説明

医療用レーザ装置のハンドピース

【課題】断面の小さな導光体を用いる場合でも、レーザの収束光を導光体に導くための調節が容易にできる医療用レーザ装置のハンドピースを提供する。
【解決手段】レーザ光を収束光とする集光レンズ24を備えた筒状の本体部材2と、収束光を被照射部へ導く導光体32を備えたレーザプローブ3とを有し、導光体の入射側端部と集光レンズ24との相対的な位置を、軸線方向及び軸線と直交する方向に調節可能とする。Lは、レーザ発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射することによって生体組織の切開、止血、凝固等の治療および手術を行う医療用レーザ装置に関し、特に、導光されたレーザ光を収束して患部に照射するハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用レーザ装置は、レーザ光を発生するレーザ発生装置と、マニピュレータ等の導光路と、導光したレーザ光を収束して患部に照射するハンドピース等により構成されている。当初のハンドピースは内部に集光レンズを備え、集光レンズの焦点近傍に患部を位置することによって治療を行っていた。
【0003】
しかしながら、この方法では、生体表面に露出していない凹部にある患部や、体腔内壁等の深い部位にある患部の治療が困難であった。このため、集光レンズからの収束光を可撓性の細長い金属パイプを用いて患部まで導光する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
図6に示すように、この特許文献1に記載されたハンドピース101は、内部に集光レンズ102を備えるとともに、細長いパイプ状の導光体103が、固定具104により取付けられている。導光体103の内面は、メッキ等によって光の反射率が高い状態にされており、また、導光体103の始端、すなわち入射側端部が集光レンズ102の焦点と一致するように取付けられている。
【0005】
したがって、導光されたレーザ光105は、収束された状態で導光体103の終端から出射されることになり、導光体103の終端で所定の治療や手術を行うことができる。出射されるレーザ光は、多くの場合、できる限り絞られた収束光であることが好ましく、このため、導光体103はできる限り細くて、導光路の断面が小さいことが好ましい。
【0006】
しかしながら、導光体103の始端を集光レンズ102の焦点に一致するように取付けることは困難を伴う作業であり、特に、導光体103が細くて、導光路の断面が小さい場合には非常に困難な作業となる。この問題は、ハンドピース101の製作時のみならず、集光レンズ102を交換する場合等にも同様に起こる問題である。
【特許文献1】特開昭56−104654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、医療用レーザ装置のハンドピースであって、断面の小さな導光体を用いる場合においても集光レンズと導光体の始端との相対的な位置を容易に調節して製作することが可能であり、また、集光レンズや導光体を交換する場合にも容易に再調節できるハンドピースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るハンドピースは、レーザ発生装置から導光されたレーザ光を収束光とするための集光レンズを備えた筒状の本体部材と、前記収束光を被照射部へ導くための導光体を備えたレーザプローブとを有する医療用レーザ装置のハンドピースであって、前記導光体の入射側端部と前記集光レンズとの相対的な位置を、軸線方向及び軸線と直交する方向に調節可能な調節手段を備えた手段を採用している。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るハンドピースは、請求項1に記載のハンドピースにおいて、前記本体部材と前記レーザプローブとが、調節手段を構成する取付け部材によって一体に接続され、前記取付け部材が、前記本体部材に接続する筒状部材と、前記レーザプローブに接続する保持部材とから構成されているという手段を採用している。
【0010】
そして、本発明の請求項3に係るハンドピースは、請求項2に記載のハンドピースにおいて、前記本体部材と前記筒状部材とが、相互に軸線方向に移動できるという手段を採用し、また、本発明の請求項4に係るハンドピースは、請求項2又は3に記載のハンドピースにおいて、前記筒状部材と前記保持部材とが、相互に軸線と直交する方向に移動できるという手段を採用している。
【0011】
さらに、本発明の請求項5に係るハンドピースは、請求項1乃至4の何れかに記載のハンドピースにおいて、前記導光体が、パイプ状であるという手段を採用している。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハンドピースは、これを組み立てる時に、導光体の入射側端部と集光レンズとの相対的な位置を軸線方向及び軸線と直交する方向に調節できるので、製作が容易にできるとともに、集光レンズや導光体を交換する場合等にも、容易に再調節ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図1〜5に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のハンドピース1は、CO2レーザ発信器からなるレーザ発生装置Lから導光されたレーザ光を収束光とするための集光レンズ24を備えた筒状の本体部材2と、前記収束光を被照射部へ導くための導光体32を備えたレーザプローブ3とを有している。
【0014】
また、本発明のハンドピース1は、導光体32の入射側端部と集光レンズ24との相対的な位置が軸線方向及び軸線と直交する方向に調節できるものである。図においては、本体部材2とレーザプローブ3とが、取付け部材4によって一体に接続されるとともに、この取付け部材4が調節手段を構成して位置の調節を可能としている。
【0015】
図2に示すように、本体部材2は、さらに主本体部材21、副本体部材22、ナット23、集光レンズ24及びレンズ押さえ25から構成されている。
筒状をなす主本体部材21は、その一端に導光路となるマニピュレータや光ファイバ(図示せず)等を接続するための雄ネジが、他端に副本体部材22を接続するための雌ネジが形成されている。
【0016】
主本体部材21の内部には、他端近傍に集光レンズ24が収納され、雄ネジを備えたレンズ押さえ25によって固定されるようになっている。そして、詳細な説明は省略するが、集光レンズ24の周辺には、主本体部材21の一端から他端に向かってガスを流すことができるように、ガス流通路が設けられている。
【0017】
副本体部材22の一端には雄ネジが形成され、主本体部材21の他端と螺合して一体化するようになっている。また、副本体部材22の他端には雌ネジが形成され、後述するように、ナット23とともに取付け部材4を調節可能に接続することができるようになっている。
【0018】
図3に示すように、レーザプローブ3は、プローブ本体31と、導光体32及び導光端部材33から構成されている。
プローブ本体31の一端側は、本体部材2と同様に筒状であるとともに、取付け部材4に接続するための雄ネジが形成されている。一方、他端側には導光体32を差し込むための細い挿入孔が開口しており、この挿入孔は一端側の内部に連通している。
【0019】
導光端部材33は、プローブ本体31の一端側からその内部に挿入され、螺合により固定される。導光端部材33の軸線方向に設けられた貫通孔は、その一端が収束光の入射口を形成し、他端側に導光体32の一端を固定することによって収束光の滑らかな導光路が形成するようになっている。
このように導光端部材33を使用する場合には、実際に収束光の入射口となる貫通孔の一端を導光体32の入射側端部と称することにする。
【0020】
導光体32としては、形成される導光路の断面積が小さく、また、導光路内でのエネルギー損失の少ないものが好ましい。例えば金属のパイプを用いて、その管内を導光路とする場合には、管内面を研磨したり、又はメッキやコーティングを施して、レーザ光の反射率を高めることが好ましい。
【0021】
また、導光体32の素材としては、本実施例ではレーザ光としてCO2レーザを採用しているので、パイプ状をした中空のガラスファイバを用い、外径を0.85mm、中空の内径を0.7mmの細管として形成している。このようなガラスファイバを使用する場合には、周囲をステンレスパイプで覆い、ガラスファイバの内面に銀メッキを施して反射率を高めることが好ましい。なお、レーザ光としてCO2レーザ以外のHo:YAGレーザ等を採用する場合は、中実のガラスファイバを用いることも可能である。
【0022】
図4に示すように、取付け部材4は、導光路を構成する筒状部材41、レーザプローブ3を保持する保持部材42、及び複数のネジ43により構成されている。
筒状部材41の一端側は、その外面に雄ネジが形成され、副本体部材22及びナット23の雌ネジと螺合するようになっている。
【0023】
したがって、本体部材2と筒状部材41とを相互に回転することにより、相互の位置を軸線方向に移動可能であり、調節することができる。また、調節された位置において、ナット23を締め付けることにより、その位置を固定することができる。この結果、導光体32の入射側端部と集光レンズ24との相対的な位置を軸線方向に調節することができ、これらにより軸線方向調節手段を構成している。
【0024】
筒状部材41の他端側は、内径を拡大させて段部44が形成されるとともに、外周面から内部に向けて複数のネジ43を備えている。一方、保持部材42の一端側には、この段部44に当接する端面45が形成されるとともに、その外周面が端面45側から縮径するテーパー状に形成され、このテーパー面を取り囲むようにネジ43が配置されている。したがって、ネジ43の先端をテーパー面に押し付けることにより、保持部材42の端面45を筒状部材41の段部44に押し付けて保持することができる。
【0025】
また、筒状部材41と保持部材42とは、複数のネジ43により、相互に軸線と直交する方向に移動することが可能であり、調節することができる。すなわち、複数のネジ43の筒状部材41内への突出量を、個々のネジ43について調節することにより、保持部材42の位置を軸線と直交する方向に調節することができるので、これらにより直交方向調節手段を構成している。複数のネジ43は、3本以上を必要とし、3〜4本使用することが好ましい。
【0026】
以上詳述したように、本発明のハンドピースは、導光体32の入射側端部と集光レンズ24との相対的な位置を、軸線方向及び軸線と直交する方向に調節することができる。したがって、導光体32の入射側端部が集光レンズ24の焦点と一致するように調節することができる。導光体32がパイプ状の細管である場合には、中空の内部にレーザ光を入射させる必要があり、高い精度が要求されることから、本発明のこのような特徴は非常に有効である。
【0027】
調節の結果は、図5に示すような焦点確認用冶具5を使用して確認することができる。筒状をなす焦点確認用冶具5の一端には、レーザプローブ3と同様に、保持部材42に取付けることができる雄ネジが設けられ、他端は閉塞されて一個の細孔のみが設けられている。細孔の位置は、保持部材42に取付けた場合に、導光体32の入射側端部と等しくなるように製作されている。したがって、焦点確認用冶具5をハンドピース1に取付けて、細孔から出射されるレーザ光の強度を測定することにより、調節結果を確認することができる。
【0028】
導光体32がパイプ状である場合には、管内に物が侵入するのを防ぐ必要があるので、導光路内に空気などのガスを送り込んで、導光体32の出射側端部から噴射させるようにしている。このため、集光レンズ24の外周部やレンズ押さえ25等の一部に、ガス流通路が形成されるように工夫されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のハンドピースの一例を示す全体断面図である。
【図2】本発明で用いる本体部材の一例を示す断面図である。
【図3】本発明で用いるレーザプローブの一例を示す断面図である。
【図4】本発明で用いる取付け部材の一例を示す断面図である。
【図5】本発明で用いる焦点確認用冶具の一例を示す断面図である。
【図6】従来のハンドピースの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1、101 ハンドピース
2 本体部材
21 主本体部材
22 副本体部材
23 ナット
24、102 集光レンズ
25 レンズ押さえ
3 レーザプローブ
31 プローブ本体
32、103 導光体
33 導光端部材
4 取付け部材
41 筒状部材
42 保持部材
43 ネジ
5 焦点確認用冶具
44 段部
45 端面
104 固定具
105 レーザ光
L レーザ発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発生装置から導光されたレーザ光を収束光とするための集光レンズを備えた筒状の本体部材と、前記収束光を被照射部へ導くための導光体を備えたレーザプローブとを有する医療用レーザ装置のハンドピースであって、前記導光体の入射側端部と前記集光レンズとの相対的な位置を、軸線方向及び軸線と直交する方向に調節可能な調節手段を備えたことを特徴とするハンドピース。
【請求項2】
前記本体部材と前記レーザプローブとが、調節手段を構成する取付け部材によって一体に接続され、前記取付け部材が、前記本体部材に接続する筒状部材と、前記レーザプローブに接続する保持部材とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドピース。
【請求項3】
前記本体部材と前記筒状部材とが、相互に軸線方向に移動できることを特徴とする請求項2に記載のハンドピース。
【請求項4】
前記筒状部材と前記保持部材とが、相互に軸線と直交する方向に移動できることを特徴とする請求項2又は3に記載のハンドピース。
【請求項5】
前記導光体が、パイプ状であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−198160(P2006−198160A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12925(P2005−12925)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(592057330)株式会社ニーク (3)
【Fターム(参考)】