説明

医療用テレメータシステム及び医療用テレメータシステムの送受信方法

【課題】子機の数を増加させると共に、子機の位置を特定することができ、受信機に届く信号のS/N比を改善できる医療用テレメータシステムを提供する。
【解決手段】サーバー(7)により管理される複数の子機(1)の移動範囲を複数のエリア(10-1〜10-3)に分割して、前記子機から各エリアに応じたチャンネルで前記サーバーに測定データ等を収集する医療用テレメータシステムであって、前記サーバーには、各エリア毎のエリア名,子機のID及び空きチャンネルを管理するエリア管理手段を設け、前記各エリア毎に前記エリア管理手段の保有するデータを含む第1データ群をエリア内に存在する前記子機に対して送信するエリア送信手段を設け、前記第1データ群を受信した子機は、前記第1データ群に基づく空きチャンネルを使用して前記測定データを含む第2データ群を当該エリアの受信機に送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体より検出した心電、呼吸、血圧波等の測定信号を無線によってサーバーに伝送する医療用テレメータシステム及び医療用データ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等に設置される従来の医療用テレメータシステムを図3を用いて説明する。
図3は従来の医療用テレメータシステムの構成を示す図である。
図3において、1は病院内にいる患者に装着され生体より検出した心電、呼吸、脈波、血圧等の測定データ等を無線によって送信する子機(テレメータ)である。
2−1〜2−8は病院内に設置され前記子機1から無線で送信される測定信号等を受信するアンテナであり、3−1,3−2で示す第1の集合器で集合される。
第1の集合器3−1,3−2は、病院のフロア単位若しくは病棟単位に配置されている。
4は第2の集合器であって、フロア単位若しくは病棟単位に配置された第1の集合器3−1,3−2で集合された子機からの測定データ等を病院単位で集合する。
第2の集合器で集合された子機1からの測定データ等は、分配器5及び受信機6を介してサーバー7に伝送されて蓄積管理される。
【0003】
図3において、第1の集合器3−1の近辺に信号成分:1とノイズ成分:4と示されているのは、1個の子機からの信号1に対して集合器3−1には4個のアンテナ2−1〜2−4からのノイズが集合されていることを示している。
また、第1の集合器3−2の近辺に信号成分:0とノイズ成分:4と示されているのは、子機からの信号がゼロであるのに対して集合器3−2には4個のアンテナ2−1〜2−4からのノイズが集合されていることを示している。
さらに、第2の集合器4の近辺に信号成分:1とノイズ成分:8と示されているのは、
第1の集合器3−1,3−2の出力が合計されて、 子機からの信号が1に対して集合器4には8個のアンテナ2−1〜2−8からのノイズが集合されていることを示してS/N比が良くない状態を示している。
【0004】
なお、従来から測定値データあるいは外部計測データを無線送信するときに使用されるキャリア周波数を変更するために専用の外部コネクタを設ける必要がなく、また、他人に容易に変更されないようにした医用テレメータ装置として、以下のものが知られている。
【0005】
外部医用計測器で計測された外部計測データを受信する入力手段を有し、生体を測定して得た生体測定信号と前記外部計測データを電波信号で送信する医用テレメータ装置において、前記生体測定信号と前記外部計測データとをキャリア周波数の前記電波信号に変換する電波信号発生手段を有するとともに、前記キャリア周波数を可変する周波数可変手段を有する送信手段と、前記入力手段を介して入力される周波数設定データを前記外部計測データとを識別情報によって区別して検出し、検出された周波数設定データを前記周波数可変手段に供給する検出手段とを含み、前記周波数可変手段は、前記検出手段で検出された前記周波数設定データに基づいて前記キャリア周波数を可変することを特徴とする医用テレメータ装置。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−56791号公報(請求項2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3の従来の医療用テレメータシステムでは、子機から測定データを伝送するチャンネルが各子機毎に固定であったため、1つのテレメータシステムで利用可能なチャンネル数に、例えば日本においては480チャンネルの制限があり、それ以上の子機を1つのテレメータシステムで扱うことができなかった。
また、子機からの測定データ等を病院内のどのエリアのアンテナから受信したのかを判別することができず、子機の位置を特定することができなかった。
また、広いエリアにこのテレメータシステムを構築する場合に、多数のアンテナを配置する必要があり、それに伴なって集合器も複数段設置しなければならず、子機から伝送された測定データ等に重畳されるノイズが多くなって、受信機に届く信号のS/N比が良くなかった。
【0007】
本発明の課題(目的)は、1つのテレメータシステムで利用可能な子機の数を増加させると共に、子機からの測定データ等を病院内のどのエリアのアンテナから受信したのかを判別して子機の位置を特定することができ、受信機に届く信号のS/N比を改善できる医療用テレメータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、サーバーにより管理される複数の子機の移動範囲を複数のエリアに分割して、前記子機から各エリアに応じたチャンネルで前記サーバーに生体情報の測定データ等を伝送する医療用テレメータシステムであって、
前記サーバーには、各エリア毎のエリア名,子機のID及び空きチャンネルを管理するエリア管理手段を設け、前記各エリア毎に前記エリア管理手段の保有するデータを含む第1データ群をエリア内に存在する前記子機に対して送信するエリア送信手段を設け、
前記第1データ群を受信した子機は、前記第1データ群に基づく空きチャンネルを使用して前記測定データを含む第2データ群を当該エリアの受信機に送信することを特徴とする。
【0009】
また、前記第1データ群にはエリア名,認識している子機のID及び空きチャンネルを少なくとも含み、前記第2データ群には、エリア名,子機ID、使用するチャンネルの許可申請データ及び測定データを少なくとも含むことを特徴とする。(請求項2)
また、前記複数のエリアは、隣接するエリア間に重複する領域を含むと共に、隣接するエリア以外では前記子機からエリア受信機に第2のデータ群を送信するチャンネルとして同じチャンネルの使用を許可することを特徴とする。(請求項3)
また、前記第1のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯以外の周波数帯で送信され、前記第2のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯で送信されることを特徴とする。(請求項4)
【0010】
また、前記課題を解決するために、請求項5に記載の発明では、サーバーから複数のエリアを構成する送信機を介して各エリア内に存在する子機に第1データ群を送信するステップと、前記第1データ群を受信した子機は、該第1データ群に含まれる空きチャンネルを使用して生体情報の測定データを含む第2データ群を前記サーバーに接続された受信機に送信するステップと、前記サーバーでは、受信した第2データ群に基づいて、個々の機器がどのエリアに存在し、現在どのチャンネルが空きチャンネルであるのかを把握するステップとを循環して実行することを特徴とする。
【0011】
また、前記第1データ群にはエリア名,認識している子機のID及び空きチャンネルを少なくとも含み、前記第2データ群には、エリア名,子機ID、使用するチャンネルの許可申請データ及び測定データを少なくとも含むことを特徴とする。(請求項6)
また、前記第1のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯以外の周波数帯で送信され、前記第2のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯で送信されることを特徴とする。(請求項7)
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、1つのテレメータシステムで利用可能な子機の数を増加させると共に、子機からの測定データ等を病院内のどのエリアのアンテナから受信したのかを判別して子機の位置を特定することができ、受信機に届く信号のS/N比を改善できる医療用テレメータシステムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
病院等に設置される本発明の医療用テレメータシステムを図1を用いて説明する。
図1は本発明の医療用テレメータシステムの構成を示す図である。
図1において、1は病院内にいる患者に装着され生体より検出した心電、呼吸、脈波、血圧等の測定データ等を無線によって送信する子機(テレメータ)である。
2−1〜2−12は病院内に設置され前記子機1から無線で送信される測定信号等を受信するアンテナであり、3−1〜3−3で示す第1の集合器で集合される。
第1の集合器3−1〜3−3は、病院のフロア単位若しくは病棟単位に配置されている。
第1の集合器で集合された子機1からの測定データ等は、分配器5−1〜5−3,受信機6−1〜6−3及び第1のサーバ7−1〜7−3を介して第2のサーバー7に伝送されて蓄積管理される。
なお、第1のサーバー7−1〜7−3はフロア単位若しくは病棟単位に配置されて子機からの測定データをフロア単位又は病棟単位に蓄積管理するものであるが、この第1のサーバー7−1〜7−3を省略して、直接第2のサーバー7に測定データを蓄積管理しても良い。
【0014】
本発明の特徴は、複数の送信機8−1〜8−3及び送信用アンテナ9−1〜9−12によって、互いに重なり合う領域を含む複数のエリア(A〜C)を構成して、各エリアに設けられた送信機8−1〜8−3から送信用アンテナ9−1〜9−12を介して第1データ群(データ1)を送信し、各エリアに存在する子機1からは前記受信した第1データ群(データ1)に基づいて第2データ群(データ2)を送信する点である。
【0015】
・データ1は、サーバーから子機に送信される通信データであって、日本国内においては、医療用テレメータが使用可能な周波数帯を外れた、例えば2.4GHz帯で送信され、以下のデータを含んでいる。
(a) アンテナがカバーしているエリア情報(エリア名)
(b) エリア内で認識している子機のID
(c) 空きチャンネル
・データ2は、子機からサーバに送信される通信データであって、例えば、日本国内においては、医療用テレメータが使用可能な周波数帯である400MHz帯で送信され、以下のデータを含んでいる。
(a) 認識しているエリア名
(b) 子機ID
(c) データ(使用するチャンネルの許可申請であるチャンネル使用要請コマンド,生体より検出した心電、呼吸、脈波、血圧等の測定データ等)
【0016】
図1に示す如く、本発明の医療用テレメータシステムでは、第2のサーバー7から送信機8−1〜8−3及びアンテナ9−1〜9−12を介して子機1にデータ1が送信され、子機1では受信したデータ1に基づいてデータ2をアンテナ2−1〜2−12,集合器3−1〜3−3,分配機5−1〜5−3,受信機6−1〜6−3,第1のサーバー7−1〜7−3を介して第2のサーバー7にデータ2が循環して送信される。
【0017】
次に、図1の本発明の医療用テレメータシステムの動作を図2のフローチャートを用いて説明する。
・サーバー7に接続された複数のエリアを構成する送信機8−1〜8−3は、アンテナ9−1〜9−12を介して子機1に上記データ1に示す情報を送信する。(ステップS1)
・データ1を受信した子機1は、データ1に含まれる空きチャンネルを使用して、データ1に含まれるエリア名,子機ID及びデータ(チャンネル使用要請コマンド,生体より検出した心電、呼吸、脈波、血圧等の測定データ等)を送信する。(ステップS2)
・子機1からのデータ2を受信したサーバー7は、受信したデータを蓄積管理する(ステップS3)と共に、個々の子機1が現在どのエリアにいるのかを把握し(ステップS4)、また、現在どのチャンネルが使用されていて、どのチャンネルが空きチャンネルであるのかを把握する(ステップS5)。
【0018】
図1の本発明の医療用テレメータシステムでは、エリアA,エリアB及びエリアCは互いに重なり合う領域を有しているため、子機を所有した患者等がエリアを跨って移動した場合には、子機は受信したデータ1に基づいて送信に使用するチャンネルを変更するので、スムーズなデータ収集が可能である。
【0019】
このため、1つのエリアで使用するチャンネルは、隣接するエリアでは使用することができないが、隣接しないエリアでは同じチャンネルを使用可能である。(図1の例では、エリアAで使用するチャンネルはエリアCでもそのまま使用可能である。)
したがって、エリアを多数設けることによって、理論上では無限個の子機を使用できることになる。
【0020】
図1において、第1の集合器3−1〜3−3の近辺に信号成分:1とノイズ成分:4と示されているのは、1個の子機からの信号1に対して集合器3−1には4個のアンテナ2−1〜2−4からのノイズが集合されていることを示している。
このように、図1の例では、システム全体を複数のエリアに分割して構成するので、1つのエリアが受け持つ領域が小さくでき、個々のエリア内に設置するアンテナから受信機までの経路が短縮されるため、従来のシステムに比較してS/N比を改善できる。
【0021】
次に図2のフローチャートを用いて、本発明の医療用テレメータシステムの送受信方法の動作(手順)を説明する。
・先ず、サーバー7から複数のエリア(10−1,〜10−3)を構成する送信機(8−1〜8−3)から送信用アンテナ(9−1〜9−4,9−5〜9−8,9−9〜9−12)を介して各エリア内に存在する子機1に第1データ群(データ1)を送信する。(ステップS1)
・第1データ群を受信した子機1は、該第1データ群に含まれるエリア情報及び空チャンネル情報を取得して設定を行い、自己の測定データを含む第2データ群を空チャンネルを使用して送信する。(ステップS2)
・送信された第2データ群は、エリア毎に設けられたアンテナ(2−1〜2−4,2−5〜2−8,2−9〜2−12)、集合器(3−1〜3−3)、分配器(5−1〜5−3)、受信機(6−1〜6−3)サーバー(7−1〜7−3)を介してサーバー7で受信して蓄積・管理する。(ステップS3)
・サーバー7では、受信した第2データ群に含まれるエリア名に基づいて、個々の機器がどのエリアに存在するかを把握する。(ステップS4)
・また、サーバー7では、受信した第2データ群に基づいて、個々の機器がどのチャンネルを使用し、どのチャンネルが空チャンネルであるのかを把握する。(ステップS5)
・上述のステップS1〜S5を繰返す。
なお、ステップS4、S5の順序は入れ替わっても良い。
【0022】
上記説明では、子機からサーバーに送信するデータとして、子機を装着している患者の測定データとして説明しているが、子機から送信されるデータとして、子機を装着している患者の操作に伴うナースコール等の他のデータを含ませることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
請求項1〜7に記載の発明では、1つのテレメータシステムで利用可能な子機の数を増加させると共に、子機からの測定データ等を病院内のどのエリアのアンテナから受信したのかを判別して子機の位置を特定することができ、受信機に届く信号のS/N比を改善できる医療用テレメータシステムを実現できるので産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の医療用テレメータシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の医療用テレメータシステムの送受信方法の手順を説明するフローチャートである。
【図3】従来の医療用テレメータシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 子機
2−1〜2−12 受信アンテナ
3−1〜3−3 集合器
5−1〜5−3 分配器
6−1〜6−3 受信機
7,7−1〜7−3 サーバー
8−1〜8−3 送信機
9−1〜9−12 送信アンテナ
10−1〜10−3 エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバーにより管理される複数の子機の移動範囲を複数のエリアに分割して、前記子機から各エリアに応じたチャンネルで前記サーバーに生体情報の測定データ等を伝送する医療用テレメータシステムであって、
前記サーバーには、各エリア毎のエリア名,子機のID及び空きチャンネルを管理するエリア管理手段を設け、
前記各エリア毎に前記エリア管理手段の保有するデータを含む第1データ群をエリア内に存在する前記子機に対して送信するエリア送信手段を設け、
前記第1データ群を受信した子機は、前記第1データ群に基づく空きチャンネルを使用して前記測定データを含む第2データ群を当該エリアの受信機に送信することを特徴とする医療用テレメータシステム。
【請求項2】
前記第1データ群にはエリア名,認識している子機のID及び空きチャンネルを少なくとも含み、前記第2データ群には、エリア名,子機ID,使用するチャンネルの許可申請データ及び測定データを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用テレメータシステム。
【請求項3】
前記複数のエリアは、隣接するエリア間に重複する領域を含むと共に、隣接するエリア以外では前記子機からエリア受信機に第2のデータ群を送信するチャンネルとして同じチャンネルの使用を許可することを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用テレメータシステム。
【請求項4】
前記第1のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯以外の周波数帯で送信され、前記第2のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯で送信されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用テレメータシステム。
【請求項5】
サーバーから複数のエリアを構成する送信機を介して各エリア内に存在する子機に第1データ群を送信するステップと、
前記第1データ群を受信した子機は、該第1データ群に含まれる空きチャンネルを使用して生体情報の測定データを含む第2データ群を前記サーバーに接続された受信機に送信するステップと、
前記サーバーでは、受信した第2データ群に基づいて、個々の機器がどのエリアに存在し、現在どのチャンネルが空きチャンネルであるのかを把握するステップと、
を循環して実行することを特徴とする医療用テレメータシステムの送受信方法。
【請求項6】
前記第1データ群にはエリア名,認識している子機のID及び空きチャンネルを少なくとも含み、前記第2データ群には、エリア名,子機ID,使用するチャンネルの許可申請データ及び測定データを少なくとも含むことを特徴とする請求項5に記載の医療用テレメータシステムの送受信方法。
【請求項7】
前記第1のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯以外の周波数帯で送信され、前記第2のデータ群は医療用テレメータが使用可能な周波数帯で送信されることを特徴とする請求項5又は6に記載の医療用テレメータシステムの送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−61491(P2007−61491A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253731(P2005−253731)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】