説明

医療用酸素濃縮器

【課題】 使用方法の簡便な末梢動脈血酸素飽和度(SPO2値)を測定する測定手段を備えた医療用酸素濃縮器を提供する。
【解決手段】 空気中の酸素を濃縮する濃縮手段と、濃縮した酸素を患者に供給する供給手段と、各手段を制御する制御手段とを有する医療用酸素濃縮器において、患者が医療用酸素濃縮器の使用中に患者の末梢動脈血酸素飽和度(SPO2値)を測定する測定手段を備えることを特徴とする医療用酸素濃縮器。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、患者の末梢動脈血酸素飽和度(以下単に「SPO2値」と言う。)を測定する測定手段を備えた医療用酸素濃縮器に関する。
【0002】
【従来の技術】在宅酸素療法に使用する医療用酸素濃縮器は、室内の空気を原料にしてその中に含まれる酸素を濃縮して利用するものである。
【0003】その濃縮方法は、空気中の窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒に空気を加圧して充填し、窒素を吸着分離する圧力変動吸着法が一般的であった。
【0004】この種の従来の医療用酸素濃縮器として、例えば、特開2000−37458号公報に記載の医療用酸素濃縮器が提案されていた。
【0005】従来、在宅酸素療法を行っている患者は、医師の往診時にSPO2値を測定するのが一般的であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このため医療用酸素濃縮器を使用する患者のSPO2値を定期的に測定したいと言う要望が強くなっていた。
【0007】そこで、本発明は、上述の点に考慮して、患者のSPO2値を測定する測定手段を備えた医療用酸素濃縮器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、空気中の酸素を濃縮する濃縮手段と、濃縮した酸素を患者に供給する供給手段と、各手段を制御する制御手段とを有する医療用酸素濃縮器において、患者が医療用酸素濃縮器の使用中に患者の末梢動脈血酸素飽和度(SPO2値)を測定する測定手段を備えることを特徴とする。
【0009】請求項2にかかる発明は、医療用酸素濃縮器に運転スイッチ部を設け、且つ、この運転スイッチ部にはこの運転スイッチの操作を行う患者の指先のSPO2値を測定する測定手段を備えることを特徴とする。
【0010】請求項3にかかる発明は、運転スイッチ部は患者の指先のSPO2値を測定する測定手段としてセンサー部を備えることを特徴とする。
【0011】請求項4にかかる発明は、患者の指先のSPO2値を測定するセンサー部は、反射型であることを特徴とする。
【0012】請求項5にかかる発明は、医療用酸素濃縮器の使用開始時の患者の指先のSPO2値を測定した測定結果を医療用酸素濃縮器の内部に記憶し、使用停止時に使用開始時と使用停止時の測定結果を同時に表示することを特徴とする。
【0013】請求項6にかかる発明は、測定結果を医療用酸素濃縮器の制御手段に記憶し、希望したときに再表示することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を図1乃至図3を参照して説明する。
【0015】図1は、本発明の実施例を示す医療用酸素濃縮器の正面の説明図である。図2は、本発明の実施例を示す医療用酸素濃縮器の測定穴部の断面説明図である。図3は、本発明の実施例を示す医療用酸素濃縮器のフロー図である。
【0016】図3に示すように、医療用酸素濃縮器の機能は、空気中の酸素を濃縮する酸素濃縮手段と、濃縮した酸素を患者に供給する供給手段と、上述した各手段を制御する制御手段(図示せず)とを有する。
【0017】図1に示す1は、本発明の実施例を示す医療用酸素濃縮器で、その正面に制御手段等を構成する表示操作部20と、供給手段を構成する加湿部17と、酸素濃縮手段を構成する吸込口(吸込フィルタ)10とを備えている。
【0018】表示操作部20は、主電源の入り切りを行う電源スイッチ16Aと、様々な機能の表示が可能な表示器15と、患者のSPO2値を測定する測定手段を構成する測定穴部14と、供給手段を構成する濃縮酸素取出口18及び流量計/調節弁13とを備えている。
【0019】表示器15は、液晶ディスプレー又はCRT等で構成され医療用酸素濃縮器1の様々な機能の表示が可能となっている。
【0020】次に空気中の酸素を濃縮する酸素濃縮手段について説明する。
【0021】酸素濃縮手段は、図3に示すように、室内の空気を圧縮する圧縮器4と、窒素吸着剤として例えばゼオライトを充填した2本の吸着筒2A,2Bと、濃縮した酸素を貯留するアキュムレータ6と、吸着筒2A,2Bへの空気の流れを切り替える5方弁3、オリフィス7、均圧弁8、逆止弁5A,5Bと、排気消音器9等で構成される。
【0022】酸素濃縮手段の作動は、次の通りである。
【0023】患者が医療用酸素濃縮器の電源スイッチ21を入れると圧縮器4が運転を開始し、室内の空気を吸い込み、吸込フィルタ10で除塵し、約1.5から3kg/cmに圧縮する。圧縮した空気を5方弁3で加圧側(窒素吸着工程)の吸着筒2Aへ導き、その内部の窒素吸着剤に窒素を吸着させて濃縮酸素とし、それを逆止弁5Aを通過させてアキュムレータ6に貯留する。
【0024】吸着筒2Aの窒素吸着能力は、窒素吸着剤の容量により限度があり定期的な再生が必要となる。このため、加圧工程(窒素吸着工程)の吸着筒2Aを出た濃縮酸素の一部が、オリフィス7で減圧され減圧工程(窒素排出工程)の吸着筒2Bへ導かれ、窒素吸着剤に蓄えられた窒素を排出させて、5方弁3で排気消音器9へ導き器外へ排出して、窒素吸着剤を再生する。この時、吸着筒2Bとアキュムレータ6の間の配管の途中に設けられた逆止弁5Bは、アキュムレータ6からの濃縮酸素の漏れを防ぐように閉止する。
【0025】上述した窒素吸着工程と窒素排出工程とは、制御手段により5方弁3を定期的に切り替え各吸着筒2A,2Bの機能を切り替えて、繰り返し行われアキュムレータ6の圧力が上限に達するまで圧縮器4が運転される。
【0026】この時、オリフィス7と並列に設けられた均圧弁8は、各工程の切り替え直前に開いて各吸着筒2A,2Bの圧力をバランスさせ再び閉じることにより、各工程の立ち上がり時間を短縮する。
【0027】次に患者の指先のSPO2値を測定する測定手段の操作について説明する。
【0028】図2に示すように、測定手段は、医療用酸素濃縮器1の正面に設けられた測定穴部14と、測定穴部14の穴奥下部に設けられた運転スイッチ部15と、その内部に設けられたセンサー部16とで構成されている。
【0029】運転スイッチ部15は、運転スイッチ15Aと運転スイッチノブ15Bとで構成されている。
【0030】センサー部16は、いわゆる反射型のSPO2値センサーで、受光素子16Aと、第1発光素子16BAと、第2発光素子16BBと、各素子16A,16BA,16BBを搭載した基板16Cとで構成されている。
【0031】次に濃縮した酸素を患者に供給する供給手段について説明する。
【0032】図3に示すように、供給手段は、アキュムレータ6からの濃縮酸素の供給を制御する閉止弁12と、濃縮酸素を減圧する減圧弁11と、流量計/調節弁13と、濃縮酸素を除菌清浄化する除菌フィルタ14と、濃縮酸素を加湿する加湿手段17と、患者のカニューラを接続する濃縮酸素取出口18とで構成されている。
【0033】次に濃縮した酸素を患者が吸入する時の操作について説明する。
【0034】患者は、濃縮酸素取出口18にカニューラのチューブを接続すると共に、図2で示すように測定穴部14に指50を挿入して運転スイッチ部15を押して濃縮酸素の供給を受ける準備をする。
【0035】患者が運転スイッチ部15を押すことにより、運転スイッチノブ15Bの内部に備えられたセンサー部16の第1発光素子16BAから発光した第1波長の光と、第2発光素子16BBから発光した第2波長の光とが患者の生体組織内で散乱されセンサー部16の受光素子16Aで受信される。
【0036】受信された第1発光素子16BAと第2発光素子16BBの光信号は、制御部内で演算され、患者の指先のSPO2値が表示器15に表示される。
【0037】患者は、表示器15に表示された測定結果を確認して指50をはなす。
【0038】又、患者が運転スイッチ部15を押すことにより、運転スイッチ15Aが作動し供給手段の閉止弁12が開いて、アキュムレータ6に貯留した濃縮酸素が減圧弁11へ供給される。
【0039】減圧弁11で約0.2kg/cmに減圧された濃縮酸素は、患者が流量計/調節弁13を調節することにより医師の処方流量に調節され、除菌フィルタ14で除菌され、加湿部17で加湿され、濃縮酸素取出口18から患者のカニューラに導かれる。
【0040】患者が酸素の吸入を終了すると、患者は運転スイッチ部15を押すことにより、センサー部16により患者のSPO2値が測定されると共に表示器15に患者の運転開始時と運転終了時のSPO2値が表示される。
【0041】又、運転スイッチ部15の操作により閉止弁12が閉じて濃縮酸素の供給が停止される。
【0042】上述した患者の運転開始時と運転終了時のSPO2値の測定結果は、医療用酸素濃縮器1の制御手段に記憶し、希望したときに再表示することも可能である。
【0043】なお、本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1にかかる発明によれば、空気中の酸素を濃縮する濃縮手段と、濃縮した酸素を患者に供給する供給手段と、各手段を制御する制御手段とを有する医療用酸素濃縮器において、患者が医療用酸素濃縮器の使用中に患者の末梢動脈血酸素飽和度(SPO2値)を測定する測定手段を備えることにより、使用方法の簡便なSPO2値を測定する測定手段を備えた医療用酸素濃縮器を提供することができる。
【0045】請求項2にかかる発明によれば、医療用酸素濃縮器に運転スイッチ部を設け、且つ、この運転スイッチ部にはその操作を行う患者の指先のSPO2値を測定する測定手段を備えることにより、使用方法の簡便なSPO2値を測定する測定手段を備えた医療用酸素濃縮器を提供することができる。
【0046】請求項3にかかる発明によれば、運転スイッチ部は患者の指先のSPO2値を測定する測定手段としてセンサー部を備えることにより、使用方法の簡便なSPO2値を測定する測定手段を備えた医療用酸素濃縮器を提供することができる。
【0047】請求項4にかかる発明によれば、患者の指先のSPO2値を測定するセンサー部は、反射型であることにより、使用方法の簡便なSPO2値を測定する測定手段を備えた医療用酸素濃縮器を提供することができる。
【0048】請求項5にかかる発明によれば、医療用酸素濃縮器の使用開始時の患者の指先のSPO2値を測定した測定結果を医療用酸素濃縮器の内部に記憶し、使用停止時に使用開始時と使用停止時の測定結果を同時に表示することにより、医療用酸素濃縮器の使用開始時と使用停止時の患者のSPO2値の測定結果を表示する医療用酸素濃縮器を提供することができる。
【0049】請求項6にかかる発明によれば、測定結果を医療用酸素濃縮器の制御手段に記憶し、希望したときに再表示することにより、患者が希望したときに患者のSPO2値の測定結果を表示する医療用酸素濃縮器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す医療用酸素濃縮器の正面の説明図である。
【図2】本発明の実施例を示す医療用酸素濃縮器の測定穴部の断面説明図である。
【図3】本発明の実施例を示す医療用酸素濃縮器のフロー図である。
【符号の説明】
1 医療用酸素濃縮器
2A,2B 吸着筒
3 5方弁
4 圧縮器
6 アキュムレータ
11 減圧弁
13 流量計/調節弁
14 測定穴部
15 運転スイッチ部
16 センサー部
17 加湿部
18 濃縮酸素取出口
20 表示操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 空気中の酸素を濃縮する濃縮手段と、前記濃縮した酸素を患者に供給する供給手段と、前記各手段を制御する制御手段とを有する医療用酸素濃縮器において、前記患者が前記医療用酸素濃縮器の使用中に前記患者の末梢動脈血酸素飽和度(SPO2値)を測定する測定手段を備えることを特徴とする医療用酸素濃縮器。
【請求項2】 前記医療用酸素濃縮器に運転スイッチ部を設け、且つ、この運転スイッチ部にはこの運転スイッチの操作を行う前記患者の指先のSPO2値を測定する測定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の医療用酸素濃縮器。
【請求項3】 前記運転スイッチ部は前記患者の指先のSPO2値を測定する測定手段としてセンサー部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用酸素濃縮器。
【請求項4】 前記患者の指先のSPO2値を測定するセンサー部は、反射型であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の医療用酸素濃縮器。
【請求項5】 前記医療用酸素濃縮器の使用開始時の前記患者の指先のSPO2値を測定した測定結果を前記医療用酸素濃縮器の前記制御手段に記憶し、使用停止時に使用開始時と使用停止時の測定結果を同時に表示することを特徴とする請求項1乃至4に記載の医療用酸素濃縮器。
【請求項6】 前記測定結果を前記医療用酸素濃縮器の内部に記憶し、希望したときに再表示することを特徴とする請求項1乃至5に記載の医療用酸素濃縮器。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−309981(P2001−309981A)
【公開日】平成13年11月6日(2001.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−129310(P2000−129310)
【出願日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】