説明

医療用データ処理装置およびそれを備えた診断装置

【課題】画像の視認性が損なわれないようにメディアンフィルタ処理を施すことにより視認性を向上させる上で邪魔となるノイズ成分を確実に除去することができる医療用データ処理装置を提供する。
【解決手段】本発明における画素の変換動作は、処理対象の画素とその周辺の画素とにおける画素値を比較して対象画素の画素値の順位を求め、この順位に応じて行ったり行わなかったりするのである。このように、本発明によればデータ処理を画素の全てについて行わないようにしている。これにより、空間データDa1が保持する被検体Mの像を劣化させることなく、空間データDa1のノイズを除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に現れるノイズを除去する医療用データ処理装置およびそれを備えた診断装置に関し、特にメディアンフィルタ処理を施す医療用データ処理装置およびそれを備えた診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線で被検体の画像を撮影する放射線撮影装置が備えられている。このような放射線撮影装置が撮影する画像には、図11に示すようなスパイク状のノイズが現れることがある。
【0003】
図11においてノイズは、周囲の画素よりも明るい明点、または周囲の画素よりも暗い暗点として画像上に現れている。このような明点、暗点が画像に現れると画像の視認性を悪化させてしまう。
【0004】
そこで、従来の構成によれば、画像にメディアンフィルタ処理を施すことで画像上における明点、暗点を除去するようになっている。メディアンフィルタ処理により明点、暗点を構成していた画素の画素値は、この画素の周辺の画素値に置き換えられる。すると、画像上の明点、暗点は画像から消去される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
従来のメディアンフィルタ処理について説明する。図12は、明点aについてメディアンフィルタ処理がされている様子を示している。画像上における明点aに位置する画素の画素値は、この画素の周辺画素の画素値と比べて極端に高くなっている。メディアンフィルタ処理を明点aに施すと、明点aに位置する画素およびその周辺画素の画素値を高い順に順番付けする。図12においては、各画素には、1番から9番まで順番付けがされていることになる。そして、各画素における中間の順位となっている画素の画素値が選択される。図12においては、選択される画素は5番目の画素の画素値(中間画素値)である。そして、明点aに位置する画素の画素値を中間画素値に置き換える。
【0006】
図12における明点aに位置する画素の画素値は、周辺画素と比べて極端に高いのであるから、明点aの画素は順番付けにおいて1番となる。つまり、明点aの画素は中間の順位(5位)を占めることができないので、明点aの画素の画素値は中間画素値とされることはない。従って、画像にメディアンフィルタ処理を施すと、画像に現れていた明点は、全て消去されることになる。
【0007】
また、メディアンフィルタ処理により画像上の暗点も消去される。暗点に位置する画素の画素値は、周辺画素と比べて極端に低いので、メディアンフィルタ処理の際、暗点の画素は中間の順位を占めることができないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−236976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来の構成によれば、メディアンフィルタ処理によりかえって視認性が悪化してしまう場合がある。メディアンフィルタ処理は、置き換えを行おうとする画素およびその周辺画素から構成される画素群において、画素値の統計精度が良好でバラつきが少ないことを前提としているからである。画素の統計精度が悪くバラついている画像にメディアンフィルタ処理を施すと、画像の視認性が悪化することがある。
【0010】
従来のメディアンフィルタ処理によれば、画素値の置き換え動作を画像上の全ての画素について行うのであり、明点、暗点のみに動作するものではない。したがって、メディアンフィルタ処理を画像に施すと、明点、暗点でない部分でも画素値の置き換えが起こる。
【0011】
一般的に、画像における明点、暗点でない画素は、画素値が周辺画素のものと似通っているから、画像上で目立たないのである。したがって、明点、暗点でない画素は、順番付けにおいて、5番目の順位を占めることができなくても、5番目に近い順位を占めることになる。つまり、明点、暗点でない画素の画素値は、5番目の順位を占める画素値と似通っているのである。したがって、画像において明点、暗点でない画素の画素値は、メディアンフィルタ処理により、これと似通った画素値に置き換えられると考えられる。これらのことからすると、画素値の置き換えを画像の全域で行っても、画像の視認性が極端に悪くなることはないことになる。従来の構成はこの考えに基づいている。しかし、この考えは置き換えられる前の画素値が置き換え後の画素値に近似している場合についてのみ成り立つのである。
【0012】
この考えが成り立たないものとして、画素の統計精度が悪くバラついている画像がある。この画像における画素値は周辺画素と比べて異なっている。このような画像の具体例として、PET(Positron Emission Tomography)画像などがある。
【0013】
メディアンフィルタ処理により画像の劣化が生じる様子について説明する。いま、統計精度が悪くバラついている画像のエッジ部で、画素が明るいものと暗いものとに二極化している画像部分についてメディアンフィルタ処理を施すものとする。すなわち図13に示すように、画像において明点とはなっていないものの明るい方に分類される画素B3に対してメディアンフィルタ処理を行うものとする。画素B3に対応する周辺画素としては、この画素の画素値に近い明るいもの(B1,B2,B4,B5で表記)が4個と、この画素値から遠くかけ離れた暗いもの(D1,D2,D3,D4で表記)が4個あるとする。画素の明るさは、B1,B2,B3,B4,B5,D1,D2,D3,D4の順であるとする。画素B1〜B5同士、および画素D1〜D4同士の画素値は互いに似通っているが、明るい画素B1〜B5のうち一番暗いもの(画素B5)と暗い画素D1〜D4のうち一番明るいもの(画素D1)との間には画素値に大きな隔たりがあるものとする。
【0014】
画素B3は、3番目に明るく、5番目の画素を占めることができない。5番目の順位には画素B5が占めているので、画素B3の画素値は画素B5の画素値に置き換えられる。画素B1〜B5同士の間では画素値は似通っているのであるから、この場合は一般的なメディアンフィルタ処理と同様に画像の劣化はさほど生じない。
【0015】
ところが、図14に示すように画素B3の周辺画素として、明るいもの(B1,B2,B4で表記)が3個と、暗いもの(D1,D2,D3,D4,D5で表記)が5個ある場合は事情が異なる。この場合の5番目の順位には画素D1が占めている。従って、画素B3の画素値は画素D1の画素値に置き換えられる。このように明るい画素B3の画素値がこれと大きく隔たりのある暗い画素D1の画素値に変更されるのである。つまり、画素が明るいものと暗いものとに二極化している画像部分においてメディアンフィルタ処理を施すと、明点、暗点でない画素の画素値が大きくかけ離れた値に変更される場合が生じてしまうのである。
【0016】
明点、暗点でない画素は、視認性の観点からメディアンフィルタ処理によっても画素値が変更されないことが理想である。従来構成が想定するように、画素値の統計精度が良好でバラつきが少ない画像においては、たとえ画像の全域にメディアンフィルタ処理を施したとしても、この理想から大きくかけ離れた動作とはならない。画素値がこれに似通った画素値に変更されるだけだからである。
【0017】
しかし、統計精度が悪くバラついている画像は、従来構成が想定していない画像であり、上述とは事情が異なっている。この様な画像にメディアンフィルタ処理を施すと、画像の部分によっては明るい画素と暗い画素とが相互に入れ替えられ、理想と大きくかけ離れた動作がされてしまう。具体的には、被検体の情報を表した明るい画素がメディアンフィルタ処理により周辺の暗い画素に変えられる。このようにして、メディアンフィルタ処理は画像が有する被検体の情報を攪乱してしまう。つまり、従来のメディアンフィルタ処理では、視認性の高い画像を取得することができない場合があるのである。
【0018】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、画像の視認性が損なわれないようにメディアンフィルタ処理を施すことにより視認性を向上させる上で邪魔となるノイズ成分を確実に除去することができる医療用データ処理装置およびそれを備えた診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る医療用データ処理装置は、画素が配列されることにより構成されるデータに処理を施すことにより、データに現れるノイズを除去する医療用データ処理装置であって、処理対象の画素を含んだ領域に属する画素群において画素値の順に画素に順位を付して、処理対象の画素の順位に応じて画素値の変換動作から除外するかどうかを判定する判定手段と、処理対象の画素の画素値を判定手段によって中間の順位が付された画素の画素値に変換する変換手段とを備え、変換手段はデータを構成する画素の各々について動作する際に判定手段が除外した画素については変換動作を行わないことを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]本発明の構成によれば、データを劣化させずしてノイズを除去することができる医療用データ処理装置が提供できる。すなわち、本発明における画素の変換動作は、処理対象の画素とその周辺の画素とにおける画素値を比較して対象画素の画素値の順位を求め、この順位に応じて行ったり行わなかったりするのである。このように、本発明によればデータ処理を画素の全てについて行わないようにしている。これにより、データが保持する被検体の像を劣化させることなく、データのノイズを除去することができる。
【0021】
また、上述の医療用データ処理装置において、判定手段は、(A)処理対象の画素が最上位のときは変換動作を行わせるように判定すればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。すなわち、処理対象の画素が最上位のときは変換動作を行わせるようにし、それ以外のときは変換動作を行わせないようにすれば、データ上の強い画質劣化の要因となっているノイズを確実に除去することができる。処理対象の画素の画素値が周辺領域に属する各画素の画素値と大きくかけ離れていれば、処理対象の画素の順位は周辺領域中で1位となる可能性が高く、処理対象の画素がノイズ成分を写し込んでいる可能性も高い。上述の構成は、この様なノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い輝点のみにデータ処理を施すことにより、ノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い輝点の画素値のみを周辺領域中で目立たない画素値に変更する。これによりデータ上のノイズは確実に除去されるとともに、画素値の変換動作が極力少ないものとなるので、画像の劣化が抑制される。
【0023】
また、上述の医療用データ処理装置において、判定手段は、(B)処理対象の画素が最下位のときは変換動作を行わせるように判定すればより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。すなわち、処理対象の画素が最下位のときは変換動作を行わせるようにし、それ以外のときは変換動作を行わせないようにすれば、データ上の強い画質劣化の要因となっているノイズを確実に除去することができる。処理対象の画素の画素値が周辺領域に属する各画素の画素値と大きくかけ離れていれば、処理対象の画素の順位は周辺領域中で1位となっていない場合、最下位となっている可能性が高く、処理対象の画素がノイズ成分を写し込んでいる可能性も高い。上述の構成は、この様なノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い輝点のみにデータ処理を施すことにより、ノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い暗点の画素値のみを周辺領域中で目立たない画素値に変更する。これによりデータ上のノイズは確実に除去されるとともに、画素値の変換動作が極力少ないものとなるので、画像の劣化が抑制される。
【0025】
また、上述の医療用データ処理装置において、判定手段は、(A,B)処理対象の画素が最上位または最下位のときは変換動作を行わせるように判定すればより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。上述の構成によれば、データ上において輝点、暗点として現れているノイズは確実に除去される。
【0027】
また、上述の医療用データ処理装置において、判定手段は、(C)処理対象の画素の順位が最上位よりも低い順位で中間の順位よりも高い順位となっている上位参考順位以上となっているときは変換動作を行わせるように判定すればより望ましい。
【0028】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。処理対象の画素が周辺領域において輝点となっていても、周辺領域に別の輝点が存在する場合、処理対象の画素の順位は1位となるとは限らない。上述の構成によれば、画素値処理動作を除外する順位に幅を持たせているので、データに輝点が多く存在する場合であっても、データ上のノイズは確実に除去される。
【0029】
また、上述の医療用データ処理装置において、判定手段は、(D)処理対象の画素の順位が中間の順位よりも低い順位で最下位よりも高い順位となっている下位参考順位以下となっているときは変換動作を行わせるように判定すればより望ましい。
【0030】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。処理対象の画素が周辺領域において暗点となっていても、周辺領域に別の暗点が存在する場合、処理対象の画素の順位は最下位となるとは限らない。上述の構成によれば、画素値処理動作を除外する順位に幅を持たせているので、データに暗点が多く存在する場合であっても、データ上のノイズは確実に除去される。
【0031】
また、上述の医療用データ処理装置において、判定手段は、(C)処理対象の画素の順位が最上位よりも低い順位で中間の順位よりも高い順位となっている上位参考順位以上となっているか、(D)処理対象の画素の順位が中間の順位よりも低い順位で最下位よりも高い順位となっている下位参考順位以下となっているときは変換動作を行わせるように判定すればより望ましい。
【0032】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。上述の構成によれば、データに輝点・暗点が多く存在する場合であっても、データ上において輝点、暗点として現れているノイズは確実に除去される。
【0033】
また、上述の医療用データ処理装置において、データは、画素が3次元的に配列された3次元データであればより望ましい。
【0034】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。3次元データは、様々な解析画像の基となるデータである。したがって、3次元データに対してノイズ除去処理をいったん施しておけば、後段の処理でノイズ除去処理をせずとも、視認性に優れた画像を提供できるのである。
【0035】
また、上述の医療用データ処理装置において、データは、画素が2次元的に配列された画像データであればより望ましい。
【0036】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。画像解析をする場合において、常に3次元データが取得できるとは限らない。本発明の構成は2次元データしか手に入らない場合であっても2次元データに現れるノイズを確実に除去することができる。
【0037】
また、上述の医療用データ処理装置を搭載した診断装置であって、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出手段とを備えればより望ましい。
【0038】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。すなわち、上述のデータ処理装置を放射線透過により被検体の断層像を取得するタイプの放射線断層撮影装置に適用すれば、撮影時の放射線量が少なくノイズを多く含むデータしか取得できない場合であっても、このノイズを除去することができる。
【0039】
また、上述の医療用データ処理装置を搭載した診断装置であって、被検体から発せられる放射線を検出する検出器リングを備え、ポジトロン放出型断層撮影装置として構成されていればより望ましい。
【0040】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置のより具体的に構成を示すものとなっている。すなわち、上述のデータ処理装置を被検体から放射された放射線を測定することにより断層像を取得するタイプの放射線断層撮影装置に適用すれば、取得される放射線のカウント数が少なくノイズを多く含むデータしか取得できない場合であっても、このノイズを除去することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の構成によれば、データを劣化させずしてノイズを除去することができる医療用データ処理装置が提供できる。すなわち、本発明における画素の変換動作は、処理対象の画素とその周辺の画素とにおける画素値を比較して対象画素の画素値の順位を求め、この順位に応じて行ったり行わなかったりするのである。このように、本発明によればデータ処理を画素の全てについて行わないようにしている。これにより、データが保持する被検体の像を劣化させることなく、データのノイズを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1に係るデータ処理装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る空間データを説明する模式図である。
【図3】実施例1に係る処理データを説明する模式図である。
【図4】実施例1に係るデータ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係るデータ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係るデータ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図7】実施例2に係るX線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図8】実施例2に係るX線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図9】実施例3に係る断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図10】本発明の1変形例に係るデータ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図11】従来構成のデータ処理装置を説明する模式図である。
【図12】従来構成のデータ処理装置を説明する模式図である。
【図13】従来構成のデータ処理装置を説明する模式図である。
【図14】従来構成のデータ処理装置を説明する模式図である。
【実施例1】
【0043】
実施例1に係るデータ処理装置1は、図1に示すように、被検体Mを包含した空間データDa1を入力すると、空間データDa1に含まれるスパイク状のノイズが除去された処理データDa2が出力される構成となっている。空間データDa1とは、各種の断層撮影装置を用いて被検体Mを撮影した時に得られる被検体Mの内部を示す生データである。空間データDa1は、本発明の3次元データに相当する。
【0044】
実施例1に係るデータ処理装置1は、図1に示すように、空間データDa1における処理対象の画素に対して変換動作を行うかどうかを判定する判定部13と、判定部13の判定に従って画素値の変換動作を行う変換部14とを有している。判定部13は、本発明の判定手段に相当し、変換部14は、本発明の変換手段に相当する。
【0045】
空間データDa1は、図2に示す様に、被検体Mを3次元空間上に包含する3次元マトリックスデータとなっている。この空間データDa1は、放射線断層撮影装置により検出されたデータ(例えば輝度)が各ボクセルに配列されているものである。空間データDa1は、放射線断層撮影装置の撮影視野内に被検体Mを導入した状態で取得されたものである。空間データDa1は、直方体の空間内にボクセルが配列されて構成される。放射線断層撮影装置の撮影視野は円柱状であるのに空間データDa1が直方体を表すものとなっているのは、この様にするとデータの保持に都合がよいからである。直方体を表す空間データDa1の内部には、円柱形状となっている放射線断層撮影装置の視野範囲の全域が含まれる。
【0046】
このように、空間データDa1は、放射線断層撮影装置が断層画像を生成する前の段階の3次元再構成データに相当している。
【0047】
処理データDa2は、図3に示すように図2で説明した空間データDa1と同様な3次元マトリックスデータで、空間データDa1にノイズ除去処理を施したものとなっている。処理データDa2は、空間データDa1から図2の網掛けで示したノイズ成分が除去されたものとなっている。この処理データDa2を再構成すると、ノイズを含まない視認性に優れた断層画像が生成できる。
【0048】
変換部14の動作について説明する。変換部14は、空間データDa1を構成するボクセル(画素)の各々について、画素値の置き換えを行う。変換部14の具体的な動作は以下の通りである。図4は、空間データDa1を構成する画素aに対して変換部14が動作している様子を示している。変換部14は画素aを処理対象の画素として認識するとともに処理対象の画素aを含んだ領域Raを認識する。この領域は、処理対象の画素aを中心に縦横高さ方向に3×3×3ボクセルの領域となっている。図4においては領域Raの縦横のみに注目しているので領域Raは9個の画素を含む正方形状となっている。しかし、実際の領域Raは27個の画素を含む立方体形状である。
【0049】
変換部14は、領域Raに属する画素のうち、中間的な画素値を選択し、この画素値を処理対象の画素aの画素値に変換する。そして、変換部14は、この変換動作終了後の画素vを空間データDa1の配列に倣って配列して、処理データDa2を生成する。変換部14は、空間データDa1を構成する画素の各々について同様の処理を行う。そこで変換部14の動作の際には処理対象の画素が変更される度に領域Raもこれに追従して移動することになる。
【0050】
変換部14の変換動作について更に説明する。図5は、画素値が904となっている処理対象の画素に変換部14が動作している様子を示している。変換部14は、領域Raに属する画素を画素値の順に並べたときに中間の順位となっている画素の画素値(図5においては70)を読み取って、処理対象の画素の画素値を個の中間順位に係る画素値に変換することにより処理データDa2を生成する。なお、図5においては、説明の便宜上、明るい方から数えても暗い方から数えても順位が5位(中間順位)となっている画素の画素値を変換部14が読み取る構成となっている。しかし、これは、図5においては比較対象の画素値を9つに限定しているからである。実際は、領域Raには、27個の画素値があるのであるから、変換部14の動作において画素値を読み取る画素の順位は、明るい方から数えても暗い方から数えても13位である。この順位付けは後述の判定部13が行う。
【0051】
この様に変換部14は、空間データDa1を構成する画素値の各々に領域Raを規定するテンプレートフィルタを作用させることにより、空間データDa1にメディアンフィルタ処理を施す処理部となっている。これにより、空間データDa1に含まれるノイズ成分が除去される。
【0052】
本発明の特徴的な構成は、変換部14が空間データDa1を構成する画素の全てにメディアンフィルタ処理をするわけではないことにある。変換部14は、空間データDa1におけるある画素にはメディアンフィルタ処理を行わない。いずれの画素にメディアンフィルタ処理を施すかどうかの判定は判定部13が行う。
【0053】
判定部13は、処理対象の画素に対応する画素群において、画素値の順に画素に順位を付す。これにより、各画素に1位から9位(実際には1位から27位)までの順位が画素値の順に判定部13によって付されることになる。図5の領域Raにおいては、904の画素値が最も明るい画素値なので、この画素が1位となる。
【0054】
判定部13は、処理対象の画素の順位が1位のとき、この画素を変換部14が行う変換動作を行うべきものと判定する。したがって、変換部14は、処理対象の画素の順位が1位のとき、処理対象の画素にメディアンフィルタ処理を施す。
【0055】
処理対象の画素の順位が領域Raに属する各画素と比べて画素値で大きく引き離して1位となっているとすると、処理対象の画素は、ノイズ成分を写し込んでいる可能性が高いことを意味し、領域Raの中で処理対象の画素が際立って明るい点として現れていることになる。この様な輝点は、空間データDa1の中で目立つ存在であり、断層画像におけるスパイク状のノイズの原因となる。変換部14は、この輝点の画素の画素値をその画素の周辺部における中間的な画素値に置き換える。このようにすることで、空間データDa1に現れていた輝点は、消去されることになる。
【0056】
また、判定部13は、処理対象の画素の順位が1位を占めるほど明るいものではないとき(順位が最上位よりも低い順位のとき),この画素を変換部14が行う変換動作から除外するべきものと判定する。したがって、変換部14は、この場合、処理対象の画素にメディアンフィルタ処理を施さないで、処理対象の画素値をそのまま処理データDa2に配列する。すなわち、図6に示す様に処理対象の画素が3位に順位付けされたときは、変換部14は動作しない。
【0057】
判定部13が変換部14の動作の是非を判定させるようにしたことについての意味について説明する。図6におけるBが示す部分は、画素値が200台となっており、領域Raの中で明るい方の画素で構成されている。一方、Dが示す部分は、画素値が100に満たず、領域Raの中で暗い方の画素で構成されているものである。
【0058】
図6において、画素値が223となっている画素は順位が3位となっており、その画素は、周辺の領域Raの中で目立っているものとはいえない。つまり、この画素は、領域Raの中で明るい点として現れることがなく、この画素の画素値を変換しても空間データDa1のノイズ除去の効果はないのである。
【0059】
しかし、仮に、変換部14が空間データDa1の全域について画素値の変換をするようにすると、図6においては、223となっている画素値が、中間順位に係る画素値(70)に変換されることになる。つまり、この場合、明部分Bに属する画素の画素値が、暗部分Dに属する画素の画素値に置き換えられてしまう。このように明部分Bに係る画素の画素値が暗部分Dに係る画素の画素値に変換されると、明部分B同士で画素値が変換される場合と比べて、画素値が大きく減少するように変換されることになる。結果として、図6における処理対象の画素は、ノイズの原因でもないのに大きく減少させられることになる。
【0060】
ノイズの原因でない画素にまで大きな画素値の変換をしてしまうと、生成された処理データDa2は、空間データDa1の情報を十分に保持していない劣化したものとなってしまう。実施例1の構成は、この様な動作を防ぐ目的で、空間データDa1におけるノイズ成分でない画素に対しては、画素値の変換動作をしないようにしている。
【0061】
空間データDa1に属する画素の各々がノイズ成分となっているかは、画素に付される順位を元に決められる。すなわち、画素に付される順位が1位のときは、この画素は空間データDa1において際立って明るく現れているノイズ成分であるものとし、画素に付される順位が最上位よりも低い順位のとき、この画素は空間データDa1において目立たないものであり、被検体Mを表した画素であるものとしている。
【0062】
判別部13の実際の動作について説明する。判定部13は、空間データDa1を基に処理対象の画素について画素値の変換動作をするかどうかを表した判定データHと、領域Ra内の画素の位置とその画素の順位が関連づけられたテーブルとを変換部14に送出し、変換部14は、これに基づいて処理データDa2を生成する。
【0063】
処理データDa2は、断層画像生成部17に送出される。断層画像生成部17は、3次元マトリックスデータとなっている処理データDa2を用いて断層画像を生成する。断層画像は、被検体Mの断層像を写し込んだ画像である。断層画像生成部17は、処理データDa2の全体に輝度調節などのデータ処理をして、被検体Mをある平面で裁断したときの断層像が写り込んだ断層画像を生成する。
【0064】
操作卓26は、術者(術者)の指示を入力させる目的で設けられている。記憶部28は、判定部13,変換部14が参照するパラメータ等の動作に関する情報の一切を記憶する。
【0065】
主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各部13,14を実現している。
【0066】
以上のように、実施例の構成によれば、空間データDa1を劣化させずしてノイズを除去することができる医療用データ処理装置1が提供できる。すなわち、実施例における画素の変換動作は、処理対象の画素とその周辺の画素とにおける画素値を比較して対象画素の画素値の順位を求め、この順位に応じて行ったり行わなかったりするのである。このように、実施例によればデータ処理を画素の全てについて行わないようにしている。これにより、空間データDa1が保持する被検体Mの像を劣化させることなく、空間データDa1のノイズを除去することができる。
【0067】
具体的には、実施例1の構成においては処理対象の画素が最上位(1位)のときは変換動作を行わせるようにし、それ以外のときは変換動作を行わせないようにしている。これにより空間データDa1上のノイズを確実に除去することができる。処理対象の画素の画素値が領域Raに属する各画素の画素値と大きくかけ離れていれば、処理対象の画素の順位は領域Ra中で1位となる可能性が高く、処理対象の画素がノイズ成分を写し込んでいる可能性も高い。上述の構成は、この様なノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い輝点のみにデータ処理を施すことにより、ノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い輝点の画素値のみを領域Ra中で目立たない画素値に変更する。これにより空間データDa1上のノイズは確実に除去されるとともに、画素値の変換動作が極力少ないものとなるので、画像の劣化が抑制される。
【0068】
また、空間データDa1は、様々な解析画像の基となる空間データDa1である。したがって、空間データDa1に対してノイズ除去処理をいったん施しておけば、後段の処理でノイズ除去処理をせずとも、視認性に優れた画像を提供できるのである。
【実施例2】
【0069】
次に、実施例2に係る放射線断層撮影装置について説明する。実施例2における放射線断層撮影装置は、実施例1におけるデータ処理装置をCT装置に組み込んだものとなっている。実施例2におけるX線は本発明における放射線に相当し、FPDはフラットパネル・ディテクタの略である。
【0070】
まず、実施例2に係るX線断層撮影装置について説明する。X線断層撮影装置20は、図7に示す様に被検体Mを載置する天板2と、天板2の伸びる方向に貫通した貫通孔を有するガントリ10とを備えている。天板2は、ガントリ10の貫通孔に挿通されており、天板2を支持する支持台2aに対して天板2の伸びる方向に進退自在に移動することができる。この天板2の移動は天板移動機構15が行う。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御するものである。
【0071】
ガントリ10の内部には、X線を照射するX線管3と、X線を検出するFPD4とが設けられている。X線管3から照射されたX線は、ガントリの貫通孔を横切るように通過して、FPD4に到達する。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の検出手段に相当する。
【0072】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ透視画像P0が生成される。空間データ生成部12は、画像生成部11で生成された透視画像P0を基に、X線の通過の易さを表した輝度が3次元的に配列された空間データDa1を生成する。データ処理部18は、実施例1における判定部13,変換部14,および断層画像生成部17をまとめて表しているものであり、本発明の中核である。データ処理部18に空間データDa1を入力すると断層画像Pが出力される。
【0073】
X線管3およびFPD4の回転について説明する。X線管3およびFPD4は、回転機構7により、天板2の伸びる方向に伸びた中心軸を中心に一体的に回転される。回転制御部8は回転機構7を制御するものである。
【0074】
表示部25は、X線撮影により取得された断層画像Pを表示する目的で設けられている。操作卓26は、術者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8,16および各部11,12,18を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、撮影に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線断層撮影装置20の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0075】
<X線断層撮影装置の動作>
次に、X線断層撮影装置20の動作について説明する。実施例2に係るX線断層撮影装置20を用いて被検体の断層画像Pを取得するには、図8に示すように、まず、被検体Mが天板2に載置されて(被検体載置ステップS1),透視画像P0の撮影が開始される(撮影開始ステップS2)。そして、断層画像Pが生成される(解析画像生成ステップS3)。以降、これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0076】
<被検体載置ステップS1,撮影開始ステップS2>
撮影に先立って、被検体Mが天板2に載置される。術者が操作卓26を通じてX線断層撮影装置20に断層撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10の貫通孔の内部に導入される(図7参照)。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている照射時間・管電流・管電圧に従い、X線を間欠的に照射する。その間に回転機構7は、X線管3およびFPD4を回転させる。FPD4は、X線管3が照射したX線のうち被検体Mを通過してきたX線を検出し、このときの検出データを画像生成部11に送出する。
【0077】
画像生成部11は、FPD4から送出された検出データを画像化して、X線の強さがマッピングされた透視画像P0を生成する。FPD4は、X線管3がX線を照射する度に検出データを画像生成部11に送出するので、画像生成部11は、複数枚の透視画像P0を生成することになる。X線管3およびFPD4が回転移動されながら複数枚の透視画像P0が取得されるのであるから、透視画像P0の各々には、被検体Mの透視像が透視する方向を変えながら写り込んでいることになる。X線管3およびFPD4が撮影開始から一回転したところで、X線管3はX線の照射を終了する。
【0078】
撮影開始後の天板2の移動について説明する。X線断層撮影装置20は、一度の撮影で被検体Mの一部分しか撮影できない。X線断層撮影装置20の撮影視野におけるZ方向の幅が被検体MのZ方向の幅よりも小さいからである。そこで、実施例2の構成によれば、天板2の摺動とX線管3・FPD4が一回転して終了する撮影とを交互に繰り返し行うことで、被検体Mの全体像について断層画像を取得するようにしている。
【0079】
<解析画像生成ステップS3>
透視画像P0は、空間データ生成部12に送出される。空間データ生成部12では、方向を変えながら撮影されることにより被検体Mの立体的な構造に関する情報を有している一連の透視画像P0を再構成してX線の通過の易さを表した輝度が3次元的に配列された空間データDa1を生成する。この空間データDa1は、データ処理部18に送出され、各種画像処理が行われて断層画像Pが生成される。この様にして生成された断層画像Pが表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0080】
以上のように実施例1のデータ処理装置1を放射線透過により被検体Mの断層像を取得するタイプの放射線断層撮影装置に適用すれば、撮影時の放射線量が少なくノイズを多く含む空間データDa1しか取得できない場合であっても、このノイズを除去することができる。
【実施例3】
【0081】
続いて実施例3に係る放射線断層撮影装置30について説明する。実施例3に係る放射線断層撮影装置30は、実施例1におけるデータ処理装置をPET装置に組み込んだものとなっている。
【0082】
放射線断層撮影装置30は、図9に示す様に、ガントリ10aを有している。このガントリ10aは、Z方向に伸びた貫通孔を有しており、天板2が挿通されている。
【0083】
ガントリ10aの内部にはガントリ10aの形状にならって開口を有し、リング状となっている検出器リング32が設けられている。この検出器リング32は、γ線を検出可能な検出器がリング状に配列されて構成されている。
【0084】
同時計数部33は、検出器リング32から出力された検出データに同時計数処理を施す目的で設けられている。この同時計数部33により検出器リング32の異なる部分に同時に入射した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とが特定される。同時計数部33は、同時計数の結果を空間データ生成部34に出力する。空間データ生成部34は、同時計数部33が特定した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とを基に、消滅γ線対の発生位置を算出し、消滅γ線対の発生強度が3次元的にマッピングされた空間データDa1を生成する。データ処理部18は、実施例1における判定部13,変換部14,および断層画像生成部17をまとめて表しているものであり、本発明の中核である。データ処理部18に空間データDa1を入力すると断層画像Pが出力される。
【0085】
放射線断層撮影装置30を用いて断層画像Pを生成するには、まず、被検体Mに陽電子放出型の放射性薬剤が注射される。放射性薬剤は、被検体Mの病巣などの特定の部分に集中する性質を有している。放射性薬剤は陽電子を放出し、この陽電子は180度反対方向に飛び去る消滅γ線対を発生させる。したがって、被検体Mからは、消滅γ線対が放射されることになる。放射性薬剤の分布は被検体内で異なっているのであるから、消滅γ線対の発生の頻度は被検体Mの部分によって異なっていることになる。
【0086】
放射性薬剤の注射から十分に時間が経過した後、被検体Mは天板2に載置される。術者が操作卓26を通じて放射線断層撮影装置30にPET画像撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10aの貫通孔の内部に導入される(図9参照)。この時点から検出器リング32は、消滅γ線対の検出を開始し、空間データ生成部34が消滅γ線対の発生強度が3次元的にマッピングされた空間データDa1を生成する。なお、撮影の際に、放射線断層撮影装置30のZ方向における視野範囲が被検体Mの全身をカバーしきれないときは、天板2をZ方向に摺動させながら空間データDa1の生成をするようにしてもよい。
【0087】
この空間データDa1は、データ処理部18に送出され、処理データDa2に変換された後、断層画像Pが生成される。従って、データ処理部18では、画像処理を被検体Mごとに独立して施すことにより断層画像Pを生成するのである。この様にして生成された断層画像Pが表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0088】
以上のように、上述のデータ処理装置1を被検体Mから放射された放射線を測定することにより断層像を取得するタイプの放射線断層撮影装置に適用すれば、取得される放射線のカウント数が少なくノイズを多く含む空間データDa1しか取得できない場合であっても、このノイズを除去することができる。PET装置で撮影をしようとすると、計数できる消滅γ線対に制限があるので、生成される断層画像は、暗い部分と明るい部分が二極化した画像になりやすい。従って本発明のデータ処理装置1は、特にPET画像のノイズ除去に優れている。
【0089】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0090】
(1)実施例1における判定部13は、処理対象の画素の順位が1位であるかそれ以外であるかによって異なる動作をするようになっていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、処理対象の画素の順位が1位以外であっても、変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。例えば図10の一列目における符号Fに示すように、処理対象の画素の順位が1位または2位であるとき、判定部13は変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。一方、図10の一列目における符号Gに示す位置に処理対象の画素が配する場合、判定部13は変換部14の変換動作を行わせることになる。図10一列目では処理対象の画素の画素値は740となっているので、順位は2位となっている。従って、処理対象の画素の画素値は、変換部14によって中間順位に係る画素値(70)に変えられる。このように、判定部13は、処理対象の画素の順位が最上位よりも低い順位で中間順位よりも高い順位となっている上位参考順位以上となっているときは変換動作を行わせるように判定するように構成してもよい。図10一列目における上位参考順位は、2位である。上位参考順位は適宜変更することができる。
【0091】
処理対象の画素が領域Raにおいて輝点となっていても、領域Raに別の輝点が存在する場合、処理対象の画素の順位は1位となるとは限らない。上述の構成によれば、画素値処理動作を除外する順位に幅を持たせているので、空間データDa1に輝点が多く存在する場合であっても、空間データDa1上のノイズは確実に除去される。
【0092】
(2)実施例1における判定部13は、処理対象の画素の順位が1位であるかそれ以外であるかによって異なる動作をするようになっていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、判定部13が処理対象の画素の順位が最下位の場合に変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。
【0093】
この様に、処理対象の画素が最下位のときは変換動作を行わせるようにし、それ以外のときは変換動作を行わせないようにすれば、空間データDa1上のノイズを確実に除去することができる。処理対象の画素の画素値が領域Raに属する各画素の画素値と大きくかけ離れていれば、処理対象の画素の順位は領域Ra中で1位となっていない場合、最下位となっている可能性が高く、処理対象の画素がノイズ成分を写し込んでいる可能性も高い。上述の構成は、この様なノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い輝点のみにデータ処理を施すことにより、ノイズ成分を写し込んでいる可能性の高い暗点の画素値のみを周辺領域中で目立たない画素値に変更する。これにより空間データDa1上のノイズは確実に除去されるとともに、画素値の変換動作が極力少ないものとなるので、画像の劣化が抑制される。
【0094】
(3)上述の変形例における判定部13は、処理対象の画素の順位が最下位であるかそれ以外であるかによって異なる動作をするようになっていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、処理対象の画素の順位が最下位以外であっても、変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。例えば図10の二列目における符号Sに示すように、処理対象の画素の順位が最下位または8位(最下位よりも1つだけ高い順位)であるとき、判定部13は変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。一方、図10の二列目における符号Tに示す位置に処理対象の画素が配する場合、判定部13は変換部14の変換動作を行わせることになる。図10二列目では処理対象の画素の画素値は36となっているので、順位は8位となっている。従って、処理対象の画素の画素値は、変換部14によって中間順位に係る画素値(430)に変えられる。このように、判定部13は、処理対象の画素の順位が中間の順位よりも低い順位で最下位よりも高い順位となっている下位参考順位以下となっているときは変換動作を行わせるように判定するように構成してもよい。図10二列目における下位参考順位は、8位である。下位参考順位は適宜変更することができる。
【0095】
処理対象の画素が領域Raにおいて暗点となっていても、領域Raに別の暗点が存在する場合、処理対象の画素の順位は最下位となるとは限らない。上述の構成によれば、画素値処理動作を除外する順位に幅を持たせているので、空間データDa1に暗点が多く存在する場合であっても、空間データDa1上のノイズは確実に除去される。
【0096】
(4)実施例1における判定部13は、処理対象の画素の順位が1位であるかそれ以外であるかによって異なる動作をするようになっていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、判定部13が処理対象の画素の順位が最上位または最下位の場合に変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。この場合、処理対象の画素が図10の三列目の符号F,Sが示す順位に位置するときは、変換部14の変換動作は行われず、符号F,Sが示す順位に位置しないときは、変換部14の変換動作が行われることになる。
【0097】
(5)上述の変形例における判定部13は、処理対象の画素の順位が最上位または最下位であるかそれ以外であるかによって異なる動作をするようになっていたが、本発明はこの構成に限られない。すなわち、処理対象の画素の順位が最上位または最下位以外であっても、変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。例えば図10の四列目における符号F,Sに示すように、処理対象の画素の順位が最上位、2位、最下位、または8位(最下位よりも1つだけ高い順位)であるとき、判定部13は変換部14の変換動作を行わせないようにしてもよい。このように、判定部13は、処理対象の画素の順位が最上位よりも低い順位で中間の順位よりも高い順位となっている上位参考順位以上となっているか、処理対象の画素の順位が中間の順位よりも低い順位で最下位よりも高い順位となっている下位参考順位以下となっているときは変換動作を行わせるように判定するように構成してもよい。図10四列目における上位参考順位は、2位であり、下位参考順位は、8位である。上位参考順位および下位参考順位は適宜変更することができる。
【0098】
(6)実施例1の構成は3次元マトリックスデータに作用するものであったが、画素が2次元的に配列された画像データに作用させるようにしてもよい。このとき、図4を用いて説明した領域Raは、2次元的な矩形領域となる。画像解析をする場合において、常に空間データDa1が取得できるとは限らない。実施例の構成は2次元データしか手に入らない場合であっても2次元データに現れるノイズを確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0099】
Da1 空間データ(3次元データ)
3 X線管(放射線源)
4 FPD(検出手段)
13 判定部(判定手段)
14 変換部(変換手段)
32 検出器リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素が配列されることにより構成されるデータに処理を施すことにより、データに現れるノイズを除去する医療用データ処理装置であって、
処理対象の画素を含んだ領域に属する画素群において画素値の順に画素に順位を付して、処理対象の画素の順位に応じて画素値の変換動作から除外するかどうかを判定する判定手段と、
処理対象の画素の画素値を前記判定手段によって中間の順位が付された画素の画素値に変換する変換手段とを備え、
前記変換手段はデータを構成する画素の各々について動作する際に前記判定手段が除外した画素については変換動作を行わないことを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記判定手段は、(A)処理対象の画素が最上位のときは変換動作を行わせるように判定することを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記判定手段は、(B)処理対象の画素が最下位のときは変換動作を行わせるように判定することを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記判定手段は、(A,B)処理対象の画素が最上位または最下位のときは変換動作を行わせるように判定することを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記判定手段は、(C)処理対象の画素の順位が最上位よりも低い順位で中間の順位よりも高い順位となっている上位参考順位以上となっているときは変換動作を行わせるように判定することを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記判定手段は、(D)処理対象の画素の順位が中間の順位よりも低い順位で最下位よりも高い順位となっている下位参考順位以下となっているときは変換動作を行わせるように判定することを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記判定手段は、(C)処理対象の画素の順位が最上位よりも低い順位で中間の順位よりも高い順位となっている上位参考順位以上となっているか、
(D)処理対象の画素の順位が中間の順位よりも低い順位で最下位よりも高い順位となっている下位参考順位以下となっているときは変換動作を行わせるように判定することを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の医療用データ処理装置において、
データは、画素が3次元的に配列された3次元データであることを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の医療用データ処理装置において、
データは、画素が2次元的に配列された画像データであることを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の医療用データ処理装置を搭載した診断装置であって、
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出手段とを備えることを特徴とする診断装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の医療用データ処理装置を搭載した診断装置であって、
被検体から発せられる放射線を検出する検出器リングを備え、
ポジトロン放出型断層撮影装置として構成されていることを特徴とする診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−165951(P2012−165951A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30822(P2011−30822)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】