説明

医薬活性化合物を得るのに有用なバリン誘導体を得る方法

本発明は、バルサルタンおよび動脈性高血圧症または心不全の治療向けの薬物の製造に有用な中間体(II)を得る方法を提供する。この方法は、a)有機塩基または無機塩基を有するL−バリン(IV)塩および極性溶媒または水による化合物(VII)のアルデヒド基のイミン化を行って(Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トリル、メチル、またはFである)、イミン型化合物(VIII)(式中、Bは有機塩基またはアルカリ性陽イオンのプロトン化型である)を得ること、b)化合物(VIII)のイミン基を還元した後に酸性化して化合物(VI)を得ること、およびc)化合物(VI)の塩化バレリルでN−アシル化して化合物(II)を得ることを含む。工程a)およびb)は「ワンポット」反応で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、動脈性高血圧症または心不全の治療を目的とし薬物を製造するための、医薬活性化合物を得るのに有用な中間体を得る方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、バルサルタン(Valsartan)の合成に有用な中間体を得る方法に関する。
【0003】
発明の背景
スペイン特許ES2084801T号(欧州特許EP443983号に相当)にはアシル化合物が記載され、その一つが式(I):
【化1】

のバルサルタンである。
【0004】
この特許においては、フェニル置換基(Z)(ここで、Zはテトラゾールに変換可能な置換基である)をテトラゾールに変換することによるバルサルタンの製法が記載されている。この特許の例には、Zがシアノ基または保護テトラゾール環である、特定の場合が記載されている。この後、最後に、Rが好ましくはメチルまたはベンジルである場合にはカルボン酸基、場合によってはテトラゾール環保護基、好ましくはトリチル基の脱保護が行われる。
【0005】
【化2】

【0006】
この特許においては、最後の合成工程において、アジドを使用する(アジ化ナトリウムを用いる場合には爆発の危険が伴い、またアジ化トリブチルスズを用いる場合には環境問題が伴う)など、改善の余地ある態様が残されている。
【0007】
もう一つの否定的な態様は、テトラゾール環(トリチル基)およびバリン残基のカルボン酸(ベンジル基)の双方に対する嵩のある(bulky)保護基の使用にあり、これにより前記合成中間体の分子量が著しく大きくなる。この分子量は、バルサルタンを生じる最後の加水分解により劇的に小さくなり、したがって原子効率の低い方法となる。更に、このことが、かなりの数の残基を生じさせ、その工程において多くの合成工程を増加させる。
【0008】
特許DE4313747号、DE4407488号、米国特許第5596006号、EP594022号、およびWO9609301号においては、パラジウム触媒の存在下、ハロゲン化アリルと2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸との反応によるビフェニル系(system)の形成によって、サルタンが合成されることが記載されている。
【0009】
欧州特許出願EP1533305号においては、ビフェニルアルデヒドと、除去しなければならないベンジル基を有する保護L−バリンとの還元的アミノ化反応によりバルサルタンを得る方法が記載されている。テトラゾール基はこの合成の最後から2番目の工程により形成される。
【0010】
国際特許出願WO2004/026847号は、ビフェニルアルデヒドの還元的アミノ化が、カルボン酸官能基において保護されたL−バリンにより起こる(この場合にはテトラゾール基は予め形成され、保護されている)類似の方法を記載している。
【0011】
よって、安全、経済的、高収率、かつ合成工程が少なく、かつ簡単で市販されている出発品からバルサルタンを得る方法の開発が求められているといえる。さらに、その方法を工業規模に適用し、ラセミ化を回避し、結果として光学異性体の分離ができなければならない。
【0012】
引用することにより本明細書の開示の一部とされる特許出願ES200400949号においては、中間体(II)と式(III)のボロン酸とを反応させてバルサルタン(I)を得ることを含むバルサルタンの合成方法が記載されている。
【0013】
【化3】

【0014】
特許出願ES200400949号によれば、中間体(II)の製造は、
a)L−バリン(IV)を、式(V)のハロゲン化合物によりアルキル化して、式(VI)の化合物を得た後、b)塩化バレリルによりアシル化を行うことを含む。
【0015】
【化4】

【0016】
このアルキル化工程では、ベンジルエステルの形成を避けるために、カルボン酸をシリルエステルの形態で保護しなければならない。さらに、L−バリンの窒素においてジアルキル化化合物が種々の割合により必然的に形成され、除去するのが困難である。
【0017】
さらに、中間体(VI)のアシル化工程では、反応条件が極めて重要であり、化合物(II)の部分的ラセミ化(付加的な精製が伴う)を避けるために限定された範囲の反応パラメーターを用いなければならない。
【0018】
この方法は、工業規模でのその適用を妨げ、コストを削減し、廃棄物の生成を少なくし、合成の収率を高めるとともに、取扱いのより容易な試薬が使えるような改良を受け得る不都合な点を有する。
【発明の概要】
【0019】
本発明の第一の態様は、バルサルタンの製造に有用な合成中間体(II)を得、それを高収率でラセミ化なく得ることを可能とする工業上実施可能な方法を提供することである。
【0020】
本発明の第二の態様は、合成中間体(II)を少ない合成工程で得るための方法を提供することである。
【0021】
定義
「後処理」とは、反応が完了したところで行う単離および/または精製の作業を意味する。これには、例えば水性媒体中での抽出および沈殿が含まれる。
【0022】
「ワンポット」とは、個々の中間体を単離せずに行う一連の連続反応を意味する。
【発明の具体的説明】
【0023】
本発明の目的は、式(II)の中間体を得るための、それを良好な収率で、ラセミ化なく、不純物を含まず、かつ安全性や環境面に問題なく得られることを可能とする新規な方法を提供することである。
【0024】
有利には、本発明の第一および第二の態様の方法によれば、式(II)の中間体は、本願明細書の先行技術に記載の方法とは異なり、不純物を含むことなく提供される。
【0025】
バルサルタンの合成に有用な式(II)の中間体を得る方法は、
【化5】

本発明の第一の態様によれば、次の工程:
a)有機塩基または無機塩基を有するL−バリン(IV)塩および極性溶媒または水により、式(VII):
【化6】

(式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トリル、メチル、またはFである)の化合物のアルデヒド基のイミン化を行い、式(VIII):
【化7】

(式中、Xは上記で定義された意味を有し、Bは有機塩基またはアルカリ性陽イオンのプロトン化型である)
のイミン型化合物またはシッフ塩基を得て、
b)該式(VIII)の化合物のイミン基を還元した後に酸性化して式(VI):
【化8】

の化合物を得て、
c)式(VI)の化合物を塩化バレリルでN−アシル化して式(II):
【化9】

の化合物を得ることを含むことを特徴とする。
【0026】
有利には、本発明の方法は、合成中間体(VI)の製造におけるバリン残基のカルボン酸基の保護基を使用しない。これは、この方法の原子効率として理解されるものにとって有利であり、すなわち、目的生成物に組み込まれる個々の出発試薬の原子の割合が最適であり、言い換えれば、処理する残渣量が著しく減ることを意味する。
【0027】
以下のスキームIIは一連の全工程を示す。
【0028】
【化10】

【0029】
本発明の第一の態様の工程a)によれば、L−バリン有機塩基または無機塩基との塩による、(VII)の位置において置換されているベンズアルデヒドのイミン化反応により、式(VIII):
【化11】

(式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トリル、メチル、またはFであり、Bは有機塩基またはアルカリ性陽イオンのプロトン化型である)
の中間体が得られる。
【0030】
L−バリンは、0℃と、その溶媒の沸点との間、好ましくは10℃〜35℃の温度において、L−バリンに対して当モル比の有機塩基または無機塩基ならびに極性溶媒または水の存在下で、4−置換ベンズアルデヒド(VII)と混合する。
【0031】
トリエチルアミン、トリアルキルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、または金属アルコキシドもしくは水酸化物などの置換アミン型有機塩基を用いると、L−バリンとアルカリ金属との塩が形成し得る。
【0032】
L−バリンのアルカリ金属の塩は、メタノール溶液および所望により水溶液中、水酸化物およびアルコキシレート、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチレート、またはナトリウムエチレートなどの塩基を添加することにより、反応媒体中、in situにおいて製造することができる。また、このナトリウム塩は、無水メタノールなどの水の非存在下、極性溶媒中L−バリンの溶液に、金属ナトリウムなどの元素状態の金属を添加することにより独立に製造することもできる。
【0033】
反応の溶媒は、水またはプロトン性極性溶媒から選択することができる。好ましくは、このプロトン性極性溶媒は、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコールであるが、より好ましくはメタノールである。
【0034】
あるいは、式(VIII)のイミン化合物の形成を促進するため、モレキュラーシーブスまたは共沸蒸留を用いることによるなど、媒体から水を除去する方法を使用することができ、この場合、(VIII)を得る反応では極性溶媒が用いられる。
【0035】
溶媒を蒸発させることによりイミンまたはシッフ塩基(VIII)を単離することができる。
【0036】
以下、本発明の第一の態様の工程b)に従い、中間体(VIII)を還元条件下に置き、化合物(VI)を得る。
【0037】
【化12】

【0038】
好ましくは、この反応は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、またはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤として、ホウ化水素を用い、アルコール媒体中で行う。
【0039】
別法として、この反応は、大気圧下、水素および金属触媒の存在下での触媒的水素化、または金属触媒およびギ酸、2−プロパノール、エタノールなどの水素供与体の存在下での水素転位により行うこともできる。用いられる金属触媒は、ラネーニッケル(Raney-Nickel)またはパラジウム、ロジウム、もしくはルテニウム触媒、好ましくはパラジウム触媒であり得る。
【0040】
好ましくは、この反応は水素化ホウ素ナトリウムを用いて行う。これらのイミン結合還元条件下においては、驚くことに、分子中に存在するキラル中心のラセミ化が回避される。これは、脱保護条件がラセミ化をもたらし得るので、カルボン酸基保護基の利用を含む方法にさらなる利点である。
【0041】
この方法はL−バリンのカルボキシル基の保護を必要としないという利点を有する。この還元的アミノ化反応は、ジアルキル化生成物の形成を回避するというさらなる利点を有する。
【0042】
次に、工程c)では、得られた化合物(VI)を塩化バレリルと反応させて中間体(II)を得る:
【化13】

(式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トリル、メチルまたはFである)。
【0043】
本方法の工程c)は、−20〜40℃の温度において、非プロトン性有機溶媒および有機塩基または無機塩基の存在下、カルボン酸を保護せずに、式(VI)の化合物を塩化バレリルでN−アシル化し:
【0044】
【化14】

式(II):
【化15】

の化合物を得ることからなることを特徴とする。
【0045】
好ましくは、前記非プロトン性有機溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、およびアセトニトリルから選択される。より一層好ましくは、非プロトン性有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である。
【0046】
好ましくは、有機塩基は、1以上の窒素原子を含む複素環式化合物から選択される。好ましくは、少なくとも一つの窒素原子を有する前記複素環式化合物は、ピリジンもしくは1以上のメチル基により置換されたピリジン、例えばコリジンもしくはルチジン、またはイミダゾールもしくはメチル基により置換されたイミダゾール、例えば、2−メチルイミダゾールもしくは4−メチルイミダゾールなどのから選択される。より一層好ましくは、2−メチルイミダゾールが用いられる。
【0047】
工程c)の反応は、出発生成物(VI)の量に対して1または2当量の水の存在下において行う。有利には、この反応における水の存在は不斉炭素のラセミ化を回避する。
【0048】
有利には、このN−アシル化は、−10〜10℃の温度で行う。
【0049】
本発明の第二の態様によれば、少ない合成工程により合成中間体(II)を得る方法が提供され、ここで、式(VI)の化合物は、出発生成物(VII)と(IV)とからワンポット反応により得られ、イミン化合物(VIII)を単離する必要はない。
【0050】
本発明の第二の態様に従う方法においては、式(II)の化合物は、単純な市販の原料から式(VI)の化合物を得るために工程a)およびb)で設定された条件に従ってワンポット反応が行われるので、良好な収率で、2段階の反応により得られる。
【0051】
最後に、本発明の第一または第二の態様に従って得られる生成物は、単一溶媒または例えば、エタノール/水、酢酸エチル/ヘキサン、ジクロロメタン/ヘプタン、酢酸イソプロピル/メチルシクロヘキサンなどの溶媒と貧溶媒(antisolvent)の混合物中での再結晶などの常法により精製することができる。
【0052】
驚くことに、そして予期しないことに、第一および第二の態様に従う方法によれば、本発明は、カルボン酸の保護の必要のない式(VI)の化合物から、ラセミ化せず式(II)の化合物の中間体を得る方法を提供する。
【0053】
有利には、式(VI)の化合物は、99.5〜100%の光学純度で得られる。
【0054】
本発明の第一および第二の態様に記載される方法によれば、極めて十分な量のバルサルタンを得ることが可能となり、従って、該有効成分のその後の精製過程が極めて簡略化される。
【0055】
本発明において、式(II)の中間体と呼ばれる式(VI)の中間体と式(VII)のボロン酸とのカップリングによりバルサルタンを得る式(I)の方法は、特許出願ES200400949号に記載の目的である。
【0056】
【化16】

【0057】
該出願では、バルサルタンは、工業規模で適用可能な方法により、簡単な市販品から出発し、テトラゾール環またはL−バリン残基のカルボン酸を保護する必要のない合成中間体を経て、良好な化学収率および高い光学純度により得られ、アジ化ナトリウムもアジ化トリブチルスズも用いないことから、方法の安全性が高まり、環境への影響も小さくなる。
【0058】
以下は、その種々の態様の好ましい実施形態を実施例により示すが、それらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
実施例1:N−(4−ブロモベンジル)−L−バリン
11.7g(100mmol)のL−バリン、100mLのメタノール、および21mL(110mmol)の30%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液からなる混合物に16.7g(90mmol)の4−ブロモベンズアルデヒドを加え、これを1時間攪拌する。この混合物を−10℃まで冷却し、温度を0℃以下に保ちながら、1.9g(50mmol)のNaBHを少量ずつ加える。90分の反応時間の後、100mLのHOをゆっくり加えた後、20mLのトルエンを加え、HCl 3NでpHを5に調整する。得られた固体を濾過し、HOで洗浄することにより、23.7g(92%)のN−(4−ブロモベンジル)−L−バリンが得られる。
Min. DSC=256.6℃
[α]=17.6°
光学異性体純度はキラルHPLCにより求め、e.e=100%である。
IR(KBr,cm−1):2962,1606,1447,1388,1208,1013,872,793.
NMR 1H(DMSO,60℃),・(ppm):0.91(d,6H,−CH(CH3)2);1.7−1.9(m,1H,−CH(CH3)2);2.84(d,1H,−CHCO2H);3.7(dd,2H,Ar−CH2−);7.3(d,2H,ArH);7.5(d,2H,ArH).
【0060】
実施例2:N−(4−クロロベンジル)−L−バリン
実施例1と同様の方法で、11.7g(100mmol)のL−バリンから出発し、21mL(110mmol)の30%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液、12.7g(90mmol)の4−クロロベンズアルデヒド、および1.9g(50mmol)のNaBHから出発すると、17.8g(82%)のN−(4−クロロベンジル)−L−バリンが得られる。
Min. DSC=241.8℃
[α]=20.1°
IR(KBr,cm−1):2960,1599,1485,1444,1351,1287,1287,1209,1091,1017,834.
NMR 1H(DMSO,60℃),・(ppm):0.91(d,6H,−CH(CH3)2);1.7−1.9(m,1H,−CH(CH3)2);2.84(d,1H,−CHCO2H);3.7(dd,2H,Ar−CH2−);7.4(s,4H,ArH).
【0061】
実施例3:N−(4−ヨードベンジル)−L−バリン
実施例1と同様の方法により、454mg(3.87mmol)のL−バリン、1mL(5.39mmol)の30%ナトリウムメトキシドのタノール溶液、1g(4.31mmol)の4−ヨードベンズアルデヒド、および83mg(2.2mmol)のNaBHから出発すると、1g(70%)のN−(4−ヨードベンジル)−L−バリンが得られる。
Min. DSC=264.2℃
[α]=13.3°
IR(KBr,cm−1):2952,1610,1485,1446,1348,1284,1206,1006,824,789.
NMR 1H(DMSO,60℃),・(ppm):0.93(d,6H,−CH(CH3)2);1.7−1.9(m,1H,−CH(CH3)2);2.81(d,1H,−CHCO2H);3.7(dd,2H,Ar−CH2−);7.2(d,2H,ArH);7.7(d,2H,ArH).
【0062】
実施例4:N−(4−(トルエン−4−スルホニル)−ベンジル)−L−バリン
実施例1と同様の方法で、8.5g(72.5mmol)のL−バリン、16mL(86.3mmol)の30%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液、20g(72.5mmol)の4−トシルベンズアルデヒド、および1.4g(37mmol)のNaBHから出発すると、20g(73%)のN−(4−トルエン−4−スルホニル)−ベンジル)−L−バリンが得られる。
Min. DSC=219.5℃
[α]=12.3°
IR(KBr,cm−1):2957,1606,1443,1373,1090,1017,867,746,698.
NMR 1H(DMSO,60℃),・(ppm):0.91(d,6H,−CH(CH3)2);1.7−1.9(m,1H,−CH(CH3)2);2.5(s,3H,H3C−Ar−SO2−);2.82(d,1H,−CHCO2H);3.7(dd,2H,Ar−CH2−);7.3(d,2H,ArH);7.5(d,2H,ArH);7.0(d,2H,O2SArH−CH3);7.7(d,2H,O2SArH−CH3).
【0063】
実施例5:N−(4−ブロモベンジル)−N−バレリル−L−バリン
11.4g(40mmol)のN−(4−ブロモベンジル)−L−バリンおよび60mLのTHFからなる混合物を−5℃まで冷却し、これに2.8mL(50mmol)のHAcO、7.6mL(64mmol)の塩化バレリル、および30mLのTHFと1.4mL(80mmol)のHO中、4.9g(60mmol)の2−メチルイミダゾール溶液を加える。この反応混合物を室温において30分間攪拌し、それに10mLのメタノールを加えた後、さらに15分間攪拌し、40mLのHOを加える。相に分け、有機相を蒸発乾固させ、得られた固体をEtOH:HOが1:1の混合物から再結晶させる。
Min. DSC=134.3℃
[α]=68°
光学異性体純度はキラル20HPLCにより求め、e.e=100%である。
IR(KBr,cm−1):2957,1720,1591,1472,1247,1012,786.
NMR 1H(CDCl),・(ppm):0.8−1.1(m,9H,−CH(CH3)2+−CH2CH3);1.2−1.5(m,2H,−CH2CH3);1.5−1.8(m,2H,−CH2CH2CH3);2.4(t,2H,−CH2CO−);2.5−2.7(m,1H,−CH(CH3)2);3.8(d,1H,−CHCO2H);4.6(dd,2H,Ar−CH2−);7.1(d,2H,ArH);7.5(d,2H,ArH).
【0064】
実施例6:N−(4−クロロベンジル)−N−バレリル−L−バリン
実施例5と同様の方法で、15g(62mmol)のN−(4−クロロベンジル)−L−バリン、12mL(99mmol)の塩化バレリル、および7.7g(93mmol)の2−メチルイミダゾールから出発すると、15.7g(77%)のN−(4−クロロベンジル)−N−バレリル−L−バリンが得られる。この固体をEtOH:HOが1:1の混合物から再結晶させる。
Min. DSC=128.1℃
[α]=77.9°
IR(KBr,cm−1):2957,1714,1588,1471,1403,1246,1095,792.
NMR 1H(CDCl),・(ppm):0.8−1.1(m,9H,−CH(CH3)2+−CH2CH3);1.2−1.5(m,2H,−CH2CH3);1.5−1.8(m,2H,−CH2CH2CH3);2.4(t,2H,−CH2CO−);2.5−2.7(m,1H,−CH(CH3)2);3.8(d,1H,−CHCO2H);4.6(dd,2H,Ar−CH2−);7.1(d,2H,ArH);7.3(d,2H,ArH).
【0065】
実施例7:N−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリン
実施例5と同様の方法で、800mg(2.40mmol)のN−(4−ヨードベンジル)−L−バリン、0.47mL(3.84mmol)の塩化バレリル、および296mg(3.60mmol)の2−メチルイミダゾールから出発すると、635mg(64%)のN−(4−ヨードベンジル)−N−バレリル−L−バリンが得られる。この固体をEtOH:HOが1:1の混合物から再結晶させる。
Min. DSC=129.5℃
[α]=52.9°
IR(KBr,cm−1):2957,1719,1588,1469,1403,1247,1173,1105,1003,966,847,783.
NMR 1H(CDCl),・(ppm):0.8−1.1(m,9H,−CH(CH3)2+−CH2CH3);1.2−1.5(m,2H,−CH2CH3);1.5−1.8(m,2H,−CH2CH2CH3);2.4(t,2H,−CH2CO−);2.5−2.7(m,1H,−CH(CH3)2);3.8(d,1H,−CHCO2H);4.6(dd,2H,Ar−CH2−);7.0(d,2H,ArH);7.7(d,2H,ArH).
【0066】
実施例8:N−(4−(トルエン−4−スルホニル)−ベンジル)−N−バレリル−L−バリン
実施例5と同様の方法で、12g(32mmol)のN−(4−トシルベンジル)−L−バリン、6.2mL(51mmol)の塩化バレリル、および3.95g(48mmol)の2−メチルイミダゾールから出発すると、11g(75%)のN−(4−トルエン−4−スルホニル)−ベンジル)−N−バレリル−L−バリンが得られる。この固体をn−ヘプタン:EtAcOが10:1の混合物から再結晶させる。
Min. DSC=98.1℃
[α]=57.1°
IR(KBr,cm−1):2957,1714,1575,1469,1362,1249,1173,1092,862,748,688,660.
NMR 1H(CDCl),・(ppm):0.8−1.1(m,9H,−CH(CH3)2+−CH2CH3);1.2−1.5(m,2H,−CH2CH3);1.5−1.8(m,2H,−CH2CH2CH3);2.3(t,2H,−CH2CO−);2.4(s,3H,SO2ArCH3);2.6(m,1H,−CH(CH3)2);3.7(d,1H,−CHCO2H);4.6(dd,2H,Ar−CH2−);7.1(d,2H,ArH);7.3(d,2H,ArH);7.0(d,2H,O2SArH−CH3);7.7(d,2H,O2SArH−CH3).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルサルタンの合成に有用な式(II)の合成中間体を得る方法であって:
【化1】

a)有機塩基または無機塩基を有するL−バリン(IV)塩および極性溶媒または水により、式(VII):
【化2】

(式中、Xはハロゲンまたは−OSOR基を意味し、RはCF、トリル、メチル、またはFである)の化合物のアルデヒド基のイミン化を行い、式(VIII):
【化3】

(式中、Xは上記で定義された意味を有し、Bは有機塩基またはアルカリ性陽イオンのプロトン化型である)
のイミン型化合物またはシッフ塩基を得て、
b)該式(VIII)の化合物のイミン基を還元した後に酸性化して式(VI):
【化4】

の化合物を得て、
c)該式(VI)の化合物を塩化バレリルでN−アシル化して式(II):
【化5】

の化合物を得ることを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記有機塩基または無機塩基がL−バリンに対して当モル比であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程a)において、前記有機塩基が、アンモニウム陽イオンを有するL−バリンの塩を形成するための置換アミン型化合物、アルカリ金属を有するL−バリンの塩を形成するためのアルコキシドまたは金属水酸化物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
イミン化の前記工程a)が、0℃と、その溶媒の沸点との間の温度において行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が10℃〜35℃であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒がプロトン性極性溶媒から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒がアルコールであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、前記還元工程が、還元剤としてホウ化水素を用いてアルコール媒体により行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ホウ化水素が、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、またはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)において、前記還元工程が、大気圧下、水素および金属触媒の存在下での触媒的水素化、または金属触媒および水素供与体の存在下での水素転位により行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記金属触媒が、ラネーニッケル、またはパラジウム、白金、ロジウム、もしくはルテニウム、好ましくはパラジウムの触媒から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素供与体が、ギ酸、2−プロパノール、またはエタノールから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
N−アシル化の工程c)を−20℃〜40℃の温度において、非プロトン性有機溶媒および有機塩基または無機塩基の存在下で行い、式(II)の化合物が得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
−10〜10℃の温度において行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記非プロトン性有機溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、およびアセトニトリルから選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒がテトラヒドロフラン(THF)であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機塩基が、1以上の窒素原子を含む複素環式化合物から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つの窒素原子を有する前記複素環式化合物が、ピリジン、置換ピリジンコリジン、もしくはルチジン、またはイミダゾールもしくは置換イミダゾール、例えば、2−メチルイミダゾールもしくは4−メチルイミダゾールなどから選択されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記N−アシル化反応が出発生成物(VI)の量に対して1または2当量の水の存在下において行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
工程a)またはb)がワンポット反応により行われることを特徴とする、請求項1に記載の式(II)の合成中間体を得る方法。

【公表番号】特表2009−512661(P2009−512661A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536054(P2008−536054)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067569
【国際公開番号】WO2007/045675
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(506044775)インケ、ソシエダ、アノニマ (8)
【氏名又は名称原語表記】INKE,S.A.
【Fターム(参考)】