説明

医薬の剤形またはその前駆物質の製造方法、医薬の剤形、及び医薬の剤形の使用方法

【課題】押し出しによる剤形またはその前駆状態を生成する方法、本質的に活性薬剤成分を含有する基剤を有する剤形、及び剤形を使用方法が提供される。
【解決手段】剤形は本質的に活性薬剤成分を含有する基剤を有し、前記剤形の本質的な特性は押し出し工程によって決定され、かつ前記剤形は、本質的な成分として、多糖類、その誘導体、その錯体、上記物質と他の物質との任意の混合物、及び/または糖類及び/またはその誘導体と、少なくとも1つの医薬として有効な物質とを含む。本発明はまた、錠剤化用及びカプセル充填用の粒状物を製造するため、射出成形技術を使用する更なる加工のため、及び直接錠剤化するための補助物質として、及び/または一体型剤形を製造するために、前記剤形を使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の剤形または前駆物質を押し出し(エクストルージョン)によって製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、更に押し出し法によって製造され得る製薬の剤形に関する。
押し出しは、多糖類、特にデンプンを変化させるために、とりわけ接着剤産業、またはプラスチック加工において広く普及している方法である。押し出しは、ヌードル類、いわゆるピーナッツフリップス(Erdnussflips)または様々な菓子類のようなデンプン含有組成物を製造するための食品生産技術において公知である。しかしながら、これらの製品全ての製造条件は、泡状の製品、いわゆる発泡製品が得られるように選択されている。
【0003】
製薬技術においては、ワックス、脂肪族アルコール、脂肪、及び様々な熱可塑性物質及びデュロプラスチックス(duroplastics)を加工するために、押し出し法が使用されている。例えば、欧州特許公開公報第EP−A2 0240904号、同第EP−A2 0240906号及び同第EP−A2 0358105号には、様々な高分子化合物から押し出し成形された物質が開示されている。欧州特許第EP−B2 0118240号には、射出成形技術によるデンプン含有混合物の医薬製品(カプセル)への加工が記載されている。これに関連して、押し出しの間に使用された多糖類がどのように変化するかについては、あまり知られていない。
【0004】
欧州特許公開公報第EP−A 0580860号より、活性薬剤のポリマーキャリヤ中固体分散体を製造するための押し出し法が公知である。とりわけ使用され得る原料は、デンプン及び一般に挙げられるデンプンの誘導体である。しかしながら、上記公報に記載されている方法は、主成分としてデンプンを有する剤形に適当ではない。
【0005】
製薬技術において、例えば、錠剤、糖衣丸、またはカプセルのような経口投与される剤形は遥かに重要なものである。これらの剤形は、比較的高用量の活性薬剤を含有しており、この活性薬剤をより長期間にわたって制御された方法で放出する、いわゆる放出制御(遅延)剤形も含む。これは、患者対して、投薬の頻度を著しく低減することが可能であることを意味する。医薬学の観点から、放出制御剤形の長所は、血液中の活性薬剤の濃度を極めて一定にし、より少ない副作用で永続的な効果を生じることにある。放出制御剤形を製剤する場合、いわゆる基剤の形態は基本的に重要なものである。基剤とは、胃腸管へ活性薬剤を制御して放出する、例えば、不活性のアジュバントからなる錠剤または糖衣丸のような成形された本体部を意味する。活性薬剤の放出は、一般に、一部は基剤の遅い崩壊による拡散によって部分的に生じる。
【0006】
製薬技術において、そのような基剤は、ポリアクリレートまたはポリエチレンのような合成ポリマーから生成される。これに関連して、合成原料から放出制御体を製造するための押し出し法も公知である。
【0007】
押し出し法によって従来製造された剤形の基本的な不都合の1つは、プラスチック類、ワックス類、または脂肪族アルコール類などのような賦形剤を使用することである。これらのアジュバントは、生物分解性ではなく、使用される高分子中の残余モノマーのようにある程度環境上有害であるが、現在でも、押し出し法によって製造され、活性薬剤の抑制された遅い放出を可能にする剤形のために不可欠である。更に、活性薬剤を迅速に放出させる剤形を製造するための公知の押し出し法は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、先行技術の不都合を克服し、かつ、特に生物学的に非分解性であり、ある程度環境上有毒である賦形剤の使用を回避する、活性薬剤の遅い放出またはより迅速な放出を選択することによって調製された剤形を製造するための押し出し法を提供する必要がある。更なる目的は、本発明の以下の記載から得ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本方法に関する目的の解決策は、請求項1を特徴とする化合物にある。
本発明の方法の有利な実施形態は、従属請求項の方法に定義される。
本発明によると、押し出しによる剤形または前駆物質を製造する方法が示唆されている。前記方法は、剤形が本質的に活性薬剤成分を含有する基剤を有し、前記剤形の本質的な特徴は同基剤が押し出しによって形成され、かつ前記剤形は、基剤の成分として生物的に分解可能な多糖類、及び/またはその誘導体、及び/またはその錯体、及び/または上記物質と他の物質との任意の混合物、及び/または糖類及び/またはその誘導体と、少なくとも1つの医薬として有効な物質とを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好ましい実施形態によれば、剤形の活性薬剤の放出は、アジュバントの添加、及び/または、温度、ダイの幾何学的配置、及び/または押し出し速度のような押し出し工程におけるパラメーターの変更によって調節される。
【0011】
より好ましい実施形態では、本発明によって形成される剤形の基剤は非晶質(アモルファス)であるか、または部分的に非晶質である。
更に、好ましい実施形態における本発明は、本発明による剤形が、多糖類として、デンプンまたはその誘導体、特に、非晶質または部分的に非晶質なデンプンまたはその誘導体を基剤中に含む方法に関連する。
【0012】
更に好ましい実施形態において、本発明は、剤形が非水溶性かつ好ましくは膨潤性である基剤を含んでいる場合の製造方法に関連する。
特に好ましい実施形態によれば、本発明による剤形は、放出制御基材である。
【0013】
更に好ましい実施形態は、ラピダス(lapidus)の関数に本質的に従った活性薬剤の放出を示し、特に好ましくは、24時間以上にわたって調節可能である活性薬剤の放出を示す本発明による剤形を有する。
【0014】
本発明の更に本質的な目的は、生物分解可能な成分を有することなく、本質的に機能することが可能である剤形を提供することにある。
本発明によれば、この目的は、活性薬剤が本質的に含有されている基剤を含む剤形であって、その本質的な特性は押し出し工程によって決定され、かつ、基剤の主要な成分として多糖類、及び/またはその誘導体、及び/またはその錯体、及び/または上記物質と他の物質の任意の混合物、及び/または糖類及び/またはその誘導体と、少なくとも1つの医薬として有効な物質とを含む剤形によって達成される。
【0015】
更に、本発明は、錠剤化用及びカプセル充填用の粒状物を製造するため、射出成形技術を使用する更なる加工のため、及び/または、一体の製薬剤形を製造するために、直接錠剤化する際のアジュバントとして本発明による剤形を使用することに関する。
【0016】
押し出し工程中、つまり、熱、煎断力及び圧力を使用または印加している間に、結晶性または部分的に結晶性の多糖類、特にデンプンまたはその誘導体、またはこれらの成分の混合物から非晶質または部分的に非晶質の基剤が生成される。多糖類及びその誘導体の押し出しに基づく剤形の複製可能な製造において、温度、ダイ形状、及び押し出し速度のような押し出し条件は非常に重要である。例えば、適当な押し出し条件下で、天然のデンプンは完全に可塑化またはガラス化され得、その結果、均質なプラスチック状の成形体が得られる。
【0017】
デンプンを押し出し加工する場合、工程の初期においてのみ加熱が必要である。工程の更なる過程において、一定温度を維持するために、強力な煎断及び摩擦によって生成された熱は、好ましくは冷却によって除去される。本発明の方法において使用される製剤は、多糖類及び/またはその誘導体の混合物、好ましくは、デンプン及び/またはデンプン誘導体の混合物からなり、様々な種類の適当なデンプンが存在する。更に、前記混合物は、製剤の総重量に基づいて50%以内の量、好ましくは30%以内の量で、少なくとも1つの医薬として有効な物質を含有しており、更に異なる物質を付加的に含んでもよい。完全に混合された乾燥製剤に15%以内の濃度で水を添加すべきである。強制搬送エクストルーダ(zwangsfordernden Extruders)を使用する場合には、15%未満の水分含有量で十分である。
【0018】
完全に混合して、水を添加した後、得られた予備混合物は、好ましくは、スクリューフィーダーによる完全な移送を保証するために塊がないように、ふるいに掛けられるべきである。エクストルーダの始動及び清掃は、例えば、トウモロコシ粗粒を使用して行われる。本発明の方法による基剤を生成する場合、100°Cより高い温度では細孔がない基剤の形成はほとんど不可能であるため、エクストルーダのオリフィスの温度は標準圧力下で100°Cを超過してはならない。煎断力、温度、熱または圧力の形態で該工程に供給される総エネルギーは可及的に一定であるべきであり、ガラス転移を行うのに十分でなければならない。本発明のキャリヤと水とからなる混合物には、最適なスクリュー速度及びダイの幾何学的配置が調節され得る。100°C未満の温度及び適当なスクリュー速度では、ほとんどの場合、透明で完全に非晶質な生成物が得られる。活性薬剤/多糖類の混合物、及び、好ましくは活性薬剤/デンプン混合物の可塑化の程度は、スクリュー速度に密接に関連している。最低速度以下では押し出しはもはや可能でないが、スクリュー速度が高すぎると、剤形を「開裂(Aufpoppen)」させてしまう。
【0019】
押し出し工程パラメーターを変化させることにより、活性薬剤の調節された放出を示す、本発明の方法による剤形の製造を可能にする。本発明における意味として、「調節された」とは、本発明の押し出し法によって、速放性の剤形、並びに徐放性の剤形、いわゆる24時間またはそれ以上の期間までにわたる放出を伴う放出制御剤形が製造され得ることを意味する。既に前述した工程パラメーターに加えて、更に、活性薬剤の放出の調節に関しては、主に処理温度が重要である。例えば、各々の場合において使用される多糖類の糊化温度未満での押し出しによって、速放性の剤形が得られ得る。基剤の密度はとりわけ取り込まれている活性薬剤の放出に影響を及ぼすので、放出制御性の対応する剤形は、適当な押し出し条件下における多糖類含有混合物の部分的または完全なガラス化、つまり、非晶質状態への転移によって製造され得る。前述した系とは対照的に、好ましくは非晶質または部分的に非晶質のデンプンまたはその誘導体、あるいはこれらの成分の混合物から形成される、本発明によるこのような非晶質または部分的に非晶質の基剤は、本質的に水溶性ではないが、その代りに、好ましくは膨潤性かつ非水溶性である。医薬として有効な1つ以上の物質は、基剤中において、溶解した固体または液体の形態で存在し得る。
【0020】
本発明の製造方法において使用され得るデンプンの例としては、タピオカデンプン、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、スターチ1500(登録商標、部分的に予備糊化されたコーンスターチ、カラーコン(Colorcon)から商業的に入手可能)、Waxylis(登録商標、ロウケット(Roquette)から商業的に入手可能なワックスコーンスターチ)、Eurylon(登録商標、ロウケットから商業的に入手可能なアミロコーンスターチ)、コーンスターチ、アセチリックスターチがある。
【0021】
更に、アジュバントの添加により活性薬剤の放出を制御された本発明の押し出し法によって剤形は入手可能である。基剤中における細孔の形成によって活性薬剤の放出を促進するためには、例えば、以下の物質、すなわち、
親水性または両親媒性の固体、塩化ナトリウム及びラクトースのような水溶性物質、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びシリカ(コロイド状に分散、かつ/またはキセロゲルとして)のような表面活性物質、
親水性または両親媒性の液体、例えばグリセリン及びポリエチレングリコールのようなポリグリコール類、例えばポリソルベートのような界面活性物質、
例えば、窒素、二酸化炭素のような気体が添加され得る。
【0022】
拡散の抑制による活性薬剤放出の低減は、例えば、以下のアジュバント、すなわち、例えば、固体状態または液体状態の脂肪、脂肪酸、ワックスのような、天然、合成、及び/または部分的に合成由来の脂肪親和性または両親媒性のアジュバント、飽和炭化水素または不飽和炭化水素、例えばステアリン酸マグネシウムのような金属セッケンの添加によって行われ得る。
【0023】
更に、活性薬剤の放出の低減は、例えばヨウ素デンプン錯体、ミルテホシン(miltefosin)−アミロース錯体などの化学量論的錯体または非化学量論的錯体の形成によって行われ得る。
【0024】
更に、取り込まれている活性薬剤の放出は、基剤の成分の適当な混合物、好ましくは、異なるデンプン類及び/またはその誘導体の混合物の使用により影響され得る。活性薬剤の放出に影響を及ぼし得る更なる要因としては、剤形の成形された本体の外表面、及びその粒子径、または該粒子内における活性薬剤の分布がある。
【0025】
活性薬剤放出の経過の調査は、以下に記載する試験において示されるように、活性薬剤の放出が拡散によって好ましくは制御されており、いわゆるラピダス(lapidus)則に従うことを示している。剤形を数か月間にわたって保管した後でさえ、放出の経過は変化しない。
【0026】
本発明の方法によって製造された剤形は、直接錠剤化用アジュバントとして使用され得る錠剤化用粒状物及びカプセル充填用粒状物を製造するため、押し出し成形技術による更なる加工のため、及び/または一体型剤形として使用され得る。上記において、押し出し品は、セッケン製造の場合に類似した、押し出しダイにおける適当な配置によって形成される。本発明の方法は一体型剤形の製造及び使用を可能する。表面のみでガラス化しており、内部には未変化状態の活性物質/キャリヤの混合物を含んでいる押し出し品が形成されるような工程において、剤形の所望の生物薬学的特性を達成するために、固体剤形の製造用として公知のあらゆるアジュバントが使用され得る。
【0027】
単に発生する摩擦熱によって剤形の乾燥が起こり得るので、最終的な乾燥工程は必要ではない。調薬、水分添加、混合、押し出し、及び成形のような全ての工程は、製造エクストルーダ、好ましくは、2軸型スクリューエクストルーダ、特に好ましくは強制搬送2軸型スクリューエクストルーダにおいて連続的に行われ得る。よって、本発明の方法は、1台の設備で、混合、粒状化、及び乾燥を組み合わせることが可能であり、そのために付加的なエネルギーを消費する必要がない。
【0028】
本発明によれば、更に、剤形が、例えば1つのみの賦形剤、好ましくはデンプンまたはその誘導体と、1つの医薬として有効な物質とを含むので、潜在的な配合禁忌の数は低減される、本発明の方法によって形成された基剤は、潜在的な意図しない脱混合(Entmischung)を防止する。
【0029】
以下の例は、工程または工程パラメーター、多糖類の種類または更なるアジュバントの添加によって、活性薬剤の遅延の程度が最も良好に調節されることを示す。同例は、単に本発明を例証するに過ぎず、特定の実施形態または用途に対するいかなる制限も表さない。より正確に言えば、付属の請求項によって定義された範囲内において、更なる実施形態が考えられる。
【実施例】
【0030】

本発明の方法によって実行された以下の例において、モデル活性薬剤としてカフェインが添加された様々な多糖類を使用した。押し出し実験は、ブラベンダー−1軸型スクリューエクストルーダ811201型(Brabender−Einschneckenextruder vom Typ811201)によって行った。この装置は、互いに独立して適温にされ得る(temperierbare)3つの部分、すなわち、供給領域とスクリュー領域とダイとを有する。22cmのスクリュー長、19mmのスクリュー径、16mmのコア径、及び15mmのピッチを有するコンベヤースクリューを圧縮することなく使用した。2.5〜7mmの異なる直径を有するダイを使用した。
【0031】
実験におけるバッチサイズは、350〜600グラムであった。活性薬剤及びデンプンを、ステファン混合装置内で完全に混合し、15%の水で湿らせ、その後、この予備混合物を塊がなくなるまでふるい分けた。
【0032】
エクストルーダの供給領域では約65°C、スクリュー領域では約80°C、ダイでは約98°Cの温度が、本発明の方法を実施するための温度の適当な選択であると判明した。
【0033】
様々な技術によって、多糖類の結晶性構造または部分的に結晶性の構造が非晶質構造または部分的に非晶質の構造へ転移したことの証明が行われ得る。
示差走査熱量測定(DSC)によって、結晶性または部分的に結晶性デンプンの非晶質状態への転移を検知することが可能である。適当な押し出し条件下ではデンプンは完全にガラス化される、すなわち非晶質状態に変化する。例として、多糖類としてタピオカデンプンと、活性薬剤としてカフェインを用いた試験を行った。90%のタピオカデンプンと10%のカフェインからなり、水を添加した予備混合物の温度記録図を図1aに示す。図1aは約65°Cの範囲に典型的な吸熱ピークを示している。
【0034】
本発明によって行われた押し出しの後では、決定的な温度範囲のピークは検知できない。デンプンは完全にガラス化され、それはデンプンが非晶質状態に変化したことを意味する(図1b参照)と結論付けられなければならない。
【0035】
結晶または部分的な結晶状態から非晶質または部分的な非晶質状態への転移は、X線回折によっても検知され得る。以下の具体例としての試験には、80%のジャガイモデンプン及び20%のカフェインからなる試料を使用した。図2に示したジャガイモデンプン−カフェイン予備混合物のX線回折パターンは、20°付近の範囲においてデンプンの結晶部分のシグナルを示している。本発明の方法を適用した後では、対応する押し出し品のX線回折パターンは、もはやデンプンの結晶部分を示すいかなるシグナルも有していない。
【0036】
これに関連して、活性薬剤の放出の速度論に対しては、ガラス状態への非構造化(De−strukturierung)の程度が決定的に重要であることを再度指摘しておく。活性薬剤の放出の確認は、0.1N塩酸(pH値1を有する人工胃液)の液体中、及びpH7.2のリン酸緩衝液(人工腸液)中におけるUSPによるパドル攪拌器モデルにおいて行われた。この状況において、押し出し品は試験中に溶解しなかったが、該押し出し品の単なる膨潤は観察されたことを再度指摘しておかなければならない。活性薬剤の定量的な放出を測定する以下の具体例としての試験では、商業的に入手可能なデンプンEurylon7(登録商標)(ロウケットから商業的に入手可能なアミロコーンスターチ)と30%部のカフェインとからなる試料を使用した。図3のグラフは、活性薬剤の放出の量的な推移を示す。比較のために、カプセル中に充填された遅延されていない純粋なカフェインの放出も示した。
【0037】
この場合、多糖類基剤中にカフェインを埋設することによって、25mgの総投薬量に対して、約15分から約8〜10時間までの、放出の実質的な遅延を生じることが分かり得る。
【0038】
ラピダス則に従った、時間の平方根に対する放出量のグラフは、曲線のほぼ直線的な推移を示し、それは活性薬剤の放出が拡散によって制御されていることを示している(図4を参照)。
【0039】
前述したように、活性薬剤の放出速度は、多糖類または多糖類混合物の種類によっても調節され得る。以下の例においては、活性薬剤の放出における定量的調査のために、ジャガイモデンプン及び10%のカフェインからなる予備混合物を使用した。より低用量の活性薬剤を有するとともに、デンプンの種類を変更することによって、活性薬剤の放出は著しく減速される。図5に示した図は、本発明の方法によって調節された押し出し品が、24時間にわたって活性薬剤の放出を提供することを示している。
【0040】
図6に示した、ラピダス則によるグラフは、活性薬剤の放出が拡散によって制御されていることを示している。
上述したように、活性薬剤の放出全体の持続時間及び推移を調節することが可能である。このような方法で、非常に良好な水溶性活性薬剤のための「保存物」が得られるので、前述の例における24時間のような非常に長い活性薬剤放出時間は、新たな遅延原理の進歩という観点から有利なものと見なされる。活性薬剤の放出は、既に数回記載したように、多糖類または対応する誘導体及びそれらの混合物、対応するアジュバントの添加、及び/または押し出し工程パラメーターによって、選択的に影響を受け得る。
【0041】
本発明の方法によれば、活性薬剤のより速い放出時間も達成され得る。下記に示した表は、例として、例えば不完全なガラス化を招来する工程パラメーターの変更が、広範囲にわたって活性薬剤の放出時間を調節する可能性をもたらすことを示している。
【0042】
【表1】

この表から分かるように、同一の種類のデンプンについては、放出制御剤形の範囲に分類される活性薬剤の放出時間と同様に、活性薬剤の比較的短い放出時間も、もっぱら工程パラメーターを変化させることにより達成され得る。本発明によれば、この目的は、活性薬剤が本質的に含有されている基剤を含む剤形であって、前記剤形の本質的な特性は押し出し工程によって決定され、かつ、前記基剤が、同基剤の主要な成分として多糖類、及び/またはその誘導体、及び/またはその錯体、及び/または上記物質と他の物質の任意の混合物、及び/または糖類及び/またはその誘導体と、少なくとも1つの医薬として有効な物質とを含む剤形によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1a】90%のタピオカデンプンと10%のカフェインとからなる押出し可能な混合物のDSCデータ。
【図1b】90%のタピオカデンプンと10%のカフェインとからなる押出し品のDSCデータ。
【図2】80%のジャガイモデンプンと20%のカフェインとからなる予備混合物及び押出し品のX線回折パターン。
【図3】Eurylon7と30%のカフェインとからなる押出し品における活性薬剤放出の量的な推移を示す図。
【図4】Eurylon7と30%のカフェインとからなる押出し品における活性薬剤放出のラピダスグラフ。
【図5】ジャガイモデンプンと10%のカフェインとからなる押出し品における活性薬剤放出の量的な推移を示す図。
【図6】ジャガイモデンプンと10%のカフェインとからなる押出し品における活性薬剤放出のラピダスグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬の剤形またはその前駆物質を押し出し成形によって製造するための方法であって、
前記剤形は、本質的に活性薬剤が含有されている基剤であって、基本的な成分として、多糖類及びその錯体及びそれらの物質と前記活性薬剤の放出に影響を与え得る物質との任意の混合物、並びに糖類のうちの少なくともいずれかを含む基剤と、少なくとも1つの医薬の活性薬剤とを含み、
前記剤形を、前記基剤と活性薬剤との共押し出しによって形成して、前記基剤を非晶質または部分的に非晶質にし、それにより前記活性薬剤の放出に関連する前記剤形の特性を制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
剤形の活性薬剤の放出は、アジュバントの添加、並びに、温度、ダイの幾何学的配置、せん断力、圧力、スクリュー速度、及び押し出し速度のうちから選択される少なくとも1つの押し出し工程パラメーターの変更のうちの少なくともいずれかによって調節されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多糖類がデンプンであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
基剤が非水溶性であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
基剤が放出制御基材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
剤形の活性薬剤の放出が、ラピダス(lapidus)関数にほぼ従うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
剤形の活性薬剤の放出が24時間以上にわたって調節され得ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの医薬の活性薬剤が、前記基剤内に溶解された固体または液体の形態で存在することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
本質的に活性薬剤が含有されている基剤であって、基本的な成分として多糖類及びその錯体及びそれらの物質と前記活性薬剤の放出に影響を与え得る物質との任意の混合物、並びに糖類のうちの少なくともいずれかを含む基剤と、少なくとも1つの医薬の活性薬剤とを含む医薬の剤形において、該剤形は、前記基剤と活性薬剤との共押し出しによって形成され、前記基剤が非晶質または部分的に非晶質にされていることにより、前記活性薬剤の放出に関連する前記剤形の特性が制御されていることを特徴とする医薬の剤形。
【請求項10】
活性物質の放出が、アジュバントの添加、並びに、温度、ダイの幾何学的配置、せん断力、圧力、スクリュー速度及び押し出し速度のうちから選択される少なくとも一つの押し出し工程パラメーターの変更のうちの少なくともいずれかによって調節されることを特徴とする請求項9に記載の剤形。
【請求項11】
多糖類がデンプンあることを特徴とする請求項9または10のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項12】
基剤が非水溶性であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項13】
基剤が放出制御基材であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項14】
剤形の活性薬剤の放出が、ラピダス(lapidus)関数にほぼ従うことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項15】
剤形の活性薬剤の放出が24時間以上にわたって調節され得ることを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項16】
少なくとも1つの医薬の活性薬剤が、基剤内に溶解された固体または液体の形態で存在することを特徴とする請求項9乃至15のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項17】
請求項9乃至16のいずれか1項に記載の剤形の使用法であって、錠剤化用及びカプセル充填用の粒状物を製造するため、及び直接錠剤化するためのアジュバントとして射出成形技術を使用して更に加工するため、及び一体化した製薬剤形を製造するための少なくともいずれかのために使用する使用法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−211019(P2007−211019A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98734(P2007−98734)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【分割の表示】特願2000−613406(P2000−613406)の分割
【原出願日】平成12年4月20日(2000.4.20)
【出願人】(500361375)ユーロ−セルティック エス. ア. (8)
【Fターム(参考)】