070】
ステップS206は、ステップS202で<Yes>と判定した場合と、ステップS204で<Yes>と判定した場合に実行し、被曝線量判定部33がスキャンの実行を許可するステップである。すなわち、被曝線量判定部33は、被検体Pの許容被曝線量がスキャン計画の計画被曝線量以下と判定した場合や、手動でスキャンを実行指示があった場合に、スキャンの実行を許容する。言い換えると、被曝線量判定部33は、原則として、許容被曝線量が計画被曝線量以下となるまで、スキャンの実行を禁止する。
【0071】
次に、X線CT装置1Aの効果を説明する。
【0072】
X線CT装置1Aにあっては、
(1)スキャンを実行しようとする時点で、X線照射場となるガントリ3ないしその回転フレーム7に移送する天板5上の積載物の重量(主に被検体Pの体重)と、天板P上の被検体Pの体型とのうち少なくとも一方の特徴情報を認識する特徴認識部31と、スキャン計画で定められる被検体Pの被曝線量を計画被曝線量として記憶し、特徴情報を基に取得された許容被曝線量が、記憶された計画被曝線量以下であるか否かを判定する被曝線量判定部33と、被曝線量判定部33が、許容被曝線量が計画被曝線量を超えると判定したときは、ユーザに知らせる表示装置19(報知部)とを備える。
【0073】
すなわち、スキャンを実行しようとする時点で、天板5に載せられた被検体Pの許容被曝線量が取得される(ステップS201)。次いで、取得された被検体Pの許容被曝線量とスキャン計画で定められた規定の計画被曝線量とが比較される(ステップS202)。この比較の結果、許容被曝線量が計画被曝線量以下である場合は、スキャンが許可され(ステップS206)、許容被曝線量が計画被曝線量を超える場合は、その旨が報知される(ステップS203)。このように、診断に臨む被検体Pの体重や体型に起因する許容被曝線量の取得と、許容被曝線量がスキャン計画で定められた計画被曝線量以下であるかどうかの確認とが、ユーザ自身の人的判断に頼ることなく、正確かつ確実に行なわれる。
【0074】
その結果、ユーザの人的判断による年齢設定ミスを回避できる。特に、被検体Pがスキャン計画を作成する間もなくスキャンを実施する必要のある救急被検体P1である場合は、被検体Pの年齢が判明しないときが多いので、その効果も大きい。よって、X線CT装置1では被検体Pの過剰被曝を防止できる。要するに、X線CT装置1は、不適切な被曝線量にて被検体Pをスキャンする頻度が低減し、被検体Pの安全確保に優れている。
【0075】
(2)被曝線量判定部33は、許容被曝線量が計画被曝線量を超えるとき、原則として、スキャンを禁止する。すなわち、ステップS202で<Yes>と判定するまで、スキャンの実行を許可しない。このため、ユーザが、許容被曝線量が計画被曝線量を超えている旨の報知に万一気付かなくても、スキャン操作の続行は禁止され、(1)の効果がより実効的なものとなる。
【0076】
(3)被曝線量判定部33は、許容被曝線量が計画被曝線量を超えるとき、ユーザの要求を受けたことを条件に、スキャンを許容する。このため、許容被曝線量が計画被曝線量を超える場合は、スキャンの続行を一旦禁止したうえで、ユーザの判断に基づいてスキャンを実行できる。従って、(1)の効果を得つつスキャン計画に拘束されない自由なスキャンが可能となる。
【0077】
なお、第2実施形態では、本発明をX線CT装置1Aに適用した例に基づき説明した。しかし、本発明はMRI装置その他の医用画像診断装置に適用されてもよい。例えば、静磁場と傾斜磁場を形成し、この磁場に移送された被検体PにRFパルスを照射して得られるMR信号を用いて、被検体Pの断層画像を生成するMRI装置において、その磁場に移送される被検体Pの特徴情報を認識する特徴認識部33と、スキャン計画で定められる被検体Pの計画被曝線量を記憶するスキャン計画記憶部21と、特徴情報を基に取得された許容被曝線量が、記憶された計画被曝線量以下であるか否かを判定する被曝線量判定部33と、被曝線量判定部33が、許容被曝線量が計画被曝線量以下であると判定したときは、ユーザに知らせる報知部とを備える構成としてもよい。
【0078】
以上、本発明に係る医用画像診断装置を実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、本実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。例えば、本発明は、第1実施形態のX線CT装置1と第2実施形態のX線CT装置1Aとの独立するものに限られるものではなく、第1実施形態のX線CT装置1と第2実施形態のX線CT装置1Aとを組み合わせる構成も含む。
【符号の説明】
【0079】
1,1A X線CT装置
3,3A ガントリ(回転架台)
4,4A コンソール
5 天板
9 X線発生管
10 X線検出器
12 データ収集装置
13 体位認識部
14 前処理部
15 再構成処理部
16 画像記憶部
17 画像処理部
18 入力装置
19 表示装置
20 スキャン制御部
21 スキャン計画記憶部
22 体位判定部
31 特徴認識部
32 許容被曝線量取得部
33 被曝線量判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の画像を生成する医用画像診断装置において、
スキャン位置に移送される天板上の前記被検体の体位を現状体位として認識する認識部と、
スキャン計画で定められる前記被検体の体位としての計画体位と前記現状体位とが一致するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記現状体位と前記計画体位とが不一致であると判定された場合にその旨をユーザに報知する報知部と、
を有することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記現状体位と前記計画体位とが一致すると判定される場合に、前記天板上の前記被検体に対してスキャンを実行するスキャン実行部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記スキャン実行部は、前記現状体位と前記計画体位とが不一致であっても、ユーザの要求を受けたことを条件に、前記現状体位によるスキャンを実行することを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記認識部は、前記被検体の画像を捉えるカメラを有し、前記画像から前記現状体位を認識することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記認識部は、前記天板を含む寝台に設けられ、前記被検体の体位と相関を持つ寝台の圧力分布を捉える圧力センサを有し、前記圧力分布から前記現状体位を認識することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記認識部は、前記被検体の各部に取り付けられるマークと、前記被検体の体位と相関を持つマークの位置を捉える位置センサとを有し、前記位置から前記現状体位を認識することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記認識部は、前記天板上の載置物の重量と、前記天板上の前記被検体の体型との少なくとも一方の特徴情報を認識し、
前記判定部は、前記特徴情報に基づく前記被検体の許容被曝線量が、前記スキャン計画で定められる前記被検体の被曝線量としての計画被曝線量以下であるか否かを判定し、
前記報知部は、前記判定部によって前記許容被曝線量が前記計画被曝線量を超えると判定した場合にその旨をユーザに報知することを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
被検体の画像を生成する医用画像診断装置において、
スキャン位置に移送される天板上の載置物の重量と、前記天板上の前記被検体の体型との少なくとも一方の特徴情報を認識する認識部と、
前記特徴情報に基づく前記被検体の許容被曝線量が、前記スキャン計画で定められる前記被検体の被曝線量としての計画被曝線量以下であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記許容被曝線量が前記計画被曝線量以下でないと判定した場合にその旨をユーザに報知する報知部と、
を有することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項9】
前記許容被曝線量が前記計画被曝線量以下であると判定される場合に、前記天板上の前記被検体に対してスキャンを実行するスキャン実行部をさらに有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記スキャン実行部は、前記許容被曝線量が前記計画被曝線量以下でなくても、ユーザの要求を受けたことを条件に、スキャンを実行することを特徴とする請求項9に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記認識部は、前記天板の下部に設けられる重量計測装置を有し、前記天板上の載置物の重量を認識することを特徴とする請求項7ないし請求項10の何れか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記認識部は、前記被検体の画像を捉えるカメラを有し、前記画像から前記被検体の体型を認識することを特徴とする請求項7ないし請求項10の何れか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記認識部、前記判定部、前記報知部、及び前記スキャン実行部を、X線CT(X−ray computed tomography)装置、又はMRI(magnetic resonance imaging)装置に備えることを特徴とする請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−45709(P2011−45709A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169724(P2010−169724)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】