説明

医薬的組み合わせ

少なくとも1個のmTOR阻害剤を含む医薬的組み合わせならびに関節炎またはリウマチ性関節炎およびそれに附随する障害の処置におけるそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくともmTOR阻害剤、例えばラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含む医薬的組み合わせ剤、ならびに関節炎またはリウマチ性関節炎およびそれに附随する障害の処置におけるそれらの使用に関する。
【0002】
リウマチ性関節炎(RA)は、人口の1から2%に影響を与え、関節の破壊および機能不全をもたらす可能性のある、進行性の病気である。それは、滑膜の過増殖と、その後の軟骨および骨に侵襲し、侵食する繊維性パンヌスの形成により特徴付けられる。
【0003】
従って、例えば生体、特に関節または椎骨に影響する症状または病気の軽減、緩和、安定化またはそれからの救済を含む、または中程度から重度のリウマチ性関節炎、症状軽減用抗リウマチ剤への応答が不十分な進行性、もしくは侵食性リウマチ性関節炎における進行(関節の破壊)の遅延を含む、関節炎またはリウマチ性関節炎の処置に有効な薬剤の必要性がある。さらなる要求は副作用の軽減である。
【0004】
本発明により、少なくともmTOR阻害剤と、例えば下記に定義の通りの併用剤の組み合わせ剤は、関節炎またはリウマチ性関節炎およびそれに附随する障害に有利な作用を有し、例えば関節炎またはリウマチ性関節炎の徴候および症状を減少することが判明した。
【0005】
本発明の特定の発見によって、下記が提供される。
1.
a)mTOR阻害剤、および
b)関節炎またはリウマチ性関節炎、例えばRAに対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤
を含む医薬的組み合わせ剤。
【0006】
2.1 処置を必要とする対象における関節炎、リウマチ性関節炎またはそれに附随する障害の処置法であって、該対象に、治療的有効量のmTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体、および少なくとも1個の例えば下記に示す通りの併用剤を、例えば、同時にまたは連続して併用投与することを含む、方法。
【0007】
関節炎およびリウマチ性関節炎の例は、例えばRA、慢性進行性関節炎、変形性関節炎、乾癬性関節炎、多発性関節炎、強直性脊椎炎、多発性軟骨炎または骨関節症である。このような疾患と関連する障害は、例えば疼痛、発熱、マクロファージまたは滑膜繊維芽細胞増殖または侵襲性繊維性パンヌスの塊形成を含む。
【0008】
2.2 中程度から重度のリウマチ性関節炎を有する対象における進行、関節の破壊を遅延する方法であって、該対象に、治療的有効量のmTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体、および少なくとも1個の例えば下記に示す通りの併用剤を、例えば、同時にまたは連続して併用投与することを含む、方法。
【0009】
従って本発明はまた下記を提供する:
2.3 処置を必要とする対象における、マクロファージまたは滑膜繊維芽細胞増殖を減少または阻害する方法であって、該対象に治療的有効量のmTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体を、所望により、治療的有効量の少なくとも1個の例えば下記に示す通りの併用剤と組み合わせて、例えば、同時にまたは連続して投与することを含む、方法。
【0010】
2.4 処置を必要とする対象における侵襲性繊維性パンヌスの塊形成を減少または阻害する方法であって、該対象に治療的有効量のmTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体を、所望により、治療的有効量の少なくとも1個の例えば下記に示す通りの併用剤と組み合わせて、例えば、同時にまたは連続して投与することを含む、方法。
【0011】
2.5 処置を必要とする対象における、例えば関節炎またはリウマチ性関節炎疾患と関連する疼痛の予防、軽減または処置の方法であって、該対象に治療的有効量のmTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体を、所望により、治療的有効量の少なくとも1個の例えば下記に示す通りの併用剤と組み合わせて、例えば、同時にまたは連続して投与することを含む、方法。
【0012】
2.6 処置を必要とする対象における、例えば関節炎またはリウマチ性関節炎疾患と関連する発熱の予防、軽減または処置の方法であって、該対象に治療的有効量のmTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体を、所望により、治療的有効量の少なくとも1個の例えば下記に示す通りの併用剤と組み合わせて、例えば、同時にまたは連続して投与することを含む、方法。
【0013】
3. 方法2.1から2.6のいずれか一つに使用するのための、本明細書に記載の医薬的組み合わせ剤。
【0014】
4.1 mTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体を、1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、方法2.1から2.6のいずれか一つに使用するための、医薬組成物。
【0015】
4.2 方法2.1から2.6のいずれか一つに使用するための、mTOR阻害剤、例えば、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体、例えば式Iの化合物。
【0016】
4.3 方法2.1から2.6のいずれか一つに使用するための医薬の製造において使用するための、mTOR阻害剤、下記に定義の通りの、例えばラパマイシンまたはその誘導体、例えば式Iの化合物。
【0017】
本明細書で使用する“医薬的組み合わせ剤”なる用語は、1個以上の活性成分の混合または組み合わせによりもたらされる製品を意味し、かつ、活性成分の固定されたおよび固定されていない組み合わせ剤の両方を含む。本明細書で使用する“併用投与”または“組み合わせ投与”などは、選択した治療剤を、単独の患者に投与することを意味し、そして、薬剤が必ずしも同じ経路でまたは同時に投与されるものではない処置レジメンを含むことを意図する。
【0018】
用語“固定された組み合わせ”は、この用語が本明細書で使用されている限り、例えばmTOR阻害剤および併用剤を、両方とも患者に同時に一つの物または投与量の形で投与することを意味する。
【0019】
“固定されていない組み合わせ”は、この用語が本明細書で使用されている限り、活性成分、例えばmTOR阻害剤および併用剤を両方とも患者に別々の物として、一緒に、同時にまたは特定の時間制限なしに連続して投与することを意味し、ここで、このような投与が体内で2個の化合物の治療的有効レベルを、好ましくは同時に提供する。例として、固定されていない組み合わせは、各々1個の活性成分を含む2個のカプセルであり、ここで、その目的は、患者が体内で両方の活性成分の一体となった処置を達成することである。
【0020】
mTOR阻害剤は、細胞内mTOR(“ラパマイシンの哺乳類標的”)を標的とする化合物である。mTORは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)関連キナーゼのファミリーメンバーである。ラパマイシンおよびラパマイシン誘導は、mTOR経路を、その細胞内受容体FKBP12(FK506結合性タンパク質12)との複合体を介して阻害する。
【0021】
ラパマイシンは、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)により産生される既知のマクロライド系抗生物質である。ラパマイシン誘導体は、mTOR阻害特性を有する置換ラパマイシン、例えば40および/または16および/または32の位置を置換されたラパマイシン、例えば式I
【化1】

〔式中、
はCHまたはC3−6アルキニルであり、
はH、−CH−CH−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルまたはテトラゾリルであり、そして
Xは=O、(H,H)または(H,OH)である。
ただし、Xが=Oであり、そしてRがCHであるとき、RはH以外である。〕
の化合物または、Rが−CH−CH−OHであるとき、そのプロドラッグ(例えば生理学的に加水分解可能なそのエーテル、例えば−CH−CH−O−C1−8アルキル)を意味する。
【0022】
代表的な式Iのラパマイシン誘導体は、例えば32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシン(CCI779とも呼ばれる)または40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578とも呼ばれる)である。好ましい化合物は、例えばWO94/09010の実施例8に記載の40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(以後化合物Aと呼ぶ)、またはWO96/41807に記載の32−デオキソラパマイシンまたは16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシンである。
【0023】
ラパマイシン誘導体はまた、例えばWO98/02441、WO01/14387およびWO03/64383、例えばAP23573、AP23464、AP23675またはAP23841に記載の通りの、いわゆるラパログを含み得る。
【0024】
ラパマイシン誘導体のさらなる例は、名称TAFA−93、バイオリムス−7またはバイオリムス−9として記載のものである。
【0025】
本発明に従い使用するための併用剤b)は、化合物の下記群から選択し得る:
i)代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート;
ii)TNFα−阻害剤;例えば組み換えDNA法により産生した、例えば生物学的分子、例えばTNF−αに対する抗体、例えばアダリムマブ(HumiraTM)のようなヒトモノクローナル抗体、インフリキシマブ(RemicadeTM)のようなキメラ(マウスおよびヒト)モノクローナル抗体、TNF受容体のリガンド結合部分を含む融合タンパク質、例えばヒトIgG1のFc部分に連結した75−kd(p75)TNF受容体のリガンド結合領域の二量体融合タンパク質であるエタネルセプト(EnbrelTM)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばISIS104838;または低分子量化合物、例えばピリジニルアミド、例えばJM34[N−(4,6−ジメチルピリジン−2−イル)−フラン−2−カルボキサミド]またはJM42[N−(4,6−ジメチルピリジン−2−イル)5−ブロモフラン−2−カルボキサミド];
iii)インターロイキンアンタゴニスト、例えばIL−1R阻害剤、例えばアナキンラ(KineretTM)、IL−6R阻害剤、例えば抗IL−6Rモノクローナル抗体、例えばアトリズマブ(Chugai MRA)のようなヒト化モノクローナル抗体;
iv)p38MAPキナーゼ阻害剤、例えばピリジニルイミダゾール化合物、例えばSB203580;キノリン−2−オンまたはイソキサゾロ[3,4−c]キノリン−2−オン、例えばICX56238890またはICX56319223(3−[3−(4−クロロフェニル)−3−ナフタレン−2−イルアミノ)−プロパノイル]−4−ヒドロキシ−1−メチルキノリン−2(1H)−オン);SCIO−323、SCIO−469;VX−702;
v)シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばセレコキシブ(CelebrexTM)、ロフェコキシブ(VioxxTM)、エトリコキシブ、バルデコキシブまたは5−アルキル−2−アリールアミノフェニル酢酸、例えばルミラコキシブ(PrexigeTM);
vi)RAに有用なスルホンアミド化合物、例えばスルファサラジン(5−(Ip−(2−ピリジルスルファモイル)フェニルアゾ)サリチル酸);
vii)抗マラリア化合物、例えばヒドロキシクロロキニンまたはクロロキニン;
viii)鎮痛剤、例えばサリチル酸またはその誘導体、例えばアセチルサリチル酸、またはベンゼン酢酸誘導体、例えばイブフェナック、イブプロフェンまたはイブプロキサム。
【0026】
特許出願または科学文献の引用が成されている各場合、本化合物に関連する対象を本明細書に引用により包含する。同様に、その中に記載されているその薬学的に許容される塩、対応するラセミ体、ジアステレオ異性体、エナンチオマー、互変体、ならびに存在するとき対応する結晶修飾体、例えば溶媒和物、水和物および多形態が包含される。本発明の組み合わせ剤において活性成分として使用する化合物は、各々引用文献に記載の通り製造し、かつ投与できる。また、本発明の範囲内なのは、上記に明示の2個または以上の別々の活性成分の組み合わせであり、すなわち本発明の範囲内の医薬的組み合わせ剤は、3個またはそれ以上の活性成分を含み得る。さらに第一剤および併用剤の両方が同一の成分ではない。
【0027】
上記に明示の通りの関節炎またはリウマチ性関節炎疾患の処置におけるmTOR阻害剤およびそれらの組み合わせ剤の有用性は、動物試験法、ならびに、臨床で、例えば、下記に記載の方法に従って証明し得る。
【0028】
A.1 ヒトリウマチ滑膜繊維芽細胞の自発的増殖に対する効果
RA患者の滑膜組織のコラゲナーゼ消化により得た滑膜細胞を、トリプシン/EDTAで解離し、ゼラチン被覆ペトリ皿中で、10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、50U/ml ペニシリン−50mg/mlストレプトマイシン(全てGibcoから)、および10mM HEPES添加RPMI 1640培地中、懸濁培養として培養する。滑膜細胞を2から8回の継代で実験に使用する。細胞増殖の評価は、Amershamから得たアッセイキットを使用してブロモデオキシウリジン取り込みの測定による細胞中のDNA合成の直接検出を使用して、または、インキュベーション時間の最後の生存細胞の直接計数のいずれかを使用して成す。細胞を、最初に2×10細胞/ウェルで播種する。統計学的分析はステューデントのt検定による。mTOR阻害剤、例えば式Iの化合物、例えば化合物Aは滑膜細胞の増殖を両方の基準で有意に抑制する。ブロモデオキシウリジン法の場合、最大効果は、10pM濃度で観察される。直接細胞計数は、濃度が10nMに到達したとき最大効果を示す。ラパマイシンでの試験は、滑膜細胞増殖を総細胞内ATPレベルの測定により評価したとき、抑制は10pMで最大であることを示す。
【0029】
A.2 抗発熱効果
LPS発熱。リポポリサッカライド(LPS)の5ml/kgの100μg/kgの用量を皮下注射で投与し、2時間後、体温を直腸体温計を使用して測定する。次いで、ラットをそれらの体温反応に従い、適合させた処置群に置く。+4時間目に、mTOR阻害剤をp.o.投与し、最終体温を再び+6時間目に測定する。体温の上昇を各動物について計算し、媒体処置群と比較して、各処置群の%阻害を決定する。
【0030】
IL−1発熱。ベースライン体温を測定し、ラットを適合させた群に置く。動物にmTOR阻害剤(0.5、2または4mg/kg)p.o.を投与し、30分後、100ng IL−1βをi.v.注射する。+4時間目に、最終体温を測定し、LPS発熱について%阻害を計算する。
これらのアッセイにおいて、mTOR阻害剤はLPSおよびIL−1β誘導発熱を阻害する。化合物Aは、LPSおよびIL−1β誘導発熱の両方の用量依存的阻害を、各々1.9(1.21−2.41)95%および<0.54mg/kg p.o.のED50で示す。
【0031】
A.3 炎症性疼痛のモデルにおける抗侵害受容性活性
痛覚過敏を足底内酵母注射により誘発し、侵害受容を、動物が鳴くかまたは加圧パッドから足を引っ込めるまで、足に圧力を増加させながら加えることにより測定する。雌OFAラットが鳴くか足を引っ込めるのを誘発するのに必要な基線圧力を測定し(−2時間)、続いて、100μlの水中の20%酵母懸濁液を後肢に足底内注射する。ラットをラパマイシンまたはその誘導体(0.5、2または4mg/kg)または媒体(食塩水)p.o.で2時間後経口処置し(0時間)、加圧試験を投与1時間および2時間後に繰り返す。これらの時点での化合物処置ラットが鳴くかまたは足を引っ込めるのを誘発するのに必要な圧力を媒体誘発処置動物のものと比較する。
これらのアッセイにおいて、mTOR阻害剤は足痛覚過敏を阻害する。化合物Aは、2mg/kg用量で1時間後のならびに4mg/kg p.o.用量で1時間および2時間後の両方の足痛覚過敏を有意に阻害する。
【0032】
B 臨床試験
適切な臨床試験は、リウマチ性関節炎の患者での、オープラベル、非無作為、用量漸増試験である。このような試験は、例えば本発明の組み合わせ剤の活性成分の相乗性を立証し得る。関節炎疾患に対する有益な効果は、直接これらの治験結果を介して、または、当業者にそれ自体既知の治験デザインの変化により、決定できる。このような治験は、特に、活性成分を使用した単剤療法と、本発明の組み合わせ剤の効果の比較に適している。好ましくは、mTOR阻害剤(a)の用量を最大耐用量に到達するまで漸増し、併用剤(b)を固定用量で投与する。あるいは、薬剤(a)を固定用量で投与し、併用剤(b)を漸増する。各患者は、mTOR阻害剤(a)の投薬を毎日または断続的に受ける。処置の効果は、このような治験で、例えば、12、18または24週間後、圧痛のある関節の数または腫脹のある関節の数の評価により決定できる。
【0033】
あるいは、プラセボ対照、二重盲試験を、本明細書に記載の本発明の組み合わせ剤の効果を立証するために使用できる。
メトトレキサート部分応答者の120名の患者を2群に無作為化し、バックグラウンドのメトトレキサート処置をしながら、mTOR阻害剤a)またはプラセボを1日1回12週間投与する。ベースライン前に最初のスクリーニング来院(−21から−7日目)がある。疾患状態をスクリーニングおよびベースライン来院時に評価する。患者は12週間の処置期間中、1週目、2週目、4週目、8週目および12週目ならびにフォローアップ期間中14週目、16週目、20週目および24週目に来院する。
【0034】
治験への患者の包含基準:1988年改変ARA基準により定義されたRAと診断されており、6ヶ月より長い疾患期間でなければならない。全ての患者は、下記パラメーターにより定義される活動性RAを有しなければならない:
− 治験参加時に、58/60関節計数に基づいて、少なくとも6個の腫脹したおよび9個の圧痛のある関節
− 下記の1個:赤血球沈降速度(ESR)>28mm/時間、C反応性タンパク質(CRP)>1.5mg/dLまたは朝のこわばり>45分
患者は、メトトレキサートを少なくとも16週間投与されており、1日目の少なくとも8週間前から安定した投与量(7.5mg/週)経路でなけれならない。彼らは同じ一日量のメトトレキサートを12週間の処置のコースの間受ける。
【0035】
一次効果結果測定は、RAの改善のためのACR20基準の達成であり、各群におけるACR20基準に合う患者の比率を測定する。ACR20基準は、5個の変数(身体障害の程度HAQ、患者総括的評価、医師総括的評価、疼痛およびCRP/ESRレベル)のうち少なくとも3個の20%改善に加えて、圧痛のある関節数および腫脹した関節数の両方の20%改善と定義する。
【0036】
mTOR阻害剤、例えば化合物Aの、例えば6mg/日の用量での、メトトレキサートと組み合わせた投与は、プラセボ群と比較して優れたACR20に従った応答を導く。例えば、化合物Aで得た結果は下記の通りである:
【表1】

【0037】
本発明の医薬的組み合わせ剤の投与は、本発明の組み合わせ剤に使用する薬学的活性成分の一方のみを適用した単剤療法と比較して、有益な効果、例えば症状の緩和、進行の遅延または阻害に関して、例えば相乗的治療効果を、および/または、例えば生活の質の改善または罹病率の低下のような効果を提供する。
【0038】
さらなる利益は、本発明の組み合わせ剤の活性成分の低用量を使用でき、例えば、必要な投与量がしばしば少ないだけでなく、また少ない頻度でも投与され、これは副作用の発生または重症度を低下させ得る。これは処置すべき患者の望みおよび要求に合う。
【0039】
関節炎、リウマチ性関節炎またはそれに附随する障害に対して併用で治療的有効量の、本発明の組み合わせ剤を含む医薬組成物を提供することが本発明の一つの目的である。この組成物において、mTOR阻害剤a)および併用剤(b)を一緒に、交互にまたは別々に、一つの組み合わせ単位投与形態でまたは2個の別々の単位投与形態で投与し得る。単位投与形態はまた固定された組み合わせであり得る。
【0040】
mTOR阻害剤a)および併用剤b)の別々の投与のための、または固定された組み合わせでの、すなわち、少なくとも2個の組み合わせパートナーa)およびb)を含む1個のガレヌス製剤の投与のための、医薬組成物はそれ自体既知の方法で製造でき、それらはヒトを含む哺乳動物(温血動物)への経腸、例えば経口または直腸、および非経腸投与に適し、治療的有効量の少なくとも1個の薬理学的に活性の組み合わせパートナーを単独で、例えば上記の通り、またはとりわけ経腸または非経腸投与に適した1個またはそれ以上の薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて含むものである。
【0041】
適当な医薬組成物は、例えば、約0.1%から約99.9%、好ましくは約1%から約60%の活性成分(複数もある)を含む。経腸または非経腸投与のための組み合わせ治療用医薬製剤は、例えば、錠剤、カプセルまたは坐薬、またはアンプルのような単位投与形態のものである。特記されない限り、これらはそれ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、溶解または凍結乾燥工程の手段で製造する。必要な有効用量が複数の投与単位の投与により達成できるため、各投与形態の個々の投与量に含まれる組み合わせパートナーの単位含量がそれ自体有効量を構成する必要はないことは、認識されよう。
【0042】
例えば、本発明の関節炎、リウマチ性関節炎またはそれに附随する障害の進行の遅延または処置の方法は、併用で治療的有効量の、例えば、本明細書に記載の量に対応する、好ましくは相乗的有効量の、例えば、毎日のまたは断続的投与での、(i)遊離形または薬学的に許容される塩形のmTOR阻害剤a)の投与および(ii)遊離形または薬学的に許容される塩形の併用剤b)の、同時のまたは任意の順番で連続した投与を含む。本発明の組み合わせ剤の個々の組み合わせパートナーは、治療経過中に異なる時点で別々に、または、同時に、分割したまたは1個の組み合わせ形態で投与できる。さらに、投与なる用語はまた、インビボで組み合わせパートナーそれ自体に変換する組み合わせパートナーのプロドラッグの使用も包含する。本発明は、従って、同時にまたは交互に処置する全てのこのようなレジメンを包含すると理解すべきであり、用語“投与”もそれに準じて解釈すべきであることは理解されよう。
【0043】
本発明の組み合わせ剤に用いる組み合わせパートナーの各々の有効投与量は、用いる特定の化合物または医薬組成物、投与形態、処置すべき状態、処置している状態の重症度に依存して変化し得る。通常の技術の医師、臨床医または獣医師は、該状態の軽減、回復または進行の停止に必要な単独活性成分の有効量を容易に決定し、処方できる。毒性なしに効果を産生する範囲内の活性成分の濃度を達成するための精密な最適化は、特に、併用剤b)が小分子であるとき、標的部位に対する活性成分の利用能の動態に基づいたレジメンを必要とする。
【0044】
mTOR阻害剤a)の一日量は、もちろん、様々な因子、例えば選択した化合物、処置すべき特定の状態、および所望の効果に依存して変化するであろう。しかしながら、一般に、一回投与または分割投与で、約0.01から5mg/kg/日、特に0.5から5mg/kg/日の一日量の薬剤a)の投与により、十分な結果が達成される。好ましい一日用量範囲は、一回投与または分割投与で約0.1から30mgである。mTOR阻害剤a)、例えば化合物Aは、任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば経口で、例えば錠剤、カプセル、飲溶液の形で、または非経腸的に、例えば注射用溶液または懸濁液の形で投与し得る。経口投与用の適当な単位投与形態は、約0.05から15mg活性成分、通常0.25から10mgの、例えば化合物Aを、1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む。
【0045】
併用剤b)は、当分野で既知の用量範囲で、例えば既知の範囲の少ない方の用量で投与し得る。
【0046】
メトトレキサートは、ヒトに下記用量範囲で投与し得る:2日毎または3日毎に0.1mg/kg/日 p.o.。
インフリキシマブは、ヒトに下記用量範囲で投与し得る:断続的、例えば1週目、2週目および6週目、その後、8週毎に3mg/kg iv。
エタネルセプトは、ヒトに下記用量範囲で投与し得る:2×25mg/週。
セレコキシブは、ヒトに下記用量範囲で投与し得る:200−400mg/日 p.o.。
ラパマイシンまたはその誘導体は、本発明のに従った使用で必要な投与量で十分耐容性である。例えば、化合物Aの4週間毒性試験でのNTELは、ラットで0.5mg/kg/日およびサルで1.5mg/kg/日である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)mTOR阻害剤、および
b)関節炎またはリウマチ性関節炎に対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤
を含む、医薬的組み合わせ剤。
【請求項2】
関節炎またはリウマチ性関節炎に対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤と組み合わせて使用すべき、関節炎、リウマチ性関節炎またはそれに附随する障害の処置用医薬の製造のための、mTOR阻害剤の使用。
【請求項3】
医薬が、中程度から重度のリウマチ性関節炎を有する対象において進行を遅延させるために使用し、かつ、関節炎またはリウマチ性関節炎に対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤と組み合わせて使用する、請求項2記載の使用。
【請求項4】
対象におけるマクロファージまたは滑膜繊維芽細胞増殖の減少または阻害のための医薬(ここで、該医薬を所望により治療的有効量の関節炎またはリウマチ性関節炎に対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤と組み合わせて使用する)の製造における、mTOR阻害剤の使用。
【請求項5】
医薬を対象における侵襲性繊維状パンヌスの塊形成の減少または阻害に使用する、請求項4記載の使用。
【請求項6】
疼痛の予防、軽減または処置用医薬(ここで、該医薬を所望により治療的有効量の関節炎またはリウマチ性関節炎に対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤と組み合わせて使用する)の製造における、mTOR阻害剤の使用。
【請求項7】
発熱の予防、軽減または処置用医薬(ここで、該医薬を所望により治療的有効量の関節炎またはリウマチ性関節炎に対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤と組み合わせて使用する)の製造における、mTOR阻害剤の使用。
【請求項8】
mTOR阻害剤を1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、マクロファージまたは滑膜繊維芽細胞増殖の減少もしくは阻害、疼痛の予防、軽減もしくは処置または発熱の予防、軽減もしくは処置のための医薬組成物。
【請求項9】
処置を必要とする対象における関節炎、リウマチ性関節炎またはそれに附随する障害を処置する方法であって、該対象に治療的有効量のmTOR阻害剤および関節炎またはリウマチ性関節炎に対して臨床活性を有することが示されている少なくとも1個の併用剤を投与することを含む、方法。
【請求項10】
mTOR阻害剤が40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンである、請求項1から9のいずれかに記載の使用、組成物または方法。


【公表番号】特表2007−512381(P2007−512381A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541869(P2006−541869)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013587
【国際公開番号】WO2005/053661
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】