説明

医療用撮影装置及びこの医療用撮影装置を備えたインスツルメント装置

【課題】本発明は、光反射部材により観察対象となる処置部位に照明を与えて撮影する小型の撮影装置を提供することを目的とする。
【解決手段】インスツルメント装置2に固定される医療用撮影装置1は、インスツルメント装置2による処置の対象となる処置部位からの光を反射させる光反射部材11と、光反射部材11からの反射光が入射されることで処置部位を撮影する撮像部12とを備える。そして、撮像部12で撮影された画像による画像信号は、撮影制御装置3で鏡像反転処理がなされた後、画像表示装置4に出力されるため、鏡像反転のない処置部位の画像が画像表示装置4に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置部位を撮影する医療用撮影装置に関するもので、特に、医科用又は歯科用のインスツルメント装置により処置されている処置部位を撮影する医療用撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、術者は、インスツルメント装置による治療の対象となる処置部位を観察するために、肉眼による直接観察以外に、デンタルミラーを用いて観察することが一般的であった。しかしながら、デンタルミラーを用いた観察では、術者は、デンタルミラーを持ちながらインスツルメント装置を操作する必要がある。術者にとっても煩雑な操作となるだけでなく、施術者にも無理な姿勢を強いるなどのため、疲労と苦痛を与えることとなる。更に、臼歯の場合などで施術部位の周囲に十分な空間がない場合は、インスツルメント装置とデンタルミラーを同時に口腔内の適切な位置に挿入することができず、明視下で施術を行うことが不可能である。
【0003】
このような歯科治療における問題点を解消するべく、処置部位を観察する観察光学系を備えた内視鏡であって、歯科用処置装置(インスツルメント装置)へ着脱自在とする固定手段を備えた歯科用内視鏡が提案されている(特許文献1参照)。又、その内部に撮像素子を備えてモニター機能が付与された、歯科用治療器具(インスツルメント装置)が提案されている(特許文献2参照)。そして、特許文献1の歯科用内視鏡及び特許文献2の歯科用治療器具のそれぞれは、ライトガイドを備えるため、観察対象となる処置部位を明るく照らすことができる。
【0004】
更に、医科分野では、外科手術などにおいて、術者がその処置部位の状態を観察するために、内視鏡が使用されている。この内視鏡を使用した外科手術では、術者とは別の助士により操作される内視鏡で撮影した画像を、別体のモニタディスプレイに表示することで、術者が、処置部位となる術部の状態を確認できる(特許文献3参照)。そして、特許文献3の画像処理表示装置は、内視鏡から出力される画像信号に対して、その画像を左右反転させる処理を選択的に施して、モニタディスプレイに出力するものである。この画像処理表示装置を用いることで、内視鏡で撮影している画像を、術者が観察しやすいように、モニタディスプレイ上に表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−288132号公報
【特許文献2】特許第3151009号公報
【特許文献3】特開平07−184849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1の歯科用内視鏡及び特許文献2の歯科用治療器具はそれぞれ、観察対象となる処置部位への光を照射し、その処置部位を明るい状態で撮影できる構成となっている。しかしながら、特許文献1の歯科用内視鏡、及び特許文献2の歯科用治療器具のいずれについても、対物レンズから固体撮像素子までの光路が長く、特許文献1においては、複数のプリズムによるプリズム群を必要とし、特許文献2においては、イメージガイドを必要とする。
【0007】
そのため、特許文献1の構成においては、プリズムの設置状態によっては、その透過光量にバラツキが生じることがある。又、特許文献2の構成においては、イメージガイドの形状が屈曲した形状となるため、イメージガイドを透過する光量にバラツキが生じてしまう。これらの結果により、固体撮像素子で受光する光量にバラツキが生じ、固体撮像素子で撮像された画像の精度が低くなるという問題が発生する。又、特許文献1及び特許文献2のいずれにおいても、照明用の光路と撮影用の光路とを別の部材によって構成しているので、装置が大型化してしまうという問題もある。更に、特許文献3においては、内視鏡は、術者とは別の助士によって操作されるものであり、術者によって操作される器具に付属させる構成について開示されていない。
【0008】
このような問題を鑑みて、本発明は、光反射部材により観察対象となる処置部位に照明を与えて撮影する小型の撮影装置を提供することを目的とする。又、本発明は、このような撮影装置を備えることで、処置部位の撮影と処置部位への処置とを同時に行うことが可能なインスツルメント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の医療用撮影装置は、処置部位である被写体からの光が入射される光反射部材と、該光反射部材からの反射光が入射されて前記光反射部材に投影された前記被写体を撮影し、前記被写体の鏡面画像となる画像信号を出力する撮像部と、前記光反射部材に光を照射し、そこからの反射光を前記被写体に照射させる発光部と、前記撮像部から出力される画像信号を鏡面反転させた画像信号を生成する画像反転処理部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成の医療用撮影装置において、前記光反射部材の光の入出射面にガスを噴射する反射部材用ガス噴射部を、更に備えるものとしてもよい。これにより、前記光反射部材にガスを噴射し、前記光反射部材の入出射面が曇ることを防ぐことができる。又、前記撮像部の光の入射面に対してガスを噴射する撮像部用ガス噴射部を、更に備えることで、前記撮像部の入射面が曇ることを防ぐものとしてもよい。
【0011】
更に、上記のいずれかの医療用撮影装置において、把持部と、該把持部に対して角度を有し、前記処置部位に所定の処置を施す工具が設けられるヘッド部と、を備えたインスツルメント装置に対して、着脱自在に固定する固定用部材を、更に備え、前記撮像部が、前記固定用部材によって前記インスツルメント装置に装着されたとき、前記ヘッド部近傍位置に前記反射部材が固定され、前記工具の先端に位置する前記処置部位の画像による画像信号を取得するものとしてもよい。
【0012】
このとき、前記固定部材が、前記インスツルメント装置の前記把持部を内側に通すC字形状の止め具と、当該止め具の切欠部分とネジで螺接される雌ネジ部材とによって、構成されるものとしてもよい。又、前記固定部材が、前記インスツルメント装置の前記把持部を挟持するクリップによって構成されるものとしてもよい。
【0013】
上述の医療用撮影装置は、前記画像反転処理部で生成された画像信号を外部のモニタディスプレイに出力する出力端子を更に備え、例えば、治療実習といった教育用のために該モニタディスプレイに処置部位の様子を表示させるものとしてもよい。このとき、術者の音声が入力されるマイクと、マイクから入力された術者の音声を再生出力するスピーカとを設置することで、術者が、施術と同時にその説明を行えるものとできる。
【0014】
又、上述の医療用撮影装置は、前記画像反転処理部で生成された画像信号を、術者が装着できるヘッドマウントディスプレイに出力するものであってもよい。これにより、前記医療用撮影装置がインスツルメント装置に付属されて使用されるとき、術者は、処置部位を肉眼で直接観察しながら、前記医療用撮影装置で撮影されている処置部位の画像をも見ることができる。
【0015】
本発明のインスツルメント装置は、把持部と、該把持部に対して角度を有するとともに前記処置部位に所定の処置を施す工具が設けられるヘッド部と、を備えたインスツルメント装置であって、上記のいずれかの医療用撮影装置を、更に備え、前記光反射部材が、前記ヘッド部近傍位置に固設され、前記撮像部が、前記工具の先端に位置する前記処置部位の画像による画像信号を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、被写体から撮像部までの光路と、発光部から被写体までの光路とに重なるように光反射部材が設置されるため、従来のように、発光部及び撮像部それぞれに対して、光を誘導するための光学部材を設ける必要がない。又、被写体からの光を光反射部材によって誘導するため、従来のように、プリズム群や屈曲させたイメージガイドなどといった複雑な機構を設ける必要がなく、撮像部で撮影される画像を光量ムラのない高精度なものとできる。更に、光反射部材により、被写体から発光部又は撮影部までの光路を切り換えることができるので、従来と比べて、その構成を簡単化できるだけでなく、装置自体を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は、本発明の医療用撮影装置を用いたシステムの構成を示す図である。
【図2】は、本発明の医療用撮影装置の構成を示す部分断面図である。
【図3】は、図2の医療用撮影装置の光反射部材の構成を説明するための概略断面図である。
【図4】は、図2の医療用撮影装置の撮像部の構成を説明する概略断面図である。
【図5】は、本発明の医療用撮影装置の別の構成を示す部分断面図である。
【図6】は、本発明の医療用撮影装置における固定部材の一例を示す概略断面図である。
【図7】は、本発明の医療用撮影装置における固定部材の別例を示す概略断面図である。
【図8】は、本発明の医療用撮影装置を内蔵したインスツルメント装置の部分断面図である。
【図9】は、本発明の医療用撮影装置をエアスケーラハンドピースに固定したときの状態を示す外観図である。
【図10】は、撮影制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<医療処置用システムの全体構成>
本発明の医療用撮影装置を用いたインスツルメント装置による医療処置用システムの基本となる全体構成について、図面を参照して以下に説明する。図1は、本発明の医療用撮影装置とインスツルメント装置とを中心とした医療処置用システムの基本構成の概略を示すブロック図である。
【0019】
図1に示す医療処置用システムは、術者によって操作されるインスツルメント装置2と、このインスツルメント装置2に付属される医療用撮影装置1と、医療用撮影装置1の撮影動作を制御する撮影制御装置3と、撮影制御装置3で生成された画像信号を受けて画像を再生表示する画像表示装置4と、医療用撮影装置1及びインスツルメント装置2それぞれに供給する不活性ガス又は圧縮空気(以下、単に「ガス」と呼ぶ)を生成するコンプレッサ5と、コンプレッサ5からインスツルメント装置2への給気管路51に設けられた制御弁53と、給気管路51から分岐されて医療用撮影装置1へ接続される給気管路52に設けられた制御弁54と、制御弁53,54それぞれの開閉制御や撮影制御装置3及び画像表示装置4それぞれの駆動制御を行う全体制御部6と、術者による操作を受け付ける操作部7とを備える。図1では、点線による矢印が制御信号を表し、実線による矢印が画像信号を表す。
【0020】
このように構成される医療処置用システムにおいて、コンプレッサ5からの給気管路51を主配管として、給気管路52が分岐されるものを例に挙げて説明するが、給気管路51及び給気管路52それぞれが共に、コンプレッサ5からの主配管から並列に分岐した構成であってもよい。更に、給気管路51,52以外に、インスツルメント装置2に対して水を供給する給水管路が設けられる構成であってもよい。又、操作部7は、術者によって操作されるものであれば、インスツルメント装置2に設けられるスイッチであってもよいし、術者が足で操作するフットコントローラであってもよい。そして、操作部7については、インスツルメント装置2、撮影制御装置3、及び画像表示装置4それぞれに対応して別体で構成されるものとしてもよいし、インスツルメント装置2、撮影制御装置3、及び画像表示装置4それぞれに対して一体に設けられるものであってもよい。
【0021】
そして、給気管路52からのガスは、医療用撮影装置1に設けられる後述の管路を通じて、医療用撮影装置1の先端まで誘導され、医療用撮影装置1の撮影部及び反射部材それぞれに噴射されることで、曇り止め用のガスとして使用される。即ち、インスツルメント装置2の使用時に噴霧される水により、医療用撮影装置1の撮影部及び反射部材それぞれの表面が曇ることを防ぐために、給気管路52から供給されるガスが噴射される。この給気管路52から供給されるガスは、操作部7が受け付けた術者の操作に基づいて、全体制御部6が制御弁54の開閉動作を制御することで、その噴射の開始及び停止が制御される。
【0022】
このとき、インスツルメント装置2の駆動タイミングに同期して、医療用撮影装置1へのガスの噴射を行うように、操作部7でインスツルメント装置2の駆動を受け付けたときに、全体制御部6が制御弁54を開くように制御してもよい。又、給気管路52を、給気管路51における制御弁53の下流側で分岐させるとともに、制御弁54を省いた構成としてもよい。このように構成することで、制御弁53の開閉により、医療用撮影装置1に対するガスの供給の開始及び停止を、インスツルメント装置2に対するガスの供給の開始及び停止と同時に制御できる。特に、後述するように、インスツルメント装置2を医療用撮影装置1と一体化させる場合は、装置の小型化の観点から、インスツルメント装置2内において、給気管路52を給気管路51より分岐させることが好ましい。
【0023】
1.医療用撮影装置
上記の医療処置用システムにおける医療用撮影装置1について、その詳細を以下に説明する。医用量撮影装置1は、図1に示すように、インスツルメント装置2による処置の対象となる処置部位からの光を反射させる光反射部材11と、光反射部材11からの反射光が入射されることで処置部位の撮影を行う撮像部12とを備える。尚、インスツルメント装置2として、例えば、図1に示すように、術者によって把持される把持部21と、把持部21の先端側に設けられたエアータービンを内蔵したヘッド部22と、ヘッド部22に取り付けられるバー(切削工具)23と、を備えたコントラアングルタイプのエアータービンハンドピースが用いられるものとする。
【0024】
このエアータービンハンドピースとなるインスツルメント装置2は、把持部21内部に、ヘッド部22に設けられたエアータービンを回転させるためのガスを供給する給気管路が設けられるとともに、エアータービンの回転作用を行ったガスを排気する排気管路が設けられる。そして、把持部21内に設けられる給気管路は、上述した給気管路51と接続されることで、コンプレッサ5で圧縮されたガスをエアータービンに供給できる。又、把持部21内の排気管路は、コンプレッサ5と接続された不図示の排気管路と接続されるため、エアータービンを回転させた後に排気されるガスは、コンプレッサ5に供給されて再び圧縮するようにしてもよいし、コンプレッサ5の手前で大気中に開放してもよい。
【0025】
1−1.光反射部材
撮像部12は、その軸方向がインスツルメント装置2の長手方向に対して略垂直方向に着脱されるバー23の先端に位置する処置部位を被写体として撮影する。そのため、バー23の先端から撮像部12までの光路を形成するように、光反射部材11の反射面がインスツルメント装置2の長手方向に対して傾斜を有する。即ち、図2に示す医療用撮影装置1の長手方向に対して平行な方向の断面図のように、光反射部材11は、インスツルメント装置2の長手方向に対してバー23と同位置に位置する場合、光反射部材11の反射面が、バー23の軸方向及び撮像部12の端面のそれぞれに対して略45°となるように設置される。尚、図2は、医療用撮影装置1の長手方向及びバー23の軸方向それぞれに平行な面による概略断面図である。又、光反射部材11の反射面の角度は、バー23の先端からの光を、撮像部12の端面に垂直な方向に反射させる角度であればよく、図2の断面図に示す角度に限定されるものではない。
【0026】
又、撮像部12の軸方向は、インスツルメント装置2の把持部21の軸方向に対して略平行となるとともに、バー23の軸方向に対して略垂直となる。更に、図3に示す医療用撮影装置1の長手方向に対して垂直な方向の断面図のように、光反射部材11の反射面が、バー23から反射面の中心位置を結ぶ直線に対して垂直な面とされる。よって、バー23の先端位置からの光は、光反射部材11で反射して、撮像部12の端面に対して垂直に入射される。そのため、バー23の先端に位置する被写体となる処置部位が、光反射部材11を介して撮像部12に投影され、撮像部12が、光反射部材11による鏡像反転された被写体(処置部位)を撮像する。このように設置される光反射部材11は、処置部位を撮像部12に反射投影させるものであれば、鏡体又はプリズムのいずれで構成されていてもよい。
【0027】
1−2.撮像部
図2の断面図に示すように、撮像部12は、光の入出面となる端面に、防水ガラス201が設置されるとともに、その内部には、複数の光学レンズ群で構成される光学系202と、光学系202からの光が入射される固体撮像素子203と、光学系202及び固体撮像素子203よりも外周側に設置される発光素子204と、を備える。即ち、医療用撮影装置1の長手方向に対して、その端面側から順に、防水ガラス201、光学系202、及び固体撮像素子203のそれぞれが設置される。そして、図4に示すように、医療用撮影装置1の端面の径方向に対して、その中心位置に、光学系202及び固体撮像素子203が設置されるとともに、光学系202の外径側に、発光素子204が設置される。このように撮像部12が構成されるとき、固体撮像素子203として、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide
Semiconductor)センサなどが用いられる。又、発光素子204として、LED(Light Emitting Diode)などが用いられる。
【0028】
このように撮像部12が構成されることで、発光素子204が発光することで、防水ガラス201を介して、撮像部12の端面より光反射部材11に対して光を照射する。よって、光反射部材11は、撮像部12の発光素子204から照射される光を反射させて、バー23の先端周辺に照射する。即ち、撮像部12の発光素子204が、被写体となる処置部位への照明として機能する。この発光素子204は、撮像部12の端面の周方向に対して複数位置に設置されることで、被写体となる処置部位へ照射する光の照度を高くするとともに、照射範囲を広げることができる。又、発光素子204から照射される光は、その照射範囲を広げるために拡散するものとしてもよい。
【0029】
このように、発光素子204からの光が照射される処置部位(被写体)は、光反射部材11により鏡像反転されて、防水ガラス201及び光学系202を介して、固体撮像素子203に投影される。よって、固体撮像素子203は、処置部位(被写体)の鏡像反転画像となる画像を撮像し、撮像した画像による画像信号を、電気信号として撮影制御装置3に出力する。又、固体撮像素子203は、撮影制御装置3から与えられる同期信号によって、水平走査及び垂直操作を行うことで、光電変換動作を行い、シリアル信号となる画像信号を撮影制御装置3に出力する。
【0030】
1−3.曇り止め用の給気管路
医療用撮影装置1は、インスツルメント装置2のヘッド部22より処置部位へ噴霧される水によって、光反射部材11の鏡面、及び撮像部12の端面のそれぞれに水滴が付着する。よって、医療用撮影装置1は、この水滴の付着を防ぐために、光反射部材11の鏡面、及び撮像部12の端面にガスを噴射する構造として、図2に示すように、その先端に噴射口を備えた給気管路13,14を備える。即ち、医療用撮影装置1には、その上流側が給気管路52に接続されて分岐される2本の給気管路13,14が設けられる。そして、給気管路13の先端に設けられた噴射口301が光反射部材11の鏡面に向かって形成され、給気管路14の先端に設けられた噴射口401が撮像部12の端面に向かって形成される。
【0031】
又、給気管路13及び給気管路14は、図4の撮像部11の端面近傍位置での概略断面図に示すように、インスツルメント装置1と撮影部11の外周側面の間において、医療用撮影装置1の長手方向に沿うように設置される。更に、図示しないが、撮像部12の基部に接続されるチューブには、給気管路13,14と接続する給気管路52と、撮像部12への電力供給線及び信号線とが、内装されている。尚、チューブ内部において、給気管路52が分岐して給気管路13,14と接続されるものであってもよいし、チューブの外部で給気管路52が分岐し、チューブ内に給気管路13,14が内装されるものであってもよい。
【0032】
そして、給気管路13は、その先端が光反射部材11の鏡面に向かって延びるように設置されるとともに、噴射口301が、給気管路13の先端で光反射部材11の鏡面に対向するように開口した構成となる。よって、給気管路13を流れるガスは、噴射口301から光反射部材11の鏡面に噴射されて、光反射部材11の鏡面に付着しようとする水滴を吹き飛ばすため、光反射部材11の鏡面の曇り止めとして作用する。一方、給気管路14は、その先端が撮像部12の端面より光反射部材11側に若干突出させた位置となるように、設置されるとともに、噴射口401が、撮像部11の端面の外周側から中心に向かう方向に開口した構成となる。よって、給気管路14を流れるガスは、噴射口401から撮像部12の端面に噴射されて、撮像部12の端面に付着しようとする水滴を吹き飛ばすため、撮像部12の端面の曇り止めとして作用する。
【0033】
尚、上述の構成では、光反射部材11及び撮像部12それぞれの曇り止めとして作用するガスを噴射するために、2本の給気管路13,14を備えたものとしたが、図5に示すように、噴射口301,401それぞれを備えた1本の給気管路16を備えるものとしてもよい。即ち、給気管路16は、その先端が光反射部材11の鏡面に向かって延びた構成とされる。この給気管路16において、光反射部材11の鏡面と対向するように開口した噴射口301が、その先端位置に設置されるとともに、撮像部12の端面の中心に向かうように開口した噴射口401が、撮像部12の端面の近傍位置に設置される。
【0034】
1−4.医療用撮影装置のインスツルメント装置への固定方法
このような医療用撮像装置1は、インスツルメント装置2に対して着脱自在とするため、図6に示すような固定部材17が設けられる。この固定部材17は、円筒に対して軸方向の切欠を設けたC字形状の断面を有するインスツルメント装置2側のインスツルメント固定部701と、インスツルメント固定部701の切欠から突出させた2枚の平板で形成される医療用撮影装置1側の撮影装置固定部702と、撮影装置固定部702と医療用撮影装置1とを螺接するネジ703とによって構成される。
【0035】
このように固定部材17が構成されるとき、弾性を備えたインスツルメント固定部701の切欠部からインスツルメント装置2を嵌め込むことで、インスツルメント固定部701の内側にインスツルメント装置2が挿入される。このとき、インスツルメント装置2は、その外周面がインスツルメント固定部701の内周面に当接されることで、インスツルメント固定部701に保持される。そして、インスツルメント固定部701の切欠部に設けられた2枚の平板による撮影装置固定部702の間隙に、医療用撮影装置1を挿入し、医療用撮影装置1を撮影装置固定部702で挟持させた状態とする。この撮影装置固定部702を構成する平板と医療用撮影装置1とをネジ703で螺接して、撮影装置固定部702に医療用撮影装置1を固定することで、医療用撮影装置1を固定部材17によってインスツルメント装置1に固定設置させる。
【0036】
上述の固定部材17以外に、図7に示すような固定部材18によっても、医療用撮影装置1をインスツルメント装置2に対して着脱自在とできる。この固定部材18は、医療用撮影装置1の上下を挟むように医療用撮影装置1の外周面に接続された2枚の略円弧形状の湾曲板801によって構成される。2枚の湾曲板801はそれぞれ弾性を有し、固定部材18は、2枚の湾曲板801における医療用撮影装置1との接続部分と反対側となる端辺によって形成される空隙からインスツルメント装置2の挿入が可能な構成とされる。即ち、固定部材18は、医療用撮影装置1から外側側面から突出させた2枚の湾曲板801でインスツルメント装置2を挟持できるクリップとして作用し、この固定部材18によって、インスツルメント装置2に医療用撮影装置1が固定設置される。
【0037】
1−5.医療用撮影装置と一体化したインスツルメント装置の構成例
上述のように、医療用撮影装置1をインスツルメント装置2と別体とし、固定部材17,18のいずれかによって、医療用撮影装置1をインスツルメント装置2の固定設置するものとしてもよいし、医療用撮影装置1をインスツルメント装置2に組み込むものとしてもよい。以下では、医療用撮影装置1と一体化したインスツルメント装置2について、図8の概略断面図を参照して説明する。
【0038】
図8に示すインスツルメント装置2は、把持部21内部において、そのヘッド部22側に医療用撮影装置1を備える。把持部21内には、ヘッド部22内のエアータービンを駆動するためのガスを供給するための給気管路211と、エアータービンの回転させたガスを排気するための排気管路212とを備える。この給気管路211及び排気管路212よりも下側(バー23の先端側)に、医療用撮影装置1が設置される。このとき、医療用撮影装置1の光反射部材11の先端側が、把持部21のケース213の内壁に当接するように設置されるなどのように、医療用撮影装置1は、可能な限りケース213の下側(バー23の先端側)の内壁に近い位置に設置される。又、医療用撮影装置1の光反射部材11の設置位置を、把持部21とヘッド部22との境界部分とするなどのように、医療用撮影装置1は、可能な限りバー23側となる位置に設置される。
【0039】
このように、医療用撮影装置1が内蔵されるとき、把持部21のケース213は、医療用撮影装置1の光反射部材11の鏡面と対向する部分に、把持部21内への防水を行うとともに外部からの光を入光させるための防水ガラス214を具備する。この防水ガラス214は、バー23の先端周辺からの光が光反射部材11に入射できる位置に設置される。そして、光反射部材11は、その鏡面の傾斜が、撮像部12の端面に垂直な軸方向に対して45°よりも開いた角度とされ、バー23の先端周辺からの光を撮像部12の端面に対して垂直な方向に反射する。
【0040】
これにより、撮像部12の発光素子204から出射される光が、光反射部材11で反射した後に、防水ガラス214を透過して、バー23の先端周辺を照射する。この発光素子204からの光によって照明された処置部位(被写体)は、その光が防水ガラス214を透過した後に光反射部材11で反射されて、撮像部12の固体撮像素子203に投影される。よって、インスツルメント装置2に内蔵された医療用撮影装置1は、その撮像部12によって、照明された被写体となる処置部位の鏡像を撮影する。
【0041】
又、インスツルメント装置2は、防水ガラス214の曇り止めを目的として、その先端を防水ガラス214の縁側まで延ばされるとともにその先端に噴射口を設けた構造を有する給気管路215を備える。この給気管路215は、図8の構成例では、上述の給気管路51(図1参照)と接続される、エアータービン駆動用の給気管路211から分岐されるとともに、把持部21のケース213を貫通した構成とされる。これにより、ヘッド部22内のエアータービンを駆動するために、給気管路211よりガスの供給がなされるとき、給気管路215にもガスが流れるため、給気管路215から防水ガラス214にガスが噴射されて、防水ガラス214への水滴の付着を防ぐことができる。又、この給気管路215は、上述の給気管路52(図1参照)と接続され、エアータービン駆動用の給気管路211と別系統としても構わない。
【0042】
尚、インスツルメント装置2として、エアータービンハンドピースを例に挙げて説明したが、把持部21にマイクロモータが設置されたマイクロモータハンドピースとしてもよい。インスツルメント装置2をマイクロモータハンドピースとする場合、給気管路51によりマイクロモータ用の冷却ガスやバー23へ噴射するガスなどが給気され、この給気管路51から分岐された給気管路52より曇り止め用のガスが医療用撮影装置1に供給される。このマイクロモータハンドピースは、歯科用、耳鼻科用、及び外科手術用それぞれのハンドピースとして構成できる。
【0043】
又、切削工具を、振動の伝播によって歯面清掃や歯垢除去などの処置を行うスケーラチップ24とすることも可能である。このとき、インスツルメント装置2として、超音波スケーラハンドピースとしてもよいし、エアスケーラハンドピースとしてもよい。このとき、図9の概略図に示すように、インスツルメント装置2の長手方向に対して、スケーラチップ24の先端部分よりも把持部21側に、光反射部材11が位置するように、医療用撮影装置1が設置される。そして、屈曲したスケーラチップ24の先端部分からの光を撮像部12の端面に向かって反射させるように、光反射部材11の鏡面の傾きが設定される。
【0044】
2.撮影制御装置
上述の医療用撮影装置1の撮像部12の制御を行う撮影制御装置3について、図10のブロック図を参照して以下に説明する。図10に示すように、撮影制御装置3は、医療用撮影装置1の撮像部12内の固体撮像素子203及び発光素子204に対して制御信号を出力する撮影制御部31と、撮像部12の固体撮像素子203から出力される画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部32と、A/D変換部32からの画像信号を一時的に記憶する画像メモリ33と、画像メモリ33に対して画像信号の書込及び読み出しを行うメモリ制御部34と、メモリ制御部34で読み出された画像信号に対して鏡像反転する処理を施す反転処理部35と、反転処理部35で鏡像反転された画像信号に対してエッジ強調処理やグラデーション処理などの各種画像処理を施す画像処理部36と、画像処理部36で画像処理が施された画像信号をコンポジット信号又はコンポーネント信号等の画像表示装置4で処理可能な方式の画像信号に変換して出力するインターフェース37と、を備える。
【0045】
このように構成される撮影制御装置3は、操作部7の操作を受け付けた全体制御部6より指令が与えられると、固体撮像素子203及び発光素子204それぞれに対して、制御信号を撮影制御部31から出力する。例えば、インスツルメント装置2による処置動作と同時に医療用撮影装置1による撮影動作がなされる場合、インスツルメント装置2のエアータービンを駆動するために操作部7が操作されたとき、操作部7からの信号を受け付けた全体制御部6が、撮影制御装置3に指令を与える。この全体制御部6からの指令を受けた撮影制御装置3は、発光素子204を発光させるとともに、固体撮像素子203に制御信号を与えて、フレーム毎に水平走査及び垂直走査させ、画素毎にシリアルに並んだ画像信号を出力させる。
【0046】
この固体撮像素子203から出力される、シリアル方式のアナログ信号となる画像信号は、撮影制御装置3のA/D変換部32に入力されて、デジタル信号に変換された後、メモリ制御部34に与えられる。そして、メモリ制御部34によって、A/D変換部32でデジタル信号に変換された画像信号が、画像メモリ33に書き込まれて、一時的に記憶される。画像メモリ33では、1フレームの画像信号が、画素毎にアドレスが指定されて、順次記憶される。その後、メモリ制御部34は、画像メモリ33に記憶している画像信号を1ライン毎に読み出して、反転処理部35に出力する。
【0047】
反転処理部35では、メモリ制御部34より出力される画像信号を、1ライン分毎に、固体撮像素子203上での水平走査と逆の順番に反転させることで、1フレームの画像を鏡像反転させた画像信号を生成する。このようにして、反転処理部35で鏡像反転された画像信号は、画像処理部36で各種の画像処理が施された後、インターフェース37で、画像表示装置4の入力方式に応じた画像信号に変換される。よって、インターフェース37とケーブルで接続された画像表示装置4は、鏡像反転された画像信号が入力されるため、医療用撮影装置1の光反射部材11で鏡像反転された後に撮影処理装置3で更に鏡像反転された処置部位(被写体)の画像を、再生表示することができる。即ち、画像表示装置4上には、鏡像反転のない処置部位(被写体)による画像が再生表示される。
【0048】
尚、1ラインの画像信号毎に鏡像反転させることで、鏡像反転された1フレームの画像信号が取得できるものとしたが、メモリ制御部34により画像メモリ33から読み出されるラインの順番を反転させることで、鏡像反転された1フレームの画像信号が取得されるものとしてもよい。又、1ラインの画像信号毎に鏡像反転させる場合、画像メモリ33については、2ライン分以上の画像信号が記憶できるラインメモリによって構成できる。このとき、例えば、入力側のラインメモリを、画素毎の信号が走査順に入力されるシフトレジスタとするとともに、出力側のラインメモリを、入力時と逆の順に画素像毎の信号が出力されるシフトレジスタとする。そして、入力側のラインメモリから出力側のラインメモリへは1ライン分の各画素の画像信号がパラレルに与えられるように構成することで、2ライン分のラインメモリによって画像メモリを構成することができる。
【0049】
このような撮影制御装置3からの画像信号を受けて画像の再生表示を行う画像表示装置4として、音声信号の入力も可能な大型のディスプレイを用いることができる。即ち、術者の音声を電気信号である音声信号に変換するマイクと接続された大型ディスプレイを画像表示装置4とすることで、例えば、図1に示す医療処置用システムを医療教育用に使用できる。即ち、術者がインスツルメント装置2で処置している処置部位を、医療用撮影装置1で撮影して、画像表示装置4に表示させて、処置部位への処置内容を学生に示すことができる。このとき、術者が処置内容を術者がマイクに対して発話した音声を画像表示装置4に備えられたスピーカから出力できるため、術者は、画像表示装置4に映し出されている処置部位に関して音声で説明できる。
【0050】
又、画像表示装置4として、術者の頭部に装着できるヘッドマウントディスプレイを用いることも可能である。このように、医療用撮影装置1で撮影された画像を再生表示できる画像表示装置4を術者がヘッドマウントディスプレイとして装着することで、術者は、処置部位を肉眼で直接観察しながら、ヘッドマウントディスプレイに再生される処置部位の別角度からの映像も同時に観察できる。又、画像表示装置4をヘッドマウントディスプレイとした医療処置用システムを歯科医療用とした場合、医療用撮影装置1をデンタルミラーの代替とでき、術者の処置の煩雑さが解消されるだけでなく、患者への負担も低減される。
【0051】
更に、図1に示す医療処置用システムを歯科医療用ユニットに構成した場合、患者に施術内容を説明するために利用するためのディスプレイを画像表示装置4として用いても良い。画像表示装置4を患者が観察可能な構成とすることで、術者は、画像表示装置4に映し出された処置部位を処置しながら、施術内容などを患者に説明することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 医療用撮影装置
2 インスツルメント装置
3 撮影制御装置
4 画像表示装置
5 コンプレッサ
6 操作部
11 光反射部材
12 撮像部
13,14,16 給気管路
17,18 固定部材
21 把持部
22 ヘッド部
23 バー(切削工具)
24 スケーラチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置部位である被写体からの光が入射される光反射部材と、
該光反射部材からの反射光が入射されて前記光反射部材に投影された前記被写体を撮影し、前記被写体の鏡面画像となる画像信号を出力する撮像部と、
前記光反射部材に光を照射し、そこからの反射光を前記被写体に照射させる発光部と、
前記撮像部から出力される画像信号を鏡面反転させた画像信号を生成する画像反転処理部と、
を備えることを特徴とする医療用撮影装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記光反射部材の光の入出射面にガスを噴射する反射部材用ガス噴射部を、更に備えることを特徴とする医療用撮影装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記撮像部の光の入射面に対してガスを噴射する撮像部用ガス噴射部を、更に備えることを特徴とする医療用撮影装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
把持部と、該把持部に対して角度を有し、前記処置部位に所定の処置を施す工具が設けられるヘッド部と、を備えたインスツルメント装置に対して、着脱自在に固定する固定用部材を、更に備え、
前記撮像部が、前記固定用部材によって前記インスツルメント装置に装着されたとき、前記ヘッド部近傍位置に前記反射部材が固定され、前記工具の先端に位置する前記処置部位の画像による画像信号を取得することを特徴とする医療用撮影装置。
【請求項5】
把持部と、該把持部に対して角度を有するとともに前記処置部位に所定の処置を施す工具が設けられるヘッド部と、を備えたインスツルメント装置であって、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項における医療用撮影装置を、更に備え、
前記光反射部材が、前記ヘッド部近傍位置に固設され、
前記撮像部が、前記工具の先端に位置する前記処置部位の画像による画像信号を取得することを特徴とするインスツルメント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−207323(P2010−207323A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54873(P2009−54873)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】