半導体デバイス製造工程の汚染評価方法
【課題】製造装置に加工を施すことなく、半導体デバイス製造工程での汚染微粒子の発生度合いを評価できるようにする。
【解決手段】汚染評価方法には、半導体デバイス製造工程中の所定の工程の前の段階でワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第1測定ステップST2と、前記所定の工程を通されたワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第2測定ステップST3と、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3での測定結果に基づいて、前記所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する評価ステップST4と、が含まれている。
【解決手段】汚染評価方法には、半導体デバイス製造工程中の所定の工程の前の段階でワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第1測定ステップST2と、前記所定の工程を通されたワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第2測定ステップST3と、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3での測定結果に基づいて、前記所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する評価ステップST4と、が含まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造工程の汚染評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、シリコンウエハ等の基板表面にレーザ光を照射し、基板表面の汚染微粒子による散乱光から生ずる散乱リングの歪みを観察することによって、基板表面の汚染状況を検出する技術が知られている。汚染微粒子によるレーザ散乱光を検出するレーザ散乱光検出法は、例えば下記非特許文献1にも開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2及び3には、チャンバー内の気体中のパーティクルをパーティクル計測装置で計測する技術が開示されている。例えば、特許文献2では、チャンバー内の気体を排気する排気管にパーティクル計測装置を設置し、排気管内を流れる気体中のパーティクル数を計測するようにしている。
【0004】
また、下記特許文献4には、端面発塵抑制処理を施したウエハの表面パーティクル数を、当該処理を施していないウエハの表面パーティクル数と比較することで、当該処理の効果を検証する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−248617号公報
【特許文献2】特開2001−59808号公報
【特許文献3】特開2005−317900号公報
【特許文献4】特開2003−23052号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「次世代半導体デバイス製造を支える最先端半導体ウエーハ表面洗浄技術」、ソニー半導体技術情報誌CX−PAL vol.60(2004年4月号)、「平成20年10月16日検索」、インターネット<URL;http://www.sony.co.jp/Products/SC-HP/cx_pal/vol60/pdf/featuring.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したレーザ散乱光検出法によって基板表面の汚染状況を検出する方法では、基板表面に付着した汚染微粒子の測定をすることはできるが、製造工程の汚染状況、すなわち、製造工程で発生する汚染微粒子の発生度合いを評価することはできない。
【0008】
また、特許文献2及び3に開示された計測方法では、気体中のパーティクル数を直接計測することができるが、チャンバー等にパーティクル計測装置を設置するための加工を施さなくてはならないという問題がある。
【0009】
また、特許文献4に開示された方法では、端面発塵抑制処理の有無による効果の差を検証できるだけであり、製造工程での汚染微粒子の発生度合いの評価をすることはできない。
【0010】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造装置に加工を施すことなく、半導体デバイス製造工程での汚染微粒子の発生度合いを評価できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体デバイス製造工程中の所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する方法であって、前記所定の工程の前の段階でワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第1測定ステップと、前記所定の工程を通された前記ワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第2測定ステップと、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでの測定結果に基づいて、前記所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する評価ステップと、が含まれている半導体デバイス製造工程の汚染評価方法である。
【0012】
本発明では、半導体デバイス製造工程中の所定の製造工程における前段階と後段階のそれぞれにおいて、ワーク表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定し、その比較結果から前記所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するので、チャンバー等に加工を施すことなく製造工程における汚染度合いを評価することができる。
【0013】
ここで、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、前記汚染微粒子に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するようにしてもよい。
【0014】
この態様では、汚染微粒子の測定を行う第1測定ステップ及び第2測定ステップにおいて、プローブの先端部の振動変化から汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するので、レーザ照射装置等の大型で高価な装置を使うことなく汚染微粒子を測定することができる。
【0015】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップには、ワーク表面が露点以下になるようにワーク雰囲気の冷却を行う結露誘起ステップと、プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、ワーク表面上の露に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記露の形状に関する特性値を導出する露形状導出ステップと、経過時間に伴う前記露の形状に関する特性値の変化割合に基づいて、結露の核となる汚染微粒子の形状に関する特性値を測定する導出ステップと、が含まれていてもよい。
【0016】
この態様では、汚染微粒子の形状を直接測定するのではなく、汚染微粒子を核として成長した露の形状に関する特性値の変化割合に基づいて汚染微粒子の形状を導出するので、汚染微粒子の粒径が30nm以下の場合であっても、粒径が30nmを超える露について測定することで、汚染微粒子の粒径を測定することが可能となる。このため、第1測定ステップ及び第2測定ステップでの測定精度を向上することができる。
【0017】
また、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、粒径30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を導出可能であることが好ましい。
【0018】
この態様において、前記第1測定ステップの前に、粒径が30nmを超える汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能な方法で、前記ワークの表面の汚染微粒子を測定する予備測定ステップと、前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較する比較ステップと、が含まれているのが好ましい。
【0019】
この態様では、ワーク表面の汚染微粒子のうち粒径が30nmを超える汚染微粒子については、予備測定ステップと第1測定ステップの双方において形状及び分布に関する特性値が得られ、比較ステップにおいて両ステップでの測定結果を比較するので、粒径が30nm以下の汚染微粒子についても測定が可能な第1測定ステップでの測定精度の検証を、粒径30nm超の汚染微粒子について行うことができる。
【0020】
この態様において、前記比較ステップにおいて、前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値との相関関係を導出するのが好ましい。
【0021】
また、前記予備測定ステップで得られた測定値が所定の条件を満足しない場合には、当該測定値が得られたワークを前記第1測定ステップでの測定対象から除外するのが好ましい。
【0022】
この態様では、汚染微粒子が所定の条件を満足する形状及び分布に関する特性値を示したワークによって、前記所定の工程での汚染度合いを評価することができるので、評価精度が低下することを抑止することができる。
【0023】
また、前記第1測定ステップでは、前記ワークとして、表面の汚染度合いが既知の評価用ワークを使用してもよい。この態様では、評価精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、製造装置に加工を施すことなく、半導体デバイス製造工程での汚染微粒子の発生度合いを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体デバイス製造工程の汚染評価方法を概略的に示すフロー図である。
【図2】本発明の実施形態において、前記汚染評価方法の第1測定ステップ及び第2測定ステップで使用される測定装置を示す図である。
【図3】前記測定装置の変位測定部及びZ軸変位機構の構成を説明するための概略図である。
【図4】前記測定装置のX軸及びY軸変位機構の構成を説明するための概略図である。
【図5】前記測定装置の制御系統を示すブロック図である。
【図6】プローブと汚染微粒子又はワークとの接触又は近接の検出を説明するための特性図である。
【図7】本発明の第2実施形態において、前記汚染評価方法の第1測定ステップ及び第2測定ステップで使用される測定装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る測定装置の制御系統を示すブロック図である。
【図9】表示部に表示された露の画像の一例を説明するための図である。
【図10】図9におけるX−X線における露の形状を説明するための概念図である。
【図11】図7におけるXI−XI線における露の形状を説明するための概念図である。
【図12】導出処理部の行う処理を説明するための図である。
【図13】第2実施形態の変形例に係る測定装置の概略構成を示す図である。
【図14】その他の実施形態による融合成長データ除外処理を説明するための図である。
【図15】本発明のその他の実施形態における光学系を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態に係る半導体デバイス製造工程の汚染評価方法を概略的に示す図である。この半導体デバイス製造工程の汚染評価方法(以下、単に汚染評価方法)は、半導体デバイスを製造するための各種工程のうちの所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するための方法である。この汚染評価方法には、予備測定ステップST1と、第1測定ステップST2と、第2測定ステップST3と、評価ステップST4と、比較ステップST5とが含まれている。
【0028】
第1測定ステップST2は、前記所定の工程に導入される前のワークの表面に付着している汚染微粒子の特性値を測定するステップであり、第2測定ステップST3は、当該所定の工程を通過したワークの表面の汚染微粒子の特性値を測定するステップである。第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3は、何れもシアフォース法(詳細は後述する)によって汚染微粒子の特性値を測定する。また、評価ステップST4は、第1測定ステップST2で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、第2測定ステップST3で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較し、この比較結果に基づいて、前記所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するステップである。ワークとしては、例えば半導体ウエハを例示することができる。形状及び分布に関する測定値とは、汚染微粒子の形状、汚染微粒子の分布等に関する特性値であり、例えば粒径の平均値、粒径の分散、微粒子の分布密度、微粒子の分布状況等を例示することができる。
【0029】
予備測定ステップST1は、第1測定ステップST2で測定対象となるワークについて、第1測定ステップST2に先立ち、第1測定ステップST2での測定方法とは異なる方法でワーク表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するステップである。また、比較ステップST5は、第1測定ステップST2による測定結果の検証を行うためのステップであり、予備測定ステップST1で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、第1測定ステップST2で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較する。
【0030】
図2は、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3においてシアフォース法によって汚染微粒子の特性値を測定するために使用される汚染微粒子測定装置(以下、単に測定装置という)10を示している。この測定装置10は、ワーク表面に付着した汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能なものであり、装置本体12と試験制御部14とを備えている。装置本体12は、ワークWをセットするためのワーク台16と、プローブ18と、プローブ18の先端部を振動させる励振部20と、直交3軸方向においてワーク台16に対するプローブ18の相対的位置を変えさせる変位機構22と、を備えている。
【0031】
変位機構22は、図3及び図4に示すように、ワーク台16を水平面内のX軸方向に移動させるためのX軸変位機構23と、ワーク台16を水平面内のY軸方向(X軸方向と直交する方向)に移動させるためのY軸変位機構24と、プローブ18を垂直方向に移動させるためのZ軸変位機構25とを有する。
【0032】
Z軸変位機構25は、Z軸ステージ27を基台29に固定されたスタンド30に対して垂直方向(Z軸方向)に移動させるためのものであり、粗調整機構25aと微調整機構25bとを有する。粗調整機構25aは、例えば、モータ駆動方式の駆動機構であり、Z軸ドライバ32(図5参照)によって駆動される。図略のモータを駆動させることでZ軸ステージ27をZ軸方向に移動させる。微調整機構25bは、PZT系圧電セラミクスを用いた圧電アクチュエータを有しており、この圧電アクチュエータは、例えば高電圧増幅器によって構成されるZ軸ドライバ32によって駆動される。この圧電アクチュエータは、例えば送り幅を100nmとして駆動させることにより、nm精度で変位量を制御することができる。
【0033】
Y軸変位機構24は、Y軸ステージ36をY軸方向に移動させるための機構であり、図4に示すように、粗調整機構24aと微調整機構24bとを有する。粗調整機構24aは、例えば、モータ駆動方式の駆動機構であり、Y軸ドライバ33(図5参照)によって駆動される。図略のモータを駆動させることでY軸ステージ36をY軸方向に移動させる。微調整機構24bは、PZT系圧電セラミクスを用いた圧電アクチュエータを有している。この圧電アクチュエータは、基台29に設置されており、例えば高電圧増幅器によって構成されるY軸ドライバ33によって駆動される。圧電アクチュエータを駆動することにより、Y軸ステージ36をY軸方向に移動させることができる。この圧電アクチュエータは、例えば送り幅を100nmとして駆動させることにより、nm精度で変位量を制御することができる。
【0034】
X軸変位機構23は、X軸ステージであるワーク台16をX軸方向に移動させるための機構であり、粗調整機構23aと微調整機構23bとを有する。粗調整機構23aは、例えば、モータ駆動方式の駆動機構であり、X軸ドライバ34(図5参照)によって駆動される。図略のモータを駆動させることでワーク台16をY軸ステージ36に対してX軸方向に移動させる。微調整機構23bは、PZT系圧電セラミクスを用いた圧電アクチュエータを有している。この圧電アクチュエータは、Y軸ステージ36に設置されており、例えば高電圧増幅器によって構成されるX軸ドライバ34によって駆動される。圧電アクチュエータを駆動することにより、Y軸ステージ36上でワーク台16をX軸方向に移動させることができる。これにより、ワーク台16は、基台29に対してX軸方向及びY軸方向の任意の位置に移動可能である。この圧電アクチュエータは、例えば送り幅を100nmとして駆動させることにより、nm精度で変位量を制御することができる。
【0035】
前記プローブ18は、図2に示すように、下方に向かって延びるように上端部で前記Z軸ステージ27に固定されている。プローブ18の下端部(先端部)は、先鋭化されていて、容易に撓む。
【0036】
前記励振部20は、水晶振動子55を有する。水晶振動子55の形状は限定されるものではないが、本実施形態では、例えば音叉のように2つの対称な突起を有する音叉型の水晶振動子55として構成されている。水晶振動子55は、振動子固定部57を介してZ軸ステージ27に固定されている。そして、水晶振動子55の突起にプローブ18が接触している。
【0037】
水晶振動子55の2つの突起間の間隔は、例えば約0.2mmであり、プローブ18の水晶振動子55に接触する部分での直径は、例えば125μmである。プローブ18は、例えば光ファイバから作ることができ、例えば直径が約10μmのコアと、直径が約125μmのクラッドからなる。光ファイバを溶融延伸することにより、先端部が尖鋭化され、先端部の直径は例えば100nm以下にテーパ状に加工されている。
【0038】
水晶振動子55は2つの電極55a,55bを備えており、一方の電極55aは、試験制御部14に含まれる電流検出器58(図5参照)に接続され、他方の電極55bは試験制御部14に含まれる信号発生器56(図5参照)に接続されている。電極55a,55b間に交流信号、例えば正弦波信号を印加すると、水晶振動子55の有する圧電効果によって水晶振動子55の突起が振動する。水晶振動子55を振動させると、これに接触しているプローブ18もあわせて振動させることができる。特に水晶振動子55の共振周波数又はその近傍の周波数をもつ信号を印加したときに振幅は大きくなる。
【0039】
図5に示すように、電流検出器58には、信号発生器56の出力信号の一部を分岐して得られる参照信号が接続される。電流検出器58から出力された信号は、後述の演算装置59に入力される。
【0040】
前記試験制御部14は、汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を演算によって導出可能なものであり、図5に示すように、前記X軸ドライバ34と、前記Y軸ドライバ33と、前記Z軸ドライバ32と、前記信号発生器56と、前記電流検出器58と、変位測定部61と、演算装置59と、入力装置70と、出力装置71とを備えている。
【0041】
変位測定部61は、ワーク台16に対するプローブ18の相対変位量を測定するものである。変位測定部61は、直交3軸方向におけるワーク台16に対するプローブ18の相対変位量を測定するためのものであり、Y軸ステージ36に対するワーク台16のX軸方向の変位量を測定するX軸方向測定部61aと、基台29に対するY軸ステージ36のY軸方向の変位量を測定するY軸方向測定部61bと、基台29に対するプローブ18のZ軸方向変位を測定するZ軸方向測定部61cと、を有する。
【0042】
X軸方向測定部61aは、超精密測長器によって構成されており、図3に示すように、Y軸ステージ36に固定された固定側部61eと、ワーク台16に固定された遊走側部61fとからなり、X軸方向におけるこれらの相対変位量からX軸方向の移動量を測定する。Y軸方向測定部61b及びZ軸方向測定部61cも同様に超精密測長器によって構成されている。すなわち、Y軸方向測定部61bは、基台29に固定された固定側部61gと、Y軸ステージ36に固定された遊走側部61hとを有する。またZ軸方向測定部61cは、スタンド30に固定された固定側部61iと、Z軸ステージ27に固定された遊走側部61jとを有する。
【0043】
入力装置70には、キーボード、外部メモリ等が含まれ、入力装置70は、演算装置59に対する指令を入力可能に構成されている。出力装置71には、表示部、プリンタ等が含まれ、出力装置71は、演算装置59による演算結果等を出力可能に構成されている。
【0044】
演算装置59は、CPU、ROM、RAM等からなり、ROMに格納されたプログラムを実行することにより所定の機能を発揮する。演算装置59の機能には、少なくとも、相対変位量導出部63と、判定部60と、測定部62と、解析部66と、プローブ制御部67と、が含まれる。
【0045】
相対変位量導出部63は、変位測定部61の測定結果を用い、ワーク台16を基準とするプローブ18の相対変位量を導出する。プローブ制御部67は、相対変位量導出部63によって導出されたプローブ18の相対変位量に基づいて、X軸、Y軸、Z軸ドライバ34,33,32に信号を出力する。これにより、プローブ18は、目標位置に正確に制御される。
【0046】
判定部60は、プローブ18の先端部の振動に応じてプローブ18の先端部とワークW又は汚染微粒子との接触又は近接を判定する。測定部62は、判定部60によるプローブ18とワークW又は汚染微粒子との接触又は近接の有無及び相対変位量導出部63によって測定された相対変位量に基づいて、ワーク表面上の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する。なお、上記の「接触」とは、プローブ18の先端部が実際に汚染微粒子等に接触した場合をいい、「近接」とは、実際には汚染微粒子等に接触していないものの、プローブ18の先端部が、汚染微粒子等との相互作用によってプローブ18の振幅が変化する程度に汚染微粒子等と所定範囲内まで近接した場合をいう。
【0047】
判定部60は、プローブ18の先端部の振幅の変化からプローブ18とワークW又は汚染微粒子との接触又は近接を判定する。その原理を図6を参照しながら説明する。プローブ18の先端部が被測定ワークWの表面から十分はなれているときには、プローブ18が振動するときの振幅は一定値を保つ(図6中のA領域)。一方、プローブ18の先端部が汚染微粒子の表面に接触又は所定範囲内に近接するとプローブ18の振幅は減衰する(図6中のB領域)。これは、プローブ18の先端部が汚染微粒子の表面からせん断力(シア・フォース)を受けるためと解される。この振幅の減衰は非常に急峻であるため、この振幅変化の検出により、プローブ18先端部と汚染微粒子の上面との接触又は近接を検出することができる。さらに、プローブ18の先端部がワークWの表面に接触又は所定範囲内に近接するとプローブ18の振動の振幅はさらに減衰する(図6のD領域)。この振幅減衰まではプローブ18の振幅は一定値を保つ(図6中のC領域)。このD領域での振幅減衰も非常に急峻であるので、この振幅変化の検出により、プローブ18先端部とワーク表面との接触又は近接を検出できる。ただし、C領域では、プローブ18が汚染微粒子の中に入り込んだ状態となるため、実際の測定では、プローブ18を保護する観点から、C領域に入ったことが検知されたときに、プローブ制御部67がプローブ18を戻すように制御を行うようにしてもよい。
【0048】
測定部62は、B領域からD領域までのプローブ18の変位量から汚染微粒子の高さを導出する。また測定部62は、X軸方向及びY軸方向における複数個所で汚染微粒子の高さ(又は上面位置)を測定し、これらを連続点として測定結果を統計処理することにより汚染微粒子の形状を導出する。汚染微粒子の形状を導出するには、例えば、接触又は近接が検知されたときの座標データ(x、y、z)を順次記憶していき、これら座標データから回帰曲面を演算して粒径を導出することが可能である。そして、ワークWの表面の所定範囲に亘って多数の汚染微粒子の検出を行うことにより、汚染微粒子の分布及び付着密度を演算することができる。この測定では、粒径30nm以下の汚染微粒子についても形状に関する値を測定することが可能である。なお、測定部62は、ワーク表面の位置を予め記憶しておき、B領域にあるプローブ18の位置と、記憶されたワーク表面の位置との差分に基づいて、汚染微粒子の高さを導出するようにしてもよい。こうすれば、プローブ18の先端部がC領域に入ったことが検知された時点でプローブ18を戻す制御を行ったとしても、汚染微粒子の高さを導出することができるようになる。この場合でも、1つの汚染微粒子に対して複数位置で繰り返し測定を行うことにより、汚染微粒子についての形状に関する測定値を導出することができる。
【0049】
なお、露の形状は、3次元形状として特定してもよく、あるいは水平面内の2次元形状として特定してもよい。2次元形状として特定する場合には、粒径で汚染微粒子の形状を規定することができる。粒径は回帰計算によって算出してもよく、あるいは所定方向の汚染微粒子の幅を複数個所測定しておいて、そのうちの最大幅を採用してもよい。
【0050】
また、試験制御部14が指示するZ軸変位量データとZ軸変位機構25で変位する実際の変位量との関係を予め校正しておくことによって、試験制御部14が指示するZ軸変位量データにより、実際のZ軸方向の変位量を取得することができる。X軸方向、Y軸方向についても同様である。
【0051】
解析部66には、測定部62によって測定された汚染微粒子の形状をワーク表面の傾きに応じて補正する補正処理部66aと、画像処理部66bとが含まれている。補正処理部66aは、ワーク表面が基準平面に対して傾斜している場合に、その傾斜角度に応じて粒径を補正する処理を行う。基準平面は、Z軸方向に垂直な方向の平面であり、予め記憶されているものである。一方、ワーク表面は、プローブ18の先端部とワーク表面との接触・近接位置(Z軸方向)を複数取得し、それを平均化したものである。補正処理部66aは、基準平面とワーク表面とのなす角度θを演算し、測定部62が導出した粒径を補正する。なお、プローブ18がC領域に達したことが検知されたときに、プローブ18を戻す動作を実行する場合には、補正処理部66aを省略した構成としてもよい。
【0052】
画像処理部66bは、出力装置71の表示部に汚染微粒子の画像を表示するための処理を行う制御部である。表示部には、XY平面内での汚染微粒子の形状の二次元表示をするとともに、Z軸方向の高さを色分けする等の処理を行うことができる。
【0053】
第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3では、以上説明した構成の測定装置10を用いて汚染微粒子の測定を行う。この測定ステップでは、ワーク台16にワークWをセットし、X軸変位機構23及びY軸変位機構24を駆動することによりワーク台16を所定の位置にセットする。そして、水晶振動子55によってプローブ18の先端部を振動させながらZ軸変位機構25によりプローブ18を降下させる。これにより、ワークWがセットされたワーク台16に対するプローブ18のZ軸方向の位置が変わる。そして、プローブ18の先端部が汚染微粒子の表面又はワークWの表面と接触又は近接すると、前述したようにプローブ18の振幅が急激に変化するので、この振幅変化が発生するまでのプローブ18の移動量に基づいて、汚染微粒子の高さを導出し、これをX軸方向及びY軸方向の複数個所で繰返し測定することにより、汚染微粒子の形状及び分布を測定する。
【0054】
なお、第1測定ステップST2と第2測定ステップST3では、測定対象となるワークWが前記所定の工程に導入される前のものか、後のものかという違いがあるだけで、全く同じ方法で測定が行われる。また、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3では、ワークWの同じ個所を複数回繰り返して測定し、その平均値を算出するようにしてもよい。
【0055】
次に、前記評価ステップST4では、同一のワークWに対し、第1測定ステップST2で取得された形状及び分布に関する特性値と第2測定ステップST3で取得された形状及び分布に関する特性値とを比較する。そして、この比較結果に基づいて、前記所定の工程の汚染度合いを評価する。すなわち、両ステップST2,ST3で得られた形状及び分布に関する特性値のうち、例えば粒径の平均値の差分、微粒子の分布密度の差分を導出し、その導出データをそのまま出力することにより汚染度合いの評価値としてもよい。あるいは、例えば工程の汚染度合いをランク分けしておいて、導出データをランクによる評価値で出力するようにしてもよい。
【0056】
一方、前記予備測定ステップST1では、前記測定装置10を用いないで汚染微粒子の測定を行う。この予備測定ステップST1では、粒径が30nmを超える汚染微粒子の測定が可能な方法で行われ、この測定方法としては、例えばレーザ散乱光検出法等の公知の種々の方法を採用することができる。レーザ散乱光検出法は、ワークWにレーザ光を照射して、汚染微粒子による散乱光を受光部で検出することにより、ワークW表面の汚染微粒子の粒径及び分布を測定する方法であり、測定精度が高い。この方法の場合には、例えば波長266nmのレーザ光を用いることができ、波長が266nmであれば、粒径30nmの微粒子の測定が可能である。
【0057】
この予備測定ステップST1において得られた形状及び分布に関する特性値についての測定値が所定の条件を満たさなかった場合には、その測定値が得られたワークについては、第1測定ステップST2での測定対象から除外される。所定の条件を満たさない場合とは、例えば、付着した汚染微粒子の分布密度が閾値よりも高いような場合である。分布密度が高いものを除外することにより、汚染微粒子で汚染されたワークWで汚染度合いの評価を行うことが防止される。なお、予備測定ステップST1において、汚染微粒子による汚染度合いが所定範囲内に抑えられたワークW、言い換えると表面の汚染度合いが既知の評価用ワークを使用するようにしてもよい。
【0058】
前記比較ステップST5では、レーザ散乱光検出法(予備測定ステップST1)によって測定された汚染微粒子の粒径及び分布と、シアフォース法(第1測定ステップST2)によって測定された汚染微粒子の粒径及び分布との比較を行う。すなわち、比較ステップST5においては、ワーク表面の所定の場所における両者の汚染微粒子の分布を比較するとともに、その場所での両者の汚染微粒子の平均粒径を比較する。粒径が30nmを越える微粒子については、2つの方法で粒径及び分布を測定することができるため、シアフォース法によって測定された値をレーザ散乱光検出法のように測定精度が既知である方法によって測定された値と比較することにより、第1測定ステップST2で測定された汚染微粒子の粒径及び分布に関する特性値についての検証を行うことができる。したがって、汚染評価の妥当性を随時評価することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、半導体デバイス製造工程中の所定の製造工程における前段階と後段階のそれぞれにおいて、ワーク表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定し、その比較結果から前記所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するので、チャンバー等に加工を施すことなく製造工程における汚染度合いを評価することができる。
【0060】
また本実施形態では、汚染微粒子の測定を行う第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3において、プローブ18の先端部の振動変化から汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するので、レーザ照射装置等の大型で高価な装置を使うことなく汚染微粒子を測定することができる。
【0061】
また本実施形態では、ワーク表面の汚染微粒子のうち粒径が30nmを超える汚染微粒子については、予備測定ステップST1と第1測定ステップST2の双方において形状及び分布に関する特性値が得られ、比較ステップST5において両ステップST1,ST2での測定結果を比較するので、粒径が30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値が測定可能な第1測定ステップST2での測定精度の検証を、粒径30nm超の汚染微粒子について行うことができる。
【0062】
さらに、予備測定ステップST1での測定値と第1測定ステップST2での測定値との相関関係を示す関数等を導出するので、粒径が30nm以下の汚染微粒子についても第1測定ステップST2の測定精度の検証が可能となる。また、粒径が30nmを超える汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能な方法による予備測定ステップST1の測定結果から、粒径が30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を推定することが可能となる。
【0063】
また本実施形態では、予備測定ステップST1における測定結果が所定範囲に収まるワークのみを第1測定ステップST2での測定対象とするので、評価精度が低下することを抑止することができる。
【0064】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3において、プローブ先端部が汚染微粒子と接触又は近接したことを検出し、この検出に基づいて汚染微粒子の形状及び分布を測定するようにした。これに対し、第2実施形態では、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3において、ワークWを結露環境下に置いてワーク表面上に結露を発生させ、汚染微粒子を核として成長した露の形状及び分布を測定して、この露の形状及び分布から汚染微粒子の形状及び分布を求めるようにしている。以下、具体的に説明する。
【0065】
図7に示すように、測定装置10のワーク台16には、ワークWを収納可能な測定空間Sを有する測定槽40が設けられている。測定槽40はワーク台16に設置されているため、ワーク台16とともに水平方向に移動する。測定槽40の上面には、プローブ18を挿通させる開口40aが設けられている。そして、プローブ18の下端部は測定空間S内に配置されている。なお、図示省略しているが、測定槽40には、ワークWの出し入れができるように開閉扉が設けられている。また、測定槽40は、ワーク台16に設置される構成に限られるものではない。測定槽40は、例えばワーク台16を包囲するように設けられていてもよい。
【0066】
測定空間S内には、空調部42によって所定の温湿度に調整された空気が流通する。空調部42は、空気の温湿度を所定の温湿度に調整するとともに、この調整された空気を給気通路41を通して測定空間S内に導入する。測定空間S内の空気は排気通路43を通して空調部42に戻されるため、測定時には測定空間S内の空気が常時流通する。
【0067】
測定装置10には、測定空間S内の温度を検出する周囲温度検出部としての周囲温度センサ44と、測定空間S内の湿度を検出する周囲湿度検出部としての周囲湿度センサ45と、が設けられ、これらセンサ44,45の検出信号は、試験制御部14に入力される。試験制御部14には、温湿度測定部47(図8参照)が設けられており、温湿度測定部47は、センサ44,45からの検出信号に応じて、測定空間S内の温度及び湿度を導出する。試験制御部14の演算装置59には、その一機能として環境制御部46が含まれており、環境制御部46は、温湿度測定部47によって導出された温度及び湿度に基づいて、空調部42を制御する。つまり、環境制御部46は、センサ44,45からの検出結果に基づいて、測定空間S内の温度が所定の温度及び湿度になるように空調部42を制御する。なお、空調部42は、除湿空気又は加熱空気を供給可能であり、ワークWを乾燥させて再測定の準備を行うことも可能である。
【0068】
装置本体12は、ワーク表面で結露を生じさせる結露誘起手段として、冷却機構48を有している。冷却機構48は、ワーク表面が露点以下になるようにワークWを冷却するものである。具体的に、冷却機構48は、図8に示すように、ワーク表面を冷却する冷却部50と、ワーク表面の温度を検出するワーク温度検出部としてのワーク温度センサ51と、ワーク表面の温度が所定の温度になるように冷却部50を制御するワーク温度制御部52と、を有する。本第2実施形態では、冷却部50は、ペルチエ素子の吸熱部によって構成されており、図7に示すようにワーク台16に載置されている。ワーク温度制御部52は、試験制御部14の演算装置59の一機能として含まれているものであり、ワーク温度センサ51の検出結果に基づいてペルチエ素子へ印加する電圧を制御する。なお、冷却機構48は、ペルチエ素子を有する構成に限られるものではない。例えば、熱媒体を導入可能に構成された冷却板を用い、この冷却板内に熱媒体を導入して冷却板の温度を調整する機構等を例示することができる。
【0069】
演算装置59の機能には、少なくとも、相対変位量導出部63と、判定部60と、測定部62と、解析部66と、プローブ制御部67とが含まれる。解析部66には、補正処理部66aと、画像処理部66bと、導出処理部66cと、が含まれる。
【0070】
判定部60によるB領域(図6)での判定は、第1実施形態と異なり、プローブ18と露との接触又は近接の判定となる。すなわち、プローブ18の先端部がワークWの表面から十分に離れた状態では、プローブ18の先端部の振幅は一定値を維持し(図6中のA領域)、この状態から振幅が減衰したときに(図6中のB領域)、プローブ18の先端部が露の表面に接触又は近接したと判定する。つまり、ワーク表面上には汚染微粒子を核として成長した露が存在し、プローブ18の先端部がこの露に接触又は近接すると振幅が変化する。そして、プローブ18の先端部が更にワークWに近づいて図6のD領域に達すると、判定部60は、ワーク表面位置(露の下面位置)が検出されたと判定する。なお、プローブ18の先端部がC領域に入ったことが検知されたときに、プローブ制御部67がプローブ18を戻すように制御を行うようにしてもよい。ただし、この場合には、露の下面位置を導出できないことになるので、測定部62は、露の上面位置のみを導出することになり、露の下面位置は、予め設定されたワーク表面位置で代用することとなる。
【0071】
測定部62は、B領域までのプローブ18の変位量に基づいて露の上面位置を導出するとともにD領域までのプローブ18の変位量に基づいて露の下面を導出する。これをX軸方向及びY軸方向の複数個所で行う。そして、これらの測定結果を連続点として統計処理することにより露の上面及び下面を表す関数を導出する。
【0072】
測定部62は、測定された露の上面についての位置情報を統計処理して露の形状に関する特性値(例えば粒径等)を導出するとともに、露の下面(ワーク表面)が基準平面に対して傾斜している場合に、その傾斜角度に応じて露の幅(又は粒径)を補正する処理を行う。
【0073】
粒径の導出に際しては、露の上面についての位置情報を連続点として統計処理することにより、露の形状を表す関数を導出する。この処理は露ごとに行われる。そして、図9に示すように、予め設定された所定の方向における最大幅を粒径として導出する。なお、露の粒径の導出に際しては、測定データから露の最大幅を有する方向を特定し、その方向における露の幅を粒径として導出するようにしてもよい。
【0074】
前記基準平面は、Z軸方向に垂直な方向の平面であり、予め記憶されているものである。一方、露の下面(ワーク表面)は、プローブ18の先端部とワーク表面との接触位置又は近接位置(Z軸方向)を複数測定して平均化したものである。
【0075】
補正処理部66aは、基準平面とワーク表面とのなす角度θを演算し、測定部62が導出した粒径を補正する。補正処理部66aは、図10に示すように、基準平面とワーク表面とのなす角度θを演算し、実測された粒径d1を以下の関係式
d2=d1/cosθ
を用いて補正し、粒径d2を導出する。なお、図10は、図9におけるX−X線上の露を例示したものである。また、図11に示すように、ワーク表面が基準平面と一致していれば、粒径d1が補正後の粒径として導出される。なお、図11は、図9におけるXI−XI線上の露を例示したものである。
【0076】
なお、露の形状は、3次元形状として特定してもよく、あるいは水平面内の2次元形状として特定してもよい。
【0077】
導出処理部66cは、露の粒径の時間経過に伴う変化割合から露の核、すなわち汚染微粒子の大きさを導出する導出手段として機能する。導出処理部66cは、露の成長度合いを導出するとともに、その成長度合いから汚染微粒子の大きさを導出する。すなわち、導出処理部66cは、粒径測定を所定時間ごとに繰返し行い、図12に示すように、経過時間と粒径とを関連付けて記憶する。そして、導出処理部66cは、粒径が経過時間に対して比例的に変化(1次相関)するものとして変化割合を導出し、この変化割合から結露開始時点の粒径を導出する。導出処理部66cは、この結露開始時点での粒径を核となり得る汚染微粒子の大きさとして導出する。この導出は、露ごとに行われる。結露開始時点としては、例えば、周囲温度センサ44によって測定された測定槽40内の温度、及び周囲湿度センサ45によって測定された測定槽40内の湿度により、測定槽40内の空気が露点に到達したと判定される時点を採用することができる。あるいは、既知粒径の微粒子がワーク表面に付着された標準試料を用いて、露点到達時間から結露が開始する時間までの間隔を実験又は解析によって予め求めておき、露点到達時間をこの間隔で補正して得られた時点を結露開始時点としてもよい。
【0078】
また、導出処理部66cは、露ごとに粒径の変化割合を導出するが、このとき最小の変化割合を示す露に対して一定の閾値以上の変化割合を示す露のデータについては破棄する。すなわち、露の成長時には、露が単独で成長する独立成長と、隣接した露同士が互いに融合して成長する融合成長とが見られる。融合成長の場合には、粒径が段階的に大きくなるため、経過時間に対して1次回帰直線を求めるとすれば、結露開始時点での粒径を正しく求めることはできない。一方で、融合成長の場合の粒径の成長速度を1次回帰によって求めた場合には、独立成長の場合の成長速度の3倍程度となる知見が得られている。このため、粒径の成長速度を1次回帰によって求めた場合に、最小の変化割合の露に対して一定の閾値以上の変化割合を示す露については、融合成長の場合である可能性が高いこととなる。このため、このような成長割合を示す露のデータを導出対象又は測定結果から除外することにより、核の大きさの推定精度を向上させる。なお、前記の閾値としては、例えば「2」が採用される。例えば図12では、「A」の露の傾きを1としたときに「B」の露では、傾きが2.8となっているので、融合成長としてデータ破棄される。また図中の外挿値とは、結露開始時点での粒径、すなわち汚染微粒子の粒径を意味している。
【0079】
また、破棄データの有無により、融合成長の有無が判定できる。したがって、破棄データの有無を図外の表示部に表示する等して、融合成長の有無を判断し易くすれば、再測定時に冷却速度、測定時間間隔等を設定し直すことにより、融合しない条件で測定することも可能となる。
【0080】
画像処理部66bは、図外の表示部に、導出された露の形状の画像を表示したり、図12に示すように経過時間と粒径との相関を示す表やグラフを表示したりするための処理を行う制御部である。表示部には、図9に示すように、XY平面内での露の形状の二次元表示をするとともに、Z軸方向の高さを色分けする処理が行われて表示される。
【0081】
ここで、第2実施形態による第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3における測定手順について説明する。
【0082】
まず、ワーク台16にワークWをセットし、測定槽40内を所定の温度及び湿度に調整する。その後、ペルチエ素子を駆動してワークWを冷却する。このときワーク表面が露点以下になるように冷却を行う(結露誘起ステップ)。これに伴い、ワーク表面では結露が生ずる。この結露は、汚染微粒子を核として成長する。
【0083】
次に、ワーク表面上の露の粒径を導出する(露形状導出ステップ)。具体的には、X軸変位機構23及びY軸変位機構24を駆動することによりワーク台16を所定の位置にセットし、水晶振動子55によってプローブ18の先端部を振動させながらZ軸変位機構25によりプローブ18を降下させる。これにより、ワークWがセットされたワーク台16に対するプローブ18のZ軸方向の位置が変わる。そして、プローブ18の先端部が露の表面と接触又は近接すると、前述したようにプローブ18の振幅が急激に変化するので、この振幅変化に基づいて、露表面までのプローブ18の移動量から露の上面位置及び下面位置を導出する。これをX軸方向及びY軸方向の複数個所で繰返し行い、上面についての位置情報を統計処理することにより、露の粒径を導出する。このとき、下面位置に関する位置情報に基づいて、露の粒径の補正を行う。
【0084】
次に、経過時間に伴う粒径の変化割合に基づいて、結露の核となり得る汚染微粒子の大きさを導出する(導出ステップ)。この導出ステップでは、経過時間に対する粒径の変化割合が最小のものに対して例えば2倍以上の変化割合を示すものについては、データを破棄する。これにより、独立成長の露についての成長速度のみが使用されて、結露開始時点の粒径が導出される。この導出された粒径が汚染微粒子の粒径として図外の表示器に表示される。
【0085】
第2実施形態では、汚染微粒子の形状を直接測定するのではなく、汚染微粒子を核として成長した露の粒径を測定するとともに、粒径の変化割合に基づいて汚染微粒子の形状を導出している。このため、汚染微粒子の粒径が30nm以下の場合であっても、粒径が30nmを超える露について測定することで、汚染微粒子の測定をすることができるので、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3での測定精度を向上することができる。
【0086】
所定の閾値以上の成長度合いを示す露については、露同士が融合して成長したもの(融合成長)であると推測される。このため、第2実施形態のように、所定の閾値以上の成長度合いを示すデータを除外すれば、露が単独で成長する(独立成長)ときの成長度合いを求めることができるので、露の核の大きさを精度よく求めることができる。
【0087】
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、他の測定方法による検証が可能となっている。このため、露の粒径が30nmを超え、測定精度が確保される場合であっても、さらなる検証を行うことにより、測定値を保証することができる。
【0088】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記各実施形態ではワーク台16がY軸ステージ36上に設置される構成について説明したが、これに代え、ワーク台16が基台29に固定されるとともに、プローブ18を支持するスタンド30がX軸方向及びY軸方向に可動するように設けられる構成としてもよい。この構成では、プローブ18が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となる。
【0089】
また、前記各実施形態では、プローブ18がZ軸方向に移動可能な構成としたが、これに代え、プローブ18がスタンド30に対して固定されるとともに、ワーク台16がZ軸ステージにも支持されることでZ軸方向に移動可能な構成としてもよい。この構成では、ワーク台16が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となる。
【0090】
また、第2実施形態では、補正処理部66aが露の下面(ワーク表面)と基準平面との傾斜角度に応じて粒径を補正するようにしたが、ワーク表面の平坦度が確保されている場合等には、粒径を補正する制御を省略することも可能である。
【0091】
また、第2実施形態では、スタンド30、Z軸ステージ27、水晶振動子55が測定槽40の外側に配設される構成としたが、これに代え、図13に示すように、測定槽40内にスタンド30、Z軸ステージ27、水晶振動子55、プローブ18が収納される構成としてもよい。図7の構成では、測定空間Sの容積を小さくすることができるので、測定空間S内の温度湿度の変化を早くすることができる。一方、図13の構成では、測定槽40にプローブ18を挿通させる開口40aを設ける必要がなくなるので、測定槽40内を気密状に構成し易くなる。
【0092】
また、第2実施形態では、冷却部50がペルチエ素子の吸熱部によって構成される例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、冷却部50が冷却空気をワークWに接触させるように冷却空気を供給する冷風供給部である冷却空気供給機構(図示省略)を有する構成としてもよい。この態様では、冷却空気が流通する冷風路がワーク台16に設けられ、この冷風路の上面にワーク保持部(図示省略)が設けられる構成となる。このワーク保持部は、例えばパンチ孔が設けられていて、ワークWが冷却空気によって直接冷却されるようにしてもよい。
【0093】
また、第2実施形態では、融合成長の有無を判断する基準として、1次回帰によって得られた粒径の成長速度の傾き(回帰直線の傾き)が最小の傾きの回帰直線に対して所定の閾値以上の変化割合を示すかどうかを基準としたが、これに限られるものではない。すなわち、回帰直線の傾きを基準とするのではなく、隣接2データ間の傾きで判断するようにしてもよい。例えば図14には、1次回帰直線の傾きが最小となっている露の変化割合を示す回帰直線Aと、これよりは傾きの大きな回帰直線Bとを示している。回帰直線Aの傾きに対する回帰直線Bの傾きは例えば1.5である。このため、回帰直線Bについては、前記の閾値未満となっている。この回帰直線Bの基データとなる露に関し、互いに隣接するデータB1とデータB2を結ぶ線分の傾きが例えば3になっているものがある場合には、この露については融合成長があったとして導出対象から除外する。この除外タイミングとしては、データが得られる毎に前回のデータとの差から傾きを導出し、所定の閾値以上の変化割合が発生した時点で導出対象から除外するようにしてもよく(スキップ処理)、あるいは、一連の測定が終了した後に、最終データを破棄することによって測定結果から除外するようにしてもよい。
【0094】
また、前記実施形態の第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3では、プローブ18の振動から汚染微粒子又は露の表面を検出するようにしたが、これに限られるものではない。例えば、顕微鏡、デジタルマイクロスコープ等の拡大器と、この拡大器によって取得された画像を表示器に表示させる表示制御器と、表示器に表示された画像データから露の粒径を測定するとともに、その変化割合から結露の核となり得る付着物の粒径を導出する画像試験制御部とを有する構成としてもよい。この構成では、画像試験制御部が画像データから汚染微粒子又は露の境界面(周面)を認識し、この境界面から粒径を導出することも可能であり、あるいは、露の境界面(周面)を表示器上で人がポイントできるようにして、2点間の距離から粒径を導出するようにしてもよい。
【0095】
また、露の粒径の測定は、いわゆる位相シフト干渉法によって行ってもよい。具体的には、測定装置10は、図15に示すように、測定光を出射する光源83と、光束を分離させるビームスプリッタ84と、測定光をワークWの表面(または露の表面)に集光させる第1集光素子85と、測定光から分離された参照光が照射される参照面86と、参照光を参照面86に集光させる第2集光素子87と、測定光及び参照光の干渉光を検出する光検出器88と、を有する光学系89を有する。参照面86はピエゾ素子(PZT)90によって光軸方向に移動可能となっている。そして、この参照面86の位置を変えながら干渉光の強度変化を測定し、この強度変化から測定光と参照光との位相差を算出でき、また測定光の波長を加味することにより、露の表面位置(露の厚み)が得られ、この測定を光軸とは直交する方向に複数個所で行うことにより、露の表面が連続面であるとして、露の形状を算出することができる。そして、この露の形状から露の粒径を導出することができる。
【符号の説明】
【0096】
16 ワーク台
18 プローブ
ST1 予備測定ステップ
ST2 第1測定ステップ
ST3 第2測定ステップ
ST4 評価ステップ
ST5 比較ステップ
W ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造工程の汚染評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、シリコンウエハ等の基板表面にレーザ光を照射し、基板表面の汚染微粒子による散乱光から生ずる散乱リングの歪みを観察することによって、基板表面の汚染状況を検出する技術が知られている。汚染微粒子によるレーザ散乱光を検出するレーザ散乱光検出法は、例えば下記非特許文献1にも開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2及び3には、チャンバー内の気体中のパーティクルをパーティクル計測装置で計測する技術が開示されている。例えば、特許文献2では、チャンバー内の気体を排気する排気管にパーティクル計測装置を設置し、排気管内を流れる気体中のパーティクル数を計測するようにしている。
【0004】
また、下記特許文献4には、端面発塵抑制処理を施したウエハの表面パーティクル数を、当該処理を施していないウエハの表面パーティクル数と比較することで、当該処理の効果を検証する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−248617号公報
【特許文献2】特開2001−59808号公報
【特許文献3】特開2005−317900号公報
【特許文献4】特開2003−23052号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「次世代半導体デバイス製造を支える最先端半導体ウエーハ表面洗浄技術」、ソニー半導体技術情報誌CX−PAL vol.60(2004年4月号)、「平成20年10月16日検索」、インターネット<URL;http://www.sony.co.jp/Products/SC-HP/cx_pal/vol60/pdf/featuring.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したレーザ散乱光検出法によって基板表面の汚染状況を検出する方法では、基板表面に付着した汚染微粒子の測定をすることはできるが、製造工程の汚染状況、すなわち、製造工程で発生する汚染微粒子の発生度合いを評価することはできない。
【0008】
また、特許文献2及び3に開示された計測方法では、気体中のパーティクル数を直接計測することができるが、チャンバー等にパーティクル計測装置を設置するための加工を施さなくてはならないという問題がある。
【0009】
また、特許文献4に開示された方法では、端面発塵抑制処理の有無による効果の差を検証できるだけであり、製造工程での汚染微粒子の発生度合いの評価をすることはできない。
【0010】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造装置に加工を施すことなく、半導体デバイス製造工程での汚染微粒子の発生度合いを評価できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体デバイス製造工程中の所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する方法であって、前記所定の工程の前の段階でワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第1測定ステップと、前記所定の工程を通された前記ワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第2測定ステップと、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでの測定結果に基づいて、前記所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する評価ステップと、が含まれている半導体デバイス製造工程の汚染評価方法である。
【0012】
本発明では、半導体デバイス製造工程中の所定の製造工程における前段階と後段階のそれぞれにおいて、ワーク表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定し、その比較結果から前記所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するので、チャンバー等に加工を施すことなく製造工程における汚染度合いを評価することができる。
【0013】
ここで、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、前記汚染微粒子に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するようにしてもよい。
【0014】
この態様では、汚染微粒子の測定を行う第1測定ステップ及び第2測定ステップにおいて、プローブの先端部の振動変化から汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するので、レーザ照射装置等の大型で高価な装置を使うことなく汚染微粒子を測定することができる。
【0015】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップには、ワーク表面が露点以下になるようにワーク雰囲気の冷却を行う結露誘起ステップと、プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、ワーク表面上の露に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記露の形状に関する特性値を導出する露形状導出ステップと、経過時間に伴う前記露の形状に関する特性値の変化割合に基づいて、結露の核となる汚染微粒子の形状に関する特性値を測定する導出ステップと、が含まれていてもよい。
【0016】
この態様では、汚染微粒子の形状を直接測定するのではなく、汚染微粒子を核として成長した露の形状に関する特性値の変化割合に基づいて汚染微粒子の形状を導出するので、汚染微粒子の粒径が30nm以下の場合であっても、粒径が30nmを超える露について測定することで、汚染微粒子の粒径を測定することが可能となる。このため、第1測定ステップ及び第2測定ステップでの測定精度を向上することができる。
【0017】
また、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、粒径30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を導出可能であることが好ましい。
【0018】
この態様において、前記第1測定ステップの前に、粒径が30nmを超える汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能な方法で、前記ワークの表面の汚染微粒子を測定する予備測定ステップと、前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較する比較ステップと、が含まれているのが好ましい。
【0019】
この態様では、ワーク表面の汚染微粒子のうち粒径が30nmを超える汚染微粒子については、予備測定ステップと第1測定ステップの双方において形状及び分布に関する特性値が得られ、比較ステップにおいて両ステップでの測定結果を比較するので、粒径が30nm以下の汚染微粒子についても測定が可能な第1測定ステップでの測定精度の検証を、粒径30nm超の汚染微粒子について行うことができる。
【0020】
この態様において、前記比較ステップにおいて、前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値との相関関係を導出するのが好ましい。
【0021】
また、前記予備測定ステップで得られた測定値が所定の条件を満足しない場合には、当該測定値が得られたワークを前記第1測定ステップでの測定対象から除外するのが好ましい。
【0022】
この態様では、汚染微粒子が所定の条件を満足する形状及び分布に関する特性値を示したワークによって、前記所定の工程での汚染度合いを評価することができるので、評価精度が低下することを抑止することができる。
【0023】
また、前記第1測定ステップでは、前記ワークとして、表面の汚染度合いが既知の評価用ワークを使用してもよい。この態様では、評価精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、製造装置に加工を施すことなく、半導体デバイス製造工程での汚染微粒子の発生度合いを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体デバイス製造工程の汚染評価方法を概略的に示すフロー図である。
【図2】本発明の実施形態において、前記汚染評価方法の第1測定ステップ及び第2測定ステップで使用される測定装置を示す図である。
【図3】前記測定装置の変位測定部及びZ軸変位機構の構成を説明するための概略図である。
【図4】前記測定装置のX軸及びY軸変位機構の構成を説明するための概略図である。
【図5】前記測定装置の制御系統を示すブロック図である。
【図6】プローブと汚染微粒子又はワークとの接触又は近接の検出を説明するための特性図である。
【図7】本発明の第2実施形態において、前記汚染評価方法の第1測定ステップ及び第2測定ステップで使用される測定装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る測定装置の制御系統を示すブロック図である。
【図9】表示部に表示された露の画像の一例を説明するための図である。
【図10】図9におけるX−X線における露の形状を説明するための概念図である。
【図11】図7におけるXI−XI線における露の形状を説明するための概念図である。
【図12】導出処理部の行う処理を説明するための図である。
【図13】第2実施形態の変形例に係る測定装置の概略構成を示す図である。
【図14】その他の実施形態による融合成長データ除外処理を説明するための図である。
【図15】本発明のその他の実施形態における光学系を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態に係る半導体デバイス製造工程の汚染評価方法を概略的に示す図である。この半導体デバイス製造工程の汚染評価方法(以下、単に汚染評価方法)は、半導体デバイスを製造するための各種工程のうちの所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するための方法である。この汚染評価方法には、予備測定ステップST1と、第1測定ステップST2と、第2測定ステップST3と、評価ステップST4と、比較ステップST5とが含まれている。
【0028】
第1測定ステップST2は、前記所定の工程に導入される前のワークの表面に付着している汚染微粒子の特性値を測定するステップであり、第2測定ステップST3は、当該所定の工程を通過したワークの表面の汚染微粒子の特性値を測定するステップである。第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3は、何れもシアフォース法(詳細は後述する)によって汚染微粒子の特性値を測定する。また、評価ステップST4は、第1測定ステップST2で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、第2測定ステップST3で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較し、この比較結果に基づいて、前記所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するステップである。ワークとしては、例えば半導体ウエハを例示することができる。形状及び分布に関する測定値とは、汚染微粒子の形状、汚染微粒子の分布等に関する特性値であり、例えば粒径の平均値、粒径の分散、微粒子の分布密度、微粒子の分布状況等を例示することができる。
【0029】
予備測定ステップST1は、第1測定ステップST2で測定対象となるワークについて、第1測定ステップST2に先立ち、第1測定ステップST2での測定方法とは異なる方法でワーク表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するステップである。また、比較ステップST5は、第1測定ステップST2による測定結果の検証を行うためのステップであり、予備測定ステップST1で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、第1測定ステップST2で測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較する。
【0030】
図2は、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3においてシアフォース法によって汚染微粒子の特性値を測定するために使用される汚染微粒子測定装置(以下、単に測定装置という)10を示している。この測定装置10は、ワーク表面に付着した汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能なものであり、装置本体12と試験制御部14とを備えている。装置本体12は、ワークWをセットするためのワーク台16と、プローブ18と、プローブ18の先端部を振動させる励振部20と、直交3軸方向においてワーク台16に対するプローブ18の相対的位置を変えさせる変位機構22と、を備えている。
【0031】
変位機構22は、図3及び図4に示すように、ワーク台16を水平面内のX軸方向に移動させるためのX軸変位機構23と、ワーク台16を水平面内のY軸方向(X軸方向と直交する方向)に移動させるためのY軸変位機構24と、プローブ18を垂直方向に移動させるためのZ軸変位機構25とを有する。
【0032】
Z軸変位機構25は、Z軸ステージ27を基台29に固定されたスタンド30に対して垂直方向(Z軸方向)に移動させるためのものであり、粗調整機構25aと微調整機構25bとを有する。粗調整機構25aは、例えば、モータ駆動方式の駆動機構であり、Z軸ドライバ32(図5参照)によって駆動される。図略のモータを駆動させることでZ軸ステージ27をZ軸方向に移動させる。微調整機構25bは、PZT系圧電セラミクスを用いた圧電アクチュエータを有しており、この圧電アクチュエータは、例えば高電圧増幅器によって構成されるZ軸ドライバ32によって駆動される。この圧電アクチュエータは、例えば送り幅を100nmとして駆動させることにより、nm精度で変位量を制御することができる。
【0033】
Y軸変位機構24は、Y軸ステージ36をY軸方向に移動させるための機構であり、図4に示すように、粗調整機構24aと微調整機構24bとを有する。粗調整機構24aは、例えば、モータ駆動方式の駆動機構であり、Y軸ドライバ33(図5参照)によって駆動される。図略のモータを駆動させることでY軸ステージ36をY軸方向に移動させる。微調整機構24bは、PZT系圧電セラミクスを用いた圧電アクチュエータを有している。この圧電アクチュエータは、基台29に設置されており、例えば高電圧増幅器によって構成されるY軸ドライバ33によって駆動される。圧電アクチュエータを駆動することにより、Y軸ステージ36をY軸方向に移動させることができる。この圧電アクチュエータは、例えば送り幅を100nmとして駆動させることにより、nm精度で変位量を制御することができる。
【0034】
X軸変位機構23は、X軸ステージであるワーク台16をX軸方向に移動させるための機構であり、粗調整機構23aと微調整機構23bとを有する。粗調整機構23aは、例えば、モータ駆動方式の駆動機構であり、X軸ドライバ34(図5参照)によって駆動される。図略のモータを駆動させることでワーク台16をY軸ステージ36に対してX軸方向に移動させる。微調整機構23bは、PZT系圧電セラミクスを用いた圧電アクチュエータを有している。この圧電アクチュエータは、Y軸ステージ36に設置されており、例えば高電圧増幅器によって構成されるX軸ドライバ34によって駆動される。圧電アクチュエータを駆動することにより、Y軸ステージ36上でワーク台16をX軸方向に移動させることができる。これにより、ワーク台16は、基台29に対してX軸方向及びY軸方向の任意の位置に移動可能である。この圧電アクチュエータは、例えば送り幅を100nmとして駆動させることにより、nm精度で変位量を制御することができる。
【0035】
前記プローブ18は、図2に示すように、下方に向かって延びるように上端部で前記Z軸ステージ27に固定されている。プローブ18の下端部(先端部)は、先鋭化されていて、容易に撓む。
【0036】
前記励振部20は、水晶振動子55を有する。水晶振動子55の形状は限定されるものではないが、本実施形態では、例えば音叉のように2つの対称な突起を有する音叉型の水晶振動子55として構成されている。水晶振動子55は、振動子固定部57を介してZ軸ステージ27に固定されている。そして、水晶振動子55の突起にプローブ18が接触している。
【0037】
水晶振動子55の2つの突起間の間隔は、例えば約0.2mmであり、プローブ18の水晶振動子55に接触する部分での直径は、例えば125μmである。プローブ18は、例えば光ファイバから作ることができ、例えば直径が約10μmのコアと、直径が約125μmのクラッドからなる。光ファイバを溶融延伸することにより、先端部が尖鋭化され、先端部の直径は例えば100nm以下にテーパ状に加工されている。
【0038】
水晶振動子55は2つの電極55a,55bを備えており、一方の電極55aは、試験制御部14に含まれる電流検出器58(図5参照)に接続され、他方の電極55bは試験制御部14に含まれる信号発生器56(図5参照)に接続されている。電極55a,55b間に交流信号、例えば正弦波信号を印加すると、水晶振動子55の有する圧電効果によって水晶振動子55の突起が振動する。水晶振動子55を振動させると、これに接触しているプローブ18もあわせて振動させることができる。特に水晶振動子55の共振周波数又はその近傍の周波数をもつ信号を印加したときに振幅は大きくなる。
【0039】
図5に示すように、電流検出器58には、信号発生器56の出力信号の一部を分岐して得られる参照信号が接続される。電流検出器58から出力された信号は、後述の演算装置59に入力される。
【0040】
前記試験制御部14は、汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を演算によって導出可能なものであり、図5に示すように、前記X軸ドライバ34と、前記Y軸ドライバ33と、前記Z軸ドライバ32と、前記信号発生器56と、前記電流検出器58と、変位測定部61と、演算装置59と、入力装置70と、出力装置71とを備えている。
【0041】
変位測定部61は、ワーク台16に対するプローブ18の相対変位量を測定するものである。変位測定部61は、直交3軸方向におけるワーク台16に対するプローブ18の相対変位量を測定するためのものであり、Y軸ステージ36に対するワーク台16のX軸方向の変位量を測定するX軸方向測定部61aと、基台29に対するY軸ステージ36のY軸方向の変位量を測定するY軸方向測定部61bと、基台29に対するプローブ18のZ軸方向変位を測定するZ軸方向測定部61cと、を有する。
【0042】
X軸方向測定部61aは、超精密測長器によって構成されており、図3に示すように、Y軸ステージ36に固定された固定側部61eと、ワーク台16に固定された遊走側部61fとからなり、X軸方向におけるこれらの相対変位量からX軸方向の移動量を測定する。Y軸方向測定部61b及びZ軸方向測定部61cも同様に超精密測長器によって構成されている。すなわち、Y軸方向測定部61bは、基台29に固定された固定側部61gと、Y軸ステージ36に固定された遊走側部61hとを有する。またZ軸方向測定部61cは、スタンド30に固定された固定側部61iと、Z軸ステージ27に固定された遊走側部61jとを有する。
【0043】
入力装置70には、キーボード、外部メモリ等が含まれ、入力装置70は、演算装置59に対する指令を入力可能に構成されている。出力装置71には、表示部、プリンタ等が含まれ、出力装置71は、演算装置59による演算結果等を出力可能に構成されている。
【0044】
演算装置59は、CPU、ROM、RAM等からなり、ROMに格納されたプログラムを実行することにより所定の機能を発揮する。演算装置59の機能には、少なくとも、相対変位量導出部63と、判定部60と、測定部62と、解析部66と、プローブ制御部67と、が含まれる。
【0045】
相対変位量導出部63は、変位測定部61の測定結果を用い、ワーク台16を基準とするプローブ18の相対変位量を導出する。プローブ制御部67は、相対変位量導出部63によって導出されたプローブ18の相対変位量に基づいて、X軸、Y軸、Z軸ドライバ34,33,32に信号を出力する。これにより、プローブ18は、目標位置に正確に制御される。
【0046】
判定部60は、プローブ18の先端部の振動に応じてプローブ18の先端部とワークW又は汚染微粒子との接触又は近接を判定する。測定部62は、判定部60によるプローブ18とワークW又は汚染微粒子との接触又は近接の有無及び相対変位量導出部63によって測定された相対変位量に基づいて、ワーク表面上の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する。なお、上記の「接触」とは、プローブ18の先端部が実際に汚染微粒子等に接触した場合をいい、「近接」とは、実際には汚染微粒子等に接触していないものの、プローブ18の先端部が、汚染微粒子等との相互作用によってプローブ18の振幅が変化する程度に汚染微粒子等と所定範囲内まで近接した場合をいう。
【0047】
判定部60は、プローブ18の先端部の振幅の変化からプローブ18とワークW又は汚染微粒子との接触又は近接を判定する。その原理を図6を参照しながら説明する。プローブ18の先端部が被測定ワークWの表面から十分はなれているときには、プローブ18が振動するときの振幅は一定値を保つ(図6中のA領域)。一方、プローブ18の先端部が汚染微粒子の表面に接触又は所定範囲内に近接するとプローブ18の振幅は減衰する(図6中のB領域)。これは、プローブ18の先端部が汚染微粒子の表面からせん断力(シア・フォース)を受けるためと解される。この振幅の減衰は非常に急峻であるため、この振幅変化の検出により、プローブ18先端部と汚染微粒子の上面との接触又は近接を検出することができる。さらに、プローブ18の先端部がワークWの表面に接触又は所定範囲内に近接するとプローブ18の振動の振幅はさらに減衰する(図6のD領域)。この振幅減衰まではプローブ18の振幅は一定値を保つ(図6中のC領域)。このD領域での振幅減衰も非常に急峻であるので、この振幅変化の検出により、プローブ18先端部とワーク表面との接触又は近接を検出できる。ただし、C領域では、プローブ18が汚染微粒子の中に入り込んだ状態となるため、実際の測定では、プローブ18を保護する観点から、C領域に入ったことが検知されたときに、プローブ制御部67がプローブ18を戻すように制御を行うようにしてもよい。
【0048】
測定部62は、B領域からD領域までのプローブ18の変位量から汚染微粒子の高さを導出する。また測定部62は、X軸方向及びY軸方向における複数個所で汚染微粒子の高さ(又は上面位置)を測定し、これらを連続点として測定結果を統計処理することにより汚染微粒子の形状を導出する。汚染微粒子の形状を導出するには、例えば、接触又は近接が検知されたときの座標データ(x、y、z)を順次記憶していき、これら座標データから回帰曲面を演算して粒径を導出することが可能である。そして、ワークWの表面の所定範囲に亘って多数の汚染微粒子の検出を行うことにより、汚染微粒子の分布及び付着密度を演算することができる。この測定では、粒径30nm以下の汚染微粒子についても形状に関する値を測定することが可能である。なお、測定部62は、ワーク表面の位置を予め記憶しておき、B領域にあるプローブ18の位置と、記憶されたワーク表面の位置との差分に基づいて、汚染微粒子の高さを導出するようにしてもよい。こうすれば、プローブ18の先端部がC領域に入ったことが検知された時点でプローブ18を戻す制御を行ったとしても、汚染微粒子の高さを導出することができるようになる。この場合でも、1つの汚染微粒子に対して複数位置で繰り返し測定を行うことにより、汚染微粒子についての形状に関する測定値を導出することができる。
【0049】
なお、露の形状は、3次元形状として特定してもよく、あるいは水平面内の2次元形状として特定してもよい。2次元形状として特定する場合には、粒径で汚染微粒子の形状を規定することができる。粒径は回帰計算によって算出してもよく、あるいは所定方向の汚染微粒子の幅を複数個所測定しておいて、そのうちの最大幅を採用してもよい。
【0050】
また、試験制御部14が指示するZ軸変位量データとZ軸変位機構25で変位する実際の変位量との関係を予め校正しておくことによって、試験制御部14が指示するZ軸変位量データにより、実際のZ軸方向の変位量を取得することができる。X軸方向、Y軸方向についても同様である。
【0051】
解析部66には、測定部62によって測定された汚染微粒子の形状をワーク表面の傾きに応じて補正する補正処理部66aと、画像処理部66bとが含まれている。補正処理部66aは、ワーク表面が基準平面に対して傾斜している場合に、その傾斜角度に応じて粒径を補正する処理を行う。基準平面は、Z軸方向に垂直な方向の平面であり、予め記憶されているものである。一方、ワーク表面は、プローブ18の先端部とワーク表面との接触・近接位置(Z軸方向)を複数取得し、それを平均化したものである。補正処理部66aは、基準平面とワーク表面とのなす角度θを演算し、測定部62が導出した粒径を補正する。なお、プローブ18がC領域に達したことが検知されたときに、プローブ18を戻す動作を実行する場合には、補正処理部66aを省略した構成としてもよい。
【0052】
画像処理部66bは、出力装置71の表示部に汚染微粒子の画像を表示するための処理を行う制御部である。表示部には、XY平面内での汚染微粒子の形状の二次元表示をするとともに、Z軸方向の高さを色分けする等の処理を行うことができる。
【0053】
第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3では、以上説明した構成の測定装置10を用いて汚染微粒子の測定を行う。この測定ステップでは、ワーク台16にワークWをセットし、X軸変位機構23及びY軸変位機構24を駆動することによりワーク台16を所定の位置にセットする。そして、水晶振動子55によってプローブ18の先端部を振動させながらZ軸変位機構25によりプローブ18を降下させる。これにより、ワークWがセットされたワーク台16に対するプローブ18のZ軸方向の位置が変わる。そして、プローブ18の先端部が汚染微粒子の表面又はワークWの表面と接触又は近接すると、前述したようにプローブ18の振幅が急激に変化するので、この振幅変化が発生するまでのプローブ18の移動量に基づいて、汚染微粒子の高さを導出し、これをX軸方向及びY軸方向の複数個所で繰返し測定することにより、汚染微粒子の形状及び分布を測定する。
【0054】
なお、第1測定ステップST2と第2測定ステップST3では、測定対象となるワークWが前記所定の工程に導入される前のものか、後のものかという違いがあるだけで、全く同じ方法で測定が行われる。また、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3では、ワークWの同じ個所を複数回繰り返して測定し、その平均値を算出するようにしてもよい。
【0055】
次に、前記評価ステップST4では、同一のワークWに対し、第1測定ステップST2で取得された形状及び分布に関する特性値と第2測定ステップST3で取得された形状及び分布に関する特性値とを比較する。そして、この比較結果に基づいて、前記所定の工程の汚染度合いを評価する。すなわち、両ステップST2,ST3で得られた形状及び分布に関する特性値のうち、例えば粒径の平均値の差分、微粒子の分布密度の差分を導出し、その導出データをそのまま出力することにより汚染度合いの評価値としてもよい。あるいは、例えば工程の汚染度合いをランク分けしておいて、導出データをランクによる評価値で出力するようにしてもよい。
【0056】
一方、前記予備測定ステップST1では、前記測定装置10を用いないで汚染微粒子の測定を行う。この予備測定ステップST1では、粒径が30nmを超える汚染微粒子の測定が可能な方法で行われ、この測定方法としては、例えばレーザ散乱光検出法等の公知の種々の方法を採用することができる。レーザ散乱光検出法は、ワークWにレーザ光を照射して、汚染微粒子による散乱光を受光部で検出することにより、ワークW表面の汚染微粒子の粒径及び分布を測定する方法であり、測定精度が高い。この方法の場合には、例えば波長266nmのレーザ光を用いることができ、波長が266nmであれば、粒径30nmの微粒子の測定が可能である。
【0057】
この予備測定ステップST1において得られた形状及び分布に関する特性値についての測定値が所定の条件を満たさなかった場合には、その測定値が得られたワークについては、第1測定ステップST2での測定対象から除外される。所定の条件を満たさない場合とは、例えば、付着した汚染微粒子の分布密度が閾値よりも高いような場合である。分布密度が高いものを除外することにより、汚染微粒子で汚染されたワークWで汚染度合いの評価を行うことが防止される。なお、予備測定ステップST1において、汚染微粒子による汚染度合いが所定範囲内に抑えられたワークW、言い換えると表面の汚染度合いが既知の評価用ワークを使用するようにしてもよい。
【0058】
前記比較ステップST5では、レーザ散乱光検出法(予備測定ステップST1)によって測定された汚染微粒子の粒径及び分布と、シアフォース法(第1測定ステップST2)によって測定された汚染微粒子の粒径及び分布との比較を行う。すなわち、比較ステップST5においては、ワーク表面の所定の場所における両者の汚染微粒子の分布を比較するとともに、その場所での両者の汚染微粒子の平均粒径を比較する。粒径が30nmを越える微粒子については、2つの方法で粒径及び分布を測定することができるため、シアフォース法によって測定された値をレーザ散乱光検出法のように測定精度が既知である方法によって測定された値と比較することにより、第1測定ステップST2で測定された汚染微粒子の粒径及び分布に関する特性値についての検証を行うことができる。したがって、汚染評価の妥当性を随時評価することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、半導体デバイス製造工程中の所定の製造工程における前段階と後段階のそれぞれにおいて、ワーク表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定し、その比較結果から前記所定の工程における汚染微粒子の発生度合いを評価するので、チャンバー等に加工を施すことなく製造工程における汚染度合いを評価することができる。
【0060】
また本実施形態では、汚染微粒子の測定を行う第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3において、プローブ18の先端部の振動変化から汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定するので、レーザ照射装置等の大型で高価な装置を使うことなく汚染微粒子を測定することができる。
【0061】
また本実施形態では、ワーク表面の汚染微粒子のうち粒径が30nmを超える汚染微粒子については、予備測定ステップST1と第1測定ステップST2の双方において形状及び分布に関する特性値が得られ、比較ステップST5において両ステップST1,ST2での測定結果を比較するので、粒径が30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値が測定可能な第1測定ステップST2での測定精度の検証を、粒径30nm超の汚染微粒子について行うことができる。
【0062】
さらに、予備測定ステップST1での測定値と第1測定ステップST2での測定値との相関関係を示す関数等を導出するので、粒径が30nm以下の汚染微粒子についても第1測定ステップST2の測定精度の検証が可能となる。また、粒径が30nmを超える汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能な方法による予備測定ステップST1の測定結果から、粒径が30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を推定することが可能となる。
【0063】
また本実施形態では、予備測定ステップST1における測定結果が所定範囲に収まるワークのみを第1測定ステップST2での測定対象とするので、評価精度が低下することを抑止することができる。
【0064】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3において、プローブ先端部が汚染微粒子と接触又は近接したことを検出し、この検出に基づいて汚染微粒子の形状及び分布を測定するようにした。これに対し、第2実施形態では、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3において、ワークWを結露環境下に置いてワーク表面上に結露を発生させ、汚染微粒子を核として成長した露の形状及び分布を測定して、この露の形状及び分布から汚染微粒子の形状及び分布を求めるようにしている。以下、具体的に説明する。
【0065】
図7に示すように、測定装置10のワーク台16には、ワークWを収納可能な測定空間Sを有する測定槽40が設けられている。測定槽40はワーク台16に設置されているため、ワーク台16とともに水平方向に移動する。測定槽40の上面には、プローブ18を挿通させる開口40aが設けられている。そして、プローブ18の下端部は測定空間S内に配置されている。なお、図示省略しているが、測定槽40には、ワークWの出し入れができるように開閉扉が設けられている。また、測定槽40は、ワーク台16に設置される構成に限られるものではない。測定槽40は、例えばワーク台16を包囲するように設けられていてもよい。
【0066】
測定空間S内には、空調部42によって所定の温湿度に調整された空気が流通する。空調部42は、空気の温湿度を所定の温湿度に調整するとともに、この調整された空気を給気通路41を通して測定空間S内に導入する。測定空間S内の空気は排気通路43を通して空調部42に戻されるため、測定時には測定空間S内の空気が常時流通する。
【0067】
測定装置10には、測定空間S内の温度を検出する周囲温度検出部としての周囲温度センサ44と、測定空間S内の湿度を検出する周囲湿度検出部としての周囲湿度センサ45と、が設けられ、これらセンサ44,45の検出信号は、試験制御部14に入力される。試験制御部14には、温湿度測定部47(図8参照)が設けられており、温湿度測定部47は、センサ44,45からの検出信号に応じて、測定空間S内の温度及び湿度を導出する。試験制御部14の演算装置59には、その一機能として環境制御部46が含まれており、環境制御部46は、温湿度測定部47によって導出された温度及び湿度に基づいて、空調部42を制御する。つまり、環境制御部46は、センサ44,45からの検出結果に基づいて、測定空間S内の温度が所定の温度及び湿度になるように空調部42を制御する。なお、空調部42は、除湿空気又は加熱空気を供給可能であり、ワークWを乾燥させて再測定の準備を行うことも可能である。
【0068】
装置本体12は、ワーク表面で結露を生じさせる結露誘起手段として、冷却機構48を有している。冷却機構48は、ワーク表面が露点以下になるようにワークWを冷却するものである。具体的に、冷却機構48は、図8に示すように、ワーク表面を冷却する冷却部50と、ワーク表面の温度を検出するワーク温度検出部としてのワーク温度センサ51と、ワーク表面の温度が所定の温度になるように冷却部50を制御するワーク温度制御部52と、を有する。本第2実施形態では、冷却部50は、ペルチエ素子の吸熱部によって構成されており、図7に示すようにワーク台16に載置されている。ワーク温度制御部52は、試験制御部14の演算装置59の一機能として含まれているものであり、ワーク温度センサ51の検出結果に基づいてペルチエ素子へ印加する電圧を制御する。なお、冷却機構48は、ペルチエ素子を有する構成に限られるものではない。例えば、熱媒体を導入可能に構成された冷却板を用い、この冷却板内に熱媒体を導入して冷却板の温度を調整する機構等を例示することができる。
【0069】
演算装置59の機能には、少なくとも、相対変位量導出部63と、判定部60と、測定部62と、解析部66と、プローブ制御部67とが含まれる。解析部66には、補正処理部66aと、画像処理部66bと、導出処理部66cと、が含まれる。
【0070】
判定部60によるB領域(図6)での判定は、第1実施形態と異なり、プローブ18と露との接触又は近接の判定となる。すなわち、プローブ18の先端部がワークWの表面から十分に離れた状態では、プローブ18の先端部の振幅は一定値を維持し(図6中のA領域)、この状態から振幅が減衰したときに(図6中のB領域)、プローブ18の先端部が露の表面に接触又は近接したと判定する。つまり、ワーク表面上には汚染微粒子を核として成長した露が存在し、プローブ18の先端部がこの露に接触又は近接すると振幅が変化する。そして、プローブ18の先端部が更にワークWに近づいて図6のD領域に達すると、判定部60は、ワーク表面位置(露の下面位置)が検出されたと判定する。なお、プローブ18の先端部がC領域に入ったことが検知されたときに、プローブ制御部67がプローブ18を戻すように制御を行うようにしてもよい。ただし、この場合には、露の下面位置を導出できないことになるので、測定部62は、露の上面位置のみを導出することになり、露の下面位置は、予め設定されたワーク表面位置で代用することとなる。
【0071】
測定部62は、B領域までのプローブ18の変位量に基づいて露の上面位置を導出するとともにD領域までのプローブ18の変位量に基づいて露の下面を導出する。これをX軸方向及びY軸方向の複数個所で行う。そして、これらの測定結果を連続点として統計処理することにより露の上面及び下面を表す関数を導出する。
【0072】
測定部62は、測定された露の上面についての位置情報を統計処理して露の形状に関する特性値(例えば粒径等)を導出するとともに、露の下面(ワーク表面)が基準平面に対して傾斜している場合に、その傾斜角度に応じて露の幅(又は粒径)を補正する処理を行う。
【0073】
粒径の導出に際しては、露の上面についての位置情報を連続点として統計処理することにより、露の形状を表す関数を導出する。この処理は露ごとに行われる。そして、図9に示すように、予め設定された所定の方向における最大幅を粒径として導出する。なお、露の粒径の導出に際しては、測定データから露の最大幅を有する方向を特定し、その方向における露の幅を粒径として導出するようにしてもよい。
【0074】
前記基準平面は、Z軸方向に垂直な方向の平面であり、予め記憶されているものである。一方、露の下面(ワーク表面)は、プローブ18の先端部とワーク表面との接触位置又は近接位置(Z軸方向)を複数測定して平均化したものである。
【0075】
補正処理部66aは、基準平面とワーク表面とのなす角度θを演算し、測定部62が導出した粒径を補正する。補正処理部66aは、図10に示すように、基準平面とワーク表面とのなす角度θを演算し、実測された粒径d1を以下の関係式
d2=d1/cosθ
を用いて補正し、粒径d2を導出する。なお、図10は、図9におけるX−X線上の露を例示したものである。また、図11に示すように、ワーク表面が基準平面と一致していれば、粒径d1が補正後の粒径として導出される。なお、図11は、図9におけるXI−XI線上の露を例示したものである。
【0076】
なお、露の形状は、3次元形状として特定してもよく、あるいは水平面内の2次元形状として特定してもよい。
【0077】
導出処理部66cは、露の粒径の時間経過に伴う変化割合から露の核、すなわち汚染微粒子の大きさを導出する導出手段として機能する。導出処理部66cは、露の成長度合いを導出するとともに、その成長度合いから汚染微粒子の大きさを導出する。すなわち、導出処理部66cは、粒径測定を所定時間ごとに繰返し行い、図12に示すように、経過時間と粒径とを関連付けて記憶する。そして、導出処理部66cは、粒径が経過時間に対して比例的に変化(1次相関)するものとして変化割合を導出し、この変化割合から結露開始時点の粒径を導出する。導出処理部66cは、この結露開始時点での粒径を核となり得る汚染微粒子の大きさとして導出する。この導出は、露ごとに行われる。結露開始時点としては、例えば、周囲温度センサ44によって測定された測定槽40内の温度、及び周囲湿度センサ45によって測定された測定槽40内の湿度により、測定槽40内の空気が露点に到達したと判定される時点を採用することができる。あるいは、既知粒径の微粒子がワーク表面に付着された標準試料を用いて、露点到達時間から結露が開始する時間までの間隔を実験又は解析によって予め求めておき、露点到達時間をこの間隔で補正して得られた時点を結露開始時点としてもよい。
【0078】
また、導出処理部66cは、露ごとに粒径の変化割合を導出するが、このとき最小の変化割合を示す露に対して一定の閾値以上の変化割合を示す露のデータについては破棄する。すなわち、露の成長時には、露が単独で成長する独立成長と、隣接した露同士が互いに融合して成長する融合成長とが見られる。融合成長の場合には、粒径が段階的に大きくなるため、経過時間に対して1次回帰直線を求めるとすれば、結露開始時点での粒径を正しく求めることはできない。一方で、融合成長の場合の粒径の成長速度を1次回帰によって求めた場合には、独立成長の場合の成長速度の3倍程度となる知見が得られている。このため、粒径の成長速度を1次回帰によって求めた場合に、最小の変化割合の露に対して一定の閾値以上の変化割合を示す露については、融合成長の場合である可能性が高いこととなる。このため、このような成長割合を示す露のデータを導出対象又は測定結果から除外することにより、核の大きさの推定精度を向上させる。なお、前記の閾値としては、例えば「2」が採用される。例えば図12では、「A」の露の傾きを1としたときに「B」の露では、傾きが2.8となっているので、融合成長としてデータ破棄される。また図中の外挿値とは、結露開始時点での粒径、すなわち汚染微粒子の粒径を意味している。
【0079】
また、破棄データの有無により、融合成長の有無が判定できる。したがって、破棄データの有無を図外の表示部に表示する等して、融合成長の有無を判断し易くすれば、再測定時に冷却速度、測定時間間隔等を設定し直すことにより、融合しない条件で測定することも可能となる。
【0080】
画像処理部66bは、図外の表示部に、導出された露の形状の画像を表示したり、図12に示すように経過時間と粒径との相関を示す表やグラフを表示したりするための処理を行う制御部である。表示部には、図9に示すように、XY平面内での露の形状の二次元表示をするとともに、Z軸方向の高さを色分けする処理が行われて表示される。
【0081】
ここで、第2実施形態による第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3における測定手順について説明する。
【0082】
まず、ワーク台16にワークWをセットし、測定槽40内を所定の温度及び湿度に調整する。その後、ペルチエ素子を駆動してワークWを冷却する。このときワーク表面が露点以下になるように冷却を行う(結露誘起ステップ)。これに伴い、ワーク表面では結露が生ずる。この結露は、汚染微粒子を核として成長する。
【0083】
次に、ワーク表面上の露の粒径を導出する(露形状導出ステップ)。具体的には、X軸変位機構23及びY軸変位機構24を駆動することによりワーク台16を所定の位置にセットし、水晶振動子55によってプローブ18の先端部を振動させながらZ軸変位機構25によりプローブ18を降下させる。これにより、ワークWがセットされたワーク台16に対するプローブ18のZ軸方向の位置が変わる。そして、プローブ18の先端部が露の表面と接触又は近接すると、前述したようにプローブ18の振幅が急激に変化するので、この振幅変化に基づいて、露表面までのプローブ18の移動量から露の上面位置及び下面位置を導出する。これをX軸方向及びY軸方向の複数個所で繰返し行い、上面についての位置情報を統計処理することにより、露の粒径を導出する。このとき、下面位置に関する位置情報に基づいて、露の粒径の補正を行う。
【0084】
次に、経過時間に伴う粒径の変化割合に基づいて、結露の核となり得る汚染微粒子の大きさを導出する(導出ステップ)。この導出ステップでは、経過時間に対する粒径の変化割合が最小のものに対して例えば2倍以上の変化割合を示すものについては、データを破棄する。これにより、独立成長の露についての成長速度のみが使用されて、結露開始時点の粒径が導出される。この導出された粒径が汚染微粒子の粒径として図外の表示器に表示される。
【0085】
第2実施形態では、汚染微粒子の形状を直接測定するのではなく、汚染微粒子を核として成長した露の粒径を測定するとともに、粒径の変化割合に基づいて汚染微粒子の形状を導出している。このため、汚染微粒子の粒径が30nm以下の場合であっても、粒径が30nmを超える露について測定することで、汚染微粒子の測定をすることができるので、第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3での測定精度を向上することができる。
【0086】
所定の閾値以上の成長度合いを示す露については、露同士が融合して成長したもの(融合成長)であると推測される。このため、第2実施形態のように、所定の閾値以上の成長度合いを示すデータを除外すれば、露が単独で成長する(独立成長)ときの成長度合いを求めることができるので、露の核の大きさを精度よく求めることができる。
【0087】
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、他の測定方法による検証が可能となっている。このため、露の粒径が30nmを超え、測定精度が確保される場合であっても、さらなる検証を行うことにより、測定値を保証することができる。
【0088】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記各実施形態ではワーク台16がY軸ステージ36上に設置される構成について説明したが、これに代え、ワーク台16が基台29に固定されるとともに、プローブ18を支持するスタンド30がX軸方向及びY軸方向に可動するように設けられる構成としてもよい。この構成では、プローブ18が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となる。
【0089】
また、前記各実施形態では、プローブ18がZ軸方向に移動可能な構成としたが、これに代え、プローブ18がスタンド30に対して固定されるとともに、ワーク台16がZ軸ステージにも支持されることでZ軸方向に移動可能な構成としてもよい。この構成では、ワーク台16が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となる。
【0090】
また、第2実施形態では、補正処理部66aが露の下面(ワーク表面)と基準平面との傾斜角度に応じて粒径を補正するようにしたが、ワーク表面の平坦度が確保されている場合等には、粒径を補正する制御を省略することも可能である。
【0091】
また、第2実施形態では、スタンド30、Z軸ステージ27、水晶振動子55が測定槽40の外側に配設される構成としたが、これに代え、図13に示すように、測定槽40内にスタンド30、Z軸ステージ27、水晶振動子55、プローブ18が収納される構成としてもよい。図7の構成では、測定空間Sの容積を小さくすることができるので、測定空間S内の温度湿度の変化を早くすることができる。一方、図13の構成では、測定槽40にプローブ18を挿通させる開口40aを設ける必要がなくなるので、測定槽40内を気密状に構成し易くなる。
【0092】
また、第2実施形態では、冷却部50がペルチエ素子の吸熱部によって構成される例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、冷却部50が冷却空気をワークWに接触させるように冷却空気を供給する冷風供給部である冷却空気供給機構(図示省略)を有する構成としてもよい。この態様では、冷却空気が流通する冷風路がワーク台16に設けられ、この冷風路の上面にワーク保持部(図示省略)が設けられる構成となる。このワーク保持部は、例えばパンチ孔が設けられていて、ワークWが冷却空気によって直接冷却されるようにしてもよい。
【0093】
また、第2実施形態では、融合成長の有無を判断する基準として、1次回帰によって得られた粒径の成長速度の傾き(回帰直線の傾き)が最小の傾きの回帰直線に対して所定の閾値以上の変化割合を示すかどうかを基準としたが、これに限られるものではない。すなわち、回帰直線の傾きを基準とするのではなく、隣接2データ間の傾きで判断するようにしてもよい。例えば図14には、1次回帰直線の傾きが最小となっている露の変化割合を示す回帰直線Aと、これよりは傾きの大きな回帰直線Bとを示している。回帰直線Aの傾きに対する回帰直線Bの傾きは例えば1.5である。このため、回帰直線Bについては、前記の閾値未満となっている。この回帰直線Bの基データとなる露に関し、互いに隣接するデータB1とデータB2を結ぶ線分の傾きが例えば3になっているものがある場合には、この露については融合成長があったとして導出対象から除外する。この除外タイミングとしては、データが得られる毎に前回のデータとの差から傾きを導出し、所定の閾値以上の変化割合が発生した時点で導出対象から除外するようにしてもよく(スキップ処理)、あるいは、一連の測定が終了した後に、最終データを破棄することによって測定結果から除外するようにしてもよい。
【0094】
また、前記実施形態の第1測定ステップST2及び第2測定ステップST3では、プローブ18の振動から汚染微粒子又は露の表面を検出するようにしたが、これに限られるものではない。例えば、顕微鏡、デジタルマイクロスコープ等の拡大器と、この拡大器によって取得された画像を表示器に表示させる表示制御器と、表示器に表示された画像データから露の粒径を測定するとともに、その変化割合から結露の核となり得る付着物の粒径を導出する画像試験制御部とを有する構成としてもよい。この構成では、画像試験制御部が画像データから汚染微粒子又は露の境界面(周面)を認識し、この境界面から粒径を導出することも可能であり、あるいは、露の境界面(周面)を表示器上で人がポイントできるようにして、2点間の距離から粒径を導出するようにしてもよい。
【0095】
また、露の粒径の測定は、いわゆる位相シフト干渉法によって行ってもよい。具体的には、測定装置10は、図15に示すように、測定光を出射する光源83と、光束を分離させるビームスプリッタ84と、測定光をワークWの表面(または露の表面)に集光させる第1集光素子85と、測定光から分離された参照光が照射される参照面86と、参照光を参照面86に集光させる第2集光素子87と、測定光及び参照光の干渉光を検出する光検出器88と、を有する光学系89を有する。参照面86はピエゾ素子(PZT)90によって光軸方向に移動可能となっている。そして、この参照面86の位置を変えながら干渉光の強度変化を測定し、この強度変化から測定光と参照光との位相差を算出でき、また測定光の波長を加味することにより、露の表面位置(露の厚み)が得られ、この測定を光軸とは直交する方向に複数個所で行うことにより、露の表面が連続面であるとして、露の形状を算出することができる。そして、この露の形状から露の粒径を導出することができる。
【符号の説明】
【0096】
16 ワーク台
18 プローブ
ST1 予備測定ステップ
ST2 第1測定ステップ
ST3 第2測定ステップ
ST4 評価ステップ
ST5 比較ステップ
W ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス製造工程中の所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する方法であって、
前記所定の工程の前の段階でワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第1測定ステップと、
前記所定の工程を通された前記ワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第2測定ステップと、
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでの測定結果に基づいて、前記所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する評価ステップと、が含まれている半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項2】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、前記汚染微粒子に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する、請求項1に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項3】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップには、
ワーク表面が露点以下になるようにワーク雰囲気の冷却を行う結露誘起ステップと、
プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、ワーク表面上の露に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記露の形状に関する特性値を導出する露形状導出ステップと、
経過時間に伴う前記露の形状に関する特性値の変化割合に基づいて、結露の核となる汚染微粒子の形状に関する特性値を測定する導出ステップと、が含まれている請求項1に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項4】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、粒径30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を導出可能である請求項2又は3に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項5】
前記第1測定ステップの前に、粒径が30nmを超える汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能な方法で、前記ワークの表面の汚染微粒子を測定する予備測定ステップと、
前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較する比較ステップと、が含まれている請求項4に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項6】
前記比較ステップにおいて、前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値との相関関係を導出する請求項5に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項7】
前記予備測定ステップで得られた測定値が所定の条件を満足しない場合には、当該測定値が得られたワークを前記第1測定ステップでの測定対象から除外する請求項5に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項8】
前記第1測定ステップでは、前記ワークとして、表面の汚染度合いが既知の評価用ワークを使用する請求項1から7の何れか1項に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項1】
半導体デバイス製造工程中の所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する方法であって、
前記所定の工程の前の段階でワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第1測定ステップと、
前記所定の工程を通された前記ワークの表面の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する第2測定ステップと、
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでの測定結果に基づいて、前記所定の工程での汚染微粒子の発生度合いを評価する評価ステップと、が含まれている半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項2】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、前記汚染微粒子に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定する、請求項1に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項3】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップには、
ワーク表面が露点以下になるようにワーク雰囲気の冷却を行う結露誘起ステップと、
プローブの先端部を振動させながら、前記ワークがセットされたワーク台に対する前記プローブの相対的な位置を変え、ワーク表面上の露に対するプローブ先端部の接触又は近接に伴う当該先端部の振動変化に応じて前記露の形状に関する特性値を導出する露形状導出ステップと、
経過時間に伴う前記露の形状に関する特性値の変化割合に基づいて、結露の核となる汚染微粒子の形状に関する特性値を測定する導出ステップと、が含まれている請求項1に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項4】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップでは、粒径30nm以下の汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を導出可能である請求項2又は3に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項5】
前記第1測定ステップの前に、粒径が30nmを超える汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値を測定可能な方法で、前記ワークの表面の汚染微粒子を測定する予備測定ステップと、
前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値とを比較する比較ステップと、が含まれている請求項4に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項6】
前記比較ステップにおいて、前記予備測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値と、前記第1測定ステップで測定された汚染微粒子の形状及び分布に関する特性値との相関関係を導出する請求項5に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項7】
前記予備測定ステップで得られた測定値が所定の条件を満足しない場合には、当該測定値が得られたワークを前記第1測定ステップでの測定対象から除外する請求項5に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【請求項8】
前記第1測定ステップでは、前記ワークとして、表面の汚染度合いが既知の評価用ワークを使用する請求項1から7の何れか1項に記載の半導体デバイス製造工程の汚染評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−238864(P2010−238864A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84391(P2009−84391)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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