医療用デバイスおよび医療用デバイスを送達するための送達システム
医療用デバイスおよび医療用デバイスを患者の体内の標的位置に送達するための送達システムが実現される。いくつかの実施形態では、医療用デバイスは、完全に配備かつ係止された構成形状に固定することができる。いくつかの実施形態では、送達システムは、送達システムの複数のコンポーネントの移動を制御するために単一のアクチュエータを備えるように構成される。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、送達システムの複数のコンポーネントの独立した移動および従属した移動を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用デバイスに関し、特に、埋込み型医療用デバイスおよび医療用デバイスを送達するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
埋込み型医療用デバイス(implantable medical device)は、患者体内の標的位置に送達され、その場所に埋め込むことができる。例えば、内腔内送達技術はよく知られている。送達システムは、典型的には、シースおよび/またはカテーテルを備え、これを通して、インプラントが標的位置に送達される。インプラントは、一般的に、標的位置でシースまたはカテーテルから配備される。いくつかの埋込み型デバイスは、完全自己拡張性を有し、これらは、シースまたはカテーテルから解放されたときに自己拡張し、自己拡張工程の後にさらなる拡張を必要としない。自己拡張は、シースまたはカテーテルを近位に引き入れる操作、埋込み型デバイスをシースまたはカテーテルから押し出す操作、またはこれらの組合せによって発生しうる。しかしながら、いくつかの埋込み型デバイスは、自己拡張工程において、または自己拡張工程の後に作動する。自己拡張工程の後に作動させることができる例示的な置換心臓弁は、文献において説明されている(例えば、本願明細書に援用する、2004年11月5日に出願した同時係属の特許文献1および2003年12月23日に出願した特許文献2参照)。拡張性医療用デバイスを完全に配備かつ係止(lock)された構成形状(configuration)にして、該デバイスを配備位置に固定すると有利である。
【0003】
この送達方法では、医療用デバイスは、1つまたは複数のアクチュエータを使用する送達システムによって作動させることができる。例えば、アクチュエータ(例えば、送達システムのハンドル上のノブの形態のもの)を作動させて(例えば、回して)、送達システムのコンポーネントを送達システム内の他のコンポーネントに対して、または埋込み型デバイスに対して、またはその両方に対して、移動させることができる。一般的に、送達方法が医師にとってできる限り簡単であること、手順の完了までに要する時間が短いこと、送達システムの機械的な複雑さが低いことが望ましい。いくつかの送達手順では、インプラントを配備するために、送達システムの複数のコンポーネントを作動させる必要がある。また、複数の工程が特定の順序で実行されることを保証することが必要になる場合もある。求められるのは、医療用デバイスの配備手順を簡素化し、および/または複数の工程が特定の順序で実行されることを保証することができる送達システムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第10/982,388号
【特許文献2】米国特許出願第10/746,120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができる埋込み型医療用デバイスおよび医療用デバイスを送達するためのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、患者の体外に配設されるハウジングを備える送達システムを含む、医療用デバイス・システムを説明しており、ハウジングは、アクチュエータを備え、送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントを第2の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するように構成および配置され、送達システムは、アクチュエータが第2の送達システム・コンポーネントを第1の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するようにさらに構成および配置される。
【0007】
いくつかの実施形態において、送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に作動させ、場合によっては、これらを同時に作動させたときに異なる速度で作動させるようにさらに構成かつ配置される。
【0008】
いくつかの実施形態において、送達システムは、アクチュエータの作動により第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが同じ方向に移動するように構成される。いくつかの実施形態では、送達システムは、アクチュエータの作動により第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが特定の順序で作動するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、アクチュエータは単一のアクチュエータ要素であり、アクチュエータは単一の運動(single type of motion)でアクチュエータを作動させると、第2の送達システム・コンポーネントとは独立した第1の送達システム・コンポーネントの作動および第1の送達システム・コンポーネントとは独立した第2の送達システム・コンポーネントの作動の両方がなされるように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、医療用デバイス・システムは、送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達される医療用デバイスを備え、アクチュエータは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつその独立した移動の前に、送達用シースを移動する。第2の送達システム・コンポーネントは、医療用デバイスの一部に可逆的に結合されうる。アクチュエータは、作動されたときにシースおよび第2の送達コンポーネントの両方を近位に独立して移動する。アクチュエータの作動は、シースを近位に引き入れて医療用デバイスを拡張させることができるように構成することができ、アクチュエータのさらなる作動によって、第2の送達システム・コンポーネントは、近位に引き入れられる。
【0011】
いくつかの実施形態において、送達システムおよびアクチュエータは、単一の方向への回転などの、単独型の運動(singular type of motion)におけるアクチュエータの移動により第1の送達システム・コンポーネントが第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、第2の送達システム・コンポーネントが第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動するように構成される。単独型の運動により、第1の送達システム・コンポーネントは第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動することができ、第2の送達システム・コンポーネントは第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、第1の送達システム・コンポーネントの独立した移動と第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動との間においては介在する作動工程は実行されない。
【0012】
本開示の一態様は、患者体内に医療用デバイスを配備するための送達システムを使用する方法である。この方法は、患者の体外に配設されるアクチュエータを備えるハウジングを含む送達システムを用意することと、アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントを第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動することと、アクチュエータを作動させて第2の送達システム・コンポーネントを第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動することとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アクチュエータを作動させることは、アクチュエータを単独型の運動で作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを互いに独立して移動するとともに、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することを含む。アクチュエータを作動させることで、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを、少なくともこれらが同時に移動されている期間の一部において異なる速度で移動することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同じ方向に移動する。いくつかの実施形態では、アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを特定の順序で移動する。
【0015】
いくつかの実施形態では、アクチュエータを作動させることは、アクチュエータを、単一の方向への回転などの、単独型の運動で作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントの両方を互いに独立して移動する。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、アクチュエータを作動させることは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつその独立した移動の前に、送達用シースを近位方向に移動することを含む。第2の送達システム・コンポーネントは、医療用インプラントに可逆的に結合することができ、第2の送達システム・コンポーネントを作動させると、第2の送達システム・コンポーネントは送達用シースの近位方向移動とは独立して、かつその近位方向移動の後に近位方向に独立して移動する。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを移動することは、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを近位に移動することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントを移動することは、送達用シースを近位に移動して医療用デバイスを拡張させることを含む。
【0019】
本開示の一態様は、患者体内に医療用デバイスを配備するための送達システムである。送達システムは、送達用シースと、シース内に配設され、かつ、シースに対して移動可能である送達用カテーテルと、医療用デバイスの一部に可逆的に結合される結合部材と、医療用デバイスは送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達され、送達用シースはシースから医療用デバイスを解放するために医療用デバイスに対して移動されることと、シース被覆補助要素とを備え、送達用シースが医療用デバイスの少なくとも近位部分を被覆しているときにシース被覆補助要素の少なくとも一部がシースの遠位端と医療用デバイスの近位部分との間に配設される。
【0020】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素の近位部分は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる。いくつかの実施形態では、結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、シース被覆補助要素は、結合部材に対して径方向外向きになっている。
【0022】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素は、複数の輪になった要素を含み、複数の輪になった要素のうちの第1の輪になった要素は、複数の輪になった要素のうちの第2の輪になった要素の長さと異なる長さを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、医療用デバイスは、編組要素を備え、シース被覆補助要素は、複数のシース被覆補助要素からなり、複数のシース被覆補助要素のうちの第1のシース被覆補助要素は、シースが編組要素を被覆しているときに編組要素の近位端から径方向外向きに配設され、複数のシース被覆補助要素のうちの第2のシース被覆補助要素は、編組要素を貫通する。
【0024】
本開示の一態様は、送達用シース内に医療用デバイスを入れて被覆する方法である。この方法は、拡張性医療用デバイスの一部と送達用シースとの間でシース被覆補助要素の位置決めをすることと、シース被覆補助要素および医療用デバイスに対して送達用シースを遠位に移動して送達用シース内の拡張性医療用デバイスの少なくとも一部の折りたたみを補助することとを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、位置決め工程は、送達用シースをシース被覆補助要素に対して遠位に移動するときに、シースの遠位端が医療用デバイスの近位端に引っ掛かる可能性を低減するように、拡張性医療用デバイスの少なくとも近位端と送達用シースの遠位端との間においてシース被覆補助要素の位置決めをすることを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、送達システムは、結合部材をさらに備え、この方法は結合部材と医療用デバイスとの間の可逆的結合を維持することをさらに含み、シース被覆補助要素を位置決めすることは、シース被覆補助要素を結合部材に対して径方向外向きに位置決めすることを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、送達用シースをシース被覆補助要素に対して遠位に移動することで、径方向内向きの力がシース被覆補助要素から拡張性医療用デバイスの一部分に加えられる。
【0028】
本発明の新規性のある特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に説明される。本発明の特徴および利点については、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態をについて述べる以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより、より詳しく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】配備かつ固定された構成形状の例示的な置換心臓弁を示す図。
【図1B】折りたたまれた形で送達される例示的な置換心臓弁を示す図。
【図2A】医療用デバイスに可逆的に結合されている例示的な医療用デバイス送達システムを示す図であって、医療用デバイスが折りたたまれた構成形状になっている。
【図2B】医療用デバイスに可逆的に結合されている例示的な医療用デバイス送達システムを示す図であって、医療用デバイスが配備かつ固定された構成形状になっている。
【図3A】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3B】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3C】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3D】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3E】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3F】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3G】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図4】送達システムの一部に可逆的に結合されている例示的な置換心臓弁を示す図。
【図5A】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5B】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5C】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5D】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5E】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図6A】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図6B】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図7A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図7B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図7C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図7D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8E】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8F】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8G】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図9】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図10】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図11A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図11B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図11C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図11D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図12A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図12B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図12C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図13】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14E】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図15A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図15B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図16A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図16B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図17A】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図17B】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図17C】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図17D】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図18A】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図18B】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図18C】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図18D】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図19】送達システム・コンポーネントの移動速度を制御する例示的なバレル・カム設計を示す図。
【図20A】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図20B】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図20C】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図21】ロッドおよび外側シースの運動を減結合するための例示的な設計を示す図。
【図22】ロッドおよび外側シースの運動を減結合するための例示的な設計を示す図。
【図23A】第2のアクチュエータを作動させて医療用デバイスの送達方法の異なる部分の移動を制御することを示す図。
【図23B】第2のアクチュエータを作動させて医療用デバイスの送達方法の異なる部分の移動を制御することを示す図。
【図23C】第2のアクチュエータを作動させて医療用デバイスの送達方法の異なる部分の移動を制御することを示す図。
【図24】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図25】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図26】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図27】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図28】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図29】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図30】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図31】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図32】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図33】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図34】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図35】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図36】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図37】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図38】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図39】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図40】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図41】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示では、医療用デバイスおよび医療用デバイスを患者の標的位置に送達するための送達システムを説明する。医療用デバイスは埋込み型であるか、または患者体内に一時的に位置決めされる。送達システムは、各種の好適な医療用デバイスを患者の標的位置に送達するが、いくつかの実施形態では、血管内手術などの低侵襲性の送達手順に合わせて構成されている。いくつかの実施形態では、医療用デバイスは、置換心臓弁(例えば、置換大動脈心臓弁)であり、送達システムは、置換心臓弁を血管内に挿入して送達し、患者の本来の心臓弁の機能を置換するように構成される。
【0031】
図1Aおよび1Bは、編組材料を含むように示されているアンカー固定要素12、および置換弁小葉14(わかりやすくするため図1Bには示されていない)を備える、置換心臓弁10を示している。置換心臓弁10は、本明細書では支柱とも称される3つのロッキング部材16と、本明細書ではバックルとも称される3つの第2のロッキング部材18を備える。3つの支柱および3つのバックルが図示されており、各支柱はバックルの1つに関連付けられている。図1Aは、第1のロッキング部材16と第2のロッキング部材18との間の係止相互作用によってアンカー固定要素12が固定され、配備された構成形状に維持されている完全に配備された構成形状である、本明細書ではアンカーとも称されるアンカー固定要素12を示している。図1Bは、折りたたまれた送達構成形状をとる置換心臓弁10を示しており、この形状において、置換心臓弁が送達システム内において患者体内の標的位置に送達される(送達システムは図示せず)。
【0032】
この実施形態では、弁小葉14は、弁の3つの継ぎ目のところで支柱16に取り付けられる。したがって、支柱16は、アンカー固定要素内の弁を支持する。支柱およびバックル(または他の好適な第1のロッキング部材および第2のロッキング部材)は、両方ともアンカーに結合される。アンカー固定要素12が、図1Bに示されているような折りたたまれた構成形状をとる場合、バックル28の対応するロッキング要素で係止するように構成されている支柱16の各ロッキング要素は、これが係止されるバックルのロッキング要素に対して遠位に配置される。別の言い方をすると、支柱のロッキング要素に係止するバックルのロッキング要素は、送達構成形状において支柱のロッキング要素に近接して位置する。
【0033】
図2Aおよび2Bは、患者の標的位置に医療用デバイスを送達し、配備するために使用することができる送達システム100およびそのコンポーネントの例示的な一実施形態を示している。送達システム100は、ハンドル120、シース110、シース110とともに配設されているカテーテル108、および置換心臓弁10に可逆的に結合されている作動要素106A,106Bを備える。図2Aにおいて、心臓弁10は、シース110内に折りたたまれた送達構成形状(図1Bにも示されている)をとる。送達システム100はまた、ガイドワイヤGおよびノーズコーン102を備える。いくつかの実施形態では、カテーテル108は、中央の内腔109および複数の周方向に配設された内腔Luを有する。
【0034】
図2Aおよび2Bでは、複数の作動要素106Aが、アンカー固定要素12の近位領域に可逆的に結合されるように示されている。特に、作動要素106Aは、可逆的結合機構を介してアンカー固定要素12の近位端に可逆的に結合される。作動要素106Bは、アンカー固定要素の近位端の遠位にある置換心臓弁の1領域に可逆的に結合される。特に、作動要素106Bは、可逆的結合機構を介して支柱16に可逆的に結合されている。この実施形態および類似の実施形態の詳細は、本願明細書に援用する、米国特許公開第2005/0137686号および米国特許公開第2005/0143809号において見出すことができる。
【0035】
図1A〜2Bに示されている実施形態では、アンカー固定要素は、ニチノールなどの編組材料からなり、材料の1つまたは複数の撚り線から形成される。一実施形態では、アンカー固定要素12は、形状記憶材料から形成され、自己拡張性構成形状において熱硬化性を有し、これによってアンカー固定要素が送達システムのシースから配備されたときに、編紐は自然に短くなり始め、折りたたまれた送達構成形状から形状記憶自己拡張性構成形状へと拡張する。自己拡張性構成形状は、静止または部分的に配備された構成形状であると考えることができ、これは、米国特許公開第2005/0137686号および米国特許公開第2005/0143809号においてさらに詳しく説明されている。アンカー固定要素が拡張して部分的に配備された構成形状をとった後、作動要素106A,106Bのうちの少なくとも一方は、患者の体外に配設されているハンドル上のアクチュエータを介して作動される。米国特許公開第2005/0137686号および米国特許公開第2005/0143809号においてさらに詳しく説明されているように、作動要素106Bは、作動要素106Aに対して近位方向に作動させることができ、これにより、近位方向の力が支柱に加えられ、また、近位方向の力がアンカー固定要素の遠位領域に加えられる。作動要素106Aは、近位方向の力の代わりに、または近位方向の力に加えて、遠位方向に作動させて、遠位方向の力をアンカー固定要素の近位領域に加えることができる。軸方向の力がアンカー固定要素を能動的に短縮する(actively foreshorten)ことにより、支柱およびバックルが係止し合ってアンカー固定要素を完全に配備かつ係止された構成形状になるまで支柱をバックルに近づけてゆく。したがって、係止された構成形状は、部分的に配備された構成形状よりも短い。
【0036】
図3A〜3Gは、置換大動脈心臓弁を送達構成形状で送達し、それを送達用シースから完全に配備かつ係止された構成形状に配置する例示的な方法を示している。この実施形態では、作動要素106Bは、置換弁の支柱に可逆的に結合されるが、本明細書では「フィンガー」とも称することができる、作動要素106Aは、バックルに可逆的に結合される。3つのバックルに可逆的に結合されている作動要素106Aは3つあり、3つの支柱に可逆的に結合されている作動要素106Bも3つある。図3Aからわかるように、置換弁10は、シース110内において折りたたまれた送達構成形状をとり、知られている経皮的技術を使用して、ガイドワイヤGを介して後向きに(retrograde fashion)送達されて、大動脈Aを通り患者の大動脈弁を越えて留置される。
【0037】
シース110が図3Aに示されているように自然弁を越えて位置決めされた後、シース110は、患者の体外に配設されている送達システム・ハンドル上のアクチュエータを使用して置換弁に対して近位方向へ引き入れられる(この例は、以下で詳しく説明する)。シースが引き抜かれるときには、図3Bに示されているように、アンカー固定要素12の遠位部分が、アンカー固定要素の材料特性により自己拡張し始める。アンカー固定要素は、シースが引き抜かれるときに、アンカーが自己拡張し始めるか、またはその形状記憶構成形状に戻るように形状記憶自己拡張性構成形状をとりうる。シースが近位方向へ引き入れられ続けると、アンカー固定要素は、図3Cおよび3Dに示されているように、自己拡張し続ける。図3Eでは、シースは、シースの遠位端がフィンガー106Aの遠位端の近位側に配設されるように近位方向に引き入れられている。図3Eでは、シースは、フィンガーが自己拡張できるほど十分に近位方向へ引き入れられていない。したがって、アンカー固定要素がシースから完全に外に出ているが、アンカーの近位端は、その形状記憶構成形状に向かう形で拡張しない。図3Fに示されているように、シースがカテーテル108の遠位端を超えて引き入れられてはじめて、フィンガーは完全に自己拡張することができる。これでアンカー固定要素の近位端が拡張することができる。
【0038】
次いで、アンカー固定要素は、軸方向の力(近位方向および遠位方向の力)を加えることによって、図3Gに示されている完全に配備かつ係止された構成形状へ能動的に短縮される(潜在的にさらに拡張する)。アンカー固定要素を能動的に短縮するために、近位方向の力を、(図3A〜3Gには示されていないが、支柱に結合されている)作動要素106Bを介して支柱に加え、および/または遠位方向の力を、作動要素106Aを介してバックルに加える。一実施形態では、近位方向の力を作動要素106Bを通じて支柱に加え、フィンガー106Aを適切な位置に保持して遠位方向の力をバックルに加える。この能動的な短縮により、支柱およびバックルが係止し合うまで互いに軸方向に近づくため、アンカー固定要素が図3Gにおける完全に配備かつ係止された構成形状に維持される。次いで、作動要素106A,106Bがバックルおよび支柱からそれぞれ結合を外されて解放され、次いで、送達システムが、患者から取り外される。例示的な係止する方法および解放する方法の詳細は、以下で詳述する。この実施形態および他の実施形態に組み込むことができる送達、配備、係止および解放の方法のさらなる詳細は、本願明細書に援用する、2004年11月5日に出願した米国特許公開第2005/0137699号、2007年2月14日に出願した米国特許公開第2007/0203503号、および20004年10月21日に出願した米国特許公開第2005/0137697号において見出すことができる。
【0039】
図4は、図3A〜3Gを参照して説明された、置換心臓弁10および、カテーテル208を含む送達システムの遠位部分を示している。心臓弁10は、完全に配備かつ係止された構成形状をとり、作動要素206A(「フィンガー」),206Bはそのままそれぞれバックル18および支柱16に可逆的に結合されている。したがって、図4における構成形状および配置構成は、図3Gに示されているものと類似している。小葉14の継ぎ目部分は、3つの支柱16に取り付けられ、支柱16は、アンカー固定要素12の近位端の遠位にある位置でアンカー固定要素12に(例えば、縫合糸またはワイヤを使って)移動可能なように結合される。置換心臓弁10はまた、アンカー12の近位領域のところでアンカー12に(例えば、ワイヤまたは縫合糸を使って)取り付けられた(支柱と同様にアンカーに移動可能なように結合可能であるが)バックル18(3つが図示されている)を備える。図4において、作動要素206Bは、支柱16に可逆的に結合される一方、作動要素206Aは、バックル18に可逆的に結合される。送達システムは、3つのアクチュエータ保持要素210も備え、アクチュエータ保持要素はそれぞれ、その中に作動要素206Bおよび作動要素206Aを受け入れる。作動要素206Aは、その近位端のところでカテーテル208の遠位端に取り付けられているが、作動要素206Bは、カテーテル208内で軸方向に移動するように構成かつ配置される。したがって、作動要素206Bは、作動要素206Aに対しても軸方向に移動するように構成かつ配置される。フィンガー206Aおよび作動要素206Bは、アクチュエータ保持要素210とともに互いに近接して維持される(少なくとも送達システムが置換弁に結合されている間)。保持要素210は、フィンガー206Aが配設される内腔を有し、この内腔を通して作動要素206Bを軸方向に作動させることができる。フィンガー206Aは、一般的に円柱ロッドとして示される、作動要素206Bに対して径方向外向きに配設されている。図4における置換心臓弁は、送達システムから解放されていない。
【0040】
図5A〜5Eは、図4に示されている心臓弁から送達システムの結合を外す方法を示している(アンカー固定要素は図示されていない)。図5Aにおいて、支柱16は、バックル18内の内部チャネル内に引き込まれる長尺状のロッキング部分17を有する。支柱16のロッキング部分17は、バックル18上で歯を受けるように適合された溝形状のロッキング要素を有する。支柱がバックル内に引き込まれると、バックル上の歯が支柱上の溝と係合し、支柱とバックルとを係止させて、アンカー固定要素を固定された構成形状に維持する。この構成形状は、図5Aに示されている。この構成形状では、作動要素206B(または「ロッド」)は、支柱16に可逆的に結合される。ロッド206Bは、ロッド206Bの遠位部分内の穴230(図5Eを参照)が支柱16内の穴232と揃うように支柱16内のチャネル内に配設される部分を含む。図4に示されているようなピン・アセンブリ236の一部であるピン234は、ロッドの穴230および支柱の穴232の両方を貫通し、ロッドを支柱に結合する。ピンの遠位部分は、丸くなった(curled)、または輪になった形状をしており、これによりロッド206Bが支柱16から係脱するのを防ぐ。図5Aにおいて、フィンガー206Aは、バックル18上の歯239とフィンガー206A上の溝238との間の相互作用によってバックル18に可逆的に結合される(図5Eを参照)。図5Aにおいて、カラー22が歯239と溝238との間の係合部上に位置決めされ、これにより、フィンガー206Aとバックル18とを可逆的に結合された状態に保持する。
【0041】
患者体内の適所で心臓弁を解放することが決定された後、最初に、ピン・アセンブリ236(図4を参照)を近位方向に引き入れて、ピンを引っ張り穴230,232に通し、ロッド206Bと支柱16との結合を外すことで、ピン234を取り外すが、これは図5Bに示されている。次に、送達システム・ハンドル上のアクチュエータを作動させて、ロッド206Bを近位方向に引っ張って戻す。ロッド206Bが図5Cの位置に引っ張られた後、カラー係合部23がカラー22と係合し、それをロッド206Bとともに近位方向に引っ張る。これにより、カラーは図5Cの位置から図5Dの位置へ近位に引っ張られる。カラーを図5Dの位置に引き入れると、バックルの歯239が溝238から係脱し、図5Eに示されている、ロッド206Bの継続的引き込みが行われる。ロッド206Bとフィンガー206Aの両方と心臓弁との結合が外され、次いで、送達システムは、医療用デバイスが適所に埋め込まれている患者から後退させられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、フィンガー206Aによってバックルに、ロッド206Bによって支柱に加えられる軸方向の力のベクトルは、実質的に反対方向であり、これにより、短縮と係止の方法の効率が高められる。フィンガーを直接バックルに結合する利点は、短縮と係止の方法の実行時にバックルが支柱とより良好に揃うという点である。これは、支柱は、近位に引っ張ったときに、支柱がバックルと効率よく係止するようにバックルとより良好に揃うのに役立つ。短縮と係止の大きな力の下で捻れたり、または歪んだりする可能性のあるアンカーを使用した場合(編組材料からなるアンカーなど)、アンカーに結合される(したがって、支柱からずれている可能性のある)バックルが支柱と適切に依然として揃っていることは有益である。フィンガーをバックルに直接結合することで、こうした利点がもたらされる。これにより、近位方向に引っ張る力の一般的効率も向上するが、これは、支柱を引っ張りバックルで固定するのに力が少なくて済むためである。医療用デバイスの送達および配備を制御するためにアクチュエータをハンドルに組み込む場合、ハンドル・アクチュエータに加える必要のある力の量を減らすことで、送達システムの設計が簡素化される。
【0043】
図6Aおよび6Bは、作動要素252に可逆的に結合されている支柱250の代替的実施形態を示している。図6Bは、図6Aに示されているコンポーネントを識別する部分分解図である。作動要素252は、ロッド254、タブ・デフレクタ256、および保持クリップ258を備える。ロッド254は、本明細書で説明されているように患者の体外に配設されているハンドル上のアクチュエータを作動させることによって、近位方向Pに作動させることができる。
【0044】
ロッド254は、タブ・デフレクタ256および保持クリップ258に取り付けられる。ロッド254は、その遠位端のところに、保持クリップ258のクリップ要素262と係合する、留め具260を備える。支柱250は、保持クリップ258およびタブ・デフレクタ256を摺動的に受け入れる内部チャネルを有しており、これらはそれぞれ、中にあるロッド254を受け入れる。タブ・デフレクタ256は、リブ要素264を備える。保持クリップ258は、クリップ足部266を備える。アンカー固定要素(図示せず)を固定するために、ロッド254は近位方向に引かれ、クリップ足部266は支柱250の遠位端と係合し、それをバックル(図示せず)の方へ近位方向に引く。
【0045】
図7A〜7Dは、図6Aおよび6Bに示されている支柱250をバックル268に対して固定する順序を例示する側面図である(アンカーは図示せず)。図7Aは、患者の体外の送達システムのハンドル上のアクチュエータから発生する作動力によってロッド254が近位方向に作動させることを示している。図7Aにおいて、支柱250は、バックル268の遠位側にある。ロッド254が近位方向に引かれ続けると、留め具260(図6Bに示されている)は、近位方向の力をクリップ要素262(図6Bに示されている)に加える。これにより、クリップ足部266は、近位方向の力を支柱250の遠位端に加える。このため、支柱は近位方向に移動する。そして、支柱250、タブ・デフレクタ256、および保持クリップ258は、図7Aに示されているように、バックル268の方へ移動する。
【0046】
患者の体外でのアクチュエータの継続的作動により、図7Bに示されているように、支柱、デフレクタ、およびクリップは、さらに近位方向に引かれてバックル268のチャネル内の所定の位置に入る。タブ・デフレクタ256のリブ要素264は、支柱250の溝272の隣に配設されるため、リブ要素264は、バックルの歯270が支柱250の溝272と係合するのを防ぐ(図7Bに示されている)。これにより、医師が適切であると判断するまで支柱がバックルと係止するのを防ぐ。このため、リブ要素264は、係止防止機構として働く。ハンドル上のアクチュエータを使用して遠位方向の力を支柱250に加えることによって、この時点において、支柱(したがってアンカー)を遠位方向に移動してアンカー固定要素を伸長することができる。
【0047】
アンカーが所望の位置に来たら、ロッド254を近位方向に作動させ続ける。これは、以下でさらに詳しく説明するように、ハンドル上の同じアクチュエータまたは異なるアクチュエータを使用して実行することができる。ロッド254に近位方向の力を加え続けることによって、足部266を互いの方へ内向きに挟んで、支柱250の遠位端から足部を係脱しこの結合を外す。このため、支柱250の遠位開口部内で足部266が引っ張られる。そして、クリップ258を支柱250から解放し、ロッド、デフレクタ、およびクリップと支柱との結合を外す。アクチュエータの継続的作動により、ケーブル、デフレクタ、およびクリップを近位方向に移動して図7Cに示されている位置に置く。リブ要素264は、歯270および溝272の近位に配設され、したがって、これらが係止するのを防ぐことはしない。このように、歯は溝と係合し、支柱をバックルに固定する(図7Cに示されている)。そこで、アンカー(図示せず)は完全に配備かつ係止された構成形状で固定される。図7Dに示されているように、ロッド254の継続的作動により、患者からロッド、クリップ、およびデフレクタを引き離す。
【0048】
図8A〜8Gは、支柱、バックル、および作動要素の代替的実施形態の固定および解放の順序を示す側面図である。システムは、ロッドの形態の作動要素280、バックル282、支柱286、およびクリップ290を備える。クリップ290は、足部294およびリブ要素292を備える。ハンドル上のアクチュエータを作動させると、図8Aに示されているように、ロッド280が近位「P」方向に引かれる。図8Bに示されているように、継続的作動により、ロッド280、支柱286、およびクリップ290が引かれ、バックル282のチャネル内に通される。ロッド280が引き続き引かれると、バックルの歯284の表面が、図8Bに示されているように、クリップ290の表面295上を摺動する。足部294は、図8Cに示されているように、バックル282の遠位端と係合する。この位置の上面図が、図8Gに示されている。リブ要素292は、図8Bに示されている位置と図8Cに示されている位置との間で、支柱がバックルと係止するのを防いでいる。図8Cに示されている位置では、歯284は、支柱286の表面287と係合している。足部294のこの配置により、クリップ290が支柱から取り外される前に、支柱の溝288が十分に近位に引かれていることが保証される。図8Cに示されている位置から、ロッド280の近位への移動を続けると、足部294が狭まれて一緒にされ、バックル282のチャネル内に引き入れられる。これにより、クリップ290は支柱286から解放され、ロッドおよびクリップが近位方向に引かれる。クリップが支柱から解放された後、アンカー固定要素(図示されていないが、この実施形態では編組材料からなる)が自己拡張し部分的に配備された形状記憶構成形状に自然に戻り始めるため、支柱は自然に遠位方向へ移動し始める(これについては本願明細書に援用する出願においてさらに詳しく説明されている)。支柱が遠位方向に移動し始めると、歯284は、図8Eに示されているように支柱の溝288と係合する。これにより、支柱とバックルとが係止され、またアンカー固定要素が完全に配備かつ係止された構成形状で固定される。これで、図6Fに示されているように、ロッドおよびクリップを患者から取り外すことができる。
【0049】
図9および10は、上記の固定および解放の実施形態の特徴を組み込んだ2つの代替的実施形態を示している。図9の実施形態は、図5A〜5Eに示されている実施形態と似ているが、ロッド304は、図6A〜8Gの実施形態に示されている足部に類似する足部306を備えている。この実施形態では、図5A〜5Eのピン234は不要であるが、それは、支柱300からのロッド304の解放が、ロッド304が近位方向に引っ張られて、足部306が内向きに狭められ支柱から係脱したときに生じるからである。
【0050】
図10は、ロッド314の遠位端にある圧縮可能な足部316とリリース・ピン318とを組み込んだ代替的実施形態を示している(図5A〜5Eの実施形態に示されているのと同様に作動する)。図10の実施形態は、図5A〜5Eに示されているものと図9に示されているものとのハイブリッド設計と考えることができる。図5A〜5Eの実施形態と図10の実施形態との違いの1つは、図5A〜5Eではロッドを支柱にピンで固定するスロット230がロッド内にあるという点である。図5A〜5Eにおいてピン234が張力を受けているとき、このピンは剪断力を受けており、ピンが損傷する可能性が高まる。図10の設計では、スロット230は存在しておらず、むしろ、2つの足部306が単純にロッドの遠位部分から遠位に延在するだけである。ピン318は、図10に示されている、広げられた位置に足部316を維持し、本質的に開いた状態で保持し、足部と支柱との間の結合を維持する。この設計では、ピンは、足部の間で、剪断力を受けるよりはむしろ、圧縮力を受けている。ピンが取り外された後、低い解放力をロッドに加えて、足部を支柱との結合から外すことができる。ピンに剪断力を加えるのではなく圧縮力を加えた方が、ピンへの損傷が発生する可能性が低い。
【0051】
図11A〜11Dのそれぞれは、支柱320は対応するバックル321に係止されていない位置から係止された位置へ構成形状を変え、作動要素322が支柱から解放される順に並ぶ支柱320および作動要素322を含む代替的実施形態の各側面図および斜視図を示している。バックル321は、わかりやすくするためにこの順序で示されていないが、バックル321は、図11Aにおいて、支柱、作動要素、およびバックルの相対的位置を表示するように示されている。図12A〜12Cは、バックル321を含む固定および解放の順序を示している。
【0052】
図11Aでは、作動要素322は、支柱320に可逆的に結合される。作動要素322は、ロッド324、支柱ロック防止要素326、および支柱ロック・アクチュエータ328を備える。支柱320は、支柱ロック要素330を備える。図11Aは、支柱がバックルに向けて引っ張られる前のそれぞれのコンポーネントの初期構成形状を示している。アンカー固定要素(図示せず)を能動的に短縮するために、ロッド324を近位方向に引き入れる。支柱ロック防止要素326は、最初に、支柱ロック要素330と係合しており、したがって、ロッド324を近位に引き入れると、支柱320は近位に移動する。ロッド324は、図12Aからわかるように、支柱320がバックル内で引っ張られるまで近位に引っ張られ続ける。図12Aにおいて、支柱はまだバックルに係止されておらず、支柱ロック要素330は、バックル・ロック要素332の近位にある。支柱320をバックル321に対して係止するために、図11Bおよび12Bに示されているように、別のアクチュエータ(図示せず)を作動させて、支柱ロック防止要素326を近位方向に引き入れて、支柱ロック防止要素326を支柱ロック要素330から係脱する。あるいは、ロッド324および支柱ロック防止要素326は、ロッド324に近位方向の力を加え続けることで支柱ロック防止要素326を支柱ロック要素330から係脱するような仕方で係合させることができる。アンカー固定要素は完全に拡張し配備された構成形状に比べて長い形状記憶構成形状を有するため、支柱ロック防止要素326が支柱ロック要素330から係脱された後、アンカーはその細長い形状記憶構成形状に戻ろうとする。したがって、支柱320は、遠位方向に移動し始める。支柱320が遠位に移動することで、支柱ロック・アクチュエータ328が支柱ロック要素330に径方向外向きの力を加え、これにより、支柱ロック要素330は移動して図11Cおよび12Cに示されている係止された構成形状をとる。これに代えて、あるいは、これに加えて、ロック防止要素326が支柱ロック要素330から係脱された後、ロッド324を近位方向に継続的に引き入れることで、支柱ロック・アクチュエータ328が径方向外向きの力を支柱ロック要素330に加える。支柱320を遠位方向に継続的に移動することで、支柱ロック要素330がバックル・ロック要素332と係合し、支柱320をバックル321に対して係止する。係止することにより、支柱がバックルに対して遠位方向に移動するのを防ぎ、アンカーを軸方向に圧縮かつ完全に配備された構成形状に固定する。これで、作動要素322を近位方向に引き抜き、患者から取り外すことができる。
【0053】
図13は、変形可能な要素344を備える、支柱340およびクリップ342の代替的実施形態を示している。図14A〜14Eは、支柱340をバックル348と係止させて、クリップ342を支柱340から解放する順序を示している。ロッド(図示せず)は、上述の実施形態と同様に、クリップ342に取り付けられている。図14Aに示されている位置では、変形可能な要素344の近位端は、支柱340の表面要素346と係合する。この係合により、クリップが近位に引っ張られるときにクリップは支柱内に維持される。また、この係合により、クリップが近位に引っ張られるときに支柱が近位に引っ張られる。アクチュエータが作動すると、図14Bに示されているようにケーブルがバックル348内の支柱およびクリップを引く。図14Cに示されている位置から作動を継続させると、バックル348の歯350が変形可能な要素344と係合し、この変形可能な要素344を変形させる。変形する要素344により、歯350は溝352と係合してバックルおよび支柱を係止することができる。また、この工程では、図14Dに示されているように、表面346との係合から変形可能な要素344を解放し、これにより、クリップが支柱から解放される。また、したがって、この工程では、ロッドおよびクリップが支柱から解放される。図14Eは、支柱から近位に完全に引き抜かれたクリップを示している。
【0054】
図15A、15B、16Aおよび16Bは、支柱の固定および解放機構の代替的実施形態を示している。図15A〜16Bの実施形態は、アクチュエータが作動して、支柱をバックルの方へ引いてアンカー固定要素を固定する作動要素、つまりロッドを引くという点で上述されているものと似た動作をする。ロッド354は、図6Aおよび6Bの実施形態のクリップに似たクリップを備える。図15Aは、斜視図であり、図15Bは、バックル352の歯358が支柱360の溝362で係止されるようにロッド354が作動し、近位に引かれた後の側面図である。図15Aおよび15Bに示されている位置に先立ち、ロッド354の表面356が、歯358が支柱の溝と係止するのを防いでいる。ロッドの遠位端のところのクリップは、ロッドの継続的な作動によって変形可能な要素が変形し、支柱をロッドから解放するように支柱の変形可能な要素と係合する。次いで、アクチュエータの継続的な作動によって、このロッドを患者から取り外すことができる。あるいは、図5A〜5Eのピン234に似たピンをこの実施形態に組み込むことができ、これによって上で説明されているように、ロッドを支柱から解放することが望ましいときにピンを取り外す。
【0055】
図16Aおよび16Bは、図15Aおよび15Bにおいて係止されている支柱およびバックルの係止解除を示している。この係止解除の工程は、心臓弁を送達システムから解放する前に実行されなければならない。ロッド354が遠位に押されると、ロッドの表面364(係止解除要素)と支柱の溝との間の歯358の係合および係脱が行われる。ロッドの遠位への移動が続けられると、支柱が遠位方向に押され、これにより、アンカー固定要素が伸長する。
【0056】
いくつかの実施形態において、フィンガーは、熱硬化で形状記憶拡張性構成形状になる合金で作ることができる。ロッドは、例えば、ステンレス鋼からなるものとすることができる。外側チューブは、例えば、熱収縮ポリマーで作ることができるが、適したものであればどのような材料のものであってもよい。外側チューブは、フィンガーに対する柱強度を高めるが、これは、アンカー固定要素の能動的短縮を行っているときに加えられる力の下に置かれたときに有利である。
【0057】
上記実施形態では、作動要素およびシースの作動を制御するために使用される、患者の体外に配設されている送達システム・ハンドルを参照した。本明細書で説明されているような医療用インプラントの配備は、デバイスの配備を制御するために医師によって作動される、ハンドル上のアクチュエータ(例えば、つまみ、レバーなど)によって制御されうる。送達および拡張の方法を簡素化するためにできる限り少ないアクチュエータを使用して複数の配備工程を実行することができることが望ましい。さらに、単一のアクチュエータを使用していくつかの配備工程を実行することが望ましいが、配備工程の複数の部分を実行するために単独型の移動(例えば、単一の方向につまみを回すこと)によって、単一のアクチュエータを作動させることもある。これにより、ハンドル・アクチュエータを作動させるために使用する手を、複数の工程を実行するためにアクチュエータから離す必要がないため、医師が処置を容易に行える。後述の送達システムのいくつかの実施形態では、アンカー固定要素をシースから露出させ、支柱をバックルと係止する作動工程は、送達システムのハンドル上の単一のアクチュエータによって実行される。単一のアクチュエータを複数の配備工程を実行することができるハンドル上に備えることで、全体的な処置が簡素化されうる。単一のアクチュエータを使用して複数の配備工程を制御すれば、工程が指定された順序で実行されることも保証することができ、第2の工程が第1の工程の実行前に実行されないことが確実になる。
【0058】
単独型の運動をする単一のアクチュエータの作動により複数の送達システム・コンポーネントを移動する、本明細書で説明されている実施形態において、この単独型の運動を行うことで、他の介在する作動工程が実行されなくても複数の送達システム・コンポーネントを移動することができる。いくつかの実施形態では、使用者は、この単独型の運動においてアクチュエータの作動を停止することができ、次いで、その作動を継続することができる。単独型の運動は、作動しないままある期間が過ぎる実施形態を含む。つまり、使用者は、アクチュエータを作動させることを開始し、ある期間待機し(例えば、撮像技術に基づいて医療用デバイスの位置が十分であるかどうかを判定する)、次いで、アクチュエータを作動させ続けることができる。これは、本明細書で説明されているような「単独型」の運動に該当する。
【0059】
単一なアクチュエータを使用して送達システムの複数のコンポーネントを作動させる上での潜在的な問題は、作動可能なコンポーネントを互いに独立して作動させる場合、または作動可能なコンポーネントを処置の一部において互いに独立して作動させるが、その処置の他の部分においては同時に作動させる場合、または作動可能なコンポーネントを同時に、ただし異なる移動速度で作動させなければならない場合に生じる。以下では、単一なアクチュエータを作動させることで複数の送達システム・コンポーネントを作動させる送達システムについて述べるが、複数のコンポーネントのうちの第1のコンポーネントおよび複数のコンポーネントのうちの第2のコンポーネントは、それぞれ互いに独立して作動する。いくつかの実施形態では、第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントは、互いに同時に、またいくつかの実施形態では両方とも作動している間に異なる速度で作動する。
【0060】
送達システムのいくつかの実施形態では、単一のアクチュエータを使用し、シースから露出させる方法においてシースを近位に引き入れると同時に(例えば、図3B〜3Fの例示的な方法に示されているように)、支柱に結合されている作動要素を近位に引き入れる。つまり、インプラントをシースから露出させると同時に、インプラントを完全に配備かつ係止された構成形状に固定するために、単一のアクチュエータを単一の仕方で作動させるということである。シースからインプラントを配備すると同時にそれを最終的な配備された構成形状に再構成するために、1つの方向または1つの仕方で作動させることができる送達システムに単一なアクチュエータを組み込むことで、医師が行う配備手順が大幅に簡素化されうる。
【0061】
インプラントの配備の第1の部分において、シースのみを近位方向に引っ張り、これによってインプラントをシースから露出させる。配備の第2の部分において、支柱のみを近位に引っ張り、これによって支柱をバックルの方へ移動してアンカー固定要素を係止された構成形状に固定する。この手順の第3の部分において、シースと支柱に可逆的に結合されている作動要素の両方を近位方向に引っ張ると、シースと作動要素の移動を可変速度で行うことができる。したがって、単一なアクチュエータで、複数の送達システム・コンポーネントの依存する運動と独立した運動の両方に対応しなければならない。
【0062】
図17A〜17Dは、ハンドル上の単一のアクチュエータが、複数の送達システム・コンポーネントを選択的に作動させる例示的な送達システムを示している。この送達システムの設計は、ほとんどの種類の医療用デバイスの送達システムにおいて複数の送達システム・コンポーネントを選択的に作動させるために使用できるが、これについては置換心臓弁の配備に関して説明する。これに加えて、本明細書で説明されているものと異なる種類のコンポーネントを作動させるように単一のアクチュエータを適合させることができるが、これについてはシースおよび置換心臓弁の一部を作動させる作動要素の移動を制御するものとして説明する。
【0063】
図17A〜17Dは、外側チューブ380、回転式アクチュエータ372(使用者によって作動される)、送りネジ374、ロッド・キャリッジ376、ロッド・キャリッジ・ネジ378、シース・キャリッジ384、シース・キャリッジ・ネジ386を備える、ハンドル・ハウジング(図示せず)内に収納されている送達システム370のコンポーネントを示している。ロッド・キャリッジ376を近位に移動すると、ロッドは近位方向に移動し、これにより、近位方向の力が本明細書で説明されている支柱に加えられる(また、支柱プラ−・キャリッジ206を遠位に移動すると、遠位方向の力が支柱に加えられる)。シース・キャリッジ384を近位に移動すると、シースが近位に引き入れられ、インプラントがシースから露出する(また、シース・キャリッジ384を遠位に移動すると、シースが遠位に移動してインプラントが再シース被覆される)。一実施形態では、シースは、シース・キャリッジにねじ込まれた近位端に接着されているアダプタを有する。したがって、送りネジを回転させることで、シース・キャリッジを移動するとシースが直接移動する。一実施形態では、ロッドは、ハイポチューブの内側に接着され、ハイポチューブは、ロッド・キャリッジに直接取り付けられている、力制限部材にピンで固定される。したがって、ロッド・キャリッジを移動すると、ロッドが移動する。回転式アクチュエータ372が回転すると、回転移動はロッド・キャリッジ・ネジ378とシース・キャリッジ・ネジ386の直線移動に変換される。
【0064】
チューブ380は、チューブ380の2つの部分に沿った直線状の雌ネジ383と、直線状の雌ネジ部分383の間に配設されたチューブの一部に沿った部分的に螺旋状の雌ネジ382とを含む内側雌ネジを備える。ロッド・キャリッジ・ネジ378およびシース・キャリッジ・ネジ386は両方とも、ネジ374の雌ネジと係合し、アクチュエータ372の回転をロッド・キャリッジ・ネジ378およびシース・キャリッジ・ネジ386の移動に変換することができる内側雄ネジを備える。シース・キャリッジ・ネジ386は、図17Aに示されている構成形状をとる直線状の雌ネジ383と係合する雄コブ(複数可)385を備える。シース・キャリッジ・ネジ386はまた、シース・キャリッジ384内の内側雌ネジと係合する外側雄ネジ387(図17Dを参照)を有する。図17Aは、インプラントがシースに入れられ被覆され、支柱がバックルと係止していない構成形状の送達システムを示している。アクチュエータ372の初期回転により、シース・キャリッジ・ネジ386は近位方向に直線的に移動する。図17Aから図17Bへの遷移に示されているように、シース・キャリッジ384内で雄ネジ387と雌ネジとの相互作用があるため、シース・キャリッジ・ネジ386の近位への移動により、シース・キャリッジ384の近位への移動が生じる。この移動により、シースの近位への移動が生じるが、これは、インプラントを自己拡張できるようにシースから露出させ始めるために必要である。
【0065】
しかしながら、アクチュエータ372のこの初期回転は、ロッド・キャリッジ376の近位への運動に変換されない。アクチュエータ372のこの初期回転により、ロッド・キャリッジ・ネジ378は近位に移動するが、ロッド・キャリッジ・ネジ378がシース・キャリッジ・ネジ上の雄コブ385に類似している雄コブ(図示せず)を有しているため、ロッド・キャリッジ・ネジは外側チューブ380内で回転する。ロッド・キャリッジ376は、ロッド・キャリッジ・ネジ378上の雄ネジ379と嵌合する内側雌ネジを有する。これらのネジにより、ロッド・キャリッジ・ネジ378は、ロッド・キャリッジを近位に移動させることなく、ロッド・キャリッジ376内で回転することができる。したがって、アクチュエータ372のこの初期回転が行われた結果、図17Aから17Bへの遷移に示されているように、ロッド・キャリッジ376のロスト・モーションが生じる。したがって、シースが引き戻され始めると、ロッドは支柱を引っ張らない。
【0066】
図17Bの構成形状において、キャリッジ・ネジの両方の雄コブは、直線状のそれぞれの雌ネジ383と整列される。したがって、アクチュエータ372の回転を続けると、キャリッジ・ネジ386,378の両方が近位に移動することになる。キャリッジとそれらの各ネジとの間に螺合による相互作用があるため、両方のキャリッジが近位方向に移動する。これは、図17Bから17Cへの遷移に例示されている。この手順部分において、シースとロッドは両方とも近位方向に引っ張られる。
【0067】
図17Cの構成形状において、底部の雄コブ385(図示せず)は螺旋状のネジ山382と係合する。したがって、アクチュエータ372の回転を続けると、シース・キャリッジ・ネジ386が外側チューブ380に対して回転することになる。これにより、図17Cから17Dへの遷移に示されているように、シース・キャリッジ・ネジ386が回されて、シース・キャリッジ384から外される。この結果、シース・キャリッジは近位方向に移動しなくなる(つまり、ロスト・モーション)。しかしながら、ロッド・キャリッジ376とロッド・キャリッジ・ネジ378との間の螺合による相互作用は、図17Cから17Dへの遷移に示されているように、ロッド・キャリッジ376の近位への移動に変換される。この手順部分において、ロッドは近位に引っ張られるが、シースは作動しない。
【0068】
キャリッジの移動は、アクチュエータを反対方向に回転させることによって逆転することもできる。
送りネジ374の雌ネジは、図17A〜17Dに示されているように、ネジの長さに沿って異なるピッチを有することがある(ただし、送りネジ374のネジ山のピッチは送りネジ374の長さに沿って一定である場合もある)ことに留意されたい。図示されているように、シース・キャリッジ・ネジが送りネジ374と相互作用する部分のピッチは、ロッド・キャリッジ・ネジが送りネジ374と相互作用する場所のピッチに比べて大きい。このため、シース・キャリッジは、図17Bから17Cへの遷移においてロッド・キャリッジに比べて長い距離を移動することになる。したがって、図17A〜17Dは、ロスト・モーションを示しているだけでなく、単一のアクチュエータ(例えば、回転式アクチュエータ202)の作動に基づく2つの移動する送達システム・コンポーネントの異なる運動速度をも示している。
【0069】
図18A〜18Dは、可変ピッチおよび可変直径を有する雌ネジ要素400上の雄ネジ要素412の一連の移動を示している。図17A〜17Dの送りネジ374は、雌要素400の可変ピッチおよび直径を有することができ、図17A〜17Dのキャリッジ・ネジは、雄要素412の特徴を組み込むことができる。セクション402は、セクション404,406よりも小さいピッチを有するが、セクション406の直径は、セクション402,404の直径よりも大きい、雄ネジ410の送り部分は、より高さがあり(図18Dを参照)、これにより、雌ネジ406,404、さらには雌ネジ402と係合することができる。雄ネジ408は、送り部分に比べて高さが低い。雄ネジ408は、雌ネジ406と係合するのに十分大きいが、雌ネジ404,402はそうでない。この設計は、雌ネジ要素400の長さにおける雄要素412の可変移動度に対応できる。雄要素412は、ピッチが異なるため、セクション402に比べてセクション406の方がねじ込まれたときにより大きな距離を移動する。これにより、送達システム・コンポーネントは、第1の速度で移動し、次いで、第2の速度で移動するようにできる(この場合、第2の移動速度は第1の移動速度よりも低い)。この可変ピッチ設計は、本明細書で説明されている送達システムのいずれにも組み込むことができる。
【0070】
図19は、図18A〜18Dに示されている設計と同様に可変ピッチで機能するバレル・カム設計を示している。2つの実施形態における違いの1つは、図19の実施形態におけるネジ山433,435が中央の送りネジの代わりにバレル・ハウジング421内に組み込まれるという点である。図19に示されているように、シース被覆キャリッジ425は、第1のネジ山433上で回転し、ロッド・キャリッジ423は、バレル・ハウジング421内の第2のネジ山435上で回転する。ロスト・モーションは、ピッチ角を0に、または0に近づけることによるものであり、したがって、キャリッジは回転するが、バレル・ハウジング421内では平行移動しない(または最小量だけ平行移動する)。キャリッジのそれぞれは、ネジ山433,435内のトラッキングのためにコブ429も備える。キャリッジは、ガイド・チューブ431用の穴427も備える。
【0071】
図20A〜20Cは、ハンドル・ハウジング452、1対の歯車454、回転式アクチュエータ456、ロッド送りネジ458、ロッド・キャリッジ460、ロッド・キャリッジ・バネ462、ロッド・キャリッジ・ネジ464、シース被覆送りネジ466、シース・キャリッジ468、シース・キャリッジ・ネジ470、シース・キャリッジ・バネ472を含むロスト・モーションに対応するための代替的設計を示している。回転式アクチュエータ456が、両方の歯車454を回し、これらの歯車の一方はロッド送りネジ458に連結し、他方はシース被覆送りネジ466に連結する。各送りネジのピッチが異なることで、ロッド・ネジ464およびシース被覆ネジ470に対する異なる直線運動速度が可能になる。図20Aに示されている初期構成形状において、バネ462は完全に圧縮され、バネ472は無負荷状態である。アクチュエータ456の回転により、両方の送りネジ458,466が回り、これにより、ロッド・ネジ464とシース被覆ネジ470の両方が近位に移動する。シース被覆キャリッジ68とシース被覆送りネジ466との間のバネ472の圧縮に対する抵抗により、シース被覆キャリッジ468は、図20Aと図20Bとの間の遷移に示されているように、シース被覆ネジ470の近位への移動に追随する。力を加えてバネ462の負荷を取り除くと、ロッド・キャリッジ460は静止したままであるが、ロッド・ネジ464は、図20Aから図20Bへの遷移に示されているように、近位に移動する。
【0072】
ロッド・ネジ464が、ロッド・キャリッジ460の近位端に到達したときに、アクチュエータ456の回転を継続すると、両方のキャリッジが、図20Bに示されているように移動する(両方のキャリッジが運動している)。アクチュエータ456の継続的作動の後、ストッパー(図20Cには示されていない)によってシース被覆キャリッジ468が近位への移動を停止する。アクチュエータ456の継続的回転により、シース・キャリッジ・ネジ470(シース・キャリッジ468ではなく)の継続的移動とバネ472の圧縮が行われる。これにより、シースを動かすことなくロッド・キャリッジ460の近位への移動を通じてアンカーを固定することができる。
【0073】
アクチュエータ456を逆方向に作動させると、ロッド・キャリッジ460の遠位への運動を通じてアンカーの固定が解除される。バネ472の圧縮は、シース被覆ネジ470がシース被覆キャリッジ468内に完全に着座するまでシース被覆キャリッジ468の運動を制限する。次いで、2つのキャリッジは、ロッド・キャリッジ460がストッパー(図示せず)に到達するまで一緒に遠位へ移動し、これによりロッド・キャリッジ460が移動せず、バネ462が圧縮されている間にロッド・ネジ464を遠位に移動させる。
【0074】
図21〜22は、ロッドおよび外側シースの運動を減結合するための例示的な設計を示す。図21において、単一なアクチュエータが近位表面上のカムで歯車に連結している。カムは、送りネジに取り付けられているクラッチの係合/係脱を行わせる。クラッチが係合すると、送りネジが回転し、これによりキャリッジ(図示せず)は、アクチュエータの移動の方向に応じて近位に移動するか、または遠位に移動する。クラッチが係合していない場合、送りネジは回転せず、キャリッジは静止状態にある。
【0075】
図21において、ナット502(ロッドまたはシースのいずれか用)は、キャリッジ504内の雌特徴部508と係合する雄タブ506を介してキャリッジ504(ロッドまたはシースのいずれか用)に接続される。タブ506を介したナット502とキャリッジ504との間の係合により、キャリッジ504は、送りネジ510が回されると(図示されていないアクチュエータによって)ナット502とともに移動する。ナット502は、ハウジング内の経路514に沿って進行するコブ512を有する。経路514内のジョグ516により、ナット502はキャリッジ504に対して反時計回りに回転する。この運動により、タブ506は、雌特徴部508から係脱し、ナット502をキャリッジ504から解放する。ナット502およびキャリッジ504はつながっていないため、アクチュエータの継続的な作動(例えば、回転)で、ナット502のみが移動する。アクチュエータを反対方向に回転させると、ナット502は引き返してキャリッジと接触して、キャリッジ内にナット・タブ506を再着座させ、次いでキャリッジ504がナット502とともに移動する。
【0076】
図22は、雌ネジのある領域606とネジ山のない領域610を有する送りネジ602を含む送達システム600の一部を示している。シース・キャリッジ604は、送りネジ602上の雌ネジ606と係合する雄ネジ614を備える。シース・キャリッジ604はまた、送りネジ602上のロック・リップ612と係合して、キャリッジ604を送りネジ上に係止し、かつ、キャリッジ604が遠位方向Dに移動するのを防ぐロック要素608を備える。ハンドル(図示せず)上のアクチュエータの回転により、送りネジ602が回転してキャリッジ604が近位に移動する。これにより、シースは、支柱を移動することなく近位方向に引き入れられる。近位に継続的に移動することで、ロック要素608はロック・リップ612と係合かつ係止する。送りネジは領域610内にネジ山を持たないため、送りネジ602の回転を続けても、キャリッジ604の移動は行われない。
【0077】
図23Aおよび23Bは、図4および図5A〜5Bに示されている心臓弁の配備に使用される例示的なハンドルの近位部分を示している。ハンドルは、ハウジング620、回転式アクチュエータの形態の第1のアクチュエータ624、摺動可能ドア622、およびドア622が図25Aの第1の位置から図25Bの第2の位置へ順方向に摺動したときにのみアクセスできる第2のアクチュエータ626を備える。この実施形態では、回転式アクチュエータ624は、シース(図3B〜3Fに示されているような)の移動ならびに図4および図5A〜5Bに示されている作動要素206Bの移動を制御する。一実施形態では、アクチュエータ624は、図17A〜17Cに示されているようにシースおよび作動要素の移動を制御するため、アクチュエータ624が作動すると、シースおよび作動要素の移動が独立または従属する形で行われる。アンカー固定要素が支柱をバックルと係止することによって固定されると、医師は、図23Bに示されている位置にドア622を摺動させ、第2のアクチュエータ626を作動させる。アクチュエータ626の作動により、図4のピン・アセンブリ236が引き入れられると、3本のピン234が支柱および作動要素を貫通する穴から取り外されて、支柱と作動要素206Bとの結合が外される。
【0078】
一実施形態では、アクチュエータ626の継続的作動によっても、作動要素206Bが図5Bに示されている位置から図5Eに示されている位置にさらに引き入れられる。図23Cは、アクチュエータ626の継続的作動により作動要素206B(図示されていない図23Aおよび23Bからの第2のアクチュエータ626)をさらに引き入れることが可能な設計による、例示的な送達システムのハンドル630の部分を拡大して示している。ロッキングおよびシース被覆駆動リングは、図17A〜17Dを参照しつつ説明されている方法と同様に送りネジを介してロッキングおよびシース被覆キャリッジを作動させる。ハンドル630は、ロッキングおよびシース被覆駆動リング631、ロッキングおよびシース被覆送りネジ632、ロッキング・キャリッジ633、リリース・ピン・キャリッジ635、ロスト・モーション・バレル629、リリース・ピン・マンドレル636(ハイポチューブ内に示されている)、ロッド作動マンドレル634(ハイポチューブ内に示されている)、および力リミッタ638を備える。力リミッタ638は、リリース・ピン・キャリッジ635が近位に引かれたときに移動するトラック637を備える。リリース・カラーは、リリース・ピン・キャリッジ635を近位に引っ張る別のより小さな送りネジ639(通常はロッキング・キャリッジ633によって駆動される)を作動する。医師が、ピンを取り外せる状態にあるときに、ハンドル(図示せず)上の第2のアクチュエータが作動すると、リリース送りネジ639と係合して回転させる。そして、リリース・カラー636がトラック637内で近位に引かると、リリース・ピン・マンドレル636が近位に引き戻されて、ピンが支柱から解放され、さらにロッドと支柱との結合が外される。第2のアクチュエータの継続的作動で、力リミッタ638の近位端に到達するまでリリース・キャリッジを引き続ける。キャリッジ635は、力リミッタ638の近位端に達すると、力リミッタの他の部分よりも近接して着座する部分を移動する。これにより、ロッド・マンドレル634を近位に引いて、ロッドを近位方向に引く。したがって、第2のアクチュエータを使用することで、ピンを解放するとともに、ロッドを近位方向に引き戻し続けることができる。
【0079】
あるいは、ハンドルは、回転式アクチュエータ624をさらに作動させて、ピンの取り外し後も作動要素206Bを近位に引き入れることができるように設計することができる。次いで、送達システムを患者から取り外すことができる。
【0080】
本明細書で説明されている医療用インプラントは、インプラント全体が最初にシースから配備された後に再度折りたたみ、シース内に少なくとも部分的に戻して再シース被覆することができる。これは、インプラントの少なくとも一部が、インプラントをシースから配備した後も送達システムの一部に可逆的に結合されたままであるためである(例えば、図3F参照)。アンカー固定要素が完全に配備された構成形状に固定された後であっても、いくつかの実施形態では支柱をバックルから係止解除することができ、その後、アンカー固定要素をシースに入れて再シース被覆することができる。送達用シースまたはカテーテルから配備された後にインプラントを再シース被覆することができることは、必要な場合にインプラントを患者から取り外すか、または患者体内で再位置決めすることができるため有利である。例えば、置換心臓弁の機能および/または位置決めは、置換心臓弁が図3Fに示されている構成形状になった後に評価することができ(また、アンカーが拡張し係止された構成形状に固定され始めたときに継続的に評価でき)、次いで、再シース被覆し、その後、必要な場合に再位置決めするか、または患者から取り外すことができる。
【0081】
本明細書で説明されている再シース被覆を実行するための再シース被覆する方法および送達システムでは置換心臓弁を取りあげているが、さまざまな医療用デバイスが本明細書で説明されている再シース被覆補助手段から恩恵を得ることができる。例えば、拡張性ステントはステントを送達用カテーテルまたはシースから配備した後も送達システム可逆的に結合されたままであり、この場合、本明細書で説明されている再シース被覆補助手段をその送達システムに組み込むことから利益を得ることができる。
【0082】
心臓弁を再シース被覆するためには、シースをカテーテルに対して遠位に送る。あるいは、カテーテルをシースに対して近接して引き抜くことができる。カテーテルに対してシースを遠位に移動すると、カテーテルの遠位端に結合されているフィンガーが径方向内向きに折りたたまれる。これにより、アンカーの近位端が折りたたまれる。シースを遠位に継続的に移動すると、心臓弁の残り部分が伸長し、折りたたまれ、シースはアンカー固定要素を再捕捉することができる。
【0083】
アンカー固定要素が編組材料からなる実施形態では、シースを遠位に送ると、アンカーの近位端の一部がシースの遠位端に引っ掛かる、つまり固着する可能性がある。これは、再シース被覆を妨げるか、または再シース被覆効率を低くする可能性がある。
【0084】
図24は、シース644、送達用カテーテル646、およびシース被覆補助要素642を備える代替的送達システム640を示している。シース被覆補助要素642は、編組構造であり、本明細書で説明されている編組アンカー固定要素と同様のものとすることができる。シース被覆補助要素642は、一般的に、シース被覆補助要素642の遠位端がアンカー固定要素649の近位端の直径よりも大きな直径を有する形状記憶構成形状を有する。送達システムは、置換心臓弁648(わかりやすくするために置換小葉は図示されていない)の近位領域に可逆的に結合されているフィンガー647(2つのみが示されている)を備える。シース被覆補助要素642の近位端は、送達用カテーテル646の遠位端に結合される。フィンガー647は、カテーテル646の遠位端にも結合され、一般的に、シース被覆補助要素642の「中にあるか」またはこれに対して径方向内きである。図24は、シースが引き抜かれて、アンカー固定要素を形状記憶構成形状に拡張させることができようになった後の、ただしまだ能動的に短縮されていない状態の置換心臓弁を示している。
【0085】
インプラントを再シース被覆するためには、シースをカテーテルおよびインプラントに対して遠位に送る。これは、上述のように、ハンドルのアクチュエータを作動させることによって行うことができる。シース被覆補助要素の近位端は送達用カテーテルの遠位端に固定されているため、シースの遠位端は、引っ掛かることなく、シース被覆補助要素の近位端上を容易に通り過ぎることができる。シースを継続的に遠位に移動することで、シース被覆補助要素の少なくとも遠位部分が伸長し、直径が部分的に減少する。シース被覆補助要素が伸長すると、シース被覆補助要素の遠位端は、アンカーの近位端に対して遠位に移動する。シースを継続的に遠位に移動すると、シース被覆補助要素の遠位端が引き続き収縮し、シース被覆補助要素の少なくとも遠位領域がアンカーの少なくとも近位端と係合する。したがって、シース被覆補助要素は、アンカーの近位端に引っ掛かる危険性もなく、シースが通り過ぎることができる表面を形成する。それに加えて、シース被覆補助要素は、径方向内向きの力をアンカーの近位端に加え、アンカーの近位端の収縮を補助することができる。シースが遠位に送られ続けると、アンカーは収縮し、シース内に戻され再シース被覆される。いくつかの実施形態では、シース被覆補助要素は、ポリマーのメッシュである。
【0086】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素は、塞栓フィルタとしても機能しうる。シースから露出させた後、シース被覆補助要素は、標的位置に向かって下流へ移動する塞栓を捕捉するが、血液は補助要素を通過することができる。このような実施形態では、シース被覆補助要素の遠位端は、これが配設される内腔の直径にできる限り近い形状記憶直径を有するように構成され配置されうる。塞栓フィルタ用の例示的な材料は、当技術分野で知られている。
【0087】
図25〜28は、代替的シース被覆補助要素660を備える代替的送達システムを示している。シース被覆補助要素660は、3つの折りたたみ可能なブレード662を備える。これらのブレードは、ハブ664の近位端のところで互いに固定される(図28を参照)。ハブ664は、フィンガー666およびカテーテル668に対して軸方向に移動可能であるが、カテーテル668の遠位領域は、ハブと係合し、ハブストッパーに対して近位へのハブの移動を防ぐハブストッパー670を備える。シース(図示せず)がカテーテル668上で遠位に送られると、フィンガー666を折りたたみ始める。フィンガーが径方向内向きに折りたたまれると、ハブはフィンガー上で遠位に移動することができる。フィンガーが折りたたまれると、アンカーの近位端が、折りたたみ始め、ハブは、遠位に送られ続ける。最終的に、ブレード662の遠位端がアンカーの近位端を覆い、次いで、シースは、アンカーの近位端に引っ掛かることなくアンカー上に送られる。いくつかの実施形態では、ブレードは、シースが力をブレードに加えたときにそれ自体内向きに折りたたまれる。
【0088】
図26に示されている実施形態において、シース被覆補助要素660は、フィンガーを通過させることができる任意のフィンガー開口部672を備える。開口部672は、ハブをフィンガーに対して遠位に容易に移動できる任意の形状(例えば、矩形、円形など)をとるように設計することができる。図28の実施形態では、ブレードは、折りたたむのを補助するオプションのスリット674を有する。
【0089】
図29は、その遠位端にアーム682および歯684を備えるシース被覆補助要素680の一実施形態を示している。歯は、ブランド・ストランドが編紐の端部(または編組でないアンカーの他の近位領域)のところで折り返す場合に形成される、編紐の王冠と係合することでシースをアンカー上で遠位に送ることができる。各アーム682は、任意の数の歯684を持つことができる。アームは、シースから加えられた力に応答することによって、これらのアームは曲がり部を持つ第2の構成形状に変化して、アームの遠位部分が径方向内向きに曲げられるとアンカーの近位端と係合する。
【0090】
図30は、ステント要素672からなるシース被覆補助要素670の代替的実施形態を示している。シース被覆補助要素670は、図26に示されている実施形態と同様の機能を有するが、編組材料を使用しない。ステントは、例えば、合金またはステントの当技術分野で知られているような他の任意の好適な材料から作ることができる。
【0091】
図31は、丸くなった要素(curled element)682(アンカーは図示されていない)を備えるシース被覆補助要素680の代替的実施形態を示している。丸くなった要素682の近位端を、他の実施形態において上で説明されているようにハブに結合することができるか、または丸くなった要素のそれぞれをカテーテルに個別に固定することができる。シースが遠位に送られると、シースの力によって、丸くなった要素の遠位端の丸みがまっすぐにされる。まっすぐになった要素の遠位端は、アンカーの近位端の上へ、そして遠位へ延在し、これにより、アンカーの王冠に引っ掛かることなく、シースをアンカーの近位端上に送ることができる。丸くなった要素は、例えば、ステンレス鋼または他の任意の好適な材料から作ることができる。
【0092】
図32および33に示されている代替的実施形態において、シース被覆補助要素684は、複数のアーム686(図32および33には12本のアームが示されている)を備え、それぞれが雄ロッキング要素688を備える遠位端を有する。各アーム686は、雄ロッキング要素688よりもハブ692の方に近い位置に配設された雌ロッキング要素690を備える。図32および33では、雄ロッキング要素は矢じりの形状を有し、雌ロック要素はスロットの形をとる。ハブ692は、制御ワイヤ696を通すための開口部694を備える。制御ワイヤ696は、拡大された要素が開口部694を通して近位に引っ張られるのを防ぐ拡大された要素をその遠位端(図示せず)に有する。送達構成形状において、各アーム686は、ハブ692から遠位に延在し、スロットの遠位にある各アームの遠位領域は、アンカーの王冠の周りに巻き付けられる(図33を参照)。雄ロック要素688は、雌ロック要素690と係合する。置換心臓弁が再シース被覆される場合、近位方向の力が制御ワイヤ696に加えられるため、王冠が径方向外向きに延在することを防いで、固着することなく近位端の王冠上で遠位にシースを送ることができる。あるいは、近位の力は不要であり、アーム686とアンカーの王冠との係合により、王冠がシースに固着するのを防ぐ。近位方向の力をハブに加えると、矢じりがスロットから解放され、アームがアンカーから解放される。これにより、インプラントがアームから解放される。
【0093】
図34〜37に示されている代替的実施形態では、送達システムは、その近位端のところで送達システム・コンポーネントに結合され(例えば、カテーテル702の遠位端、ハンドル内のアクチュエータなど)、それぞれアンカーの王冠の周りに巻き付けられるワイヤまたは縫合糸700を備える。ワイヤまたは縫合糸700の遠位端は、カテーテル702の外面内の環状戻り止め706と係合する球状要素などの拡大された要素704を有する。シース708は、拡大された要素704と戻り止め706の係合を維持する。ワイヤまたは縫合糸700の遠位端は、1つのロッキング要素を単純に備えることができるが、カテーテルの外面は、第2のロッキング要素を備えることができる。縫合糸700は、王冠に対し径方向内向きの力を与え、再シース被覆時にシースがそれらの上に広がるのを補助する。外側シースがカテーテルに対して近接して引かれた後、拡大された要素が凹みから解放され、ワイヤ/縫合糸700は、アンカーの王冠から解放される。図35に示されている例示的な代替的実施形態では、カテーテルは複数の戻り止め706を備える。
【0094】
図38〜41は、カテーテル714の遠位端に取り付けられた複数のアームを備える、シース被覆補助710の代替的実施形態を示している。アームは、2種類のアーム718,720を備え、アーム718は、アーム720に比べてわずかに長い。アームは、その遠位端のところにある曲がりを有するワイヤ・セグメントから形成され、アームのこれら2つの端部は、シース被覆補助710の近位端726のところで一緒に結合される。アーム718は、カテーテルからアンカーへ延在し、遠位端は、アンカーの編紐内に織り込まれている。つまり、アーム718の遠位端は、図39〜41に示されているように、編組アンカー内で径方向に配設される。アーム718は、アーム718とアーム720の両方より短い、剛性補強要素722に取り付けられる。剛性補強要素722は、例えば溶接部であってもよい取り付け点724のところでアーム718に取り付けられる。これからわかるように、剛性補強要素722は、アーム718のワイヤ・セグメント内に配設され、これによってアーム718の強度を高める。シース被覆補助は、アーム718よりも短いものとして示されているアーム720も備えるが、これらは両方とも実質的に同じ長さとすることが可能である。図38から分かるように、2本のアーム720は、取り付け点724のところで一緒に取り付けられる。アーム720は、編紐内に織り込まれ、編紐の内側に径方向に配設されているアーム720とは異なり、編紐の径方向外向きに位置決めされる。アーム720は、シースが遠位に送られるときに編紐に径方向内向きの力を加えることを助ける。アーム718はまた、編紐に径方向内向きの力を加えることも助け、また2組のアームは、シースの遠位端がアンカーに引っ掛からないことを確実にする。
【0095】
代替的実施形態では、編組アンカーの近位の王冠は、王冠が径方向内向きに(編紐の長手方向軸に対して、またアンカーの残り部分に対して)曲げられた形状に熱硬化されて、再シース被覆の方法におけるシースを補助する。王冠は、シースが王冠に引っ掛かるのを防ぐために内向きに曲げられている。
【0096】
本開示は、上で説明されている例示的な実施形態に関して説明されているが、当業者であれば、多くの修正をこれに加えることができることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲が上記の例示的な実施形態によっていかなる形においても制限されることを意図するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用デバイスに関し、特に、埋込み型医療用デバイスおよび医療用デバイスを送達するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
埋込み型医療用デバイス(implantable medical device)は、患者体内の標的位置に送達され、その場所に埋め込むことができる。例えば、内腔内送達技術はよく知られている。送達システムは、典型的には、シースおよび/またはカテーテルを備え、これを通して、インプラントが標的位置に送達される。インプラントは、一般的に、標的位置でシースまたはカテーテルから配備される。いくつかの埋込み型デバイスは、完全自己拡張性を有し、これらは、シースまたはカテーテルから解放されたときに自己拡張し、自己拡張工程の後にさらなる拡張を必要としない。自己拡張は、シースまたはカテーテルを近位に引き入れる操作、埋込み型デバイスをシースまたはカテーテルから押し出す操作、またはこれらの組合せによって発生しうる。しかしながら、いくつかの埋込み型デバイスは、自己拡張工程において、または自己拡張工程の後に作動する。自己拡張工程の後に作動させることができる例示的な置換心臓弁は、文献において説明されている(例えば、本願明細書に援用する、2004年11月5日に出願した同時係属の特許文献1および2003年12月23日に出願した特許文献2参照)。拡張性医療用デバイスを完全に配備かつ係止(lock)された構成形状(configuration)にして、該デバイスを配備位置に固定すると有利である。
【0003】
この送達方法では、医療用デバイスは、1つまたは複数のアクチュエータを使用する送達システムによって作動させることができる。例えば、アクチュエータ(例えば、送達システムのハンドル上のノブの形態のもの)を作動させて(例えば、回して)、送達システムのコンポーネントを送達システム内の他のコンポーネントに対して、または埋込み型デバイスに対して、またはその両方に対して、移動させることができる。一般的に、送達方法が医師にとってできる限り簡単であること、手順の完了までに要する時間が短いこと、送達システムの機械的な複雑さが低いことが望ましい。いくつかの送達手順では、インプラントを配備するために、送達システムの複数のコンポーネントを作動させる必要がある。また、複数の工程が特定の順序で実行されることを保証することが必要になる場合もある。求められるのは、医療用デバイスの配備手順を簡素化し、および/または複数の工程が特定の順序で実行されることを保証することができる送達システムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第10/982,388号
【特許文献2】米国特許出願第10/746,120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができる埋込み型医療用デバイスおよび医療用デバイスを送達するためのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、患者の体外に配設されるハウジングを備える送達システムを含む、医療用デバイス・システムを説明しており、ハウジングは、アクチュエータを備え、送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントを第2の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するように構成および配置され、送達システムは、アクチュエータが第2の送達システム・コンポーネントを第1の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するようにさらに構成および配置される。
【0007】
いくつかの実施形態において、送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に作動させ、場合によっては、これらを同時に作動させたときに異なる速度で作動させるようにさらに構成かつ配置される。
【0008】
いくつかの実施形態において、送達システムは、アクチュエータの作動により第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが同じ方向に移動するように構成される。いくつかの実施形態では、送達システムは、アクチュエータの作動により第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが特定の順序で作動するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、アクチュエータは単一のアクチュエータ要素であり、アクチュエータは単一の運動(single type of motion)でアクチュエータを作動させると、第2の送達システム・コンポーネントとは独立した第1の送達システム・コンポーネントの作動および第1の送達システム・コンポーネントとは独立した第2の送達システム・コンポーネントの作動の両方がなされるように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、医療用デバイス・システムは、送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達される医療用デバイスを備え、アクチュエータは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつその独立した移動の前に、送達用シースを移動する。第2の送達システム・コンポーネントは、医療用デバイスの一部に可逆的に結合されうる。アクチュエータは、作動されたときにシースおよび第2の送達コンポーネントの両方を近位に独立して移動する。アクチュエータの作動は、シースを近位に引き入れて医療用デバイスを拡張させることができるように構成することができ、アクチュエータのさらなる作動によって、第2の送達システム・コンポーネントは、近位に引き入れられる。
【0011】
いくつかの実施形態において、送達システムおよびアクチュエータは、単一の方向への回転などの、単独型の運動(singular type of motion)におけるアクチュエータの移動により第1の送達システム・コンポーネントが第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、第2の送達システム・コンポーネントが第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動するように構成される。単独型の運動により、第1の送達システム・コンポーネントは第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動することができ、第2の送達システム・コンポーネントは第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、第1の送達システム・コンポーネントの独立した移動と第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動との間においては介在する作動工程は実行されない。
【0012】
本開示の一態様は、患者体内に医療用デバイスを配備するための送達システムを使用する方法である。この方法は、患者の体外に配設されるアクチュエータを備えるハウジングを含む送達システムを用意することと、アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントを第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動することと、アクチュエータを作動させて第2の送達システム・コンポーネントを第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動することとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アクチュエータを作動させることは、アクチュエータを単独型の運動で作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを互いに独立して移動するとともに、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することを含む。アクチュエータを作動させることで、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを、少なくともこれらが同時に移動されている期間の一部において異なる速度で移動することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同じ方向に移動する。いくつかの実施形態では、アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを特定の順序で移動する。
【0015】
いくつかの実施形態では、アクチュエータを作動させることは、アクチュエータを、単一の方向への回転などの、単独型の運動で作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントの両方を互いに独立して移動する。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、アクチュエータを作動させることは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつその独立した移動の前に、送達用シースを近位方向に移動することを含む。第2の送達システム・コンポーネントは、医療用インプラントに可逆的に結合することができ、第2の送達システム・コンポーネントを作動させると、第2の送達システム・コンポーネントは送達用シースの近位方向移動とは独立して、かつその近位方向移動の後に近位方向に独立して移動する。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを移動することは、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを近位に移動することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントを移動することは、送達用シースを近位に移動して医療用デバイスを拡張させることを含む。
【0019】
本開示の一態様は、患者体内に医療用デバイスを配備するための送達システムである。送達システムは、送達用シースと、シース内に配設され、かつ、シースに対して移動可能である送達用カテーテルと、医療用デバイスの一部に可逆的に結合される結合部材と、医療用デバイスは送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達され、送達用シースはシースから医療用デバイスを解放するために医療用デバイスに対して移動されることと、シース被覆補助要素とを備え、送達用シースが医療用デバイスの少なくとも近位部分を被覆しているときにシース被覆補助要素の少なくとも一部がシースの遠位端と医療用デバイスの近位部分との間に配設される。
【0020】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素の近位部分は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる。いくつかの実施形態では、結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、シース被覆補助要素は、結合部材に対して径方向外向きになっている。
【0022】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素は、複数の輪になった要素を含み、複数の輪になった要素のうちの第1の輪になった要素は、複数の輪になった要素のうちの第2の輪になった要素の長さと異なる長さを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、医療用デバイスは、編組要素を備え、シース被覆補助要素は、複数のシース被覆補助要素からなり、複数のシース被覆補助要素のうちの第1のシース被覆補助要素は、シースが編組要素を被覆しているときに編組要素の近位端から径方向外向きに配設され、複数のシース被覆補助要素のうちの第2のシース被覆補助要素は、編組要素を貫通する。
【0024】
本開示の一態様は、送達用シース内に医療用デバイスを入れて被覆する方法である。この方法は、拡張性医療用デバイスの一部と送達用シースとの間でシース被覆補助要素の位置決めをすることと、シース被覆補助要素および医療用デバイスに対して送達用シースを遠位に移動して送達用シース内の拡張性医療用デバイスの少なくとも一部の折りたたみを補助することとを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、位置決め工程は、送達用シースをシース被覆補助要素に対して遠位に移動するときに、シースの遠位端が医療用デバイスの近位端に引っ掛かる可能性を低減するように、拡張性医療用デバイスの少なくとも近位端と送達用シースの遠位端との間においてシース被覆補助要素の位置決めをすることを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、送達システムは、結合部材をさらに備え、この方法は結合部材と医療用デバイスとの間の可逆的結合を維持することをさらに含み、シース被覆補助要素を位置決めすることは、シース被覆補助要素を結合部材に対して径方向外向きに位置決めすることを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、送達用シースをシース被覆補助要素に対して遠位に移動することで、径方向内向きの力がシース被覆補助要素から拡張性医療用デバイスの一部分に加えられる。
【0028】
本発明の新規性のある特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に説明される。本発明の特徴および利点については、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態をについて述べる以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより、より詳しく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】配備かつ固定された構成形状の例示的な置換心臓弁を示す図。
【図1B】折りたたまれた形で送達される例示的な置換心臓弁を示す図。
【図2A】医療用デバイスに可逆的に結合されている例示的な医療用デバイス送達システムを示す図であって、医療用デバイスが折りたたまれた構成形状になっている。
【図2B】医療用デバイスに可逆的に結合されている例示的な医療用デバイス送達システムを示す図であって、医療用デバイスが配備かつ固定された構成形状になっている。
【図3A】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3B】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3C】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3D】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3E】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3F】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図3G】例示的な医療用デバイスの配備および固定手順を示す図。
【図4】送達システムの一部に可逆的に結合されている例示的な置換心臓弁を示す図。
【図5A】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5B】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5C】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5D】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図5E】医療用デバイス用の例示的な係止および解放機構を示す図。
【図6A】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図6B】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図7A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図7B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図7C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図7D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8E】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8F】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図8G】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図9】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図10】送達システムと医療用デバイスとの間にある例示的な可逆的結合機構を示す図。
【図11A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図11B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図11C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図11D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図12A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図12B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図12C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図13】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14C】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14D】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図14E】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図15A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図15B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図16A】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図16B】医療用デバイスの例示的な係止および解放機構を示す図。
【図17A】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図17B】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図17C】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図17D】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図18A】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図18B】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図18C】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図18D】作動要素の進行速度を変えられる可変ピッチ設計を示す図。
【図19】送達システム・コンポーネントの移動速度を制御する例示的なバレル・カム設計を示す図。
【図20A】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図20B】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図20C】単一のハンドル作動要素が2つの異なる送達システム・コンポーネントの互いに独立した移動を可能にする例示的な送達システムの一部を示す図。
【図21】ロッドおよび外側シースの運動を減結合するための例示的な設計を示す図。
【図22】ロッドおよび外側シースの運動を減結合するための例示的な設計を示す図。
【図23A】第2のアクチュエータを作動させて医療用デバイスの送達方法の異なる部分の移動を制御することを示す図。
【図23B】第2のアクチュエータを作動させて医療用デバイスの送達方法の異なる部分の移動を制御することを示す図。
【図23C】第2のアクチュエータを作動させて医療用デバイスの送達方法の異なる部分の移動を制御することを示す図。
【図24】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図25】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図26】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図27】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図28】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図29】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図30】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図31】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図32】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図33】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図34】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図35】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図36】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図37】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図38】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図39】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図40】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【図41】さまざまな医療用デバイスのシース被覆補助要素を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示では、医療用デバイスおよび医療用デバイスを患者の標的位置に送達するための送達システムを説明する。医療用デバイスは埋込み型であるか、または患者体内に一時的に位置決めされる。送達システムは、各種の好適な医療用デバイスを患者の標的位置に送達するが、いくつかの実施形態では、血管内手術などの低侵襲性の送達手順に合わせて構成されている。いくつかの実施形態では、医療用デバイスは、置換心臓弁(例えば、置換大動脈心臓弁)であり、送達システムは、置換心臓弁を血管内に挿入して送達し、患者の本来の心臓弁の機能を置換するように構成される。
【0031】
図1Aおよび1Bは、編組材料を含むように示されているアンカー固定要素12、および置換弁小葉14(わかりやすくするため図1Bには示されていない)を備える、置換心臓弁10を示している。置換心臓弁10は、本明細書では支柱とも称される3つのロッキング部材16と、本明細書ではバックルとも称される3つの第2のロッキング部材18を備える。3つの支柱および3つのバックルが図示されており、各支柱はバックルの1つに関連付けられている。図1Aは、第1のロッキング部材16と第2のロッキング部材18との間の係止相互作用によってアンカー固定要素12が固定され、配備された構成形状に維持されている完全に配備された構成形状である、本明細書ではアンカーとも称されるアンカー固定要素12を示している。図1Bは、折りたたまれた送達構成形状をとる置換心臓弁10を示しており、この形状において、置換心臓弁が送達システム内において患者体内の標的位置に送達される(送達システムは図示せず)。
【0032】
この実施形態では、弁小葉14は、弁の3つの継ぎ目のところで支柱16に取り付けられる。したがって、支柱16は、アンカー固定要素内の弁を支持する。支柱およびバックル(または他の好適な第1のロッキング部材および第2のロッキング部材)は、両方ともアンカーに結合される。アンカー固定要素12が、図1Bに示されているような折りたたまれた構成形状をとる場合、バックル28の対応するロッキング要素で係止するように構成されている支柱16の各ロッキング要素は、これが係止されるバックルのロッキング要素に対して遠位に配置される。別の言い方をすると、支柱のロッキング要素に係止するバックルのロッキング要素は、送達構成形状において支柱のロッキング要素に近接して位置する。
【0033】
図2Aおよび2Bは、患者の標的位置に医療用デバイスを送達し、配備するために使用することができる送達システム100およびそのコンポーネントの例示的な一実施形態を示している。送達システム100は、ハンドル120、シース110、シース110とともに配設されているカテーテル108、および置換心臓弁10に可逆的に結合されている作動要素106A,106Bを備える。図2Aにおいて、心臓弁10は、シース110内に折りたたまれた送達構成形状(図1Bにも示されている)をとる。送達システム100はまた、ガイドワイヤGおよびノーズコーン102を備える。いくつかの実施形態では、カテーテル108は、中央の内腔109および複数の周方向に配設された内腔Luを有する。
【0034】
図2Aおよび2Bでは、複数の作動要素106Aが、アンカー固定要素12の近位領域に可逆的に結合されるように示されている。特に、作動要素106Aは、可逆的結合機構を介してアンカー固定要素12の近位端に可逆的に結合される。作動要素106Bは、アンカー固定要素の近位端の遠位にある置換心臓弁の1領域に可逆的に結合される。特に、作動要素106Bは、可逆的結合機構を介して支柱16に可逆的に結合されている。この実施形態および類似の実施形態の詳細は、本願明細書に援用する、米国特許公開第2005/0137686号および米国特許公開第2005/0143809号において見出すことができる。
【0035】
図1A〜2Bに示されている実施形態では、アンカー固定要素は、ニチノールなどの編組材料からなり、材料の1つまたは複数の撚り線から形成される。一実施形態では、アンカー固定要素12は、形状記憶材料から形成され、自己拡張性構成形状において熱硬化性を有し、これによってアンカー固定要素が送達システムのシースから配備されたときに、編紐は自然に短くなり始め、折りたたまれた送達構成形状から形状記憶自己拡張性構成形状へと拡張する。自己拡張性構成形状は、静止または部分的に配備された構成形状であると考えることができ、これは、米国特許公開第2005/0137686号および米国特許公開第2005/0143809号においてさらに詳しく説明されている。アンカー固定要素が拡張して部分的に配備された構成形状をとった後、作動要素106A,106Bのうちの少なくとも一方は、患者の体外に配設されているハンドル上のアクチュエータを介して作動される。米国特許公開第2005/0137686号および米国特許公開第2005/0143809号においてさらに詳しく説明されているように、作動要素106Bは、作動要素106Aに対して近位方向に作動させることができ、これにより、近位方向の力が支柱に加えられ、また、近位方向の力がアンカー固定要素の遠位領域に加えられる。作動要素106Aは、近位方向の力の代わりに、または近位方向の力に加えて、遠位方向に作動させて、遠位方向の力をアンカー固定要素の近位領域に加えることができる。軸方向の力がアンカー固定要素を能動的に短縮する(actively foreshorten)ことにより、支柱およびバックルが係止し合ってアンカー固定要素を完全に配備かつ係止された構成形状になるまで支柱をバックルに近づけてゆく。したがって、係止された構成形状は、部分的に配備された構成形状よりも短い。
【0036】
図3A〜3Gは、置換大動脈心臓弁を送達構成形状で送達し、それを送達用シースから完全に配備かつ係止された構成形状に配置する例示的な方法を示している。この実施形態では、作動要素106Bは、置換弁の支柱に可逆的に結合されるが、本明細書では「フィンガー」とも称することができる、作動要素106Aは、バックルに可逆的に結合される。3つのバックルに可逆的に結合されている作動要素106Aは3つあり、3つの支柱に可逆的に結合されている作動要素106Bも3つある。図3Aからわかるように、置換弁10は、シース110内において折りたたまれた送達構成形状をとり、知られている経皮的技術を使用して、ガイドワイヤGを介して後向きに(retrograde fashion)送達されて、大動脈Aを通り患者の大動脈弁を越えて留置される。
【0037】
シース110が図3Aに示されているように自然弁を越えて位置決めされた後、シース110は、患者の体外に配設されている送達システム・ハンドル上のアクチュエータを使用して置換弁に対して近位方向へ引き入れられる(この例は、以下で詳しく説明する)。シースが引き抜かれるときには、図3Bに示されているように、アンカー固定要素12の遠位部分が、アンカー固定要素の材料特性により自己拡張し始める。アンカー固定要素は、シースが引き抜かれるときに、アンカーが自己拡張し始めるか、またはその形状記憶構成形状に戻るように形状記憶自己拡張性構成形状をとりうる。シースが近位方向へ引き入れられ続けると、アンカー固定要素は、図3Cおよび3Dに示されているように、自己拡張し続ける。図3Eでは、シースは、シースの遠位端がフィンガー106Aの遠位端の近位側に配設されるように近位方向に引き入れられている。図3Eでは、シースは、フィンガーが自己拡張できるほど十分に近位方向へ引き入れられていない。したがって、アンカー固定要素がシースから完全に外に出ているが、アンカーの近位端は、その形状記憶構成形状に向かう形で拡張しない。図3Fに示されているように、シースがカテーテル108の遠位端を超えて引き入れられてはじめて、フィンガーは完全に自己拡張することができる。これでアンカー固定要素の近位端が拡張することができる。
【0038】
次いで、アンカー固定要素は、軸方向の力(近位方向および遠位方向の力)を加えることによって、図3Gに示されている完全に配備かつ係止された構成形状へ能動的に短縮される(潜在的にさらに拡張する)。アンカー固定要素を能動的に短縮するために、近位方向の力を、(図3A〜3Gには示されていないが、支柱に結合されている)作動要素106Bを介して支柱に加え、および/または遠位方向の力を、作動要素106Aを介してバックルに加える。一実施形態では、近位方向の力を作動要素106Bを通じて支柱に加え、フィンガー106Aを適切な位置に保持して遠位方向の力をバックルに加える。この能動的な短縮により、支柱およびバックルが係止し合うまで互いに軸方向に近づくため、アンカー固定要素が図3Gにおける完全に配備かつ係止された構成形状に維持される。次いで、作動要素106A,106Bがバックルおよび支柱からそれぞれ結合を外されて解放され、次いで、送達システムが、患者から取り外される。例示的な係止する方法および解放する方法の詳細は、以下で詳述する。この実施形態および他の実施形態に組み込むことができる送達、配備、係止および解放の方法のさらなる詳細は、本願明細書に援用する、2004年11月5日に出願した米国特許公開第2005/0137699号、2007年2月14日に出願した米国特許公開第2007/0203503号、および20004年10月21日に出願した米国特許公開第2005/0137697号において見出すことができる。
【0039】
図4は、図3A〜3Gを参照して説明された、置換心臓弁10および、カテーテル208を含む送達システムの遠位部分を示している。心臓弁10は、完全に配備かつ係止された構成形状をとり、作動要素206A(「フィンガー」),206Bはそのままそれぞれバックル18および支柱16に可逆的に結合されている。したがって、図4における構成形状および配置構成は、図3Gに示されているものと類似している。小葉14の継ぎ目部分は、3つの支柱16に取り付けられ、支柱16は、アンカー固定要素12の近位端の遠位にある位置でアンカー固定要素12に(例えば、縫合糸またはワイヤを使って)移動可能なように結合される。置換心臓弁10はまた、アンカー12の近位領域のところでアンカー12に(例えば、ワイヤまたは縫合糸を使って)取り付けられた(支柱と同様にアンカーに移動可能なように結合可能であるが)バックル18(3つが図示されている)を備える。図4において、作動要素206Bは、支柱16に可逆的に結合される一方、作動要素206Aは、バックル18に可逆的に結合される。送達システムは、3つのアクチュエータ保持要素210も備え、アクチュエータ保持要素はそれぞれ、その中に作動要素206Bおよび作動要素206Aを受け入れる。作動要素206Aは、その近位端のところでカテーテル208の遠位端に取り付けられているが、作動要素206Bは、カテーテル208内で軸方向に移動するように構成かつ配置される。したがって、作動要素206Bは、作動要素206Aに対しても軸方向に移動するように構成かつ配置される。フィンガー206Aおよび作動要素206Bは、アクチュエータ保持要素210とともに互いに近接して維持される(少なくとも送達システムが置換弁に結合されている間)。保持要素210は、フィンガー206Aが配設される内腔を有し、この内腔を通して作動要素206Bを軸方向に作動させることができる。フィンガー206Aは、一般的に円柱ロッドとして示される、作動要素206Bに対して径方向外向きに配設されている。図4における置換心臓弁は、送達システムから解放されていない。
【0040】
図5A〜5Eは、図4に示されている心臓弁から送達システムの結合を外す方法を示している(アンカー固定要素は図示されていない)。図5Aにおいて、支柱16は、バックル18内の内部チャネル内に引き込まれる長尺状のロッキング部分17を有する。支柱16のロッキング部分17は、バックル18上で歯を受けるように適合された溝形状のロッキング要素を有する。支柱がバックル内に引き込まれると、バックル上の歯が支柱上の溝と係合し、支柱とバックルとを係止させて、アンカー固定要素を固定された構成形状に維持する。この構成形状は、図5Aに示されている。この構成形状では、作動要素206B(または「ロッド」)は、支柱16に可逆的に結合される。ロッド206Bは、ロッド206Bの遠位部分内の穴230(図5Eを参照)が支柱16内の穴232と揃うように支柱16内のチャネル内に配設される部分を含む。図4に示されているようなピン・アセンブリ236の一部であるピン234は、ロッドの穴230および支柱の穴232の両方を貫通し、ロッドを支柱に結合する。ピンの遠位部分は、丸くなった(curled)、または輪になった形状をしており、これによりロッド206Bが支柱16から係脱するのを防ぐ。図5Aにおいて、フィンガー206Aは、バックル18上の歯239とフィンガー206A上の溝238との間の相互作用によってバックル18に可逆的に結合される(図5Eを参照)。図5Aにおいて、カラー22が歯239と溝238との間の係合部上に位置決めされ、これにより、フィンガー206Aとバックル18とを可逆的に結合された状態に保持する。
【0041】
患者体内の適所で心臓弁を解放することが決定された後、最初に、ピン・アセンブリ236(図4を参照)を近位方向に引き入れて、ピンを引っ張り穴230,232に通し、ロッド206Bと支柱16との結合を外すことで、ピン234を取り外すが、これは図5Bに示されている。次に、送達システム・ハンドル上のアクチュエータを作動させて、ロッド206Bを近位方向に引っ張って戻す。ロッド206Bが図5Cの位置に引っ張られた後、カラー係合部23がカラー22と係合し、それをロッド206Bとともに近位方向に引っ張る。これにより、カラーは図5Cの位置から図5Dの位置へ近位に引っ張られる。カラーを図5Dの位置に引き入れると、バックルの歯239が溝238から係脱し、図5Eに示されている、ロッド206Bの継続的引き込みが行われる。ロッド206Bとフィンガー206Aの両方と心臓弁との結合が外され、次いで、送達システムは、医療用デバイスが適所に埋め込まれている患者から後退させられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、フィンガー206Aによってバックルに、ロッド206Bによって支柱に加えられる軸方向の力のベクトルは、実質的に反対方向であり、これにより、短縮と係止の方法の効率が高められる。フィンガーを直接バックルに結合する利点は、短縮と係止の方法の実行時にバックルが支柱とより良好に揃うという点である。これは、支柱は、近位に引っ張ったときに、支柱がバックルと効率よく係止するようにバックルとより良好に揃うのに役立つ。短縮と係止の大きな力の下で捻れたり、または歪んだりする可能性のあるアンカーを使用した場合(編組材料からなるアンカーなど)、アンカーに結合される(したがって、支柱からずれている可能性のある)バックルが支柱と適切に依然として揃っていることは有益である。フィンガーをバックルに直接結合することで、こうした利点がもたらされる。これにより、近位方向に引っ張る力の一般的効率も向上するが、これは、支柱を引っ張りバックルで固定するのに力が少なくて済むためである。医療用デバイスの送達および配備を制御するためにアクチュエータをハンドルに組み込む場合、ハンドル・アクチュエータに加える必要のある力の量を減らすことで、送達システムの設計が簡素化される。
【0043】
図6Aおよび6Bは、作動要素252に可逆的に結合されている支柱250の代替的実施形態を示している。図6Bは、図6Aに示されているコンポーネントを識別する部分分解図である。作動要素252は、ロッド254、タブ・デフレクタ256、および保持クリップ258を備える。ロッド254は、本明細書で説明されているように患者の体外に配設されているハンドル上のアクチュエータを作動させることによって、近位方向Pに作動させることができる。
【0044】
ロッド254は、タブ・デフレクタ256および保持クリップ258に取り付けられる。ロッド254は、その遠位端のところに、保持クリップ258のクリップ要素262と係合する、留め具260を備える。支柱250は、保持クリップ258およびタブ・デフレクタ256を摺動的に受け入れる内部チャネルを有しており、これらはそれぞれ、中にあるロッド254を受け入れる。タブ・デフレクタ256は、リブ要素264を備える。保持クリップ258は、クリップ足部266を備える。アンカー固定要素(図示せず)を固定するために、ロッド254は近位方向に引かれ、クリップ足部266は支柱250の遠位端と係合し、それをバックル(図示せず)の方へ近位方向に引く。
【0045】
図7A〜7Dは、図6Aおよび6Bに示されている支柱250をバックル268に対して固定する順序を例示する側面図である(アンカーは図示せず)。図7Aは、患者の体外の送達システムのハンドル上のアクチュエータから発生する作動力によってロッド254が近位方向に作動させることを示している。図7Aにおいて、支柱250は、バックル268の遠位側にある。ロッド254が近位方向に引かれ続けると、留め具260(図6Bに示されている)は、近位方向の力をクリップ要素262(図6Bに示されている)に加える。これにより、クリップ足部266は、近位方向の力を支柱250の遠位端に加える。このため、支柱は近位方向に移動する。そして、支柱250、タブ・デフレクタ256、および保持クリップ258は、図7Aに示されているように、バックル268の方へ移動する。
【0046】
患者の体外でのアクチュエータの継続的作動により、図7Bに示されているように、支柱、デフレクタ、およびクリップは、さらに近位方向に引かれてバックル268のチャネル内の所定の位置に入る。タブ・デフレクタ256のリブ要素264は、支柱250の溝272の隣に配設されるため、リブ要素264は、バックルの歯270が支柱250の溝272と係合するのを防ぐ(図7Bに示されている)。これにより、医師が適切であると判断するまで支柱がバックルと係止するのを防ぐ。このため、リブ要素264は、係止防止機構として働く。ハンドル上のアクチュエータを使用して遠位方向の力を支柱250に加えることによって、この時点において、支柱(したがってアンカー)を遠位方向に移動してアンカー固定要素を伸長することができる。
【0047】
アンカーが所望の位置に来たら、ロッド254を近位方向に作動させ続ける。これは、以下でさらに詳しく説明するように、ハンドル上の同じアクチュエータまたは異なるアクチュエータを使用して実行することができる。ロッド254に近位方向の力を加え続けることによって、足部266を互いの方へ内向きに挟んで、支柱250の遠位端から足部を係脱しこの結合を外す。このため、支柱250の遠位開口部内で足部266が引っ張られる。そして、クリップ258を支柱250から解放し、ロッド、デフレクタ、およびクリップと支柱との結合を外す。アクチュエータの継続的作動により、ケーブル、デフレクタ、およびクリップを近位方向に移動して図7Cに示されている位置に置く。リブ要素264は、歯270および溝272の近位に配設され、したがって、これらが係止するのを防ぐことはしない。このように、歯は溝と係合し、支柱をバックルに固定する(図7Cに示されている)。そこで、アンカー(図示せず)は完全に配備かつ係止された構成形状で固定される。図7Dに示されているように、ロッド254の継続的作動により、患者からロッド、クリップ、およびデフレクタを引き離す。
【0048】
図8A〜8Gは、支柱、バックル、および作動要素の代替的実施形態の固定および解放の順序を示す側面図である。システムは、ロッドの形態の作動要素280、バックル282、支柱286、およびクリップ290を備える。クリップ290は、足部294およびリブ要素292を備える。ハンドル上のアクチュエータを作動させると、図8Aに示されているように、ロッド280が近位「P」方向に引かれる。図8Bに示されているように、継続的作動により、ロッド280、支柱286、およびクリップ290が引かれ、バックル282のチャネル内に通される。ロッド280が引き続き引かれると、バックルの歯284の表面が、図8Bに示されているように、クリップ290の表面295上を摺動する。足部294は、図8Cに示されているように、バックル282の遠位端と係合する。この位置の上面図が、図8Gに示されている。リブ要素292は、図8Bに示されている位置と図8Cに示されている位置との間で、支柱がバックルと係止するのを防いでいる。図8Cに示されている位置では、歯284は、支柱286の表面287と係合している。足部294のこの配置により、クリップ290が支柱から取り外される前に、支柱の溝288が十分に近位に引かれていることが保証される。図8Cに示されている位置から、ロッド280の近位への移動を続けると、足部294が狭まれて一緒にされ、バックル282のチャネル内に引き入れられる。これにより、クリップ290は支柱286から解放され、ロッドおよびクリップが近位方向に引かれる。クリップが支柱から解放された後、アンカー固定要素(図示されていないが、この実施形態では編組材料からなる)が自己拡張し部分的に配備された形状記憶構成形状に自然に戻り始めるため、支柱は自然に遠位方向へ移動し始める(これについては本願明細書に援用する出願においてさらに詳しく説明されている)。支柱が遠位方向に移動し始めると、歯284は、図8Eに示されているように支柱の溝288と係合する。これにより、支柱とバックルとが係止され、またアンカー固定要素が完全に配備かつ係止された構成形状で固定される。これで、図6Fに示されているように、ロッドおよびクリップを患者から取り外すことができる。
【0049】
図9および10は、上記の固定および解放の実施形態の特徴を組み込んだ2つの代替的実施形態を示している。図9の実施形態は、図5A〜5Eに示されている実施形態と似ているが、ロッド304は、図6A〜8Gの実施形態に示されている足部に類似する足部306を備えている。この実施形態では、図5A〜5Eのピン234は不要であるが、それは、支柱300からのロッド304の解放が、ロッド304が近位方向に引っ張られて、足部306が内向きに狭められ支柱から係脱したときに生じるからである。
【0050】
図10は、ロッド314の遠位端にある圧縮可能な足部316とリリース・ピン318とを組み込んだ代替的実施形態を示している(図5A〜5Eの実施形態に示されているのと同様に作動する)。図10の実施形態は、図5A〜5Eに示されているものと図9に示されているものとのハイブリッド設計と考えることができる。図5A〜5Eの実施形態と図10の実施形態との違いの1つは、図5A〜5Eではロッドを支柱にピンで固定するスロット230がロッド内にあるという点である。図5A〜5Eにおいてピン234が張力を受けているとき、このピンは剪断力を受けており、ピンが損傷する可能性が高まる。図10の設計では、スロット230は存在しておらず、むしろ、2つの足部306が単純にロッドの遠位部分から遠位に延在するだけである。ピン318は、図10に示されている、広げられた位置に足部316を維持し、本質的に開いた状態で保持し、足部と支柱との間の結合を維持する。この設計では、ピンは、足部の間で、剪断力を受けるよりはむしろ、圧縮力を受けている。ピンが取り外された後、低い解放力をロッドに加えて、足部を支柱との結合から外すことができる。ピンに剪断力を加えるのではなく圧縮力を加えた方が、ピンへの損傷が発生する可能性が低い。
【0051】
図11A〜11Dのそれぞれは、支柱320は対応するバックル321に係止されていない位置から係止された位置へ構成形状を変え、作動要素322が支柱から解放される順に並ぶ支柱320および作動要素322を含む代替的実施形態の各側面図および斜視図を示している。バックル321は、わかりやすくするためにこの順序で示されていないが、バックル321は、図11Aにおいて、支柱、作動要素、およびバックルの相対的位置を表示するように示されている。図12A〜12Cは、バックル321を含む固定および解放の順序を示している。
【0052】
図11Aでは、作動要素322は、支柱320に可逆的に結合される。作動要素322は、ロッド324、支柱ロック防止要素326、および支柱ロック・アクチュエータ328を備える。支柱320は、支柱ロック要素330を備える。図11Aは、支柱がバックルに向けて引っ張られる前のそれぞれのコンポーネントの初期構成形状を示している。アンカー固定要素(図示せず)を能動的に短縮するために、ロッド324を近位方向に引き入れる。支柱ロック防止要素326は、最初に、支柱ロック要素330と係合しており、したがって、ロッド324を近位に引き入れると、支柱320は近位に移動する。ロッド324は、図12Aからわかるように、支柱320がバックル内で引っ張られるまで近位に引っ張られ続ける。図12Aにおいて、支柱はまだバックルに係止されておらず、支柱ロック要素330は、バックル・ロック要素332の近位にある。支柱320をバックル321に対して係止するために、図11Bおよび12Bに示されているように、別のアクチュエータ(図示せず)を作動させて、支柱ロック防止要素326を近位方向に引き入れて、支柱ロック防止要素326を支柱ロック要素330から係脱する。あるいは、ロッド324および支柱ロック防止要素326は、ロッド324に近位方向の力を加え続けることで支柱ロック防止要素326を支柱ロック要素330から係脱するような仕方で係合させることができる。アンカー固定要素は完全に拡張し配備された構成形状に比べて長い形状記憶構成形状を有するため、支柱ロック防止要素326が支柱ロック要素330から係脱された後、アンカーはその細長い形状記憶構成形状に戻ろうとする。したがって、支柱320は、遠位方向に移動し始める。支柱320が遠位に移動することで、支柱ロック・アクチュエータ328が支柱ロック要素330に径方向外向きの力を加え、これにより、支柱ロック要素330は移動して図11Cおよび12Cに示されている係止された構成形状をとる。これに代えて、あるいは、これに加えて、ロック防止要素326が支柱ロック要素330から係脱された後、ロッド324を近位方向に継続的に引き入れることで、支柱ロック・アクチュエータ328が径方向外向きの力を支柱ロック要素330に加える。支柱320を遠位方向に継続的に移動することで、支柱ロック要素330がバックル・ロック要素332と係合し、支柱320をバックル321に対して係止する。係止することにより、支柱がバックルに対して遠位方向に移動するのを防ぎ、アンカーを軸方向に圧縮かつ完全に配備された構成形状に固定する。これで、作動要素322を近位方向に引き抜き、患者から取り外すことができる。
【0053】
図13は、変形可能な要素344を備える、支柱340およびクリップ342の代替的実施形態を示している。図14A〜14Eは、支柱340をバックル348と係止させて、クリップ342を支柱340から解放する順序を示している。ロッド(図示せず)は、上述の実施形態と同様に、クリップ342に取り付けられている。図14Aに示されている位置では、変形可能な要素344の近位端は、支柱340の表面要素346と係合する。この係合により、クリップが近位に引っ張られるときにクリップは支柱内に維持される。また、この係合により、クリップが近位に引っ張られるときに支柱が近位に引っ張られる。アクチュエータが作動すると、図14Bに示されているようにケーブルがバックル348内の支柱およびクリップを引く。図14Cに示されている位置から作動を継続させると、バックル348の歯350が変形可能な要素344と係合し、この変形可能な要素344を変形させる。変形する要素344により、歯350は溝352と係合してバックルおよび支柱を係止することができる。また、この工程では、図14Dに示されているように、表面346との係合から変形可能な要素344を解放し、これにより、クリップが支柱から解放される。また、したがって、この工程では、ロッドおよびクリップが支柱から解放される。図14Eは、支柱から近位に完全に引き抜かれたクリップを示している。
【0054】
図15A、15B、16Aおよび16Bは、支柱の固定および解放機構の代替的実施形態を示している。図15A〜16Bの実施形態は、アクチュエータが作動して、支柱をバックルの方へ引いてアンカー固定要素を固定する作動要素、つまりロッドを引くという点で上述されているものと似た動作をする。ロッド354は、図6Aおよび6Bの実施形態のクリップに似たクリップを備える。図15Aは、斜視図であり、図15Bは、バックル352の歯358が支柱360の溝362で係止されるようにロッド354が作動し、近位に引かれた後の側面図である。図15Aおよび15Bに示されている位置に先立ち、ロッド354の表面356が、歯358が支柱の溝と係止するのを防いでいる。ロッドの遠位端のところのクリップは、ロッドの継続的な作動によって変形可能な要素が変形し、支柱をロッドから解放するように支柱の変形可能な要素と係合する。次いで、アクチュエータの継続的な作動によって、このロッドを患者から取り外すことができる。あるいは、図5A〜5Eのピン234に似たピンをこの実施形態に組み込むことができ、これによって上で説明されているように、ロッドを支柱から解放することが望ましいときにピンを取り外す。
【0055】
図16Aおよび16Bは、図15Aおよび15Bにおいて係止されている支柱およびバックルの係止解除を示している。この係止解除の工程は、心臓弁を送達システムから解放する前に実行されなければならない。ロッド354が遠位に押されると、ロッドの表面364(係止解除要素)と支柱の溝との間の歯358の係合および係脱が行われる。ロッドの遠位への移動が続けられると、支柱が遠位方向に押され、これにより、アンカー固定要素が伸長する。
【0056】
いくつかの実施形態において、フィンガーは、熱硬化で形状記憶拡張性構成形状になる合金で作ることができる。ロッドは、例えば、ステンレス鋼からなるものとすることができる。外側チューブは、例えば、熱収縮ポリマーで作ることができるが、適したものであればどのような材料のものであってもよい。外側チューブは、フィンガーに対する柱強度を高めるが、これは、アンカー固定要素の能動的短縮を行っているときに加えられる力の下に置かれたときに有利である。
【0057】
上記実施形態では、作動要素およびシースの作動を制御するために使用される、患者の体外に配設されている送達システム・ハンドルを参照した。本明細書で説明されているような医療用インプラントの配備は、デバイスの配備を制御するために医師によって作動される、ハンドル上のアクチュエータ(例えば、つまみ、レバーなど)によって制御されうる。送達および拡張の方法を簡素化するためにできる限り少ないアクチュエータを使用して複数の配備工程を実行することができることが望ましい。さらに、単一のアクチュエータを使用していくつかの配備工程を実行することが望ましいが、配備工程の複数の部分を実行するために単独型の移動(例えば、単一の方向につまみを回すこと)によって、単一のアクチュエータを作動させることもある。これにより、ハンドル・アクチュエータを作動させるために使用する手を、複数の工程を実行するためにアクチュエータから離す必要がないため、医師が処置を容易に行える。後述の送達システムのいくつかの実施形態では、アンカー固定要素をシースから露出させ、支柱をバックルと係止する作動工程は、送達システムのハンドル上の単一のアクチュエータによって実行される。単一のアクチュエータを複数の配備工程を実行することができるハンドル上に備えることで、全体的な処置が簡素化されうる。単一のアクチュエータを使用して複数の配備工程を制御すれば、工程が指定された順序で実行されることも保証することができ、第2の工程が第1の工程の実行前に実行されないことが確実になる。
【0058】
単独型の運動をする単一のアクチュエータの作動により複数の送達システム・コンポーネントを移動する、本明細書で説明されている実施形態において、この単独型の運動を行うことで、他の介在する作動工程が実行されなくても複数の送達システム・コンポーネントを移動することができる。いくつかの実施形態では、使用者は、この単独型の運動においてアクチュエータの作動を停止することができ、次いで、その作動を継続することができる。単独型の運動は、作動しないままある期間が過ぎる実施形態を含む。つまり、使用者は、アクチュエータを作動させることを開始し、ある期間待機し(例えば、撮像技術に基づいて医療用デバイスの位置が十分であるかどうかを判定する)、次いで、アクチュエータを作動させ続けることができる。これは、本明細書で説明されているような「単独型」の運動に該当する。
【0059】
単一なアクチュエータを使用して送達システムの複数のコンポーネントを作動させる上での潜在的な問題は、作動可能なコンポーネントを互いに独立して作動させる場合、または作動可能なコンポーネントを処置の一部において互いに独立して作動させるが、その処置の他の部分においては同時に作動させる場合、または作動可能なコンポーネントを同時に、ただし異なる移動速度で作動させなければならない場合に生じる。以下では、単一なアクチュエータを作動させることで複数の送達システム・コンポーネントを作動させる送達システムについて述べるが、複数のコンポーネントのうちの第1のコンポーネントおよび複数のコンポーネントのうちの第2のコンポーネントは、それぞれ互いに独立して作動する。いくつかの実施形態では、第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントは、互いに同時に、またいくつかの実施形態では両方とも作動している間に異なる速度で作動する。
【0060】
送達システムのいくつかの実施形態では、単一のアクチュエータを使用し、シースから露出させる方法においてシースを近位に引き入れると同時に(例えば、図3B〜3Fの例示的な方法に示されているように)、支柱に結合されている作動要素を近位に引き入れる。つまり、インプラントをシースから露出させると同時に、インプラントを完全に配備かつ係止された構成形状に固定するために、単一のアクチュエータを単一の仕方で作動させるということである。シースからインプラントを配備すると同時にそれを最終的な配備された構成形状に再構成するために、1つの方向または1つの仕方で作動させることができる送達システムに単一なアクチュエータを組み込むことで、医師が行う配備手順が大幅に簡素化されうる。
【0061】
インプラントの配備の第1の部分において、シースのみを近位方向に引っ張り、これによってインプラントをシースから露出させる。配備の第2の部分において、支柱のみを近位に引っ張り、これによって支柱をバックルの方へ移動してアンカー固定要素を係止された構成形状に固定する。この手順の第3の部分において、シースと支柱に可逆的に結合されている作動要素の両方を近位方向に引っ張ると、シースと作動要素の移動を可変速度で行うことができる。したがって、単一なアクチュエータで、複数の送達システム・コンポーネントの依存する運動と独立した運動の両方に対応しなければならない。
【0062】
図17A〜17Dは、ハンドル上の単一のアクチュエータが、複数の送達システム・コンポーネントを選択的に作動させる例示的な送達システムを示している。この送達システムの設計は、ほとんどの種類の医療用デバイスの送達システムにおいて複数の送達システム・コンポーネントを選択的に作動させるために使用できるが、これについては置換心臓弁の配備に関して説明する。これに加えて、本明細書で説明されているものと異なる種類のコンポーネントを作動させるように単一のアクチュエータを適合させることができるが、これについてはシースおよび置換心臓弁の一部を作動させる作動要素の移動を制御するものとして説明する。
【0063】
図17A〜17Dは、外側チューブ380、回転式アクチュエータ372(使用者によって作動される)、送りネジ374、ロッド・キャリッジ376、ロッド・キャリッジ・ネジ378、シース・キャリッジ384、シース・キャリッジ・ネジ386を備える、ハンドル・ハウジング(図示せず)内に収納されている送達システム370のコンポーネントを示している。ロッド・キャリッジ376を近位に移動すると、ロッドは近位方向に移動し、これにより、近位方向の力が本明細書で説明されている支柱に加えられる(また、支柱プラ−・キャリッジ206を遠位に移動すると、遠位方向の力が支柱に加えられる)。シース・キャリッジ384を近位に移動すると、シースが近位に引き入れられ、インプラントがシースから露出する(また、シース・キャリッジ384を遠位に移動すると、シースが遠位に移動してインプラントが再シース被覆される)。一実施形態では、シースは、シース・キャリッジにねじ込まれた近位端に接着されているアダプタを有する。したがって、送りネジを回転させることで、シース・キャリッジを移動するとシースが直接移動する。一実施形態では、ロッドは、ハイポチューブの内側に接着され、ハイポチューブは、ロッド・キャリッジに直接取り付けられている、力制限部材にピンで固定される。したがって、ロッド・キャリッジを移動すると、ロッドが移動する。回転式アクチュエータ372が回転すると、回転移動はロッド・キャリッジ・ネジ378とシース・キャリッジ・ネジ386の直線移動に変換される。
【0064】
チューブ380は、チューブ380の2つの部分に沿った直線状の雌ネジ383と、直線状の雌ネジ部分383の間に配設されたチューブの一部に沿った部分的に螺旋状の雌ネジ382とを含む内側雌ネジを備える。ロッド・キャリッジ・ネジ378およびシース・キャリッジ・ネジ386は両方とも、ネジ374の雌ネジと係合し、アクチュエータ372の回転をロッド・キャリッジ・ネジ378およびシース・キャリッジ・ネジ386の移動に変換することができる内側雄ネジを備える。シース・キャリッジ・ネジ386は、図17Aに示されている構成形状をとる直線状の雌ネジ383と係合する雄コブ(複数可)385を備える。シース・キャリッジ・ネジ386はまた、シース・キャリッジ384内の内側雌ネジと係合する外側雄ネジ387(図17Dを参照)を有する。図17Aは、インプラントがシースに入れられ被覆され、支柱がバックルと係止していない構成形状の送達システムを示している。アクチュエータ372の初期回転により、シース・キャリッジ・ネジ386は近位方向に直線的に移動する。図17Aから図17Bへの遷移に示されているように、シース・キャリッジ384内で雄ネジ387と雌ネジとの相互作用があるため、シース・キャリッジ・ネジ386の近位への移動により、シース・キャリッジ384の近位への移動が生じる。この移動により、シースの近位への移動が生じるが、これは、インプラントを自己拡張できるようにシースから露出させ始めるために必要である。
【0065】
しかしながら、アクチュエータ372のこの初期回転は、ロッド・キャリッジ376の近位への運動に変換されない。アクチュエータ372のこの初期回転により、ロッド・キャリッジ・ネジ378は近位に移動するが、ロッド・キャリッジ・ネジ378がシース・キャリッジ・ネジ上の雄コブ385に類似している雄コブ(図示せず)を有しているため、ロッド・キャリッジ・ネジは外側チューブ380内で回転する。ロッド・キャリッジ376は、ロッド・キャリッジ・ネジ378上の雄ネジ379と嵌合する内側雌ネジを有する。これらのネジにより、ロッド・キャリッジ・ネジ378は、ロッド・キャリッジを近位に移動させることなく、ロッド・キャリッジ376内で回転することができる。したがって、アクチュエータ372のこの初期回転が行われた結果、図17Aから17Bへの遷移に示されているように、ロッド・キャリッジ376のロスト・モーションが生じる。したがって、シースが引き戻され始めると、ロッドは支柱を引っ張らない。
【0066】
図17Bの構成形状において、キャリッジ・ネジの両方の雄コブは、直線状のそれぞれの雌ネジ383と整列される。したがって、アクチュエータ372の回転を続けると、キャリッジ・ネジ386,378の両方が近位に移動することになる。キャリッジとそれらの各ネジとの間に螺合による相互作用があるため、両方のキャリッジが近位方向に移動する。これは、図17Bから17Cへの遷移に例示されている。この手順部分において、シースとロッドは両方とも近位方向に引っ張られる。
【0067】
図17Cの構成形状において、底部の雄コブ385(図示せず)は螺旋状のネジ山382と係合する。したがって、アクチュエータ372の回転を続けると、シース・キャリッジ・ネジ386が外側チューブ380に対して回転することになる。これにより、図17Cから17Dへの遷移に示されているように、シース・キャリッジ・ネジ386が回されて、シース・キャリッジ384から外される。この結果、シース・キャリッジは近位方向に移動しなくなる(つまり、ロスト・モーション)。しかしながら、ロッド・キャリッジ376とロッド・キャリッジ・ネジ378との間の螺合による相互作用は、図17Cから17Dへの遷移に示されているように、ロッド・キャリッジ376の近位への移動に変換される。この手順部分において、ロッドは近位に引っ張られるが、シースは作動しない。
【0068】
キャリッジの移動は、アクチュエータを反対方向に回転させることによって逆転することもできる。
送りネジ374の雌ネジは、図17A〜17Dに示されているように、ネジの長さに沿って異なるピッチを有することがある(ただし、送りネジ374のネジ山のピッチは送りネジ374の長さに沿って一定である場合もある)ことに留意されたい。図示されているように、シース・キャリッジ・ネジが送りネジ374と相互作用する部分のピッチは、ロッド・キャリッジ・ネジが送りネジ374と相互作用する場所のピッチに比べて大きい。このため、シース・キャリッジは、図17Bから17Cへの遷移においてロッド・キャリッジに比べて長い距離を移動することになる。したがって、図17A〜17Dは、ロスト・モーションを示しているだけでなく、単一のアクチュエータ(例えば、回転式アクチュエータ202)の作動に基づく2つの移動する送達システム・コンポーネントの異なる運動速度をも示している。
【0069】
図18A〜18Dは、可変ピッチおよび可変直径を有する雌ネジ要素400上の雄ネジ要素412の一連の移動を示している。図17A〜17Dの送りネジ374は、雌要素400の可変ピッチおよび直径を有することができ、図17A〜17Dのキャリッジ・ネジは、雄要素412の特徴を組み込むことができる。セクション402は、セクション404,406よりも小さいピッチを有するが、セクション406の直径は、セクション402,404の直径よりも大きい、雄ネジ410の送り部分は、より高さがあり(図18Dを参照)、これにより、雌ネジ406,404、さらには雌ネジ402と係合することができる。雄ネジ408は、送り部分に比べて高さが低い。雄ネジ408は、雌ネジ406と係合するのに十分大きいが、雌ネジ404,402はそうでない。この設計は、雌ネジ要素400の長さにおける雄要素412の可変移動度に対応できる。雄要素412は、ピッチが異なるため、セクション402に比べてセクション406の方がねじ込まれたときにより大きな距離を移動する。これにより、送達システム・コンポーネントは、第1の速度で移動し、次いで、第2の速度で移動するようにできる(この場合、第2の移動速度は第1の移動速度よりも低い)。この可変ピッチ設計は、本明細書で説明されている送達システムのいずれにも組み込むことができる。
【0070】
図19は、図18A〜18Dに示されている設計と同様に可変ピッチで機能するバレル・カム設計を示している。2つの実施形態における違いの1つは、図19の実施形態におけるネジ山433,435が中央の送りネジの代わりにバレル・ハウジング421内に組み込まれるという点である。図19に示されているように、シース被覆キャリッジ425は、第1のネジ山433上で回転し、ロッド・キャリッジ423は、バレル・ハウジング421内の第2のネジ山435上で回転する。ロスト・モーションは、ピッチ角を0に、または0に近づけることによるものであり、したがって、キャリッジは回転するが、バレル・ハウジング421内では平行移動しない(または最小量だけ平行移動する)。キャリッジのそれぞれは、ネジ山433,435内のトラッキングのためにコブ429も備える。キャリッジは、ガイド・チューブ431用の穴427も備える。
【0071】
図20A〜20Cは、ハンドル・ハウジング452、1対の歯車454、回転式アクチュエータ456、ロッド送りネジ458、ロッド・キャリッジ460、ロッド・キャリッジ・バネ462、ロッド・キャリッジ・ネジ464、シース被覆送りネジ466、シース・キャリッジ468、シース・キャリッジ・ネジ470、シース・キャリッジ・バネ472を含むロスト・モーションに対応するための代替的設計を示している。回転式アクチュエータ456が、両方の歯車454を回し、これらの歯車の一方はロッド送りネジ458に連結し、他方はシース被覆送りネジ466に連結する。各送りネジのピッチが異なることで、ロッド・ネジ464およびシース被覆ネジ470に対する異なる直線運動速度が可能になる。図20Aに示されている初期構成形状において、バネ462は完全に圧縮され、バネ472は無負荷状態である。アクチュエータ456の回転により、両方の送りネジ458,466が回り、これにより、ロッド・ネジ464とシース被覆ネジ470の両方が近位に移動する。シース被覆キャリッジ68とシース被覆送りネジ466との間のバネ472の圧縮に対する抵抗により、シース被覆キャリッジ468は、図20Aと図20Bとの間の遷移に示されているように、シース被覆ネジ470の近位への移動に追随する。力を加えてバネ462の負荷を取り除くと、ロッド・キャリッジ460は静止したままであるが、ロッド・ネジ464は、図20Aから図20Bへの遷移に示されているように、近位に移動する。
【0072】
ロッド・ネジ464が、ロッド・キャリッジ460の近位端に到達したときに、アクチュエータ456の回転を継続すると、両方のキャリッジが、図20Bに示されているように移動する(両方のキャリッジが運動している)。アクチュエータ456の継続的作動の後、ストッパー(図20Cには示されていない)によってシース被覆キャリッジ468が近位への移動を停止する。アクチュエータ456の継続的回転により、シース・キャリッジ・ネジ470(シース・キャリッジ468ではなく)の継続的移動とバネ472の圧縮が行われる。これにより、シースを動かすことなくロッド・キャリッジ460の近位への移動を通じてアンカーを固定することができる。
【0073】
アクチュエータ456を逆方向に作動させると、ロッド・キャリッジ460の遠位への運動を通じてアンカーの固定が解除される。バネ472の圧縮は、シース被覆ネジ470がシース被覆キャリッジ468内に完全に着座するまでシース被覆キャリッジ468の運動を制限する。次いで、2つのキャリッジは、ロッド・キャリッジ460がストッパー(図示せず)に到達するまで一緒に遠位へ移動し、これによりロッド・キャリッジ460が移動せず、バネ462が圧縮されている間にロッド・ネジ464を遠位に移動させる。
【0074】
図21〜22は、ロッドおよび外側シースの運動を減結合するための例示的な設計を示す。図21において、単一なアクチュエータが近位表面上のカムで歯車に連結している。カムは、送りネジに取り付けられているクラッチの係合/係脱を行わせる。クラッチが係合すると、送りネジが回転し、これによりキャリッジ(図示せず)は、アクチュエータの移動の方向に応じて近位に移動するか、または遠位に移動する。クラッチが係合していない場合、送りネジは回転せず、キャリッジは静止状態にある。
【0075】
図21において、ナット502(ロッドまたはシースのいずれか用)は、キャリッジ504内の雌特徴部508と係合する雄タブ506を介してキャリッジ504(ロッドまたはシースのいずれか用)に接続される。タブ506を介したナット502とキャリッジ504との間の係合により、キャリッジ504は、送りネジ510が回されると(図示されていないアクチュエータによって)ナット502とともに移動する。ナット502は、ハウジング内の経路514に沿って進行するコブ512を有する。経路514内のジョグ516により、ナット502はキャリッジ504に対して反時計回りに回転する。この運動により、タブ506は、雌特徴部508から係脱し、ナット502をキャリッジ504から解放する。ナット502およびキャリッジ504はつながっていないため、アクチュエータの継続的な作動(例えば、回転)で、ナット502のみが移動する。アクチュエータを反対方向に回転させると、ナット502は引き返してキャリッジと接触して、キャリッジ内にナット・タブ506を再着座させ、次いでキャリッジ504がナット502とともに移動する。
【0076】
図22は、雌ネジのある領域606とネジ山のない領域610を有する送りネジ602を含む送達システム600の一部を示している。シース・キャリッジ604は、送りネジ602上の雌ネジ606と係合する雄ネジ614を備える。シース・キャリッジ604はまた、送りネジ602上のロック・リップ612と係合して、キャリッジ604を送りネジ上に係止し、かつ、キャリッジ604が遠位方向Dに移動するのを防ぐロック要素608を備える。ハンドル(図示せず)上のアクチュエータの回転により、送りネジ602が回転してキャリッジ604が近位に移動する。これにより、シースは、支柱を移動することなく近位方向に引き入れられる。近位に継続的に移動することで、ロック要素608はロック・リップ612と係合かつ係止する。送りネジは領域610内にネジ山を持たないため、送りネジ602の回転を続けても、キャリッジ604の移動は行われない。
【0077】
図23Aおよび23Bは、図4および図5A〜5Bに示されている心臓弁の配備に使用される例示的なハンドルの近位部分を示している。ハンドルは、ハウジング620、回転式アクチュエータの形態の第1のアクチュエータ624、摺動可能ドア622、およびドア622が図25Aの第1の位置から図25Bの第2の位置へ順方向に摺動したときにのみアクセスできる第2のアクチュエータ626を備える。この実施形態では、回転式アクチュエータ624は、シース(図3B〜3Fに示されているような)の移動ならびに図4および図5A〜5Bに示されている作動要素206Bの移動を制御する。一実施形態では、アクチュエータ624は、図17A〜17Cに示されているようにシースおよび作動要素の移動を制御するため、アクチュエータ624が作動すると、シースおよび作動要素の移動が独立または従属する形で行われる。アンカー固定要素が支柱をバックルと係止することによって固定されると、医師は、図23Bに示されている位置にドア622を摺動させ、第2のアクチュエータ626を作動させる。アクチュエータ626の作動により、図4のピン・アセンブリ236が引き入れられると、3本のピン234が支柱および作動要素を貫通する穴から取り外されて、支柱と作動要素206Bとの結合が外される。
【0078】
一実施形態では、アクチュエータ626の継続的作動によっても、作動要素206Bが図5Bに示されている位置から図5Eに示されている位置にさらに引き入れられる。図23Cは、アクチュエータ626の継続的作動により作動要素206B(図示されていない図23Aおよび23Bからの第2のアクチュエータ626)をさらに引き入れることが可能な設計による、例示的な送達システムのハンドル630の部分を拡大して示している。ロッキングおよびシース被覆駆動リングは、図17A〜17Dを参照しつつ説明されている方法と同様に送りネジを介してロッキングおよびシース被覆キャリッジを作動させる。ハンドル630は、ロッキングおよびシース被覆駆動リング631、ロッキングおよびシース被覆送りネジ632、ロッキング・キャリッジ633、リリース・ピン・キャリッジ635、ロスト・モーション・バレル629、リリース・ピン・マンドレル636(ハイポチューブ内に示されている)、ロッド作動マンドレル634(ハイポチューブ内に示されている)、および力リミッタ638を備える。力リミッタ638は、リリース・ピン・キャリッジ635が近位に引かれたときに移動するトラック637を備える。リリース・カラーは、リリース・ピン・キャリッジ635を近位に引っ張る別のより小さな送りネジ639(通常はロッキング・キャリッジ633によって駆動される)を作動する。医師が、ピンを取り外せる状態にあるときに、ハンドル(図示せず)上の第2のアクチュエータが作動すると、リリース送りネジ639と係合して回転させる。そして、リリース・カラー636がトラック637内で近位に引かると、リリース・ピン・マンドレル636が近位に引き戻されて、ピンが支柱から解放され、さらにロッドと支柱との結合が外される。第2のアクチュエータの継続的作動で、力リミッタ638の近位端に到達するまでリリース・キャリッジを引き続ける。キャリッジ635は、力リミッタ638の近位端に達すると、力リミッタの他の部分よりも近接して着座する部分を移動する。これにより、ロッド・マンドレル634を近位に引いて、ロッドを近位方向に引く。したがって、第2のアクチュエータを使用することで、ピンを解放するとともに、ロッドを近位方向に引き戻し続けることができる。
【0079】
あるいは、ハンドルは、回転式アクチュエータ624をさらに作動させて、ピンの取り外し後も作動要素206Bを近位に引き入れることができるように設計することができる。次いで、送達システムを患者から取り外すことができる。
【0080】
本明細書で説明されている医療用インプラントは、インプラント全体が最初にシースから配備された後に再度折りたたみ、シース内に少なくとも部分的に戻して再シース被覆することができる。これは、インプラントの少なくとも一部が、インプラントをシースから配備した後も送達システムの一部に可逆的に結合されたままであるためである(例えば、図3F参照)。アンカー固定要素が完全に配備された構成形状に固定された後であっても、いくつかの実施形態では支柱をバックルから係止解除することができ、その後、アンカー固定要素をシースに入れて再シース被覆することができる。送達用シースまたはカテーテルから配備された後にインプラントを再シース被覆することができることは、必要な場合にインプラントを患者から取り外すか、または患者体内で再位置決めすることができるため有利である。例えば、置換心臓弁の機能および/または位置決めは、置換心臓弁が図3Fに示されている構成形状になった後に評価することができ(また、アンカーが拡張し係止された構成形状に固定され始めたときに継続的に評価でき)、次いで、再シース被覆し、その後、必要な場合に再位置決めするか、または患者から取り外すことができる。
【0081】
本明細書で説明されている再シース被覆を実行するための再シース被覆する方法および送達システムでは置換心臓弁を取りあげているが、さまざまな医療用デバイスが本明細書で説明されている再シース被覆補助手段から恩恵を得ることができる。例えば、拡張性ステントはステントを送達用カテーテルまたはシースから配備した後も送達システム可逆的に結合されたままであり、この場合、本明細書で説明されている再シース被覆補助手段をその送達システムに組み込むことから利益を得ることができる。
【0082】
心臓弁を再シース被覆するためには、シースをカテーテルに対して遠位に送る。あるいは、カテーテルをシースに対して近接して引き抜くことができる。カテーテルに対してシースを遠位に移動すると、カテーテルの遠位端に結合されているフィンガーが径方向内向きに折りたたまれる。これにより、アンカーの近位端が折りたたまれる。シースを遠位に継続的に移動すると、心臓弁の残り部分が伸長し、折りたたまれ、シースはアンカー固定要素を再捕捉することができる。
【0083】
アンカー固定要素が編組材料からなる実施形態では、シースを遠位に送ると、アンカーの近位端の一部がシースの遠位端に引っ掛かる、つまり固着する可能性がある。これは、再シース被覆を妨げるか、または再シース被覆効率を低くする可能性がある。
【0084】
図24は、シース644、送達用カテーテル646、およびシース被覆補助要素642を備える代替的送達システム640を示している。シース被覆補助要素642は、編組構造であり、本明細書で説明されている編組アンカー固定要素と同様のものとすることができる。シース被覆補助要素642は、一般的に、シース被覆補助要素642の遠位端がアンカー固定要素649の近位端の直径よりも大きな直径を有する形状記憶構成形状を有する。送達システムは、置換心臓弁648(わかりやすくするために置換小葉は図示されていない)の近位領域に可逆的に結合されているフィンガー647(2つのみが示されている)を備える。シース被覆補助要素642の近位端は、送達用カテーテル646の遠位端に結合される。フィンガー647は、カテーテル646の遠位端にも結合され、一般的に、シース被覆補助要素642の「中にあるか」またはこれに対して径方向内きである。図24は、シースが引き抜かれて、アンカー固定要素を形状記憶構成形状に拡張させることができようになった後の、ただしまだ能動的に短縮されていない状態の置換心臓弁を示している。
【0085】
インプラントを再シース被覆するためには、シースをカテーテルおよびインプラントに対して遠位に送る。これは、上述のように、ハンドルのアクチュエータを作動させることによって行うことができる。シース被覆補助要素の近位端は送達用カテーテルの遠位端に固定されているため、シースの遠位端は、引っ掛かることなく、シース被覆補助要素の近位端上を容易に通り過ぎることができる。シースを継続的に遠位に移動することで、シース被覆補助要素の少なくとも遠位部分が伸長し、直径が部分的に減少する。シース被覆補助要素が伸長すると、シース被覆補助要素の遠位端は、アンカーの近位端に対して遠位に移動する。シースを継続的に遠位に移動すると、シース被覆補助要素の遠位端が引き続き収縮し、シース被覆補助要素の少なくとも遠位領域がアンカーの少なくとも近位端と係合する。したがって、シース被覆補助要素は、アンカーの近位端に引っ掛かる危険性もなく、シースが通り過ぎることができる表面を形成する。それに加えて、シース被覆補助要素は、径方向内向きの力をアンカーの近位端に加え、アンカーの近位端の収縮を補助することができる。シースが遠位に送られ続けると、アンカーは収縮し、シース内に戻され再シース被覆される。いくつかの実施形態では、シース被覆補助要素は、ポリマーのメッシュである。
【0086】
いくつかの実施形態において、シース被覆補助要素は、塞栓フィルタとしても機能しうる。シースから露出させた後、シース被覆補助要素は、標的位置に向かって下流へ移動する塞栓を捕捉するが、血液は補助要素を通過することができる。このような実施形態では、シース被覆補助要素の遠位端は、これが配設される内腔の直径にできる限り近い形状記憶直径を有するように構成され配置されうる。塞栓フィルタ用の例示的な材料は、当技術分野で知られている。
【0087】
図25〜28は、代替的シース被覆補助要素660を備える代替的送達システムを示している。シース被覆補助要素660は、3つの折りたたみ可能なブレード662を備える。これらのブレードは、ハブ664の近位端のところで互いに固定される(図28を参照)。ハブ664は、フィンガー666およびカテーテル668に対して軸方向に移動可能であるが、カテーテル668の遠位領域は、ハブと係合し、ハブストッパーに対して近位へのハブの移動を防ぐハブストッパー670を備える。シース(図示せず)がカテーテル668上で遠位に送られると、フィンガー666を折りたたみ始める。フィンガーが径方向内向きに折りたたまれると、ハブはフィンガー上で遠位に移動することができる。フィンガーが折りたたまれると、アンカーの近位端が、折りたたみ始め、ハブは、遠位に送られ続ける。最終的に、ブレード662の遠位端がアンカーの近位端を覆い、次いで、シースは、アンカーの近位端に引っ掛かることなくアンカー上に送られる。いくつかの実施形態では、ブレードは、シースが力をブレードに加えたときにそれ自体内向きに折りたたまれる。
【0088】
図26に示されている実施形態において、シース被覆補助要素660は、フィンガーを通過させることができる任意のフィンガー開口部672を備える。開口部672は、ハブをフィンガーに対して遠位に容易に移動できる任意の形状(例えば、矩形、円形など)をとるように設計することができる。図28の実施形態では、ブレードは、折りたたむのを補助するオプションのスリット674を有する。
【0089】
図29は、その遠位端にアーム682および歯684を備えるシース被覆補助要素680の一実施形態を示している。歯は、ブランド・ストランドが編紐の端部(または編組でないアンカーの他の近位領域)のところで折り返す場合に形成される、編紐の王冠と係合することでシースをアンカー上で遠位に送ることができる。各アーム682は、任意の数の歯684を持つことができる。アームは、シースから加えられた力に応答することによって、これらのアームは曲がり部を持つ第2の構成形状に変化して、アームの遠位部分が径方向内向きに曲げられるとアンカーの近位端と係合する。
【0090】
図30は、ステント要素672からなるシース被覆補助要素670の代替的実施形態を示している。シース被覆補助要素670は、図26に示されている実施形態と同様の機能を有するが、編組材料を使用しない。ステントは、例えば、合金またはステントの当技術分野で知られているような他の任意の好適な材料から作ることができる。
【0091】
図31は、丸くなった要素(curled element)682(アンカーは図示されていない)を備えるシース被覆補助要素680の代替的実施形態を示している。丸くなった要素682の近位端を、他の実施形態において上で説明されているようにハブに結合することができるか、または丸くなった要素のそれぞれをカテーテルに個別に固定することができる。シースが遠位に送られると、シースの力によって、丸くなった要素の遠位端の丸みがまっすぐにされる。まっすぐになった要素の遠位端は、アンカーの近位端の上へ、そして遠位へ延在し、これにより、アンカーの王冠に引っ掛かることなく、シースをアンカーの近位端上に送ることができる。丸くなった要素は、例えば、ステンレス鋼または他の任意の好適な材料から作ることができる。
【0092】
図32および33に示されている代替的実施形態において、シース被覆補助要素684は、複数のアーム686(図32および33には12本のアームが示されている)を備え、それぞれが雄ロッキング要素688を備える遠位端を有する。各アーム686は、雄ロッキング要素688よりもハブ692の方に近い位置に配設された雌ロッキング要素690を備える。図32および33では、雄ロッキング要素は矢じりの形状を有し、雌ロック要素はスロットの形をとる。ハブ692は、制御ワイヤ696を通すための開口部694を備える。制御ワイヤ696は、拡大された要素が開口部694を通して近位に引っ張られるのを防ぐ拡大された要素をその遠位端(図示せず)に有する。送達構成形状において、各アーム686は、ハブ692から遠位に延在し、スロットの遠位にある各アームの遠位領域は、アンカーの王冠の周りに巻き付けられる(図33を参照)。雄ロック要素688は、雌ロック要素690と係合する。置換心臓弁が再シース被覆される場合、近位方向の力が制御ワイヤ696に加えられるため、王冠が径方向外向きに延在することを防いで、固着することなく近位端の王冠上で遠位にシースを送ることができる。あるいは、近位の力は不要であり、アーム686とアンカーの王冠との係合により、王冠がシースに固着するのを防ぐ。近位方向の力をハブに加えると、矢じりがスロットから解放され、アームがアンカーから解放される。これにより、インプラントがアームから解放される。
【0093】
図34〜37に示されている代替的実施形態では、送達システムは、その近位端のところで送達システム・コンポーネントに結合され(例えば、カテーテル702の遠位端、ハンドル内のアクチュエータなど)、それぞれアンカーの王冠の周りに巻き付けられるワイヤまたは縫合糸700を備える。ワイヤまたは縫合糸700の遠位端は、カテーテル702の外面内の環状戻り止め706と係合する球状要素などの拡大された要素704を有する。シース708は、拡大された要素704と戻り止め706の係合を維持する。ワイヤまたは縫合糸700の遠位端は、1つのロッキング要素を単純に備えることができるが、カテーテルの外面は、第2のロッキング要素を備えることができる。縫合糸700は、王冠に対し径方向内向きの力を与え、再シース被覆時にシースがそれらの上に広がるのを補助する。外側シースがカテーテルに対して近接して引かれた後、拡大された要素が凹みから解放され、ワイヤ/縫合糸700は、アンカーの王冠から解放される。図35に示されている例示的な代替的実施形態では、カテーテルは複数の戻り止め706を備える。
【0094】
図38〜41は、カテーテル714の遠位端に取り付けられた複数のアームを備える、シース被覆補助710の代替的実施形態を示している。アームは、2種類のアーム718,720を備え、アーム718は、アーム720に比べてわずかに長い。アームは、その遠位端のところにある曲がりを有するワイヤ・セグメントから形成され、アームのこれら2つの端部は、シース被覆補助710の近位端726のところで一緒に結合される。アーム718は、カテーテルからアンカーへ延在し、遠位端は、アンカーの編紐内に織り込まれている。つまり、アーム718の遠位端は、図39〜41に示されているように、編組アンカー内で径方向に配設される。アーム718は、アーム718とアーム720の両方より短い、剛性補強要素722に取り付けられる。剛性補強要素722は、例えば溶接部であってもよい取り付け点724のところでアーム718に取り付けられる。これからわかるように、剛性補強要素722は、アーム718のワイヤ・セグメント内に配設され、これによってアーム718の強度を高める。シース被覆補助は、アーム718よりも短いものとして示されているアーム720も備えるが、これらは両方とも実質的に同じ長さとすることが可能である。図38から分かるように、2本のアーム720は、取り付け点724のところで一緒に取り付けられる。アーム720は、編紐内に織り込まれ、編紐の内側に径方向に配設されているアーム720とは異なり、編紐の径方向外向きに位置決めされる。アーム720は、シースが遠位に送られるときに編紐に径方向内向きの力を加えることを助ける。アーム718はまた、編紐に径方向内向きの力を加えることも助け、また2組のアームは、シースの遠位端がアンカーに引っ掛からないことを確実にする。
【0095】
代替的実施形態では、編組アンカーの近位の王冠は、王冠が径方向内向きに(編紐の長手方向軸に対して、またアンカーの残り部分に対して)曲げられた形状に熱硬化されて、再シース被覆の方法におけるシースを補助する。王冠は、シースが王冠に引っ掛かるのを防ぐために内向きに曲げられている。
【0096】
本開示は、上で説明されている例示的な実施形態に関して説明されているが、当業者であれば、多くの修正をこれに加えることができることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲が上記の例示的な実施形態によっていかなる形においても制限されることを意図するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイス・システムであって、
患者の体外に配設されるハウジングを備える送達システムを備え、
前記ハウジングは、アクチュエータを備え、
前記送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントを第2の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するように構成かつ配置され、
前記送達システムは、アクチュエータが第2の送達システム・コンポーネントを第1の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するようにさらに構成かつ配置される医療用デバイス・システム。
【請求項2】
前記送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に作動させるようにさらに構成かつ配置される請求項1に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項3】
前記アクチュエータは、第1の送達コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に作動させるときに異なる速度で作動させる請求項2に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項4】
前記送達システムは、アクチュエータの作動により第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが同じ方向に移動するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記送達システムは、アクチュエータの作動により、第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが特定の順序で作動するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータは、単一のアクチュエータ要素であり、単一の運動でアクチュエータを作動させると、第2の送達システム・コンポーネントとは独立して第1の送達システム・コンポーネントが作動し、さらに第1の送達システム・コンポーネントとは独立して第2の送達システム・コンポーネントが作動する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、医療用デバイス・システムは、送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達される医療用デバイスからなり、前記アクチュエータは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつ独立した移動の前に、送達用シースを移動する請求項1に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項8】
前記第2の送達システム・コンポーネントは、医療用デバイスの一部に対して可逆的に結合される請求項7に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、作動すると前記シースおよび第2の送達コンポーネントの両方を近位に独立して移動する請求項8に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項10】
前記アクチュエータの作動により、前記シースを近位に引っ込めて医療用デバイスを拡張させ、また、前記アクチュエータのさらなる作動によって、第2の送達システム・コンポーネントが近位に引っ込められる請求項9に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項11】
前記送達システムおよびアクチュエータは、単独型の運動におけるアクチュエータの移動により、第1の送達システム・コンポーネントが第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、また、前記第2の送達システム・コンポーネントが第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記単独型の運動は、アクチュエータの回転である請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記単独型の運動により、第1の送達システム・コンポーネントは第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、第2の送達システム・コンポーネントは第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、前記第1の送達システム・コンポーネントの独立した移動と第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動との間においては介在する作動工程が実行されない請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
患者の体内に医療用デバイスを配備するための送達システムを使用する方法であって、
患者の体外に配設される、アクチュエータを備えるハウジングからなる送達システムを用意することと、
前記アクチュエータを作動させて第2の送達システム・コンポーネントとは独立して第1の送達システム・コンポーネントを移動することと、
前記アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントとは独立して該第2の送達システム・コンポーネントを移動することとからなる方法。
【請求項15】
前記アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アクチュエータを作動させることは、前記アクチュエータを単独型の運動で作動させて、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを互いに独立に移動するとともに、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アクチュエータを作動させることで、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを、少なくともこれらが同時に移動している期間の一部において異なる速度で移動する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同じ方向に移動する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを特定の順序で移動する請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記アクチュエータを作動させることは、アクチュエータを単独型の運動で作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントの両方を互いに独立に移動することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記単独型の運動は、単一の方向への回転である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、アクチュエータを作動させることは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつ独立した移動の前に、送達用シースを近位方向に移動することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の送達システム・コンポーネントは、医療用インプラントに対して可逆的に結合され、第2の送達システム・コンポーネントは作動すると、送達用シースの近位方向移動とは独立して、かつ近位方向移動の後に、近位方向に移動する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを移動することは、これら送達システム・コンポーネントを近位に移動することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントを移動することは、送達用シースを近位に移動して医療用デバイスを拡張させることを含む請求項14に記載の方法。
【請求項26】
患者の体内に医療用デバイスを配備するための送達システムであって、
送達用シースと、
前記送達用シース内に配設され、送達用シースに対して移動可能な送達用カテーテルと、
医療用デバイスの一部に対して可逆的に結合される結合部材と、医療用デバイスは、送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達され、送達用シースは、該シースから医療用デバイスを解放するために医療用デバイスに対して移動し、
シース被覆補助要素とを備え、前記送達用シースが医療用デバイスの少なくとも近位部分を被覆しているときに、シース被覆補助要素の少なくとも一部が送達用シースの遠位端と医療用デバイスの近位部分との間に配設される送達システム。
【請求項27】
前記シース被覆補助要素の近位部分は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる請求項26に記載の送達システム。
【請求項28】
前記結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる請求項27に記載の送達システム。
【請求項29】
前記シース被覆補助要素の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、シース被覆補助要素は、結合部材に対して径方向外向きになっている請求項26に記載の送達システム。
【請求項30】
前記シース被覆補助要素は、複数の輪になった要素からなり、複数の輪になった要素のうちの第1の輪になった要素は、複数の輪になった要素のうちの第2の輪になった要素の長さと異なる長さを有する請求項26に記載の送達システム。
【請求項31】
前記医療用デバイスは編組要素からなり、前記シース被覆補助要素は複数のシース被覆補助要素からなり、複数のシース被覆補助要素のうちの第1のシース被覆補助要素は、送達用シースが編組要素を被覆しているときに編組要素の近位端から径方向外向きに配設され、複数のシース被覆補助要素のうちの第2のシース被覆補助要素は、編組要素を貫通する請求項26に記載の送達システム。
【請求項32】
送達用シース内に医療用デバイスを入れて被覆する方法であって、
拡張性医療用デバイスの一部と送達用シースとの間でシース被覆補助要素の位置決めをすることと、
シース被覆補助要素および医療用デバイスに対して送達用シースを遠位に移動して、送達用シース内の拡張性医療用デバイスの少なくとも一部の折りたたみを補助することとからなる方法。
【請求項33】
前記位置決め工程は、送達用シースがシース被覆補助要素に対して遠位に移動するときに、前記送達用シースの遠位端が医療用デバイスの近位端に引っ掛かる可能性を減少させるために拡張性医療用デバイスの少なくとも近位端と送達用シースの遠位端との間においてシース被覆補助要素の位置決めをすることを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記送達システムは結合部材をさらに備え、前記方法は結合部材と医療用デバイスとの可逆的結合を維持することをさらに含み、前記シース被覆補助要素を位置決めすることは、シース被覆補助要素を結合部材に対して径方向外向きに位置決めすることを含む請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記送達用シースをシース被覆補助要素に対して遠位に移動することで、径方向内向きの力がシース被覆補助要素から拡張性医療用デバイスの一部分に加えられる請求項32に記載の方法。
【請求項1】
医療用デバイス・システムであって、
患者の体外に配設されるハウジングを備える送達システムを備え、
前記ハウジングは、アクチュエータを備え、
前記送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントを第2の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するように構成かつ配置され、
前記送達システムは、アクチュエータが第2の送達システム・コンポーネントを第1の送達システム・コンポーネントとは独立に移動するようにさらに構成かつ配置される医療用デバイス・システム。
【請求項2】
前記送達システムは、アクチュエータが第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に作動させるようにさらに構成かつ配置される請求項1に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項3】
前記アクチュエータは、第1の送達コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に作動させるときに異なる速度で作動させる請求項2に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項4】
前記送達システムは、アクチュエータの作動により第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが同じ方向に移動するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記送達システムは、アクチュエータの作動により、第1の送達システム・コンポーネントと第2の送達システム・コンポーネントとが特定の順序で作動するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータは、単一のアクチュエータ要素であり、単一の運動でアクチュエータを作動させると、第2の送達システム・コンポーネントとは独立して第1の送達システム・コンポーネントが作動し、さらに第1の送達システム・コンポーネントとは独立して第2の送達システム・コンポーネントが作動する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、医療用デバイス・システムは、送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達される医療用デバイスからなり、前記アクチュエータは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつ独立した移動の前に、送達用シースを移動する請求項1に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項8】
前記第2の送達システム・コンポーネントは、医療用デバイスの一部に対して可逆的に結合される請求項7に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、作動すると前記シースおよび第2の送達コンポーネントの両方を近位に独立して移動する請求項8に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項10】
前記アクチュエータの作動により、前記シースを近位に引っ込めて医療用デバイスを拡張させ、また、前記アクチュエータのさらなる作動によって、第2の送達システム・コンポーネントが近位に引っ込められる請求項9に記載の医療用デバイス・システム。
【請求項11】
前記送達システムおよびアクチュエータは、単独型の運動におけるアクチュエータの移動により、第1の送達システム・コンポーネントが第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、また、前記第2の送達システム・コンポーネントが第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記単独型の運動は、アクチュエータの回転である請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記単独型の運動により、第1の送達システム・コンポーネントは第2の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、第2の送達システム・コンポーネントは第1の送達システム・コンポーネントとは独立して移動し、前記第1の送達システム・コンポーネントの独立した移動と第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動との間においては介在する作動工程が実行されない請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
患者の体内に医療用デバイスを配備するための送達システムを使用する方法であって、
患者の体外に配設される、アクチュエータを備えるハウジングからなる送達システムを用意することと、
前記アクチュエータを作動させて第2の送達システム・コンポーネントとは独立して第1の送達システム・コンポーネントを移動することと、
前記アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントとは独立して該第2の送達システム・コンポーネントを移動することとからなる方法。
【請求項15】
前記アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アクチュエータを作動させることは、前記アクチュエータを単独型の運動で作動させて、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを互いに独立に移動するとともに、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同時に移動することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アクチュエータを作動させることで、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを、少なくともこれらが同時に移動している期間の一部において異なる速度で移動する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを同じ方向に移動する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記アクチュエータを作動させることにより、第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを特定の順序で移動する請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記アクチュエータを作動させることは、アクチュエータを単独型の運動で作動させて第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントの両方を互いに独立に移動することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記単独型の運動は、単一の方向への回転である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の送達システム・コンポーネントは、送達用シースであり、アクチュエータを作動させることは、第2の送達システム・コンポーネントの独立した移動とは別に、かつ独立した移動の前に、送達用シースを近位方向に移動することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の送達システム・コンポーネントは、医療用インプラントに対して可逆的に結合され、第2の送達システム・コンポーネントは作動すると、送達用シースの近位方向移動とは独立して、かつ近位方向移動の後に、近位方向に移動する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の送達システム・コンポーネントおよび第2の送達システム・コンポーネントを移動することは、これら送達システム・コンポーネントを近位に移動することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記アクチュエータを作動させて第1の送達システム・コンポーネントを移動することは、送達用シースを近位に移動して医療用デバイスを拡張させることを含む請求項14に記載の方法。
【請求項26】
患者の体内に医療用デバイスを配備するための送達システムであって、
送達用シースと、
前記送達用シース内に配設され、送達用シースに対して移動可能な送達用カテーテルと、
医療用デバイスの一部に対して可逆的に結合される結合部材と、医療用デバイスは、送達用シースを通じて患者の標的位置へ経皮的に送達され、送達用シースは、該シースから医療用デバイスを解放するために医療用デバイスに対して移動し、
シース被覆補助要素とを備え、前記送達用シースが医療用デバイスの少なくとも近位部分を被覆しているときに、シース被覆補助要素の少なくとも一部が送達用シースの遠位端と医療用デバイスの近位部分との間に配設される送達システム。
【請求項27】
前記シース被覆補助要素の近位部分は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる請求項26に記載の送達システム。
【請求項28】
前記結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられる請求項27に記載の送達システム。
【請求項29】
前記シース被覆補助要素の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、結合部材の近位端は、送達用カテーテルの遠位領域に取り付けられ、シース被覆補助要素は、結合部材に対して径方向外向きになっている請求項26に記載の送達システム。
【請求項30】
前記シース被覆補助要素は、複数の輪になった要素からなり、複数の輪になった要素のうちの第1の輪になった要素は、複数の輪になった要素のうちの第2の輪になった要素の長さと異なる長さを有する請求項26に記載の送達システム。
【請求項31】
前記医療用デバイスは編組要素からなり、前記シース被覆補助要素は複数のシース被覆補助要素からなり、複数のシース被覆補助要素のうちの第1のシース被覆補助要素は、送達用シースが編組要素を被覆しているときに編組要素の近位端から径方向外向きに配設され、複数のシース被覆補助要素のうちの第2のシース被覆補助要素は、編組要素を貫通する請求項26に記載の送達システム。
【請求項32】
送達用シース内に医療用デバイスを入れて被覆する方法であって、
拡張性医療用デバイスの一部と送達用シースとの間でシース被覆補助要素の位置決めをすることと、
シース被覆補助要素および医療用デバイスに対して送達用シースを遠位に移動して、送達用シース内の拡張性医療用デバイスの少なくとも一部の折りたたみを補助することとからなる方法。
【請求項33】
前記位置決め工程は、送達用シースがシース被覆補助要素に対して遠位に移動するときに、前記送達用シースの遠位端が医療用デバイスの近位端に引っ掛かる可能性を減少させるために拡張性医療用デバイスの少なくとも近位端と送達用シースの遠位端との間においてシース被覆補助要素の位置決めをすることを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記送達システムは結合部材をさらに備え、前記方法は結合部材と医療用デバイスとの可逆的結合を維持することをさらに含み、前記シース被覆補助要素を位置決めすることは、シース被覆補助要素を結合部材に対して径方向外向きに位置決めすることを含む請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記送達用シースをシース被覆補助要素に対して遠位に移動することで、径方向内向きの力がシース被覆補助要素から拡張性医療用デバイスの一部分に加えられる請求項32に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公表番号】特表2012−505061(P2012−505061A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531257(P2011−531257)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060531
【国際公開番号】WO2010/042950
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511090475)サドラ メディカル インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SADRA MEDICAL,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060531
【国際公開番号】WO2010/042950
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511090475)サドラ メディカル インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SADRA MEDICAL,INC.
【Fターム(参考)】
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