説明

医療用接着剤を除去するための方法

医療用接着剤が付着した表面に、酢酸テトラヒドロフルフリル(THFA)を含む溶液を適用し、除去作用を促進するために表面を擦ることにより、接着剤を除去することができる。溶液を、表面に適用する前に、ワイパに適用し、表面を擦るために、このワイパを用いることができる。表面は、生きた人の皮膚、死んだ人の皮膚、動物の皮膚、或いは医療用器具等からなるものであって良い。更に、香料、皮膚軟化剤、その他の一般的な皮膚用製品やポリマ希釈剤等の追加の成分を溶液に添加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用接着剤を、皮膚や髪等の哺乳類の組織から除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用接着剤は、幅広い用途を有し、傷の包帯材、外科用ドレープ、テープ、センサ等を固定するために用いられたり、皮膚シール材や液体縫合材などとしても用いられる。
【0003】
外科用皮膚シール材として用いられる医療用接着剤は、手術に先立って、皮膚に適用され、微生物、細菌、皮膚の破片等を固定し、それらが手術部位に進入しないようにする。
【0004】
医療用接着剤は、バタフライ包帯や縫合糸と同様に、傷口或いは手術による切開部の両側を互いに結合し、傷口の治癒を促進する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療用接着剤は、通常、時間の経過と共に自然と剥がれ落ちる。しかしながら、手術の場合には、手術後に接着剤を除去する場合もある。接着剤を除去するためにアセトンが現在使われているが、可燃性であり、皮膚に刺激を与える心配があることから、手術の現場等に於いては、その適用が制限される場合がある。鉱物油、石鹸水等も用いられるが、十分に効果的であるとは言えない。
【0006】
接着剤除去剤は、皮膚を損傷させたり、強い臭気を発したり、可燃性であったりすることなく、接着剤を除去し得るものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、酢酸テトラヒドロフルフリル(THFA:tetrahydrofurfuryl acetate)が、外科手術の現場で一般的に用いられている医療用接着剤を溶解し得ることを見出した。発明者は、更に、香料、皮膚軟化剤、その他の皮膚用製品に一般的に用いられる希釈剤や、プラスチック或いは接着剤の分野で一般的に用いられる希釈剤を、約20重量%程度まで添加しても、溶剤としてのTHFAの特性を、それ程損なうことがないことを見出した。使用可能な希釈剤としては、限定的ではないが、大豆油、コーン油、サフラワ油等の植物油や、ビタミンE、シトラート、フタラート可塑剤、脂肪酸エステル、トリアセチン等がある。
【0008】
THFA溶液は、ユーザにより、ワイパを用いて、或いは液体の状態で皮膚に適用し、ワイパ等を用いて擦り付けられる。THFA溶液は、滅菌されたものでも、滅菌されていないものでも良く、溶液の量や、ワイパの粗さに応じて、それが適用される範囲を定めることができる。THFA溶液と共に用い得るワイパとしては、限定的ではないが、特許文献1〜4に記載されたものがある。
【特許文献1】米国特許第4,659,609号公報
【特許文献2】米国特許第4,775,582号公報
【特許文献3】米国特許第4,833,003号公報
【特許文献4】米国特許第4,853,281号公報
【0009】
THFA溶液の使用方法は、溶液及び溶液が適用されるべき、接着剤が付着した表面を提供するステップと、溶液を表面に適用するステップと、接着剤を除去する作用を促進するために、前記表面を擦るステップとを有する。上記したように、THFAを、表面に適用する前に、ワイパに適用し、表面を擦るステップにワイパを用いることができる。
【0010】
更に、接着剤除去剤を使用する方法を教授するためのシステムが提供され、このシステムは、接着剤除去剤が貯容された容器を提供するステップと、前記容器に、前記接着剤除去剤の使用方法として、前記接着剤除去剤を前記表面に適用するステップ及び除去作用を促進するために前記接着剤除去剤を前記表面上にて擦るステップを記載したラベルを付けるステップとを有する。
【0011】
表面から接着剤を除去するための組成物も提供され、この組成物は、酢酸テトラヒドロフルフリルと、香料、皮膚軟化剤、染料、着色料、植物油、ビタミンE、シトラート、フタラート可塑剤、脂肪酸エステル、トリアセチン及びこれらの混合物からなるグループから選択された成分とを含む。
【0012】
この接着剤除去剤は、医療用接着剤が付着したあらゆる表面に適用することができる。即ち、この接着剤除去剤は、意に反して接着剤が付着した、生きた人の皮膚、死んだ人の皮膚、動物の皮膚、髪、組織、カウンタトップ等の硬い表面、或いは医療用器具等から接着剤を除去するために用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
酢酸テトラヒドロフルフリルは、CAS登録番号637−64−9を有し、C12で表される分子式、144.17の分子量及び753mmHgに於いて194℃の沸点を有する。THFAの同義語としては、tetrahydro-2-furyl methyl acetate, 2-(acetoxymethyl) tetrahydrofuran, 2-acetoxymethyl oxolane 及び tetrahydro-2-furan methanol acetate がある。THFAは、不燃性であって、現在は、風味を付与するために、或いは香水の成分として利用されている。
【0014】
THFA溶液の例としては、以下のようなものがある。
a.100%THFA。米国ニュージャージー州Skillman所在のJohnson & Johnsonにより市販されているBAND-AID Liquid Bandage, Skin Crack Gel(登録商標名)を適用した後に、皮膚から、ポリオクチルシアノアクリレートを、迅速に除去することができる。しかしながら、接着剤除去後の皮膚は、やや白化し、かさかさした状態となり、脱脂されたものと見られる。
b.80%THFA+20%トリアセチン。米国ミネソタ州St. Paul所在の3M Consumer Health Careにより市販されているNexcare Liquid Bandageを適用した後に、皮膚から、ポリブチルシアノアクリレートを、簡単に除去することができる。
c.90%THFA+9%サフラワ油+1%ビタミンE。米国ミネソタ州St. Paul所在の3M Consumer Health Careにより市販されているIoban抗菌外科用ドレープから接着剤の残渣を、簡単に除去することができる。
【0015】
以上、本発明を特定の実施例について説明したが、これは本発明の概念を何ら限定するものではない。当業者であれば、本明細書に開示した態様から様々に変形、変更して実施することができる。本発明は、添付の請求の範囲に記載されものと均等な範囲で、このような変形或いは変更を含むものであることを了解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から接着剤を除去するための方法であって、
接着剤が付着した表面を提供するステップと、
接着剤除去剤を提供するステップと、
前記接着剤除去剤を前記表面に適用するステップと、
除去作用を促進するために前記接着剤除去剤を前記表面上にて擦るステップとを有し、
前記接着剤除去剤が酢酸テトラヒドロフルフリル(tetrahydrofurfuryl acetate)を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面が皮膚であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面が生きた人の皮膚であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面が死んだ人の皮膚であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記表面が動物の皮膚であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記表面が組織であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接着剤除去剤が、更に香料、皮膚軟化剤、染料、着色料、植物油、ビタミンE、シトラート、フタラート可塑剤、脂肪酸エステル、トリアセチン及びこれらの混合物からなるグループから選択された成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
表面から接着剤を除去するための方法であって、
接着剤が付着した表面を提供するステップと、
接着剤除去剤を提供するステップと、
前記接着剤除去剤をワイパに適用するステップと、
除去作用を促進するために前記ワイパを前記表面上にて擦るステップとを有し、
前記接着剤除去剤が酢酸テトラヒドロフルフリルを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記表面が皮膚であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面が生きた人の皮膚であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記表面が死んだ人の皮膚であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記表面が動物の皮膚であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記表面が組織であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記接着剤除去剤が、更に香料、皮膚軟化剤、染料、着色料、植物油、ビタミンE、シトラート、フタラート可塑剤、脂肪酸エステル、トリアセチン及びこれらの混合物からなるグループから選択された成分を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
表面から接着剤を除去するための組成物であって、
酢酸テトラヒドロフルフリルと、
香料、皮膚軟化剤、染料、着色料、植物油、ビタミンE、シトラート、フタラート可塑剤、脂肪酸エステル、トリアセチン及びこれらの混合物からなるグループから選択された成分とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項16】
接着剤除去剤を使用する方法を教授するためのシステムであって、
前記接着剤除去剤が貯容された容器を提供するステップと、
前記容器に、前記接着剤除去剤の使用方法として、前記接着剤除去剤を前記表面に適用するステップ及び除去作用を促進するために前記接着剤除去剤を前記表面上にて擦るステップを記載したラベルを付けるステップとを有し、
前記接着剤除去剤が酢酸テトラヒドロフルフリルを含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−506190(P2009−506190A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529051(P2008−529051)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030615
【国際公開番号】WO2007/027371
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】