説明

医薬組成物

本明細書では、アゴニストに対して応答性のある宿主における状態の治療方法であって、前記アゴニストおよびそのアンタゴニストを含む多層医薬組成物を宿主に投与することを含み、前記アゴニストおよび前記アンタゴニストは組成物の無傷の形態では互いに直接接触していない、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年10月11日に出願された米国仮特許出願第60/851,099号明細書に対して優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、アンタゴニストおよび遮断剤を含む隔離用サブユニット(sequestering subunit)、ならびに治療剤の乱用の妨げなどにおける関連する組成物および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
オピオイドアゴニストとも呼ばれるオピオイド類は、オピウム様またはモルヒネ様性質を示す薬物の一クラスである。オピオイド類は、主として中等度から強力な鎮痛剤として使用されるが、傾眠、呼吸抑制、気分の変化、および意識喪失を生じることのない精神的混濁など、さらに他の多くの薬理学的作用を有する。これら他の薬理学的作用のため、オピオイド類は、依存症および乱用の対象となっている。したがって、オピオイド類の使用に関連する主要な関心事は、違法な使用者、例えば、薬物常用者からこれらの薬物の使用をそらすことにある。
【0004】
身体的依存症は、オピオイド類の反復投与または長期使用の際に発症し得る。身体的依存症は、オピオイドの使用中止後に徐々に症状が発現するか、麻薬アンタゴニストの投与後に急激(例えば、2、3分以内)に症状が発現する(「誘発禁断症状(precipitated withdrawal)」と称される)。依存症が確立されている薬物、使用および投与期間に依存し、禁断症状は、数と種類、期間と重症度が変わる。禁断症状症候群の最も一般的な症状には、食欲不振、体重減少、瞳孔散大、過度の発汗に代わる悪寒、腹部痙攣、吐き気、嘔吐、筋痙攣、高過敏症、流涙、鼻漏、鳥肌および心拍数の増加が挙げられる。自然の禁断症候群は、典型的に最後の投与24〜48時間後に生じ始めて、およそ3日目に最大強度に達し、低下し始めるのは3週間目に入ってからである。オピオイドアンタゴニストの投与により生じる誘発禁断症候群は、投与量および具体的なアンタゴニストにより強度および期間が変わるが、一般に2、3分から数時間の長さで変わる。
【0005】
オピオイド類に対する精神的依存症または耽溺性は、例えば、多幸感および心理社会的経済的圧力からの逃避の達成に対して向けられた薬物探索挙動を特徴とする。常習者は、非医療目的で、かつ自己損傷にもかかわらずオピオイド類を投与し続けるであろう。
【0006】
モルヒネ、ヒドロモルホン、ヒドロコドンおよびオキシコドンなどのオピオイド類は、痛みの管理において有効であるが、精神的にオピオイド類に依存するか、または非治療的な理由でオピオイド類を誤使用する個人による乱用が増加している。他のオピオイド類による以前の経験では、オピオイド類が、特に元常習者の患者において、麻薬アンタゴニストと組み合せて投与される場合に乱用の可能性が減少することが立証されている(ウェインホールド(Weinhold)ら、Drug and Alcohol Dependence 30:263−274頁(1992年);およびメンデルソン(Mendelson)ら、Clin.Pharm.Ther.60:105−114頁(1996年))。しかしながら、これらの組み合せは、隔離形態にあるオピオイドアンタゴニストを含有していない。むしろ、アゴニストおよびアンタゴニストを特異的に代謝し、アゴニスト効果を無効にする宿主の生理機能に依存して、経口投与して吸収利用が成される場合にオピオイドアンタゴニストは胃腸系において放出される。
【0007】
オピオイド鎮痛剤に関連して乱用の可能性を制御するための以前の試みには、例えば、Sanofi−Winthrop(カンタベリー、豪州)からTalwin(登録商標)Nxとして米国で市販されている錠剤中のペンタゾシンおよびナロキソンの組み合せが挙げられる。Talwin(登録商標)Nxは、50mgの塩基に等しい塩酸ペンタゾシンおよび0.5mgの塩基に等しい塩酸ナロキソンを含有する。Talwin(登録商標)Nxは、中等度から重症度の痛みの軽減のために適応される。この組み合せ中に存在するナロキソンの量は、経口摂取した際は低活性であり、ペンタゾシンの生理作用の妨げは最小限である。しかしながら、この量のナロキソンを非経口投与すると、麻薬性鎮痛薬に対して重大なアンタゴニスト作用を有する。このように、ナロキソンの含有により、この剤形が可溶化され、注入された場合に生じる経口用ペンタゾシンの誤使用の形態を抑制することが意図されている。したがって、この投与は、非経口誤使用に関して、以前の経口用ペンタゾシン製剤よりも可能性が低い。しかしながら、経口経路により、例えば、患者が一度に多用量を摂取することにより、依然として患者が誤使用および乱用を受けやすい。チリジン(50mg)およびナロキソン(4mg)を含む固定的な併用療法は、1978年以来、重症の痛みの管理用に独国で利用されている(Valoron(登録商標)N、Goedecke)。これら薬物の併用に関する理論的根拠は、有効な痛みの軽減であり、チリジン受容体においてナロキソン誘導拮抗作用を介するチリジン耽溺性の妨げである。痛みの治療のためにブプレノルフィンおよびナロキソンの固定的な併用は、ニュージーランド(Terngesic(登録商標)Nx、Reckitt & Colman)において1991年に導入された。
【0008】
ユーロセルチーク,S.A.(Euroceltique,S.A.)に対する国際特許出願第PCT/US01/04346号明細書(国際公開第01/58451号パンフレット)は、医薬剤形、例えば、錠剤またはカプセルに組み合されている個々のサブユニットとして、本質的に非放出オピオイドアンタゴニストおよび放出オピオイドアゴニストを含有する医薬組成物の使用を記載している。しかしながら、このアゴニストおよびアンタゴニストは個々のサブユニット内にあるので、それらは容易に分離することができる。さらに、このアゴニストおよびアンタゴニストは個々のサブユニットとして提供されるので、隔離剤を含む幾つかのサブユニットの機械的感度のため、錠剤を形成するのはより困難となる。
【0009】
耐乱用性剤形の利点は、価値ある鎮痛剤を提供するが乱用される傾向がある強力なオピオイドアゴニスト(例えば、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコドンまたはヒドロコドン)の経口用剤形に関して特に大きい。これは特に、各用量単位において経時的に放出されるように意図された大用量の所望のオピオイドアゴニストを有する徐放性オピオイドアゴニスト製品に当てはまる。薬物乱用者は、このような徐放性製品を得ると、この剤形の全薬物含量を即時吸収に利用するために破砕、粉砕、抽出または他の損傷を行う。
【0010】
このような耐乱用性の徐放性剤形は、当該技術分野で記載されている(例えば、米国特許出願公開第2003/0124185号明細書および米国特許出願公開第2003/0044458号明細書を参照)。しかしながら、これらの隔離形態に見られる実質的な量のオピオイドアンタゴニストまたは他のアンタゴニストは、水が隔離形態を介してコアに浸透するにつれて隔離形態のコア内の浸透圧が高まるため、経時的に(通常は24時間以内)放出されると信じられている。隔離形態のコア内の高浸透圧により、オピオイドアンタゴニストまたはアンタゴニストが隔離形態から押し出され、それによってオピオイドアンタゴニストまたはアンタゴニストが隔離形態から放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の先行技術の隔離形態の欠点に鑑みて、浸透圧により隔離形態から実質的に放出されないオピオイドアンタゴニストまたは他のアンタゴニストの隔離形態が、当該技術分野で求められている。本発明は、このような隔離形態をオピオイドアンタゴニストまたはアンタゴニストについて提供する。この目的と他の目的、および本発明の利点、ならびにさらなる本発明の特徴は、本明細書に提供された本発明の説明から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
本明細書において、アゴニストに対して応答性のある宿主における状態の治療方法であって、前記アゴニストおよびそのアンタゴニストを含む多層医薬組成物を宿主に投与することを含み、前記アゴニストおよび前記アンタゴニストは組成物の無傷の形態では互いに直接接触していない、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本明細書において、インビボでいずれかの活性剤の効果を最小にする形態および様式で、複合活性剤を哺乳動物に投与する組成物および方法を提供する。ある種の実施形態において、少なくとも2種の活性剤を医薬組成物の一部として製剤化する。第1の活性剤は、インビボでの治療作用を提供できる。第2の活性剤は、第1の活性剤のアンタゴニストであってもよく、組成物の誤使用を妨げるのに有用であり得る。例えば、第1の活性剤が麻薬である場合、第2の活性剤は、麻薬のアンタゴニストであり得る。本組成物は、患者による正常な使用時に無傷のままであり、アンタゴニストは放出されない。しかしながら、本組成物を改竄する(tamper)と、アンタゴニストが放出され、それによって麻薬がその意図する効果を有することが妨げられ得る。ある種の実施形態において、活性剤は両方とも、複数層の形態の単一単位(ビーズなど)に含まれる。活性剤は、組成物からのアンタゴニストの放出が最小になるように、例えば、徐放性組成物として実質的に不浸透性のバリヤーを伴って製剤化できる。ある種の実施形態において、アンタゴニストは、インビトロアッセイで放出されるが、インビボでは実質的に放出されない。組成物からの活性剤のインビトロおよびインビボ放出は、幾つかの周知技術のいずれかにより測定することができる。例えば、インビボ放出は、活性剤またはその代謝物の血漿濃度(すなわち、AUC、Cmax)を測定することによって決定することができる。
【0014】
一実施形態において、オピオイドアンタゴニストおよび遮断剤を含む隔離用サブユニットを提供し、該遮断剤は、胃腸管において隔離用サブユニットからのオピオイドアンタゴニストの放出を24時間超、実質的に妨げる。この隔離用サブユニットは、オピオイドアゴニストも含む単一の医薬単位(pharmaceutical unit)内に組み込まれる。したがって、医薬単位は、オピオイドアンタゴニストが適用されるコア部分を含む。次にアンタゴニスト上に、シールコートを任意に適用する。次いでシールコート上に、薬学的に活性な薬剤を含む組成物を適用する。次に、同一または異なる遮断剤を含有するさらなる層を、オピオイドアゴニストが消化管内で経時的に放出されるように(すなわち、徐放性)、適用することができる。このように、オピオイドアンタゴニストおよびオピオイドアゴニストの両方は、典型的にはビーズ形態の単一の医薬単位に含まれる。
【0015】
本明細書に用いられる用語「隔離用サブユニット」とは、アンタゴニストを含有し、無傷の場合、すなわち、改竄しない場合、消化管内でその放出を妨げるかまたは実質的に妨げる任意の手段のことである。本明細書に用いられる用語「遮断剤」とは、隔離用サブユニットがアンタゴニストの放出を実質的に妨げることができる手段のことである。遮断剤は、例えば、下記により詳細に説明されるような隔離用ポリマーであり得る。
【0016】
本明細書に用いられる用語「実質的に妨げる」、「妨げる」、またはそれらの派生語は、アンタゴニストが、胃腸管内で隔離用サブユニットから実質的に放出されないことを意味する。「実質的に放出されない」とは、アンタゴニストが少量放出され得るが、剤形が、意図された宿主、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)に経口投与された場合、放出量が鎮痛効力に影響を及ぼさないか、または有意に影響を及ぼさないことを意味する。本明細書に用いられる用語「実質的に妨げる」、「妨げる」、またはそれらの派生語は、必ずしも完全または100%の妨げを意味していない。むしろ妨げには、当業者が、潜在的利益を有するものとして認識する種々の程度がある。これに関して、遮断剤は、胃腸管内での隔離用サブユニットからの少なくとも約80%のアンタゴニストの放出を24時間超妨げる程度に、アンタゴニストの放出を実質的に妨げるかあるいは妨げる。好ましくは、遮断剤は、胃腸管内の隔離用サブユニットからの少なくとも約90%のアンタゴニストの放出を24時間超妨げる。より好ましくは、遮断剤は、隔離用サブユニットからの少なくとも約95%のアンタゴニストの放出を妨げる。最も好ましくは、遮断剤は、胃腸管内での隔離用サブユニットからの少なくとも約99%のアンタゴニストの放出を24時間超妨げる。
【0017】
経口投与後に放出されるアンタゴニストの量は、米国薬局方(USP26)の<711>章「溶解」に記載されている溶解試験によりインビトロで測定してもよい。例えば、900mLの0.1NのHCl、装置2(パドル)を用いて、75rpm、37℃で種々の時間で投与単位からの放出を測定する。所与の時間にわたって隔離用サブユニットからアンタゴニストの放出を測定する他の方法は、当該技術分野で知られている(例えば、USP26を参照)。
【0018】
特定の理論のいずれにも拘束されるつもりはないが、本明細書で提供する隔離用サブユニットが隔離用サブミットからのアンタゴニストの浸透圧駆動(osmotically-driven)放出を減少させる点で、当該技術分野で既知のアンタゴニストの隔離形態の制限は本明細書で提供する隔離用サブユニットによって克服されると考えられる。さらに、当該技術分野で既知のアンタゴニストの隔離形態と比較して、本明細書で提供する隔離用サブユニットは、より長時間(例えば、24時間超)アンタゴニストの放出を減少させると考えられる。誘発禁断症状は、治療剤が放出され作用した時間の後に生じ得ることから、本明細書で提供する隔離用サブユニットがアンタゴニストの放出に関してより長時間の妨げを提供するという事実は、特に関係がある。個人の胃腸管の通過時間が集団内で大いに変わることは周知である。それ故、剤形の残留は、24時間以上、幾つかの場合では48時間以上、管内に留まり得る。オピオイド鎮痛剤が、腸運動の低下を引き起こし、さらに胃腸管の通過時間を延長させることはさらに周知である。現在、24時間を超える効果を有する徐放性形態は、食品医薬品局(Food and Drug Administration)により承認されている。これに関して、発明の隔離用サブユニットは、隔離用サブユニットが改竄されなかった場合、24時間超アンタゴニストの放出の妨げを提供する。
【0019】
隔離用サブユニットは、無傷の場合、アンタゴニストの放出を実質的に妨げるように設計される。「無傷(intact)」とは、剤形が改竄を受けないことを意味する。用語「改竄(tampering)」とは、剤形の物理的性質を変化させる、いずれの機械的、熱的および/または化学的手段による操作を含むことを意味する。改竄は、例えば、破砕、せん断、粉砕、咀嚼、溶媒中の溶解、加熱(例えば、約45℃超)、または任意のそれらの組み合せであり得る。隔離用サブユニットが改竄された場合、アンタゴニストは、隔離用サブユニットから直ちに放出される。
【0020】
「サブユニット」とは、別のサブユニットと組み合された場合、剤形(例えば、経口用剤形)を提供することができる組成物、混合物、粒子などを含むことを意味する。サブユニットは、ビーズ、ペレット、粒状、球状などの形態であり、剤形を、例えば、経口用剤形を提供するために、カプセル、錠剤などの形態でさらに同じかまたは異なるサブユニットと組み合せることができる。サブユニットは、層などの、単位の一部を形成する、より大きな単一単位の一部であってもよい。例えば、サブユニットは、アンタゴニストおよびシールコートでコーティングされたコアであってもよく;このサブユニットは、次にオピオイドアゴニストなどの薬学的に活性な薬剤を含むさらなる組成物でコーティングすることができる。
【0021】
「治療剤のアンタゴニスト」とは、治療剤の同じ標的分子(例えば、受容体)に結合し、治療応答、細胞内応答、またはインビボ応答を生じない天然または合成の薬物または分子を意味する。これに関して、治療剤のアンタゴニストは治療剤の受容体に結合し、それによってその受容体に対する治療剤の作用を妨げる。オピオイド類の場合、アンタゴニストは、宿主の「高揚(high)」の達成を妨げることができる。
【0022】
アンタゴニストは、治療剤の効果を無効にするか、あるいはこれを含む隔離用サブユニットまたは組成物による改竄の阻止または回避を引き起こす不快なまたは苦痛を与える刺激または作用を生じる、任意の試剤であることができる。アンタゴニストは、その投与または摂取により宿主を害さないことが望ましいが、例えば、咀嚼および嚥下により、または、例えば、破砕および吸飲により、その投与または摂取を妨げる性質を有する。アンタゴニストは、例えば、強烈なまたは嫌な味もしくは臭いを有する可能性があり、焼け付くようなまたは刺すような感覚を与える可能性があり、催涙反応、吐き気、嘔吐、または他の不快なまたは嫌な感覚を生じるか、組織を着色し得る。アンタゴニストは、治療剤のアンタゴニスト、苦味剤、染料、ゲル化剤、および刺激剤からなる群から選択されるのが好ましい。代表的なアンタゴニストには、カプサイシン、染料、苦味剤、および催吐剤が挙げられる。アンタゴニストは、単一タイプのアンタゴニスト(例えば、カプサイシン)、単一タイプのアンタゴニストの複数の形態(例えば、カプサイシンおよびその類縁体)、または異なるタイプのアンタゴニストの組み合せ(例えば、1種以上の苦味剤および1種以上のゲル化剤)を含むことができる。隔離サブユニット中のアンタゴニストの量は、宿主に対して毒性でないことが望ましい。
【0023】
治療剤がオピオイドアゴニストである場合において、アンタゴニストはオピオイドアンタゴニスト、例えば、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、シクラザシン、レバドルファン、それらの誘導体または複合体、それらの薬学的に許容できる塩、およびそれらの組み合せなどであることが好ましい。オピオイドアンタゴニストが、ナロキソンまたはナルトレキソンであることがより好ましい。「オピオイドアンタゴニスト」とは、1種以上のオピオイドアンタゴニストを単独でまたは組み合せて含むことを意味し、さらに、部分的アンタゴニスト、それらの薬学的に許容できる塩、それらの立体異性体、それらのエーテル、それらのエステル、およびそれらの組み合せを含むことを意味する。薬学的に許容できる塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などの金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属;トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩;メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸塩、が挙げられる。ある種の実施形態において、オピオイドアンタゴニストの量は、約10ngから約275mgであり得る。好ましい実施形態において、アンタゴニストがナルトレキソンである場合、無傷の剤形は24時間以内に0.125mg未満放出し、この剤形が破砕または咀嚼された場合、1時間後に0.25mg以上のナルトレキソンが放出される。
【0024】
好ましい実施形態において、オピオイドアンタゴニストは、ナロキソンを含む。ナロキソンは、アゴニスト効果が殆どないオピオイドアンタゴニストである。最大12mgの皮下用量は、認識可能な主観的効果を生じず、24mgのナロキソンは、僅かに傾眠だけを引き起こす。ヒトの筋肉内または静脈内に投与された少用量(0.4〜0.8mg)のナロキソンは、モルヒネ様オピオイドアゴニストの効果を妨げるか、即座に逆にする。1mgの静脈内ナロキソンは、25mgのヘロインの効果を完全に遮断することが報告されている。ナロキソンの効果は、ほぼ静脈内投与直後に見られる。この薬物は、経口投与後に吸収されるが、非経口的に投与された場合よりも有意に低い効力を有することが報告されているように、肝臓の最初の通過で迅速に不活化形態に代謝されることが報告されている。1gより多い経口投与量は、24時間未満でほぼ完全に代謝されることが報告されている。舌下に投与されたナロキソンの25%が吸収されることが報告されている(ウェインバーグ(Weinberg)ら、Clin.Pharmacol.Ther.44:335−340頁(1988年))。
【0025】
別の好ましい実施形態において、オピオイドアンタゴニストは、ナルトレキソンを含む。以前にオピオイド類に対して中毒となった患者の治療において、大用量(100mg超)が経口的に用いられてオピオイドアゴニストの多幸感を起こす作用を妨げるためにナルトレキソンが用いられている。ナルトレキソンは、デルタ部位上のmuに対して強く優先する遮断作用を及ぼすことが報告されている。ナルトレキソンは、オピオイドアゴニスト特性のないオキシモルホンの合成同族体として知られており、オキシモルホンの窒素原子上に配置されているメチル基をシクロプロピルメチル基で置換することによって構造がオキシモルホンとは異なる。ナルトレキソンの塩酸塩は、最大約100mg/ccで水に溶解性である。ナルトレキソンの薬理学的および薬物動態学的性質は、複数の動物および臨床試験で評価されている。例えば、ゴンザレズ(Gonzalez)ら、Drugs35:192−213頁(1988年)を参照されたい。経口投与後、ナルトレキソンは、迅速に(1時間以内)吸収され、5%から40%の範囲で経口の生物学的利用能を有する。ナルトレキソンのタンパク質結合は約21%であり、単一用量投与後の分布容積は16.1L/kgである。
【0026】
ナルトレキソンは、アルコール依存症の治療用および外因的に投与されたオピオイド類の遮断用に錠剤形態(Revia(登録商標)、デュポン(DuPont)(ウィルミントン、デラウェア州))で市販されている。例えば、Revia(塩酸ナルトレキソン錠剤)、Physician’s Desk Reference、第51版、モントヴェーレ、ニュージャージー州;およびMedical Economics51:957−959頁(1997年)を参照されたい。用量50mgのRevia(登録商標)は、25mgのIV投与ヘロインの薬理学的作用を最大24時間遮断する。慢性基準でモルヒネ、ヘロインまたは他のオピオイド類で併用投与された場合、ナルトレキソンは、オピオイド類に対する身体的依存症の発生を遮断することが知られている。ナルトレキソンがヘロインの作用を遮断する方法は、オピオイド受容体における競合的結合によるものであると考えられている。ナルトレキソンは、オピオイド類の作用の完全遮断により麻薬耽溺性を治療するために使用されている。麻薬耽溺性に対するナルトレキソンの最も成功した使用では、行動管理または他のコンプライアンス促進方法を含む包括的な職業的プログラムまたはリハビリプログラムの一部として、良好な予後を有する麻薬中毒者に見出されている。ナルトレキソンによる麻薬依存症の治療のために、患者は、少なくとも7〜10日間オピオイドフリーであることが望ましい。このような目的のためにナルトレキソンの開始用量は、典型的に約25mgであり、禁断症状の徴候が生じない場合、この用量を1日当り50mgに増加することができる。50mgの日用量は、非経口的に投与されたオピオイド類作用の適切な臨床的遮断を生じると考えられている。ナルトレキソンはまた、社会的および精神療法での添加物としてアルコール依存症の治療用に使用されている。他の好ましいオピオイドアンタゴニストには、例えば、シクラゾシンおよびナルトレキソンが挙げられ、それらの両方は、窒素上のシクロプロピルメチル置換を有し、経口経路によりその効果の多くを保持し、経口投与後約24時間の期間、より長く持続する。
【0027】
アンタゴニストは苦味剤であってもよい。本明細書に用いられる用語「苦味剤」とは、隔離用サブユニットを含む改竄された剤形の吸入および/または嚥下の際に宿主に対して不快な味覚を供する薬剤のことである。苦味剤の含有に伴って、改竄剤形の摂取により、吸入または経口投与の際に苦味を生じることから、ある種の実施形態において、改竄剤形から高揚を得る欲求を損わせるかまたは妨げ、好ましくは、剤形の乱用を妨げる。
【0028】
種々の苦味剤は、例えば、限定はしないが、天然、人工、および合成香味油ならびに香味芳香剤および/または油分、植物、葉、花、果実などに由来する含油樹脂および抽出物、およびそれらの組み合せなどを使用することができる。非限定的な代表的香味油には、スペアミント油、ペパーミント油、ユーカリ油、ニクズク油、オールスパイス、メース、苦扁桃油、メントールなどが挙げられる。また、有用な苦味剤は、レモン、オレンジ、ライム、およびグレープフルーツなどの柑橘類油、果実エッセンスなどの人工、天然および合成果実香料である。さらなる苦味剤には、スクロース誘導体(例えば、スクロースオクタアセテート)、クロロスクロース誘導体、硫酸キニーネなどが挙げられる。好ましい苦味剤は、Bitrex(商標)(マクファーレン・スミス(Macfarlan Smith)社、エジンバラ、英国)の商品名で販売されているデナトニウムベンゾエートNF−アンヒドラス(Denatonium Benzoate NF−Anhydrous)である。使用される特定の苦味剤に依って、剤形の約50重量%未満、好ましくは、約10重量%未満、より好ましくは、約5重量%未満の量で、最も好ましくは、剤形の約0.1重量パーセントから1.0重量パーセントの範囲の量で、苦味剤を製剤に添加することができる。
【0029】
あるいは、アンタゴニストは染料であってもよい。本明細書に用いられる用語「染料」とは、接触組織の変色を引き起こす任意の試剤のことである。これに関して、隔離用サブユニットが改竄され、吸飲された場合、染料は、鼻組織およびその周囲の組織を変色させる。好ましい染料は、皮下組織タンパク質と強く結合できるものであり、当該技術分野でよく知られている。例えば、食品着色から入墨の範囲の適用に有用な染料は、本明細書で企図される。食品着色染料には、限定はしないが、FD&Cグリーン#3およびFD&Cブルー#1、ならびに任意の他のFD&CまたはD&C着色剤が挙げられる。このような食品用染料は、ボイグ・グローバル・ディストリビューション(Voigt Global Distribution)(カンザスシティー、ミズーリ州)などの会社により市販されている。
【0030】
あるいは、アンタゴニストは刺激剤であってもよい。本明細書に用いられる用語「刺激剤」には、刺激、例えば、焼け付くような(burning)または不快な感覚を、本明細書に記載の組成物の改竄剤形を投与する乱用者に付与するために使用される化合物が挙げられる。刺激剤の使用により、乱用者が剤形の改竄をすること、およびその後の改竄された剤形の吸入、注射、または嚥下を思いとどまらせる。刺激剤は、剤形が改竄された場合に放出されることが好ましく、改竄された剤形の吸入、注射、および/または嚥下の際に焼け付くような作用または刺激作用を乱用者に供する。種々の刺激剤は、例えば、限定はしないが、カプサイシン、カプサイシンと同様のタイプの性質を有するカプサイシン類縁体などを使用することができる。幾つかのカプサイシン類縁体または誘導体には、限定はしないが、レシニフェラトキシン、チニアトキシン、ヘプタノイルイソブチルアミド、ヘプタノイル、グアイアシルアミド、他のイソブチルアミドまたはグアイアシルアミド、ジヒドロカプサイシン、ホモバニリルオクチルエステル、ノナノイルバニリルアミド、またはバニロイドとして知られているクラスの他の化合物が挙げられる。レシニフェラトキシンは、例えば、米国特許第5,290,816号明細書に記載されている。米国特許第4,812,446号明細書には、カプサイシン類縁体およびそれらの調製法を記載している。さらに、米国特許第4,424,205号明細書は、カプサイシン様類縁体の辛辣物(pungent)の列記として1954年発刊のニューマン(Newman)の「Natural and Synthetic Pepper−Flavored Substances」を引用している。トン(Ton)らのBritish Journal of Pharmacology 10:175−182頁(1955年)には、カプサイシンおよびその類縁体の薬理学的作用を検討している。剤形への刺激剤(例えば、カプサイシン)の含有により、刺激剤は、乱用者に焼け付くような性質または不快な性質を与えて、改竄剤形の吸入、注射、または経口投与を思いとどまらせ、好ましくは、剤形の乱用を妨げる。好適なカプサイシンの組成物は、カプサイシン(トランス8−メチル−N−バニリル−6−ノネアミド)またはその類縁体を、約0.00125重量%と50重量%との間、好ましくは、約1重量%と約7.5重量%との間、最も好ましくは、約1重量%と約5重量%との間の濃度で含んでいる。
【0031】
アンタゴニストは、ゲル化剤を含んでもよい。本明細書に用いられる用語「ゲル化剤」とは、宿主が迅速な「高揚」を得難くするように隔離用サブユニットで製剤化される治療剤の吸収を遅延させる、改竄された剤形にゲル様性質を与える任意の試剤のことである。ある種の実施形態において、剤形が少量の(例えば、約10ml未満)の水性液(例えば、水)で改竄され、該水性液に曝された場合、剤形は注射および/または吸入に不適となるであろう。水性液を添加したとき、改竄された剤形は濃厚で粘稠性になることが好ましく、これによって注射に不適になる。用語「注射に不適な」とは、剤形に付与された粘性によって実質的に剤形を注射するのが困難となり得(例えば、投与の際の痛みのため、あるいはシリンジを通して剤形の押し出しが困難となるため)、それによって剤形中の治療剤を乱用する可能性を減じることを意味する。ある種の実施形態において、ゲル化剤は、より高濃度の治療剤を生成するために剤形の水性混合物へと蒸発(熱を加えることによる)を試みることによって、注射に不適な高粘稠性材料を生成する量で、剤形中に存在する。改竄された剤形を経鼻的に吸入する場合、ゲル化剤は、粘膜の湿りのため、鼻腔への投与の際にゲル様になり得る。これにより、ゲルは鼻腔に粘着して乱用性材料の吸収を最小にするので、このような製剤も経鼻投与に対して嫌忌なものとなる。種々のゲル化剤は、例えば、限定はしないが、糖類またはマンニトール、ソルビトールなどの糖誘導体アルコール、澱粉および澱粉誘導体、微結晶性セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アタパルジャイト、ベントナイト、デキストリン、アルギネート、カラゲナン、トラガントゴム、アラビアゴム、ガーゴム、キサンタンガム、ペクチン、ゼラチン、カオリン、レシチン、マグネシウムアルミニウムシリケート、カルボマーおよびカルボポール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、シリコンジオキシド、界面活性剤、混合界面活性剤/湿潤剤系、乳化剤、他のポリマー材料、およびそれらの混合物などを使用することができる。ある種の好ましい実施形態において、ゲル化剤はキサンタンガムである。他の好ましい実施形態において、本発明のゲル化剤はペクチンであってもよい。本発明に有用なペクチンまたはペクチン材料には、精製または単離ペクチン酸塩のみならず、必要な場合、例えば、アルカリまたは酵素によりエステル化または脱エステル化に供されたリンゴ、柑橘類またはサトウキビ残渣などの粗製の天然ペクチン源を挙げてもよい。本発明に用いられるペクチンは、ライム、レモン、グレープフルーツ、およびオレンジなどの柑橘類果実に由来することが好ましい。剤形中へのゲル化剤の含有により、ゲル化剤は、改竄した際にゲル様性質を剤形に付与し、該ゲル様性質により、粘膜と接触した改竄剤形のゲル様粘稠性に因って急速な高揚を得ることの欲求を損なわせるか妨げることが好ましく、ある種の実施形態において、例えば、鼻腔において吸収を最小にすることによって剤形の乱用を妨げる。ゲル化剤は、ゲル化剤とオピオイドアゴニストとの比がオピオイドアゴニストの重量で約1:40から約40:1、好ましくは重量で約1:1から約30:1、より好ましくは重量で約2:1から約10:1で製剤に添加することができる。ある種の他の実施形態において、剤形が、水性液体中(約0.5mlから約10ml、好ましくは、1mlから約5ml)の溶解により改竄された後、少なくとも約10cPの粘度を有する粘稠性ゲルを形成する。最も好ましくは、得られる混合物は少なくとも約60cPの粘度を有し得る。
【0032】
「遮断剤」は、24時間超、例えば、24時間と25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、48時間、50時間、55時間、60時間、65時間、70時間、72時間、75時間、80時間、85時間、90時間、95時間、または100時間などとの間の期間、胃腸管内でアンタゴニストの放出を妨げるか、または実質的に妨げる。アンタゴニストの放出が胃腸管内で妨げられるか、または実質的に妨げられる時間は、少なくとも約48時間であることが好ましい。遮断剤が、少なくとも約72時間放出を妨げられるか、または実質的に妨げることがより好ましい。
【0033】
本発明の隔離用サブユニットの遮断剤は、第1のアンタゴニスト不浸透性材料およびコアを含む系であり得る。「アンタゴニスト不浸透性材料」とは、アンタゴニストが隔離用サブユニットから実質的に放出されないように、アンタゴニストに対して実質的に不浸透性の任意の材料を意味する。ある種の実施形態において、アンタゴニスト不浸透性材料の使用により、アゴニストとアンタゴニストとが互いに直接接触しない組成物となる。本明細書に用いられる用語「不浸透性」とは、必ずしも完全にまたは100%を意味するものではない。むしろ、不浸透性には、潜在的な利益を有するとして当業者が認識する種々の程度がある。これに関しては、アンタゴニスト不浸透性材料は、アンタゴニストの少なくとも約80%が、24時間超、胃腸管内で隔離用サブユニットからの放出を妨げられる程度に、アンタゴニストの放出を実質的に妨げるか、または妨げる。好ましくは、アンタゴニスト不浸透性材料は、24時間超、胃腸管内での隔離用サブユニットからの少なくとも約90%のアンタゴニストの放出を妨げる。より好ましくは、アンタゴニスト不浸透性材料は、隔離用サブユニットからの少なくとも約95%のアンタゴニストの放出を妨げる。最も好ましくは、アンタゴニスト不浸透性材料は、24時間超、胃腸管内での隔離用サブユニットからの少なくとも約99%のアンタゴニストの放出を妨げる。アンタゴニスト不浸透性材料は、24時間超、望ましくは、少なくとも約48時間、胃腸管内でのアンタゴニストの放出を妨げるか、または実質的に妨げる。より望ましくは、アンタゴニスト不浸透性材料は、少なくとも約72時間、隔離用サブユニットからの拮抗剤の放出を妨げるか、または実質的に妨げる。
【0034】
第1のアンタゴニスト不浸透性材料は、アンタゴニストが、改竄されることなく意図的に経口投与された際に胃腸管通過中に放出されないかまたは実質的に放出されないよう、疎水性材料を含むことが好ましい。好適な疎水性材料は、本明細書に記載され、以下に説明する。疎水性材料は、薬学的に許容できる疎水性材料であることが好ましい。
【0035】
第1のアンタゴニスト不浸透性材料は、胃腸管内で不溶性のポリマーを含むことも好ましい。当業者は、胃腸管内で不溶性であるポリマーが、隔離用サブユニットの摂取の際にアンタゴニストの放出を妨げることを認識する。ポリマーは、セルロースであっても、アクリルポリマーであってもよい。セルロースは、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、およびそれらの組み合せからなる群から選択されることが望ましい。エチルセルロースは、例えば、約44%から約55%のエトキシ含量を有するものを含む。エチルセルロースは、水性分散液、アルコール性溶液、または他の好適な溶媒中の溶液の形態で使用することができる。セルロースは、0超から最大3を含めた無水グルコース単位上の置換度(D.S.)を有することができる。「置換度」とは、置換基により置換されるセルロースポリマーの無水グルコース単位上の平均ヒドロキシル基数を意味する。代表的な材料には、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、モノセルロースアルカニレート、ジセルロースアルカニレート、トリセルロースアルカニレート、モノセルロースアルケニレート、ジセルロースアルケニレート、トリセルロースアルケニレート、モノセルロースアロイレート、ジセルロースアロイレート、およびトリセルロースアロイレートからなる群から選択されるポリマーが挙げられる。
【0036】
さらに具体的なセルロースには、1.8のD.S.および39.2%から45%のプロピル含量ならびに2.8%から5.4%のヒドロキシ含量を有するセルロースプロピオネート;1.8のD.S.および13%から15%のアセチル含量ならびに34%から39%のブチリル含量を有するセルロースアセテートブチレート;2%から29%のアセチル含量、17%から53%のブチリル含量、0.5%から4.7%のヒドロキシ含量を有するセルロースアセテートブチレート;セルローストリアセテート、セルローストリバレレート、セルローストリラウレート、セルローストリパルミテート、セルローストリスクシネート、およびセルローストリオクタノエートなどの2.9から3のD.S.を有するセルローストリアシレート;セルロースジスクシネート、セルロースジパルミテート、セルロースジオクタノエート、セルロースジペンタノエートなどの2.2から2.6のD.S.を有するセルロースジアシレート、およびセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートオクタノエートブチレート、およびセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースの混合エステルが挙げられる。隔離用サブユニットを調製するために使用することができるさらなるセルロースポリマーには、アセトアルデヒドジメチルセルロースアセテート、セルロースアセテートエチルカルバメート、セルロースアセテートメチカルバメート、およびセルロースアセテートジメチルアミノセルロースアセテートが挙げられる。
【0037】
アクリルポリマーは、メタクリルポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシメチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリル酸アンヒドリド)、グリシジルメタクリレートコポリマー、およびそれらの組み合せからなる群から選択されることが好ましい。隔離用サブユニットの調製に有用なアクリルポリマーには、使用されるアクリル酸およびメタクリル酸1モル当り約0.02モルから約0.03モルのトリ(低級アルキル)アンモニウム基を含有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから合成されたコポリマー(例えば、アクリル酸低級アルキルエステルおよびメタクリル酸低級アルキルエステルのコポリマー)を含むアクリル樹脂が挙げられる。好適なアクリル樹脂の例には、アンモニオメタクリレートコポリマーNF21であり、ロームファルマ社(Rohm Pharma GmbH)、ダルムスタット、独国により製造され、Eudragitの商品名で販売されているポリマーがある。Eudragitは、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM)およびトリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド(TAM)の水溶性コポリマーであり、TAM対残りの成分(EAおよびMM)のモル比は1:40である。Eudragit(登録商標)などのアクリル樹脂は、水性分散液の形態でまたは好適な溶媒中の溶液として使用することができる。好ましいアクリルポリマーには、Eudragit(登録商標)RL PO(タイプA)およびEudragit(登録商標)RS PO(タイプB:本明細書で使用される「Eudragit(登録商標)RS」)(研究論文であるアンモニオメタクリレートコポリマーAタイプ(Ammonio Methacrylate Type A)Ph.Eur.、アンモニオメタクリレートコポリマータイプB(Ammonio Methacrylate Copolymer Type B)Ph.Eur.、アンモニオメタクリレートコポリマーAおよびBタイプ(Ammonio Methacrylate Copolymer Type A and B)USP/NF、およびアミノアルキルメタクリレートコポリマー(Aminoalkylmethacrylate Copolymer)RS JPEで記載される)などの四級アンモニウム基が低含量でアクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーが挙げられる。
【0038】
別の好ましい実施形態において、アンタゴニスト不浸透性材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸およびポリグリコール酸のコポリマー、およびそれらの組み合せからなる群から選択される。ある種の他の実施形態において、疎水性材料には、ポリ(乳酸/グリコール酸)(「PLGA」)を含む生分解性ポリマー、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリホスファゼン、多糖、タンパク質様ポリマー、ポリエステル、ポリジオキサノン、ポリグルコネート、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリホスホエステルまたはそれらの組み合せが挙げられる。好ましくは、生分解性ポリマーは、約2,000から約500,000ダルトンの分子量を有する、ポリ(乳酸/グリコール酸)、乳酸およびグリコール酸のコポリマーを含む。乳酸とグリコール酸との比率は、約100:1から約25:75であることが好ましく、約65:35の乳酸とグリコール酸との比率がより好ましい。
【0039】
ポリ(乳酸/グリコール酸)は、参照として本明細書に取り入れる米国特許第4,293,539号明細書(ルドウィグ(Ludwig)ら)に説明された手法により調製することができる。簡潔に言うと、ルドウィグ(Ludwig)は、容易に除去可能な重合化触媒(例えば、Dowex HCR−W2−Hなどの強イオン交換樹脂)の存在下、乳酸およびグリコール酸の縮合によりコポリマーを調製する。触媒量は、重合化にとって重要ではないが、典型的には、組み合せられた乳酸およびグリコール酸の全重量に対して約0.01から約20重量部である。重合化反応は、約100℃から約250℃の温度で約48時間から約96時間、無溶媒で、好ましくは、水および副産物の除去を促進させるために減圧下で実施することができる。次にジクロロメタンまたはアセトンなどの有機溶媒中に溶かした反応混合物をろ過することによりポリ(乳酸/グリコール酸)を回収し、次いでろ過により触媒を除去する。
【0040】
隔離用サブユニットの使用に好適な可塑剤には、例えば、ポリマーと混合することができるクエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル(DBP)、アセチルクエン酸トリ−N−ブチル(ATBC)、またはジブチルセバシン酸が挙げられる。着色剤などの他の添加物も、本発明の隔離用サブユニットを作製するのに用いることができる。
【0041】
ある種の実施形態において、添加物は、隔離用サブユニットの隔離特性を改善するために組成物に含ませることができる。下記に説明されるように、他の添加物または成分に関して添加物または成分の比率は、サブユニット内に含まれた試剤の隔離を増強または遅延改善させるために変更することができる。特に水溶性コア(すなわち、糖スフェア(sugar sphere))が利用される場合にアンタゴニストの放出を変えるために、種々の量の機能性添加物(すなわち、電荷中和化添加物)を含ませることができる。例えば、重量を基準にして隔離用ポリマーに対する電荷中和化添加物の低量の含有は、アンタゴニストの放出を低下させることが確認されている。
【0042】
ある種の実施形態において、界面活性剤は、電荷中和化添加物として働くことができる。ある種の実施形態において、このような中和化により、隔離用ポリマーに含まれる正電荷基の水和によって隔離用ポリマーの膨潤を減少させることができる。界面活性剤(イオン性または非イオン性)も、隔離用サブユニットを調製するのに使用することができる。界面活性剤はイオン性であることが好ましい。好適で代表的な試剤には、例えば、アルキルアリールスルホネート、アルコールスルフェート、スルホスクシネート、スルホスクシナメート、サルコシネート、またはタウレートなどが挙げられる。さらなる例には、限定はしないが、エトキシル化ひまし油、ベンザルコニウムクロリド、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、モノグリセリドまたはそれらのエトキシル化誘導体、ジグリセリドまたはそれらのポリオキシエチレン誘導体、ドキュセートナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウムおよびメチルココイルタウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、トリエタノールアミン、セトリミド、スクロースラウレートおよび他のスクロースエステル、グルコース(デキストロース)エステル、シメチコン、オコキシノール、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリグリコール化グリセリド、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジアルキルナトリウム、ラウリル、セチル、およびステリルなどの脂肪族アルコール、コール酸またはその誘導体、レシチン、およびリン脂質が挙げられる。これらの試剤は、典型的にイオン性(すなわち、アニオン性またはカチオン性)または非イオン性を特徴とする。本明細書に記載されるある種の実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)などのアニオン性界面活性剤を用いることが好ましい(米国特許第5,725,883号明細書;米国特許第7,201,920号明細書;欧州特許出願公開第502642A1号明細書;ショクリ(Shokri)ら、Pharm.Sci.2003年「The effect of sodium lauryl sulphate on the release of diazepam from solid disperions prepared by cogrinding technique」、ウェルズ(Wells)ら、「Effect of Anionic Surfactants on the Release of Chlorpheniramine Maleate From an Inert,Heterogeneous Matrix」、Drug Development and Industrial Pharmacy18(2)(1992年):175−186頁、ラオ(Rao)ら、「Effect of Sodium Lauryl Sulfate on the Release of Rifampicin from Guar Gum Matrix」Indian Journal of Pharmaceutical Science(2000年):404−406頁;クノップ(Knop)ら、「Influence of surfactants of different charge and concentration on drug release from pellets coated with an aqueous dispersion of quaternary acrylic polymers」、STP Pharm Sciences、第7巻、第6号、(1997年)507−512頁)。他の好適な試剤は当該技術分野で既知である。
【0043】
本明細書に示されるように、隔離用サブミットが糖スフェア基質上に造られる場合、SLSは、Eudragit RSとの組み合せに特に有用である。隔離用ポリマー(すなわち、Eudragit RS)に対する重量を基準にして約6.3%未満のSLSの含有は、電荷中和化機能を与えることができ(理論的には、それぞれ20%および41%の中和化)、それによって、封入された活性剤(すなわち、アンタゴニストのナルトレキソン)の放出を有意に遅延させることができる。隔離用ポリマーに対して約6.3%超のSLSの含有は、隔離用サブユニットからアンタゴニストの放出を増加させると思われる。Eudragit(登録商標)RSと併用されるSLSに関して、SLSは、隔離用ポリマー(すなわち、Eudragit(登録商標)RS)に対する重量基準で約1%、2%、3%、4%または5%、および典型的には6%未満で存在することが好ましい。好ましい実施形態において、SLSは、隔離用ポリマーに対する約1.6%または約3.3%で存在し得る。上記に検討されたように、多くの試剤(すなわち、界面活性剤)は、本明細書に開示された組成物のSLSの代わりに用いることができる。
【0044】
さらに有用な試剤には、サブユニットからアンタゴニストの移動を物理的に遮断できるか、および/またはバリヤーの疎水性を増強させることができるものが挙げられる。1つの代表的な試剤は、医薬組成物に一般的に用いられるタルクである(パワー(Pawar)ら、「Agglomeration of Ibuprofen With Talc by Novel Crystallo−Co−Agglomeration Technique」、AAPS PharmSciTech.2004年;5(4):55条項)。実施例に示すように、隔離用サブユニットが糖スフェアコア上に造られる場合、タルクは特に有用である。タルクが組成物の機能に有害に影響を及ぼさない限り、タルクのいずれの形態も使用することができる。タルクの大部分は、過剰の溶解シリカ(SiO)の存在下、ドロマイト(CaMg(COまたはマグネサイト(MgO)の変性により、あるいは蛇絞石(surpentine)もしくはケイ石を変性させることによって生じる。タルクには、トレモライト(CaMg(SiO)、セルペンチン(3MgO・2SiO・2HO)、直閃石(Mg・(OH)・(Si11))、マグネサイト、マイカ、クロライト、ドロマイト、炭酸カルシウム(CaCO)のカルサイト形態、酸化鉄、炭素、石英、および/または酸化マンガンなどの鉱物を挙げることができる。タルクの機能が維持されているという条件で、このような不純物の存在を本明細書に記載された組成物に許容することができる。タルクがUSPグレードであることが好ましい。上記に述べられているように、本明細書に記載されたタルクの機能は、疎水性を増強することであり、したがって隔離用ポリマーの機能性を増強する。タルクに対する多くの代替物は、当業者によって決定されるようにして本細書に記載された組成物に利用することができる。
【0045】
タルクと隔離用ポリマーとの比率により、本明細書に記載された組成物の機能性について劇的な差異を生じることが確認されている。例えば、下記の実施例により、タルクと隔離用ポリマーとの重量比は、組成物からナルトレキソンの放出を防ぐように設計された組成物に関して重要であることを立証している。タルクおよびEudragit(登録商標)RSのほぼ等しい量(重量を基準にした)を含有することにより、非常に僅かなナルトレキソンの放出プロフィールがもたらされることが実施例に示されている。対照的に、タルク:Eudragit(登録商標)RSの比率が、顕著に低いかまたは高いか、すなわち両方の比率がより低いか(69重量%)、より高いか(151重量%)により、ナルトレキソンの放出増加をもたらす。したがって、タルクおよびEudragit(登録商標)RSが利用される場合、タルクは、Eudragit(登録商標)RSに対して約75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、100重量%、105重量%、110重量%、115重量%、120重量%または125重量%で存在することが好ましい。上記のとおり、他の添加物または成分に対して最も有利な比率は、変わることがあり、標準的な実験手法を用いて確認することができる。
【0046】
ある種の実施形態において、水溶性コアが利用される場合など、組成物の浸透圧に影響を及ぼすことができる試剤(浸透圧調節剤)を含有することが有用である(一般にEudramode(登録商標)に関して国際公開第2005/046561A2号パンフレットおよび国際公開第2005/046649A2号パンフレット)。この試剤は、上記のEudragit(登録商標)RS/タルク層に適用することが好ましい。活性剤(すなわち、徐放性アゴニスト製剤)で上塗りされた隔離用サブユニットを含む医薬単位において、浸透圧調節剤は、活性剤層の直ぐ下に配置されることが好ましい。好適な浸透圧調節剤には、例えば、ヒドロキプロピルシメチルセルロース(HPMC)または塩化物イオン(すなわち、NaCl由来)、またはHPMCおよび塩化物イオン(すなわち、NaCl由来)の組み合せを挙げることができる。有用であり得る他のイオンには、臭化物またはヨウ化物が挙げられる。塩化ナトリウムおよびHPMCの組み合せは、例えば、水中またはエタノールおよび水の混合物中で調製することができる。HPMCは、医薬組成物中で共通に利用される(例えば、米国特許第7,226,620号明細書および米国特許第7,229,982号明細書を参照)。ある種の実施形態において、HPMCは、約10,000から約1,500,000、典型的には約5000から約10,000(低分子量HPMC)の範囲の分子量を有する。HPMCの比重は、典型的に約1.19から約1.31であり、約1.26の平均比重および約3600から5600の粘度を有する。HPMCは、水溶性合成ポリマーであり得る。好適な市販のヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマーの例には、Methocel K100LVおよびMethocel K4M(ダウ(Dow))が挙げられる。他のHPMC添加物は当該技術分野で知られており、本明細書に記載された組成物の調製に好適であり得る。実施例に示されるように、NaCl(HPMCと共に)の含有により、Eudragit(登録商標)RSによるナルトレキソンの隔離に対して正に影響を及ぼすことが判明した。ある種の実施形態において、電荷中和化添加物(すなわち、NaCl)は、隔離用ポリマーについての重量(w/w)基準で約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%未満で含まれることが好ましい。他の好ましい実施形態において、電荷中和化添加物は、隔離用ポリマーについての重量基準で約4%で存在する。
【0047】
したがって、一実施形態において、糖スフェア基質上に造られた隔離用サブユニットが提供され、該隔離用サブユニットは、ポリマー上の正電荷基の水和によって膜の膨潤を減少させるために電荷中和化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(SLS);膜を通してナルトレキソンの輸送に対して固体の不浸透性障害物を作製するために疎水性増強剤としてのタルク;および浸透圧減少剤として塩素イオン(すなわち、NaClとして)を含む幾つかの最適化剤との組み合せで隔離用ポリマー(すなわち、Eudragit(登録商標)RS)を含む。驚くべきことに、隔離用ポリマーに対する追加の成分の各々の比率は、隔離用サブユニットの機能にとって重要であることが判明した。例えば、実施例では、Eudragit RSに対する重量基準で6%未満、好ましくは、1〜4%、さらにより好ましくは、1.6%または3.3%で隔離用ポリマーおよび最適化剤SLSを含む隔離用サブユニット;Eudragit(登録商標)RSにほぼ等しい量(重量基準で)のタルク;Eudragit(登録商標)RSに対する重量基準で約4%で存在するNaCl、を提供する。
【0048】
任意の隔離用サブユニットを作製する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、レミントン(Remington):The Science and Practice of Pharmacy、アルフォンソR.ゲナロ(Alfonso R.Genaro)、第20版、および下記に説明された実施例2を参照されたい。隔離用サブユニットは、例えば、ビーズ、ペレット、粒状、スフェロイド(spheroid)などを提供するための任意の好適な方法により調製することができる。活性成分でコーティングされたスフェアまたはビーズは、例えば、水中に活性成分を溶解し、次いでワースター挿入(Wurster insert)を用いて基材、例えば、ニューパリエル(nu pariel)18/20ビーズ上に溶液をスプレーすることによって調製することができる。また、活性成分の基材への結合を補助するため、および/または溶液を着色させるためなど、ビーズをコーティングする前に、追加の成分を任意に添加することができる。得られた基材活性材料はバリヤー材料で上塗りして、治療的活性剤と、次のコーティング材料、例えば、徐放性材料または隔離用材料とを分離させることができる。バリヤー材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む材料であることが好ましい。しかしながら、当該技術分野で知られた膜形成剤のいずれも使用することができる。バリヤー材料は、最終製品の溶解速度に影響を及ぼさないことが好ましい。
【0049】
活性成分を含むペレットは、例えば、溶融(melt)ペレット化技術により調製することができる。典型的なこのような技術は、微粉形態の活性成分を、結合剤(また微粒子形態で)および他の任意の不活性成分と合わせ、その後、この混合物を、例えば、高せん断ミキサー内で混合物を機械的に働かせてペレット化して、ペレット(例えば、ペレット、粒状、スフェア、ビーズなど、本明細書では集合的に「ペレット」と称される)を形成する。その後、必要なサイズのペレットを得るために、ペレットを篩い分けする。結合材料は、微粒子形態であることが好ましく、約40℃以上の融点を有する。好適な結合剤材料には、例えば、硬化ひまし油、硬化植物油、他の硬化脂肪、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリドなどが挙げられる。
【0050】
押出し機の開口ポートまたは出口ポートの直径を調整して、押出されたストランドの厚さを変えることもできる。さらに、押出し機の出口部分は、円形である必要はなく;長円形、長方形などであり得る。吐出しストランド(exiting strand)は、ホットワイヤーカッター、裁断機などを用いて粒子状に縮小することができる。
【0051】
溶融押出し多粒子系は、例えば、押出し機の出口開口部に依って、粒状、スフェア、ペレットなどの形態となり得る。用語「溶融押出し多粒子」および「溶融押出し多粒子系」ならびに「溶融押出し粒子」は、本明細書において同義に用いられ、好ましくは、類似サイズおよび/または形状の範囲内で複数のサブユニットを含む。溶融押出し多粒子は、長さが約0.1mmから約12mmの範囲であり、約0.1mmから約5mmの直径を有することが好ましい。さらに、溶融押出し多粒子は、このサイズの範囲内の任意の幾何学的形状であり得る。あるいは、押出し物は、単純に所望の長さに切断することができ、球状化工程を必要とすることなく治療的活性剤の単位用量に分けることができる。
【0052】
この基材は、造粒技術を経て調製することもできる。一般に、溶融造粒技術には、通常は固体疎水性材料、例えば、ワックスを溶融すること、それに活性成分を組み込むことを含む。徐放性剤形を得るために、さらなる疎水性材料を組み込むことが必要となり得る。
【0053】
コーティング組成物は、任意の好適なスプレー装置を用いて、基材上にスプレーすることによって基材上に適用することができる。例えば、不溶性ポリマーコーティングをスプレーしながら下部からの空気流によってコーティング材料を流動させて乾燥を行う、ワースター流動床系を用いることができる。コーティングの厚さは、特定のコーティング組成物の特性に依存し、ルーチンの実験を用いることにより測定することができる。
【0054】
任意のサブユニット調製様式を用いることができる。例示目的で、ペレット形態などのサブユニットは、オピオイドアゴニストを含む材料、および隔離形態でオピオイドアンタゴニストおよび/またはアンタゴニストを含む材料の同時押出しによって調製することができる。オピオイドアゴニスト組成物は、任意にアンタゴニストおよび/または隔離形態のアンタゴニストを含む材料を被覆する、例えば、上塗りする(overcoat)ことができる。例えば、ビーズは、隔離形態でオピオイドアンタゴニストおよび/またはアンタゴニストを含む基材を、オピオイドアゴニストを含む溶液でコーティングすることによって調製することができる。
【0055】
隔離用サブユニットは、隔離用サブユニットを含む組成物および放出可能な形態の治療剤の使用に特によく適する。これに関して、本発明の任意の隔離用サブユニットを含む組成物および放出可能な形態の治療剤を提供する。「放出可能な形態」とは、即時放出形態、中程度放出(intermediate release)形態、および徐放形態を含むことを意味する。治療剤は、治療剤の即時放出を提供するために製剤化できる。好ましい実施形態において、組成物は、治療剤の徐放性を提供する。
【0056】
隔離用サブユニット上に適用される治療剤は、任意の薬剤であり得る。本発明の組成物の治療剤は、病態または疾患の治療用に用いられる任意の薬剤、薬学的に許容できるその塩、または前述のいずれかの類縁体であり得る。例えば、治療剤は、鎮痛剤(例えば、オピオイドアゴニスト、アスピリン、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症剤(「NSAIDS」)、N−メチル−D−アスパルテート(「NMDA」)受容体アンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ−II阻害剤(「COX−II阻害剤」)、およびグリシン受容体アンタゴニスト)、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗微生物剤、抗感染剤、化学療法剤、免疫抑制剤、鎮咳薬、去痰剤、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬などであり得る。治療剤は、反復使用時に常用癖がつき(身体的および/または心理学的に)、典型的には治療剤の乱用に至るものが好ましい。これに関して、治療剤は、本明細書で議論した任意のオピオイドアゴニストであり得る。
【0057】
治療剤はオピオイドアゴニストであり得る。「オピオイド」とは、阿片またはその天然もしくは合成誘導体を含有するものに対して鎮静作用、鎮痛作用、または同様の作用を有する、薬物、ホルモン、または他の化学的または生物学的材料(天然または合成)を含むことを意味する。本明細書において時には「オピオイド」および「オピオイド鎮痛剤」と同義に用いられる「オピオイドアゴニスト」とは、1種以上のオピオイドアゴニストを単独でまたは組み合せで含むことを意味し、さらに、オピオイドの塩基、アゴニスト−アンタゴニストの混合または組み合せ、部分アゴニスト、それらの薬学的に許容できる塩、それらの立体異性体、それらのエーテル、それらのエステル、およびそれらの組み合せを含むことを意味する。
【0058】
オピオイドアゴニストには、例えば、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロエトルフィン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、チリジン、それらの誘導体、それらの複合体、それらの薬学的に許容できる塩、およびそれらの組み合せが挙げられる。オピオイドアゴニストは、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、コデイン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、ブプレノルフィン、それらの誘導体または複合体、それらの薬学的に許容できる塩、およびそれらの組み合せからなる群から選択されるのが好ましい。オピオイドアゴニストは、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコドンまたはヒドロコドンであるのが最も好ましい。好ましい実施形態において、オピオイドアゴニストは、オキシコドンまたはヒドロコドンを含み、約15mgから約45mgの量で剤形に存在し、オピオイドアンタゴニストは、ナルトレキソンを含み、約0.5mgから約5mgの量で剤形に存在する。
【0059】
15mg用量のヒドロコドンと比較して、これらオピオイド類の等鎮痛剤の用量は、下表1に説明する:
【0060】
【表1】

【0061】
ヒドロコドンは、半合成の麻薬性鎮痛剤および多神経系作用ならびに胃腸管作用を有する鎮咳薬である。化学的には、ヒドロコドンは、4,5−エポキシ−3−メトキシ−17−メチルモルフィナン−6−オンであり、ジヒドロコデイノンとしても知られている。他のオピオイド類と同様に、ヒドロコドンは、常用癖をもたらす可能性があり、モルヒネタイプの薬物依存性を生じ得る。他のオピウム誘導体と同様に、過剰用量のヒドロコドンは、呼吸作用を抑制する。
【0062】
経口用ヒドロコドンは、鎮咳薬としてヨーロッパ(例えば、ベルギー国、ドイツ国、ギリシャ国、イタリア国、ルクセンブルグ国、ノルウェー国およびスイス国)においても利用されている。非経口製剤は、鎮咳薬としてドイツ国においても利用されている。鎮痛剤としての使用に関して、ヒドロコドン二酒石酸塩は、中程度から中重症度の痛みの軽減のために非阿片薬(例えば、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリンなど)とのみ固定された併用して米国で一般に利用されている。
【0063】
ヒドロコドンの通常の剤形はアセトアミノフェンと併用され、例えば、2.5/500mg、5/500mg、7.5/500mg、および10/500mgのヒドロコドン/アセトアミノフェン錠剤として、米国においてUCBファーマ(UCB Pharma)社(ブリュッセル、ベルギー国)からLortab(登録商標)として市販されている。錠剤は、7.5mgのヒドロコドン二酒石酸塩と650mgのアセトアミノフェン、および7.5mgのヒドロコドン二酒石酸塩と750mgのアセトアミノフェンとの比率でも利用できる。アスピリンと併用するヒドロコドンは、痛みを軽くする必要に応じて、一般に4〜6時間ごとに1〜2錠を経口用剤形で成人に与える。この剤形には、5mgのヒドロコドン二酒石酸塩と224mgのアスピリンと32mgのカフェインとを含み;または5mgのヒドロコドン二酒石酸塩と500mgのアスピリンとを含む。別の製剤では、ヒドロコドン二酒石酸塩とイブプロフェンとを含む。米国においてクノール・ラボラトリーズ(Knoll Laboratories)(マウントオリーブ、ニュージャージー州)で市販されているVicoprofen(登録商標)は、7.5mgのヒドロコドン二酒石酸塩と200mgのイブプロフェンとを含有する錠剤である。本明細書に記載の組成物は、オピオイドアンタゴニストおよび/またはオピオイドアゴニストを含むサブユニットの一部として隔離された形態のアンタゴニストを含むことを伴って、このような製剤を全て包含するように企図される。
【0064】
化学的に4,5−エポキシ−14−ヒドロキシ−3−メトキシ−17−メチルモルフィナン−6−オンとして知られているオキシコドンは、主要な治療作用が鎮痛であるオピオイドアゴニストである。オキシコドンの他の治療作用には、不安除去、多幸感、および安らぎ感覚が挙げられる。その鎮痛作用の正確な機序は知られていないが、オピオイド様活性を有する内因性化合物に対する具体的なCNSオピオイド受容体が脳および脊髄の至るところで確認されており、本薬物の鎮痛作用の役割を果たしている。オキシコドンは、米国において、例えば、10mg、20mg、40mgまたは80mgのオキシコドン塩酸塩を含有する経口投与用徐放性錠剤として、パーデューファーマL.P.(Purdue Pharma L.P.)(スタンフォード、コネチカット州)からOxycotin(登録商標)として市販され、さらに5mgのオキシコドン塩酸塩を含有する即時放出カプセル剤として、パーデューファーマL.P.からOxyIR(商標)として市販されている。オピオイドアンタゴニストおよび/またはオピオイドアゴニストを含むサブユニットの一部として隔離された形態のアンタゴニストを含むことを伴って、このような製剤が全て本明細書において企図される。
【0065】
経口用ヒドロモルホンは、例えば、アボットラボラトリーズ(Abbott Laboratories)(シカゴ、イリノイ州)からDilaudid(登録商標)として米国において市販されている。経口用モルヒネは、例えば、フォールディングラボラトリーズ(Faulding Laboratories)(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)からKadian(登録商標)として米国において市販されている。
【0066】
代表的なNSAIDSには、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロキシン酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキシピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルリサール、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカムまたはイソキシカムなどが挙げられる。これら薬物の有用な用量は周知である。
【0067】
代表的なNMDA受容体薬剤には、モルフィナン、例えばデキソトロメトルファンまたはデキストロファン、ケタミン、d−メタドン、およびそれらの薬学的に許容できる塩が挙げられ、NMDA受容体活性化の主要な細胞内の因果関係を遮断する薬物、例えば、(6−アミノテキシル)−5−クロロ−1−ナフタレンスルホンアミドなどのガングリオシドを包含する。これらの薬物は、常用性薬物、例えば、モルヒネ、コデインなどの麻薬性鎮痛剤に対する耐性および/または依存の発生を阻害することが米国特許第5,321,012号明細書および米国特許第5,556,838号明細書(両方ともメイヤー(Mayer)ら)(これら両方とも参照として本明細書に取り入れる)に述べられており、かつ慢性疼痛を治療することが米国特許第5,502,058号明細書(メイヤー(Mayer)ら)(これを参照として本明細書に取り入れられる)に述べられている。メイヤー(Mayer)らによるこれらの特許に記載されているように、NMDAアゴニストを、単独でまたはリドカインなどの局所鎮痛剤と組み合せて含有することができる。
【0068】
COX−2阻害剤は、当該技術分野で報告されており、多数の化学化合物は、シクロオキシゲナーゼ−2の阻害を生じることが知られている。COX−2阻害剤は、例えば、米国特許第5,616,601号明細書;米国特許第5,604,260号明細書;米国特許第5,593,994号明細書;米国特許第5,550,142号明細書;米国特許第5,536,752号明細書;米国特許第5,521,213号明細書;米国特許第5,475,995号明細書;米国特許第5,639,780号明細書;米国特許第5,604,253号明細書;米国特許第5,552,422号明細書;米国特許第5,510,368号明細書;米国特許第5,436,265号明細書;米国特許第5,409,944号明細書;および米国特許第5,130,311号明細書に記載されており、これら全てを参照として本明細書に取り入れる。ある種の好ましいCOX−2阻害剤には、セレコキシブ(SC−58635)、DUP−697、フロスリド(CGP−28238)、メロキシカム、6−メトキシ−2−ナフチル酢酸(6−NMA)、MK−966(Vioxxとしても知られる)、ナブメトン(6−MNA用のプロドラッグ)、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC−58215、T−614、またはそれらの組み合せが挙げられる。およそ体重1kg当り1日、約0.005mgから約140mgのCOX−2阻害剤の投与量レベルは、オピオイド鎮痛剤との組み合せで治療上有効であることが示されている。あるいは、患者当り1日、約0.25mgから約7gのCOX−2阻害剤を、オピオイド鎮痛剤と組み合せて投与することができる。
【0069】
グリシン受容体アンタゴニストの使用による慢性疼痛の治療およびこのような薬物の同定は、参照として本明細書に取り入れる米国特許第5,514,680号明細書(ウェーバー(Weber)ら)に記載されている。
【0070】
オピオイドアゴニストがヒドロコドンを含む実施形態において、その経口用徐放性剤形は、1用量単位当り約8mgから約50mgのヒドロコドンの鎮痛剤用量を含むことができる。ヒドロモルホンが、治療活性なオピオイドである経口用徐放性剤形には、約2mgから約64mgの量でヒドロモルホン塩酸塩が含まれる。別の実施形態において、オピオイドアゴニストはモルヒネを含み、本明細書に記載の経口用徐放性剤形は重量で約2.5mgから約800mgのモルヒネを含んでもよい。さらに別の実施形態において、オピオイドアゴニストはオキシコドンを含み、その経口用徐放性剤形は約2.5mgから約800mgのオキシコドンを含む。ある種の好ましい実施形態において、その経口用徐放性剤形は約20mgから約30mgのオキシコドンを含む。徐放性オキシコドン製剤は、当該技術分野で知られている。以下の文書:米国特許第5,266,331号明細書;米国特許第5,549、912号明細書;米国特許第5,508,042号明細書;および米国特許第5,656,295号明細書には、本明細書に記載した組成物の使用に好適な種々の徐放性オキシコドン製剤、およびそれらの製造工程が記載されており、それらは参照として本明細書に取り入れる。オピオイドアゴニストはトラマドールを含むことができ、その経口用徐放性剤形は1用量単位当り約25mgから約800mgのトラマドールを含むことができる。
【0071】
徐放性形態での治療剤は、放出遅延(release-retarding)または隔離用材料と組み合せた粒子の治療剤であることが好ましい。放出遅延または隔離用材料は、水性媒体中、持続的な(sustained)速度で治療剤の放出を可能にする材料であることが好ましい。これらの放出遅延または隔離用材料は、他に述べられた性質と組み合せて所望のインビトロ放出速度を達成するために選択的に選択することができる。
【0072】
好ましい実施形態において、経口用剤形は、治療作用期間を増加させて1日1回の投与を可能とするように製剤化することができる。一般に、放出遅延または隔離用材料は、治療作用期間を増加させるために用いられる。1日1回の投与により、参照として本明細書に取り入れる2003年9月22日出願の名称が「Sustained−Release Opioid Formations and Method of Use」、ベーム(Boehm)の米国特許出願第(不明)号明細書に記載された剤形および方法により提供されることが好ましい。
【0073】
好ましい放出遅延または隔離用材料には、アクリルポリマー、アルキルセルロース、セラック、ゼイン、硬化植物油、硬化ひまし油、およびそれらの組み合せが挙げられる。ある種の好ましい実施形態において、放出遅延または隔離用材料には、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、およびグリシジルメタクリレートコポリマーなどの薬学的に許容できるアクリルポリマーが挙げられる。ある種の好ましい実施形態において、アクリルポリマーは、1種以上のアンモニオメタクリレートコポリマーを含む。アンモニオメタクリレートコポリマーは、当該技術分野で周知であり、低含量の四級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの十分に重合化されたコポリマーとして、米国ファーマコペイアル・コンベンション(the United States Pharmaceutical Convention)社(ロックヴィレ、メリーランド州)により公表されたNF21、National Formularyの第21版に記載されている。他の好ましい実施形態において、放出遅延性または隔離用材料は、エチルセルロースなどのアルキルセルロース材料である。他のアルキルセルロースポリマーを含む他のセルロースポリマーが、エチルセルロースの一部または全てを置換し得ることを、当業者は認識するであろう。
【0074】
放出遅延または隔離用材料の放出性に影響を及ぼす放出改質剤も使用できる。好ましい実施形態において、放出改質剤は、ポア形成剤として機能する。ポア形成剤は有機物であっても無機物であってもよく、溶解、抽出、または使用環境のコーティングから浸出できる材料を含む。ポア形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの1種以上の疎水性ポリマーを含むことができる。ある種の好ましい実施形態において、放出改質剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸金属、およびそれらの組み合せから選択される。
【0075】
放出遅延または隔離用材料は、澱粉またはガムなどの侵食促進剤(erosion promoting agent);カーボネート基がポリマー鎖に繰り返し存在する炭酸の直鎖ポリエステルからなるポリカーボネートなど、使用環境において微孔性薄膜を作製するのに有用な放出改質剤;および/または半浸透性ポリマーも含むことができる。
【0076】
放出遅延または隔離用材料は、少なくとも1つの通路、開口部などを含む出口手段も含むことができる。この通路は、参照として本明細書に取り入れる米国特許第3,845,770号明細書;米国特許第3,916,889号明細書;米国特許第4,063,064号明細書;および米国特許第4,088,864号明細書に開示されているものなどの方法により形成することができる。この通路は、円形、三角形、四角形、楕円形、不規則などの任意の形状を有することができる。
【0077】
ある種の実施形態において、徐放性形態の治療剤は、基材が放出遅延または隔離用材料を含む徐放性コーティング剤でコーティングされる活性成分を含む複数の基材を含むことができる。
【0078】
徐放性製剤は、治療剤の所望の徐放性を得るために、ビーズ、イオン交換樹脂ビーズ、スフェロイド、ミクロスフェア、シード(seeds)、ペレット、粒状などの任意の多粒子系、および他の多粒子系と組み合わせて作製してもよい。多粒子系は、カプセルまたは任意の他の好適な単位剤形中に存在させることができる。
【0079】
ある種の好ましい実施形態において、2つ以上の多粒子系を使用することができ、各々は、pH依存の放出、種々の媒体(例えば、酸、塩基、擬似腸内液)中での放出時間、インビボ放出、サイズおよび組成物などの異なる特性を示す。
【0080】
徐放期間中治療作用を提供するのに十分な様式で治療剤の徐放性を得るために、治療剤は、約2%から約30%の重量増加濃度を得るのに十分な放出遅延または隔離用材料の量でコーティングすることができるが、コートは、とりわけ、利用される特定の治療剤の物理的性質および所望の放出速度に多かれ少なかれ依存し得る。さらに、コートでの使用には2つ以上の放出遅延または隔離用材料ならびに種々の他の医薬用賦形剤があり得る。
【0081】
放出遅延または隔離用材料に典型的に使用される溶媒には、水、メタノール、エタノール、塩化メチレンおよびそれらの組み合せなど、薬学的に許容できる溶媒が挙げられる。
【0082】
ある種の実施形態において、放出遅延または隔離用材料は、疎水性ポリマーの水性分散液を含むコーティングの形態である。疎水性ポリマーの水性分散液に有効量の可塑剤を含ませることにより、コートの物理的性質はさらに改善するであろう。例えば、エチルセルロースは、比較的高いガラス転移温度を有し、通常のコーティング条件下で可撓性のコートを形成しないので、エチルセルロースはコーティング材料として使用する前に可塑化する必要がある。一般に、コーティング溶液に含まれる可塑剤の量は、コート形成剤の濃度に基づき、例えば最も多くの場合、コート形成剤の約1重量パーセントから約50重量パーセントである。しかしながら、可塑剤の濃度はルーチンの実験により決定することができる。
【0083】
エチルセルロースおよび他のセルロースの可塑剤の例には、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、およびトリアセチンが挙げられるが、他の可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ひまし油など)を使用することも可能である。DBSのような水相に浸出しない可塑剤が好ましい。
【0084】
アクリルポリマーの可塑剤の例には、クエン酸トリエチルNF21、クエン酸トリブチル、フタル酸ジブチル(DBP)、クエン酸アセチルトリ−N−ブチル(ATBC)などのクエン酸エステル、および可能性として1,2−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ひまし油、トリアセチンが挙げられるが、他の可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ひまし油など)を使用することも可能である。
【0085】
本明細書に記載の製剤中の薬物放出(インビボまたはインビトロのいずれか)の徐放性プロフィールは、例えば、2つ以上の放出遅延または隔離用材料を用いることにより、放出遅延または隔離用材料の厚さを変えることにより、使用される特定の放出遅延または隔離用材料を変更することにより、放出遅延または隔離用材料の相対量を変えることにより、可塑剤が添加される様式を変えることにより(例えば、徐放性コーティングが疎水性ポリマーの水性分散液から得られる場合)、遅延材料に対して可塑剤量を変えることにより、追加の成分または賦形剤の含有により、製造法を変えるなどにより、変更することができる。
【0086】
ある種の他の実施形態において、経口用剤形は、多粒子徐放性マトリックスを利用することができる。ある種の実施形態において、徐放性マトリックスは、ガム、セルロースエーテル、アクリル樹脂、およびタンパク質由来材料など、親水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーを含む。これらのポリマーの中で、セルロースエーテル、特にヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースが好ましい。経口用剤形は、約1重量%と約80重量%との間の少なくとも1種の親水性ポリマーまたは疎水性ポリマーを含有することができる。
【0087】
疎水性材料は、アルキルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸ポリマーならびにコポリマー、セラック、ゼイン、硬化ひまし油、硬化植物油、またはそれらの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。疎水性材料は、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびグリシジルメタクリレートコポリマーなどの薬学的に許容できるアクリルポリマーが好ましい。他の実施形態において、疎水性材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロオキシアルキルセルロースおよび前述の混合物を含むこともできる。
【0088】
好ましい疎水性材料は、多かれ少なかれ著しい疎水性傾向により、水不溶性である。疎水性材料は、好ましくは、約30℃から約200℃、より好ましくは、約45℃から約90℃の融点を有する。疎水性材料には、中性または合成ワックス、脂肪族アルコール(ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコールまたは好ましくはセトステアリルアルコールなど)、脂肪酸エステルなどの脂肪酸、脂肪酸グリセリド(モノ−、ジ−、およびトリ−グルセリド)、硬化脂肪、炭化水素、通常のワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、および炭化水素主鎖を有する疎水性ならびに親水性材料を挙げることができる。好適なワックスには、蜜蝋、グリコワックス(glycowax)、カスターワックス、カルナウバ蝋、およびワックス様材料、例えば、通常、室温で固体であり、約30℃から約100℃の融点を有する材料が挙げられる。
【0089】
マトリックス製剤に2種以上の組み合せの疎水性材料が含まれていることが好ましい。さらなる疎水性材料が含まれる場合、それは、天然または合成ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、またはそれらの混合物であることが好ましい。例には、蜜蝋、カルナウバ蝋、ステアリン酸およびステアリルアルコールが挙げられる。
【0090】
他の実施形態において、徐放性マトリックスは、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、鉱物油ならびに植物油およびワックスなどの可消化性長鎖(例えば、C〜C50、好ましくはC12〜C40)、置換または非置換炭化水素を含む。約25℃から約90℃の間の融点を有する炭化水素が好ましい。これら長鎖炭化水素材料の中で、脂肪質(脂肪族)アルコールが好ましい。経口用剤形は、少なくとも1種の可消化性長鎖炭化水素の約60重量%までを含有することができる。さらに、徐放性マトリックスは、少なくとも1種のポリアルキレングリコールを最大約60重量%含有することができる。
【0091】
好ましい実施形態において、マトリックスは、少なくとも1種の水溶性ヒドロキシアルキルセルロース、少なくとも1種のC12〜C36、好ましくはC14〜C22の脂肪族アルコールおよび任意に少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含む。少なくとも1種のヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースなどのヒドロキシ(C〜C)アルキルセルロースであることが好ましい。とりわけ、経口用剤形中の少なくとも1種のヒドロキシアルキルセルロースの量は、必要とされるオピオイド放出の正確な速度により決定される。経口用剤形中の少なくとも1種の脂肪族アルコールの量は、必要とされるオピオイド放出の正確な速度により決定される。しかしながら、それは、少なくとも1種のポリアルキレングリコールが経口用剤形に無いかどうかにも依るであろう。
【0092】
ある種の実施形態において、球状化剤(spheronizing agent)を活性成分と一緒に球状化してスフェロイドを形成することができる。微結晶性セルロースおよび含水ラクトースの微粉は、このような試剤の例である。さらに(またはあるいは)、スフェロイドは、水不溶性ポリマー、好ましくは、メタクリル酸−エチルアクリレートコポリマーなどのアクリルポリマー、アクリルコポリマー、またはエチルセルロースを含有することができる。このような実施形態において、徐放性コーティングは、一般に(a)単独または脂肪族アルコールと混合したワックス、または(b)セラックまたはゼイン、などの水不溶性材料を含む。
【0093】
徐放性単位は、任意の好適な方法により調製することができる。例えば、放出遅延または隔離用材料の可塑化水性分散液をオピオイドアゴニストを含むサブユニット上に適用することができる。コーティング基材が水溶液、例えば、胃液に曝されたときにオピオイドアゴニストの所定の徐放性を得るために十分な量の放出遅延または隔離用材料の水性分散液を、オピオイドアゴニストの物理的特性や可塑剤の組み込み様式などを考慮に入れて適用するのが好ましい。任意に、Opadry(カラーコン(Colorcon)、ウェストポイント、ヴァージニア州)などの膜形成剤のさらなる上塗りは、放出遅延または隔離用材料でコーティングした後に適用できる。
【0094】
サブユニットは、治療剤の安定化された放出速度を得るために硬化させることができる。アクリルコーティングを使用する実施形態において、安定化生成物は、好ましくは、オーブンにサブユニットを供し、可塑化されたアクリルポリマーのガラス転移温度を上回る温度で必要な時間硬化することによって得ることができる。特定の製剤化のための最適温度および時間は、ルーチンの実験により決定することができる。
【0095】
調製したら、サブユニットを少なくとも1つのさらなるサブユニット、および任意に他の賦形剤または薬物と組み合せて、経口用剤形を提供することができる。上記の成分に加えて、徐放性マトリックスも、好適な量の他の材料、例えば、医薬業界で慣用の希釈剤、潤滑剤、結合剤、造粒補助剤、着色剤、風味剤、および滑剤を含有することができる。
【0096】
任意にかつ好ましくは、本明細書に記載された任意の隔離用サブユニットの機械的脆弱性は、放出可能な形態の治療剤の機械的脆弱性と同じものである。これに関して、治療剤を得る様式で組成物を改竄することにより、隔離用サブユニットが破壊され、アンタゴニストが放出されて治療剤と混合される。その結果、アンタゴニストは治療剤から分離できず、治療剤はアンタゴニストの無い状態で投与することができない。隔離用サブユニットおよび治療剤の機械的脆弱性をアッセイする方法は、当該技術分野で既知である。
【0097】
本明細書に記載の組成物は、任意の好適な剤形または製剤であり得る(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice、J.B.リッピンコット・カンパニー(J.B.Lippincott Company)、フィラデルフィア、ペンシルヴァニア州、バンカー(Banker)およびチャルマーズ(Chalmers)編、238−250頁(1982)を参照)。本明細書で論述したアンタゴニスト剤またはアゴニスト剤の薬学的に許容できる塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などの金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属;トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸鎖塩などの有機酸塩;メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸塩、が挙げられる。経口投与用に好適な製剤は、(a)水、生理食塩液、またはオレンジジュースなどの希釈剤に溶解された有効量の阻害剤などの液体溶液剤;(b)各々が所定量の固体または粒状などの活性成分を含有する、カプセル剤、サシュ(sachets)、錠剤、ロゼンジ、およびトローチ剤;(c)散剤;(d)適切な液体中の懸濁剤;および(e)好適な乳濁剤、からなり得る。液体製剤は、薬学的に許容できる界面活性剤の添加の有無下で、水およびアルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコール、およびポリエチレンアルコールなどの希釈剤を含むことができる。カプセル剤の形態は、通常、例えば、界面活性剤、潤滑剤、およびラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、トウモロコシ澱粉などの不活性充填剤を含有する硬外殻または軟外殻ゼラチンタイプであり得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、微結晶性セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ガーゴム、コロイド状二酸化シリコン、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、風味剤、および薬学的に適合性の賦形剤を1つ以上含むことができる。ロゼンジ形態は、風味剤(通常、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴム)中に活性成分を含むことができ、パステル剤は、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴム、乳剤、ゲルなどの不活性基剤中に活性成分を含み、活性成分に加えて当該技術分野で知られているような賦形剤を含有することができる。
【0098】
改変により組成物の治療効果が増加するように本明細書に記載の組成物を任意の多くの方法で改変し得ることを、当業者は容易に認識するであろう。例えば、治療剤または隔離用サブユニットは、標的部分にリンカーを介して直接的または間接的に結合させることができるであろう。治療剤または隔離用サブユニットの標的部分への結合手法は、当該技術分野で知られている。例えば、ワドワ(Wadwa)ら、J.Drug Targeting 3:111頁(1995)および米国特許第5,087,616号明細書を参照されたい。本明細書に用いられる用語「標的部分」とは、該標的部分によって治療剤または隔離用サブユニットの送達が受容体を発現する細胞集団に向けられるように、細胞表面受容体を特異的に認識して結合する任意の分子または試剤のことである。標的分子には、限定はしないが、抗体、またはその断片、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、および細胞表面受容体に結合する任意の他の天然または非天然の既存リガンドが挙げられる。本明細書に用いられる用語「リンカー」とは、治療剤または隔離用サブユニットを標的部分に架橋させる任意の試剤または分子のことである。リンカーおよび/または標的部分が試剤または隔離用サブユニットに結合されたときに治療剤または隔離用サブユニットの機能を妨害しないならば、試剤または隔離用サブユニットの機能にとって必要ではない治療剤または隔離用サブユニット上の部位がリンカーおよび/または標的部分を結合するための理想的な部位であることを当業者は認識するであろう。
【0099】
本発明の組成物に関して、組成物は、経口用剤形であることが好ましい。「経口用剤形」とは、サブユニットを含む経口投与用に処方または意図される単位剤形を含むことを意味する。組成物は、放出可能な形態の治療剤によりコーティングされた隔離用サブユニットを含むことが望ましく、それによって隔離用サブユニットおよび治療剤を含む複合サブユニットを形成する。したがって、複数のこのような複合サブユニットを含む経口投与用に好適なカプセル剤を提供する。
【0100】
あるいは、経口用剤形は、治療剤用サブユニットと組み合せて任意の隔離用サブユニットを含んでもよく、治療剤用サブユニットは、放出可能な形態の治療剤を含む。これに関して、本発明の複数の隔離用サブユニットおよび複数の治療用サブユニット(その各々が放出可能な形態の治療剤を含む)を含む経口投与に好適なカプセル剤を提供する。
【0101】
本発明の隔離用サブユニットおよび放出可能な形態の治療剤を含む錠剤も提供する。例えば、本発明の任意の隔離用サブユニットを含む第1層および放出可能な形態で治療剤を含む第2層を含み、第1層が第2層によりコーティングされる、経口投与用に好適な錠剤を提供する。第1層は、複数の隔離用サブユニットを含むことができる。あるいは、第1層は、単一の隔離用サブユニットであることができ、または単一の隔離用サブユニットから構成できる。放出可能な形態の治療剤は、治療剤用サブユニットの形態であり得、第2層は、複数の治療剤用サブユニットを含むことができる。あるいは、第2の層は、放出可能な形態の治療剤を含む単一の実質的に均一な層を含むことができる。
【0102】
遮断剤が、第1のアンタゴニスト不浸透性材料およびコアを含む系である場合、隔離用サブユニットは、幾つかの異なる形態のうちの1つであり得る。例えば、系は、第2のアンタゴニスト不浸透性材料をさらに含むことができ、その場合、隔離用ユニットは、アンタゴニスト、第1のアンタゴニスト不浸透性材料、第2のアンタゴニスト不浸透性材料およびコアを含む。この場合、コアは、第1のアンタゴニスト不浸透性材料でコーティングされ、次にアンタゴニストでコーティングされ、次いで第2のアンタゴニスト不浸透性材料でコーティングされる。第1のアンタゴニスト不浸透性材料および第2のアンタゴニスト不浸透性材料は、24時間超、胃腸管内で隔離用サブユニットからのアンタゴニストの放出を実質的に妨げる。幾つかの場合において、第1のアンタゴニスト不浸透性材料は、第2のアンタゴニスト不浸透性材料と同じであることが好ましい。他の場合において、第1のアンタゴニスト不浸透性材料は、第2のアンタゴニスト不浸透性材料とは異なる。第1および第2のアンタゴニスト不浸透性材料が同じであるべきか異なるべきかを決定することは、当業者の範囲内に入る。第1および第2のアンタゴニスト不浸透性材料が同じであるべきか異なるべきかに関する決定に影響を与える要因には、アンタゴニスト不浸透性材料上に配置される層が、アンタゴニスト不浸透性層上に適用する層の接着を促進するために次の層または性質を適用する場合にアンタゴニスト不浸透性層の一部または全てを妨げるための一定の性質を必要とするかどうか、を含むことができる。
【0103】
あるいは、アンタゴニストをコアに組み込むことができ、コアは、第1のアンタゴニスト不浸透性材料によりコーティングされる。この場合、アンタゴニスト、コア、および第1のアンタゴニスト不浸透性材料を含む隔離用サブユニットを提供し、アンタゴニストはコアに組み込まれ、コアは第1のアンタゴニスト不浸透性材料によりコーティングされ、第1のアンタゴニスト不浸透性材料は24時間超胃腸管内で隔離用サブユニットからのアンタゴニストの放出を実質的に妨げる。本明細書に用いられる「組み込まれる」およびそれから生じる用語は、任意の組み込み手段、例えば、コアの至る所へのアンタゴニストの均質分散、コアの上部にコーティングされたアンタゴニストの単一層、またはコアを含むアンタゴニストの多層系を含む。
【0104】
別の代替実施形態において、コアは水不溶性材料を含み、コアは、アンタゴニストによりコーティングされ、次いで第1のアンタゴニスト不浸透性材料によりコーティングされる。この場合において、アンタゴニスト、第1のアンタゴニスト不浸透性材料、および水不溶性材料を含むコアを含む隔離用サブユニットを提供し、コアはアンタゴニストによりコーティングされ、次に第1のアンタゴニスト不浸透性材料によりコーティングされ、第1のアンタゴニスト不浸透性材料は24時間超胃腸管内で隔離用サブユニットからのアンタゴニストの放出を実質的に妨げる。本明細書に用いられる用語「水不溶性材料」とは、実質的に水不溶性である任意の材料を意味する。用語「実質的に水不溶性」とは、必ずしも完全または100%水不溶性のことではない。むしろ水不溶性には、当業者が、潜在的な利益を有するものとして認識する種々の程度がある。好ましい水不溶性材料には、例えば、微結晶性セルロース、カルシウム塩、およびワックスが挙げられる。カルシウム塩には、限定はしないが、リン酸カルシウム(例えば、ヒドロキシアパタイト、アパタイトなど)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。ワックスには、例えば、カルナウバ蝋、蜜蝋、石油蝋、カンデリラ蝋などが挙げられる。
【0105】
一実施形態において、隔離用サブユニットはアンタゴニストおよびシールコートを含み、該シールコートは、隔離用サブユニット内のアンタゴニストと隔離用サブユニット上に層状化されたアゴニストとを物理的に分離する層を形成する。一実施形態において、シールコートは、浸透圧調節剤、電荷中和化添加物、隔離用ポリマーの疎水性増強添加物、および第1の隔離用ポリマー(各々が上記に記載されている)を1つ以上含む。このような実施形態において、浸透圧調節剤、電荷中和化添加物、および/または隔離用ポリマーの疎水性増強添加物はそれぞれ存在する場合、10%以下のアンタゴニストが無傷の剤形から放出されるように前記第1の隔離用ポリマーに比例して存在することが好ましい。オピオイドアンタゴニストが隔離用サブユニット内で使用され、無傷の剤形がオピオイドアゴニストを含む場合、浸透圧調節剤、電荷中和化添加物、および/または隔離用ポリマーの疎水性増強添加物の比率は、前記第1の隔離用ポリマーに関してそれぞれ存在する場合、組成物が無傷の剤形であるかあるいは患者において正常な消化過程の最中にある場合にオピオイドアゴニストの生理的効果が減少しないようなものであることが好ましい。放出は、USPパドル法(TritonX−100などの界面活性剤を含有する緩衝液を任意に用いる)を用いて上記のとおり決定するか、あるいは給食または非給食状態の患者への投与後に血漿から測定することができる。一実施形態において、血漿ナルトレキソン濃度を測定し;他では、血漿6−ベータナルトレキソール濃度を測定する。標準的な試験は、アゴニスト機能に対するアンタゴニストの効果(すなわち、痛みの減少)を確認するために利用することができる。
【0106】
隔離用サブユニットは、アンタゴニストが結合されるつなぎ(tether)である遮断剤を有してもよい。本明細書に用いられる用語「つなぎ」とは、隔離用サブユニットが改竄されない限りアンタゴニストが放出されないように、アンタゴニストが隔離用サブユニットの内部につながれるか結合される任意の手段のことである。この場合、つなぎ−アンタゴニスト複合体が形成される。この複合体は、つなぎ−不浸透性材料によりコーティングされ、それによって、サブユニットからのアンタゴニストの放出を実質的に妨げる。本明細書に用いられる用語「つなぎ−不浸透性材料」とは、材料を通して浸透からつなぎを実質的に妨げるか、または妨げる任意の材料のことである。つなぎは、イオン交換樹脂ビーズであることが好ましい。
【0107】
放出可能な形態の治療剤および該放出可能な形態の治療剤の層の全体にわたって分散された複数の任意の隔離用サブユニットを含む単一層を含む、経口投与に好適な錠剤も提供する。放出可能な形態の治療剤が治療剤用サブユニットの形態である錠剤も提供し、該錠剤は、複数の隔離用サブユニットおよび治療剤を含む複数のサブユニットの少なくとも実質的に均質な混合物を含む。
【0108】
好ましい実施形態において、有効量の多粒子形態の溶融押出しサブユニットをカプセル内に含むように経口用剤形を調製する。例えば、複数の溶融押出し多粒子が摂取され、胃液と接触したときに、有効な放出用量を提供するのに十分な量でゼラチンカプセル内に配置することができる。
【0109】
別の好ましい実施形態において、例えば、標準的な技術を用いた従来の錠剤化装置を用いて、多粒子の形態のサブユニットを経口用錠剤に圧縮することができる。錠剤(圧縮および成形)、カプセル剤(硬ゼラチンおよび軟ゼラチン)および丸剤を製造するための技術および組成物は、参照として本明細書に取り入れるRemington’s Pharmaceutical Sciences(アーサー・オソール(Aurther Osol)、編集者)、1553−1593頁(1980)にも記載されている。錠剤製剤化における賦形剤は、例えば、ラクトースなどの不活性希釈剤、トウモロコシ澱粉などの粒状化剤(granulating agent)および崩壊剤、澱粉などの結合剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を挙げることができる。さらに別の好ましい実施形態において、サブユニットは押出し工程中に加えられ、押出し物は、参照として本明細書に取り入れる米国特許第4,957,681号明細書(クリメッシュ(Klimesch)ら)に説明されているように、錠剤に形状化することができる。
【0110】
任意で、徐放性の溶融押出し多粒子系または錠剤をコーティングすることができ、あるいはゼラチンカプセルを本明細書に記載された徐放性コーティングなどの徐放性コーティングによりさらにコーティングすることができる。このようなコーティングは、サブユニットが、徐放性形態ではなくて放出可能な形態のオピオイドアゴニストを含む場合に特に有用である。コーティングは、約2パーセントから約30パーセントの重量増加レベルを得るために十分な量の疎水性材料を含むことが好ましいが、上塗りは、とりわけ、利用される特定のオピオイド鎮痛剤の物理的性質および所望の放出速度に依り、より多量になり得る。
【0111】
溶融押出し剤形は、カプセル化前に1種以上の治療的活性剤を含有する溶融押出し多粒子の組み合せをさらに含むことができる。さらに、剤形は、迅速な治療作用のためにある量の即時放出治療剤を含むこともできる。即時放出治療剤は、剤形の調製(例えば、徐放性コーティングまたはマトリックスベース)後に、サブユニットの表面へ組み込むかコーティングすることができる。所望の効果を達成するために、剤形は、徐放性ビーズおよびマトリックス多粒子の組み合せを含有することもできる。
【0112】
徐放性製剤は、例えば、摂取され、胃液に曝され、次いで腸管液に曝されたら、治療剤を徐々に放出することが好ましい。溶融押出し製剤の徐放性プロフィールは、例えば、遅延剤(例えば、疎水性材料)の量を変えることにより、疎水性材料に対する可塑剤の量を変えることにより、追加の成分または賦形剤の含有により、製造法を変えるなどにより、変更することができる。
【0113】
他の実施形態において、溶融押出し材料は、サブユニットの含有なしで調製され、その後、押出し物に添加される。このような製剤はサブユニットおよび押出しマトリックス材料と一緒に混合された他の薬物を有することができ、次いで、徐放性(slow release)の治療剤または他の薬物を提供するために、この混合物を錠剤化する。このような製剤は、例えば、製剤に含まれる治療的活性剤が、疎水性材料および/または遅延剤材料を軟化するのに必要な温度に感度が高い場合に特に有利であり得る。
【0114】
ある種の実施形態において、隔離用サブユニットまたは組成物のアンタゴニストの放出は、無傷製剤から放出された量に対する改竄(例えば、破砕または咀嚼による)後に達成された放出の比率で表される。したがって、その比率は、破砕:完全として表され、この比率は、少なくとも約4:1以上の数値範囲(例えば、1時間以内の破砕放出/24時間での無傷放出)を有することが望ましい。ある種の実施形態において、隔離用サブユニットに存在する治療剤とアンタゴニストとの比率は、重量で約1:1から約50:1、好ましくは、重量で約1:1から約20:1、または重量で15:1から約30:1である。治療剤とアンタゴニストとの重量比は、活性成分の重量に当てはまる。したがって、例えば、治療剤の重量は、コーティング、マトリックス、もしくはアンタゴニストを隔離する他の成分、またはアンタゴニスト粒子に関連する他の可能な賦形剤の重量を除く。ある種の好ましい実施形態において、この比率は、重量で約1:1から約10:1である。ある種の実施形態において、アンタゴニストは隔離形態であるので、剤形内のこのようなアンタゴニストの量は、両方とも投与の際の放出に利用できる治療剤/アンタゴニストの組み合せ剤形よりも幅広く変わることができ、製剤は、適切な機能のために差動的代謝(differential metabolism)または肝クリアランスに依存しないので、。安全性の理由として、実質的に非放出性形態で存在するアンタゴニストの量は、たとえ改竄条件下で完全に放出されたとしても、ヒトに対して有害とならないように選択される。
【0115】
したがって、ある種の実施形態において、アンタゴニストおよびアゴニストが、単一多層医薬単位内に存在する、シールコートと直接接触するアンタゴニスト、シールコートと直接接触するアゴニスト、アンタゴニストではなく隔離用ポリマーを含む医薬組成物を提供する。他に、互いに直接接触しないアンタゴニストおよびアゴニストを含む多層ビーズから本質的になる医薬用量単位を含む医薬組成物を提供する。なお他に、各単位が、アンタゴニスト、アゴニスト、シールコート、およびアンタゴニストおよびアゴニストが互いに直接接触しない隔離用ポリマーを含む複数の薬学的に活性な単位を含む医薬組成物を提供する。さらに他に、糖スフェアなどの医薬的不活性な支持体材料、支持体材料と直接接触するアンタゴニスト、アンタゴニストおよびアゴニストと直接接触するシールコート、アゴニストと直接接触する隔離用ポリマーを含む医薬組成物を提供する。好ましい実施形態において、多層医薬組成物は、組成物の互いに異なる層内にアゴニストおよびアンタゴニストを含み、ヒトへの投与後に少なくとも24時間、少なくとも90〜95%のアンタゴニストが隔離される医薬組成物を提供する。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は、隔離用サブユニット内にナルトレキソン、およびナルトレキソンではなくサブユニットと接触するモルヒネを含み、組成物のヒトへの投与により、投与24時間以内に組成物から実質的に全てのモルヒネが放出されるが、ナルトレキソンの放出は5〜10%未満である医薬組成物を提供する。例えば、アンタゴニストを薬学的に不活性な支持体材料に接着させること、隔離用ポリマーを含むシールコートによりアンタゴニストをコーティングすること、アゴニストによりシールコートをコーティングすること、放出遅延または隔離用材料によりアゴニストをコーティングすること、によって医薬組成物を調製する方法も提供する。別の実施形態において、医薬組成物からインビボで放出されたア生物学的試料中のアンタゴニストまたはその誘導体の量を測定する方法であって、37℃、100rpmでのUSPパドル法を含むがTritonX−100などの界面活性剤を含有する緩衝液中のインキュベーションをさらに含む方法を提供する。
【0116】
特に好ましい実施形態は、多層医薬組成物を含み、実施例に記載されたものは、多層ナルトレキソン/モルヒネ用量単位の耐乱用性(abuse-resistant)剤形である。ナルトレキソンは、Eudragit(登録商標)RSおよび最適化試薬SLSを含むシールコート、水和の際にナルトレキソンの放出を共に妨げるタルクおよび塩素イオンを含む隔離用サブユニットに含まれる。pH7.5の緩衝液中での水和の際に放出されるモルヒネを含む層が、隔離用サブユニット上に上塗りされるが;ナルトレキソンは、これらの条件下、隔離サブユニット内に残存する。該単位が、例えば該単位を破砕することによって改竄されると、隔離用サブユニットも破砕され、それからモルヒネおよびナルトレキソン両方の放出が生じる。
【0117】
このように、組成物は、治療剤の乱用防止の使用に特によく適応する。これに関して、治療剤のヒトによる乱用を妨げる方法を提供する。該方法は、治療剤を本明細書で企図されるの任意の組成物に組み込むことを含む。これらの組成物の1つのヒトへの投与の際に、アンタゴニストは、24時間超、胃腸管内での放出が実質的に防げられる。しかしながら、ヒトによって組成物が改竄されると、機械的に脆弱である隔離用サブユニットが破壊され、それによってアンタゴニストが放出される。隔離用サブユニットの機械的脆弱性は放出可能な形態の治療剤と同じであることから、アンタゴニストは治療剤と混合され、2つの成分間の分離は事実上不可能である。
【0118】
治療剤がアゴニスト(すなわち、モルヒネなどのオピオイドアゴニスト)である場合、本明細書に記載の組成物は、アゴニストに対して応答性である宿主(すなわち、非ヒト動物又はヒト)での状態(すなわち、疼痛)の治療に用いてもよい。治療される状態が疼痛である、ある種の実施形態において、アゴニストは、宿主の鎮痛効果を提供し得る。そのような場合において、ヒトを治療する場合、疼痛スコアアッセイ(pain score assay)(すなわち、院内(In Clinic)、WOMAC)を含むが限定するものではない任意の好適なアッセイを用いて、状態を測定してもよい。上記の通り、このような方法に用いる組成物に含まれるアンタゴニストは、ナルトレキソンなどのオピオイドアンタゴニストであってもよい。ある種の実施形態において、アゴニスト及びアンタゴニストの両方を含む組成物の投与後のアゴニストの効果は、同様の量のアゴニストを含むがアンタゴニストのない組成物の効果とは有意に異ならない。ある種の場合では、組成物は、治療効果及び副作用がほぼ同等である場合には生物学的に同等であるとみなしてもよい。
【0119】
本発明およびその多くの利点について、例示により記載された以下の実施例からより良好に理解されるであろう。
【実施例】
【0120】
実施例
下記の調製および実験を実際に実施した。しかしながら、ある種の場合、現在時制が利用される。
【0121】
実施例1
製剤評価
A.電荷中和化添加物(SLS)の除外
【0122】
【表2】

【0123】
調製法:
1.エチルセルロースおよびセバシン酸ジブチルをエタノールに溶解し、タルクをこの溶液中に分散させた。
2.1からの分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてシールコート化糖スフェアを形成した。
3.Klucel LFおよびアスコルビン酸を、水およびエタノールの20:80の混液に溶解した。ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させる。
4.3のナルトレキソン分散液を、ワースター内で2のシールコート化糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成した。
5.Eudragit RSおよびセバシン酸ジブチルをエタノールに溶解し、タルクをこの溶液に分散させた。
6.5の分散液を、ワースター内で4のナルトレキソンコア上にスプレーしてナルトレキソンペレットを形成した。
7.ペレットを50℃で48時間乾燥した。
8.得られたペレットは、47μmのEudragit RSコートの厚さを有した。
【0124】
薬物放出結果
溶解条件:37℃で100rpmのUSPパドル法、500mLの0.1N HCl中で1時間、次いで500mLの0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間。
【0125】
結論:ナルトレキソンペレット(Eudragit RS)コートからSLSの除外は、24時間で90%超の放出により、ナルトレキソンの急速な放出をもたらす。
【0126】
B.可変量のSLS(53μmのEudragit RSコートの厚さ)
【0127】
【表3】

【0128】
調製法:
1.エチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルをエタノールに溶解してから、タルクおよびステアリン酸マグネシウムをこの溶液中に分散させた。
2.1の分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてシールコート化糖スフェアを形成した。
3.Klucel LFを、水およびエタノールの20:80の混液に溶解した。次にナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させた。
4.次に3のナルトレキソン分散液を、ワースター内で2のシールコート化糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成した。
5.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解し、タルクをこの溶液に分散させた。
6.5の分散液を、ワースター内で4のナルトレキソンコア上にスプレーしてナルトレキソンペレットを形成した。
7.ペレットを50℃で13〜16.5時間乾燥した。
8.得られたペレットは、51〜53μmのEudragit RSコートの厚さを有した。
【0129】
薬物放出結果
溶解条件:37℃で100rpmのUSPパドル法、500mLの0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間。
【0130】
結論:少量のSLSの添加(1.6重量%のEudragit RS)により、Eudragit RSの電荷中和化(理論的に20%の中和化)をもたらし、ナルトレキソンの放出を有意に遅らせる。SLSのさらなる添加(3.2重量%のEudragit RS)により、さらにEudragit RSの電荷中和化(理論的に41%の中和化)に至り、ナルトレキソンの放出を劇的に遅らせる。しかしながら、SLSのさらに高量(6.3重量%のEudragit RS)では、おそらくSLSの可塑化作用のため、より高いナルトレキソンの放出をもたらす。
【0131】
3.異なる濃度のSLS(65μmのEudragit RSコートの厚さ)
【0132】
【表4】

【0133】
調製法:
1.エチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルをエタノールに溶解してから;タルクおよびステアリン酸マグネシウムをこの溶液中に分散させた。
2.1の分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてシールコート化糖スフェアを形成した。
3.Klucel LFを、水およびエタノールの20:80の混液に溶解し;次にナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させた。
4.次に3のナルトレキソン分散液を、ワースター内で2のシールコート化糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成した。
5.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解してから;タルクをこの溶液に分散させた。
6.5の分散液を、ワースター内で4のナルトレキソンコア上にスプレーしてナルトレキソンペレットを形成した。
7.ペレットを50℃で13〜16.5時間乾燥した。
8.得られたペレットは、63〜67μmのEudragit RSコートの厚さを有した。
【0134】
薬物放出結果
溶解条件:37℃で100rpmのUSPパドル法、500mLの0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間。
【0135】
結論:上記のとおり、SLS対Eudragit RSの最適比率がある。
【0136】
B.Eudragit RSポリマーに対するタルク含量
【0137】
【表5】

【0138】
調製法:
1.エチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルをエタノールに溶解してから;タルクおよびステアリン酸マグネシウムをこの溶液中に分散させる。
2.1の分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてシールコート化糖スフェアを形成する。
3.Klucel LFを、水およびエタノールの20:80の混液に溶解する。ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させる。
4.3のナルトレキソン分散液を、ワースター内で2のシールコート化糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成する。
5.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
6.5の分散液を、ワースター内で4のナルトレキソンコア上にスプレーしてナルトレキソンペレットを形成する。
7.ペレットを50℃で13〜16.5時間乾燥する。
8.得られたペレットは、63〜67μmのEudragit RSコートの厚さを有する。
【0139】
薬物放出結果
溶解条件:37℃で100rpmのUSPパドル法、500mLの0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間。
【0140】
結論:タルク対Eudragit RSの最適比率(約1:1)がある。タルクは、Eudragit RSコートの疎水性を増加させるが、高量ではコート完全性を減少させる。糖スフェアコアを使用する場合、コート浸透性とタルク含量との間の関係に別個の最適条件がある。
【0141】
C.Eudragit RSコートの上部に対する浸透圧減少剤の効果
【0142】
【表6】

【0143】
調製法:
1.Klucel LFまたはHPMC(クエン酸、アスコルビン酸、およびブチル化ヒドロキシアニソール)を、水およびエタノールの20:80の混液に溶解し;ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させた。
2.1のナルトレキソン分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成した。
3.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解してから;タルクをこの溶液に分散させた。
4.3の分散液を、ワースター内で2のナルトレキソンコアにスプレーしてナルトレキソンペレットを形成した。
5.ナルトレキソンペレットを50℃で12時間(RB 362−28およびRB362−48)または65時間(RB362−67およびRB362−65)乾燥した。
6.得られたペレットは、85〜90μmのEudragit RSコートの厚さを有した。
7.次に塩化ナトリウムおよびヒプロメロースを水に溶解した。
8.HPMCを、水またはエタノールおよび水の混液に溶解した。
9.塩化ナトリウムを、8のHPMC溶液に溶解した。
10.菓子糖を8のHPMC溶液に分散させた。
11.硫酸モルヒネを、8のHPMC溶液に分散させた。
12.a.RB362−28に関して、ロータ内で5のナルトレキソンペレットに、8の溶液、次いで11の分散液をスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成した。
b.RB362−48に関して、ロータ内で5のナルトレキソンペレットに、8の溶液、次いで10の分散液、次いで8の溶液、次いで11の分散液をスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成した。
c.RB362−67に関して、ロータ内で5のナルトレキソンペレットに、9の溶液、次いで10の分散液、次いで8の溶液、次いで11の分散液をスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成した。
d.RB362−65に関して、ロータ内で5のナルトレキソンペレットに、9の溶液、次いで8の溶液、次いで11の分散液をスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成した。
13.エチルセルロース、PEG6000、Eudragit L100−55およびジエチルフタレートをエタノールに溶解し、タルクをこの溶液中に分散させた。
14.13の分散液を、12のナルトレキソン−モルヒネコアにスプレーし、ナルトレキソン−モルヒネペレットを形成した。
【0144】
薬物放出結果:
溶解条件:37℃で100rpmのUSPパドル法、500mLの0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中で72時間;または37℃で100rpmのUSPパドル法、0.1N HCl中に1時間、次いで0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間。
【0145】
結果:
【0146】
【表7】

【0147】
結論:糖は、NT放出に対して有害作用を有する。NaCl/HPMCの使用により、所望のNT放出プロフィールを提供する。
【0148】
II.コンセプト試験の立証、16mgのナルトレキシンHCl(20−727−1N)
【0149】
【表8】

【0150】
A.調製法−
1.Klucel LFを、水およびエタノールの20:80の混液に溶解する。ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させる。
2.1のナルトレキソン分散液を、ワースター内で糖スフェア(PI−1460に関して)またはCellets(PI−1461に関して)にスプレーしてナルトレキソンコアを形成する。
3.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散する。
4.3の分散液を、ワースター内で2のナルトレキソンコアにスプレーしてナルトレキソンペレットを形成する。
5.ナルトレキソンペレットを50℃で12時間オーブン内で乾燥する。
6.得られたペレットは、90μm(PI−1460に関して)および60μm(PI−1461に関して)のEudragit RSコートの厚さを有する。
7.ペレットをカプセルに充填する。
【0151】
B.インビトロ薬物放出−
方法−37℃で100rpmのUSPパドル法、0.1N HCl中に1時間、次いで0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間。
結果−PI−1460に関して73時間で放出されたNTパーセント=2%
PI−1461に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
【0152】
C.インビボバイオ試験−
空腹条件下、26人の健常対象において単回用量、オープンラベル、2期間パイロット試験
期間1:16mgのナルトレキソンを含有する経口用液体(N=26)
期間2:PI−1460(N=13)またはPI−1461(N=13)の2種のカプセル
血液試料を、投与前および投与後0.5時間から72時間目に採取し、血漿ナルトレキソンおよび6−ベータ−ナルトレキソールの濃度を分析した。定量化の限界は、ナルトレキソンに関して20.0pg/mLおよび6−ベータ−ナルトレキソールに関して0.250pg/mLであった。
【0153】
薬物動態結果のまとめ−
【0154】
【表9】

【0155】
D.結論−
1.血漿6−ベータ−ナルトレキソール濃度は、そのより高い血漿濃度およびより高い分析感度のため、血漿NT濃度よりも正確な生物学的利用能の指標を提供する。
2.累積インビボNT放出の指標としてカプセルと溶液との6−ベータ−ナルトレキソールAUClast比を用いて、ナルトレキソンの有意な隔離は、空腹条件下、72時間に見られる。シードコアとしてのCelletの使用では、観察されたインビボNT放出が糖よりも3倍高かった。しかしながら、60μmのCellet NTペレットは、90μmにおいて糖NTペレットよりも僅かに良好なインビトロ溶解性能を有することから、Celletを用いるNTペレットは、糖よりも低いRSコートの厚み(60μm対90μm)がある。
【0156】
III.最適化試験番号1、硫酸モルヒネおよびナルトレキソン60mg/2.4mg(ALPH−KNT−002)
【0157】
【表10】

【0158】
A.調製法−
1.Klucel LF、クエン酸、アスコルビン酸およびブチル化ヒドロキシアニソールを、水およびエタノールの20:80の混液に溶解する。ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させる。
2.1のナルトレキソン分散液を、ワースター内でCelletsにスプレーしてナルトレキソンコアを形成する。
3.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
4.3の分散液を、ワースター内で2のナルトレキソンコアにスプレーしてナルトレキソンペレットを形成する。
5.ナルトレキソンペレットを50℃で48時間乾燥する。
6.得られたペレットは、PI−1462に関して60μmおよびPI−1463に関して90μmのEudragit RSコートの厚さを有する。
7.塩化ナトリウムおよびヒプロメロースを水に溶解する。
8.ヒプロメロースを水およびエタノールの10:90混液に溶解する。硫酸モルヒネをこの溶液に分散させる。
9.7の溶液に次いで8の分散液を、ロータ内で5のナルトレキソンペレットにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成する。
10.エチルセロース、PEG6000、Eudragit L100−55およびジエチルフタレートをエタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
11.10の分散液を、9のナルトレキソン−モルヒネコアにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネペレットを形成する。
12.ペレットをカプセルに充填する。
【0159】
B.インビトロでの薬物放出−
方法−37℃で100rpmのUSPパドル法。
−0.1N HCl中に1時間、次いで0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間。
結果−PI−1462に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
PI−1463に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
【0160】
C.インビボ試験−
これは、8人の対象からなる2つの群が、絶食条件下、PI−1462またはPI−1463の一用量を服用した単回用量、オープンラベル、単一期間の試験である。血液試料は、用量投与前および投与後0.5時間から168時間まで採取した。定量化の限界は、ナルトレキソールに関して4.00pg/mLおよび6−ベータ−ナルトレキソールに関して0.250pg/mLである。
【0161】
2.薬物動態パラメータの要約
【0162】
【表11】

【0163】
3.結論
a.血漿6−ベータ−ナルトレキソール濃度は、ナルトレキソンよりも一貫した生物学的利用能の指標を提供する。
b.AUC∞比率に基づく相対的生物学的利用能により示されるように、両方の製剤には有意なインビボ放出がある。コート厚が90μmの方が、60μmよりも放出が少ない結果となる。PI−1463(最適化試験番号1)とPI−1461(POC)とを比較すると、ナルトレキソンペレットの上部へのモルヒネ/NaCl/カディアン(Kadian)ERコートのコーティングは、NT放出が3倍超の増加を生じる。
c.7日間の試験により、6−ベータ−ナルトレキソールをベースラインに戻す。
d.従来の緩衝系を用いたNT放出に関してインビトロ/インビボの相関関係は明確ではない。インビトロの溶解では、72時間の終了時には0%のNT放出を示すが、インビボデータでは、有意にNT放出を示す。
【0164】
IV.最適化試験番号2および3の硫酸モルヒネおよびナルトレキソンHClの60mg/2.4mg(20−778−1Nおよび20−779−1N)
【0165】
【表12】

【0166】
A.調製法−
1.エチルセルロースとセバシン酸ジブチルとをエタノールに溶解してから、タルクおよびステアリン酸マグネシウムをこの溶液に分散させる。
2.1の分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてシールコート化糖スフェア(シールコート厚が25μm)を形成する。
3.Klucel LF、クエン酸、アスコルビン酸およびブチル化ヒドロキシアニソールを、水およびエタノールの20:80の混液に溶解する。ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させる。
4.3のナルトレキソン分散液を、ワースター内で2のシールコート化糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成する。
5.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
6.5の分散液を、ワースター内で4のナルトレキソンコアにスプレーしてナルトレキソンペレットを形成する。
7.ナルトレキソンペレットを50℃で48時間乾燥する。
8.得られたペレットは、PI−1465に関して90μmおよびPI−1466に関して120μmのEudragit RSコート厚を有する。
9.塩化ナトリウムおよびヒプロメロースを水に溶解する。
10.ヒプロメロースを、水およびエタノールの10:90混液に溶解する。硫酸モルヒネをこの溶液に分散させる。
11.9の溶液に次いで10の分散液を、ロータ内で7のナルトレキソンペレットにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成する。
12.エチルセロース、PEG6000、Eudragit L100−55およびジエチルフタレートをエタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
13.12の分散液を、11のナルトレキソン−モルヒネコアにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネペレットを形成する。
14.ペレットをカプセルに充填する。
【0167】
B.インビトロでの薬物放出−
1.方法−37℃で100rpmのUSPパドル法
−0.1N HCl中に1時間、次いで0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間
結果−PI−1465に関して73時間で放出されたNTパーセント=1%
−PI−1466に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
2.方法−37℃で100rpmのUSPパドル法
−0.2%Triton X−100/0.2%酢酸ナトリウム/0.002N HCl、pH5.5中に72時間
【0168】
C.インビボ試験番号1
これは、8人の対象からなる2つの群が、絶食条件下、PI−1465またはPI−1466の一用量を服用した単回用量、オープンラベル、かつ単一期間の試験である。血液試料は、用量投与前および投与後0.5時間から168時間まで採取した。定量化の限界は、ナルトレキソンに関して4.00pg/mLおよび6−ベータ−ナルトレキソールに関して0.250pg/mLである。
【0169】
2.薬物動態パラメータの要約
【0170】
【表13】

【0171】
3.結論
a.溶解媒体中に界面活性剤の存在(第2のインビトロ薬物放出方法)により、緩衝剤単独(第1のインビトロ薬物放出方法)よりも良好なインビトロ−インビボ相関関係を提供する。
b.カディアンNTペレット(ナルトレキソンペレットの頂上部上のNaCl/モルヒネ/カディアンERコートのさらなる層状化)は、ナルトレキソンペレット単独よりもインビボでのナルトレキソンの放出が多かった。シールコートおよびシールコート(90μm)の無いPOCからのPI−1460と同じナルトレキソンペレットコート厚を含有するPI−1465は、ナルトレキソンの放出が5倍超あった。ナルトレキソンペレットコート厚が120μm(PI−1466)への増加でも、ナルトレキソンの放出が2倍あった。
【0172】
D.インビボ試験番号2
これは、4人の健常対象からなる4つの群が、絶食または給食条件下、PI−1465またはPI−1466の単一用量を服用した単回用量、オープンラベル、かつ単一期間の試験である。血液試料は、用量投与前および投与後0.5時間から168時間まで採取した。定量化の限界は、ナルトレキソンに関して4.00pg/mLおよび6−ベータ−ナルトレキソールに関して0.250pg/mLである。
【0173】
1.薬物動態パラメータの要約
a.ナルトレキソン
【0174】
【表14】

【0175】
b.6−ベータ−ナルトレキソール濃度
【0176】
【表15】

【0177】
2.結論
a.遅延時間が減少し、NT放出が食物の存在下で増加される場合、有意な食物効果がある。食物の存在下、PI−1465に関して2倍のNT放出増加、およびPI−1466に関して1.5倍のNT放出増加がある。
b.対象群には幾らかばらつきがある。PI−1466をインビボ試験番号1および2の両方において比較すると、絶食条件に対して同じ製品を使用したが、AUCにおいて2倍の差異があった。PI−1465に関して、AUCは、2つの試験間で同様であった。
【0178】
V.最適化試験番号4の硫酸モルヒネおよびナルトレキソンHClの60mg/4.8mg(20−780−1N)
【0179】
【表16】

【0180】
A.調製法−
1.エチルセルロースとセバシン酸ジブチルとをエタノールに溶解してから、タルクおよびステアリン酸マグネシウムをこの溶液に分散させる。
2.1の分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてシールコート化糖スフェア(シールコート厚が50μm)を形成する。
3.Klucel LFおよびアスコルビン酸を、水およびエタノールの20:80の混液に溶解する。ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させる。
4.3のナルトレキソン分散液を、ワースター内で2のシールコート化糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成する。
5.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
6.5の分散液を、ワースター内で4のナルトレキソンコアにスプレーしてナルトレキソンペレットを形成する。
7.ナルトレキソンペレットを50℃で48時間乾燥する。
8.得られたペレットは、PI−1495およびPI−1496の両方に関して150μmのEudragit RSコート厚を有する。
9.(PI−1495に関してのみ)塩化ナトリウムおよびヒプロメロースを水に溶解する。
10.ヒプロメロースを、水およびエタノールの10:90混液に溶解する。硫酸モルヒネをこの溶液に分散させる。
11.(PI−1495に関してのみ)9の溶液、次いで10の分散液を、ロータ内で7のナルトレキソンペレットにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成する。
12.(PI−1496に関してのみ)10の分散液を、ロータ内で7のナルトレキソンペレットにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成する。
13.エチルセロース、PEG6000、Eudragit L100−55およびジエチルフタレートをエタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
14.12の分散液を、11または12のナルトレキソン−モルヒネコアにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネペレットを形成する。
15.ペレットをカプセルに充填する。
【0181】
B.インビトロでの薬物放出−
1.方法−37℃で100rpmのUSPパドル法
−0.1N HCl中に1時間、次いで0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間
結果−PI−1495に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
−PI−1496に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
2.方法−37℃で100rpmのUSPパドル法
−0.2%Triton X−100/0.2%酢酸ナトリウム/0.002N HCl、pH5.5中に72時間
結果−PI−1495に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
−PI−1496に関して73時間で放出されたNTパーセント=0%
【0182】
C.インビボ試験
これは、8人の対象からなる2つの群が、PI−1495またはPI−1496の一用量を服用した単回用量、オープンラベル、2つの期間の試験である。各対象は、絶食および非絶食条件下、無作為スケジュールに基づいて割当てられた処置順序を受けた。血液試料は、用量投与前および投与後0.5時間から168時間まで採取した。定量化の限界は、ナルトレキソンに関して4.00pg/mLおよび6−ベータ−ナルトレキソールに関して0.250pg/mLである。
【0183】
2.薬物動態パラメータの要約
a.ナルトレキソン
【0184】
【表17】

【0185】
b.6−ベータ−ナルトレキソール濃度
【0186】
【表18】

【0187】
3.結論
a.150μmのナルトレキソンペレットコート厚を有するカディアンNTペレットは、90μmのコート厚を有するNTペレットと同等のナルトレキソン放出であった。この同等のNT放出も、カディアンNTペレットに用いられた糖スフェア上の50μmのシールコートの存在からもたらされると考えられる。
b.有意なNT隔離が、絶食状態(>97%)および給食状態(>96%)の両方に見られた。
c.ナルトレキソンペレットコート(PI−1495)の直上に塩化ナトリウムを含有するカディアンNTペレットは、インビトロ結果と一致して、塩化ナトリウムの無いカディアンNTペレット(PI−1496)と比較してナルトレキソンの放出は半分であった。
d.再度食物作用が観察された。遅延時間が有意に減少した。
【0188】
V.最適化試験番号5の硫酸モルヒネおよびナルトレキソンHClの60mg/2.4mg(20−903−AU)
【0189】
【表19】

【0190】
A.調製法−
1.エチルセルロースとセバシン酸ジブチルとをエタノールに溶解してから、タルクおよびステアリン酸マグネシウムをこの溶液に分散させる。
2.1の分散液を、ワースター内で糖スフェアにスプレーしてシールコート化糖スフェア(50μmのシールコート)を形成する。
3.Klucel LFおよびアスコルビン酸を、水およびエタノールの20:80の混液に溶解する。ナルトレキソンHClおよびタルクをこの溶液に分散させる。
4.3のナルトレキソン分散液を、ワースター内で2のシールコート化糖スフェアにスプレーしてナルトレキソンコアを形成する。
5.Eudragit RS、ラウリル硫酸ナトリウムおよびセバシン酸ジブチルを、エタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
6.5の分散液を、ワースター内で4のナルトレキソンコアにスプレーしてナルトレキソンペレットを形成する。
7.ナルトレキソンペレットを50℃で48時間乾燥する。
8.得られたペレットは、150μmのEudragit RSコート厚を有する。
9.塩化ナトリウムおよびヒプロメロースを水に溶解する。
10.ヒプロメロースを、水およびエタノールの10:90混液に溶解する。硫酸モルヒネをこの溶液に分散させる。
11.9の溶液に、次いで10の分散液を、ロータ内で7のナルトレキソンペレットにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネコアを形成する。
12.エチルセロース、PEG6000、Eudragit L100−55およびジエチルフタレートをエタノールに溶解する。タルクをこの溶液に分散させる。
13.12の分散液を、11または12のナルトレキソン−モルヒネコアにスプレーしてナルトレキソン−モルヒネペレットを形成する。
14.ペレットをカプセルに充填する。
【0191】
B.インビトロでの薬物放出−
1.方法−37℃で100rpmのUSPパドル法
−0.1N HCl中に1時間、次いで0.05M pH7.5のリン酸緩衝液中に72時間
結果−73時間で放出されたNTパーセント=0%
2.方法−37℃で100rpmのUSPパドル法
−0.2%Triton X−100/0.2%酢酸ナトリウム/0.002N HCl、pH5.5中に72時間
結果−73時間で放出されたNTパーセント=0%
【0192】
C.インビボ試験
これは、8人の対象が、試験期間1では絶食および非絶食状態下、および試験期間2では交互に絶食および非絶食状態下で、一用量のPI−1510を服用させるために無作為化した単回用量、オープンラベル、かつ2つの期間の試験である。血液試料は、用量投与前および投与後0.5時間から168時間まで採取した。定量化の限界は、ナルトレキソンに関して4.00pg/mLおよび6−ベータ−ナルトレキソールに関して0.250pg/mLである。
【0193】
2.薬物動態パラメータの要約
a.6−ベータ−ナルトレキソール濃度
【0194】
【表20】

【0195】
3.結論
a.PI−1510およびPI−1495は同等である。本ペレット中のナルトレキソンの充填(PI−1495において1.5%からPI−1510において0.7%)による減少は、NT放出に影響を及ぼさないようである。
b.有意なNT隔離が、絶食状態(>96%)および給食状態(>95%)の両方に見られた。
c.観察された食物作用は、総NT放出に換算してあまり大きくはなかった。しかしながら、食物の存在下での遅延時間は有意に減少した。対象には複数の放出ピークが存在した。
【0196】
VII.全てのインビボ試験でのNT放出の要約
BA(Cmax)=Cmaxに基づく相対的な生物学的利用能=Cmaxの用量調整比率(NT/KNTペレット)対Cmax(NT溶液)
BA(AUC last)=AUC lastに基づく相対的な生物学的利用能=AUC last(NT/KNTペレット)対AUの用量調整比率
BA(AUC inf)=AUC infに基づく相対的な生物学的利用能=AUC inf(NT/KNTペレット)の用量調整比率
総インビボ累積NT放出は、血漿6−ベータ−ナルトレキソール濃度からのBA(AUC inf)算出により外挿することができる。
【0197】
【表21】

【0198】
【表22】

【0199】
実施例2
疼痛治療方法
一例として、最適化研究#5(カディアン(Kadian)NT;60mgの硫酸モルヒネ、2.4mgのナトルレキソンHCl)の製剤をヒトに投与し、アゴニストモルヒネの鎮痛効果が、カディアンNT製剤中のナルトレキソンの存在および/または製剤からのその放出によって有意に低減されることがないことを確認するため、前述の製品カディアンと比較した。各カディアン徐放性カプセルは、20、30、50、60または100mgの硫酸モルヒネUSP、および全ての強さに共通の以下の不活性成分を含有している:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、フタル酸ジエチル、タルク、コーンスターチおよびスクロース。これらの研究において、カディアンの効果をカディアンNTの効果と比較した。
【0200】
すでにカディアンで治療されている患者は、約14日間の「ウォシュアウト(washout)」期間に付され、その間カディアンを投与しなかった。このウォシュアウト期間の直後に、試験を開始した。患者に対し0日目にカディアンまたはカディアンNTのいずれかを投与した。最長28日間カディアン(登録商標)で治療した後、次に患者をカディアンNTに「クロスオーバー」するかまたはカディアン(登録商標)を投与し続けた。カディアンNTの量は、各患者が以前にカディアンを摂取している間受けていたものとほぼ同量のモルヒネを受けているように、個別に調整した。次いで、このクロスオーバーを14日後に反復した。以下で論述する通り、異なる時点でさまざまな生理学的応答を測定した。これらの応答には、モルヒネ血中濃度、ナルトレキソン血中濃度、6−β−ナトレキソール血中濃度および参加者の疼痛スコアによって表わされる鎮痛効果が含まれていた。
【0201】
平均モルヒネ濃度を、カディアン(登録商標)およびカディアンNTについてほぼ同じになるように、測定し判定した。この観察により、新しい製剤が患者の血液中に有効にモルヒネを放出することが確認される。これは下の表に示されている。
【0202】
【表23】

【0203】
カディアンNT製剤が、モルヒネの活性が低減するように血流中に有意な量のアンタゴニスト(すなわちナルトレキソンまたはその誘導体)を放出しないことが重要である。69人の患者のうち14人のみが定量化可能な(>4.0pg/mL)ナルトレキソン濃度を有していた。定量化可能な濃度の範囲は、4.4〜25.5pg/mLであった。しかしながら、血流中へ一定量のナルトレキソンが放出されても、疼痛スコアを用いて測定した製剤の鎮痛効果に有意な影響は及ぼされなかった(以下参照)。
【0204】
【表24】

【0205】
即時放出製剤で提供される場合、ナルトレキソン(親)は急速に吸収され、6−β−ナルトレキソール代謝体に変換される。6−β−ナルトレキソールは、わずか2〜4%のアンタゴニスト効能しかもたない、ナルトレキソンより弱いオピオイドアンタゴニストである。試験中に研究対象となった大部分の患者は、定量化可能なレベル(>0.25pg/mL)の6−β−ナルトレキソールを有していた。血漿中の6−β−ナルトレキソールの付随的存在は、疼痛スコアに対し全く影響を及ぼさず、このことはさらに、カディアンNTから放出されたナルトレキソンがモルヒネの効果に有意な影響を及ぼさないことを示していた。
【0206】
カディアンNTが、著しく異なるタイプ、数、または重大度の一般的有害事象を結果としてもたらさなかったということが確認されたことも重要であった。これは、以下で示す通りに確認された:
【0207】
【表25】

【0208】
さらに、カディアンNTが、一般に禁断症状に付随する有害事象に関してカディアンと同様に機能したか否かに留意することは重要であった。
【0209】
【表26】

【0210】
院内疼痛、WOMAC疼痛、WOMAC硬直、WOMAC日常活動およびBPI疼痛を含むその他の測定も行なわれた。カディアンを摂取した患者とカディアンNTを摂取した患者におけるこれらの測定値の差異は、以下で示す通り、有意なものではなかった。
【0211】
【表27】

【0212】
【表28】

【0213】
【表29】

【0214】
【表30】

【0215】
結論として、カディアンおよびカディアンNTについての血漿モルヒネレベルは、生物学的に同等である。69人のうち55人(80%)の患者が測定可能なレベルのナルトレキソンを全く有していなかった。測定可能なレベルのナルトレキソンを有する14人の患者のうち、疼痛スコアに対するマイナスの効果は全く存在しなかった。これら14名の患者のうち7名が、わずか1つの時点でのみ測定可能なレベルを有していた。大部分の患者は、幾分かの6−β−ナルトレキソールレベルを有していたが、疼痛スコアに対する負の効果は全く存在しなかった。さらに、カディアン(登録商標)またはカディアンNTを摂取する個体における疼痛スコアの差は全くなかった。
【0216】
好ましい実施形態の観点からいくつかの企図された実施形態について記述してきたが、当業者であれば、その変型および改変を思い付くことが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求されている本発明の範囲内に入るこのような等価の変型の全てを包含するものであるということを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゴニストに対して応答性のある宿主の状態を治療する方法であって、前記アゴニストおよびそのアンタゴニストを含む多層薬学組成物を前記宿主に投与することを含み、前記アゴニストと前記アンタゴニストとは前記組成物の無傷の形態では互いに直接接触していない、方法。
【請求項2】
前記アゴニストが前記宿主に対して鎮痛効果を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アゴニストがオピオイドアゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アゴニストがモルヒネである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記宿主がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アンタゴニストがナルトレキソンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アゴニストに対して応答性のある宿主の状態を治療する方法であって、組成物の無傷の形態では互いに直接接触しない前記アゴニストおよびそのアンタゴニストを含む多層薬学組成物を宿主に投与することを含み、宿主での前記アゴニストの効果が、アンタゴニスト無しで同様の量のアゴニストを含む組成物の効果と有意に異ならない、方法。
【請求項8】
前記アゴニストの効果が鎮痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アゴニストがモルヒネである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記アンタゴニストがナルトレキソンである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記宿主がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記アンタゴニストの効果が、疼痛スコア検定を用いて判定される鎮痛である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記宿主の血漿中に検出可能なアンタゴニストが前記多層薬学組成物から放出されるが、前記アゴニストの効果に有意な影響を及ぼさない、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記アンタゴニストが、6−β−ナルトレキソールの血漿中濃度を測定することによって検出されるナルトレキソンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多層薬学組成物と前記アゴニストのみを含む組成物とが生物学的に同等である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも第1および第2の層を含む多層薬学組成物であって、前記第1の層が少なくとも1つのオピオイドアゴニストを含み、前記第2の層が、前記オピオイドに対する少なくとも1つのアンタゴニストを含み、前記アゴニストと前記アンタゴニストとが互いに直接接触しておらず、宿主への前記組成物の投与により宿主で鎮痛効果が与えられる、多層薬学組成物。
【請求項17】
少なくとも第1および第2の層を含む多層薬学組成物において、前記第1の層が少なくとも1つのオピオイドアゴニストを含み、前記第2の層が、前記オピオイドに対する少なくとも1つのアンタゴニストを含み、前記アゴニストと前記アンタゴニストとが互いに直接接触しておらず、宿主へ前記組成物を投与した際に、前記組成物から放出されたアンタゴニストが宿主でのアゴニストの効果に有意な影響を及ぼさない、多層薬学組成物。

【公表番号】特表2010−506833(P2010−506833A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532389(P2009−532389)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/021627
【国際公開番号】WO2008/063301
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(508370533)アルファーマ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】