説明

医療用シグマリガンド及びIKK/NF−κB阻害剤

本発明は、シグマ受容体リガンドと協調作用し、ガン又は炎症性疾患に対する有効性を強化する薬剤に関する。また、シグマリガンドとの組み合わせで上記疾患の治療に使用し得る薬剤を特定する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的細胞における細胞分裂周期停止及び/又はアポトーシスの誘導に関する材料及び方法に関する。特に標的細胞としては、腫瘍細胞又は炎症性疾患経過に関与する細胞が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
シグマ受容体リガンドは特定の細胞型で選択的にアポトーシスを誘導することが知られており、よって腫瘍及び炎症性疾患等の他の症状の治療に有用である。WO00/00599において、Spruce等は、シグマ受容体リガンドが、内因性機構又は外因性活性化の何れにより活性化されても、活性化NFκBに対していわゆる「アポトーシス促進スイッチ」となり得る旨を示す。WO00/00599は例として、シグマ受容体リガンドとの組み合わせで細胞死及び/又は増殖阻害を促進することにより、癌及び炎症性疾患の治療効力を改善し得るNF−κB経路活性化因子を開示する。
【0003】
抗腫瘍及び抗炎症活性を有するシグマリガンド(例えばリムカゾール等)は、NF−κB経路活性化による効果を、罹患細胞におけるアポトーシスの促進効果に誘導する一貫した能力を示すことにより、治療効果を達成する。WO00/00599は、特に構成的活性NF−κBを有する腫瘍におけるシグマリガンドの適用のみならず、構成的活性NF−κBを欠く腫瘍についても、NF−κB経路を活性化する薬剤との組み合わせにおいて、炎症性疾患の治療におけるシグマリガンドの適用を教示する。
【0004】
現在の一般的見解によれば、NF−κBは確かにプログラムされた細胞死の重要な調節因子ではあるものの、細胞死及び/又はアポトーシスのプロモーター又はサプレッサーの何れとしても作用し得る。これを更に拡張して、NF−κBが腫瘍プロモーター又はサプレッサーの何れかとして作用し得るとの説も出されている(Perkins 2004 Trends in Cell Biology Vol.14 pp64-69)。細胞死及び生存の両効果を規定するNF−κBの能力の理解には相当な進歩があった。例えば、アポトーシス阻害及びアポトーシス促進の両遺伝子標的において、NF−κBが転写抑制に加えて転写活性化機能を有し、最終的な結果(細胞生存又は細胞死)はそれらの活性のバランスによって決定されることが立証されている(Dutta等 2006 Oncogene Vol. 25 pp68OO-6816並びにPerkins及びGilmore 2006 Cell Death and Differentiation Vol.13pp759-772を参照)。
【0005】
WO00/00599は、広範な種類のNF−κB活性化因子が、シグマリガントとの組み合せで、癌及び炎症性疾患の治療における有用な添加物となる旨を請求している。WO00/00599は、シグマリガンドに外因性活性化因子を付与した場合でも、シグマリガンドはNF−κBに対するアポトーシス促進スイッチとして機能するため、少なくとも標的(罹患)細胞においては、アポトーシス阻害効果よりもむしろアポトーシス促進効果が保証されると教示する。一方、本発明は、シグマリガンドとNF−κB経路阻害剤との組み合わせを教示するが、シグマリガンド(例えばリムカゾール等の薬剤)のNF−κB依存性アポトーシス促進活性と拮抗すると推測されるはずである。それ故に、シグマリガンドとNF−κB経路阻害剤との組み合わせに基づく投薬計画は、癌及び炎症性疾患の進行を悪化させると推測されるはずである。
【0006】
NF−κB活性化因子とシグマリガンドとの組み合わせ投薬計画を阻む実用上の課題の一つは、NF−κB経路活性化が正常組織に急性の炎症性又は毒性反応を引き起こす虞がある点である。シグマリガンドは正常細胞に比べ病的細胞に対して強い選択性を示すが、外因性NF−κB経路活性化因子についてはこれは当てはまらない。実際に、腫瘍壊死因子として承認されたNF−κB活性化因子の臨床適用は、許容し難い毒性によって厳しく制限されてきた。従って斯かる投薬計画は、許容し難い副作用又は毒性を引き起こす虞がある。シグマリガンドを低毒性用量のTNF等と組み合わせて使用することも考えられるが、NF−κB経路活性化因子に内在する課題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
即ち、特に癌及び炎症性疾患の治療において、シグマリガンドとの組み合わせでの使用におけるNF−κBモジュレーターの潜在的な有用性を解明することは、依然として本分野の課題の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
最も広い観点によれば、本発明は、アポトーシスの誘導並びに腫瘍及び炎症性疾患の治療に使用される新規な薬剤の併用、並びに斯かる薬剤を同定する方法に関する。前記併用は、少なくとも1つのシグマ受容体リガンドと、少なくとも1つの追加の薬剤とを含む。更に、前記薬剤を含む治療方法も提供される。
【0009】
追加の薬剤(本明細書では「組み合わせ剤」という場合もある)は、アポトーシス阻害I−κBキナーゼ(IKK)/NF−κB経路の選択的阻害剤として作用するが、IKK/NF−κB経路機能のアポトーシス促進アームを阻害しないものである。
【0010】
組み合わせ剤の例としては、MG132及びボルテゾミブ(別名Velcade又はPS341)等のプロテアソ−ム阻害剤;サリドマイド及びサリドマイド類似物;並びにバルプロ酸ナトリウム等のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤が挙げられる。更に前記薬剤としては、アポトーシス阻害IKKの下流に位置するキナーゼmTORの阻害剤も挙げられる。mTOR阻害剤としては、ラパマイシン及びその類似物(「ラパログ」)が挙げられる。更に前記薬剤としては、Pl−3キナーゼ経路、惹いてはAkt(PKB)及びその下流標的IKKを阻害するチロシンキナーゼ阻害剤も挙げられる。それらは、本明細書に記載のアッセイにより同定され得る。
【0011】
本発明の1つの観点によれば、腫瘍を治療する方法であって、治療を要する患者に、
(i)シグマ受容体リガンド、及び
(ii)IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アーム(anti-apoptotic arm)を阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アーム(pro-apoptotic arm)は阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤
を、順次又は組み合わせで投与することを含んでなる方法が提供される。
【0012】
好適には、前記薬剤が医薬的有効量において提供され、或いは、前記組み合わせが医薬的有効量において提供される。
【0013】
他の観点によれば、本発明は、炎症性疾患を治療する方法であって、治療を要する患者に、
(i)シグマ受容体リガンド、及び
(ii)IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤
を、順次又は組み合わせで投与することを含んでなる方法を提供する。
【0014】
好適には、前記薬剤が医薬的有効量において提供され、或いは、前記組み合わせが医薬的有効量において提供される。
【0015】
更には、IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害し、且つIKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドの、腫瘍又は炎症性疾患の治療のための薬剤の製造における使用が提供される。
【0016】
更には、IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害し、且つIKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害しないIKK/NF−κB経路阻害剤との組み合わせにおいて、腫瘍又は炎症性疾患の治療に使用されるシグマ受容体リガンドが提供される。
【0017】
更には、シグマ受容体リガンド、及びIKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害し、且つIKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害しないIKK/NF−κB経路阻害剤を含む、腫瘍又は炎症性疾患の治療用の組成物が提供される。
【0018】
更には、シグマ受容体リガンド、及びIKK経路のアポトーシス阻害アームを阻害し、且つIKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害しないIKK経路阻害剤を含む医薬組成物が提供される。
【0019】
更には、癌又は炎症性疾患の治療用のキットであって、シグマ受容体リガンド、及びIKK経路のアポトーシス阻害アームを阻害し、且つIKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害しないIKK阻害剤を含むキットが提供される。本キットは任意により、癌又は炎症性疾患の治療用の使用説明書を含んでいてもよい。
【0020】
好適なシグマリガンドはリムカゾールである。その中には、別表1に示されるようなリムカゾール変異体及び類似物も含まれる。
【0021】
特に好適な組み合わせ剤(IKK経路のアポトーシス阻害アームを阻害し、且つIKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害しないIKK阻害剤)としては、MG132及びボルテゾミブ(別名Velcade又はPS341)等のプロテアソ−ム阻害剤;サリドマイド及びサリドマイド類似物;並びにバルプロ酸ナトリウム等のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤が挙げられる。更に前記薬剤としては、アポトーシス阻害IKKの下流に位置するキナーゼmTORの阻害剤も挙げられる。mTOR阻害剤としては、ラパマイシン及びその類似物(「ラパログ」)が挙げられる。更に前記薬剤としては、Pl−3キナーゼ経路、惹いてはAkt(PKB)及びその下流標的IKKを阻害するチロシンキナーゼ阻害剤も挙げられる。適切なチロシンキナーゼ阻害剤としては、後述のEGF受容体の阻害剤が挙げられる。適切な組み合わせ剤は、本明細書に記載のアッセイにより同定され得る。
【0022】
腫瘍としては、癌、例えば骨髄性白血病、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、乳癌、グリア芽腫、黒色腫、結腸直腸癌、卵巣癌等が挙げられる。
【0023】
本発明の他の観点によれば、リムカゾール及び他のシグマリガンドの抗腫瘍及び抗炎症作用を促進するために組み合され得る薬剤を同定するための方法を提供する。1つの態様によれば、本方法は、
(i)試験細胞群をシグマ受容体リガンドと接触させて、細胞死をアッセイすること;
(ii)試験細胞群を試験薬剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドと接触させて、細胞死をアッセイすること;及び
(iii)試験細胞群を前記試験薬剤及びIKK阻害剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドと接触させて、細胞死をアッセイすることを含んでなり、
(ii)で生じる細胞死の量が(i)及び(iii)で生じるものを上回る場合に陽性結果が得られる。
【0024】
試験薬剤としては、IKK/NF−κB経路の少なくとも一部分の阻害剤であることが知られている薬剤が挙げられる。
【0025】
好適な態様によれば、IKK阻害剤は、IKK/NF−κB経路機能のアポトーシス促進成分の阻害剤であり、シグマリガンドとの組み合わせで提供した場合に、シグマリガンド誘導性の細胞死を低減する能力に基づいて同定可能である。
【0026】
IKK阻害剤を同定する方法は、本技術分野では公知である。例えば、米国特許第7053119号(Karin及びKapahi、2006)、米国特許出願第2003/0232888号(Karin、Michael等)及び米国特許出願第2006/0135603号(Karin及びKapahi)参照。特に代表的な方法は、米国特許出願第2003/0232888号の段落0141(インビトロにおけるIKK活性の阻害の検出方法が記載)並びに段落0168及び0169(IKKl及びIKK2の各々のキナーゼアッセイ法が記載)に記載されている。本発明以前にこれら2つの間の差異は認識されていなかったため、斯かる化合物には、IKKのアポトーシス阻害及び/又はアポトーシス促進機能の阻害剤が包含される。これに対して、本発明は、(適切な組み合わせ剤を同定する)本発明のアッセイにおける薬剤として有用なIKK阻害剤化合物のサブセットが、リムカゾール誘導性細胞死を低減する能力に基づいて同定可能であることを教示する。リムカゾールは、アポトーシス促進モードにおける代表的なIKK誘導剤である。
【0027】
前記アッセイの好適な態様によれば、シグマ受容体リガンドはリムカゾールであり、試験細胞群はHL-60であり、IKK阻害剤はBAY 11-7082、パルテノライド、IMD 0354及びSC514である。
【0028】
リムカゾール媒介性の細胞死は、NF−κB経路の特定の低分子阻害剤、例えばI−κBキナーゼ(IKK)複合体の阻害剤等、特にIKK2阻害剤によって実質的に軽減される。これは、シグマリガンド応答性の細胞死を促進する上でNF−κB経路の阻害は有用ではないとするWO00/00599の教示と一致し、且つ、癌又は炎症性疾患におけるシグマリガンドとの併用治療において、NF−κB経路の阻害は有用ではないという説を補強するものである。
【0029】
IKK阻害剤の多くは、通常の細胞死促進効果とは反対に、シグマリガンドとの組み合わせでは細胞死を低減する逆の効果を有する。リムカゾールがアポトーシス促進モードのIKK/NF−κB経路を活性化する能力を有することを考え合わせると、IKK阻害剤の多くは、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームに加えてアポトーシス阻害アームをも抑制してしまうため、全体としてはリムカゾール及び他のシグマリガンドの細胞死滅効果を促進するよりもむしろ拮抗してしまうものと結論付けられる。例としては、急性骨髄性白血病及び多発性骨髄腫等の幅広い悪性腫瘍;更にホルモン非感受性乳癌、肺癌及びグリア芽腫等の種々の固形腫瘍が挙げられる。リムカゾール誘導性細胞死の軽減は、選択的IKK2阻害剤の場合にも見られることから、アポトーシス阻害モードからアポトーシス促進モードへのNF−κB経路活性化のいわゆる「古典的」モードが、リムカゾールによって破壊されることが示唆される。
【0030】
特定のIKK阻害剤によるリムカゾール誘導性の細胞死の軽減は、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アーム及びアポトーシス阻害アームが阻害されるためであると推測される。本発明者等は、驚くべきことに、リムカゾール、又は他のシグマリガンドを、IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームのより選択的な阻害剤と組み合せることにより、アポトーシス促進アームの阻害を防止することができ、惹いては、構成的活性IKK/NF−κBにより刺激されている細胞、例えば腫瘍及び炎症細胞等において、細胞死を促進することができることを見出した。アポトーシス促進アームの阻害を防止する能力が証明されたIKK/NF−κBのアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤は、従来は同定されていない。本発明者等が見出したIKK/NF−κB経路阻害剤のサブセットは、まさしくそのようなものである。リムカゾールを、(プロテアソ−ム媒介性のI−κB分解の阻害により)NF−κB経路阻害剤として本技術分野で公知の典型的なプロテアソ−ム阻害剤であるMG132と組み合せることで、協調的な抗腫瘍効果を発揮することが判明しているが、前記のようなアポトーシス促進アームの阻害を防止するNF−κBのアポトーシス阻害選択的阻害剤としてはとても公知とは言えない。これは他のプロテアソ−ム阻害剤についても同様である。
【0031】
抗炎症及び/又は抗腫瘍活性を引き起こす薬剤の能力は、リムカゾール又は他のシグマリガンドとの組み合わせにおいて、癌又は炎症性疾患における活性を促進するのに有用であるだろうとそれ自体予測するものではない。実際にはそれ自体が抗腫瘍剤として有用であるいくつかの薬剤は、リムカゾール及び他のシグマリガンドの抗腫瘍又は抗炎症活性を阻害するだろう。これは本明細書において非常に明確に教示されている。
【0032】
IKK/NF−κB阻害剤であるBAY 11-7082及びその誘導体は、腫瘍及び白血病を治療する有力な薬剤として本技術分野では公知である。例えばBAY 11-7082は、骨髄腫細胞においてアポトーシスを誘導し、チェックポイント無効因子(abrogator)UCN-01と相乗作用してアポトーシスを促進することから、これら2つの薬剤の組み合わせが治療に有用であることが示唆されている(Dai等、2004、Blood、Vol. 103、pp2761-2770)。しかしながら、本発明は、BAY 11-7082がリムカゾールによるアポトーシス誘導を拮抗し、それ故にリムカゾール及び他のシグマリガンドの臨床作用を促進する効力を有しないことを、極めて明確に示す。
【0033】
他の例として、IKK/NF−κB経路阻害剤であるパルテノライドは、インビトロ及びインビボで抗腫瘍及び抗血管新生活性を示し、ヒト癌患者での第I相用量漸増試験に進んだ(Curry等、2004、Invest New Drugs、Vol.22、pp299-305)。改良された薬物動態特質を有するパルテノライド類似物は、癌での臨床試験に向けて進んでいる。
【0034】
その一方で、パルテノライドは、リムカゾールのアポトーシス活性を拮抗し、それ故にリムカゾール又は他のシグマリガンドとの組み合わせにおいて、癌又は炎症性疾患の治療に有効ではないことが、本明細書に教示されている。
【0035】
従って、ある薬物が単独で抗腫瘍又は抗炎症作用を引き起こす能力を有していても、シグマリガンドとの組み合わせにおいて有効であるかどうかは予測できない。斯かる組み合わせの中には、拮抗作用を生じてしまうものもあるからである。その顕著な例が、IKK/NF−κB経路阻害剤の広範な群である。シグマリガンドとの組み合わせで有用なのは一部のサブセットに過ぎず、残りは拮抗作用を生じる可能性がある。従って、単独又は非シグマリガンド剤との組み合わせでは有効である薬剤の中で、シグマリガンドとの組み合わせにおいて有効な可能性がある薬剤を、拮抗性である薬剤から識別するための手段を早急に提供する必要性がある。
【0036】
本発明によれば、リムカゾール及び他のシグマリガンドの治療活性を促進する組み合わせ剤として有用な薬剤は、IKK/NF−κB経路阻害剤の広範な群の範囲内に含まれるが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤として働くサブセットに限定されるものとして特定される。かかる薬剤は、プロテアソ−ム阻害剤、HDAC阻害剤のサブセット、サリドマイド及びその類似物、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤並びにゲルダナマイシン及び17−AAG等のその類似物を含むhsp90阻害剤からなる薬剤群の範囲内にある。
【0037】
IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害するIKK阻害剤は、リムカゾール及びシグマリガンドとの組み合わせで疾患を治療する上では有用ではないが、例えば前記アッセイにおいて、潜在的な組み合わせ剤を同定するための薬剤としては有用である。
【0038】
従って、本発明者等は、IKK/NF−κB機能のアポトーシス促進成分を阻害するIKK/NF−κB経路阻害剤の作用と、NF−κB機能のアポトーシス阻害アームを選択的に阻害するプロテアソ−ム阻害剤等の他の薬剤との間に明確な差異があることを示した。リムカゾールと典型的なプロテアソ−ム阻害剤であるMG132とを組み合わせると、腫瘍細胞死誘導に相乗効果を発揮する。各薬剤の単独投与では亜致死作用に過ぎないが、これらを組み合わせて投与することにより決定的な致死作用に変わる。相乗的な細胞死誘導の例は、エストロゲン受容体(ER)陰性乳癌、肺癌及びグリア芽腫等の広範な固形腫瘍種にみられる。また、急性骨髄性白血病及び多発性骨髄腫等の血液学的悪性腫瘍も例示される。
【0039】
プロテアソ−ム阻害剤MG132が、併用薬剤に応答して、NF−κB経路を阻害することにより、腫瘍細胞死滅を誘導又は促進する能力を有することは、既に多数の文献に記載されている。例としてはMunshi等(2004 Molecular Cancer Therapeutics Vol. 3 pp985-992)及びMeli等(2003 Annals of the New York Academy of Sciences Vol. 1010 pp232-236)が挙げられる。従って、プロテアソ−ム阻害剤は、腫瘍細胞死を促進し、NF−κBのアポトーシス阻害機能に対する抑制効果を発揮するという点ではIKK阻害剤と類似するが、IKK/NF−κB機能のアポトーシス促進アーム及びアポトーシス阻害アームの総体的な抑制と、アポトーシス阻害機能の選択的な抑制との差異を教示するものではない。このためには、NF−κBのアポトーシス促進機能を解明する系の使用が必要となる。リムカゾール及びシグマリガンドに関する現在の知見(特にWO00/00599の教示)は、NF−κB機能の阻害剤はシグマリガンドとの組み合わせにおいて、腫瘍細胞死滅を促進する効力を有しないであろうとするものである。これは現在まで、アポトーシス促進機能及びアポトーシス阻害機能の両方を抑制する薬剤と、NF−κB機能のアポトーシス阻害アームを選択的に抑制し得る薬剤との差異が示唆されていないためである。実際に従来技術は、シグマリガンド誘導性のアポトーシスはIKK機能の阻害剤によって低減されるであろうと教示する。これに対して、本発明は、特定のカテゴリーのIKK/NF−κB経路阻害剤がリムカゾール及びシグマリガンドに誘導される細胞死を促進する上で有用であること、また、かかる薬剤は、IKK/NF−κB機能のアポトーシス阻害アームを選択的に抑制し、IKK/NF−κB機能のアポトーシス促進アームを抑制しない薬剤に限定されることを教示する。かかる薬剤の一例はMG132である。
【0040】
Dai等(2003 Oncogene Vol. 22 pp7108-7122)の文献は、更に、MG132に応答してNF−κBのDNA結合が減少すること、及び、MG132とフラボピリドール等のcdk阻害剤とが白血病細胞死促進の相乗作用を有することを記載する。同論文には、IKK阻害剤であるBAY 11-7082が、フラボピリドール誘導性のアポトーシスを促進することも記載されているが、これに対して本発明では、リムカゾール誘導性の細胞死が同一のIKK阻害剤によって低減されることを教示する。即ち、フラボピリドール及び他のcdk阻害剤は、アポトーシス誘導においてNF−κBを要求せず、従ってリムカゾール及び他のシグマリガンドからは区別される。従ってDai等による報告は、MG132及びIKK阻害剤が、cdk阻害剤と組み合わされた場合に、同等の経路でアポトーシス誘導の促進作用を発揮することを教示する。対して本発明は、MG132等のプロテアソーム阻害剤が、NF−κBに対する阻害効果にもかかわらず、リムカゾールに応答して白血病及び固形腫瘍細胞の死滅を促進することを教示する。これは、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームを阻害することにより、リムカゾール誘導性の細胞死滅を促進するよりもむしろ低減するIKK/NF−κB経路阻害剤の効果と著しい対比をなしている。
【0041】
更に本発明者等は、リムカゾールとMG132との相乗効果は、IKK/NF−κB経路活性化に依存することを示す。これは、IKK/NF−κB経路阻害剤を、リムカゾール等の典型的なシグマリガンド及びMG132等の典型的なプロテアソーム阻害剤との3剤組み合わせで提供した場合に、細胞死が著しく軽減されることから明らかである。これは、特定のIKK/NF−κB経路阻害剤によるIKK/NF−κB機能のアポトーシス促進アームの阻害と一致し、典型的なプロテアソ−ム阻害剤MG132によるNF−κBのアポトーシス阻害機能の選択的阻害とは対照をなしている。
【0042】
更なる組み合わせ剤の分類は、いわゆるヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)薬剤群のサブセットである。斯かる薬剤群は、本技術分野では既に抗癌剤として、単独療法又は他の薬剤との組み合わせにおいて公知である。しかし、HDACiとNF−κB経路との関係は複雑であり、NF−κB経路の阻害剤や活性化因子として種々の報告がなされている。例えば、公知の抗てんかん及び抗癌剤HDAC阻害剤バルプロ酸ナトリウム(又はバルプロ酸)は、NF−κB活性を阻害すると報告されている(Ichiyama 2000 Brain Research Vol. 857 pp246-251; Ogbomo等. 2007 FEBS Lett. Vol. 581 ppl317-1322)。別のHDAC阻害剤は、非小細胞肺癌細胞において腫瘍壊死因子に応答して誘導されるNF−κB活性を抑制することが示されている(Imre等 2006 Cancer Research Vol. 66 pp5409-5418)。しかし、これらの薬剤によってNF−κB機能のアポトーシス促進アームが阻害されるか否かについては教示がない。また、HDACiがアポトーシス阻害モードのNF−κB経路を活性化するという報告も多数存在する(Kim等, 2006 Cell Death and Differentiation Vol. 13 pp2033-2041; Dai等, 2005 Molecular and Cellular Biology Vol.25 pp5429-5444)。
【0043】
本発明者等は、驚くべきことに、あるHDAC阻害剤のサブセット(本明細書では例としてバルプロ酸ナトリウムを示す)が、アポトーシス促進アームを阻害しない、IKK/NF−κB経路機能のアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤であることを特定した。バルプロ酸ナトリウムは、リムカゾールとの組み合わせで使用した場合に、白血病及び固形腫瘍細胞株等の幅広い悪性の細胞株において、細胞死誘導において顕著な相乗効果を発揮する。従って、本発明の特定の態様は、癌及び炎症性疾患を治療するために、リムカゾール又は他のシグマリガンドとの組み合わせにおいて、バルプロ酸ナトリウム(別名バルプロ酸)及びその誘導体を使用することである。
【0044】
別の組み合わせ剤としては、サリドマイド及びサリドマイド類似物が挙げられる。これらの薬剤は、本技術分野ではNF−κB経路阻害剤として公知であるが(Kobayashi等, Cancer Research 65: 10464-10471, 2005)、IKK/NF−κB経路機能のアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤としては、現時点では知られていない。本発明者等は、かかる薬剤がIKK/NF−κB経路機能のアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤として作用することを実証した。
【0045】
他の組み合わせ剤の分類は、キナーゼmTORの阻害剤であり、例としてはラパマイシン及びその類似物(「ラパログ」)が挙げられる。mTORはアポトーシス阻害機能を媒介し、IKKによって活性化されることが知られている(Dan等, Cancer Res. 67:6263- 6269, 2007)。本明細書は、mTORの阻害剤がIKK経路のアポトーシス阻害アームを選択的に阻害する作用を有し、それ故に抗腫瘍及び抗炎症効果において、リムカゾール及び他のシグマリガンド(アポトーシス促進モードにおいてIKK/NF−κBを保証する薬剤)と協働し得ることを開示する。mTORの阻害剤の特定には、本明細書に記載される、IKK経路への関与に基づいて適切な組み合わせ剤を同定するアッセイを用いるのが好適である。
【0046】
更なる組み合わせ剤の分類は、PI−3キナーゼ経路、惹いてはAkt(PKB)を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤である。IKKは、Aktによって活性化されることが知られており(Agarwal等, Oncogene 24: 1021-1031, 2005)、それ故にAktの阻害は、IKK経路機能の阻害も達成するはずである。
【0047】
チロシンキナーゼ阻害剤は、本技術分野ではIKK/NF−κB経路阻害剤として公知である(An等. Mol. Cancer Ther. 6(1):61-69, 2007; Appel等, Clin. Cancer Res. 11(5):1928-1940, 2005)が、IKK経路のアポトーシス促進アームを阻害しないIKK/NF−κB経路機能のアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤としては公知でない。本明細書では、リムカゾール及びシグマリガンドがIKKをアポトーシス促進モードに関与させることを初めて開示する。チロシンキナーゼ阻害がIKK機能のアポトーシス阻害モードを選択的に阻害することから、チロシンキナーゼ阻害は、本明細書に記載の同定方法により特定される本発明の組み合わせ剤として適していることが分かる。
【0048】
リムカゾール及び他のシグマリガンドとの組み合わせにおいて癌の治療にとりわけ有用であるチロシンキナーゼ阻害剤は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤の分類に含まれる。EGFRの活性化は、前立腺(Le Page等, 2005 The Prostate 65(2):130-140)、ER陰性乳癌(Van Laere等, 2007 Br J Cancer 97(5) 659-669)及び非小細胞肺癌(Sethi等, 2007 Oncogene 26(52):7324- 7332)等の種々の腫瘍において、NF−κB経路の活性化を推進することが知られている。
【0049】
従って、EGFRシグナル伝達の阻害から、NF−κB経路を阻害することは予測されるものの、リムカゾールとの組み合わせにおいて抗腫瘍活性を促進することは予測できない。我々は本明細書において、EGFR阻害が、アポトーシス促進活性を阻害することなくNF−κB機能のアポトーシス阻害アームを選択的に阻害し、腫瘍細胞におけるリムカゾール媒介性の細胞死を促進することを示す。本明細書では例として、EGFRの低分子阻害剤、ゲフィチニブ(別名Iressa)を提供する。即ち、Iressaは組み合わせ剤として特に有用である。
【0050】
他の組み合わせ剤の分類としては、hsp-90阻害剤の群が挙げられる。例としては、ゲルダナマイシン及びゲルダナマイシン類似物17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG、NSC 330507)及び他のゲルダナマイシン誘導体をが挙げられる。17−AAGは、本技術分野では肺癌細胞におけるTNF媒介性NF−κB活性化の阻害剤として公知であるが(Wang等 2006 Cancer Research Vol. 66 ppl089-1095)、NF−κB媒介性アポトーシス阻害機能の選択的阻害剤としては公知ではない。この分類の薬剤は、NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを選択的に阻害する上で有用であり、それ故にIKK/NF−κB経路のアポトーシス促進誘導に媒介されるシグマリガンド誘導性細胞死滅を促進することを、本明細書において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、HL-60(急性前骨髄性白血病)及び0PM2(多発性骨髄腫)細胞における、リムカゾール処理後2時間(HL-60)、4時間(OPM-2)及び24時間の免疫ブロット法によるI-κBレベルを示す。アクチン免疫ブロット法は、均一のローディングを確認した。
【図2】図2は、H1299肺癌細胞におけるEMSA(電気泳動移動度シフトアッセイ)であり、リムカゾールによって誘導されるHIV κBコンセンサス部位へのNF-κBの結合を示す。TNFは、陽性コントロールとして使用した。
【図3】図3は、コントロール非標的siRNA(斜線帯)と比較した、RelA(p65)に対してsiRNAにより処理されたH1299(肺癌)細胞(濃い色の帯)における、薬物賦形剤処理コントロール細胞に対して表されたリムカゾールの細胞数における効果を示す。値は、平均(±SEM)で表される。20マイクロモルのリムカゾールへの暴露時にReIA(p65)がノックダウンされた細胞は、その細胞死滅及び成長阻害効果から実質的に保護された。
【図4】図4は、H1299細胞において、NF-μB阻害剤JSH-23を有する及び有さない場合の細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒三角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。十字形:10マイクロモルのJSH-23。白三角形、破線:12.5マイクロモのリムカゾール及び10マイクロモルのJSH-23。
【図5】図5は、I-κB(破線)のスーパーリプレッサー形態又はコントロールのみのベクター(実線)を発現しているHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。リムカゾールは、3.125マイクロモル(ひし形)、6.25マイクロモル(三角形)及び12.5マイクロモル(四角形)で添加された。
【図6】図6は、HL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾール及びBAY 11-70782の効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。三角形:5 マイクロモルのBAY 11-7082。円形:0.5マイクロモルのBAY 11-7082。白四角形:0.5マイクロモルのBAY 11-7082及び12.5マイクロモルのリムカゾール。
【図7】図7は、IKK阻害剤パルテノライドを有する及び有さないHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。黒三角形:5マイクロモルのパルテノライド。十字形:1マイクロモルのパルテノライド。白四角形、幅広い破線:12.5マイクロモルのリムカゾール及び5マイクロモルのパルテノライド。白四角形、幅狭い破線:12.5マイクロモルのリムカゾール及び1マイクロモルのパルテノライド。
【図8】図8は、IKK阻害剤IMD 0354を有する及び有さないHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。十字形、実線:0.5マイクロモルのIMD 0354。十字形、破線:12.5マイクロモルのリムカゾール及び0.5マイクロモルのIMD 0354。
【図9】図9は、IKK阻害剤SC-514を有する及び有さないH1299細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒三角形:15マイクロモルのリムカゾール。十字形:30マイクロモルのSC-514。白三角形、破線:15マイクロモルのリムカゾール及び30マイクロモルのSC-514。
【図10】図10は、プロテアソ−ム阻害剤MG132を有する及び有さないHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:6.25マイクロモルのリムカゾール。円形:0.1マイクロモルのMG132。白四角形、破線:6.25マイクロモルのリムカゾール及び0.1マイクロモルのMG132。
【図11】図11は、HL-60細胞において、リムカゾールに媒介されるI-κBの減少におけるプロテアソ−ム阻害剤MG132の効果を示す。l=コントロール;2=12.5マイクロモルのリムカゾール;3=12.5マイクロモルのリムカゾール及び0.5マイクロモルのMG132。
【図12】図12は、プロテアソ−ム阻害剤MG132を有する及び有さないMDA-MB231細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。四角形:0.1マイクロモルのMG132。黒三角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。白三角形、破線:12.5マイクロモルのリムカゾール及び0.1マイクロモルのMG132。
【図13】図13は、プロテアソ−ム阻害剤MG132を有する及び有さないU118細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。四角形:0.1マイクロモルのMG132。黒三角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。白三角形、破線:12.5マイクロモルのリムカゾール及び0.1マイクロモルのMG132。
【図14】図14は、プロテアソ−ム阻害剤ボルテゾミブ(Velcade)を有する及び有さないH1299細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒三角形:20マイクロモルのリムカゾール。十字形:7ナノモルのVelcade。白三角形、破線:20マイクロモルのリムカゾール及び7ナノモルのVelcade。
【図15】図15は、プロテアソ−ム阻害剤MG132及びIKK阻害剤BAY 11-7082を有する及び有さないHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:6.25マイクロモルのリムカゾール。三角形:0.1マイクロモルのMG132。白四角形、大きな破線:6.25マイクロモルのリムカゾール及び0.1マイクロモルのMG132。十字形、破線:6.25マイクロモルのリムカゾール、0.1マイクロモルのMG132及び1マイクロモルのBAY 11-7082。
【図16】図16は、プロテアソ−ム阻害剤MG132及びIKK阻害剤BAY 11-7082を有する及び有さないHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。円形:0.01マイクロモルのMG132。白円形:12.5マイクロモルのリムカゾール及び0.01マイクロモルのMG132。黒三角形:0.5マイクロモルのBAY 11-7082。白三角形:12.5マイクロモルのリムカゾール及び0.5マイクロモルのBAY ll-7082。十字形:12.5マイクロモルのリムカゾール、0.01マイクロモルのMG132及び0.5マイクロモルのBAY 11-7082。
【図17】図17は、プロテアソ−ム阻害剤MG132及びIKK阻害剤パルテノライドを有する及び有さないHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:6.25マイクロモルのリムカゾール。三角形:0.1マイクロモルのMG132。白四角形:6.25マイクロモルのリムカゾール及び0.1マイクロモルのMG132。十字形:6.25マイクロモルのリムカゾール、0.1マイクロモルのMG132及び5マイクロモルのパルテノライド。
【図18】図18は、HDAC阻害剤バルプロ酸ナトリウムを有する及び有さないHL-60細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒三角形:6.25マイクロモルのリムカゾール。十字形:1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。白三角形、幅広い破線:6.25マイクロモルのリムカゾール及び1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。四角形:0.5ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。白三角形、幅狭い破線:6.25マイクロモルのリムカゾール及び0.5ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。
【図19】図19は、HDAC阻害剤バルプロ酸ナトリウムを有する及び有さないH1299細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:6.25マイクロモルのリムカゾール。三角形:1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。白四角形:6.25マイクロモルのリムカゾール及び1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。十字形、幅広い破線:0.5ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。十字形、幅狭い破線:6.25マイクロモルのリムカゾール及び0.5ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。
【図20】図20は、HDAC阻害剤バルプロ酸ナトリウムを有する及び有さないMDA MB 231細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。黒三角形:1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。白四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール及び1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。
【図21】図21は、HDAC阻害剤バルプロ酸ナトリウムを有する及び有さないU118MG細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。ひし形:コントロール。黒四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール。黒三角形:1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。白四角形:12.5マイクロモルのリムカゾール及び1ミリモルのバルプロ酸ナトリウム。
【図22】図22は、EGFR阻害剤ゲフィチニブを有する及び有さないH1299 NSCLC細胞において、細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。
【図23】図23は、EGFR阻害剤ゲフィチニブを有する及び有さないMDA-MB-468乳癌細胞において、生存細胞数におけるリムカゾールの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
シグマ受容体リガンド
特異的なシグマ受容体リガンドは、古典的なオピオイド受容体(μ、δ、κ)、ドーパミン、セロトニン、フェンシクリジン、及びβ-アドレナリン受容体等の他の公知の受容体よりも実質的な優先傾向においてシグマ受容体に結合する。シグマ受容体に対するリガンドは、Vilner等, Cancer Res. ,55(2) :408-413, 1995において開示された方法によって同定され得る。
【0053】
想定されるシグマリガンドのシグマ受容体上の部位への結合は、(+)-ペンタゾシン(シグマ-1部位結合をアッセイする)及び1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DTG)(シグマ-2部位結合をアッセイする)、並びにWalker等, Pharmacological Reviews, 42:355-400, 1990によって発表されたような典型的なシグマリガンドとの比較によって測定され得る。放射性標識又は化学的に標識された原型シグマリガンドは、細胞調製においてシグマ受容体に結合できる。想定されるリガンドによって置換された標識された原型シグマリガンドの量が測定され、シグマ受容体の想定されるリガンドの親和性を算出するために使用される。
【0054】
本明細書において使用される"シグマ受容体"とは、シグマ受容体(シグマ1、シグマ2受容体等)の様々な形態、及びそのスプライス変異体等のアイソフォームを言う。シグマ受容体結合アッセイは、例えばVilner等, Cancer Research 55(2):408-413,1995において開示され、また典型的にシグマ受容体を発現することが公知であるヒト腫瘍細胞株等の細胞型から、慣用のプロトコールを用いて粗膜部分(crude membrane portion)等の適切な調製品を作ることに関与する。かかる細胞株の例は、A375黒色腫(受入番号:ECACC 88113005)、SK-N-SH神経芽細胞腫(受入番号:ECACC 86012802)及びLNCaP.FGC前立腺(受入番号:ECACC 89110211)を含むだろう。これらの細胞株は、European Collection of Animal Cell Cultures(Porton Down,英国)から、示された受入番号を参照して入手できる。
【0055】
WO 00/00599において開示されたように、同一の受容体又は異なるシグマ受容体タイプ内に位置するシグマ結合部位(ポケット)は、抗細胞死又は細胞死促進の何れかである可能性を有し、それ故にシグマリガンドのシグマ部位への占有能力は、治療効果を予測するのに不十分である。WO 00/00599は、腫瘍及び炎症性疾患を治療する上で有用な薬剤を同定するために、シグマ部位結合(典型的に放射性リガンド結合アッセイによる)と、どの当業者によってでも実施され得る細胞の選択的な死及び/又は増殖抑制に関する機能的な「インビトロ」アッセイを組み合せる方法を解明した。これは特にいくつかのシグマリガンドが、腫瘍組織よりもむしろ正常組織に選択的に標的化されることを前提として要求される。細胞の選択的な死を決定するためのアッセイと、シグマリガンドとしての薬剤を同定するためのアッセイ(しかしそれがアゴニスト(刺激剤)又はアンタゴニスト(阻害剤)であるかないかではない)との組み合せは、本発明の薬剤を定義するために要求される。これは、有用な薬剤、対、腫瘍成長又は炎症(大まかに言えばシグマ-1アゴニスト又はシグマ-2アンタゴニスト等)を刺激するのに作用し得る薬剤、並びに所望されない副活性を有するシグマリガンドを含み得る非特異的に毒性であり得る薬剤の間に差異を作るのを可能にするだろう。
【0056】
腫瘍及び炎症性疾患の治療に有用なシグマリガンドは、以下の3つの本質的な特徴を示す薬剤を含む。i)シグマ受容体がシグマ-1及びシグマ-2受容体、並びにスプライス変異体等のシグマ受容体のアイソフォームを含む場合の、他の公知の受容体に対する実質的な優先におけるシグマ受容体との結合。ii)生存のために自己分泌シグナル(同じタイプの細胞からの要因)に全て又は部分的に依存している細胞における細胞死及び/又は増殖阻害の誘導。これらのいわゆる"自己依存性"細胞は、腫瘍及び持続性の炎症細胞等の病的な細胞、並びに微小血管細胞及び水晶体上皮細胞等の生存調節の不規則な特質を示す非病的な"正常"細胞を含む。iii)in vivoにおいて生存するための、他の細胞型からのシグナル要求等の生存及び増殖調節の典型的な特質を有する正常細胞への毒性の欠如。かかる細胞は、正常の、限りある寿命の(非不死の)増殖型又は非増殖型の上皮細胞、繊維芽細胞又はリンパ細胞を含む(WO 00/00599、WO 01/074359A1及びWO 06/021811A2)。
【0057】
好適なシグマリガンドは、シグマ-1アンタゴニスト、シグマ-2アゴニスト及び混合されたシグマ-1アンタゴニスト/シグマ-2アゴニスト化合物を含む。ここでは、i)シグマ-1アンタゴニストは、未処理の自己依存性細胞及びシグマ-1アンタゴニストで処理された非自己依存性細胞との比較において、自己依存性(腫瘍、炎症又は他の標的群)細胞数の正味の減少を引き起こすような方法でシグマ-1受容体に結合し、シグマ-1受容体の生存機能を抑制する薬剤として定義され、ii)シグマ-2アゴニスト化合物は、未処理の自己依存性細胞及びシグマ-2アンタゴニストで処理された非自己依存性細胞との比較において、自己依存性(腫瘍、炎症又は他の標的群)細胞数の正味の減少を引き起こすような方法でシグマ-2受容体に結合し、シグマ-2受容体の細胞死促進機能を刺激する薬剤として定義される。
【0058】
本発明において有用なシグマ受容体リガンドの例は:
リムカゾール(cis-9-[3,5-ジメチル-1-ピペラジニル)プロピル]カルバゾ−ル);
リムカゾール変異体、特にリムカゾール二塩酸塩(cis-9-[3,5-ジメチル-1-ピペラジニル)プロピル]カルバゾ−ル二塩酸塩)等の医薬的に許容され得る塩;
3,6-ジブロモ-9-[3-[cis-3,5-ジメチル-1-ピペラジニル)-プロピル]カルバゾ−ル塩酸塩(5)及び1,3,6-トリブロモ-9-[3-(cis-3,5-ジメチル-1-ピペラジニル)プロピル]カルバゾ−ル塩酸塩、3-ニトロ-9-[3-[cis-3,5-ジメチル-l-ピペラジニル)プロピル]カルバゾ−ル塩酸塩、3-アミノ-9-[3-(cis-3,5-ジメチル-l-ピペラジニル) プロピル]-カルバゾ−ル塩酸塩、3,6-ジニトロ-9-[3-(cis-3,5-ジメチル-l-ピペラジニル)プロピル]-カルバゾ−ル塩酸塩、9-[3-(cis-3,5-ジメチル-4-[3-フェニルプロピル]-1-ピペラジニル)-プロピル]カルバゾ−ル臭化水素酸塩、l-ブロモ-3-プロピルテトラヒロドピラノール、9-(l-テトラヒドロピラノール-3-プロピル)カルバゾ−ル、9-(1-ブロモ-3- プロピル)カルバゾ−ル、9-[(4-フェニル-l-ピペラジニル)プロピル]カルバゾ−ル臭化水素酸塩、9-[(4-[1-クロロフェニル]-1-ピペラジニル)プロピル]カルバゾ−ル臭化水素酸塩、1-テトラヒドロピラノール-3-プロピルジフェニルアミン、l-ジフェニルアミノ-3-プロパノール、l-ブロモ-3-プロピルジフェニルアミン、[3-(cis-3,5-ジメチル-1-ピペラジニル)プロピル]ジフェニルアミンシュウ酸塩、[3-(cis-3,5-ジメチル-4-[3-フェニルプロピル]-1-ピペラジニル)-プロピル]ジフェニルアミン塩酸塩を含むリムカゾール変異体;
水和物又はアルコラート等のリムカゾール及びリムカゾール変異体の溶媒和物;
SH3-28、SHl-76、SHl-70、SH2-46(A)、SH3-77、SH3-76、SHl-73、SH2-11、SH1-57、SHl-93、SH3-24、JJCl-038、JJC1-045、JJC1-057、JJCl-059、JJC2-004、JJC2-006、JJC2-008(別表の構造を参照)及びHusbands等, J. Med Chem. 42:4446-4455,1999及びCao等, J. Med. Chem. 46:2589-2598,2003において開示された関連化合物を含むリムカゾール変異体(類似物);
リムカゾール代謝産物;
IPAG(1-(4-ヨードフェニル)-3-(2-アダマンチル)グアニジン、ハロペリドール、還元されたハロペリドール、及びブチロフェノン分類の中にある他の薬物
BD-1047(N(-)[2-(3,4-ジクロロフェニル)エチル]-N-メチル-2-(ジメチルアミノ)エチルアミン)、
BD-1063(l(-)[2-(3,4-ジクロロフェニル)エチル]-4-メチルピペラジン、
PB28、
NE-100、
BD-1008、
BMY 14802、
カルベタペンタン、
エリプロジル、
イフェンプロジル、
GBR 12909、
TC1、
L-693,403、
メタフィット(Metaphit)、
4-PPBP、
l,3-ジ(2-トリル)グアニジン(DTG)、
イボガイン、
U50488及び類似物のcis-異性体、
プロゲステロン、RU3117、RU1968及びデソキシコルチコステロン等のステロイド、
BD614、
CB-64D、
CB-184、
BD737、
LRl72、
SH344、
シラメシン及びシラメシン変異体並びに類似物、
SR 31747及びSSR 125329、
Anavex 7-1037、Anavex 8-142、Anavex 27-1041、Anavex 30-1022、Anavex 40-1042、Anavex 28-1078、Anavex 35-3016(www.anavex.com)、
パナメシン、フルボキサミン、セルトラリン、オピプラモール、ペルフェナジン、フルフェナジン、(-)-ブタクラモール、アセトフェナジン、トリフルオペラジン、モリンドン、ピモジド、チオリダジン、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、BMY 13980、レモキシプリド、チオスピロン、シヌペロン(HR 375)、WY47384、アミトリプチリン及びイミプラミンを含むシグマ部位に中程度から高度の効力で結合する、ハロペリドール及びリムカゾール以外の更なる抗精神病剤及び潜在的な抗精神病剤、並びに抗うつ剤を含む。
【0059】
好適なシグマ受容体リガンドは、リムカゾール(BW 234U)(cis-9-[3,5-ジメチル-l-ピペラジニル)プロピル]カルバゾ−ル二塩酸塩)、抗精神病として(例えば米国特許No:5,955,459を参照)、及びコカインの活性を遮断する薬剤として(Menkel等, Eur. J. Pharmacol., 201:251-252, 1991)の活性を有することが公知である化合物である。リムカゾール変異体の範囲は公知である(上記のHusbands等 1999及びCao等 2003を参照)。
【0060】
更に好適なリガンドは、リムカゾール変異体、特にリムカゾール 二塩酸塩等の医薬的に許容され得る塩;水和物又はアルコラート等のリムカゾール溶媒和物;リムカゾールのコア構造が変化して、構成的に関連するが、明確に相違する化学化合物を作り出すリムカゾール類似物;リムカゾール代謝産物;IPAG;ハロペリドール及び還元されたハロペリドール;イボガインを含む。
【0061】
リムカゾールは、当業者によって、例えば以下のリムカゾール二塩酸塩(9-3-((3R,5S)-3,5ジメチル-ピペラジン-1-イル)-プロピル-9H-カルバゾ−ル二臭化水素酸塩)の合成を用いて容易に生産され得る。
【0062】
シントンAを生み出すための合成経路は、Whitmore等, JACS, 66:725-731, 1944が適応され得る。Bの合成は、Harfenist等, JOC, 50:1356-1359, 1985において示されるトランス化合物の立体特異的な合成を用いて実行され得る。その後に2つの前駆体が結合させられて、リムカゾール二塩酸塩が生み出され得る。
【0063】
アッセイ法
本発明は、本発明の組み合わせ剤を同定するための方法も含む。特に本発明は、IKK/NFκB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、シグマリガンドによって活性化されたIKK/NFκB経路のアポトーシス促進アームを阻害しない薬剤を同定するための方法を提供する。従って本薬剤がリムカゾール等のシグマ受容体リガンドと組み合わされた場合には相乗的な細胞死誘導はあるが、これらの2つの薬剤がIKK/NF-κB経路機能のアポトーシス促進成分を阻害するIKK/NF-κB阻害剤の分類に属する1つ以上の薬剤と更に組み合わされた場合には細胞死が緩和されるだろう。
【0064】
典型的な方法は、
i)試験細胞群をシグマ受容体リガンドと接触させ、細胞死をアッセイし、
ii)試験細胞群を試験薬剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドと接触させ、細胞死をアッセイし、
iii)試験細胞群を前記試験薬剤及びIKK阻害剤(好適には非選択的IKK阻害剤又は選択的IKK2阻害剤)との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドと接触させ、細胞死をアッセイすることを含んでなり、
ここでは(i)で生じる細胞死の量は(ii)で生じる細胞死の量に満たず、且つ(iii)で生じる細胞死の量を上回る。
【0065】
典型的なIKK阻害剤は、BAY 11-7082、((E)3-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-2-プロペンニトリル)、パルテノライド(C15H20O3)、IMD 0354(N-(3,5-Bis-トリフルオロメチルフェニル)-5-クロロ-2-ヒドロキシベンズアミド)、BAY 11-7085((E)3-[(4-t-ブチルフェニル)スルホニル]-2-プロペンニトリル)、ウェデロラクトン(7-メトキシ-5,ll,12-トリヒドロキシ-クメスタン)、BMS-345541(4-(2'-アミノエチル)アミノ-l,8-ジメチルイミダゾ[l,2-a]キノキサリン)、IKK2阻害剤IV([5-(p-フルオロフェニル)-2-ウレイド]チオフェン-3-カルボキサミド、IKK2阻害剤VI((5-フェニル-2-ウレイド)チオフェン-3-カルボキサミド)、SC-514、PS1145、IKK阻害剤ペプチド(細胞透過性)(Ac-AAVALLPAVLLALLAPDDRHDSGLDSMKDE-NH2)を含む。
【0066】
アッセイを行うために好適な細胞系は、HL-60、AML193、CTV-1、EOL-1、GF-D8、KASUMI-1、KG-1、KG-1a、ML3、MVTZ-2、MV4-11、OCI-AML2、OCI-AML5、PLB-985、UT-7細胞株等の骨髄性白血病細胞株である。
【0067】
好適な態様では試験薬剤は、プロテアソ−ム阻害剤又はHDAC阻害剤である。
【0068】
治療における組み合わせ剤として、又はアッセイにおける試験薬剤として使用され得る典型的なプロテアソ−ム阻害剤は、MG132、ボルテゾミブ(Velcade、PS341、[(1R)-3-メチル-1-[[(2S)-l-オキソ-3-フェニル-2-[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸)、サリノスポラミドA(NPI-0052)、ALLnL、ALLnM、LLnV、PSI、CEP1612、MG-262、PS273、NLVS、YLVS、ジヒドロエポネマイシン、エポキシミック(epoxymic)、ラクタシスチンを含む。
【0069】
治療における組み合わせ剤として、又は試験薬剤として使用され得る典型的なHDAC阻害剤は、バルプロ酸ナトリウム(バルプロ酸)、5-(4-ジメチルアミノベンゾイル)アミノ吉草酸ヒドロキサミド(4-Me2N-BAVH)を含むベンゾイルアミノアルカノヒドロキサム酸、FR901228(FK228)、FR235222を含む。
【0070】
更なる態様では、組み合わせ剤又は試験薬剤は、NF-κB経路阻害剤として公知でもあるが(Kobayashi等, Cancer Research 65: 10464-10471, 2005;Singh等. MoI. Cancer Ther. 6(7) : 1973-1982, 2007; An等. Mol. Cancer Ther. 6(1) : 61-69, 2007; Appel等, Clin. Cancer Res. 11(5):1928-1940)、アポトーシス阻害アームの選択的阻害剤としては公知でない、サリドマイドの類似物又はチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0071】
典型的なサリドマイド類似物は、サリドマイド自体(2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジル)イソインドール-1,3-ジオン)、レナリドマイド(Revlimid、CC-5013)、ACTIMID(CC-4047) 、CC-1069、CC-3052、CPS11、CPS49、チオサリドマイド、N-置換された及び四フッ素化されたサリドマイド類似物を含む。
【0072】
典型的なチロシンキナーゼ阻害剤は、トラスツズマブ(Herceptin)、ゲフィチニブ(Iressa)、イマチニブ(Gleevec、Glivec)、エルロチニブ(Tarceva)、ラパチニブ(Tykerb)、セツキシマブ(Erbitux)、ベバシズマブ、AZD2171(Recentin)、ダサチニブ(Sprycel、BMS-354825)、ニロチニブ(AMN107)、スニチニブ(Sutent、SU11248)、セマキサニブ(SU5416)、バンデタニブ(ZD6474、Zactima)、HKI-272、HKI-357、EKB-569、CL-387,785、TheraCIM(h-R3)、パニツムマブ(ABX-EGF)、マツズマブ、ニモツズマブ、及びザルツムマブを含む。これらの中で、ゲフィチニブ(Iressa)、エルロチニブ(Tarceva)、ラパチニブ(Tykerb)、セツキシマブ(Erbitux)、HKI-272、HKI-357、EKB-569、CL-387,785、TheraCIM(h-R3)、パニツムマブ(ABX-EGF)、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブは、EGFR受容体阻害剤である。
【0073】
更なる態様では、組み合わせ剤又は試験薬剤は、IKKによってそのアポトーシス阻害モードにおいて活性化されるmTORの阻害剤であり、それ故にラパマイシン及びその類似物("ラパログ")等のmTORの阻害剤は、IKK経路のアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤として作用し、それ自体は本明細書に記載の方法によって獲得されて適切な組み合わせ剤を同定する。
【0074】
典型的なmTOR阻害剤は、ラパマイシン、並びにテムシロリムス(CCI-779、Torisel)、エベロリムス(RADOOl)、AP23573及び特許US 5,527,907、US 6,984,635及びUS 6,187,757において列挙される薬剤等のその類似物を含む。
【0075】
典型的な細胞死及び生存細胞数のアッセイは、例えばSpruce等 WO 00/00599, WO 01/74359及びCancer Research 2004 Vol. 64 pp4875-4886において既に完全に開示されている。
【0076】
本発明のアッセイに添加され得る試験物質又は化合物の量は、使用される化合物のタイプに応じて、試行錯誤によって標準的に決定されるだろう。典型的に増殖/生存アッセイは、典型的に0.1〜100 μMの試験化合物を採用するだろう。
【0077】
使用され得る化合物は、薬物スクリーニングプログラムにおいて使用される天然又は合成化合物であり得る。いくつかの特徴付けられた、又は特徴付けられない成分を含む植物抽出物も使用され得る。他の候補化合物は、ポリペプチド又はペプチドフラグメントの三次元構造をモデリングし、合理的薬物設計を使用することに基づき、特定の分子形状、大きさ及び電荷特性を有する潜在的な阻害剤化合物を提供し得る。
【0078】
標的細胞の増殖及び/又は生存を調節し、又はそれらに影響を及ぼす物質又は薬剤の同定の後に、これらの物質又は薬剤は更に研究され得る。更にそれは製造され、及び/又は調製、すなわち薬剤等の組成物、医薬組成物又は薬物の製造又は製剤において使用され得る。これらは、個体に投与され得る。
【0079】
誘導体
本発明の薬剤は、多様な方法において誘導体化され得る。本明細書において使用される化合物の"誘導体"とは、塩、エステル及びアミド、遊離酸又は塩基、水和物、プロドラッグ又はカップリングパートナーを含む。
【0080】
本発明の化合物の塩は、好適には生理学的によく耐性化され、且つ非毒低である。塩の多くの例は、当業者に公知である。リン酸塩又は硫酸塩等の酸性基を有する化合物は、Na、K、Mg及びCa等のアルカリ又はアルカリ土類金属、並びにトリエチルアミン及びトリス(2-ヒドロキシエチル)アミン等の有機アミンと共に塩を形成し得る。塩は、塩基性基(例えばアミン)を有する化合物と無機酸(塩酸、リン酸又は硫酸等)又は有機酸(酢酸、クエン酸 、安息香酸、フマル酸、又は酒石酸等)を有する化合物の間で形成され得る。酸性基と塩基性基の両方を有する化合物は、内部塩を形成し得る。
【0081】
エステルは、本技術分野において周知な技術を用いて、化合物中に存在するヒドロキシル又はカルボン酸基、及び適切なカルボン酸又はアルコール反応パートナーとの間で形成され得る。
【0082】
化合物のプロドラッグとして作用する誘導体は、in vivo又はin vitroにおいて化合物の1つに変換可能である。典型的に少なくとも1つの生物活性化合物は、化合物のプロドラッグ形態に還元され、プロドラッグの変換によって活性化されて、化合物又はその代謝産物を放出し得る。プロドラッグ治療の用途の1例は、プロドラッグを活性薬物又は毒素に変換することができる酵素に結合した細胞上の疾患マーカーに特異的な抗体の用途である。
【0083】
他の誘導体は、化合物のカップリングパートナーを含み、ここでの化合物は、カップリングパートナーと、例えば化学的に化合物に結合することによって、又は物理的にそれに付随することによって連結される。カップリングパートナーの例は、標識又はレポーター分子、支持基質、担体又は輸送分子、エフェクター、薬物又は阻害剤を含む。カップリングパートナーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基等の化合物上の適切な官能基を介して、本発明の化合物に共有結合的に連結され得る。
【0084】
医薬組成物
本明細書に記載の薬剤又はそれらの誘導体は、医薬組成物に製剤化され、多様な形態において患者に投与され得る。
【0085】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉体又は液体の形態であり得る。錠剤は、ゼラチンもしくはアジュバント等の固体の担体又は不活性希釈剤を含み得る。液体の医薬組成物は、一般に水、石油、動物もしくは植物油、鉱油又は合成油等の液体担体を含む。生理食塩水、デキストロースもしくは他のサッカリド溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール等のグリコールは、含まれ得る。かかる組成物及び調製品は、一般に少なくとも0.l重量%の化合物を含む。
【0086】
非経口投与は、以下の経路:静脈内、皮膚又は皮下、鼻、筋肉内、眼球内、経上皮、腹腔内、及び局所(皮膚、眼球、直腸、鼻、吸入及び エアロゾルを含む)、並びに直腸全身経路による投与を含む。静脈、皮膚又は皮下注入、或いは苦痛部位での注入に関して活性成分は、非経口的に許容され得る、発熱物質が存在せず且つ適切なpH、等張性及び安定性を有する水性溶液の形態にあるだろう。当業者は、例えば、化合物又はその誘導体の溶液(例えば生理食塩水中、液体ポリエチレングリコール又はオイルにより調製された分散)を用いて適切な溶液をうまく調製することができる。
【0087】
1つ以上の化合物に加えて、任意に他の活性成分との組み合わせにある組成物は、1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤、等張剤、防腐剤又は抗酸化剤、或いは他の当業者に周知の材料を含み得る。かかる材料は、非毒性であり、且つ活性成分の効果を妨げないべきである。担体又は他の材料の正確な特質は、投与経路(例えば経口的又は非経口的)に依存し得る。
【0088】
液体の医薬組成物は、典型的に約3.0〜9.0、より好適には約4.5〜8.5の間、並びにより好適には約5.0〜8.0の間のpHを有するように製剤化される。組成物のpHは、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、Tris又はヒスチジン等の緩衝剤の使用によって維持され、典型的に約1mM〜5OmMの範囲内で採用され得る。さもなければ組成物のpHは、生理学的に許容され得る酸又は塩基を使用することによって調節され得る。
【0089】
等張剤は、グリセロール、マンニトール、又はソルビトール等の糖アルコール;グルコース;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、又はNaCl、MgCl2又はCaCl2等の化合物等の生理的な塩を含む。
【0090】
防腐剤は、一般に医薬組成物中に含まれ、微生物の成長を遅らせて、組成物の保存期限を延ばし、且つ多重用途のパッケージを可能にする。防腐剤の例は、フェノール、メタ-クレゾール、ベンジルアルコール、パラ-ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含む。防腐剤は、典型的に約0.1〜1.0%(w/v)の範囲内で採用される。
【0091】
好適には医薬組成物は、「予防有効量」又は「治療有効量」において個人に与えられ(場合によっては、予防法が治療と見なされても)、これは個人への利益を示すのに十分である。典型的にこれは、個人への利益を提供する治療的に有用な活性をもたらすものだろう。投与される化合物の実際の量、並びに投与の割合及び時間経過は、治療される症状の性質及び重篤性に依存するだろう。治療の処方、例えば投与量等の決定は、一般的な実行者及び他の医師の責任にあり、且つ典型的に治療される疾患、個々の患者の症状、送達部位、投与方法、及び実行者に公知である他の要因を考慮する。上記の技術及びプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第20編, Lippincott, Williams及びWilkins 2000において見出され得る。実施例の方法によると、組成物は、好適には体重kgあたり、約0.01〜lOOmgの間、より好適には体重の約0.5〜10mg/kgの間の活性化合物の投与量で患者に投与される。
【0092】
組成物は、更に1つ以上の他の医薬活性剤、特に症状を治療するための更なる化合物を含み得る。癌治療の場合における薬剤は、化学療法又は放射線治療と同時に、又は連続して投与され得る。
【0093】
治療
本発明の組み合わせは、シグマリガンドのアポトーシス誘導効果に対して応答する症状を治療するために使用され得る。いくつかの場合において、かかる症状は、IKK/NF-κB経路の活性化によって特徴付けられる。
【0094】
かかる症状は、癌を含む腫瘍、及び炎症性疾患を含む。活性化されたNF-κBは、慢性及び急性炎症の両方において役割を果たすことが提言されている(Baldwin 1996 Annu Rev Immunol VoI 14 pp649-681)。例えばNF-κBは、関節炎の髄膜において活性化され、また抗関節炎の治療は、NF-κB活性化を遮断する。敗血性ショック等の急性炎症は、NF-κB活性化にも関連する。多くの慢性疾患は、実際には明白に炎症性ではないが、炎症性メカニズムが一役を果たし得る。例えば全身性エリテマトーデス等の自己免疫性疾患、アテローム性動脈硬化症、及びアルツハイマー病は、全てNF-κB活性化に関連することが報告されている。
【0095】
Haslett(1997 British Medical Bulletin VoI 53 pp669-683)は、炎症性細胞は、構成的にアポトーシスを受けることを発見し、アポトーシスによる炎症性細胞の除去は、炎症性応答を制限するために決定的なメカニズムであり、しかも持続する炎症を導くこのメカニズムの故障であると提言した。炎症細胞の延長された平均寿命を介することが明らかである慢性炎症において生き残るために不適切なNF-κB媒介性動きは、選択圧の損失を導き、連続する炎症細胞生成に渡る代替生存経路を維持する。これらの条件下で炎症を起こした細胞は、腫瘍細胞と類似の方法において、生存のための1つの経路への依存性に固定され始める。本発明の組み合わせは、アポトーシス促進モードにおいてIKK/NF-κB経路を保証することによる、且つIKK/NF-κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害することによる二面攻撃において本効果に対抗する。
【0096】
腫瘍の治療が関与する場合の治療は、患者への腫瘍の効果を緩和するために医師によって採用される任意の手段を含むと理解されるだろう。従って、腫瘍の完全な鎮静が所望されるゴールではあるが、有効な治療は、腫瘍の部分的な鎮静を達成し、並びに転移を含む腫瘍の成長の速度を遅延させることができる任意の手段も含むだろう。かかる手段は、生活の質を改善し/又は促進し、且つ疾患の兆候を軽減する中で有効であり得る。
【0097】
投薬
投薬は、病状の縮小が達成されるまでに数日から数ヶ月、又は更に長く続く治療の経過を伴う、治療される症状の重篤性及び反応性に依存する。最適な投薬計画は、体内における薬物蓄積の測定から容易に算出される。
【0098】
通常の当業者は、最適投与量、投薬手順及び繰り返し率を容易に決定できる。治療有効量又は予防有効量(投与量)は、個々の組成物の相対的な有効性によって変化してよく、また一般的にin vitro及び/又は動物試験において、分子量及びEC50に基づき通常に算出され得る。例えば薬物化合物(オリゴヌクレオチド配列及び/又は化学構造に由来する)の所定の分子量、及びIC50等の実験的に生じた有効量、例えば1回分がmg/kgというのは、通常に算出される。一般に投与量は、0.001 mg/kg〜100 mg/kg、例えば0.001 mg/kg、0.01 mg/kg、0.1 mg/kg、1 mg/kg、10 mg/kg又は100 mg/kgである。投与量は、1日、1週、1月、又は1年、或いは2〜20年ごとでも1回又は数回投与され得る。
【0099】
本明細書において引用された全ての特許及び文献参照は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0100】
実験
リムカゾールは、NF-κBの活性化を介して細胞死を誘導する。
NF-κB経路活性化の認められた顕著な特徴は、非刺激条件下で細胞質の中でNF-κBのRe1A(p65)サブユニットを保持する、阻害タンパク質I-κBのレベルの減少である。NF-κB-活性化刺激剤I-κBの受領をもって、プロテアソ−ムによる、又は他の手段による破壊を標的化し;これはRe1Aを解放し、核へ移動させ、NF-κB-依存性遺伝子標的で転写促進又は転写抑制機能の何れかを発揮し、その結末は、細胞死又は細胞生存の何れかであり得る。
【0101】
リムカゾールに対する応答では、細胞中のI-κBタンパク質レベルの減少がある。これは、HL-60(急性前骨髄性白血病)細胞及びOPM-2(多発性骨髄腫)細胞におけるリムカゾールへの暴露2、4及び24時間後のI-κBタンパク質レベルの減少を示す図1において例示される。
【0102】
NF-κBが転写因子として活性化されたことの確認は、リムカゾールへの細胞暴露の後の核抽出物の電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によって得られ;これは、DNAオリゴヌクレオチド内部の放射性標識されたコンセンサスκB部位に結合しているタンパク質を確認する。図2は、リムカゾールへの暴露後のH1299肺癌細胞におけるEMSAを例示し;NF-κBの公知の活性化因子、腫瘍壊死因子(TNF)が陽性コントロールとして使用された。コントロール細胞は、これらの細胞内の構成的なNF-κB経路活性化の指標となるDNA結合の基礎レベルを示す。6.25、12.5及び25マイクロモル濃度でのリムカゾールへの暴露後、暴露10分後に結合の一時的な増加があり、その後に60分での減少及び240分までDNA結合の再発が続く。このDNA結合の二相性パターンは、NF-κB経路活性化因子に非典型的ではなく、且つコントロール薬剤TNFでも見られる。時間とともに変化しているDNA結合のパターンは、考えられる限りでは、相違する遺伝子標的へのNF-κB結合の一時的なパターンを反映し、その全てがコンセンサス部位への結合によって反映され得るとは限らない。
【0103】
リムカゾールによる細胞死誘導においてNF-κB経路の積極的関与を求める証拠は、RNA干渉(RNAi)によるNF-κBのRe1A(p65)サブユニットのノックダウンによって提供された。RelAタンパク質についての免疫ブロット法は、実質的な枯渇を確認した。RelA RNAi単独で処理された細胞は、コントロール、非標的RNAiで処理された細胞よりも低下した生存細胞数を示した。これは、NF-κBのRe1A(p65)サブユニットを介して媒介された構成的な増殖/生存傾向を示した。それ自体において細胞増殖を遅らせるRelA RNAiの能力にもかかわらず、RelAノックダウンは、RelAレベルがコントロール、非標的RNAiによって維持されたリムカゾール処理細胞と比較して、リムカゾール処理細胞における生存細胞数を実質的に向上させた(図3)。これは、リムカゾールがNF-κBのRe1A(p65)サブユニットに対してアポトーシス促進スイッチを提供することができることを確認する。
【0104】
細胞生存能力(MTS)アッセイでは、リムカゾール誘導性の細胞死は、NF-κBサブユニットRe1A(p65)の核転座及びDNA結合を阻害する化合物、JSH-23によって実質的に軽減された(Shin等 2004 FEBS Lett. Vol. 571 pp50)。これは、リムカゾール誘導性の細胞死においてNF-κB経路の活性化の要求を確認する(図4)。
【0105】
骨髄性白血病細胞におけるリムカゾール媒介性細胞死及び成長阻害は、NF-κBの活性に依存する。
HL60(急性前骨髄性白血病細胞)は、I-κBタンパク質(いわゆる残基32及び36での二重のセリン突然変異体)のスーパーリプレッサーフォームをコードするプラスミドベクターで、又は親ベクター(pcDNA3)単独で一時的にトランスフェクトされ、その後に一定範囲の濃度でリムカゾールに暴露された。阻害剤タンパク質I-κBの過剰発現は、生細胞におけるNF-κB経路の活性化を阻害する方法として本技術分野においてよく認識されている。図5は、Spruce等, 2004 Cancer Research Vol. 64 pp4875-4886において十分に発表されている、MTSアッセイを用いてアッセイされた経時的な生存細胞数のグラフを表す。12.5マイクロモルのリムカゾール濃度(四角形記号)でトランスフェクトされたI-κBは、一時的な保護のみを提供した。しかしながら、より低濃度のリムカゾールは、成長阻害をもたらし(経時的に細胞数の正味の増加はない)、過剰発現したI-κBの存在において逆転した(点線、三角形及びひし形記号)。これは、リムカゾール媒介性細胞死及び成長阻害におけるNF-κB経路の重要性を確認し、且つWO 00/00599において発表されたことと一致する。
【0106】
リムカゾールは、NF-κB経路を介して生存に向かう細胞におけるアポトーシス促進スイッチを明らかにする。
リン酸化反応及びそこからのI-κBタンパク質の分解を要求するIKKの阻害剤として本技術分野において周知である化学薬品BAY 11-7082の存在下及び不存在下において、HL60細胞がリムカゾールに暴露された。それ故にIKK阻害剤は、NF-κB経路の阻害剤として公知である。上記の通り、経時的な生存細胞数のアッセイは、細胞増殖(経時の生存細胞数における正味獲得)及び細胞死(経時の生存細胞数における正味損失)を決定するために使用された(図6)。それ自体で(5マイクロモルでの)IKK阻害剤BAY 11-7082は、細胞死をもたらし;これは、除去された場合に細胞死をもたらすのに十分であるNF-κBに媒介される生存傾向へのHL-60細胞の依存と一致する。生存のための少なくともいくつかの白血病細胞のNF-κBへの依存は、これまでに数回報告されているので、本技術分野において周知である。同様に12.5マイクロモルのリムカゾールは、それ自体が72時間の暴露後に決定的な細胞死を引き起こした。しかしながらリムカゾール及びBAY-11-7082が組み合わされた場合に、細胞死の実質的な軽減があった(白四角形記号及び点線)。これらのデータは、リムカゾ−ル媒介性細胞死におけるIKK/NF-κB経路機能の要求を確認する上記のものと一致する。更に 生き残るために構成的なNF-κB傾向を有する細胞においてでさえ、リムカゾールは、これをアポトーシス促進効果に変換することができる。
【0107】
細胞死の最大限の軽減を達成するためのBAY 11-7082の濃度は、それ自体が生存能力の減少を殆ど生じさせないか、まったく生じさせないことが要求された(0.5マイクロモル)。更にリムカゾールへの暴露前4時間までの間のIKK阻害剤による前培養は、最大限の細胞死軽減を要求し;これはリムカゾールへの暴露後に細胞死を指示する早期の意志決定事象に関与するNF-κBと一致する。
【0108】
IKK阻害は、リムカゾール誘導性の細胞死及び成長阻害を軽減する。
HL60細胞は、IKKの化学阻害剤、パルテノライドの存在下及び不存在下においてリムカゾールに暴露された。単独で投与された場合に細胞の生存能力に有意な効果を有さなかった濃度のパルテノライドは、リムカゾールに暴露された細胞を生存能力の損失から実質的に保護し;更に濃度依存効果が観察された(図7)。この実験における細胞は、より高密度で播種され、完全な生存能力の損失よりもむしろリムカゾールの半致死効果を示した。BAY 11-7082と同様に、最大の保護効果を示すには、リムカゾールへの暴露前4時間までの間にパルテノライドを有する細胞の前培養が要求された。
【0109】
BAY 11-7082と同様に、細胞の生存能力の回復に加えて、更にリムカゾール及びパルテノライドが組合されて存在する中で、細胞増殖の回復を確認する細胞数における正味獲得もあった。これは更にリムカゾール誘導性の細胞死及び増殖阻害の両方がIKKの活性を要求するという証拠を提供する。
【0110】
リムカゾールによるアポトーシス促進モードにおけるIKK2の関与。
NF-κB活性化に関与するIKK複合体は、3つのコアサブユニット(第3のサブユニットNEMO又はIKKγと一緒になったIKKl及びIKK2(IKKα及びIKKβとしてもそれぞれ公知である))から成る。遺伝実験は、IKK2がNF-κB活性化の標準的又は古典的な経路において支配的なIκBキナーゼであることを示した(Pasparakis等, 2006 Cell Death and Differentiation Vol.13 pp861-872)。IKK2(IKKβ)の活性化は、典型的にアポトーシス阻害、炎症促進、及び増殖経路を刺激する(Luo等, 2005 Journal of Clinical Investigation Vol.115 pp2625-2632;Kucharczak等, 2003 Oncogene Vol. 22 pp8961-8982)。しかしながらIKK2活性化は、乳腺退縮の間に乳腺皮細胞において見られるようなアポトーシス促進効果とも関連付けられた(Baxter等, 2006 Development Vol. 133 pp3485-3494)。
【0111】
リムカゾールが標準的なNF-κB経路を介して作用したかどうかを決定するために、IKK2の阻害剤、IMD 0354が使用された。IKK2阻害剤の存在下では、リムカゾール誘導性の細胞死は、実質的に軽減された。この場合、それ自体で実質的な成長阻害をもたらした同濃度のIMD 0354(0.5 マイクロモル)は、リムカゾールと組み合わされた場合に細胞の生存能力の回復とは反対の効果を与えることができた(図8)。これは、リムカゾールによる生存/増殖から細胞死/成長阻害への"スイッチ"メカニズムの証拠を更に提供し、しかもこれはIKK2に関与する。
【0112】
リムカゾール誘導性の細胞死の実施的な緩和は、化合物SC-514による細胞の生存能力アッセイにおいても観察された。SC-514は、IKK2の阻害剤でもある(Kishore等, 2003 J. Biol. Chem. Vol. 278, pp32861-32871)。それ自体でSC-514は、生存細胞数の減少を引き起こし、IKK2を介して媒介された構成的な生存促進傾向の存在を確認する。しかしながら、リムカゾールとの組み合わせにあるSC-514は、生存細胞数を実質的に保った(図9)。これは、リムカゾールによる細胞死促進モードにおけるIKK2の積極的な関与に関する証拠を更に提供する。
【0113】
リムカゾールは、プロテアソ−ム阻害剤、MG132と相乗的に作用して、骨髄性白血病細胞における細胞死誘導を促進する。
上記の概要の通り、プロテアソ−ム阻害剤MG132は、NF-κB経路阻害剤として本技術分野において公知である。従ってNF-κB媒介性アポトーシス促進傾向の阻害に起因して、リムカゾールをMG132と組み合せることが細胞死の軽減を導くだろうということが期待された。単剤としての亜致死濃度のリムカゾール又はMG132で処理したHL60細胞において、細胞増殖の多少の減速があったが、これらの薬剤が組み合わされた場合、決定的に致死効果があった(図10)。相乗効果は、細胞がリムカゾール添加前4時間までの期間の間にMG132と共に前培養された場合にも見られた。より低濃度のMG132は、リムカゾールとのより少ない共同効果又は共同的でない効果を有した。特にMG132は、IKK阻害剤で見られたようなリムカゾールに暴露された細胞の細胞死からの救出を明らかにすることについて、常に失敗していた。このことから、細胞死誘導及び成長阻害を緩和するよりもむしろ促進することによりIKK阻害剤とは実質的に異なる方法において、MG132が作用することが結論付けられた。IKK阻害剤とは異なり、MG132及び類似する薬剤は、急性骨髄性白血病を含む血液学的な悪性腫瘍の治療効果を促進するために、リムカゾールと組み合わされる薬剤として有用であり得る。
【0114】
リムカゾールは、プロテアソ−ム阻害剤ボルテゾミブ(PS-341、Velcade)と相乗的に作用して、細胞死を促進する。組み合わせにあるリムカゾール及びボルテゾミブに暴露されたAML及び固形腫瘍細胞は、細胞が何れかの薬物それ自体に暴露された場合よりも有意により効果的に死滅させられた(図14)。これは、用量依存性の副作用を有する治療との組み合わせにおいて使用される場合も、投与量節約効果を有するリムカゾールの可能性を示す。
【0115】
リムカゾールに誘導されるIκBタンパク質の減少は、プロテアソ−ムとは無関係である。
上記の図1において表されたように、リムカゾールは、NF-κB経路の活性化と一致して、IκBタンパク質レベルの減少を引き起こす。典型的にIKK活性化に起因するIκBの減少は、プロテアソ−ム媒介性分解に起因する。プロテアソ−ムの関与を決定するために、HL60細胞は、プロテアソ−ム阻害剤MG132の存在下及び不存在下においてリムカゾールで処理され、免疫ブロットにかけられた(図11)。これは、IκBタンパク質レベルの減少を確認する(低いレーンに示されるローディングコントロール、アクチンと比較した)。驚くべくことに、MG132とリムカゾールの組み合わせは、IκBの減少がプロテアソ−ムを介して媒介されなかったという証拠を提供するIκBタンパク質レベルの一様な更なる減少を導いた。それは、IκB分解のより典型的なモードのMG132媒介性阻害は、代替のリムカゾール媒介性IκB減少のプロテアソ−ム非依存性メカニズムへの許容効果を有したことを更に示唆する。
【0116】
リムカゾールは、MG132と相乗的に作用して、固形腫瘍細胞における細胞死を促進する。
アポトーシス阻害及び/又は増殖促進モードにおけるIKK/NF-κB脱制御は、血液学的悪性腫瘍に加えてさまざまな固形腫瘍の進行を推進するという証拠が増えている。かかるNF-κBに推進される腫瘍は、エストロゲン受容体(ER)陰性、進行性乳癌及びグリア芽腫、悪性脳腫瘍タイプを含む。これらの2つの腫瘍タイプ(それぞれMDA MB 231及びul18MG)を代表する細胞株は、急性骨髄性白血病細胞に関して、組み合わせにあるリムカゾール及びMG132により処理された(図12及び13)。両ケースにおける細胞は、高密度で成長して、リムカゾール又はMG132単独への応答において細胞死滅を減少される。リムカゾール又はMG132単独の何れかの存在下で、MDA MB 231及びU118MG細胞は、生存能力を保つだけでなく、コントロール細胞(薬物賦形剤単独に暴露された)に近い割合で増殖した。しかしながら、組み合わされたリムカゾール及びMG132の存在下で、細胞は、決定的に死滅した。これは、IKK/NF-κB分解のパラダイムである代表的な固形腫瘍タイプにおける相乗効果を確認する。これは、固形腫瘍タイプにおいて治療効果を促進するための、リムカゾール又は他のシグマリガンドとMG132又は類似する薬剤との組み合わせの可能性を示す。
【0117】
MG132及びリムカゾール間の相乗効果は、IKKに部分的に依存する。
MG132は、NF-κB経路阻害剤として本技術分野において周知である。従ってリムカゾールに対する応答においてMG132が細胞死を促進したことは、これがリムカゾールに対する応答において細胞死を促進するよりもむしろ軽減するIKK阻害剤等の他のNF-κB経路阻害剤との違いが明確であるとして驚くべきことであった。 我々は、プロテアソ−ムがNF-κB経路におけるIKKより下流にあることを考慮し、IKKはNF-κB経路のアポトーシス阻害アーム及びアポトーシス促進アームの活性化に関与し得るが、プロテアソ−ムはIKK-依存性、NF-κBのアポトーシス阻害機能に特異的に関与し得ると理由付けた。従ってMG132等のプロテアソ−ム阻害剤は、NF-κB機能のアポトーシス阻害アームの選択的阻害に起因して、アポトーシス促進アームを未チェックのままにして、リムカゾールと潜在的に相乗的に作用し得る。この仮説を調査するために、白血病及び固形腫瘍細胞株をIKK阻害剤と一緒になったMG132及びリムカゾールの3重の組み合わせにより処理した。相乗的な細胞死誘導は、上記のようにMG132及びリムカゾールの組み合わせによって実証されたが、これは白血病(HL-60細胞、図15)及びER陰性乳癌(MDA MB 231細胞、図16)におけるBAY 11-7082の存在下において実質的に覆された。同様にパルテノライドは、リムカゾール及びMG132で処理された急性骨髄性白血病細胞に対して部分的に細胞生存能力を回復させた(HL-60細胞、図17)。従ってこれらのデータは、MG132がIKK/NF-κB機能のアポトーシス阻害アームを選択的に阻害し、アポトーシス促進モードにおけるそのIKKの関与において、リムカゾールを反作用のないままにするモデルと一致する。リムカゾール又は他のシグマリガンドとMG132又はその分類の中にある類似薬剤の組み合わせは、無秩序なIKKの生存促進及び増殖促進機能が疾患推進に関与する場合に、広範囲の悪性腫瘍及び炎症性疾患の治療に有用だろう。
【0118】
リムカゾールは、NF-κB機能のアポトーシス阻害アームを選択的に阻害するHDCA阻害剤のサブセットと相乗的に作用する。
上記の概要の通り、リムカゾール及び他のシグマリガンドと、NF-κB経路活性化因子として本技術分野において公知であるHDAC阻害剤のサブセットとの組み合わせは、本質的にWO 00/00599において開示されている。また典型的な薬剤バルプロ酸ナトリウム(さもなければバルプロ酸としても公知)等のいくつかのHDAC阻害剤は、NF-κB経路阻害とは逆の効果を有することも公知である。バルプロ酸塩がIKK/NF-κB経路機能のアポトーシス阻害アームの選択的阻害剤であるならば、リムカゾールの細胞死誘導効果を軽減するよりもむしろ促進することが期待されるだろうということが理由付けられた。これは、急性骨髄性白血病(HL-60)細胞(図18)、非小細胞肺癌(H1299)細胞(図19)、ER陰性乳癌(MDA MB 231)細胞(図20)及びグリア芽腫(U118MG)細胞(図21)を含む悪性細胞の範囲内でのケースであることが見出された。一括してデータは、バルプロ酸塩がリムカゾールの細胞増殖における阻害効果及びその細胞死誘導作用を促進することを示す。従って、バルプロ酸ナトリウムは、リムカゾールをそのIKK-依存性、アポトーシス促進及び成長阻害機能において未チェックのままで、刺激された、又は構成的なIKK依存性アポトーシス阻害及び増殖促進機能を選択的に阻害すると結論付けられる。
【0119】
リムカゾールは、EGFR阻害剤と相乗的に作用する。
非小細胞肺癌細胞(H1299)は、EGF受容体の野生型(非突然変異体)フォームを発現することが公知である(Das等, 2006 Cancer Res 66:9601-9608)。本発明者等は、H1299細胞がEGFR阻害剤ゲフィチニブ(Iressa)との組み合わせにおいて培養中でリムカゾールに暴露された場合、生存細胞数の著しい減少があり(図22)、それはそれぞれの薬物単独への暴露後の効果の合計よりも有意に大きかったことを示した。
【0120】
ゲフィチニブは、少数の非小細胞肺癌を有する患者の治療において有効である薬剤としてクリニックにおいて公知である。野生型フォームのEGF受容体を有し、それ故にゲフィニチブに対する抵抗性を有する患者においてより効果が少ないことも公知である(Lynch等, 2004 NEJM 350: 2129-2139; Paez等, 2004 Science 304 (5676):1497-1500)。H1299肺癌細胞は、ゲフィチニブ抵抗性であることも公知であり、野生型EGFRの発現と一致する(Engelman等, 2005 PNAS 102(10):3788-3793)。われわれは、本明細書において、リムカゾールとの組み合わせにおいて使用される場合に、H1299細胞が実質的にゲフィチニブ(Iressa)により影響を受けやすくなることを示す。従ってリムカゾールは、肺癌患者においてゲフィチニブに対する抵抗性を克服する特定の有効性を有する。
【0121】
特にMDA MB 468細胞を含むER陰性乳癌細胞は、高レベルのEGFRも発現し、ここでのEGFR遺伝子は増幅されている(Filmus等, 1987 Mol Cell Biol 7(1):251-257)。MDA MB 468細胞が組み合わせにあるリムカゾール及びゲフィチニブ(Iressa)に暴露された場合に、生存細胞数の減少がそれぞれの薬物単独による効果の合計よりも大きかったといった相乗的な効果があった(図23)。
【0122】
これらのデータは同時に、リムカゾールがEGFR阻害剤との組み合わせにおいて、EGFR阻害剤に対して抵抗性であるものを含むさまざま範囲のEGFR発現腫瘍を治療する上で有用であることを示す。
【0123】
別表1−リムカゾール類似物
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を治療する方法であって、治療を要する患者に、
(i)シグマ受容体リガンド、及び
(ii)IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アーム(anti-apoptotic arm)を阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アーム(pro-apoptotic arm)は阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤
を、順次又は組み合わせで投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
前記腫瘍が癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が骨髄性白血病、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、乳癌又はグリア芽腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
炎症性疾患を治療する方法であって、治療を要する患者に、
(i)シグマ受容体リガンド、及び
(ii)IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤
を、順次又は組み合わせで投与することを含んでなる方法。
【請求項5】
前記シグマ受容体リガンドがリムカゾールである、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記IKK阻害剤がHDAC阻害剤である、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記HDAC阻害剤がバルプロ酸ナトリウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記IKK/NF−κB経路阻害剤がPI−3キナーゼ経路を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がEGF受容体阻害剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記EGF受容体阻害剤がゲフィチニブである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記IKK阻害剤がプロテアソ−ム阻害剤である、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記プロテアソ−ム阻害剤がMG−132又はボルテゾミブである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
シグマ受容体リガンド、及びIKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤を含んでなる、腫瘍治療のための組成物。
【請求項14】
IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドの、腫瘍治療用薬剤の製造における使用。
【請求項15】
前記腫瘍が癌である、請求項12に記載の組成物、又は請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記癌が骨髄性白血病、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌、乳癌又はグリア芽腫である、請求項14に記載の組成物又は方法。
【請求項17】
シグマ受容体リガンド、及びIKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤を含んでなる、炎症性疾患治療のための組成物。
【請求項18】
IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドの、炎症性疾患治療用薬剤の製造における使用。
【請求項19】
前記シグマ受容体リガンドがリムカゾールである、請求項13〜18の何れか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項20】
前記IKK阻害剤がHDAC阻害剤である、請求項13〜19の何れか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項21】
前記HDAC阻害剤がバルプロ酸ナトリウムである、請求項20に記載の組成物又は方法。
【請求項22】
前記IKK/NF−κB経路阻害剤が、PI−3キナーゼ経路を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項13〜19の何れか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項23】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がゲフィチニブである、請求項22に記載の組成物又は方法。
【請求項24】
前記IKK阻害剤がプロテアソ−ム阻害剤である、請求項13〜19の何れか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項25】
前記プロテアソ−ム阻害剤がMG−132又はボルテゾミブである、請求項24に記載の組成物又は方法。
【請求項26】
シグマ受容体リガンドと、IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項27】
前記シグマ受容体リガンドがリムカゾールである、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記IKK/NFκB阻害剤がHDAC阻害剤である、請求項26又は請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記HDAC阻害剤がバルプロ酸ナトリウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記IKK/NFκB阻害剤がプロテアソ−ム阻害剤である、請求項26又は請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記プロテアソ−ム阻害剤がMG−132又はボルテゾミブである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
IKK/NF−κB経路のアポトーシス阻害アームを阻害するが、IKK/NF−κB経路のアポトーシス促進アームは阻害しない、IKK/NF−κB経路阻害剤としての薬剤を同定するための方法であって、
(i)試験細胞群をシグマ受容体リガンドと接触させて、細胞死をアッセイすること;
(ii)試験細胞群を試験薬剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドと接触させて、細胞死をアッセイすること;及び
(iii)試験細胞群を前記試験薬剤及びIKK阻害剤との組み合わせにおけるシグマ受容体リガンドと接触させて、細胞死をアッセイすることを含んでなり、
(ii)で生じる細胞死の量が(i)及び(iii)で生じるものを上回る場合に陽性結果が得られる方法。
【請求項33】
前記IKK阻害剤が非選択的IKK阻害剤又はIKK2選択的阻害剤である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記シグマ受容体リガンドがリムカゾールである、請求項32又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記試験細胞群がHL−60細胞を含んでなる、請求項31〜33の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記IKK阻害剤がBAY11−7082、パルテノライド又はIMD0354である、請求項32〜35の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2011−506416(P2011−506416A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537515(P2010−537515)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004109
【国際公開番号】WO2009/074809
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510162322)ユニバーシティ オブ ダンディー (1)
【Fターム(参考)】