説明

医療用プローブ、および医療用観察システム

【課題】走査型医療用プローブにおける走査範囲をオフセットすることで、医療用プローブの画角を拡げることが可能な医療用プローブ、および該医療用プローブを備えた医療用観察システムを提供することを目的とする。
【解決手段】光源から照射された複数種類の波長の光を利用して対象物を観察するための医療用プローブであって、光源から入射された光を射出して、前記対象物上を走査する走査手段と、走査手段によって走査される対象物の反射光を、所定の光検出手段に出力する出力手段と、走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせる走査範囲オフセット手段とを有することを特徴とする医療用プローブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物を観察するための医療用プローブおよび該医療用プローブを有する医療用観察システムに関し、詳しくは、極細径の光ファイバの先端を共振させてパルス光により対象物を走査し画像情報を取得する走査型医療用プローブ、および該走査型医療用プローブを有する医療用観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師が患者の体腔内を観察するときに使用する装置として、電子スコープが一般的に知られている。電子スコープを使用する医師は、電子スコープの挿入部を体腔内に挿入し、挿入部の先端に備えられた先端部を観察対象近傍に導く。そして、先端部に内蔵されたCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子により体腔内を撮影するため、電子スコープやビデオプロセッサの操作部を必要に応じて操作する。医師は、これらの操作を行った結果得られる体腔内の映像をモニタ上で観察して検査や施術等を行う。
【0003】
このように電子スコープは、患者の体内に挿入されて使用される。したがって、電子スコープには、患者の負担を軽減するためにより一層の細径化が望まれる。そして、電子スコープを細径化させるためには、各種内蔵部品の配置等を工夫する以外に各種内蔵部品自体を小型化させることが望まれる。なお、電子スコープには、固体撮像素子以外に、固体撮像素子の周辺回路やシールド部材、絶縁部材、対物レンズ、照明レンズ、レンズ保持枠、体内への照明光を供給するための光ファイババンドル等の部品が内蔵されている。
【0004】
電子スコープの内蔵部品のなかでも固体撮像素子や光ファイババンドルは、外形寸法が大きく、また、対物レンズや照明レンズ等の他の部品の設計上可能な最小寸法を規定する。したがって、電子スコープを細径化させるためには、小型な固体撮像素子や細径な光ファイババンドルを搭載することが望まれる。しかしながら、これらの部品を安易に小型化や細径化させることはできない。何故ならば、例えば固体撮像素子を小型化させた場合には、解像度やダイナミックレンジ、SN比等が低下するといった弊害が生じるからである。また、光ファイババンドルを細径化、すなわち光ファイバの本数を削減した場合には、体腔内を照明するのに十分な光量を導光できなくなるからである。
【0005】
そこで、固体撮像素子等を構成要素から排除することにより、電子スコープに比べて外径を細く構成することができる医療用プローブが提案されている。
【0006】
かかる医療用プローブの一例は、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の医療用プローブは、単一の光ファイバの先端を共振させて所定の走査光により対象物を所定の走査パターンで走査する。そして、対象物からの反射光を検出して光電変換しビデオプロセッサに順次出力する。ビデオプロセッサは、光電変換された信号を処理して画像化しモニタに出力する。医師は、このようにして得られた体腔内の映像を、電子スコープを使用した場合と同様にモニタ上で観察して検査や施術等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−501279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の医療用プローブを用いて体腔内の観察を行なう場合は、術者(医師)が、モニタに表示される画像を観察しながら、プローブの先端部を観察したい部位へと導くように手動で医療用プローブを操作する。そして、目的の部位がモニタに表示されると、プローブの先端の位置を動かさないようにして、目的の部位の詳細な観察が行なわれる。しかしながら、医療用プローブは術者によって手動で操作されているため、操作のぶれによって、目的の部位がモニタの表示領域を逸脱してしまう場合がある。また、観察対象は生体であるため、常に静止しているわけではなく、変動することがある。そのため、目的の部位の観察を行なっている途中で、生体の変動により観察対象自体が移動したり、プローブの先端が動かされてしまうことにより、モニタに表示された観察対象(例えば病変部など)が観察しにくい位置に移動したり、モニタの表示領域から逸脱してしまうことがあった。
【0009】
このような場合は、再度医療用プローブを手動で操作して、観察対象がモニタ上の見やすい位置に表示されるようにプローブ先端部の位置を調整する必要がある。しかしながら、観察対象が変動する度にプローブを操作するのは大変手間であり、また体腔内に位置するプローブの先端を、生体の変動に合わせて体の外から微調整するのは大変困難であった。さらに、このような調整のために時間がかかってしまい、結果として観察時間が長引いて患者への負担を増やしてしまうという恐れもあった。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、走査型医療用プローブにおける走査範囲をオフセットすることで、医療用プローブの画角を拡げることが可能な医療用プローブ、および該医療用プローブを備えた医療用観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するめ、本発明により、光源から入射された光を射出して、対象物上を走査する走査手段と、走査手段によって走査される対象物の反射光を、所定の光検出手段に出力する出力手段と、走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせる走査範囲オフセット手段とを有する医療用プローブが提供される。また、上記走査手段は、入射端が前記光源に光学的に接続されたシングルモードファイバからなる導光手段と、導光手段の射出端近傍を振動させる振動手段とから構成される。
【0012】
このような構成により、走査手段の走査範囲がオフセットされ、医療用プローブの画角を拡げることが可能となる。これにより、医療用プローブを手動で操作しなくても、取得できる画像の範囲が広がるため、操作のぶれや観察対象の変動が生じた場合でも引き続き画像を取得することが可能となる。
【0013】
また、上記走査範囲オフセット手段は、導光手段の射出端近傍に取り付けられた磁石と、磁石を引き付けるための電極とからなり、電極に電圧が印加されて、磁石が電極に引き付けられることにより、導光手段の射出端が変位される構成としても良い。このような構成により、導光手段の射出端位置を変位させることで、走査手段の走査範囲がオフセットされ、取得される画像の範囲をオフセットさせることができる。
【0014】
さらに、上記電極は複数備えられており、該複数の電極にはそれぞれ異なる電圧が印加される構成としても良い。このような構成により、各電極へ印加する電圧を調整することにより、所望の方向へ走査範囲の中心をオフセットさせることができる。
【0015】
走査範囲オフセット手段は、振動手段の中心軸を移動させるための圧電体からなり、圧電体は、電圧が印加されることにより変形して、振動手段の中心軸を変位させる構成としても良い。このような構成により、振動手段の中心軸を変位させることで、走査手段の走査範囲がオフセットされ、取得される画像の範囲もオフセットさせることができる。また、導光手段の走査の支点となる振動手段自体を動かすため、導光手段の走査に影響を与えずに、走査範囲をオフセットさせることができる。
【0016】
上記圧電体は、振動手段を二方向から支持し、圧電体の変形により、振動手段の中心軸が該二方向に変位されるよう構成しても良い。このような構成により、走査手段による走査範囲を所定の方向へオフセットさせることが可能となる。
【0017】
また、上記圧電体は、電極によって分割された複数の部分を有し、該複数の部分は、それぞれに個別に変形するよう構成されても良い。また、上記圧電体は、振動手段の外周を囲むように振動手段を支持し、複数の部分をそれぞれに個別に変形させることにより、振動手段の中心軸を所定の方向に変位させるよう構成しても良い。このような構成により、各複数の部分へ印加する電圧を調整することにより、所望の方向へ走査範囲の中心をオフセットさせることができる。
【0018】
また、本発明により、上記いずれかの医療用プローブを有する医療用観察システムが提供される。該医療用観察システムは、上記いずれかの医療用プローブと、光源と、反射光を受光して信号を検出する光検出手段と、検出された信号に基づき画像情報を生成する画像情報生成手段と、生成された画像情報に基づき映像を生成し表示する映像表示手段と、走査範囲オフセット手段を制御するオフセット制御手段とを有することを特徴とする。
【0019】
また、上記オフセット制御手段は、前記画像情報生成手段によって生成された画像情報に基づいて、前記走査範囲オフセット手段を制御するものであっても良い。具体的には、オフセット制御手段は、画像情報における特徴部を基準点として記憶する基準点メモリと、以降に生成された画像情報における特徴部の位置と、基準点メモリに記憶された基準点の位置との変動量を算出する変動量算出手段とを有する。そして、変動量算出手段により算出された変動量に対応して走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせるよう走査範囲オフセット手段を制御するよう構成される。このような構成により、画像情報の特徴部を自動的に追従するよう走査範囲オフセット手段を制御することができる。
【0020】
また、上記医療用観察システムは、更に、操作者による入力を可能にする入力手段を有し、オフセット制御手段は、入力手段によって入力された内容に基づき、走査範囲オフセット手段を制御するものであっても良い。具体的には、入力手段は、タッチパネルで構成され、オフセット制御手段は、操作者により操作された前記タッチパネル上のポインタの始点および終点を記憶するするポインタメモリと、ポインタメモリに記憶されるポインタの始点から終点への変動量を算出する変動量算出手段とを有する。そして、変動量算出手段により算出された変動量に対応して、走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせるよう前記走査範囲オフセット手段を制御するよう構成される。このような構成により、術者は、タッチパネル上で所望の変動量をポインタ操作するだけで、走査範囲オフセット手段による、走査範囲のオフセットを制御することができる。
【0021】
さらに、上記変動量算出手段は、操作者によって操作されたタッチパネル上のポインタから映像表示手段の中心位置への変動量を算出するよう構成しても良い。このような構成により、術者は、簡単なタッチパネル操作によって、目的の画像をモニタの中心に表示させることができる。
【0022】
また、上記オフセット制御手段は、更に、変動量算出手段により算出された変動量を、走査範囲オフセット手段に印加する電圧値へと変換する電圧変換手段を有しても良い。
【0023】
さらに、上記オフセット制御手段は、変動量が前記走査手段の可動領域を超える場合は、映像表示手段に矢印を表示させるよう構成しても良い。このような構成により、術者によって医療用プローブが操作される際に、どの方向へ動かせばよいかを術者に通知することができる。これにより、術者が病変部を探すために医療用プローブを操作する時間を短縮することができる。
【0024】
また、本発明により、光源から入射された光を射出して、対象物上を走査する走査手段と、走査手段によって走査される対象物の反射光を、所定の光検出手段に出力する出力手段と、走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせる走査範囲オフセット手段と、を有するカプセル内視鏡が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の医療用プローブ、および医療用観察システムによれば、操作ぶれや生体の変動により病変部の画像がモニタ上を移動した場合でも、医療用プローブを手動で操作することなく、医療用プローブの走査範囲の中心をオフセットさせることにより、容易に病変部の画像をモニタの適切な位置に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態の走査型医療用プローブの先端部の内部構成を模式的に示す模式図である。
【図2】本発明のプロセッサおよびモニタの構成を示すブロック図である。
【図3】観察対象上に形成されるスポットを説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態のDSPによる画素アドレスの変換処理の具体例を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の走査型医療用プローブにおける走査範囲のオフセットを模式的に示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のオフセット制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のオフセット制御処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態のオフセット制御処理におけるモニタの表示例および変換テーブルを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の走査型医療用プローブの先端部の内部構成を模式的に示す模式図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の(a)走査型医療用プローブの先端部の内部構成および(b)圧電体の構成を模式的に示す模式図である。
【図11】本発明の第4の実施形態のオフセット制御部の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施形態のオフセット制御処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施形態のオフセット制御処理におけるモニタの表示例および変換テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における走査型医療用プローブを有する医療用観察システムについて説明する。
【0028】
図1は、第1の実施形態の走査型医療用プローブ100における先端部130近傍の内部構成を模式的に示す図である。また、図2は、走査型医療用プローブ100に接続されるプロセッサ200およびモニタ300の構成を示すブロック図である。なお、図2においては、走査型医療用プローブ100とプロセッサ200との接続関係等を明確にするため、走査型医療用プローブ100の一部の構成も模式的に示している。また、モニタ300は周知の構成を有した受像装置であるため、図2においてモニタ300の詳細な構成は図示省略している。これらの走査型医療用プローブ100、プロセッサ200、およびモニタ300によって、本実施形態の医療用観察システムが構成される。
【0029】
走査型医療用プローブ100は、術者によって体内に挿入され、体腔内の画像を取得するための体腔内観察用のプローブである。走査型医療用プローブ100は、プロセッサ200から供給される照明光を体腔内まで伝送するシングルモードファイバ112(以下、「SMF112」という)を備え、SMF112の先端を共振させた状態で照明光を射出することにより、対象物を所定の走査パターンで走査する。そして、走査型医療用プローブ100の外周に備えられた受光用ファイバ148にて、対象物からの反射光を受光してプロセッサ200へ伝送する。
【0030】
プロセッサ200は、走査型医療用プローブ100を駆動制御するとともに走査型医療用プローブ100により取得される観察光(反射光)に基づき画像信号を生成する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内に走査型医療用プローブ100を通じて照明光を照射する光源装置とを内蔵した一体型のプロセッサである。なお、別の実施形態では信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0031】
図2に示されるように、走査型医療用プローブ100は、基端部に光学的コネクタ部110および電気的コネクタ部120を有している。また、プロセッサ200は、光学的コネクタ部210および電気的コネクタ部220を有している。光学的コネクタ部110が光学的コネクタ部210に差し込まれることにより、走査型医療用プローブ100とプロセッサ200が光学的に接続される。同じく、電気的コネクタ部120が電気的コネクタ部220に差し込まれることにより、走査型医療用プローブ100とプロセッサ200が電気的に接続される。また、プロセッサ200とモニタ300は、所定のケーブルを介して電気的に接続される。
【0032】
このように走査型医療用プローブ100、プロセッサ200、およびモニタ300がそれぞれ接続されてプロセッサ200およびモニタ300の電源が投入されると、術者は、医療用観察システムを使用して患者の体腔内を検査、施術等できるようになる。具体的には、術者は、走査型医療用プローブ100の挿入部を体腔内に挿入して先端130を観察対象近傍に導く。そして、プロセッサ200の操作部(不図示)を操作する。術者は、このような操作を行った結果得られる体腔内の映像をモニタ300上で観察して検査や施術等を行う。
【0033】
なお、本実施形態においては、体腔内を観察するために走査型医療用プローブ100単体が体腔内に直接挿入される。別の実施形態においては、例えば先端130を観察対象近傍にスムーズに導くために挿入部にガイドワイヤ等を添えて挿入するようにしてもよい。また、例えば電子スコープ等が有する鉗子チャンネルに挿入部を挿入し通して先端部130を観察対象近傍に近接させるようにしてもよい。
【0034】
次に、走査型医療用プローブ100およびプロセッサ200の具体的な構成を説明しつつ、本実施形態の医療用観察システムにおいて体腔内の映像がモニタ300に表示されるまでの一連の流れを説明する。かかる一連の流れは、
(1)観察対象を走査して観察光を取得する処理
(2)観察光に基づき画像を生成し表示する処理
に大別される。
【0035】
まず、「(1)観察対象を走査して観察光を取得する処理」について説明する。プロセッサ200は、観察対象を走査するための光源としてRGBの各波長に対応した光を照射するレーザ光源230R、230G、230Bを有している。RGBの各波長に対応する光源が備えられる理由は、カラー画像に対応するためである。したがって、光源は、例えば広帯域であるスーパーコンティニューム光等を発振する単一の白色ファイバレーザとしてもよい。また、光源は、レーザ光源に限らず例えばLED(Light Emitting Diode)等の他の形態の光源としてもよい。
【0036】
プロセッサ200は、該プロセッサ200の各回路の信号処理タイミングを統括的に制御するタイミングコントローラ240を有している。タイミングコントローラ240は、ドライバ232R、232G、232Bの各ドライバ回路に同一の変調信号を同時に出力する。ドライバ232R、232G、232Bはそれぞれ、入力された変調信号に基づきレーザ光源230R、230G、230Bを駆動する。これにより、レーザ光源230R、230G、230Bはそれぞれ、R、G、Bの各波長に対応するパルス光(以下、「Rパルス光」、「Gパルス光」、「Bパルス光」と記す。)を同期したタイミングで発振する。尚、レーザ光源230R、230G、および230Bからの供給される光はパルス光に限定されるものではなく、連続光であっても良い。
【0037】
各レーザ光源から発振されたRパルス光、Gパルス光、Bパルス光は、RGB結合器234に入射される。RGB結合器234は、ダイクロイックミラー等によりRパルス光、Gパルス光、Bパルス光を位相が揃った状態で結合する。(図2においてRGB結合器234内を進行するRGBの各光の光路長が異なるように見えるが、実際には、各光の光路長は同一である)。RGB結合器234は、結合されたパルス光(以下、「カラーパルス光」と記す。)をカップリングレンズ234aにより収束して射出する。なお、RGB結合器234は、ダイクロイックミラーを使用した光結合器でなく、光ファイバ結合された各レーザ光源を光コンバイナに接続した構成としてもよい。
【0038】
なお、光源が単一の白色ファイバレーザである場合には、各色のパルス光を同期させるといったタイミング制御が不要となる。そのため、レーザ光源周辺の回路構成等を簡素化できるメリットがある。また、既に結合された状態のパルス光が発振されるため、RGB結合器234が不要になるメリットもある。
【0039】
カップリングレンズ234aから射出されたカラーパルス光は、走査型医療用プローブ100が有するSMF112の入射端112aに入射される。SMF112は、光学的コネクタ部110から先端部130に亘って、走査型医療用プローブ100のシース145に収容されている。入射端112aに入射されたカラーパルス光は、SMF112内部を、全反射を繰り返すことにより伝送される。伝送されたカラーパルス光は、先端部130内部に配置されたSMF112の射出端112bから射出される。
【0040】
シース145は、可撓性を有する保護チューブである。シース145は、先端部130から光学的コネクタ部110にまで延びた形状を有し、走査型医療用プローブ100が有する各種内蔵部品を保護している。シース145の外径は、走査型医療用プローブ100が固体撮像素子等を有しない構成であるが故、電子スコープの外径に比べて格段に細い。そのため、走査型医療用プローブ100は、電子スコープに比べてより一層の低浸襲性が達成されている。また、図1に示すように、走査型医療用プローブ100の先端部130におけるシース145の内側には、ハウジングチューブ105が設けられている。ハウジングチューブ105は、ステンレスなどの金属で形成される円筒上の筒材であり、後述する対物光学系140および支持体134の固定に用いられる他、先端部130近傍に配置される部品を保護する役割を備えている。
【0041】
SMF112には、圧電素子等からなるアクチュエータ136が取り付けられている。具体的には、円筒型のアクチュエータ136の長軸方向に設けられた貫通孔に、SMF112が通され、接着部137によって固定されている。そして、アクチュエータ136は、ハウジングチューブ105に取り付けられた支持体134に設けられた貫通孔に通されて支持されている。これにより、SMF112の先端部112c、具体的にはSMF112の内のアクチュエータ136の接着部137に固定された箇所から射出端112bまでの部分は、支持体134に片持ち梁の状態で支持される。また、本実施形態の走査型医療用プローブ100には、走査範囲をオフセットさせるためのオフセット機構として、SMF112の射出端112bの近傍にとりけられた磁石150および複数の電極160を備えている。このオフセット機構の機能および作用については後ほど詳述する。
【0042】
アクチュエータ136は、複数の電極138を有している。各電極138は、複数の電線135と接続されている。そして、複数の電線135の終端は電気的コネクタ部120内部に収容されている。各電線135は、電気的コネクタ部120と電気的コネクタ部220とを接続させたときに、プロセッサ200が有するX軸/Y軸ドライバ236に接続される。尚、以降の走査型医療用プローブ100の構成の説明について、便宜上、走査型医療用プローブ100の長手方向をZ方向、Z方向に直交しかつ互いに直交する二方向をX方向、Y方向と定義する。
【0043】
タイミングコントローラ240は、X軸/Y軸ドライバ236に所定の駆動制御信号を出力する。X軸/Y軸ドライバ236はX軸ドライバ回路およびY軸ドライバ回路から構成される。そして、所定の駆動制御信号に基づき、X軸/Y軸ドライバ236のX軸ドライバ回路からはアクチュエータ136に第一の交流電圧が印加され、Y軸ドライバ回路からはアクチュエータ136に第一の交流電圧と同一周波数であって位相が直交する第二の交流電圧が印加される。
【0044】
アクチュエータ136は、印加された第一、第二の交流電圧に応じて振動する。アクチュエータ136の振動はそれぞれ、SMF112の先端部112cのX方向、Y方向への共振運動を生じさせる。そして、SMF112の射出端112bは、アクチュエータ136によるX方向およびY方向への運動エネルギーが合成されることにより、X−Y平面に近似する面(以下、「XY近似面」と記す。)上において中心軸AXをほぼ中心とする所定半径を有する円の軌跡を描く。
【0045】
所定半径を有する円の軌跡を描く状態でアクチュエータ136に対する交流電圧の印加が停止される。すると、SMF112の先端部112cの振動は徐々に減衰されていく。かかる減衰に伴って、SMF112の射出端112bは、XY近似面上で略渦巻パターンの軌跡を描きながら中心軸AXに向かい、最終的には中心軸AX上で停止する。カラーパルス光は、アクチュエータ136への交流電圧の印加停止直後からSMF112の射出端112bが中心軸AX上で停止する迄の期間(以下、「渦巻パターン期間」と記す。)、射出端112bから射出され続ける。
【0046】
ハウジングチューブ105の先端は、複数のレンズから構成される対物光学系140により封止されている。そのため、カラーパルス光は、SMF112の射出端112bから射出されて一旦発散するものの、対物光学系140によって集光されて射出される。対物光学系140を通って射出されたカラーパルス光は、観察対象上にスポットを形成する。かかるスポット径は、例えば数ミクロンオーダであり極めて小さい。
【0047】
図3に、観察対象上に形成されるスポットを説明するための図を示す。走査型医療用プローブ100は、一枚の画像を得るために観察対象上に渦巻パターンSPを描くようにn個のスポットをスポットS、S、S、・・・、Sの順に形成する。各スポットの間隔は、SMF112の射出端112bの運動速度や各レーザ光源の変調周波数等に依存して決まる。渦巻パターンSPは、観察対象上にパルス光で無く連続光を走査した場合を想定して描かれた仮想的な走査軌跡である。
【0048】
なお、実験等を重ねた結果、SMF112の射出端112bが停止した状態から所定半径を有する円の軌跡を描く状態に達する迄にかかる時間は既知である。同じく、渦巻パターン期間が開始され終了する迄にかかる時間も既知である。さらに、渦巻パターン期間中のXY近似面におけるSMF112の射出端112bの位置(または観察対象上における各スポット形成位置)も既知である。そのため、タイミングコントローラ240は、かかる既知の情報に基づき、X軸/Y軸ドライバ236に対するタイミング制御(つまり、各アクチュエータに対する交流電圧の印加と停止のタイミング)、およびドライバ232R、232G、232Bに対するタイミング制御(つまり、渦巻パターン期間中における各レーザ光源の変調制御)のそれぞれをフレームレートに応じた周期で繰り返す。
【0049】
走査型医療用プローブ100のシース145の内部には、複数の受光用ファイバ148が円環上に埋設されている。各受光用ファイバ148は走査型医療用プローブ100の基端部にて束ねられ、光学的コネクタ部110に収容されている。そして、観察対象上に形成された各カラーパルス光のスポットは、観察対象にて反射され受光用ファイバ148の入射端148bに入射される。入射端148bに入射された反射パルス光は、受光用ファイバ148内を伝送され、受光用ファイバ148の終端148aから、光学的コネクタ部110と光学的コネクタ部210とを通ってプロセッサ200へ送られる。
【0050】
プロセッサ200では、入射した反射パルス光をカップリングレンズ238aにて収束させ、RGB分離器238にて、ダイクロイックミラー等によりR、G、Bの各波長に対応する反射パルス光(以下、「反射Rパルス光」、「反射Gパルス光」、「反射Bパルス光」とする)に分離する。RGB分離器238にて分離された各反射パルス光は、それぞれ検出器250R、250G、250Bに送られる。なお、上述したようにカラーパルス光は、単一のSMF112により導光されて観察対象にて反射される。そのため、反射パルス光の光量は非常に少ない。このような微弱な光を確実にかつ低ノイズで検出する必要があるため、検出器250R、250G、250Bには光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)等の高感度光検出器が用いられる。
【0051】
以上が「(1)観察対象を走査して観察光を取得する処理」についての説明になる。次に、「(2)観察光に基づき画像を生成し表示する処理」、つまり取得された各色の反射パルス光を画像化してモニタ300に表示させるまでの一連の処理の流れを説明する。
【0052】
検出器250R、250G、250Bは、受光された各反射パルス光を光電変換してアナログ信号を生成し後段の回路に出力する。検出器250R、250G、250Bより検出された反射Rパルス光、反射Gパルス光および反射Bパルス光に応じたアナログ信号は、サンプリングおよびホールドされてA/Dコンバータ252R、252G、252Bによりそれぞれデジタル信号列に変換される。そして変換されたデジタル信号列は、DSP(Digital Signal Processor)254に入力される。
【0053】
DSP254では、A/Dコンバータ252R、252G、252Bからのデジタル信号列をそれぞれラッチする。そして、ラッチされたデジタル信号列から、画像情報を生成する(後述の図6に示される画像情報生成部254a)。具体的には、まず、ラッチされたデジタル信号列における変極点、つまりピーク値を検出する。次いで、デジタル信号列中のピーク値が検出された地点、つまり時間Tを該ピーク値に関連付けて、関連付けデータを作成する。ここで、A/Dコンバータ252R、252G、252Bからラッチしたデジタル信号列におけるピーク値を検出した時間Tは略同一である。そのため、所定の時間Tに対して、RGBの各デジタル信号列における3つのピーク値が関連付けられる。
【0054】
次に、DSP254は、関連付けデータの時間Tを例えば固体撮像素子でいうところの画素アドレスに変換する。具体的には、DSP254には、各スポットに対応する時間Tと画素アドレスとの変換テーブルが予め保持されている。かかる変換テーブルは、既知の情報である渦巻パターン期間中の各スポットの形成位置および形成時間に基づき作成されている。DSP254は、特定の時間Tに対応する関連付けデータが入力されたとき、変換テーブルに基づき該特定の時間Tを特定の画素アドレスに変換する。
【0055】
図4を用いて、DSP254による画素アドレスの変換処理の具体例を説明する。ここでは、説明の便宜上、各時間Tを19×19からなる画素アドレスに変換する場合を考える。DSP254は、例えばスポットSに対応する時間tの関連付けデータが入力された時、上記変換テーブルに基づき時間tを画素アドレス(3,10)に変換する。次いで、時間tの関連付けデータが入力されたとき、上記変換テーブルに基づき時間tを画素アドレス(3,8)に変換する。DSP254は、かかる画素アドレスへの変換処理を、入力されるデジタル信号に対応する時間Tに対して順次行う。
【0056】
DSP254は、上記のような画素アドレスへの変換処理により、画素アドレス(3,10)に関連付けられたRGBのピーク値に基づいて、画素アドレス(3,10)における画像情報を生成する。そして、生成されたスポットS〜Sに対応する一フレーム分の画像情報をメモリ(後述の図6に示される画像情報メモリ254b)にバッファリングする。このとき、画像情報を有さない画素アドレスに関しては、例えば所定のマスキングデータを生成して補間される。
【0057】
その後、タイミングコントローラ240のタイミング制御に従い、DSP254のメモリにバッファリングされた画像情報が読み出され、エンコーダ256に出力される。エンコーダ256は、入力された画像情報をNTSC(National Television Standards Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換してモニタ300に出力する。これにより、モニタ300に観察対象の映像が表示される。
【0058】
以上が走査型医療用プローブ100を用いた通常の体腔内観察における処理の流れである。次に、本発明の特徴である、走査型医療用プローブ100の走査範囲をオフセットして観察を行なう場合について説明する。通常、術者によって走査型医療用プローブ100を移動させながら体腔内を観察している際に、病変部などの詳細に観察を行ないたい部位をモニタ上に発見した場合、走査型医療用プローブ100の移動を止めて、当該病変部の詳細な観察が行なわれる。しかしながら、走査型医療用プローブ100を動かしていないにも関わらず、体腔壁が変動することによってモニタ300に表示される病変部が移動してしまうことがある。このような場合に、自動的に病変部を追尾してモニタに表示させるための、走査型医療用プローブ100が備えるオフセット機構および該オフセット機構を制御するプロセッサ200の構成および処理について以下に説明する。
【0059】
図2に示すように、プロセッサ200は上述の構成に加えオフセット制御部260およびモード切換えスイッチ270を有している。オフセット制御部260は、モード切換えスイッチ270およびDSP254に接続され、モード切換えスイッチ270の状態に応じて駆動される。モード切換えスイッチ270は、プロセッサ200の外装に設けられた機械スイッチであり、術者によって、通常の観察を行なう通常観察モードと、病変部の追尾を行なう自動追尾モードの何れかに切り換えられる。また、オフセット制御部260はDSP254および電気的コネクタ部220に接続されており、DSP254によって生成された画像情報に基づいて走査型医療用プローブ100のオフセット機構の制御を行う。
【0060】
走査型医療用プローブ100のオフセット機構は、SMF112の射出端112bの近傍にとりけられた磁石150、ハウジングチューブ105の内側に取り付けられた複数の電極160、および電極160に接続された電線161から構成される。ここで、図1にはY軸方向において磁石150と対向する位置に二箇所取り付けられた電極160aおよび160bしか示されていないが、X軸方向においても、磁石150と対向する位置に電極160cおよび160dが取り付けられている。また、各電極160a〜160dに接続された電線161の終端は、電気的コネクタ部120に収容されて電気的コネクタ部220と接続される。そして、オフセット制御部260より、電線161を介して電極160a〜160dへ電圧が印加されることにより、SMF112に取り付けられた磁石150を電極側へ引きつけたり、反発させたりすることができる。
【0061】
図5は、通常のSMF112の走査範囲SA1と、電極160aに電圧が印加され、磁石150が電極160aに引きつけられた状態におけるSMF112の走査範囲SA2とを模式的に示す図である。図5に示すように、通常の場合、具体的には、電極160a〜160dのいずれにも電圧が印加されていない場合は、SMF112は、アクチュエータ136の振動により、対象物に対して図5に示す中心軸AXを中心とする所定の走査範囲SA1を走査する。ここで、電極160aに電圧が印加されると、SMF112に取り付けられた磁石150が電極160aに引きつけられると、SMF112の射出端112bがY軸方向へ移動する。そして、この状態のままアクチュエータ136が駆動されると、SMF112は、図5に示すように中心軸AX’を中心とした走査範囲SA2を走査する。このように、電極160aに電圧を印加することにより、SMF112による走査範囲の中心軸AXが、Y軸方向へオフセットされる。
【0062】
同様に、X軸方向に配置された電極160cまたは160dに電圧を加えることにより、SMF112の走査範囲の中心軸AXをX軸方向へオフセットさせることもできる。このように電極160a〜160dに電圧を加えてSMF112の射出端112bの中心軸を移動させることにより、走査型医療用プローブ100自体を動かすことなく、走査範囲をオフセットさせることができる。そのため、電極160a〜160dへ印加される電圧を調整することで、SMF112の走査範囲をさまざまな方向へオフセットさせることが可能となり、走査型医療用プローブ100の画角を拡げることができる。
【0063】
次に、上述のようにSMF112の走査範囲をオフセットさせるための、プロセッサ200におけるオフセット制御処理について説明する。図6は、プロセッサ200が備えるDSP254およびオフセット制御部260の具体的な構成を示す図である。DSP254は、上述したようにA/Dコンバータ252R、252G、252Bからのデジタル信号列を受信して画像情報を生成する画像情報生成部254a、および画像情報生成部254aにて生成された画像情報を記憶する画像情報メモリ254bを備えている。そして、オフセット制御部260は、基準点メモリ260a、変動量演算回路260b、X軸変動メモリ260c、Y軸変動メモリ260d、X軸電圧変換回路260e、Y軸電圧変換回路260fを備えている。オフセット制御部260における各部は、モード切換えスイッチ270によって、自動追尾モードに切り換えられることにより駆動する。
【0064】
続いて、図7および図8を参照して、オフセット制御部260の各部によって実施される走査範囲のオフセット制御について説明する。図7は、走査型医療用プローブ100のオフセット制御処理の流れを示すフローチャートである。また、図8(a)、(c)、(e)、(f)は、病変部L、モニタ表示領域DA、画像領域IA、およびファイバ可動領域FAの位置関係を模式的に示す図であり、図8(b)、(d)は、DSP254に記憶されている変換テーブルを模式的に示す図である。ここで、モニタ表示領域DAとは、モニタ300に表示される画像の範囲を示すものである。また、画像領域IAは、SMF112によって所定の走査範囲を走査することによって得られる画像の領域を示すものである。図8に示すように、モニタ300は、走査型医療用プローブ100によって取得される画像領域IAの中心部をモニタ表示領域DAに表示する。また、ファイバ可動領域FAは、走査型医療用プローブ100のオフセット機構によって走査範囲の中心軸AXをオフセットさせることが可能な範囲を示すものである。尚、ここでの領域はいずれも走査型医療用プローブ100の先端部130を固定した状態での領域である。そのため、ファイバ可動領域FAは最大でもハウジングチューブ105の内径以下となる。
【0065】
図7に示すように、まず、走査型医療用プローブ100を用いた通常観察が行なわれる(S1)。そして、通常観察時に、図8(a)に示すように病変部Lがモニタ表示領域DA内に表示されると、術者によって病変部Lの目印として病変部Lの近傍にマーカーMが付けられる。このマーカーMは、ESD(Endoscopic Submucosal Dissection:内視鏡的粘膜下層剥離術)のマーキングに用いられるAPC(Argon Plasma Coagulator)などによって体腔壁を焼灼することによって付けられる。そして、マーカーMが付けられた病変部Lの自動追尾を行なうか否かが、モード切換えスイッチ270の状態によって判断される。
【0066】
ここで、モード切換えスイッチ270が、通常モードである場合は(S2:No)、自動追尾を行わない通常観察が続行される。一方、モード切換えスイッチ270が自動追尾モードに切り換えられている場合(S2:Yes)、プロセッサ200は、通常の画像処理に加え、病変部Lの自動追尾するための走査範囲オフセット処理を開始する。そして、まずマーカーMの位置が基準点としてオフセット制御部260の基準点メモリ260aに記憶される。詳しくは、上述のようにマーカーMはAPCによって病変近傍の体腔壁を焼いて白色に変色させることによって付けられる。そのため、画像情報メモリ254bに記憶された1フレーム分の画像情報および図8(b)に示される変換テーブルに基づいて、白色の画像情報を有する画素アドレス(Xs、Ys)が基準点として検出され、基準点メモリ260aに記憶される(S3)。
【0067】
そして、続くS4では、以降に生成されるフレームの画像情報におけるマーカーMの位置が継続して検出され、検出されたマーカーMの位置が基準点と比べて変化したか否かが判断される。この判断は、基準点である画素アドレス(Xs、Ys)に対して、検出されたマーカーMの画素アドレスがどれだけ変動したかに基づいて行われる。また、この場合、所定の閾値を設定し、当該閾値以上の変動があった場合のみ「変化した」と判断するようにすることで、問題とならないわずかな変動については、無視することができる。
【0068】
そして、図8(c)に示されるようにマーカーMの位置が基準点と比べて変化した場合(S4:Yes)、変動量演算回路260bにて、その変動量が算出される(S5)。具体的には、図8(d)に示すように、基準点メモリ260aに記憶された基準点における画素アドレス(Xs、Ys)と、検出されたマーカーMの画素アドレス(Xa、Ya)から、マーカーMのX軸における変動量Vx、およびY軸における変動分Vyが算出される。そして、変動量演算回路260bにて算出されたX軸の変動量VxがX軸変動メモリ260cに、Y軸の変動量VyがY軸変動メモリ260dにそれぞれ記憶される。
【0069】
続いて、算出された変動量VxおよびVyがファイバ可動領域FAの範囲内であるか否かが判断される(S6)。上述のようにファイバ可動領域FAは、ハウジングチューブ105の内径に制限される。そのため、SMF112の射出端112bのX軸方向への移動量およびY軸方向への移動量は、ハウジングチューブ105の内径に依存して制限される。そこで、S5では、モード切換えスイッチ270によって自動追尾処理に切り換えられてからのX軸変動量およびY軸変動量の合計を、X軸変動メモリ260cおよびY軸変動メモリ260dに記憶される情報に基づいて算出し、それぞれが許容範囲を超えているか否かが判断される。
【0070】
ここで、変動量VxおよびVyが、ファイバ可動領域FA内であると判断された場合(S6:Yes)、X軸電圧変換回路260eおよびY軸電圧変換回路260fの各々において、X軸およびY軸の変動量が各電極へ印加される電圧値へと変換される。この電圧値は、実験等によって各電極に様々な電圧を印加させたときのSMF112の中心軸AXのオフセット量やオフセット方向に関する情報を求めておき、これらの情報に基づいて予め設定される。そして、X軸電圧変換回路260eおよびY軸電圧変換回路260fにおいて変換された電圧値に基づいて、電気的コネクタ部220、電気的コネクタ部120を介して電極160a〜160dへ電圧が印加される(S7)。
【0071】
オフセット制御部260から、電極160a〜160dに電圧が印加されることにより、磁石150が電極に引きつけられて、SMF112の先端部112cが傾いた状態と成る。そして、この状態でアクチュエータ136が駆動されると、SMF112の先端部112cが共振運動を行ってオフセットされた中心軸AXを中心として所定の走査範囲を走査する。これにより、SMF112による走査範囲のオフセットに対応して、取得される画像の範囲(画像領域IA)もオフセットされ、図8(e)に示されるように、病変部Lをモニタ領域DAの中心に表示することができる。また、このとき、SMF112の中心軸AXがオフセットされたことにより、所定の走査範囲の全てが走査できない場合がある(図8(e)の斜線部分)。このような場合は、走査されなかった部分の画素アドレスに関しては、所定のマスキングデータや、画像情報メモリ254bに記憶される画像情報に基づいて補間が行われる。
【0072】
一方、変動量VxおよびVyが、ファイバ可動領域FAの範囲外であると判断された場合(S6:No)、プロセッサ200は、図8(f)に示すようにX軸またはY軸の変動量に基づいて、病変部Lが移動したと予想される方向に矢印を表示するように、モニタ300を制御する(S8)。また、S4の処理において、入力されたフレームの画像情報内にマーカーMの画像情報が検出されなかった場合も、S8の処理に進み、それまでのX軸およびY軸の変動量に基づいて、病変部Lが移動したと予想される方向に矢印を表示するように、モニタ300を制御する。
【0073】
S7またはS8の処理が終了すると、再びS2の処理へ戻る。そして、自動追尾モードから通常モードへ切り換えられるまで、S3からS8までの処理が繰り返され、マーカーMの変動に追従して、SMF112の走査範囲がオフセットされ、モニタ上の病変部Lの自動追尾が行われる。
【0074】
上述のように、本実施形態においては、プロセッサ200において、取得された画像情報から病変部の位置の変動が自動的に検出され、該変動量に基づいて、走査型医療用プローブ100のオフセット機構が制御される。これにより、走査型医療用プローブ100における走査範囲の中心軸が病変部の位置の変動に対応してオフセットされ、その結果、取得される画像領域を病変部に追従するようにオフセットさせることができる。そのため、術者は、手動操作によるぶれや生体の変動により、モニタ300上の病変部の位置が変化するたびに走査型医療用プローブ100の先端部130の位置を調整する必要がなく、モード切換えスイッチ270を切り換えるという簡単な操作のみで、病変部を自動追尾して観察を行なうことができる。また、病変部がファイバ可動領域の外に移動してしまった場合には、病変部が移動したと予想される方向へ矢印を表示させることにより、術者によって走査型医療用プローブ100が操作される際に、どの方向へ動かせばよいかを術者に通知することができる。これにより、術者が病変部を探すために走査型医療用プローブ100を操作する時間を短縮することができる。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態における走査型医療用プローブ100aについて、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態の走査型医療用プローブ100aにおける先端130a近傍の内部構成を模式的に示す図である。本実施形態の走査型医療用プローブ100aは、第1の実施形態における走査型医療用プローブ100と同様の部品を多く含むため、ここでは、第1の実施形態の走査型医療用プローブ100との違いについてのみ説明する。また、図9では、第1の実施形態における走査型医療用プローブ100と同様の機能を有する部品には、図1と同じ番号が付されている。
【0076】
まず、本実施形態においては、第1の実施形態における走査型医療用プローブ100とは異なる方法で、アクチュエータ136aが支持体134aに支持されている。具体的には、支持体134aは、X軸方向に延出した軸SXを有しており、アクチュエータ136は、同じくX軸方向にあけられた貫通孔を有している。そして、支持体134aの軸SXをアクチュエータ136aの貫通孔に通すことで、アクチュエータ136aは、支持体134aに軸SXを支点としてY軸方向に回動可能に支持される。
【0077】
また、本実施形態におけるオフセット機構は、ハウジングチューブ105の内側に取り付けられた、積層圧電体170aおよび170b、ならびに電線171から構成される。積層圧電体170aおよび170bは、積層圧電セラミックスなどで形成される積層型の圧電素子である。積層圧電体170aおよび170bは、電圧の印加によって積層方向へ変形する特性を備えている。図9に示すように、積層圧電体170aおよび170bは、アクチュエータ136aの支持体134より接着部137側の部分を、Y軸上の二方向から支持するように取り付けられる。これにより、積層圧電体170aおよび170bを変形させることで、アクチュエータ136aをY軸方向に動かすことができる。
【0078】
積層圧電体170aおよび170bに接続された電線171の終端は、電気的コネクタ部120内部に収容されている。そして、本実施形態の走査型医療用プローブ100aにおけるオフセット機構は、第1の実施形態と略同じ構成および機能を備えたプロセッサ200のオフセット制御部260によって制御される。具体的には、上述のような第1の実施形態における図7のフローチャートに従って、オフセット制御部260によって、マーカーMの画像情報からX軸の変動量およびY軸の変動量が求められる。そして、求められた変動量が電圧値に変換され、該電圧値に基づいて積層圧電体170aおよび170bに電圧が供給される。
【0079】
ただし、本実施形態においては、上述のとおりアクチュエータ136aはY軸方向にのみ動くことができる。すなわち、アクチュエータ136aが取り付けられたSMF112の走査範囲の中心軸AXも、Y軸方向にのみオフセットが可能である。そのため、オフセット制御部260では、変動量演算回路260bで算出されたY軸方向への変動量(Vx)のみに対応する電圧が、積層圧伝素子170aおよび170bへ供給される。
【0080】
そして、例えば、積層圧電体170aに電圧が印加され、積層圧電体170aが変形(膨張)することにより、積層圧電体170aによってアクチュエータ136aが軸SXを支点として時計回り(図9の紙面上下方向へ)に回動する。これにより、SMF112の射出端112bの位置も移動され、走査範囲の中心軸AXもY軸方向にオフセットされる。そして、この状態を維持したままアクチュエータ136aを駆動することにより、SMF112の走査範囲、および画像取得範囲もオフセットされ、病変部LをY軸方向へ自動追尾することができる。
【0081】
第1の実施形態においては、SMF112の先端部112cを、接着部137を支点として傾けることによって、中心軸AXをオフセットさせる構成としていたのに対し、本実施形態では、SMF112を支持するアクチュエータ136a自体を傾けることによって中心軸AXをオフセットさせる構成としている。これにより、本実施形態では、SMF112の先端部12cを傾けることなく、アクチュエータ136aの中心軸と平行に保った状態から走査を開始することができる。これにより、本実施形態では、第1の実施形態における効果に加え、SMF112による走査可動領域が広がり、より広い範囲での走査および画像の取得を行うことが可能となる。
【0082】
続いて、本発明の第3の実施形態における走査型医療用プローブ100bについて、図10(a)および図10(b)を参照して説明する。図10(a)は、本実施形態の走査型医療用プローブ100bにおける先端130b近傍の内部構成を模式的に示す図である。本実施形態の走査型医療用プローブ100bにおいても、第1の実施形態における走査型医療用プローブ100と同様の部品を多く含むため、ここでは、第1の実施形態の走査型医療用プローブ100との違いについてのみ説明する。また、図10(a)では、第1の実施形態における走査型医療用プローブ100と同様の機能を有する部品には、図1と同じ番号が付されている。図10(b)は、アクチュエータ136bおよび円盤型圧電体180aを走査型医療用プローブ100bの先端部130b側から見た図である。
【0083】
まず、本実施形態のオフセット機構は、2つの円盤型圧電体180a、180b、および電線181から構成される。そして、本実施形態のアクチュエータ136bは、支持体134ではなく、円盤型圧電体180aおよび180bによって、ハウジングチューブ105内に支持されている。円盤型圧電体180aおよび180bは、圧電セラミックスなどの電圧の印加によって変形する円盤型の圧電素子である。図10(a)および図10(b)に示すように円盤型圧電体180aおよび180bは、中央に貫通孔を有するドーナツ形状を有しており、その貫通孔にアクチュエータ136bが挿入されている。
【0084】
また、円盤型圧電体180aおよび180bは、複数の電極185a〜185dを有している。そして、図10(b)に示すように、円盤型圧電体180aおよび180bは、電極185a〜185dによって、4つのパート、R+、R−、L+およびL−に分割されている。電極185a〜185dには、電線181がそれぞれ接続されており、電線181の終端は電気的コネクタ部120内部に収容されている。そして、各電極185a〜185dへ印加される電圧を制御することによって、各パートR+、R−、L+およびL−を個別に変形させることができる。具体的には、例えば、電極185aおよび185dに電圧を印加すると、電極185aおよび185dの間にあるR+が変形(例えば、膨張)する。
【0085】
また、本実施形態の走査型医療用プローブ100bにおけるオフセット機構も、第1および第2の実施形態と略同じ構成および機能を備えたプロセッサ200のオフセット制御部によって制御される。具体的には、上述のような第1の実施形態における図7のフローチャートに従って、オフセット制御部260によって、マーカーMの画像情報からX軸の変動量およびY軸の変動量が求められる。そして、求められた変動量が電圧値に変換され、該電圧値に基づいて電線181を介して、円盤型圧電体180aおよび180bへ電圧が印加される。
【0086】
ここで、本実施形態においてはアクチュエータ136bが円盤型圧電体180bに支持される箇所を支点として、アクチュエータ136bがX軸方向およびY軸方向へ回動できるよう構成される。そのため、円盤型圧電体180bは、円盤型圧電体180aの変形によるアクチュエータ136bの回動を妨げない程度に変形させる必要がある。そのため、オフセット制御部260では、円盤型圧電体180aの各電極185a〜185dおよび円盤型圧電体180bの各電極185a〜185dそれぞれに対して印加する電圧値を算出する。このような電圧値は、実際に実験などで円盤型圧電体180aおよび180bの各電極185aから185dへ電圧を印加した場合の、中心軸AXのオフセット量や方向を求めておき、予め設定される。
【0087】
そして、例えば電極185aおよび185bに電圧が印加され、円盤型圧電体180aのL+が変形(膨張)すると、アクチュエータ136bの中心軸が円盤型圧電体180bに支持された部分を支点として、図10(b)の紙面上、右斜め下方向へと移動する。このとき、アクチュエータ136bの動きに追従して円盤型圧電体180bも変形するように、円盤型圧電体180bにも電圧が印加される。これにより、SMF112の射出端112bが移動し、走査範囲の中心軸AXが右斜め下方向へオフセットされる。そして、この状態を維持したままアクチュエータ136bを駆動することにより、SMF112の走査範囲、および取得される画像範囲もオフセットされ、病変部Lを自動追尾することができる。
【0088】
本実施形態においては、第2の実施形態と同じくSMF112を支持するアクチュエータ136bを傾けることによって中心軸AXの位置をオフセットさせる構成としている。そのため、第2の実施形態と同様に、SMF112の先端部112cの可動領域が広がり、より広い範囲での走査を行うことが可能となる。さらに、本実施形態においては、アクチュエータ136bを2つの圧電体によって回動可能に支持する構成としている。そのためオフセット制御部によって、圧電体に印加する電圧を制御することにより、アクチュエータ136bを360度、自由な方向へと傾かせることができ、広範囲での病変部の追尾が可能となる。
【0089】
以上説明された第1から第3の実施形態においては、走査型医療用プローブ100、100a、100bにおける走査範囲のオフセットは、画像情報に基づいて、病変部の自動追尾を行うように制御されるものである。続く本発明の第4の実施形態では、走査型医療用プローブ100、100a、100bにおける走査範囲のオフセットを、術者による操作に基づいて制御する場合について説明する。
【0090】
本実施形態の医療用観察システムは、第1の実施形態と同様に、走査型医療用プローブ100と、プロセッサ200と、モニタ300とから構成される。そして、本実施形態における各部の構成は、第1の実施形態における構成とほとんど同じであるため、相違点についてのみ説明を行う。まず、本実施形態においては、モニタ300の表示画面が、表示と入力の2つの機能を有するタッチパネル310で構成される。そして、本実施形態のオフセット制御部265は、タッチパネル310の操作によって駆動される。
【0091】
図11は、本実施形態のオフセット制御部265の構成を示す図である。図11に示すように、本実施形態のオフセット制御部265は、ポインタ位置メモリ265a、変動量演算回路265b、X軸変動メモリ265c、Y軸変動メモリ265d、X軸電圧変換回路265e、Y軸電圧変換回路265fを備えている。
【0092】
図12は、本実施形態におけるオフセット制御処理のフローチャートである。また、図13(a)、(c)、(e)、(f)は、病変部L、モニタ表示領域DA、画像領域IA、およびファイバ可動領域FAの位置関係を模式的に示す図であり、図13(b)、(d)は、DSP254に記憶されている変換テーブルを示す図である。図13において、モニタ領域DA、画像領域IA、およびファイバ可動領域FAは、第1の実施形態と同様の領域を示す。また、モニタ領域DAは、タッチパネル310の操作入力領域でもある。
【0093】
本実施形態においても、まず、走査型医療用プローブ100を用いた通常観察が行なわれる(S11)。続くS12では、タッチパネル310において走査が行われたか否かが判断される。ここで、図13(a)のように病変部の一部がモニタに表示されている状態で、術者によってタッチペンなどのポインタを用いて、任意の点Psがタッチされると(S12:Yes)、オフセット制御部265のポインタ位置メモリ265aにおいて、ポインタがタッチされた点Psに対応する画素アドレスが検出され、ポインタの始点として記憶される(S13)。本実施形態の場合は、図13(b)に示すように画素アドレス(Xs、Ys)がポインタの始点として記憶される。
【0094】
続いて、図13(c)に示すように、術者によって、点Psを始点として、ポインタがタッチパネル310にタッチされた状態のまま、任意の方向へスライドされる。S14では、スライドが終了したか否か、すなわちポインタがタッチパネル310から離れたか否かが判断される。そして、ポインタのスライドが終了した場合(S14:Yes)、ポインタの終点、すなわちポインタがタッチパネル310から離れた点の画素アドレスが検出され、ポインタの終点としてポインタ位置メモリ265aに記憶される(S15)。本実施形態においては、図13(d)に示すように、ポインタの終点として点Pfに対応する画素アドレス(Xa、Ya)が記憶される。
【0095】
そして、続くS16では、変動量演算回路265bにて、ポインタ位置メモリ265aに記憶されたポインタの始点と終点から、変動量が算出される。具体的には、ポインタ位置メモリ265aに記憶される始点の画素アドレス(Xs、Ys)と終点の画素アドレス(Xa、Ya)から、X軸における変動量Vx、およびY軸における変動分Vyが算出される。そして、変動量演算回路265bにて算出されたX軸の変動量が、X軸変動メモリ265cに、Y軸の変動量がY軸変動メモリ265dにそれぞれ記憶される。
【0096】
続いて、算出されたX軸およびY軸の変動量が、ファイバ可動領域FAの範囲内であるか否かが判断され(S17)、ファイバ可動領域内である場合は、X軸電圧変換回路265eおよびY軸電圧変換回路265fの各々において、X軸およびY軸の変動量が各電極への電圧値へ変換される。そして、X軸電圧変換回路265eおよびY軸電圧変換回路265fにおいて変換された電圧値に基づいて、電気的コネクタ部を介して走査型医療用プローブ100の電極160a〜160dへ電圧が印加される(S18)。
【0097】
その後、印加された電圧に基づいて、SMF112の走査範囲の中心軸AXがオフセットされる。そして、この状態でアクチュエータ136が駆動され、SMF112の先端部112cが共振運動をして所定の走査範囲を走査する。このように走査範囲がオフセットされることにより、取得される画像の範囲も変動量に応じてオフセットされ、図13(e)に示されるように、病変部Lをモニタ領域DAの中心に表示することができる。
【0098】
また、第1の実施形態と同様に、X軸またはY軸の変動量が、ファイバ可動領域FA外であると判断された場合は(S17:No)、図13(f)に示すようにX軸またはY軸の変動量に基づいて、病変部Lが移動したと予想される方向に矢印を表示するように、モニタ300が制御される(S19)。S18またはS19の処理が終了すると、再びS12の処理へ戻る。そして、ポインタによるタッチパネル310の操作がなされるたびに、S13からS19までの処理が繰り返される。
【0099】
上述のように、本実施形態においては、タッチパネル310において操作されるポインタの変動量に基づいて、SMF112の中心軸AXをオフセットさせる構成となっている。これにより、術者がタッチパネル310上でポインタを操作するだけで、ポインタの変動量と同じだけSMF112の走査範囲をオフセットさせることができる。これにより、走査型医療用プローブ100の先端部130の位置を手動で操作しなくても、病変部をモニタ300上の見やすい位置へ移動させることができる。また、ポインタによって、走査範囲の中心軸AXをオフセットさせる方向やオフセット量を任意に設定できるため、術者が所望する場所を自由にモニタの中心へと表示させることができる。また、病変部が変動によりモニタ上を移動した場合も、タッチパネル310上の操作で簡単に追尾することが可能となる。
【0100】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、単一の光ファイバの先端を共振させて走査することによって体腔内観察を行なう医療用プローブについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、同じように単一の光ファイバの先端を共振させて走査することによって体腔内観察を行なうカプセル内視鏡においても本発明における構成を適用することが可能である。
【0101】
この場合は、特に、カプセル内視鏡の画像をリアルタイムで観察している場合において有効である。具体的には、体外に設置されたプロセッサに上記オフセット制御部を備え、オフセット制御部から、オフセット機構に印加すべき電圧に関する情報を含む信号を無線通信によってカプセル内視鏡へ送信する。そして、カプセル内視鏡では、受信した信号に基づいて各電極へ電圧を印加し、走査範囲をオフセットさせる。
【0102】
通常、カプセル内視鏡は、被験者によって嚥下されてからは、体内の脈動によって流れていくものであり、術者が希望する特定の観察箇所を撮影することは困難である。しかしながら、このように、カプセル内視鏡に本発明を適用させることにより、ファイバ可動領域内であれば、走査範囲をオフセットさせることにより、術者が所望する画像を取得し、観察することが可能となる。
【0103】
また、上記第1の実施形態においては、病変部の近傍に付けられたマーカーMの位置を基準点として、マーカーMの変動量に基づいて走査範囲を変更していたが、それ以外にも任意の画像情報における任意の特徴部をマーカーとして設定することができる。例えば、病変部自体をマーカーとして設定した場合、病変部に対応する画像情報(暗い部分)を含む画素アドレスを基準点として記憶し、病変部の位置の変動量を算出する。そして、上述のように算出された変動量から電圧値を求め、電極160aから160dを制御することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0104】
また、上記第4の実施形態以外にも、種々の方法においてタッチパネル310におけるポインタ操作に基づいて、中心軸AXのオフセットを制御することが可能である。例えば、モニタ表示領域DA内において、モニタ表示領域DAの中心に持っていきたい任意の点Poをポインタでタッチする。そして、タッチされた点Poに対応する画素アドレスと、モニタ表示領域DAの中心点に対応する画素アドレスとの変動量を求める。そして、該変動量に基づいて、SMF112の中心軸AXをオフセットさせることによって、任意の点Poをモニタ表示領域DAの中心点に表示させることが可能となる。
【0105】
この構成を利用して、例えば、図13(a)のような表示がなされている場合に病変部Lの画像の上をポインタでタッチするだけで、タッチされた病変部Lがモニタ表示領域DAの中心に表示される。これにより、より簡単なタッチパネルの操作において、上記第4の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、その他にも、タッチパネル以外の入力手段によって入力された内容に基づいて、オフセット機構を制御する構成としても良い。例えば、キーボードなどにより、所望の変動量VxおよびVyの値を直接入力し、該入力値に基づいて走査型医療用プローブ100の走査範囲をオフセットさせるよう構成することも可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 医療用観察システム
100 走査型医療用プローブ
112 SMF
200 プロセッサ
240 タイミングコントローラ
250 光検出器
254 DSP
260 オフセット制御部
300 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された複数種類の波長の光を利用して対象物を観察するための医療用プローブであって、
前記光源から入射された光を射出して、前記対象物上を走査する走査手段と、
前記走査手段によって走査される前記対象物の反射光を、所定の光検出手段に出力する出力手段と、
前記走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせる走査範囲オフセット手段と、を有することを特徴とする医療用プローブ。
【請求項2】
前記走査手段は、
入射端が前記光源に光学的に接続されたシングルモードファイバからなる導光手段と、
前記導光手段の射出端近傍を振動させる振動手段と、から構成されることを特徴とする請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
前記走査範囲オフセット手段は、
前記導光手段の射出端近傍に取り付けられた磁石と、
前記磁石を引き付けるための電極と、からなり、
前記電極に電圧が印加されて、前記磁石が前記電極に引き付けられることにより、前記導光手段の射出端が変位されることを特徴とする請求項2に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
前記走査範囲オフセット手段は、前記電極を複数備え、
前記複数の電極にはそれぞれ異なる電圧が印加されることを特徴とする請求項3に記載の医療用プローブ。
【請求項5】
前記走査範囲オフセット手段は、前記振動手段の中心軸を移動させるための圧電体からなり、
前記圧電体は、電圧が印加されることにより変形して、前記振動手段の中心軸を変位させることを特徴とする請求項2に記載の医療用プローブ。
【請求項6】
前記圧電体は、前記振動手段を二方向から支持しており、
前記圧電体の変形により、前記振動手段の中心軸が該二方向に変位されることを特徴とする請求項5に記載の医療用プローブ。
【請求項7】
前記圧電体は、電極によって分割された複数の部分を有し、
前記複数の部分は、それぞれに個別に変形することを特徴とする請求項5に記載の医療用プローブ。
【請求項8】
前記圧電体は、前記振動手段を該振動手段の外周を囲むように支持しており、
前記複数の部分をそれぞれに個別に変形させることにより、前記振動手段の中心軸を所定の方向に変位させることを特徴とする請求項5に記載の医療用プローブ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の医療用プローブと、
前記光源と、
前記反射光を受光して信号を検出する光検出手段と、
前記検出された信号に基づき画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記生成された画像情報に基づき映像を生成し表示する映像表示手段と、
前記走査範囲オフセット手段を制御するオフセット制御手段と、
を有することを特徴とする医療用観察システム。
【請求項10】
前記オフセット制御手段は、前記画像情報生成手段によって生成された画像情報に基づいて、前記走査範囲オフセット手段を制御することを特徴とする請求項9に記載の医療用観察システム。
【請求項11】
前記オフセット制御手段は、
前記画像情報における特徴部を基準点として記憶する基準点メモリと、
以降に生成された画像情報における前記特徴部の位置と、前記基準点メモリに記憶された基準点の位置との変動量を算出する変動量算出手段と、を有し、
前記変動量算出手段により算出された変動量に対応して前記走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせるよう前記走査範囲オフセット手段を制御することを特徴とする請求項10に記載の医療用観察システム。
【請求項12】
前記医療用観察システムは、更に、
操作者による入力を可能にする入力手段を有し、
前記オフセット制御手段は、前記入力手段によって入力された内容に基づき、前記走査範囲オフセット手段を制御することを特徴とする請求項9に記載の医療用観察システム。
【請求項13】
前記入力手段は、タッチパネルで構成され、
前記オフセット制御手段は、
操作者により操作された前記タッチパネル上のポインタの始点および終点を記憶するするポインタメモリと、
前記ポインタメモリに記憶される前記ポインタの始点から終点への変動量を算出する変動量算出手段と、を有し、
前記変動量算出手段により算出された変動量に対応して、前記走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせるよう前記走査範囲オフセット手段を制御することを特徴とする請求項12に記載の医療用観察システム。
【請求項14】
前記変動量算出手段は、前記操作者によって操作された前記タッチパネル上のポインタから前記映像表示手段の中心位置への変動量を算出することを特徴とする請求項13に記載の医療用観察システム。
【請求項15】
前記オフセット制御手段は、更に、
前記変動量算出手段により算出された変動量を、前記走査範囲オフセット手段に印加する電圧値へと変換する電圧変換手段を有することを特徴とする請求項11から14の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項16】
前記オフセット制御手段は、前記変動量が前記走査手段の可動領域を超える場合は、前記映像表示手段に矢印を表示させることを特徴とする請求項11から15の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項17】
光源から照射された複数種類の波長の光を利用して対象物を観察するためのカプセル内視鏡であって、
前記光源から入射された光を射出して、前記対象物上を走査する走査手段と、
前記走査手段によって走査される前記対象物の反射光を、所定の光検出手段に出力する出力手段と、
前記走査手段による走査範囲の中心をオフセットさせる走査範囲オフセット手段と、を有することを特徴とするカプセル内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−115252(P2011−115252A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273117(P2009−273117)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】