説明

十字流トレーおよびこれを用いる方法

十字流トレーは、トレーデッキおよびワイヤによって分けられたカンのグループに設けられる。カンは、トレーデッキの蒸気開口を取り囲む壁を有する。壁に設けられた開口は、トレーデッキからカンに液体を入れる。壁の付加的な開口は、液体をカンに排出させる。はねかけ壁は、カン内の蒸気および液体間での物質移動および/または熱交換を促進するために蒸気および液体に対する遠心力による旋回動力を引き起こすカン内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
本発明は、流体流間において物質移動および/または熱移動が起こるカラム、さらに詳しくは、このようなカラムに用いられる十字流トレー、および、このようなトレーを用いる物質移動および/または熱移動を発効する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の十字流トレーは、接触を増大、たとえば、プロセスカラム中に流れる流体流間の物質移動および/または熱交換を増大させるために開発された。複数のそのようなトレーは、通常では、カラムの十字部分を横切って水平方向に伸びる各トレーおよび垂直方向に離間するトレーとともに、そのようなカラムの開放された内部領域に用いられる。トレーは、典型的には蒸気流のような上昇する流体流を、トレーデッキを通過させて、デッキ表面を横切って水平に流れる液体流と相互作用させるために、複数の開口が設けられたデッキ表面を有する。これらの開口を有するデッキ表面は、通常、活性化領域として言及される。デッキ表面のこの活性化領域で起こる蒸気‐液体の相互作用は、液体および蒸気流間において、所望の物質移動および/熱交換を促進するための泡を形成する。
【0003】
これらの蒸気‐液体の十字流トレーも、概して、流体流を、1つのトレー上のデッキ表面から移動させて下位のトレーのデッキ表面の注入口領域に向かわせる降水管として知られる大きな開口と結合構造体とを有する。前記注入口領域は、活性化領域を横切り最初に移動すること無く、液体がデッキ表面から下降するのを防ぐために、さらに、降水管から蒸気が上昇するのも防ぐために、通常、無孔である。1本のパスの形態として知られる一形態においては、上位の降水管から排出される液体を収容する注入口領域、および、トレーから液体を移動させる降水管のための開口および注入口は、各トレーの反対側の末端に配置される。2本のパスの形態においては、1本の降水管が、1つのトレーの中央に配置され、2本の降水管は、下位トレーの反対側の末端に位置する。マルチパス降水管の設備も用いられている。
【0004】
複数の円柱カンを用いる蒸気‐液体の十字流トレーは、高流量および高効率の適応のために開発される。円柱カンは、デッキ表面から上向き伸び、かつ、前記デッキ表面に形成される蒸気の開口を取り囲む。旋回動力が、カン中に配置される旋回ヴァンを用いるカン中の上昇する蒸気に付与される。デッキ表面上の液流は、カンの壁の低い位置に配置されるスロットまたは他の開口を通過してカン中に導入される。1本以上の降水管は、1つのトレーから液体を移動させて、下位のトレーに液体を運び込むために、各トレー上に配置される。
【0005】
旋回する蒸気は、高分離率を導く強度の蒸気‐液体の相互作用を引き起こすために、これらのカンを通って上昇し、さらに、デッキ表面からカンに入る液体と相互作用する。旋回蒸気は、液体がカンの壁のスロットを垂直および水平に通過する各カンの内壁表面に対して、液体の大部分をはね散らせる。これらのスロットを通過した後、液体はデッキ表面に対して下降し、次いで、下位のトレーを通過するために、デッキ表面に沿って1本以上の降水管まで移動する。蒸気は、各カンに設けられる開口のトップまたは他の開口に排出され、次いで、蒸気の開口および上位のトレーのデッキ表面に設けられたカンを通って上方向に流れる。
【0006】
上述の高容量トレーの問題は、デッキ表面上の液体が、各カンに一様に分配されることである。低液流速において、各カンに対して存在する多量の液体は、液体を蒸気流中に容易に乗せ、さらに、トレーの分離率が減少するスプレーを形成する。
【0007】
これらの高性能のトレーの形態に関連するもう一つの問題は、液体の傾向が、トレーを横切る所望のプラグフローパターン中に流れるよりも各カンに再循環することである。
【0008】
上述の問題を克服する改良されたトレーの形態を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の概要
一側面においては、本発明は、カラム中での流体流間の物質移動および/または熱交換を促進するために、カラム中に用いられる十字流トレーに定められる。トレーは、全体に平らなトレーのデッキと、トレーデッキから液体を移動させるために、トレーのデッキ上に注入口開口を有する降水管とで構成される。トレーに配置される複数の蒸気開口は、トレーのデッキからの蒸気の通過を上向きにさせる。複数のカンは、トレーのデッキ上に配置され、蒸気開口を取り囲む壁を有する。注入口開口は、液体を、前記トレーのデッキからカンに入れるために、カンの壁に配置される。排出開口は、カン内の蒸気の相互作用の後、液体をカンに排出させるために、前記カンの壁に配置される。ワイヤは、トレーデッキ上の第1ゾーンのカンの第1グループと、トレーデッキ上の第2ゾーンの前記カンの第2グループとの間に配置される。ワイヤは、液体が前記カンの第2グループまで運び込まれる前に、カンの第1のグループのカンまで運び込まれるために働き、これによって、低液流速において、蒸気中の液体の不望な同調の機会が減少する。排出開口は、排出開口を通って排出される液体が、ワイヤをこえて、次いで、第2ゾーンのトレーのデッキ上に運ばれるように、カンの下流側の大部分または全体にも配置され、これによって、液体が放出されたカンまで再循環する機会が減少する。カンの各グループ内の隣接するカンの間に伸びるはねかけ壁は、液体の再循環の機会を減らすためにも用いられる。
もう一つの側面においては、本発明は、カラム中に流れる流体流間の物質移動および/または熱交換を促進させるカラムを定める。カラムは、開口内部領域を定義する垂直なシェルと、前記シェルの開口内部領域中で垂直方向に離間した関係で配置される複数の上述のタイプの十字流トレーとで構成される。
さらなる側面においては、本発明は、カラムの流体流間での物質移動および/または熱交換を促進するために上述の前記十字流トレーを用いる方法を定める。方法は、トレーデッキの注入口領域上に液体を導入するステップと、前記トレーデッキ上の下流方向に液体を流すステップとで構成される。ワイヤは、液体がカンの第1グループの壁に設けられる注入口開口を通って第1ゾーン中のカンの第1グループに入るために十分なレベルに到達するまで、第1ゾーン中のトレーデッキ上に液体を蓄積させるために用いられる。カンの第1グループに入る液体は、液体および蒸気間で、物質移動および/または熱交換を引き起こすために前記カン中に生じる旋回蒸気と混合される。前記カンの第1グループ中の蒸気と混合された液体は、前記カンの第1グループの壁に設けられた放出開口を通って、カンに出される。排出開口は、下流方向に主にまたは完全に面するように配置され、はねかけ壁は、隣接するカンの間に配置されるので、排出される液体の殆どまたは全ては、液体が第2ゾーンのトレーデッキ上に下降する前に、ワイヤを超えて向かう。液体は、次いで、液体がカンの第2グループの壁に設けられた注入開口から第2ゾーンのカンの第2グループ中に入るために十分なレベルに到達するまで、第2ゾーンのトレーデッキ上に蓄積する。カンの第2グループに入る液体は、液体および蒸気間で物質移動および/または熱交換を引き起こすためにカン中で生じる旋回蒸気と混合される。液体は、次いで、カンの第2グループの壁に設けられた排出開口を通ってカンの第2グループから移動し、上述の仕様のカンの付加的なグループに向かわせてもよいし、または、下位のトレーに運び込むための降水管に直接運び込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な説明
明細書の一部を形成し、かつ、様々な図面の部位を指示するために用いられる参照数字と共に読まれる添付図面において:
【0011】
【図1】図1は、カラムの開口内部領域中に配置される本発明の十字流トレーを描写するために、カラムシェルの一部を取り除いた状態のカラムの透視図である。
【図2】図2は、拡大スケールで示すカラムの垂直断面における断片的な片側の正面図である。
【図3】図3は、カラムの上側の水平断面における正面図である。
【図4】図4は、図3の矢印方向のライン4‐4に沿ったカラムの垂直断面における断片的な前側の正面図である。
【図5】図5は、本発明の十字流トレーの一透視図である。
【図6】図6は、十字流トレー上に用いられるカンの片側の透視図であり、かつ、カンの壁の排出開口の代替実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適実施形態の詳細な説明
より詳細に初めは図1の図面を参照すると、物質移動および熱交換処理の使用に適したカラムは、全般に渡って、矢印10によって表わされる。カラム10は、多角形を含む他の形状でも可能であり、かつ、本発明の範囲内であるが、通常、円柱形状の直立の外側シェル12を含む。シェル12は、適切な直径および高さであり、カラム10の作動中の流体流および状態に対して、好ましくは不活性またはそれ以外の場合は親和性のある1種類以上の剛性材料で構成される。
【0013】
カラム10は、分離生成物の取得、および/または、さもなければ流体流間の物質移動および/または熱交換を引き起こすために、一般的には、液体および蒸気のような流体流の処理のために用いられる型である。カラム10のシェル12は、流体流間で所望の物質移動および/または熱交換が起こる開口内部領域14を規定する。通常、流体流は、1種類以上の上昇する蒸気流および1種類以上の下降する液体流で構成される。あるいは、流体流は、上昇および下降両方する液体流または上昇するガス流および下降する液体流で構成される。
【0014】
流体流は、カラム10の高さに沿って適切な位置に配置された幾つもの供給ライン16を通ってカラム10に向かう。1種類以上の蒸気流は、供給ラインからカラム10中に導入されるよりむしろカラム10中内で生成されることも可能である。カラム10は、自身から、蒸気の生成物または副生成物を除去するための架線18、および、液体の生成物または副生成物を除去するための底流除去ライン20も通常含む。逆流ライン、リボイラー、コンデンサ、蒸気ホーン等のような典型的に存在するカラムのその他の部品は、本質的に従来のものであり、これらの部品は、本発明の理解のために必要でないと思われるので、図面に図示しない。
【0015】
加えて、図2〜6を参照すると、本発明に従って、複数の水平方向に伸びる十字流トレー22は、カラム10の開口内部領域14中において、垂直方向に離間した関係で配置されている。トレー22は、様々な公知の仕様で継ぎ合わせることが可能な複数の個別パネルで通常構成されるデッキ24を含む。各トレー22は、デッキ24の開口によって形成される注入口30と、下位のトレー22に液体を運びこむための通路を形成する1以上の壁32とを有する少なくとも1本の降水管28を含む。図示された実施形態においては、カラム10のシェル12は、降水管28の壁32の1つを形成する。その他の実施形態においては、シェル12が、降水管28の一部を形成する必要はない。
【0016】
図示された実施形態においては、各トレー22は、デッキ24の一端に配置された降水管28を有し、隣接するトレー22上の降水管28は、前記トレー22の反対側の端部に配置される。各トレー22のデッキ24は、上位の降水管28から排出された液体が、自身に向かい、次いで、トレーデッキ24を横切って下流方向に降水管28まで流れるように、上位トレー22の降水管28の下に横たわる注入口領域36を含む。デッキ24から上側に伸びる直立の壁の形状をした選択可能な注入口ワイヤ38は、液体が注入口ワイヤ38から溢れ、注入口ワイヤ38から下流方向に位置するデッキ24の一部に沿って移動する前に、注入口ワイヤ38の高さに一致するレベルまで注入口領域36上に液体を蓄積させるために注入口領域36の隣に配置してもよい。図示される1本のパスの形態においては、注入口領域36および降水管の注入口30は、各トレー22上の反対側の短部に配置される。本発明は、2本のパスまたは複数のパスの形態に対しても適用されると認識される。
【0017】
各トレー22は、デッキ24から上方に伸び、かつ、デッキ24に支持される複数の一様に離間したカン40を含む。カン40は、デッキ24上に、三角形または四角形のピッチのような事前に選択された均一なパターンで好ましく割りつけられる。各カン40は、他の形状を用いることも可能ではあるが、一般的な円柱の壁42によって形成される。一実施形態においては、壁42は、各壁42の上端が上位トレー22の下に事前に選択された距離だけ離間するように、隣接するトレー22間の垂直方向の離間距離よりも少ない高さを有する。他の実施形態においては、壁42は、上位トレー22に接触および支持するために上側に伸びてもよい。仮に、壁42が上位トレー22に接触し、かつ、上位のトレー22のデッキ24中の蒸気開口44を取り囲む場合、最適な開口は、蒸気を取り囲む空間からカン40に入れ、かつ、上位のトレー22のデッキ24の蒸気開口44から上昇させるために、壁42の上部に配置される。同様に、壁42は、上位のトレー22に接触するが、上位のトレー22のデッキ24内の蒸気開口44から中心が外れている場合、壁42の上部に開口が設けられ、蒸気がカン40を出て、上位のトレー22の蒸気開口44を通って上昇でいるようにしている。壁42の底端は、溶接、または、壁42の底端から下側に伸びてデッキ24中に形成されるスロットを通って挿入されるタブのような、あらゆる最適な方法で、デッキ24に固定される。タブは、デッキ24上にカン40に固定するために、デッキ24の下側に対して屈曲していてもよい。
【0018】
各カン40の壁42は、蒸気を、デッキ24から上側に、かつ、結合するカン40中を通過させるために、デッキ24に設けられた蒸気開口44を取り囲む。各蒸気開口44は、通常、デッキ24を通って上方に通過する全ての蒸気がカン40を通過するように、壁42の内径よりわずかに小さい直径を有する。各カン40に対して蒸気を供給するために1つの大きな開口44を用いるよりも、複数の小さい開口を用いても良い。カン40の数および直径と開口44のサイズとは、目的とする液体‐蒸気相互作用のために所望の蒸気流能力および所望の体積を提供するために選択される。
【0019】
1セット以上の旋回翼46は、各カン40内に蒸気の遠心性の旋回を引き起こすために配置される。蒸気がデッキ24を通って上向きに通過してカン40に入るときに、旋回稼働が蒸気中で引き起こされるように、旋回翼46aの1セットは、デッキ24の水平面に各蒸気開口44に配置される。旋回翼46bの他のセットは、デッキ24の水平面内に配置される旋回翼46a上に事前に選択された距離離間した位置で、各40内で配置されても良い。旋回翼46の各セットは、複数の放射状に伸びた平面または婉曲したヴァン48で構成されている。旋回翼46aの低位のセットのヴァン48aは、旋回翼46bの上位のセットのヴァン48bと同じまたは異なるように形作られ、および/または、角度を付けられる。1例として、低位のヴァン48aは、実質的に放射状に流れるベクトルで垂直方向から自身に対して蒸気のために段階的な変化を設けるためにカーブさせても良い。上位のヴァン48bは、放射状の流れのベクトルで流れる蒸気が存在するので、上位のヴァン48bは平ら、または、低位のヴァン48aと比較してカーブを小さくしても良い。
【0020】
旋回翼46は、蒸気がトレーデッキ24上の各カン40中で同回転方向に渦巻くように配置されてもよい。あるいは、いくつかのカン40中における回転方向は、他のカン40の方向とは異なる。
【0021】
トレーデッキ24上の液体は、各カン40の壁42に配置されたスロットのような注入口開口50を通ってカン40に入る。注入口開口50は、カン40が所望の構造の剛性を保持することを保証すると同時に、各カン40中に液体を所望に流入させるために、壁42中にサイジングおよび配置される。注入口開口50は、通常、カン40の壁42中の注入口開口50に入る前に、液体がカン40を取り囲むトレーデッキ24上にあらかじめ選択された深さまで蓄積されるように、トレーデッキ24の水平面上にあらかじめ選択された距離で配置される。注入口開口50は、各カン40中に液体を所望の体積流させるためにサイジングされ、液体がカン40に入るときに、液体が、旋回動力で既に移動している蒸気と逢着するように、旋回翼46aの低位セット上に好ましく配置される。旋回する蒸気および液体は、物質移動および/または熱交換の激しい相互作用が蒸気および液体間で起こる混合ゾーンのカン内で上昇する。上位の旋回翼46bのセットは、使用される場合、蒸気および液体の付加的な旋回を引き起こす混合ゾーンの注入口開口50の水平面上に配置される。
【0022】
旋回する蒸気および液体がカン40内で上昇する際に、液体の膨大な動力が、液体の大部分を、各カン40の壁42の内側表面に対して投げつける。液体は、壁42に対して浮上し、さらに、壁42の排出開口52からカン40に排出される。排出開口52は、簡単な穴のような様々な形状が可能である。図1〜5に図示される実施形態においては、排出開口52は、結合するカン40中の内側に伸び、かつ、カン40の壁42に対して移動する液体を取り込むように方向づけられた指向性のルーバ52aの形状をしている。図6に図示された他の実施形態においては、排出開口52は、トレーデッキ24に対して下流方向に排出液を偏向させるために、下方に傾斜し、かつ、外側に婉曲したタブ52bの形状をしている。排出開口52のその他の形態は、本発明の範囲によって考慮され、かつ、本発明の範囲内のものである。
【0023】
注入口領域36から降水管28までトレーデッキ24を横切る液体をさらに均一な流れに確実にするために、一連の中間ワイヤ54a、54b、および54cは、トレーデッキ24上に配置される。ワイヤ54a‐cは、通常、トレーデッキ24を横切る液流の全方向に対して横切るように、かつ、離間した関係で配置される。ワイヤ54a‐54cは、従って、トレーデッキ24を複数のゾーン56a‐c(各ゾーンは、カン40のグループを含む)に分配する。カン40の各グループのカン40の数は、いくつかの応用においては、他よりもいくつかのゾーンにおいて、さらにカン40を含むことが好ましいが、通常、各ゾーン56a‐c中で同じである。3つのゾーン56a‐cが図示されているが、1つまたは複数のワイヤを用いることによって2つ以上のゾーンが提供可能であると理解される。
【0024】
より均一な液流を達成することに加えて、ワイヤ54a‐cは、各ワイヤ54a‐cからすぐ上流のゾーン56a‐56cに位置するカン40中に液体を押し進める役割を果たす。液体は、ワイヤを超えて溢れて隣の領域56bまたは56cに流入する前に、ワイヤ54a、54b、または、54cの高さまでトレーデッキ24上に蓄積しなければならない。ワイヤ54a‐cは、それぞれが、好ましくは、これらの上端が、カン40の壁42の注入口開口50のレベルの上で、かつ、最も低い排出開口52のレベルのしたになるような高さである。ワイヤ54a‐cは、それぞれ、同じ高さでもよいし、あるいは、ワイヤが、トレーデッキ24を横切る液流の方向における高さを増加させても減少させてもよい。ワイヤ54a‐54cの存在は、通常、等量の液体が各ゾーン54a、54b、または54c内に位置する各カン40に存在するように、各ゾーン56a‐c内に液体を均一に分布させる。液体は、初め、トレーデッキ24上の全てのカンよりもゾーン56aのカン40にだけ分布されるので、低流速の液体が蒸気流に流出し上位のトレー22に運ばれることはほとんどない。代わりに、液体が、その他のゾーン54bおよび54cのカン40中で蒸気流と相互作用するために、結合したトレーデッキ24を横切って流れ、次いで、下位のトレー22に運び込まれるために降水管28に流入する可能性がある。
【0025】
好ましくは、ワイヤ54a‐cは、各ゾーン56a‐cのカン40のいくつかまたは全ての壁42から下流に予め選択された距離だけ離間される。ワイヤ54a‐cとカン40との間のこの距離は、デッキ表面24上の液体を、カン40の全周囲の周りを循環させて、カン40の全周囲に配置された注入口開口50からカン40に流入させる。図示された実施形態においては、ワイヤ54a‐cは、ワイヤ54a‐cがカン40の下流側から均一な距離を開けるように、カン40の外形が一致する半球状のセグメント58を含む。
【0026】
蒸気流の一部と共にカン40の壁42から液体を排出させる排出開口52は、各カン40の完全にまたは主に下方に、さらに、隣接するワイヤ54a、54b、または54cの上端の上に配置される。排出開口52は、液体が下流ゾーン56bまたは56c中のトレーデッキ24上に下降する前に、開口52を通ってカン40から排出される液体が、隣接するワイヤ54a、54b、および54cを超えて蒸気流によって運びこまれるように構成させる。結果として、開口52を通って各カン40から排出される液体のほとんどまたは全ては、液体が排出されたカン40に再循環して戻ることが可能な状態を、隣接するワイヤ54bまたは54cによって閉塞される。ワイヤ54a‐cは、液体の下方への下降中、排出される液体が結合したワイヤ54a、54b、または54cの上端を空隙にするために、隣接するカン40の十分近くに配置しなければならない。同時に、ワイヤ54a‐54cは、トレーデッキ24上の液体を、カン40の全周囲の周りを循環させるために、隣接するカン40から十分に距離を離して配置しなければならない。
【0027】
ワイヤ54a‐cおよびカン40の下流側の開口52の配置は、特定のカン40から排出される液体が、液体が排出されたカン40と同じゾーン56a、56b、または、56cの同じカン40または他のカン40に再循環させる機会を減らすために役立つ。液体は、従って、より統一された方法でデッキ24を横切って移動させることも可能であり、それによって、トレーデッキ24上の物質移動および/または熱交換の効果を増大させる。
【0028】
図3および図4にベストモードを示すように、はねかけ壁60は、トレーデッキ24上および上空の液体の再循環を抑制するためのさらなる手段として、液流の下流側方向を通常横切るように伸びるバリアを形成するために、各ゾーン56a‐c内で横側方向に隣接するカン40の間と、シェル12および隣接するカン40の間とに伸びる。はねかけ壁60は、カン40の壁より低い高さの壁をトレーのパフォーマンスに関与しない形態においては用いてもよいが、カン40の壁と略同じ高さを有する。排出開口52を通ってカン40に排出される液体は、はねかけ壁60によって、前記下流方向とは反対側の上流方向に移動させることを閉塞され、それによって、液体が排出される同じカン、または、液体が排出されたカン40と同じ領域56a、56b、または56c中の他のカン40に再循環することを妨げる。各はねかけ壁60の低端は、トレーデッキ24上に配置され、また、トレーデッキ24上の液体を40のカン40の全周囲の周りを循環させるために、切り抜き61(図5)が設けられる。
【0029】
下向きの縁リング62は、壁42に沿ってカン40の上部から排出される液体が、縁リング62によってトレーデッキ24に戻るように再度方向付けられるように、各カン40の上部にも配置される。縁リング62は、結合するカン40の壁42の内側に向かって配置される内壁64、壁42の上端にわずかに離間して配置された婉曲した上部切片66、および、カン40の壁42の外側に配置される外壁68を有する。リング62は、壁42の上端から上側に向かい、かつ、縁リング60の上部切片64中のスロット72で受容されるタブ70によって固定される。
【0030】
カラム10の使用中、液体流が注入口ワイヤ38を溢れるレベルに到達するまで、液体流を蓄積するトレーデッキ12の注入口領域36上に導入される。液体は、次いで、ゾーン56a内に配置されるカン40まで液体が存在する第1ゾーン56a中に流入する。あるいは、注入口ワイヤ38は省力し、かつ、液体が注入口領域36から第1領域56a中に向かって流れても良い。ワイヤ54aは、液体がカン40の壁42の注入口開口50を通ってカン40に流入るために十分な高さに届くまで、ゾーン56a中のトレーデッキ24上に液体を蓄積させる。カン40に入る液体は、トレーデッキ24上の蒸気開口44を通ってカン40に入る蒸気流によって拾い上げられる。旋回翼46は、カン40中の蒸気および液体の本質的な混合を引き起こすために、蒸気および液体に対して遠心力を利用した旋回動力を付与する。液体に作用する遠心力は、液体が壁42中の排出開口52に逢着するまで、液体が上昇する壁42の内側表面に対して液体を投げつける。液体は、排出開口52を通って蒸気流の一部によって運び込まれる。排出開口52を通って排出される液体流および蒸気流の運動は、隣接するワイヤ54aまたは54b上と、下流のゾーン56bまたは56c中のトレーデッキ24上とに、液体を運び込むために十分である。蒸気流の残余は、カン40の開口の上部、または、カン40の壁42の上部分に設けられた開口を通って排出され、上位のトレー22のトレーデッキ24中の蒸気開口44を通って上昇する。上位のトレー22上の蒸気開口44は、蒸気が蒸気開口44中に向かって上昇することができるように、下位のトレー22上のカン40と並べられても良いし、あるいは、蒸気開口44は、蒸気が蒸気開口44に入る以前に予め選択された距離横方向に移動するように、カン40に偏っていてもよい。液体が壁42に対して上昇する際に、排出開口52を回避する液体は、縁リング62によって取り込まれ、かつ、トレーデッキ24の下方に向かう。
【0031】
ゾーン56bに運び込まれる液体は、ワイヤ54bの結果としてトレーデッキ25上に蓄積し、上述と同様の仕様において、蒸気流との相互作用のために、入口開口50を通ってゾーン56b中のカン40に入る。液体は、次いで、連続するゾーン56c、および、同様の仕様で設けられた追加領域に進行し、さらに、下位のトレー22に対して下方への通過のために降水管28の注入口30に入る。
【0032】
ワイヤ54a‐cは、トレーデッキ24上の液体を多数のゾーン56a‐cのそれぞれにおけるカン40のグループに、連続的に運び込む。この仕様においては、液体は、連続的に最小限のカン40に存在し、これによって、特に低液流速の蒸気流中において、液体の不望な同調の機会を減少させる。ワイヤ54a‐cは、カン40の下流側に優位または完全に配置される排出開口52との組み合わせにおいて、液体をカン40まで再循環させることも減少させ、これによって、トレーデッキ24上の、トレーを横切る液体のよりプラグ状の流れ、液体および蒸気間のさらに効果的な物質移動および/または熱交換を確実にしている。
【0033】
沢山の可能な実施形態が、本発明の範囲を逸脱せず、本発明によって作成されるように、ここに述べるまたは添付の図面に示される全ての事項は、実例として理解されるためのものであり、限定的な文章ではないと解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラム中の流体流間の物質移動および/または熱交換を促進するためにカラム中で用いる十字流トレーであって、
全体に平らなトレーデッキと、
液体が前記トレーデッキ上に導かれるように前記トレーデッキ上に配置される注入口領域と、
前記液体が前記注入口領域から前記トレーデッキに沿って下流方向に流れた後に、前記トレーデッキから液体を移動させるために、前記トレーデッキ上に注入口開口を有する降水管と、
蒸気の通路を前記開口から前記トレーデッキを通って上向きにさせるための前記トレーデッキの複数の蒸気開口と、
前記トレーデッキ上に配置され、かつ、前記トレーデッキを通過する前記蒸気が自身の内部を上昇するように、前記蒸気開口を取り囲む壁を有する複数のカンと、
前記カン中を上昇する前記蒸気に対して旋回動力を付与するために配置される回旋翼と、
前記トレーデッキから前記カンに液体を入れるための前記カンの前記壁の注入口開口と、
前記カン内の旋回動力で上昇する前記蒸気と相互作用した後、前記カンに液体を排出させるために、前記カンの前記壁の前記注入口開口の上に配置される排出開口と、
前記トレーデッキ上の第1ゾーンの前記カンの第1グループと、前記トレーデッキ上の第2ゾーンの前記カンの第2グループとの間に配置されるワイヤと、
で構成され、
前記カンの第1グループは、前記トレーデッキ上の第1ゾーンに配置され、かつ、前記カンの第2グループは、前記トレーデッキ上の第2ゾーンに配置され、前記第2ゾーンは、前記第1ゾーンから下流方向に配置されることを特徴とする十字流トレー。
【請求項2】
前記ワイヤは、前記カンの外形に一致する半球の切片を含み、前記トレーデッキ上の液体を前記カンの周りに蓄積させるために前記下流方向において前記カンから均一に距離を空けて配置される請求項1に記載の十字流トレー。
【請求項3】
前記ワイヤは、前記カンの前記壁中の前記注入口開口より高いレベルに配置された上端を有する請求項2に記載の十字流トレー。
【請求項4】
前記ワイヤの上端は、前記カンの前記壁中の排出開口より低いレベルに配置される請求項3に記載の十字流トレー。
【請求項5】
同数のカンが、前記カンの第1グループおよび前記カンの第2グループに存在する請求項1に記載の十字流トレー。
【請求項6】
異なる数のカンが、前記カンの第1グループおよび前記カンの第2グループに存在する請求項1に記載の十字流トレー。
【請求項7】
前記排出開口は、前記排出口から前記カンに排出させる液体が前記トレーデッキに戻る前に前記ワイヤを超えて前記下流方向に運び込まれるように、前記下流方向に面する前記カンの第1グループ中の前記カンの下流側上の大部分または全体に配置させる請求項1に記載の十字流トレー。
【請求項8】
前記第2ゾーンの前記カンの第2グループから前記下流方向に配置される前記ワイヤのうちの第2のワイヤを含む請求項7に記載の十字流トレー。
【請求項9】
前記排出開口は、前記排出開口から前記カンに排出される液体が前記トレーデッキに戻る前に前記第2のワイヤを超えて前記下流方向に運び込まれるように、前記下流方向に面する前記カンの第2グループ中の前記カンの下流側上の大部分または全体に配置される請求項8に記載の十字流トレー。
【請求項10】
前記排出開口から前記カンに排出される前記液体が前記下流方向と反対の上流方向に運び込まれることを妨げるために、隣接するカンの間に伸びるはねかけ壁を含む請求項1に記載の十字流トレー。
【請求項11】
前記はねかけ壁は、前記カンの壁と略同じ高さを有する請求項10に記載の十字流トレー。
【請求項12】
カラム中の流体流間の物質移動および/または熱交換を促進するカラムであって、
開口内部領域を規定する直立したシェルと、
前記シェルの開口内部領域中で垂直方向に離間した関係で配置される複数の十字流トレーと、
で構成され、
前記十字流トレーのそれぞれが、
全体に平らなトレーデッキと、
液体が前記トレーデッキ上に導かれるように前記トレーデッキ上に配置される注入口領域と、
前記液体が前記注入口領域から前記トレーデッキに沿って下流方向に流れた後に、前記トレーデッキから液体を移動させるために、前記トレーデッキ上に注入口開口を有する降水管と、
蒸気の通路を前記開口から前記トレーデッキを通って上向きにさせるための前記トレーデッキの複数の蒸気開口と、
前記トレーデッキ上に配置され、かつ、前記トレーデッキを通過する前記蒸気が自身の内部を上昇するように、前記蒸気開口を取り囲む壁を有する複数のカンと、
前記カン中を上昇する前記蒸気に対して旋回動力を付与するために配置される回旋翼と、
前記トレーデッキから前記カンに液体を入れるための前記カンの前記壁の注入口開口と、
前記カン内の旋回動力で上昇する前記蒸気と相互作用した後、前記カンに液体を排出させるために、前記カンの前記壁の前記注入口開口の上に配置される排出開口と、
前記トレーデッキ上の第1ゾーンの前記カンの第1グループと、前記トレーデッキ上の第2ゾーンの前記カンの第2グループとの間に配置されるワイヤと、
で構成され、
前記カンの第1グループは、前記トレーデッキ上の第1ゾーンに配置され、かつ、前記カンの第2グループは、前記トレーデッキ上の第2ゾーンに配置され、前記第2ゾーンは、前記第1ゾーンから下流方向に配置されることを特徴とするカラム。
【請求項13】
前記ワイヤは、前記カンの外形に一致する半球の切片を含み、前記トレーデッキ上の液体を前記カンの周りに蓄積させるために前記下流方向に前記カンから均一に距離を空けて配置される請求項12に記載のカラム。
【請求項14】
前記ワイヤは、前記カンの前記壁中の前記注入口領域より高いレベルに配置された上端を有する請求項13に記載のカラム。
【請求項15】
前記ワイヤの上端は、前記カンの前記壁の排出開口より低いレベルに配置される請求項14に記載のカラム。
【請求項16】
同数のカンが、前記カンの第1グループおよび前記カンの第2グループに存在する請求項12に記載のカラム。
【請求項17】
異なる数のカンが、前記カンの第1グループおよび前記カンの第2グループに存在する請求項12に記載のカラム。
【請求項18】
前記排出開口は、前記排出開口から前記カンに排出される液体が前記トレーデッキに戻る前に前記ワイヤを超えて前記下流方向に運び込まれるように、前記下流方向に面する前記カンの第1グループ中の前記カンの下流側上の大部分または全体に配置させる請求項12に記載のカラム。
【請求項19】
前記第2ゾーンの前記カンの第2グループから前記下流方向に配置される前記ワイヤのうちの第2のワイヤを含む請求項18に記載のカラム。
【請求項20】
前記排出開口は、前記排出開口から前記カンに排出される液体が前記トレーデッキに戻る前に前記第2のワイヤを超えて前記下流方向に運び込まれるように、前記下流方向に面する前記カンの第2グループ中の前記カンの下流側上の大部分または全体に配置される請求項19に記載のカラム。
【請求項21】
前記排出開口から前記カンに排出される液体が前記下流方向と反対の上流方向に運び込まれることを妨げるために、隣接するカンの間に伸びるはねかけ壁を含む請求項12に記載のカラム。
【請求項22】
前記はねかけ壁は、前記カンの壁と略同じ高さを有する請求項21に記載のカラム。
【請求項23】
自身の開口内部領域内において垂直方向に離間した関係で配置される複数の十字流トレーを含むカラム内の蒸気および液体の相互作用を促進する方法であって、
前記十字流トレーのそれぞれは、複数のカンが配置されたトレーデッキを有し、
前記カンは、トレーデッキ中の蒸気開口を取り囲む壁を有し、
前記カンの第1グループは、前記トレーデッキの第1ゾーンに配置され、かつ、前記カンの第2グループは、前記トレーデッキの第2ゾーンに配置され、
前記第2ゾーンは、前記第1ゾーンより前記下流方向に配置され、
さらに、ワイヤは、前記トレーデッキ上の第1ゾーンの前記カンの前記第1グループと前記トレーデッキ上の第2ゾーンの前記カンの前記第2グループとの間に配置され、
前記トレーデッキの注入口領域上に液体を導入し、さらに、前記液体を前記トレーデッキ上の下流方向に流すステップと、
前記液体が前記カンの第1グループの壁に設けられた注入口開口から第1ゾーンのカンの第1グループに入るために十分なレベルに到達するまで、前記第1ゾーン内のトレーデッキ上に前記液体を蓄積させるためにワイヤを用いるステップと、
液体および蒸気間で物質移動および/または熱交換を引き起こす旋回動力とともに、前記カン内で上昇する蒸気とカンの前記第1グループに入る液体とを混合するステップと、
カンの第1グループの壁に設けられた排出開口を通って前記カンの第1グループ内の蒸気と混合された液体を方向づけるステップと、
液体が前記カンの第2グループの壁に設けられた注入口開口から第2ゾーン内の前記カンの第2グループに入るために十分なレベルに到達するまで、前記第2ゾーン内のトレーデッキ上に前記液体を蓄積させるステップと
旋回動力とともに、前記カンの内部で上昇する蒸気と前記カンの第2グループに入る液体とを混合するステップと、
カンの第2グループの壁に設けられた排出開口から前記カンの第2グループ内部の蒸気と混合された液体を移動させるステップとを有し、
前記排出開口は、前記第2ゾーン内でワイヤおよびトレーデッキを超えて前記液体を方向づけるために配置されることを特徴とする方法。
【請求項24】
前記カンの第2のグループの壁に設けられた排出開口から前記カンの第2グループ内の蒸気と混合された液体を方向づけるステップを含み、
前記排出開口は、前記下流方向に前記液体を方向付けるために配置される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記十字流トレーのうちの一つの前記カンから前記十字流トレーうち上位のトレーまで蒸気を運びこみ、さらに、前記1つの十字流トレーの前記カンの第グループから前記十字流トレーのうちの下位のトレーまで前記十字流トレーのうちの1つの上に前記カンから蒸気を運び、かつ、前記十字流トレーの下位のトレーまで前記1つの十字流トレー上に前記カンの第2グループから排出された液体を運びこむステップを含む請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−500109(P2012−500109A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523139(P2011−523139)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053555
【国際公開番号】WO2010/019669
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(502201217)コック グリッシュ エルピー (2)
【Fターム(参考)】