説明

医療画像処理装置およびプログラム

【課題】医療関係のビジュアルプログラミングにおいて、プログラミングや画像処理に関する知識が少ない一般ユーザでも、複数の処理を実行させるための設定を容易に行うことができる医療画像処理装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】コマンドボタン18は、コマンドが割り当てられたボタンであり、たとえば、特定の方向から見た心臓の画像を生成するなどの所定のコマンドを可視化したものである。コレクション処理ブロック16は、コレクション処理(foreach)が行われるブロックであり、並列的に実行されるコマンドボタン18をグループ化したCブロックと、並列的に実行される複数のCブロックが配置されるAブロックと、Cブロックのコマンドボタン18が実行されると、それに引き続いて実行されるコマンドボタン18が配置されるBブロックに分けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリュームデータを用いる医療画像処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータを用いた画像処理技術の進展に伴い、3次元物体の内部を可視化する技術が注目されている。特に、医療分野では、生体内部を可視化することにより病巣を早期に発見することができるCT(Computed Tomography)装置もしくはMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置による医療診断が広く行われている。
【0003】
また、物体内部の3次元画像を得る方法として、ボリュームレンダリングという方法が知られている。このボリュームレンダリングでは、3次元のボクセル(微小体積要素)空間に対して光(レイ)を照射することにより投影面に画像が投影される。この操作の一種にレイキャスト法がある。このレイキャスト法では、レイの経路に沿って一定間隔でサンプリングし、各サンプリング点のボクセルからボクセル値を取得する。
【0004】
ボクセルは、物体の3次元領域の構成単位であり、ボクセル値は、ボクセルの濃度値等の特性を表わす固有のデータである。物体全体はボクセル値の3次元配列であるボクセルデータで表現される。通常、CTにより得られる2次元の断層画像データを断層面に垂直な方向に沿って積層し、必要な補間を行うことにより3次元配列のボクセルデータが得られる。
【0005】
レイキャスト法では、仮想視点から物体に対して照射された仮想光線に対する仮想反射光は、ボクセル値に対して人為的に設定される不透明度に応じて生ずるものとされる。そして、仮想的な表面を捕捉するためにボクセルデータのグラディエントすなわち法線ベクトルを求め、仮想光線と法線ベクトルのなす角の余弦から陰影付けのシェーディング係数を計算する。仮想反射光は、ボクセルに照射される仮想光線の強度にボクセルの不透明度とシェーディング係数を乗じて算出される。
【0006】
図8は、ボリュームレンダリングシステムにおけるビジュアルプログラミング環境の一例を示す図である。同図に示される技術においては、可視化パイプラインの個別要素を部品化された可視化機能(モジュール)として組み合わせて作成したアプリケーションに、シミュレーション結果や実験データなどの数値データを渡して三次元表示を行うことができる。また、可視化機能だけでなくデータベースやGUI(Graphical User Interface)作成環境なども提供され、アプリケーションを構築するための開発環境をビジュアルプログラミング環境として提供している(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
一方で、医療画像装置にあってはボリュームレンダリング以外にも、組織の領域抽出処理や病変部強調処理は高度に専門化された処理を含み、単純な可視化を超えた画像処理を含むため、パイプラインの可視化のみでは表現できない。
【非特許文献1】“AVS/Express:汎用可視化ソフトウェア”、[online]、株式会社ケイ・ジイティー、 [2007年5月22日検索]、インターネット<http://www.kgt.co.jp/feature/express/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記ボリュームレンダリング装置におけるビジュアルプログラミング環境は、元データから表示用画像データを生成するための画像処理パイプラインの個別要素間のデータの流れを可視化したものであり、画像処理の効果を異ならせるためにフィルターなどを追加することが可能である。しかしながら、たとえば、医療画像を扱う医療画像装置において上記ビジュアルプログラミング環境を採用したとしても、一般的なユーザは、複数の処理を順次実行するコレクション処理や並列処理を理解しないものであるため、それらの処理を設定することが容易ではない。また、複数の処理を順次実行するコレクション処理や並列処理のような抽象的なプログラム概念を図案化することも難しかった。
【0009】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、医療画像関係のビジュアルプログラミングにおいて、プログラミングや画像処理に関する知識が少ない一般ユーザでも、コレクション処理のような抽象的なプログラム概念を含む一連のコマンドを実行させるための設定を容易に行うことができる医療画像処理装置およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る医療画像処理装置は、ボリュームデータを用いる医療画像処理装置であって、所定のコマンドが割り当てられたコマンドボタンが少なくとも一つずつ配列された第1および第2の個別処理ボタン列を表示する個別処理領域と、前記コマンドボタンが少なくとも一つ配列された共通処理ボタン列を表示する共通処理領域と、を表示させる表示制御手段と、コレクション処理の実行が指示された場合に、前記第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させると共に、前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させる処理制御手段と、前記コマンドボタンを前記個別処理領域および前記共通処理領域の少なくともいずれかに配置させるボタン配置手段と、を備え、前記コマンドボタンに割り当てられたコマンドは、前記ボリュームデータを用いた画像処理の実行を指示するものを含むものである。
【0011】
この構成によれば、GUIにより、所望のコマンドボタンの組み合わせを個別処理領域及び共通処理領域に配置すれば、配列されたコマンドボタンに対応する複数の処理を実行させることができるため、医療関係のビジュアルプログラミングにおいて、プログラミングに関する知識が少ないユーザでも、コレクション処理のような抽象的なプログラム概念を含む一連のコマンドを実行させるための設定を容易に行うことができる。特に、共通処理ボタン列に配列されたコマンドボタンに割り当てられたコマンドは、全ての個別処理ボタン列について、各個別処理ボタン列に係るコマンドの実行の後に実行されるため、異なる処理の後に同一の処理を行いたい場合に有効である。
【0012】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記処理制御手段が、前記第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させ、その後引き続き、前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させるものである。
【0013】
この構成によれば、個別処理領域または共通処理領域において所望の順序でコマンドボタンを配列することにより、各コマンドを所望の順序で実行させることができるため、プログラミングや画像処理に関する知識が少ないユーザでも、複数の処理を実行させるための設定を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記処理制御手段が、前記第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させる処理と前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させる処理とを並列実行させるものである。
【0015】
この構成によれば、第1の個別処理ボタン列に係るコマンドおよびそれに引き続く共通処理ボタン列に係るコマンドと、第2の個別処理ボタン列に係るコマンドおよびそれに引き続く共通処理ボタン列に係るコマンドと、を並列処理できる。したがって、プログラミングに関する知識が少ないユーザでも、並列処理の恩恵を享受することができる。
【0016】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記表示制御手段が、1以上のパレットを表示するものであり、それぞれの前記パレットが、その表示領域に1以上のコマンドボタンを表示させるものであり、少なくとも前記パレットの1はその表示領域に前記個別処理領域及び前記共通処理領域を表示させるものである。
【0017】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記表示制御手段が、前記パレットの内いずれかの前記パレット上のコマンドボタンの全部実行処理が指示された場合に、前記全部実行処理が指示された前記パレットの第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させると共に、前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させ、更にその前後のいずれかもしくは両方で前記前記個別処理領域及び前記共通処理領域に含まれないコマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させるものである。
【0018】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記表示制御手段が、更に2以上のパレットを表示するものであり、前記2以上のパレットの1(第1のパレット)に前記個別処理領域と、前記共通処理領域とが含まれるものであり、前記1のパレット(第1のパレット)の表示領域に表示されるコマンドボタンの少なくとも一つに割り当てられたコマンドが、前記2以上のパレットの他の1のパレット(第2のパレット)上のコマンドボタンにそれぞれ割り当てられたコマンドの全部実行処理の実行を指示するものを含むものである。
【0019】
この構成によれば、第1のパレットに表示される全てのコマンドボタンにそれぞれ割り当てられたコマンドの実行を指示するコマンドネストボタンを有するので、医療関係において、定型的な画像処理を繰り返す場合に、ユーザの負担を大幅に軽減することができる。
【0020】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記表示制御手段が、更に2以上のパレットを表示するものであり、前記1のパレットの表示領域に表示されるコマンドボタンの少なくとも一つに割り当てられたコマンドは、前記2以上のパレットの他の1のパレット上のコマンドボタンの全部実行処理の実行を指示するものを含むものであり、前記他の1のパレットに前記個別処理領域と、前記共通処理領域とが含まれるものである。
【0021】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記ボタン配置手段が、ドラッグアンドドロップによって、所望の位置に前記コマンドボタンを配列させるものである。
【0022】
この構成によれば、コマンドボタンがドラッグアンドドロップで並べ替えられ、コマンドボタンの並び順に従って処理順序が決定されるので、医療関係において、プログラミングや画像処理に関する知識が少ないユーザでも、複数の処理を実行させるための設定をきわめて容易に行うことができる。
【0023】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記処理制御手段が、前記コマンドボタンが一つ選択された場合に、当該コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させるものである。
【0024】
この構成によれば、コマンドボタンを選択することで、様々なコマンドを実行させることができるので、医療画像を処理するユーザの負担を軽減することができる。
【0025】
また、本発明に係る医療画像処理装置は、前記コマンドに関するパラメータが、当該コマンドが割り当てられたコマンドボタンを介して設定可能であるものである。
【0026】
この構成によれば、コマンドに関するパラメータの設定を容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る医療画像処理プログラムは、コンピュータを、本発明に係る医療画像処理装置が備える各手段として機能させるための医療画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、GUIにより、所望のコマンドボタンを個別処理領域または共通処理領域に配置すれば、配列されたコマンドボタンに対応する複数の処理を実行させることができるため、医療関係のビジュアルプログラミングにおいて、プログラミングに関する知識が少ないユーザでも、コレクション処理を実行させるための設定を容易に行うことができる。特に、共通処理ボタン列に配列されたコマンドボタンに割り当てられたコマンドは、全ての個別処理ボタン列について、各個別処理ボタン列に係るコマンドの実行の後に実行されるため、異なる処理の後に同一の処理を行いたい場合に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施形態にかかる医療画像処理装置で扱うボリュームデータを取得するためのコンピュータ断層撮影(CT)装置を概略的に示す。コンピュータ断層撮影装置は、被検体の組織等を可視化するものである。X線源101からは同図に鎖線で示す縁部ビームを有するピラミッド状のX線ビーム束102が放射される。X線ビーム束102は、例えば患者103である被検体を透過しX線検出器104に照射される。X線源101及びX線検出器104は、本実施形態の場合にはリング状のガントリー105に互いに対向配置されている。リング状のガントリー105は、このガントリーの中心点を通るシステム軸線106に対して、同図に示されていない保持装置に回転可能(矢印a参照)に支持されている。
【0030】
患者103は、本実施形態の場合には、X線が透過するテーブル107上に寝ている。このテーブルは、図示されていない支持装置によりシステム軸線106に沿って移動可能(矢印b参照)に支持されている。
【0031】
従って、X線源101及びX線検出器104は、システム軸線106に対して回転可能でありかつシステム軸線106に沿って患者103に対して相対的に移動可能である測定システムを構成するので、患者103はシステム軸線106に関して種々の投影角及び種々の位置のもとで投射されることができる。その際に発生するX線検出器104の出力信号は、ボリュームデータ生成部111に供給され、ボリュームデータに変換される。
【0032】
シーケンス走査の場合には患者103の層毎の走査が行なわれる。その際に、X線源101及びX線検出器104はシステム軸線106を中心に患者103の周りを回転し、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムは患者103の2次元断層を走査するために多数の投影を撮影する。その際に取得された測定値から、走査された断層を表示する断層像が再構成される。相連続する断層の走査の間に、患者103はその都度システム軸線106に沿って移動される。この過程は全ての関心断層が捕捉されるまで繰り返される。
【0033】
一方、スパイラル走査中は、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムはシステム軸線106を中心に回転し、テーブル107は連続的に矢印bの方向に移動する。すなわち、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムは、患者103に対して相対的に連続的にスパイラル軌道上を、患者103の関心領域が全部捕捉されるまで移動する。本実施形態の場合、同図に示されたコンピュータ断層撮影装置により、患者103の診断範囲における多数の相連続する断層信号がボリュームデータ生成部111に供給される。
【0034】
ボリュームデータ生成部111で生成されたボリュームデータは、画像処理部117内の中心パス設定部112に導かれる。中心パス設定部112は、ボリュームデータに含まれる管状組織の中心パスを設定するものである。平面生成部114は、設定された中心パス及びボリュームデータから円筒投影に用いる仮想光線が通過する平面を決定する。平面生成部114で生成された平面は、円筒投影部115に供給される。
【0035】
円筒投影部115は、ボリュームデータを平面生成部114で作成された平面に従って円筒投影を行い、円筒投影画像を生成する。円筒投影部115で処理された円筒投影画像はディスプレイ116に供給され表示される。また、ディスプレイ116には円筒投影画像の他、ヒストグラムの合成表示、複数の画像の並列表示、複数の画像を順次表示するアニメーション表示、あるいは仮想内視鏡(VE)画像との同時表示などを行う。
【0036】
また、操作部113はGUI(Graphical User Interface)を含み、キーボードやマウスなどからの操作信号に応じて、中心パスの設定や、平面生成の設定や、球面円筒投影における表示角度の設定を行い、設定値の制御信号を生成し中心パス設定部112、平面生成部114、円筒投影部115に供給する。これにより、ディスプレイ116に表示された画像を見ながら画像をインタラクティブに変更し、病巣を詳細に観察することができる。
【0037】
本発明の実施形態にかかる医療画像処理装置は、上記のコンピュータ断層撮影装置で取得したボリュームデータを操作するためにビジュアルプログラミング環境で使用されるものである。本ビジュアルプログラミング環境では、マクロはGUIを用いて可視化され、特にマクロにコレクション処理(foreach)機能をもたせている。ここでマクロとは、アプリケーションソフトの特定の操作手順(コマンド)をプログラムとして記述して自動化する機能をいう。
【0038】
また、一般にコレクション処理とは、配列やリスト、辞書などコンテナに複数の要素を格納したものに対して、コンテナ内のそれぞれの要素に対して一括して行う一連の処理である。foreach文とは、一般的にはコンテナ内のそれぞれの要素を引数としてあらかじめ定められた述語を繰り返し実行する処理を記述するための文である。本明細書において、コレクション処理とは、コンテナ内のそれぞれの要素を実行した後にあらかじめ定められた処理を繰り返しもしくは並行して実行する処理を指す。また、本明細書におけるコレクション処理の場合は、引数と述語に当たる処理(コマンド)の種別に格別の制限は必要としない。
【0039】
図2は、本実施形態の医療画像処理装置においてGUIを使用するビジュアルプログラミング環境を示す。本実施形態の医療画像処理装置では、たとえば、ボリュームデータから仮想内視鏡(Virtual Endoscope)画像を表示する場合に、表示画面に大腸内部の中心投影画像11を表示するとともに、複数のコマンドボタン18が配置されたパレット12を表示する。コマンドボタン18は、マクロを構成するコマンドをボタンで表示したものであり、画像の回転処理、保存などの操作のイメージを可視化したものである。
【0040】
図3は、本明細書で使用する用語について説明するための図である。この図は、本実施形態の医療画像処理装置と接続される表示装置の表示画面例を示す。コマンドボタン18は、所定のコマンドが割り当てられたボタン状のGUIであり、たとえば、特定の方向から見た心臓の画像を生成するなどの処理を指示する所定のコマンドを示すものである。コマンドボタンには通常処理内容を示唆する画像(アイコン等)が表示されているが、文字や文字列を表示しても良いし、予想される処理結果のサムネイル画像であっても良い。また、パレット12は、コマンドボタン18のプレースホルダとなるウィンドウであり、その表示領域にコマンドボタン18を表示する。
【0041】
コレクション処理ブロック16は、コレクション処理(foreach)を表現する領域であり、コンテナ内のそれぞれの要素に含まれる1以上のコマンドボタン18を表現したCブロックと、複数のCブロックが配置されるコンテナを表現するAブロックと、Cブロックのコマンドボタン18が実行されると、それに引き続いて実行される述語に相当するコマンドボタン18が配置されるBブロックに分けられる。すなわち、本実施形態の医療画像処理装置と接続される表示装置の表示画面には、コマンドボタン18が少なくとも一つ配列された個別処理ボタン列に相当するCブロック、Cブロックを少なくとも二つ表示する個別処理領域に相当するAブロック、および、コマンドボタン18が少なくとも一つ配列された共通処理ボタン列に相当するBブロックが表示される。
【0042】
ブロック実行ボタン19は、それをクリック(ポインティングデバイスで指示)することによって、コレクション処理ブロック16に配置されたコマンドボタン18に従ったコレクション処理の実行を指示するためのボタンである。また、パレット実行ボタン15は、それをクリック(ポインティングデバイスで指示)することによりパレット12に配置されたコレクション処理及びコレクション処理ブロック16に含まれないコマンドボタン18の全部を順番に実行させるよう指示するためのボタンである(全部実行処理)。プログラムカウンタ17には、パレット12に配置されたコマンドボタン18の実行経過が表示される。なお、プログラムカウンタ17や実行ボタン15,19は必須ではない。また、ショートカットキーを実行ボタン15,19の代わりと出来る。尚、ブロック実行ボタン19、パレット実行ボタン15それぞれはコマンドボタン18の一種ではない。
【0043】
図4は、パレット12に配置されるコマンドボタン18、及びパレット12の詳細を説明するための図である。パレットはパレット12,12’毎に独立したマクロ(プログラム)のように扱われる。そして、コマンドボタン21〜26,31,32は、マクロに含まれるそれぞれの命令(コマンド)のように扱われ、それぞれの命令に対応する記号で視覚的に区別される。たとえば、レイキャスト・ボタン21は、レイキャストの実行を指示するコマンドが割り当てられたものである。レイキャスト・ボタン21をクリックにより選択すると、ボリュームデータに対して種々の描画方法の中からレイキャスト法が選択され、レイキャスト法による描画が行われる。
【0044】
また、回転ボタン22は、選択した画像を回転するためのボタンであり、白黒反転ボタン23は、選択した画像の輝度または色相を反転させるためのボタンである。また、領域抽出ボタン24及び領域抽出ボタン25は、ボリュームデータから関心領域を抽出するためのボタンである。
【0045】
また、コマンド・ネスト・ボタン26(他のパレットの呼び出しを指示するコマンドボタン)は、他のパレット12’に関連づけられており、コマンド・ネスト・ボタン26をクリックすることにより、他のパレット12’に設定した一連のコマンドボタンの全部を順番に実行することができ、他のパレットのパレット実行ボタン15をクリックしたのと同様の効果を発揮する。これにより、定型的な処理をまとめることができる。
【0046】
また、フォルダ・ボタン31は、記憶場所のアドレスをパラメータとして設定することができ、画像処理の結果のデータを設定したアドレスに保存することができる。また、印刷ボタン32は、たとえば、描画結果の画像をイメージャー装置に出力し印刷処理を行う。
【0047】
このようにコマンドボタン18には、対応するコマンドが割り当てられており、それぞれのコマンド毎に詳細なパラメータが設定できる。たとえば、回転コマンドには回転量パラメータが設定でき、描画コマンドには描画時の色彩パラメータが設定でき、拡大コマンドには拡大率パラメータが設定できる。同種のコマンドに異なるパラメータを割り当てることもでき、例えば、領域抽出ボタンの領域抽出ボタン24には心臓抽出用のパラメータ、領域抽出ボタン25には肝臓出用のパラメータを割り当てる事が出来る。
【0048】
図5および図6は、本実施形態の医療画像処理装置においてコレクション処理を説明するための図である。パレット12には、定型的な処理をこなすひとまとまりのブロック(コレクション処理ブロック16)を作成できる。
【0049】
図5は、パレット12にレイキャスト・ボタン21が配置され、コレクション処理ブロック16内にAブロックとBブロックが設定され、Aブロック内に3つのCブロックが設定された様子を示す。すなわち、Bブロックには、フォルダ・ボタン31と印刷ボタン32が配置され、第1のCブロックに回転ボタン22が配置され、第2のCブロックに白黒反転ボタン23と心臓抽出ボタン24が配置され、第3のCブロックに肝臓抽出ボタン25が配置される。
【0050】
このようにコマンドボタン21〜25,31,32を配置し、ブロック実行ボタン19をクリックすると、コレクション処理ブロック16が図6のように解釈されて実行される。
【0051】
すなわち、(1)第1のCブロックに引き続きBブロックの処理である、選択した画像に対する回転(回転ボタン21)、保存(フォルダ・ボタン31)および印刷(印刷ボタン32)処理、(2)第2のCブロックに引き続きBブロックの処理である、選択した画像に対する白黒反転(白黒反転ボタン23)、心臓抽出(心臓抽出ボタン24)、保存(フォルダ・ボタン31)および印刷(印刷ボタン32)処理、並びに(3)第3のCブロックに引き続きBブロックの処理である、選択した画像に対する肝臓抽出(肝臓抽出ボタン25)、保存(フォルダ・ボタン31)および印刷(印刷ボタン32)処理が実行される。上記、(1)(2)(3)の処理の塊は逐次実行されても良いし、(1)(2)(3)のそれぞれを別個のスレッド(もしくは別個のプロセス、もしくは別個の画像処理装置)で並列的に実行しても良い。すなわち、実行順は個別のCブロックとBブロックの組合せの中でのみ保証されればよい。これは、それぞれのCブロック毎に独立した処理が含まれるからである。
【0052】
このように本実施形態の医療画像処理装置では、コマンドボタン21〜25,31,32を所定のブロックに配置することにより、いわゆるforeach処理がGUIで実現でき、定型的な処理をグループ化して実行するコレクション処理を簡易に表現することができる。たとえば、「回転して」からレンダリング結果を「保存」する、「拡大して」からレンダリング結果を「保存」する、および「患部強調」してからレンダリング結果を「保存」する、といった処理を簡易に表現することができる。このように、コレクション処理ブロック16のそれぞれの行(Cブロック、Bブロック)は独立して実行可能であるので並列実行できる。
【0053】
したがって、本実施形態の医療画像処理装置によれば、GUIにより所望のボタンを配列するだけで、コレクション処理を理解しない一般ユーザでも柔軟に設定が行えるとともに、並列処理を理解しない一般ユーザでも並列処理の恩恵を受けることができる。
【0054】
図7は、本実施形態の医療画像処理装置における他の実行画面例を示す。本実施形態の医療画像処理装置において、パレット12には、レイキャスト・ボタン21と白黒反転ボタン23が配置され、コレクション処理ブロック42には、コレクション・ボタン41が配置されるとともに、Bブロックが設定される。そして、Bブロックには、フォルダ・ボタン31と印刷ボタン32が配置される。
【0055】
コレクション・ボタン41は、コレクション処理ブロック42全体の設定が可能であり、Bブロックの範囲はコレクション・ボタン41を通じて操作できる。コレクション・ボタン41を編集するためにコレクション・ボタン41を操作すると、Aブロックを表現する回転ボタン22、コマンド・ネスト・ボタン26および肝臓抽出ボタン25が表示される。すなわち、本実施形態のAブロックは、普段は隠されていてコレクション・ボタン41の編集時に表示される。
【0056】
また、Cブロックは、簡便のために1コマンドボタンのみ設置できる表現である。この場合であったとしても、Cブロックのコマンドボタンが他のパレットを包含することによって複数のコマンドボタンを設置した場合と同等の機能を実現できる。図7の例では、Cブロックのコマンド・ネスト・ボタン26が、白黒反転ボタン23および心臓抽出ボタン24が配置されたパレット43を包含する場合を示す。これによって、画面上の表示面積を節約できる。医療画像処理装置においては医療画像の表示に広大な画面上の表示面積が必要とされるので、操作に供する図形はコンパクトな方が望ましいため有効である。
【0057】
また、本実施形態の医療画像処理装置は、コマンドボタンが発行するコマンドを対象となる画像ごとに異ならせることができる(ポリモーフィズム:Polymorphism)、また処理を省略することが出来る。たとえば、画像種による選別、および複数パレットに対するコマンドの発行において、対象となる画像に応じて適切な処理を実行することができる。これによって、レイキャスト法で用いるLUT(Look Up Table)関数による色彩の設定コマンドのコマンドボタンをパレット上に設置した場合において、対象画像をMIP(Maximum Intensity Projection)画像としてパレット実行ボタンをユーザがクリックしたときに、MIP画像には不要な色彩の設定コマンドの実行を省略することが出来る。これによって、複雑な処理を包含するコレクション処理ブロックを有するパレットに含まれるマクロを本来の目的でない画像にも適用でき、ユーザの簡易な操作に資することができる。
【0058】
また、並列処理が可能か否かのネゴシエーションを行うことができる。たとえば、回転コマンドと着色コマンドを並列処理可能に設定し、右回転コマンドと上回転コマンドを並列処理不可に設定することができる。すなわち、一つのCブロックからBブロックにつながる一連のコマンドの中から、並列実行できるコマンドを自動的に並列化することによって更に並列処理の効率を向上させることが出来る。また、並列処理にかかわる高度な排他制御をユーザから隠蔽して自動的に行うことが出来る。
【0059】
また、1つのコマンドに、他のパレットに含まれるコマンドのネスト機能を持たせることが可能である。また、本実施形態のコマンドボタン18は、ドラッグアンドドロップによるマクロ編集が可能である。
【0060】
また、本実施形態のパレット12では、ボタン毎のパラメータ編集が可能であり、コレクション処理ブロック16,42は、並列実行と逐次実行を選択できる。さらに、回転しながら拡大するなどの複数コマンドを包含したコマンドボタン18があっても良い。
【0061】
以上説明したように、本実施形態にかかる医療画像処理装置、医療画像処理方法およびプログラムによれば、コマンドボタン18をコレクション処理ブロック16,42に配置することによりコレクション処理が設定され、また、コマンドボタン18をCブロックおよびBブロックに配置することにより並列処理が設定されるので、医療関係のビジュアルプログラミングにおいて、コレクション処理や並列処理を理解しない一般ユーザでも柔軟に設定することができ、並列処理の恩恵を享受することができる。
【0062】
また、コマンドボタン18の全部の実行が指示されると、パレット12に配置されたコマンドボタン18を実行し、引き続いてコレクション処理ブロック16,42に配置されたコマンドボタン18を実行するので、医療関係において、定型的な画像処理を大量に処理する場合にユーザの負担を大幅に軽減することができ、たとえば、ボリュームデータから心臓を抽出するなどの複雑な処理を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ボリュームデータを用いる医療画像処理装置およびプログラム等として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態にかかる医療画像処理装置で扱うボリュームデータを取得するためのコンピュータ断層撮影(CT)装置を概略的に示す図
【図2】本実施形態の医療画像処理装置においてGUIを使用するビジュアルプログラミング環境を示す図
【図3】本明細書で使用する用語について説明するための図
【図4】パレット12に配置されるコマンドボタン18の詳細を説明するための図
【図5】本実施形態の医療画像処理装置においてコレクション処理(複数コマンドの並列実行)を説明するための図(1)
【図6】本実施形態の医療画像処理装置においてコレクション処理(複数コマンドの並列実行)を説明するための図(2)
【図7】本実施形態の医療画像処理装置における他の実行画面例を示す図
【図8】ボリュームレンダリング装置におけるビジュアルプログラミング環境の一例を示す図
【符号の説明】
【0065】
11 中心投影画像
12,12’、43 パレット
15 実行ボタン
16,42 コレクション処理ブロック
17 プログラムカウンタ
18 コマンドボタン
19 ブロック実行ボタン
21 レイキャスト・ボタン
22 回転ボタン
23 白黒反転ボタン
24 心臓抽出ボタン
25 肝臓抽出ボタン
31 フォルダ・ボタン
32 印刷ボタン
41 コレクション・ボタン
101 X線源
102 X線ビーム束
103 患者
104 X線検出器
105 ガントリー
106 システム軸線
107 テーブル
111 ボリュームデータ生成部
112 中心パス生成部
113 操作部
114 平面生成部
115 円筒投影部
116 ディスプレイ
117 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボリュームデータを用いる医療画像処理装置であって、
所定のコマンドが割り当てられたコマンドボタンが少なくとも一つずつ配列された第1および第2の個別処理ボタン列を表示する個別処理領域と、前記コマンドボタンが少なくとも一つ配列された共通処理ボタン列を表示する共通処理領域と、を表示する機能を有する表示制御手段と、
コレクション処理の実行が指示された場合に、前記第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させると共に、前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させる処理制御手段と、
前記コマンドボタンを前記個別処理領域および前記共通処理領域の少なくともいずれかに配置させるボタン配置手段と、
を備え、
前記コマンドボタンに割り当てられたコマンドは、前記ボリュームデータを用いた画像処理の実行を指示するものを含むものである医療画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記処理制御手段は、前記第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させ、その後引き続き、前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させるものである医療画像処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記処理制御手段は、前記第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させる処理と
前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを逐次実行させる処理とを
並列実行させるものである医療画像処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記表示制御手段は、1以上のパレットを表示するものであり、
それぞれの前記パレットは、その表示領域に1以上のコマンドボタンを表示させるものであり、
少なくとも前記パレットの1はその表示領域に前記個別処理領域及び前記共通処理領域を表示させるものである医療画像処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の医療画像処理装置であって、
前記表示制御手段は、前記パレットの内いずれかの前記パレット上のコマンドボタンの全部実行処理が指示された場合に、前記全部実行処理が指示された前記パレットの第1の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させると共に、前記第2の個別処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させた後、引き続いて、前記共通処理ボタン列に配列された各コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させ、更にその前後のいずれかもしくは両方で前記前記個別処理領域及び前記共通処理領域に含まれないコマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させるものである医療画像処理装置。
【請求項6】
請求項4記載の医療画像処理装置であって、
前記表示制御手段は、更に2以上のパレットを表示するものであり、
前記2以上のパレットの1に前記個別処理領域と、前記共通処理領域とが含まれるものであり、
前記1のパレットの表示領域に表示されるコマンドボタンの少なくとも一つに割り当てられたコマンドは、前記2以上のパレットの他の1のパレット上のコマンドボタンにそれぞれ割り当てられたコマンドの全部実行処理の実行を指示するものを含むものである医療画像処理装置。
【請求項7】
請求項4記載の医療画像処理装置であって、
前記表示制御手段は、更に2以上のパレットを表示するものであり、
前記1のパレットの表示領域に表示されるコマンドボタンの少なくとも一つに割り当てられたコマンドは、前記2以上のパレットの他の1のパレット上のコマンドボタンの全部実行処理の実行を指示するものを含むものであり、
前記他の1のパレットに前記個別処理領域と、前記共通処理領域とが含まれるものである医療画像処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記ボタン配置手段は、ドラッグアンドドロップによって、所望の位置に前記コマンドボタンを配列させるものである医療画像処理装置。
【請求項9】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記処理制御手段は、前記コマンドボタンが一つ選択された場合に、当該コマンドボタンに割り当てられたコマンドを実行させるものである医療画像処理装置。
【請求項10】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記コマンドに関するパラメータは、当該コマンドが割り当てられたコマンドボタンを介して設定可能であるものである医療画像処理装置。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1ないし10のいずれか一項記載の各手段として機能させるための医療画像処理プログラム。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−11450(P2009−11450A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174302(P2007−174302)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(500109320)ザイオソフト株式会社 (59)
【Fターム(参考)】