説明

医療施設ネットワークに医療デバイスを自動的に統合する方法および装置

【解決手段】医療デバイスに無線通信デバイスを設けることにより医療デバイスを医療施設ネットワークに統合する方法を開示する。医療施設ネットワークの無線が届く範囲内にある治療エリアに医療デバイスを供給する。医療施設ネットワークは医療デバイスが治療エリアに入ったとき検出する。医療施設ネットワークから医療デバイスに初期化信号を送信する。医療デバイスを医療施設ネットワークに統合するシステム、統合機能をもつ医療デバイス、医療施設ネットワークを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイスを医療施設ネットワークに自動的に統合するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院のような近代的な医療施設では、医療専門家はいろいろな医療デバイスを用いて患者の情報を見たり、患者に医療的ケアを提供する。ある医療デバイスは医療的ケアを施す。たとえば、患者の血流に医薬の入った溶液を供給する静脈(IV)ポンプや患者の肺に酸素を供給する酸素吸入器がある。他の医療デバイスは、患者の生理学的な状態を測定し通知する。たとえば、心臓の収縮と関連づけられた電流を測定し記録する心電計(EKG)がある。
【0003】
病室では、典型的に患者はいろいろな医療デバイスで囲まれたベッドに寝ている。ある場合、医療デバイスは患者のベッドの周りにぎこちなく、しかも危険な具合に配置されている。医療デバイスは天井からつり下げられていたり、ベッドの柵からつるされていたり、ベッドの上にあったり、床に置いてあったりする。これらの医療デバイスの配置はしばしば乱雑であり、患者に深刻な安全上のリスクをもたらしている。また、混雑した場所で重たいデバイスを運んだり、操作しようとする医療専門家にも危険がある。
【0004】
これらの医療デバイスは絡み合って配置されたコード、ワイヤ、およびチューブを有し、安全上のリスクを課す。また、多くの医療デバイスは自分自身のディスプレイパネルと制御パネルを有し、それらは小さく(見るのが難しい)、不器用に配置され、スペースを取り、高価で、冗長であるかもしれない。多くの医療デバイスは自分自身のバッテリを含み、それは、余分な制御パネルと読み取りスクリーンがあるのに加えて、スペースを取り、重さとコストを増やしている。集中治療室のような部屋では、患者の不安定で危機的な状態、デバイスの数、およびスペースの高コストのゆえに、医療デバイスの効率的な組織化およびスペースの利用がより一層重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、患者のベッドの周りにあるいろいろな医療デバイスは互いに独立に動作し、非標準のワイヤ、チューブ、およびインタフェースを含む。一つの問題は、医療デバイス間の統合が欠如していることである。たとえば、ある医療デバイスは、異なるベンダからの他の医療デバイスとは互換性のない独自仕様のフォーマットで情報を生成する。別の例では、医療デバイスは患者の生命兆候(バイタルサイン)に対してアナログ信号を生成する。信号がデジタルではないか、または記録されないため、このアナログ信号を紙に書き写さなければならない。さもないと情報が失われてしまう。統合化が欠如していることの結果、医療専門家は、多くの医療デバイスを個別に制御しモニタするためにより大きな注意を払わなければならず、データを書き写すために多くの職員が必要であり、データを見直すのにも多くの時間が必要であり、データの喪失と転記ミスの可能性が大きくなる。アナログ信号をもつデバイスは、短時間の間、データを格納することができるが、情報を見直し、書き写すために後でその時間が取られることになる。
【0006】
別の問題は、多くの最新式の医療デバイスは、使用前に起動または電源を入れる必要があり、通常、医療デバイスが動作可能になり、ネットワークに統合されるまでに時間を要することである。緊急の状態では、時間は決定的な意味をもち、いかなる遅延も患者に面倒な事態をもたらしうる。医療デバイスは、医療専門家が医療デバイスを病室に持ち込んだときに動作可能に準備されていることが望ましい。病室に加えて、この同じ懸念が、緊急室、検査室を含めて、手術室や他の治療室にも当てはまる。
【0007】
また、多くの医療デバイスは、患者の医療記録のデータベースが格納されている医療コンピュータシステムまたは電子医療記録とは独立に動作する。したがって、医療従事者は医療デバイスから情報を読み取り、手動でその情報をデータベースに格納するために医療コンピュータシステムに入力する必要がある。ある例では、血糖計、心電図(EKG)装置、IVポンプ、血圧モニタリング、酸素吸入器、および呼吸器デバイスのような医療デバイスからのデータは、電子医療記録にリンクされていない。医療デバイスから医療コンピュータシステムへの情報の手動転送は時間がかかり、ミスが生まれやすい。
【0008】
医療デバイスに関する前述の問題および非効率は、新生児、子どもおよび大人に対する集中治療室では特に懸念されることである。これらの実施の形態では、患者は典型的にはより大きな危険にさらされており、その結果、患者毎の情報量が多く、使用される医療デバイスの数も多くなる。したがって、医療デバイスの初期化と制御を統合する効率的なシステムをもつことに一層高い必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示される実施の形態は、上述の先行技術に提示された1以上の課題を解決するとともに、添付の図面と合わせて後述の詳細な説明を参照すれば直ちに明らかになる付加的な特徴を提供することに向けられている。
【0010】
ある開示される実施の形態は、医療デバイスを医療施設ネットワークに統合する方法に関する。この方法は、医療施設ネットワークの無線が届く範囲内にある治療エリアに医療デバイスを供給するステップと、前記医療施設ネットワークによって前記治療エリアにある前記医療デバイスを検出するステップと、前記医療施設ネットワークから前記医療デバイスに初期化信号を送信するステップとを含む。
【0011】
ある開示される実施の形態は、治療エリア内で医療デバイスを初期化する方法に関する。この方法は、医療施設ネットワークの無線が届く範囲内にある治療エリアに医療デバイスを供給するステップと、前記医療施設ネットワークから前記医療デバイスに初期化信号を送信するステップと、前記医療デバイスによる前記初期化信号の受信に応答して、前記医療デバイスを自動的に初期化するステップとを含む。
【0012】
ある開示される実施の形態は、医療デバイスを医療施設ネットワークに統合するシステムに関する。このシステムは、前記医療施設ネットワークと相互作用する端末と、前記端末と通信するディスプレイと、前記医療設備ネットワークの無線が届く範囲内にある医療デバイスとを含む。前記医療設備ネットワークは、前記医療デバイスに初期化信号を送信し、前記医療デバイスは、前記初期化信号の受信に応答して自動的に初期化される。
【0013】
ある開示される実施の形態は、医療デバイスに関する。この医療デバイスは、無線通信機能を含み、当該医療デバイスが、治療エリアに導入されると、自動的に検出され、前記治療エリア内からの初期化信号の受信に応答して初期化されることが可能になる。
【0014】
ある開示される実施の形態は、医療施設ネットワークに関する。この医療施設ネットワークは、無線通信デバイスを含み、当該医療施設ネットワークが、当該医療施設ネットワークの無線が届く範囲内にある1以上の医療デバイスに初期化信号を送信することが可能になる。
【0015】
本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の他の特徴は、後述の図面の簡単な説明、詳細な説明、および請求項を再検討した後、明らかになるか、または、本発明の実施により学ぶことができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
ここに記載される実施の形態の前述の態様は、添付の図面と合わせて後述の詳細な説明を参照すればより簡単に明らかになる。
【0017】
【図1】図1は、開示された実施の形態にしたがって、例示的な医療デバイスの斜視図である。
【0018】
【図2】図2は、図1の医療デバイスの例示的なオペレーティングシステムのブロック図であり、開示される実施の形態にしたがって、医療デバイス、中央コンピュータ、ストレージメディア、およびインターネット間のネットワーク通信を示す。
【0019】
【図3】図3は、開示された実施の形態が用いられる手術室のような例示的な治療エリアの斜視図である。
【0020】
【図4】図4は、開示された実施の形態にしたがって用いられる例示的な医療デバイスのブロック図である。
【0021】
【図5】図5は、開示された実施の形態にしたがって、治療エリアに入る医療デバイスの概念図である。
【0022】
【図6】図6は、開示された実施の形態にしたがって、医療デバイスを医療施設ネットワークに統合する方法を説明するフローダイアグラムである。
【0023】
【図7】図7は、開示された実施の形態にしたがって、医療施設ネットワークによって医療デバイスを認証する方法を説明するフローダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここに開示される実施の形態を詳細に参照する。実施の形態の例は、添付の図面に説明されており、全体を通じて同じ参照符号は同様の要素を指す。
【0025】
本発明は、医療施設に医療デバイスを統合する必要性に取り組む。医療デバイスの統合化により、医療専門家はディスプレイ上で医療デバイスの操作状態を見て単一の端末から医療デバイスを制御できるようになる。無線通信を使用することによって医療デバイスの統合化はさらに促進される。
【0026】
まず図1を参照して、ある実施の形態にしたがう医療デバイス10が図示される。医療デバイス10は可動式または固定式のディスペンスステーション15を含む。ディスペンスステーション15は、患者を治療するときに使用される薬剤や他のアイテムを制御可能に調合するために施設において使われる。例示的な医療デバイス10は、「System and Method for Storing Items and Tracking Item Usage」と題する米国特許出願公報20070135965号に記載されており、その全体を参照によりここに取り込む。しかしながら、この開示の目的のために、ディスペンスステーション15は医療デバイス10の単なる一例に過ぎない。ここで使用する「医療デバイス」という用語は、無線通信用に構成された、ディスペンスステーション15、輸液ポンプ、酸素モニタなど、無線通信のできる任意のデバイスを指す。
【0027】
図1に示すように、ディスペンスステーション15は、手術室に入る場合のように、医療施設全体にわたって治療エリアに簡単に移動することができるように車輪14によって支持されたキャビネット12を含む。図示する例示的な実施の形態では、キャビネット12は、幅広い種類のアイテムを格納するために形とサイズが異なるスライド式トレイまたは引き出し16をもつ。引き出し16の数と構成は、ディスペンスステーション15が使われる施設の必要に応じて変更される。
【0028】
参照符号30は、医療デバイス10に無線通信能力を提供する無線通信デバイスの概略図を示す。この概略図は表現上のものに過ぎず、何らかの特定の無線通信デバイスの何らかの現実の物理的構成あるいは位置を表す意図はない。
【0029】
図2を参照して、ある実施の形態では、引き出し16は、格納されたアイテムに対するユーザのアクセスを制限したり、追跡するための制御ユニット18と結合している。制御ユニット18は、プロセッサ20によって制御される、ソレノイド、ラッチ、および/またはマッスルワイヤなどのロックハードウェアを有する(図示しない)スライド制御機構を含む。制御ユニット18はまた、プロセッサ20と通信するストレージメディア40を含む。ある実施の形態では、プロセッサ20は、端末22のようなデバイスインタフェースと通信する。ある実施の形態では、プロセッサ20とストレージメディア40または端末40との間の通信はバス25を用いて実現される。
【0030】
端末22は、キーボード24とディスプレイ画面またはディスプレイ26を含む。ある実施の形態ではディスプレイ26はタッチスクリーンであり、医療専門家またはユーザが画面上に表示された画像と相互作用して、キャビネット12の操作を制御するためにプロセッサ20が用いるデータや命令を入力することができる。当該技術分野の当業者であれば、画面上に表示された画像と相互作用するために、マウスや他のポインティングデバイスをディスプレイ26と組み合わせて用いることができることが理解できよう。
【0031】
ある実施の形態では、通信インタフェース52はまた、バス25を介してプロセッサ20および端末22と通信する。通信インタフェース52は、ネットワークインタフェースカード、モデム、ポート、または他の通信デバイスを含む。ある実施の形態では、通信インタフェース52は、通信リンク51を介して医療施設ネットワーク32と結合するか、通信する。ある実施の形態では、通信インタフェース52は、医療施設ネットワーク32と無線通信する。これには(図2には図示されないが)無線通信デバイス30の組み込みまたは無線通信デバイス30への結合が含まれる。
【0032】
図3を参照して、医療デバイス10が使用される例示的な手術室100の斜視図を示す。開示される実施の形態は、手術室100に限定されるものではなく、たとえば病室を含む医療施設内の任意の治療エリアにしたがって実施の形態を用いることもできることに留意する。
【0033】
図3に示す例示的な実施の形態では、手術室100は、患者のベッド110、照明アセンブリ120、器具台130、複数の端末140、複数のディスプレイ150、複数のインベントリーストレージデバイス160、廃棄物処理デバイス170、電子監視デバイス180、静脈内輸液(IV fluid)スタンド195、および輸液ポンプ190を含む。手術室100は、さらに、たとえば、麻酔設備、除細動器、生存兆候モニタ、呼吸器官酸素吸入器、透析装置などを含む望ましい他の装置を含んでもよい。
【0034】
上述のように、「医療デバイス」10は、ディスペンスステーション15またはインベントリーストレージデバイス160のような無線通信のできる任意のデバイスをいう。医療デバイス10と呼ばれる例示的な別の装置を図4に示す。そのような医療デバイス10は、たとえば、医療的ケアデバイス60および医療モニタリングデバイス70を含む。医療ケアデバイス60は、人工呼吸器61、IVポンプ62、放射暖房器63、除細動器64、ディスペンスステーション15、インベントリーストレージデバイス160などを含む。医療モニタリングデバイス70は、酸素モニタ71、一酸化炭素モニタ72、グルコースモニタ73、温度モニタ74、観血式血圧モニタ75、非観血式血圧モニタ76、心臓モニタ(EKG)77、体重モニタ78、中心静脈圧(CVP)モニタ79、呼吸モニタ80、パルスモニタ81、液体/空気出力モニタ82、脳脊髄液(CSF)モニタ83、組織コンパートメント圧力モニタ84を含む。医療ケアデバイス60と医療モニタリングデバイス70は両方とも例示であり、本発明で利用される医療デバイス10の網羅的なリストではない。
【0035】
医療デバイス10は、多数の治療エリアにいる多数の患者のために搬送され、使用される。その結果、これらの医療デバイス10は頻繁にオン・オフを繰り返す。多くの医療専門家が医療デバイス10を扱うため、医療施設内で医療デバイス10の位置を突き止めたり、移動を追跡することは難しい。
【0036】
したがって、医療デバイス10に手術室100内に自分を迅速に配置する能力をもたせることが望ましい。ある例示的な実施の形態では、ディスペンスステーション15のような医療デバイス10またはインベントリーストレージデバイス160は無線通信デバイス30を含む。いずれの特定の理論にとらわれることなく、医療デバイス10に無線通信デバイス30をもたせることは、医療デバイス10を手術室100または他の治療エリアに統合し、医療デバイス10を初期化するのに必要な時間を減らすと考えられる。
【0037】
図2に戻り、ある実施の形態では、ディスペンスステーション15は、システム31の一部であり、医療施設ネットワーク32を介して、ストレージメディア36のような中央ストレージデバイスにアクセスできる中央コンピュータ34にリンクしている。医療施設ネットワーク32と通信するデバイスはエンティティまたはノードとも呼ばれる。ネットワーク32とノードの配置は様々な形態を取り、図2に示されたものは例示に過ぎない。
【0038】
ある実施の形態では、医療施設ネットワーク32は、医療デバイス10に物理的に接続したり、医療デバイス10に無線で接続できるように構成される。無線通信に適した技術は、いくつか例を挙げると、ブルートゥース(商標)、Zigbee、RFID(radio frequency identification)および超広帯域無線(UWB)を含む。ある実施の形態では、通信インタフェース52は無線ネットワークインタフェースカードを含む。
【0039】
医療施設ネットワーク32を医療デバイス10に接続することによって、医療デバイス10は、他の医療デバイス10や、中央コンピュータ34、ストレージメディア36のようなエンティティとデータを共有したり、交換することができる。ストレージメディア36は、たとえば、患者特有の情報およびディスペンスステーション15において現在格納されている、あるいは、これから格納されるアイテムに関する情報を有する1以上のデータベースを含んでもよい。これらの実施の形態では、医療施設ネットワーク32は、制御ユニット18が患者特有の情報を自動的に取得する手段を提供する。ある例示的な実施の形態では、医療施設ネットワーク32はインターネット38に接続される。
【0040】
医療施設は非常に多くの異なる医療デバイス10を用いることから、医療デバイス10と他の装置との間の干渉を抑えるために、医療デバイス10の無線が届く範囲を制限することが好ましい。ある好適な実施の形態では、医療デバイス10の無線が届く範囲は、おおよそ治療エリアに制限される。無線が届く範囲をそのように制限することは、医療デバイス10の電力レベルをある最大閾値に制限することにより実現可能である。
【0041】
あるいは、医療デバイス10の無線が届く範囲を制限するのではなく、望ましいエリアの外側で無線通信信号が送受信されるのを防ぐ物理的もしくは電磁気的バリアを用いてもよい。たとえば、典型的な手術室100では、壁を鉛で覆うことにより、無線通信信号が手術室に入ったり、手術室から出ることを防いでいる。
【0042】
当然のことながら、医療デバイス10は、医療施設ネットワーク32への接続51において安全であることも安全でないこともある。もっとも、医療デバイス10および医療施設ネットワークが、米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令(HIPAA;Health Insurance Portability & Accountability Act of 1996)および他の関連する標準にしたがっていることが望ましい。
【0043】
ある態様では、医療施設ネットワーク32は設備全体のネットワークを含む。他の態様では、医療施設ネットワーク32はローカルネットワークを含む。ローカルネットワークは、たとえば、一つの部屋専用のネットワークである。
【0044】
図5を参照して、治療エリア400に入る医療デバイス10の概略図を示す。ある実施の形態では、治療エリア400は、医療施設450にある病室410を含む。治療エリア400はまた、先に説明したように手術室、検査室などである。
【0045】
図5に示すように、複数の病室410が医療施設450の一部をなしている。病室410は患者420によって専有されているか、空き室440である。ある実施の形態では、病室10および治療エリア400はともに無線通信デバイス30をもち、無線による相互作用が可能である。ある実施の形態では、治療エリア400の無線通信デバイス30は医療施設ネットワーク32に接続される。
【0046】
医療デバイス10が無線通信デバイス30を通して治療エリア400に入ると、医療施設ネットワーク32は医療デバイス10の存在を検出する。ある実施の形態では、医療施設ネットワーク32は医療デバイス10に初期化信号を送信する。この情報のやりとりは図6〜図7を参照してさらに詳細に述べる。
【0047】
常時、多数の最新式の医療デバイス10を有する病院のような医療施設450では、そのような医療デバイス10を包括的な医療施設ネットワーク32に統合することが必要となる。この必要性の一部は、ある医療デバイス10は互いに相互依存していることに起因する。たとえば、IVポンプ42および心臓モニタ(EKG)77に接続された患者420は、心臓モニタ77による検出された特定の心拍数に応答してIVポンプ62が滴下速度を調整するように求める。この単純な例は二つの医療デバイス10の相互依存性を説明している。多くの医療デバイス10が他の医療デバイス10に依存しており、統合の必要性が増大していることを理解すべきである。
【0048】
図6を参照して、開示された実施の形態にしたがって、医療施設ネットワーク32に医療デバイス10を統合する方法を説明するフローダイアグラムを示す。はじめに、フローダイアグラムのステップ300において、ユーザは、治療エリア400内に置かれた医療端末140を介して個人的なIDとパスワードを入力することにより、ログオンしてソフトウェアアプリケーションにアクセスする。端末140がユーザを適切な権限をもつ者として特定するなら、ステップ310においてディスプレイ150にシステムメニューが表示される。例示的な実施の形態において、ソフトウェアアプリケーションは患者レコードと関連づけられている。好適な実施の形態によれば、システムメニューは総合的なメニューであり、ユーザは患者の記録にアクセスしたり、在庫管理をしたり、請求書作成機能を実行したりすることができる。
【0049】
いったんユーザがシステムメニューを閲覧できるようになると、無線機能30を備えた医療デバイス10が治療エリア400に入ったなら、ステップ320において医療施設ネットワーク32は自動的に医療デバイス10を検出する。医療デバイス10が無線の届く範囲にあることを医療施設ネットワーク32に気づかせるために医療デバイス10が信号を伝送するか、医療施設ネットワーク32が定期的に信号を送信し、無線の届く範囲にある医療デバイス10からの返答を受信することによって、そのような検出が可能になる。
【0050】
医療デバイス10が検出された後、ステップ330において医療施設ネットワーク32は医療デバイスに初期化信号を送信する。初期化信号はアクティブな電力状態になるように電源を入れる指示を含んでもよい。上述のように、医療デバイス10は、多数の治療エリア400にいる多数の患者420のために頻繁に搬送され使用される。したがって、医療デバイス10の電力状態は未知である。典型的には、医療デバイス10は、別の治療エリア400においてアクティブに使用されていないときは、低電力、スリープ、または電源オフ状態にある。
【0051】
あるいは、初期化信号はソフトウェアプログラムの起動を開始するための命令を含んでもよい。たとえば、ある実施の形態では、医療デバイス10は、特定のプログラムまたはプログラムの集合を実行するためにインストールされたソフトウェアを有する。たとえば輸液ポンプ190のような多くの最新式の医療デバイス10の場合、そうである。そのような実施の形態では、輸液ポンプ190は、使用前のメンテナンスチェックを行ってから動作を開始してもよい。
【0052】
あるいは、初期化信号は医療デバイス10に起動ポジションを想定させるための命令を含んでもよい。たとえば、初期化信号は医療デバイス10にロックの解除をさせてもよい。この初期化は、ディスペンスステーション15のような医療デバイス10にとって特に有益である。ディスペンスステーション15は典型的には、薬剤など引き出し16内の内容物によっては引き出し16をロックしているからである。
【0053】
医療デバイス10を医療施設ネットワーク32にリンクしたシステム31に統合させることによって、たとえば、単一の端末140において複数の医療デバイス10を初期化するなどの制御ができるように実現してもよい。その結果、ユーザは、単一のディスプレイ150または治療エリア400に配置された複数のディスプレイ150上で操作状態のような医療デバイス情報を閲覧できるようになる。
【0054】
図7を参照して、開示された実施の形態にしたがって、医療施設ネットワーク32によって医療デバイス10を認証する方法を説明するフローダイアグラムを示す。様々な理由で医療施設450によって認識されない医療デバイス10を初期化することの予防対策として、ステップ320において、医療施設ネットワーク32は、医療デバイス10を検出した後、その医療デバイス10を認証する。医療施設ネットワーク32が医療デバイス10を認識しない理由には、たとえば、医療デバイス10が新しく、ネットワーク32にまだ入っていないことや、医療デバイス10は撤退してネットワーク32から外されたこと、医療デバイス10は既に別の患者420の専用となっており、当該患者420から解放してからでないと、新しい患者420のために初期化することができないことなどがある。
【0055】
認証のために、ステップ500で医療施設ネットワーク32は、医療デバイス10から識別情報を求める。そのような要求は、医療施設ネットワーク32が医療デバイス10にリクエスト信号を送信することによって達成することができる。これは、図6に示すように、医療デバイス10の電源が入れられた後、起こる。
【0056】
そのような情報に応答して、医療デバイス10は要求されたデバイス識別情報を含む信号を医療施設ネットワーク32に送信する。ある実施の形態では、デバイス識別情報には、医療デバイス10と関連づけられた電子シリアル番号が含まれる。ある実施の形態では、他のデバイス識別子が用いられる。
【0057】
医療施設ネットワーク32が医療デバイス識別情報を受信すると、ステップ510において医療施設ネットワーク32は医療デバイス10が本物かどうかを検証することができる。本物かどうかの検証は、たとえば、医療施設ネットワーク32が医療デバイス10に対するレコードが存在するかどうかを問い合わせることによって実現することができる。医療デバイスのレコードは、ストレージメディア36または医療デバイス10自身に格納してもよい。
【0058】
医療デバイス10が認証された後、ステップ520において、医療施設ネットワーク32はストレージメディア36または医療デバイス10から医療デバイスレコードを読み出す。医療デバイスレコードはその後、ディスプレイ150上に表示され、ユーザは端末140において医療デバイスレコードを閲覧し、編集することができる。
【0059】
医療デバイス10の認証の間、ステップ330において、ユーザは、いかなるときでも、医療デバイス10に初期化信号を送信しないで済ませることを選ぶことができる。初期化信号を送信しない理由として考えられるのは、医療デバイス10が正しいタイプでないこと、医療デバイス10をもはや必要としていないことなどがある。
【0060】
ここに開示される実施の形態は、治療エリア400内に医療デバイス10を統合するための方法とシステムを提供する。ここに開示されるある実施の形態によれば、統合されるべき医療デバイス10は、医療デバイス10にブルートゥース(商標)または他のワイヤレスデバイスを装着または搭載するなどにより、無線通信デバイス30を備えている。無線通信デバイス30は比較的安価であり、すぐにインストールすることができる。次に医療デバイス10は医療施設ネットワーク32と無線で通信する。そのような無線通信により、治療エリア400に入ったときに医療デバイス10を初期化することが可能になる。
【0061】
医療デバイス10が医療施設ネットワーク32に接続され、ユーザ端末140と通信できるようになると、ユーザは、単一の端末140から複数の医療デバイス10の操作状態を制御できるようになる。そのような医療デバイス10の統合化は、医療施設450の効率を高め、患者ケアを改良する。
【0062】
開示された実施の形態の前述の記載は、当該技術分野の当業者が本発明を実施または利用することを可能にするために提供される。これらの実施の形態に様々な修正をすることは当該技術分野の当業者には直ちに明らかであり、ここに規定された一般的原則は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施の形態に適用することができる。したがって、本発明をここに示した実施の形態に限定する意図はなく、ここに開示された原則および新規の特徴と矛盾しない最も広い範囲をもつものと認めるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療エリア内で医療デバイスを初期化する方法であって、
医療施設ネットワークの無線が届く範囲内にある治療エリアに医療デバイスを供給するステップと、
前記医療施設ネットワークから前記医療デバイスに初期化信号を送信するステップと、
前記医療デバイスによる前記初期化信号の受信に応答して、前記医療デバイスを自動的に初期化するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記医療デバイスは、前記治療エリアに導入されると、自動的に前記医療施設ネットワークによって検出されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記医療デバイスの検出後、前記医療施設ネットワークは前記医療デバイスに識別情報要求信号を送信することを特徴とする請求項2の方法。
【請求項4】
前記識別情報要求信号に応答して、前記医療デバイスは前記医療施設ネットワークに識別情報を送信することを特徴とする請求項3の方法。
【請求項5】
前記初期化するステップは、前記医療デバイスの電源を入れてアクティブな電力状態にするステップを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項6】
前記初期化するステップは、ソフトウェアプログラムを立ち上げるステップを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項7】
前記医療施設ネットワークはインターネットに接続されていることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】
前記無線が届く範囲はおおよそ前記治療エリアに限定されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項9】
前記医療施設ネットワークはローカルネットワークまたは施設全体のネットワークであることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項10】
医療デバイスを医療施設ネットワークに統合するシステムであって、
前記医療施設ネットワークと相互作用する端末と、
前記端末と通信するディスプレイと、
前記医療設備ネットワークの無線が届く範囲内にある医療デバイスとを含み、
前記医療設備ネットワークは、前記医療デバイスに初期化信号を送信するように構成され、前記医療デバイスは、前記初期化信号の受信に応答して自動的に初期化されるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項11】
前記医療デバイスは、治療エリアに導入されると、自動的に前記医療施設ネットワークによって検出されることを特徴とする請求項10のシステム。
【請求項12】
前記初期化は、前記医療デバイスの電源を入れてアクティブな電力状態にすることを含むことを特徴とする請求項10のシステム。
【請求項13】
前記医療施設ネットワークはインターネットに接続されており、それによって、医療施設ネットワークと別のエンティティとの間のデータ交換が促進されることを特徴とする請求項10のシステム。
【請求項14】
前記無線が届く範囲はおおよそ治療エリアに限定されることを特徴とする請求項10のシステム。
【請求項15】
前記医療施設ネットワークはローカルネットワークまたは施設全体のネットワークであることを特徴とする請求項10のシステム。
【請求項16】
医療デバイスであって、
無線通信機能を含み、
当該医療デバイスは、治療エリアに導入されると、自動的に検出され、前記治療エリア内からの初期化信号の受信に応答して初期化されるように構成されることを特徴とする医療デバイス。
【請求項17】
医療施設ネットワークであって、
無線通信デバイスを含み、
当該医療施設ネットワークは、当該医療施設ネットワークの無線が届く範囲内にある1以上の医療デバイスに初期化信号を送信するように構成されることを特徴とする医療施設ネットワーク。
【請求項18】
医療デバイスを医療施設ネットワークに統合する方法であって、
医療施設ネットワークの無線が届く範囲内にある治療エリアに医療デバイスを供給するステップと、
前記医療施設ネットワークによって前記治療エリアにある前記医療デバイスを検出するステップと、
前記医療施設ネットワークから前記医療デバイスに初期化信号を送信するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記医療デバイスによる前記初期化の受信に応答して、前記医療デバイスを自動的に初期化するステップをさらに含むことを特徴とする請求項18の方法。
【請求項20】
前記医療デバイスの同一性を検証するステップをさらに含むことを特徴とする請求項18の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−510684(P2012−510684A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539619(P2011−539619)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/066140
【国際公開番号】WO2010/065472
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(505403186)ケアフュージョン 303、インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】