説明

半導体パッケージ

【課題】現実的な実装方法で寄生インダクタンスを低減する手段を提供する。
【解決手段】半導体パッケージ1表層には、ワイヤボンディングの接続点である該半導体パッケージ表層上で突出する複数の櫛歯状グラウンドパッド31を有するグラウンドパッドを設ける。櫛歯状グラウンドパッドの間には、電源パッド25を配置する。
1つの櫛歯状グラウンドパッド31には長短二本のグラウンドワイヤが配される。また、1つの電源パッド25には長短二本の電源ワイヤが配される。
長いグラウンドワイヤ12−2と長い電源ワイヤ11−2、短い電源ワイヤ11−1と短いグラウンドワイヤ12−1を平行かつ近接するように配置することで寄生インダクタンスを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ、特にボンディング時の誤差に左右されること無く寄生インダクタンスの低減を可能とする半導体パッケージのパッド配置及びパッド形状に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、半導体チップとプリント基板を電気的に接続する役割を持っており、半導体チップの信号ピンとプリント基板の信号配線の接続をとっている。同時に、半導体チップへの電源供給を担っており、チップの電源ピンおよびグラウンドピンとプリント基板の電源およびグラウンドを電気的に接続している。
【0003】
半導体チップの安定動作の実現には、半導体チップの給電点における電源およびグラウンドの動的な電圧変動、すなわち電源ノイズを抑える必要がある。一方で、近年の半導体チップの動作周波数の高速化と低電圧動作により、電源ノイズは増大し、ノイズマージンが低下する傾向にある。したがって、半導体パッケージの給電能力の向上が必要となっている。
【0004】
動的な電源ノイズは、チップに流れる電流の時間変化をdi/dtとし、変動電圧をVnoiseとすると、Vnoise=L×di/dtで表すことができる。ここで、Lは給電経路のインダクタンスであり、半導体パッケージの給電経路のインダクタンスを低減することで、電源ノイズの改善が見込める。
【0005】
また、半導体チップの信号伝送の高速化に対応するために、チップの信号配線とI/O電源およびグラウンド間のインダクタンスに起因する同時駆動ノイズ低減が課題となっており、I/O電源およびグラウンド間のインダクタンス低減も必要となっている。
【0006】
半導体パッケージには、半導体チップとパッケージの接続にワイヤボンディングを使用するものがある。図1は、ワイヤボンディングを使用した接続によるパッケージをプリント基板に搭載した状態の一例の鳥瞰図である。また、図2はワイヤボンディングを使用した接続によるパッケージをプリント基板に搭載した状態の一例の断面図である。
【0007】
半導体チップ1はパッケージ2の表層に固定される。信号、電源、グラウンドの接続を取るために、半導体チップ1はボンディングワイヤ4によってパッケージ2の導体層5に接続される。パッケージ2は二層以上の多層構造となっており、各導体層はビアホール6によって接続される。またハンダボール7によりパッケージ2とプリント基板3が接続される。プリント基板3にも、パッケージ基板導体層8が多層にわたって設けられており、パッケージ基板ビアホール10を通してバイパスコンデンサ9に接続されている。
【0008】
図3は、ワイヤボンディングを使用した接続によるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【0009】
電源パッド25及びグラウンドパッド26は、半導体チップ1を囲む半導体表層に形成されている。電源パッド25に対して電源ワイヤ11が接続され、グラウンドパッド26に対してグラウンドワイヤ12がそれぞれ接続される。
【0010】
図示してはいないが、半導体チップ1から電源パッド25よりも遠い位置に信号パッドが配置され、電源パッド25およびグラウンドパッド26を飛び越える形で信号ワイヤがボンディングされる。電源パッド25とグラウンドパッド26のいずれが半導体チップ1に近いかは設計事項である。したがって、図3と異なり、電源パッド25が半導体チップ1に近い配置になることも考えられる。
【0011】
このようにワイヤボンディングを用いた半導体パッケージのボンディングワイヤ起因のインダクタンスは、電流の閉ループを形成する電源ワイヤとグラウンドワイヤの自己インダクタンスの和から、電源ワイヤとグラウンドワイヤ間の相互インダクタンスの和を引いたものとなる。図4はこの自己インダクタンス、相互インダクタンスの関係を示すモデルである。
【0012】
このモデルでは、半導体チップ1を定電流源と、パッケージ2を直流電源と見做す。電源パッド25に接続されたボンディングワイヤ(電源ワイヤ11)の自己インダクタンスをL_pow、グラウンドパッド26に接続されたボンディングワイヤ(グラウンドワイヤ12)の自己インダクタンスをL_gndと定義する。また、電源ボンディングワイヤとグラウンドボンディングワイヤとの間の相互インダクタンスをMとおくと、寄生インダクタンスLは以下の式で表される。
【0013】
【数1】

数1からも明らかな通り、寄生インダクタンスを小さくするためには、各自己インダクタンスを小さくすると共に相互インダクタンスMを大きくしてやればよい。
【0014】
図3に示したようなパッケージでは、電源ワイヤ11とグラウンドワイヤ12のワイヤ長が異なることとなる。そのため、電源ワイヤ11とグラウンドワイヤ12を隣接させて配置しても、相互インダクタンスは小さくなってしまう。このため、電源ワイヤ11とグラウンドワイヤ12が作るループの寄生インダクタンスが大きくなってしまい、パッケージの給電性能低下の一要因となる。また、同様に図示しない信号ワイヤとグラウンドワイヤ12の相互インダクタンスも小さくなる為、同時駆動ノイズの悪化要因となる。
【0015】
この問題に対して、過去にも多くの解決手段が提唱されている。
【0016】
特開2000−260809号公報(特許文献1)記載の発明では、パッケージ2の表層における電源パッド25及びグラウンドパッド26を櫛歯状にして組み合わせることで、電源ワイヤ11とグランウンドワイヤ12双方の長さを短くし、これにより自己インダクタンスを低減する技術を開示する。
【0017】
図5は特許文献1記載のパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。この図からも明らかなように電源パッド25からは櫛歯状電源パッド33を、グラウンドパッド26からは櫛歯状グラウンドパッド34を互いに組み合うように突出させる。これにより、半導体チップ1のパッド29からの距離を電源及びグラウンド共に等しくすることが可能となる。
【0018】
また特開2006−344740号公報(特許文献2)では、特許文献1同様の構造に加え、ビアホールをパッドの櫛歯状の部分に配置することでビアホールまでの距離を短縮する方法が示されている。すなわち電源とグラウンドを近接させることで、相互インダクタンスMを低減させる。
【0019】
特開平6−112359号公報(特許文献3)も特許文献2同様に、ワイヤ長を短くし、電源およびグラウンドを近接させることで、相互インダクタンスMを低減させる技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2000−260809号公報
【特許文献2】特開2006−344740号公報
【特許文献3】特開平6−112359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、上記各特許文献記載の技術にも種々の問題点がある。
【0022】
上記各特許文献記載の技術では、電源ワイヤ11とグラウンドワイヤ12を同じ長さとするために、チップ側パッドの間隔とほぼ等しい間隔で、パッケージ2の表層の電源パッド25及びグラウンドパッド26にワイヤをボンディングする必要がある。
【0023】
しかし、パッケージ2の表層のボンディング位置のずれが生じると、電源グラウンド間の短絡の虞がある。この問題の回避のために隣接する電源パッド25・グラウンドパッド26間のピッチを広く取る必要はある。これではワイヤ間の狭ピッチ化は困難である。
【0024】
また、信号配線とグラウンドワイヤ間の相互インダクタンスを大きくすることで同時駆動ノイズの低減を図ることも難しい。
【0025】
本発明の目的は、現実的な実装方法で寄生インダクタンスを低減する手段を提供することにある。
【0026】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0028】
本発明の代表的な実施の形態に関わる半導体パッケージは、半導体チップを搭載し、この半導体チップとワイヤボンディングによる接続を有し、この半導体パッケージはワイヤボンディングの接続点であるグラウンドパッドを表層に有し、グラウンドパッドは半導体パッケージ表層上で突出する櫛歯状グラウンドパッドを有し、櫛歯状グラウンドパッドに2以上のグラウンドワイヤが接続されることを特徴とする。
【0029】
この半導体パッケージにおいて、更に2以上の電源ワイヤが接続される電源パッドを有し、2以上のグラウンドワイヤの一のグラウンドワイヤと2以上の電源ワイヤの一の電源ワイヤは略平行かつ略同長の組みを構成することを特徴としても良い。
【0030】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状グラウンドパッドは2以上存在し、電源パッドは2つの櫛歯状グラウンドパッドに挟まれるように該半導体パッケージ表層に配置されることを特徴としても良い。
【0031】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状グラウンドパッドに接続される2以上のグラウンドワイヤの長さが半導体チップ側のワイヤパッドの間隔以上に差があることを特徴としても良い。
【0032】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状のグラウンドパッドの一部が電源パッドと平行する部分の2倍以上の長さを有し、2倍以上の長さを有する櫛歯状グラウンドパッドの先端側に半導体チップからグラウンドワイヤとは異なる長さのグラウンドワイヤが接続され、2倍以上の長さを有する櫛歯状グラウンドパッドの先端側に接続されたグラウンドワイヤと平行になるように信号ワイヤが配置されることを特徴としても良い。
【0033】
この半導体パッケージにおいて、さらに半導体パッケージ表層上にI/O電源用パッドを有し、信号ワイヤと平行になるようにI/O電源用パッドにI/O電源ワイヤが接続されていることを特徴としても良い。
【0034】
この半導体パッケージにおいて、電源パッドの該半導体パッケージの外周側に接触するように電源ビアホールを有し、I/O用電源のパッドの半導体チップ側に接触するようにI/O電源ビアホールを有し、電源ビアホールあるいはI/O電源ビアホール近傍の櫛歯状グラウンドパッド部にグラウンドビアホールを有することを特徴としても良い。
【0035】
この半導体パッケージにおいて、電源ワイヤ及び電源ワイヤと平行かつ等しい長さであるグラウンドワイヤは長いワイヤと短いワイヤが交互に配置され、信号ワイヤ及び、信号ワイヤとI/O用の電源ワイヤに平行かつ等しい長さであるグラウンドワイヤは長いワイヤと短いワイヤが交互に配置されることを特徴しても良い。
【0036】
本発明の代表的な実施の形態に関わる半導体パッケージは、半導体チップを搭載し、この半導体チップとワイヤボンディングによる接続を有し、この半導体パッケージはワイヤボンディングの接続点であるグラウンドパッド、及び電源パッドを表層に有し、グラウンドパッドは該半導体パッケージ表層上で突出する櫛歯状グラウンドパッドを有し、電源パッドは該半導体パッケージ表層上で突出する櫛歯状電源パッドを有し、櫛歯状グラウンドパッド及び前記櫛歯状電源パッドが該半導体パッケージの周方向で隣接することを特徴とする。
【0037】
この半導体パッケージにおいて、グラウンドパッドを該半導体パッケージの内周側に、電源パッドを該半導体パッケージの外周側に配置することを特徴としても良い。
【0038】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状グラウンドパッド及び櫛歯状電源パッドにはそれぞれ長さの異なるワイヤが2本配置され、櫛歯状グラウンドパッドに配置された2本のワイヤ及び櫛歯状電源パッドに配置された2本のワイヤは長さの長いワイヤと長さの短いワイヤが交互に配置されることを特徴としても良い。
【0039】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状グラウンドパッド及び櫛歯状電源パッドの形状がチップ端に対して斜めとなる略平行四辺形の形状を持つことを特徴としても良い。
【0040】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状グラウンドパッドには2種類の長さを持つワイヤが計4本配置され、櫛歯状グラウンドパッドに配置された長いワイヤの接続点と短いワイヤの接続点の間にグラウンド接続用のビアホールが配置されることを特徴としても良い。
【0041】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状グラウンドパッドをチップ端に対して斜めとなった平行四辺形とし、同じ櫛歯状グラウンドパッドに接続された4本のワイヤの接続位置を櫛歯状グラウンドパッドの中心線から等間隔とすることを特徴としても良い。
【0042】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状グラウンドパッドをチップ端に対して斜めとなった台形とし、同じ櫛歯状グラウンドパッドに接続された4本のワイヤの接続位置を櫛歯状グラウンドパッドの中心線から等間隔とすることを特徴としても良い。
【0043】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状電源パッドには2種類の長さを持つワイヤが計4本配置され、櫛歯状電源パッドに配置された長いワイヤの接続点と短いワイヤの接続点の間に電源接続用のビアホールが配置されることを特徴としても良い。
【0044】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状電源パッドをチップ端に対して斜めとなった平行四辺形とし、同じ櫛歯状電源パッドに接続された4本のワイヤの接続位置を櫛歯状電源パッドの中心線から等間隔とすることを特徴としても良い。
【0045】
この半導体パッケージにおいて、櫛歯状電源パッドをチップ端に対して斜めとなった台形とし、同じ櫛歯状電源パッドに接続された4本のワイヤの接続位置を櫛歯状電源パッドの中心線から等間隔とすることを特徴としても良い。
【0046】
これらの半導体パッケージにおいて、半導体チップの表層上にワイヤパッドを接続した配線を持ち、半導体チップ内配線との接続箇所において電源とグラウンドが交互になるように配置することを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0047】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0048】
本発明の代表的な実施の形態に関わる半導体パッケージにおいては、2種類以上の長さのワイヤによって、電源ワイヤとグラウンドワイヤを構成することで、同じ長さの電源ワイヤとグラウンドワイヤを平行かつ近接して配置しながらも、電源パッドおよびグラウンドパッドの幅をチップ側のパッドピッチよりも広くすることができる。これにより、ボンディング位置のずれによる電源とグラウンドの短絡を回避することができる。結果、ワイヤ起因の寄生インダクタンス低減とワイヤの狭ピッチ化の両立が可能になる。
【0049】
また、グラウンドワイヤおよびI/O電源ワイヤと信号ワイヤを平行かつ近接して配置することができるため、信号とI/O電源およびグラウンド間のループインダクタンスを低減し、同時駆動ノイズを軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ワイヤボンディングを使用した接続によるパッケージをプリント基板に搭載した状態の一例の鳥瞰図である。
【図2】ワイヤボンディングを使用した接続によるパッケージをプリント基板に搭載した状態の一例の断面図である。
【図3】従来のワイヤボンディングを使用した接続によるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【図4】自己インダクタンス、相互インダクタンスの関係を示すモデルである。
【図5】特許文献1記載のパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に関わるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に関わる別のパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に関わるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に関わるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に関わるチップの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に関わる別のパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下図を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0052】
(第1の実施の形態)
図6は、本発明の第1の実施の形態に関わるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【0053】
本実施の形態の半導体パッケージに搭載される半導体チップ1は外周に近いパッド列29−1と、チップの内側に位置するパッド列29−2を持つ。
【0054】
パッド列29−1に属するパッドには電源及びグラウンドのワイヤが接続される。パッド列29−2に属するパッドには、信号、グラウンド、及びI/O電源のワイヤが接続される。
【0055】
グラウンドパッド26にはチップを囲む配線形状の部分に短い櫛歯状グラウンドパッド31、長い櫛歯状グラウンドパッド32が突出して設けられている。櫛歯状パッド31、32の幅はパッド列29−1に属するパッドから並行に張られたワイヤ2本が接続可能な幅とする。そして、パッド列29−1に属するパッドから異なる2種類の長さのグラウンドワイヤ12−1、12−2をボンディングする。なお、電源とグラウンドワイヤの距離をチップ側のパッドより広げることが本発明の目的であるため、グラウンドワイヤ12−1とグラウンドワイヤ12−2の長さの差は、パッド列29−1に属する隣接するパッド同士の間隔以上とする。
【0056】
長い櫛歯状グラウンドパッド32にはパッド列29−2に属するパッドから異なる2種類の長さのグラウンドワイヤ12−3、12−4をボンディングする。グラウンドワイヤ12−3とグラウンドワイヤ12−4の長さの差もパッド列29−2に属する隣接するパッドの間隔以上とする。
【0057】
グラウンドワイヤ12−1、12−2の間(ここで用いる「間」とはワイヤ間の意味であり、必ずしもワイヤ接続点の間ではない)、グラウンドワイヤ12−3、12−4の間には、それぞれビアホールが接続可能なスペースを空けてボンディングを行う。この設けたスペースに、それぞれビアホール21−1、21−2を設ける。
【0058】
図6において、ボンディングに必要なパッド幅を効率的にとるために、短い櫛歯状グラウンドパッド31、長い櫛歯状グラウンドパッド32はチップ端に対して斜めとなった平行四辺形形状としているが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0059】
短い櫛歯状グラウンドパッド31、長い櫛歯状グラウンドパッド32に挟まれる位置に、電源パッド25を配置する。グラウンドビア21−2近傍に電源ビア配置する。これにより、電源パッド25と図示しない下層の配線との接続を取る。
【0060】
各櫛歯状グラウンドパッド31、32同様に、電源パッド25もパッド列29−1に属するパッドから2本分のワイヤボンディングが可能な幅とする。この電源パッド25に接続される電源ワイヤ11−1、11−2は各櫛歯状グラウンドパッド31、32に接続されるグラウンドワイヤと平行になるようにパッド列29−1に属するパッドと接続されている。電源ワイヤ11−1のワイヤ長はグラウンドワイヤ12−1のワイヤ長とほぼ等しい。また、電源ワイヤ11−2のワイヤ長はグラウンドワイヤ12−2のワイヤ長とほぼ等しいものとする。
【0061】
電源ワイヤ11−1とグラウンドワイヤ12−1の間に電源ワイヤ11−2あるいはグラウンドワイヤ12−2が配置されるようにする。この際、略等しい長さの電源ワイヤとグラウンドワイヤがチップパッドの一つおきに配置されるようにする。このように配置することで、パッケージ表層30へのボンディング間隔がチップ列29−1に属するチップ間隔の約2倍とすることが可能となる。これにより、狭ピッチのワイヤボンディングであっても、長さの等しい電源ワイヤとグラウンドワイヤを平行に配置することができる。結果、寄生インダクタンスを低減できる。
【0062】
また、グラウンドワイヤ12−3、12−4と平行かつ近接して信号ワイヤ13−1、13−2をボンディングできるように長い櫛歯状グラウンドパッド32の先端近傍に信号パッド27−1、27−2を配置する。
【0063】
信号パッド27−1には信号ワイヤ13−1が接続されている。信号ワイヤ13−1はパッド列29−2に属するパッドと接続されている。この信号ワイヤ13−1のワイヤ長とグラウンドワイヤ12−3のワイヤ長はほぼ等しいものとするグラウンドワイヤ12−3と信号ワイヤ13−1の間にはグラウンドワイヤ12−4あるいは信号ワイヤ13−2が配置されるようにする。これにより、電源ワイヤとグラウンドワイヤ同様に、パッケージ表層30へのボンディング間隔をチップ列29−2に属するチップの間隔の2倍とすることができる。合わせて、狭ピッチのボンディングであっても、信号ワイヤとグラウンドワイヤを同じ長さで平行かつ近接させることができる。結果、寄生インダクタンスの低減が可能となる。
【0064】
同様に、I/O電源パッド28を信号パッド27−1、27−2近傍に配置する。これにより、信号ワイヤと近傍かつ平行になるように電源ワイヤ14−1、14−2をボンディング可能になる。結果規制インダクタンスを低減可能となる。
【0065】
なお、前記電源パッド25と前記I/O電源パッド28の両方に平行となるため、長い櫛歯状グラウンドパッド32は前記電源パッド25及び前記電源パッド28に平行する区間の2倍以上の長さを持つものとする。
【0066】
図7は、本発明の第1の実施の形態に関わる別のパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【0067】
本図においてもグラウンドパッド26から突出する形で、短い櫛歯状グラウンドパッド31、長い櫛歯状グラウンドパッド32がパッケージ2上に設けられている。そしてこれらの短い櫛歯状グラウンドパッド31、長い櫛歯状グラウンドパッド32に挟まれる形で電源パッド25を持つ点では図6同様である。
【0068】
しかし図6と異なり、電源ワイヤ11−1とグラウンドワイヤ12−1が最も接近するように配置する。図上では対象となる電源ワイヤ11−1とグラウンドワイヤ12−1の図番に実線で囲みを加えている。また同じように、同じ長さの電源ワイヤ11−2とグラウンドワイヤ12−2が最も接近するように配置する。図上では対象となる電源ワイヤ11−2とグラウンドワイヤ12−2の図番に一点鎖線で囲みを加えている。
【0069】
このようにすることで、電源ワイヤとグラウンドワイヤ間の相互インダクタンスが最大化され、ワイヤの寄生インダクタンスを低減することができる。
【0070】
図7の実施の形態は、ワイヤの寄生インダクタンス低減に重きを置いたものである。パッケージ表層30でのボンディングピッチを広げる効果は、図6に比べると小さくなるが、ワイヤ1本分のパッド幅となっている特許文献1のような構造よりはパッドサイズが大きく、狭ピッチのボンディングへの適用も容易となっている。
【0071】
以上のように、自己インダクタンスを小さくすると共に、相互インダクタンスを可能な限り大きくすることで、寄生インダクタンスの低減を図ることを可能とする。
【0072】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0073】
図8は、本発明の第2の実施の形態に関わるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。なお、本図においては、信号ワイヤとI/O電源ワイヤについては図示していない。
【0074】
本実施の形態は電源ワイヤとグラウンドワイヤの寄生インダクタンス低減に特化したものである。
【0075】
本実施の形態では、グラウンドパッド26から櫛歯状グラウンドパッド34が突出する点は第1の実施の形態と同様である。本実施の形態では、電源についても配線上のパッド25から櫛歯状電源パッド33が突出した形状となっている点に特徴がある。
【0076】
櫛歯状電源パッド33および櫛歯状グラウンドパッド34には、短いワイヤと長いワイヤが交互になるように配置している。また、パッケージ表層30でのボンディングワイヤのピッチをパッド列29に配された隣接するパッドの間隔の2倍に広げている。
【0077】
加えて、短いワイヤの長さと長いワイヤの長さの差はパッド列29に配された隣接するパッドの間隔以上の差があるとする。
【0078】
合わせて、電源用のビアホール20とグラウンド用のビアホール21は、電源パッド25とグラウンドパッド26に接続される。
【0079】
このようにすることで、図7同様の効果を発揮することが可能となる。また、従来の実施の形態として示した図3の構造の置き換えが容易であり、多種のパッケージの給電系インダクタンスの低減に有用である。
【0080】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0081】
図9は、本発明の第3の実施の形態に関わるパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【0082】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態同様に、電源ワイヤとグラウンドワイヤの寄生インダクタンス低減に特化したものである。
【0083】
電源パッド25とグラウンドパッド26が櫛歯状のパッド部分を持つ点は第2の実施の形態同様である。ただし、櫛歯状電源パッド33及び櫛歯状グラウンドパッド34の幅がワイヤ4本分となっている点が第2の実施の形態と相違する。
【0084】
櫛歯状電源パッド33には、2種類の長さの電源ワイヤ11−1、11−2、11−3、11−4がボンディングされている。
【0085】
また櫛歯状グラウンドパッド34にも、2種類の長さのグラウンドワイヤ12−1、12−2、12−3、12−4がボンディングされている。
【0086】
これらの電源ワイヤ及びグラウンドワイヤは長いワイヤと短いワイヤが交互になるように配置されている。このように配置することで、第2の実施の形態同様に、パッケージ表層でのボンディングピッチを広くし、狭ピッチのボンディングであっても同じ長さの電源ワイヤとグラウンドワイヤを近接して平行配置することが可能となる。この結果ワイヤ起因の寄生インダクタンスの低減が可能となる。
【0087】
さらに本実施の形態では、櫛歯状電源パッド33及び櫛歯状グラウンドパッド34の幅を4本のワイヤ分とすることで、櫛歯状電源パッド33及び櫛歯状グラウンドパッド34上に、それぞれ電源用のビアホール20とグラウンド用のビアホール21を配置することが可能となる。これにより本実施の形態では、電源ビアホール20とグラウンドビアホール21が近接して配置されるため、ビアホールの寄生インダクタンスも低減できる利点がある。
【0088】
図10は、本発明の第3の実施の形態に関わるチップの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【0089】
この図のワイヤボンディングの配置、電源パッド25及びグラウンドパッド26の形状は、図9同様である。
【0090】
本図においては、半導体チップ1側のワイヤパッドとは別に電源とグラウンドが交互に配置されたチップ内配線との接続点35を持ち、その間をチップ上配線36で接続されている点を新たに開示する。
【0091】
このように電源とグラウンドが交互に並ぶように、チップ内配線との接続点35を配置することで、チップ側のワイヤパッドで電源とグラウンドが連続して4個並ぶことによるチップ内給電の偏りを回避することを可能にすることも可能である。
【0092】
図11は、本発明の第3の実施の形態に関わる別のパッケージの電源及びグラウンドの接続の一部分についての上面図である。
【0093】
本図においても、電源パッド25とグラウンドパッド26が櫛歯状電源パッド33及び櫛歯状グラウンドパッド34を持つ点は同様である。ただし、本図における櫛歯状電源パッド33及び櫛歯状グラウンドパッド34は電源ワイヤ11−4とグラウンドワイヤ12−1〜4の接続点を結ぶと台形となるようにボンディングを行い、櫛歯状パッド33と34も台形となっている点が異なる。
【0094】
櫛歯状パッドを台形とすることで、電源用のビアホール20およびグラウンド用のビアホール21を櫛歯状パッド33と34内に配置するスペースを広くとることができる利点がある。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、半導体チップのワイヤボンディング方法についてのものである。半導体チップ上に実装されるアプリケーション回路、すなわちCPUや無線通信用回路、などに拘束されることなく広く適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…半導体チップ、2…パッケージ、3…プリント基板、4…ボンディングワイヤ、
5…導体層、6…ビアホール、7…ハンダボール、8…パッケージ基板導体層、
9…バイパスコンデンサ、10…パッケージ基板ビアホール、
11、11−1、11−2、11−3、11−4…電源ワイヤ、
12、12−1、12−2、12−3、12−4…グラウンドワイヤ、
13−1、13−2…信号ワイヤ、14−1、14−2…電源ワイヤ、
20、21、21−1、21−2…ビアホール、
25…電源パッド、26…グラウンドパッド、27−1、27−2…信号パッド、
28…I/O電源パッド、29、29−1、29−2…パッド列、
30…パッケージ表層、
31…短い櫛歯状グラウンドパッド、32…長い櫛歯状グラウンドパッド、
33…櫛歯状電源パッド、34…櫛歯状グラウンドパッド、
35…接続点、36…チップ上配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを搭載し、前記半導体チップとワイヤボンディングによる接続を有する半導体パッケージであって、
該半導体パッケージは前記ワイヤボンディングの接続点であるグラウンドパッドを表層に有し、
前記グラウンドパッドは該半導体パッケージ表層上で突出する櫛歯状グラウンドパッドを有し、
前記櫛歯状グラウンドパッドに2以上のグラウンドワイヤが接続されることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項2】
請求項1記載の半導体パッケージにおいて、更に2以上の電源ワイヤが接続される電源パッドを有し、
前記2以上のグラウンドワイヤの一のグラウンドワイヤと前記2以上の電源ワイヤの一の電源ワイヤは略平行かつ略同長の組みを構成することを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項3】
請求項2記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状グラウンドパッドは2以上存在し、
前記電源パッドは2つの前記櫛歯状グラウンドパッドに挟まれるように該半導体パッケージ表層に配置されることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項4】
請求項1記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状グラウンドパッドに接続される前記2以上のグラウンドワイヤの長さが前記半導体チップ側のワイヤパッドの間隔以上に差があることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項5】
請求項4記載の半導体パッケージにおいて、
前記櫛歯状のグラウンドパッドの一部が電源パッドと平行する部分の2倍以上の長さを有し、
前記2倍以上の長さを有する櫛歯状グラウンドパッドの先端側に前記半導体チップから前記グラウンドワイヤとは異なる長さのグラウンドワイヤが接続され、
前記2倍以上の長さを有する櫛歯状グラウンドパッドの先端側に接続されたグラウンドワイヤと平行になるように信号ワイヤが配置されることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項6】
請求項5記載の半導体パッケージにおいて、さらに該半導体パッケージ表層上にI/O電源用パッドを有し、
前記信号ワイヤと平行になるように前記I/O電源用パッドにI/O電源ワイヤが接続されていることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項7】
請求項6記載の半導体パッケージにおいて、
前記電源パッドの該半導体パッケージの外周側に接触するように電源ビアホールを有し、
前記I/O電源用パッドの半導体チップ側に接触するようにI/O電源ビアホールを有し、
前記電源ビアホールあるいは前記I/O電源ビアホール近傍の前記櫛歯状グラウンドパッドにグラウンドビアホールを有することを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項8】
請求項7記載の半導体パッケージにおいて、
前記I/O電源ワイヤ及び前記I/O電源ワイヤと平行かつ等しい長さである前記グラウンドワイヤは長いワイヤと短いワイヤが交互に配置され、
前記信号ワイヤ及び、前記信号ワイヤと前記I/O電源ワイヤに平行かつ等しい長さであるグラウンドワイヤは長いワイヤと短いワイヤが交互に配置されることを特徴する半導体パッケージ。
【請求項9】
半導体チップを搭載し、前記半導体チップとワイヤボンディングによる接続を有する半導体パッケージであって、
該半導体パッケージは前記ワイヤボンディングの接続点であるグラウンドパッド、及び電源パッドを表層に有し、
前記グラウンドパッドは該半導体パッケージ表層上で突出する櫛歯状グラウンドパッドを有し、
前記電源パッドは該半導体パッケージ表層上で突出する櫛歯状電源パッドを有し、
前記櫛歯状グラウンドパッド及び前記櫛歯状電源パッドが該半導体パッケージの周方向で隣接することを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項10】
請求項9記載の半導体パッケージにおいて、前記グラウンドパッドを該半導体パッケージの内周側に、前記電源パッドを該半導体パッケージの外周側に配置することを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項11】
請求項10記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状グラウンドパッド及び前記櫛歯状電源パッドにはそれぞれ長さの異なるワイヤが2本配置され、
前記櫛歯状グラウンドパッドに配置された2本のワイヤ及び前記櫛歯状電源パッドに配置された2本のワイヤは長さの長いワイヤと長さの短いワイヤが交互になることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項12】
請求項11記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状グラウンドパッド及び前記櫛歯状電源パッドの形状がチップ端に対して斜めとなる略平行四辺形の形状を持つことを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項13】
請求項10記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状グラウンドパッドには2種類の長さを持つワイヤが計4本配置され、
前記櫛歯状グラウンドパッドに配置された長いワイヤの接続点と短いワイヤの接続点の間にグラウンド接続用のビアホールが配置されることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項14】
請求項13記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状グラウンドパッドをチップ端に対して斜めとなった平行四辺形とし、同じ前記櫛歯状グラウンドパッドに接続された4本の前記ワイヤの接続位置を前記櫛歯状グラウンドパッドの中心線から等間隔とすることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項15】
請求項13記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状グラウンドパッドをチップ端に対して斜めとなった台形とし、同じ前記櫛歯状グラウンドパッドに接続された4本の前記ワイヤの接続位置を前記櫛歯状グラウンドパッドの中心線から等間隔とすることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項16】
請求項10記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状電源パッドには2種類の長さを持つワイヤが計4本配置され、
前記櫛歯状電源パッドに配置された長いワイヤの接続点と短いワイヤの接続点の間に電源接続用のビアホールが配置されることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項17】
請求項16記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状電源パッドをチップ端に対して斜めとなった平行四辺形とし、同じ前記櫛歯状電源パッドに接続された4本の前記ワイヤの接続位置を前記櫛歯状電源パッドの中心線から等間隔とすることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項18】
請求項16記載の半導体パッケージにおいて、前記櫛歯状電源パッドをチップ端に対して斜めとなった台形とし、同じ前記櫛歯状電源パッドに接続された4本の前記ワイヤの接続位置を前記櫛歯状電源パッドの中心線から等間隔とすることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項19】
請求項9ないし18のいずれか1項に記載の半導体パッケージにおいて、
前記半導体チップの表層にワイヤパッドに接続した配線を持ち、前記半導体チップ内配線との接続箇所において電源とグラウンドが交互になるように配置することを特徴とする半導体パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−165858(P2011−165858A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26424(P2010−26424)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】