説明

半導体チップの実装構造、及びその実装方法

【課題】
半導体チップを強固に固定でき、かつ温度変化による応力の影響を低減できる半導体チップの実装構造、及びその実装方法を提供する。
【解決手段】
半導体チップの実装構造は、SiチップやICチップ等の半導体チップ1と、セラミックスや樹脂等から形成された絶縁基板20の一面に金、ニッケル、銅等の薄膜の電極が形成されてなる実装基板2との接合に、エポキシ系樹脂等の高弾性材料の接着剤4を用いるものであり、半導体チップ1の一辺側を高弾性材料の接着剤4により実装基板2に接合することによって半導体チップ1を実装基板2に実装している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板への半導体チップの実装構造、及びその実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体チップの実装構造としては、半導体チップの一辺側を金ワイヤ等から形成したバンプを用いて実装基板に接合することで、半導体チップを実装基板に片持ち保持させたものが提供されている。
【0003】
また、半導体チップの一辺側を上記のようなバンプにより保持するとともに、半導体チップの他辺側をダミーバンプ(特許文献1)や、絶縁性接着剤(特許文献2)で保持することで、半導体チップを実装基板に両持ち保持させたものが提供されている。
【特許文献1】特開平8−298424号公報(第1図)
【特許文献2】特開平9−93073号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような半導体チップと実装基板とはそれぞれ線膨張率が異なるものであるから、温度変化が生じた際には、実装基板に接合された半導体チップは、強制的に実装基板と同一の伸び縮みをさせられることになる。つまり、線膨張率の違いによって実装基板と半導体チップとの間には半導体チップを強制的に伸縮させる応力(界面応力)が生じ、これにより、半導体チップが破壊されるおそれがあった。
【0005】
これに対して上記の前者は、半導体チップを実装基板にバンプにより片持ち保持しているので、このような応力の影響を低減できるものであったが、片持ち保持であるために半導体チップの固定強度が弱く、半導体チップが傾いたりしてその動作に悪影響を及ぼすおそれがあった。一方、上記の後者(特許文献1,2)は、バンプとダミーバンプ(或いは絶縁性接着剤)とによって半導体チップを実装基板に両持ち保持しているので、半導体チップの固定強度は確保できていたが、実装基板の伸縮にともなってバンプとダミーバンプ(或いは絶縁性接着剤)との間の距離が伸縮するため、半導体チップにかかる応力の影響を低減できず、半導体チップの破損や、接合外れ等が生じるおそれがあった。
【0006】
つまり、従来の半導体チップの実装構造では、半導体チップの固定強度の向上と、温度変化による応力の影響の低減とを同時に解決することができなかった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、半導体チップを強固に固定でき、かつ温度変化による応力の影響を低減できる半導体チップの実装構造、及びその実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の半導体チップの実装構造では、半導体チップと、該半導体チップの一辺側を高弾性材料の接着剤により接合する実装基板とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、半導体チップを実装基板に接合する接着剤として高弾性材料のものを用いているので、従来のように単にバンプのみで接合するものに比べて、半導体チップを実装基板に強固に固定することができる。しかも、温度変化が生じた際に、半導体チップと実装基板の線膨張率の相違によって応力が生じたとしても、半導体チップを一辺側で実装基板に強固に固定しているだけなので、このような応力の影響を低減して、半導体チップの破損等を防止することができる。
【0010】
請求項2の半導体チップの実装構造では、請求項1の構成において、半導体チップは、少なくとも他辺側を低弾性材料の接着剤により実装基板に接合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、少なくとも半導体チップの他辺側を低弾性材料の接着剤で実装基板に接合しているので、半導体チップや実装基板に衝撃が加えられたとしても、低弾性材料の接着剤で衝撃を吸収することができ、これにより耐衝撃性が向上する。また、接着剤として低弾性材料のものを使用しているので、半導体チップと実装基板の線膨張率の相違によって応力が生じたとしても、低弾性材料の接着剤が伸びることにより、このような応力による影響を低減することができる。
【0012】
請求項3の半導体チップの実装構造では、請求項2の構成において、実装基板の低弾性材料の接着剤が接合される部位に、スペーサを設けていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、スペーサによって半導体チップの実装基板に対する傾きを補正して、半導体チップが実装基板に対して略平行となるようにすることができ、これにより半導体チップの平行度を確保することができる。
【0014】
請求項4の半導体チップの実装構造では、請求項1乃至3のいずれか1項の構成において、半導体チップと実装基板との接合部位を分割していることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、半導体チップと実装基板との接合部位を分割していることによって、接合部位の接触面積を少なくすることができ、これにより、半導体チップと実装基板の線膨張率の相違によって生じる応力の影響を低減することができる。
【0016】
請求項5の半導体チップの実装方法では、実装基板に、高弾性材料の接着剤、及び低弾性材料の接着剤を塗布する第1の工程と、第1の工程後に半導体チップの一辺側を高弾性材料の接着剤に重複させるとともに、少なくとも他辺側を低弾性材料の接着剤に重複させて、半導体チップを実装基板に配置する第2の工程と、第2の工程後に高弾性材料の接着剤を硬化させて半導体チップの一辺側を実装基板に接合する第3の工程と、第3の工程後に低弾性材料の接着剤を硬化させて半導体チップの少なくとも他辺側を実装基板に接合する第4の工程とを有していることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、高弾性材料の接着剤と低弾性材料の接着剤をそれぞれに適した条件で硬化させることができるので、両接着剤を一括で硬化させるような場合に比べて、両接着剤による接合強度を向上することができる。また、半導体チップの一辺側を高弾性材料の接着剤で実装基板に接合するとともに、少なくとも半導体チップの他辺側を低弾性材料の接着剤で実装基板に接合しているので、従来のように単にバンプのみで接合するものに比べて、半導体チップを実装基板に強固に固定することができ、加えて半導体チップや実装基板に加えられた衝撃を低弾性材料の接着剤で吸収することができるから、耐衝撃性が向上する。さらに、半導体チップと実装基板の線膨張率の相違によって応力が生じたとしても、低弾性材料の接着剤が伸びることにより、このような応力による影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、半導体チップを実装基板に強固に接合することができ、しかも半導体チップと実装基板の線膨張率の相違による応力の影響を低減して、半導体チップの破損等を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態1)
本実施形態の半導体チップの実装構造は、図1(a)に示すように、半導体チップ(ベアチップ)1と、該半導体チップ1の一辺側(図1(a)における左辺側)を高弾性材料の接着材4により接合する実装基板2とからなる。
【0020】
ここで、半導体チップ1は、例えばSiチップやICチップ等の平板状の半導体チップであり、このチップ本体10の一面の一辺側に薄膜の電極11(図2参照)が形成されている。実装基板2は、例えばセラミックスや樹脂等から平板状に形成された絶縁基板20の少なくとも一面に、金又はニッケル又は銅等からなる薄膜の電極21(図2参照)が形成されているものである。また、高弾性材料の接着剤(以下、高弾性接着剤という)4は、例えば、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂であり、弾性率が2000MPa〜8000MPa、線膨張率が30ppm〜70ppmであるものが好ましく、本実施形態では、このような高弾性接着剤4として、弾性率が6800MPa、線膨張率が38ppm、硬化条件が約240℃で5秒であるようなエポキシ系樹脂(松下電工社製のXV5340H(商品名))を用いている。
【0021】
次に、本実施形態の半導体チップの実装構造を得るための実装方法について説明する。本実施形態の半導体チップの実装方法は、いわゆるフリップチップ実装によるものであり、図2に示すように、第1の工程(I)〜第3の工程(III)までの3つの工程からなる。
【0022】
第1の工程(I)は、半導体チップ1の電極11の表面に、例えば金ワイヤ(99%以上、望ましくは99.99%以上の金を含み、直径がφ25μm程度のもの)を用いてバンプ3を形成するバンプ形成工程((a)で示す)と、実装基板2に形成した電極21を含む部位に、アンダーフィル材として高弾性接着剤4を、図1(b)に示すように半導体チップ1の一辺の長さ寸法程度の長尺状に塗布する工程((b)で示す)とからなる。
【0023】
次の第2の工程(II)は、表面にバンプ3が形成された電極11を、実装基板2の高弾性接着剤4が塗布された電極21に対向させるようにして、半導体チップ1を実装基板2上に配置する位置決め工程である。
【0024】
そして、第3の工程(III)は、半導体チップ1を実装基板2に接合する工程であり、ボンディングツールTを用いて、バンプ3に0.98N/bump程度の荷重をかける。このとき同時に、高弾性接着剤4を硬化させる(本実施形態では、約240℃で5秒間加熱する)処理を行う。これにより、半導体チップ1の電極11が実装基板2の電極21にバンプ3を介して電気的に接続されるとともに、半導体チップ1の一辺側が高弾性接着剤4により実装基板2に接合される。
【0025】
以上の工程(I)〜(III)を経て、図1に示す本実施形態の半導体チップの実装構造が得られることになる。
【0026】
この本実施形態の半導体チップの実装構造によれば、半導体チップ1を実装基板2に接合する接着剤として比較的硬い高弾性材料の接着剤4を用いているので、半導体チップ1の実装基板2への固定強度が向上し、これにより半導体チップの実装構造が一辺側だけの片持ち保持であっても、従来例のようなバンプのみで片持ち保持させるものに比べて十分な固定強度を得ることができる。しかも、半導体チップ1を一辺側だけで実装基板2に片持ち保持させているものであるから、温度変化が生じた際に半導体チップ1と実装基板2の線膨張率の相違によって応力が生じたとしても、このような応力の影響を低減して、半導体チップの破損等を防止することができる。
【0027】
ところで、半導体チップ1として、図3に示すように、圧力センサや加速度センサ等の検知部12を備えたものを用いることができる。しかしながら、図3に示すように、検知部12を半導体チップ1と実装基板2との接合部位(接着剤により接合されている部位)Aと重複するように配置すると、検知部12が線膨張率の差に起因する応力の影響を受け易くなってしまう。そのため、上記のようなセンサを備えた半導体チップ1を用いる場合は、図4に示すように、検知部12を半導体チップ1の他辺側(右辺側)に配置することで、接合部位Aから離間させるのである。このように、検知部12を接合部位Aから離間させることにより、検知部12への応力の影響を低減させることができる。
【0028】
加えて、検知部12に加わる界面応力を緩和するために、応力緩和構造を半導体チップ1に設けることとしてもよい。このような応力緩和構造は、接合部位Aと検知部12との間に、例えば、図5に示すような半導体チップ1の表裏に貫通する切欠孔13や、図6に示すような溝部14を形成することで得ることができ、このような切欠孔13や溝部14等を形成しておくことによって、温度変化によって応力が生じた際に、切欠孔13や溝部14が形成された部位で応力が発散され、これにより、検知部12への応力の影響を低減することができる。
【0029】
(実施形態2)
本実施形態の半導体チップの実装構造は、高弾性接着剤4に加えて、低弾性材料の接着剤5を用いたことに特徴があり、上記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
半導体チップの実装構造は、図7(a)に示すように、半導体チップ1と、該半導体チップ1の一辺側(図7(a)における左辺側)を高弾性接着材4により接合するとともに、半導体チップ1の他辺側(図7(a)における右辺側)を低弾性材料の接着剤5により接合する実装基板2とからなる。
【0031】
ここで、半導体チップ1は、例えばSiチップやICチップ等の平板状の半導体チップであり、このチップ本体10の一面の一辺側に薄膜の電極11が形成されるとともに、他辺側に電極11と略同形状の薄膜のダミー電極15(図8参照)が形成されている。実装基板2は、例えばセラミックスや樹脂等から平板状に形成された絶縁基板20の一面に、半導体チップ1の電極11に対応する金又はニッケル又は銅等からなる薄膜の電極21、及び半導体チップ1のダミー電極15に対応するダミー電極22が形成されているものである。また、低弾性材料の接着剤(以下、低弾性接着剤という)5は、例えば、シリコン系樹脂等の熱硬化性樹脂であり、弾性率が0.9MPa〜10MPa、線膨張率が160ppm〜300ppmであるものが好ましく、本実施形態では、このような低弾性接着剤5として、弾性率が0.9MPa、線膨張率が300ppm、硬化条件が約150℃で30分であるようなシリコン系樹脂(東レ・ダウコーニング社製のDA6501(商品名))を用いている。尚、高弾性接着剤4は上記実施形態1と同じものを使用している。
【0032】
次に、本実施形態の半導体チップの実装構造を得るための実装方法について説明する。本実施形態の半導体チップの実装方法は、いわゆるフリップチップ実装によるものであり、図8に示すように、第1の工程(I)〜第4の工程(IV)までの4つの工程からなる。
【0033】
第1の工程(I)は、半導体チップ1の電極11の表面にバンプ3、及びダミー電極15の表面にバンプ3と同様なダミーバンプ6を形成するバンプ形成工程((a)で示す)と、実装基板2に形成した電極21を含む部位にアンダーフィル材として高弾性接着剤4を、ダミー電極22を含む部位にアンダーフィル材として低弾性接着剤5を、それぞれ図7(b)に示すように半導体チップ1の一辺の長さ寸法程度の長尺状に塗布するアンダーフィル材塗布工程((b)で示す)とからなる。
【0034】
次の第2の工程(II)は、バンプ3が形成された電極11を高弾性接着剤4が塗布された電極21に対向させるとともに、ダミーバンプ6が形成されたダミー電極15を低弾性接着剤5が塗布されたダミー電極22に対向させて、半導体チップ1を実装基板2上に配置する位置決め工程である。
【0035】
そして、第3の工程(III)は、半導体チップ1と実装基板2とを接合する前期工程であり、ボンディングツールTを用いて、各バンプ3,6に0.98N/bump程度の荷重をかけるとともに、高弾性接着剤4を硬化させる(本実施形態では、約240℃で5秒間加熱する)処理を行う。これにより、半導体チップ1の電極11が実装基板2の電極21にバンプ3を介して電気的に接続されるとともに、半導体チップ1のダミー電極15に形成したダミーバンプ6が実装基板2のダミー電極22上に載置され、同時に半導体チップ1の一辺側が高弾性接着剤4により実装基板2に接合される。
【0036】
最後の第4の工程(IV)は、半導体チップ1と実装基板2とを接合する後記工程であり、低弾性接着剤5を硬化させる(本実施形態では、約150℃で30分間加熱する)処理を行う。これによって、半導体チップ1の他辺側が低弾性接着剤5で実装基板2に接合される。
【0037】
以上の工程(I)〜(IV)を経て、図7に示す本実施形態の半導体チップの実装構造が得られ、本実施形態の実装方法によれば、各接着剤4,5をそれぞれに適した条件で硬化させる処理を行っているので、両接着剤4,5を一括で硬化させるような場合に比べて、各接着剤4,5の接合強度を向上することができる。
【0038】
本実施形態の半導体チップの実装構造によれば、半導体チップ1を実装基板2に接合する接着剤として比較的硬い高弾性材料の接着剤4を用いているので、半導体チップ1の実装基板2への固定強度が向上し、しかも半導体チップ1の他辺側を低弾性接着剤5により実装基板2に接合しているので、固定強度がさらに向上する。加えて、このように半導体チップ1の他辺側を低弾性接着剤5で実装基板2に接合していることによって、半導体チップ1や実装基板2に衝撃が加えられたとしても、柔らかい低弾性接着剤5で上記のような衝撃を吸収することができ、これにより耐衝撃性が向上する。さらに、接着剤として低弾性材料のものを使用しているので、温度変化が生じた際に半導体チップ1と実装基板2の線膨張率の相違によって応力が生じたとしても、低弾性接着剤5が伸びることにより、このような応力による影響を低減することができ、従来例のように半導体チップ1が破損したりすることがなくなり、たとえ応力がかかったとしても、高弾性接着剤4によりバンプ3を覆っているので、バンプ3の接合外れを防止することができる。
【0039】
また、スペーサとしてダミーバンプ6を用いているため、半導体チップ1の実装基板2に対する傾きを補正して、半導体チップ1が実装基板2に対して略平行となるようにすることができ、これにより半導体チップ1の平行度を確保することができる。ところで、このようなスペーサとしては、上記のダミーバンプ6のようなものに限られるものではなく、例えば、図9(a),(b)に示すように、樹脂成形品や金属製品等の半球状のスペーサ7,7等、状況に応じて好適なものを選択して使用することとしても良く、これらによっても半導体チップ1の平行度を確保することができる。
【0040】
一方、本実施形態ではフリップチップ実装を利用したものについて述べたが、このような実装方法としては、フリップチップ実装によるものに限られるものではなく、ワイヤボンディング実装によっても本実施形態の実装構造を得ることができる。ワイヤボンディング実装を利用する場合は、第1の工程(I)と第2の工程(II)を省く代わりに、第3の工程(III)及び第4の工程(IV)を経て、半導体チップ1を高弾性接着剤4と低弾性接着剤5を用いて実装基板2に接合した後に、図10に示すように、半導体チップ1の電極11と実装基板2の電極21とをワイヤWにより電気的に接続すれば良い。尚、フリップチップ実装の代わりにワイヤボンディング実装を利用する点は、上記実施形態1についても同様に行えることは勿論である。
【0041】
(実施形態3)
本実施形態の半導体チップの実装構造は、実装基板2の構成について特徴があり、その他の構成は上記実施形態2と同様であるので、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
つまり、本実施形態においては、図11(a)に示すように、実装基板2の表面に略直方体状の突起部23を形成し、この突起部23の表面に電極21及びダミー電極22をそれぞれ設けているのであり、このような突起部23を形成した実装基板2に、上記実施形態2と同様にフリップチップ実装により半導体チップ1を実装することによって、本実施形態の半導体チップの実装構造が得られる。
【0043】
本実施形態によれば、このように突起部23を設けることによって半導体チップ1と実装基板2との間の距離を上記実施形態2の実装構造よりも広げているので、実装基板2の伸縮の影響が突起部23によって緩和されることになり、これにより温度変化が生じた際に半導体チップ1と実装基板2の線膨張率の相違によって生じる応力の影響を上記実施形態2の実装構造よりも低減することができるようになる。
【0044】
尚、図11(a)では、フリップチップ実装による本実施形態の実装構造の例を示しているが、本実施形態は上記実施形態1,2と同様にフリップチップ実装によるものに限られるものではなく、図11(b)に示すように、ワイヤボンディング実装としてもよく、この場合は、突起部23上に電極21やダミー電極22を設けずに、単に突起部23に半導体チップ1を接着剤4,5で接合した後に、半導体チップ1の電極11と実装基板2の電極21とをワイヤWで電気的に接続すればよい。
【0045】
また、このような突起部23を備えた実装基板2に半導体チップ1を接着剤4,5により接合する際には、図12に示すように、接着剤4,5により突起部23の両側面も覆うように接合すれば、半導体チップ1と実装基板2との接合面積が増加し、半導体チップ1と実装基板2とを強固に接合する(密着力を向上させる)ことができる。
【0046】
(実施形態4)
本実施形態の半導体チップの実装構造は、接着剤4,5と実装基板2との接合部位の構成に特徴があり、その他の構成は上記実施形態2と同様であるので、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施形態の半導体チップの実装構造では、上記実施形態2のように各接着剤4,5をそれぞれ半導体チップ1の一辺の長さ寸法程度の長尺状に実装基板2に塗布するのではなく、図13(b)に示すように、半導体チップ1の一辺側の両隅部に対応する実装基板2の部位にそれぞれ略円形状に高弾性接着剤4,4を塗布するとともに、半導体チップ1の他辺側の両隅部に対応する実装基板2の部位にそれぞれ略円形状に低弾性接着剤5,5を塗布して、半導体チップ1を四隅で実装基板2に接合するようにしている。尚、半導体チップの実装方法については上記実施形態2で述べたようにフリップチップ実装によって行っても良いし、ワイヤボンディング実装によるものでも良い。
【0048】
本実施形態の半導体チップの実装構造によれば、上記実施形態2のように、半導体チップ1の両辺側に、各辺の長さ寸法程度の長尺状に接着剤4,5を塗布するのではなく、半導体チップ1の両辺側の各隅部に略円形状に接着剤4,5を塗布、すなわち、接着剤4,5を2分割するようにして塗布しているので、半導体チップ1と実装基板2との間の接合面積、つまりは接着剤4,5の実装基板との接合部位の面積を小さくすることができる。そのため、温度変化した際に半導体チップ1と実装基板2の線膨張率の相違によって応力が生じたとしても、このような応力の影響を受ける部分が少なくなり、これにより、上記実施形態2の実装構造よりもさらに応力の影響を低減することができる。
【0049】
ところで、本実施形態では、接着剤4,5をそれぞれ2分割して、半導体チップ1を四隅で実装基板2に接合しているが、本実施形態はこのような形態に限られるものではなく、接着剤4,5をさらに複数に分割することとしてもよく、この場合、実施形態2に比べて半導体チップ1と実装基板2との接合面積が小さくなるように分割すればよい。
【0050】
(実施形態5)
上記実施形態4では、図13に示すように、各一対の高弾性接着剤4,4及び低弾性接着剤5,5によって半導体チップ1の四隅を実装基板2に接合しているが、本実施形態では、図14に示すように、半導体チップ1の四隅のうち1つのみを高弾性接着剤4で接合し、残る3つを低弾性接着剤5で接合しているものである。
【0051】
すなわち、本実施形態は、半導体チップ1と実装基板2の接合面積、つまりは接着剤4,5の実装基板2との接合部位の合計面積において、各接着剤4,5が占める割合を、高弾性接着剤4よりも低弾性接着剤5のほうが大きくなるようにしているのである。
【0052】
本実施形態の半導体チップの実装構造によれば、温度変化が生じた際に半導体チップ1と実装基板2の線膨張率の相違によって応力が生じたとしても、低弾性接着剤5を用いていることによって、このような応力の影響を低減することができ、このとき、接着剤4,5の接合部位の合計面積において、応力の影響を低減できる低弾性接着剤5の占める割合を上記実施形態4の実装構造に比べて大きくしているので、さらなる応力の影響の低減を図ることができる。しかも、このように低弾性接着剤5の占める割合を増すことによって、耐衝撃性も向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)は、本発明の実施形態1の半導体チップの実装構造の部分側面図であり、(b)は、同上の部分上面図である。
【図2】同上の実装方法の工程説明図である。
【図3】(a)は、同上の他の部分側面図であり、(b)は、同上の他の部分上面図である。
【図4】(a)は、同上のさらに他の部分側面図であり、(b)は、同上のさらに他の部分上面図である。
【図5】(a)は、同上のさらに他の部分側面図であり、(b)は、同上のさらに他の部分上面図である。
【図6】(a)は、同上のさらに他の部分側面図であり、(b)は、同上のさらに他の部分上面図である。
【図7】(a)は、本発明の実施形態2の半導体チップの実装構造の部分側面図であり、(b)は、同上の部分上面図である。
【図8】同上の実装方法の工程説明図である。
【図9】(a)は、同上の他の部分側面図であり、(b)は、同上の他の部分上面図である。
【図10】同上のさらに他の部分側面図である。
【図11】(a)は、本発明の実施形態3の半導体チップの実装構造の部分側面図であり、(b)は、同上の他の部分側面図である。
【図12】同上のさらに他の要部の部分側面図である。
【図13】(a)は、本発明の実施形態4の半導体チップの実装構造の部分側面図であり、(b)は、同上の部分上面図である。
【図14】(a)は、本発明の実施形態5の半導体チップの実装構造の部分側面図であり、(b)は、同上の部分上面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 半導体チップ
2 実装基板
4 高弾性材料の接着剤
20 絶縁基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、該半導体チップの一辺側を高弾性材料の接着剤により接合する実装基板とからなることを特徴とする半導体チップの実装構造。
【請求項2】
半導体チップは、少なくとも他辺側を低弾性材料の接着剤により実装基板に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの実装構造。
【請求項3】
実装基板の低弾性材料の接着剤が接合される部位に、スペーサを設けていることを特徴とする請求項2に記載の半導体チップの実装構造。
【請求項4】
半導体チップと実装基板との接合部位を分割していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体チップの実装構造。
【請求項5】
実装基板に、高弾性材料の接着剤、及び低弾性材料の接着剤を塗布する第1の工程と、第1の工程後に半導体チップの一辺側を高弾性材料の接着剤に重複させるとともに、少なくとも他辺側を低弾性材料の接着剤に重複させて、半導体チップを実装基板に配置する第2の工程と、第2の工程後に高弾性材料の接着剤を硬化させて半導体チップの一辺側を実装基板に接合する第3の工程と、第3の工程後に低弾性材料の接着剤を硬化させて半導体チップの少なくとも他辺側を実装基板に接合する第4の工程とを有していることを特徴とする半導体チップの実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−202996(P2006−202996A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13334(P2005−13334)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】