説明

半導体リードフレームの製造方法

【課題】生産性に優れ、かつ均一なめっき厚さが得られる半導体リードフレームの製造方法を提供する。
【解決手段】所要数のリードフレーム2が一体に形成された複数の短冊状フレーム8を接合してフープ状体9とし、このフープ状体9にめっき処理を連続的に施す半導体リードフレームの製造方法。本発明により製造される半導体リードフレームは、めっき層の厚みが均一になり、その結果めっき(貴金属)付着量が低減し貴金属費が大幅に低減する。また短冊状フレームを支持体に吊るす必要がなく生産性に優れる。前記短冊状フレームの端部を基部の厚みの半分に薄肉化し、前記薄肉化端部を嵌合して接合することにより接合部の厚みが基部の厚みと同等になるので連続めっき処理などの諸工程での走行の障害がなくなり、さらにめっきでの給電が安定して行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性に優れ、かつ均一なめっき厚さが得られる半導体リードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リードフレームに用いるリードフレームはプレス打抜法またはエッチング法(特許文献1)により製造される。前者は加工速度が速く大量生産が可能であるが、金型が高価な上、金型の製作期間が長いという設備上の問題があり、後者は特に高価な金型は用いないが、生産性が低いという問題がある。従って、ロットサイズが大きい場合はプレス打抜法が用いられ、小さい場合はエッチング法が用いられている。
【0003】
前記エッチング法による半導体リードフレームの製造は、図3(イ)に示すように、短尺素材に所要数のリードフレーム12をエッチング法により一体に形成して短冊状フレーム11とし、この短冊状フレーム11の全面にPdをめっき処理し、次いでインナーリードテーピング、インナーリード先端カット、ダウンセット、チップボンド、ワイヤーボンド、樹脂封止、バラカットなどの諸工程を施して行われる。図3(ロ)はインナーリードテーピング後の短冊状フレームで、13はテープである。
【0004】
前記Pdの全面めっきに代えてAgを部分めっきする場合は、樹脂封止後に外装半田めっきを施す。それ以外はPdを全面めっきする場合と同じである。
【0005】
前記めっき処理は、図4に示すように、多数の短冊状フレーム11を支持体14に吊るし、これをめっき処理槽15内のめっき液16に浸漬してめっきするラック法により行われている。しかしながら、この方法は、(1)めっき厚みが浸漬位置により大きく変動する、(2)めっき電流がフレーム端部に集中してめっき層の膜厚分布がドッグボーン形状になりめっき付着量が必要量の3〜5倍になる、(3)短冊状フレーム11を複数枚ごとバッチ処理するため生産性が低い、などの問題があった。
【0006】
このようなことから、長尺素材を連続的にエッチング処理し、これにめっき処理を連続的に施す方法が提案されたが、この方法はエッチング処理の生産性が低いため実用化例が少ない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−111445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生産性に優れ、かつ均一なめっき厚さが得られる、半導体リードフレームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載発明は、所要数のリードフレームが一体に形成された複数の短冊状フレームを接合してフープ状体とし、このフープ状体にめっき処理を連続的に施すことを特徴とする半導体リードフレームの製造方法である。
【0010】
請求項2記載発明は、前記短冊状フレームの端部を基部の厚みの半分に薄肉化し、前記薄肉化端部を嵌合して接合することを特徴とする請求項1記載の半導体リードフレームの製造方法である。
【0011】
請求項3記載発明は、前記短冊状フレームの接合端面を凹凸状に形成し、前記凹凸状端面を嵌合して接合することを特徴とする請求項2記載の半導体リードフレームの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、所要数のリードフレームが一体に形成された複数の短冊状フレームを接合してフープ状体とし、このフープ状体にめっき処理を連続的に施すので、めっき層の厚みが均一になり、その結果めっき(貴金属)付着量が低減し貴金属費が大幅に低減する。また短冊状フレームを支持体14(図4参照)に吊るす必要がなく生産性に優れる。
【0013】
前記短冊状フレームの端部を基部の厚みの半分に薄肉化し、前記薄肉化端部を嵌合して接合することにより接合部の厚みが基部の厚みと同等になるので連続めっき処理などの諸工程での走行の障害がなくなり、さらにめっきでの給電が安定して行える。
【0014】
前記短冊状フレームの接合端面を凹凸状に形成し、前記凹凸状端面を嵌合して接合することにより、接合部に、薄肉部が、幅方向に直線状に連続して存在しなくなり、曲げ応力が掛かっても接合部が折れ曲がるのが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、短冊状フレームとは、図1(イ)に示すように、短尺素材に所要数のリードフレームをエッチング法により一体に形成したものである。
そして本発明の半導体リードフレームは、例えば、前記短冊状フレームを長さ方向に接合してフープ状体とし、このフープ状体にPdを連続的に全面めっきし、次いでインナーリードテーピング、インナーリード先端カット、ダウンセット、チップボンド、ワイヤーボンド、樹脂封止、バラカットの諸工程をこの順に施して製造される。
【0016】
本発明において、フープ状体の接合部を切断除去して短冊状フレームに戻す工程、短冊状フレームからリードフレームを切断分離する工程、或いはフープ状体から直接リードフレームを切断分離する工程は、めっき処理後なら何時行っても良い。
【0017】
本発明において、短冊状フレームの接合は、短冊状フレームの長さ方向端部の直角切断面を突き合わせて行っても良いが、図1(イ)に示すように、接合端部を薄肉化し嵌合して行う方が、溶接部の突合せが容易で溶接時間が短縮され有利である。前記接合端部の薄肉化は、切削加工して行ってもよいが、エッチング法で行うとエッチング設備を利用できて経済的である。
【0018】
本発明において、短冊状フレームの接合には、抵抗溶接、シーム溶接、YAG溶接、TIG溶接などの溶融接合法、超音波溶接などの固相接合法、導電性接着剤、導電性両面テープなどを用いる接着法などが適用できる。前記接着剤やテープにはめっき電流を流すために導電性を有することが必要である。短冊状フレームの接合は、前記直接接合の他、接合部材(ダミー材)を介在させて行うことも可能である。
【0019】
接合部の寸法変化や接合部に生じるバリは、連続めっき時のフープ状体の走行の障害となるばかりか、曲げ応力が掛かった際の折れ曲がりの原因にもなる。従って接合部の厚み(寸法)は削ったり潰したりして基部と同じにしておくのが良い。
【0020】
本発明において、めっき処理後のインナーリードテーピング、インナーリード先端カット、ダウンセット、チップボンド、ワイヤーボンド、樹脂封止、バラカットなどの諸工程をフープ状体のままで連続的に施すと、半導体リードフレームの生産性をより向上させることができる。
【0021】
請求項2記載発明は、図1(イ)に示すように、短冊状フレーム1の接合端部を基部4の半分の厚みに薄肉化し、この薄肉化した接合端部3を接合相手5の接合端部6と嵌合して接合する半導体リードフレームの製造方法である。この発明によれば接合部7の厚みが基部4の厚みと同等になるので連続めっき処理などの諸工程での走行の障害がなり、さらにめっきでの給電が安定して行える。
【0022】
請求項3記載発明は、曲げ応力が掛かると前記接合部が折れ曲がることがあり、この折れ曲りは前記短冊状フレームの接合部に薄肉部分が幅方向に連続して直線状に存在しないようにすると防止できることを知見してなされた半導体リードフレームの製造方法である。
【0023】
以下に請求項3記載発明で用いる短冊状フレームを図1(ロ)〜(ヘ)を参照して具体的に説明する。
図1(ロ)に示す短冊状フレーム1は、基部4の半分の厚みに薄肉化した接合端部3の端面(接合端面)3aをV字状に形成したもの、図1(ハ)に示す短冊状フレームは、前記接合端部3の端面3aをW字状に形成したもの、図1(ニ)、(ホ)に示す短冊状フレームは、前記接合端部3の端面3aをコ字状に形成したもの、図1(ヘ)に示す短冊状フレームは前記接合端部3の端面3aを鋸歯状に形成したものであり、いずれも接合部に薄肉部が幅方向に連続して存在せず、曲げ応力を受けても折れ曲がりが生じ難いものである。
【0024】
本発明において、短冊状フレームの長さはエッチングの原版サイズに入る範囲でできるだけ長くする(リードフレームの個数を多くする)のが、短冊状フレームの接合回数が減少し生産性が向上するので望ましい。短冊状フレームは保有するエッチング設備を利用できるように設計するのが経済的である。
【実施例1】
【0025】
Cu合金の短尺素材をバッチ式にエッチング加工して図2(イ)に示す8個のQFPリードフレームが一体に形成された短冊状フレーム8を作製し、この短冊状フレーム8の接合端部3を相互に超音波溶接して図2(ロ)に示すフープ状体9としてリール(図示せず)に巻き取った。次に前記リールからフープ状体9を引き出し、めっき前処理を施したのち、Ni、Pd、Auをこの順に連続的に電気めっきしてリールに巻き取った。前記短冊状フレーム8はエッチング原版の最大サイズを使って作製した。接合端部の厚みはハーフエッチングして基部の厚み(0.15mm)の半分にした。
得られたフープ状体9について、めっき厚みの均一性と折れ曲がり有無を調査した。また生産性とめっきした貴金属費を評価した。
【実施例2】
【0026】
8個のQFPリードフレームが一体に形成され、接合端面が図1(イ)、(ロ)、(ハ)、(ホ)、(ヘ)に示した形状の短冊フレームを用いた他は、実施例1と同じ方法によりフープ状体を製造し、実施例1と同じ調査および評価を行った。
【実施例3】
【0027】
4個のQFPリードフレームが一体に形成された短冊状フレームを用いた他は、実施例1と同じ方法によりフープ状体を製造し、実施例1と同じ調査および評価を行った。
【0028】
(比較例1)
4個のQFPリードフレームが一体に形成された短冊状フレーム11にNi、Pd、Auをバッチ式に電気めっきし(図4参照)、得られた短冊状フレ−ムについて実施例1と同じ調査および評価を行った。
【0029】
実施例1〜3および比較例1の調査および評価結果を表1に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から明らかなように、本発明例品(No.1〜7)はいずれも、めっき厚みの均一性、めっき付着量、めっき速度がプレス打抜品の場合と同等で優れていた。めっきした貴金属費はバッチ式めっき処理に較べて格段に安かった。No.2は折れ曲がりが若干生じたが実用上問題なかった。No.1、3〜7はフープ状体が接合部で折れ曲がることが全く無く生産性が極めて優れた。
これに対し、比較例品(No.8)はめっき厚みが不均一で貴金属費が嵩み、短冊状フレームを支持体に吊るすため生産性が劣った。
なお、本発明例品のめっきした貴金属量は比較例品の1/5、めっき速度は10倍以上であった。
【実施例4】
【0032】
実施例1〜3で製造したPdを全面めっきしたフープ状体をリールから引き出してインナーリードテーピング、インナーリード先端カット、ダウンセット、チップボンド、ワイヤーボンド、樹脂封止、バラカットの諸工程を連続的に施し、その後フープ状体を短冊状の半導体リードフレームに切断分離した。
この間、フープ状体は接合部が折れ曲がったりせず、またワイヤーボンドなどの各工程も良好に行えた。得られた半導体リードフレームは品質良好で高歩留まりであった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(イ)は本発明で用いる短冊状フレームの第1実施形態を示す正面図および平面図、(ロ)〜(ヘ)は第2〜第6実施形態を示す平面図である。
【図2】(イ)は本発明で用いる短冊状フレームの第7実施形態を示す平面図、(ロ)はフープ状体の実施形態を示す平面図である。
【図3】(イ)は従来の短冊状フレームの平面図、(ロ)はインナーリードテーピング後の平面図である。
【図4】短冊状フレームをバッチ式にめっき処理する方法の斜視説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 短冊状フレーム(リードフレーム4個)
2 リードフレーム
3 短冊状フレームの接合端部
4 短冊状フレームの基部
5 接合相手の短冊状フレーム
6 接合相手の短冊状フレームの接合端部
7 接合部
8 短冊状フレーム(リードフレーム8個)
9 フープ状体
11従来の短冊状フレーム
12リードフレーム
13テープ
14短冊状フレームを吊るす支持体
15めっき処理槽
16めっき液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要数のリードフレームが一体に形成された複数の短冊状フレームを接合してフープ状体とし、このフープ状体にめっき処理を連続的に施すことを特徴とする半導体リードフレームの製造方法。
【請求項2】
前記短冊状フレームの端部を基部の厚みの半分に薄肉化し、前記薄肉化端部を嵌合して接合することを特徴とする請求項1記載の半導体リードフレームの製造方法。
【請求項3】
前記短冊状フレームの接合端面を凹凸状に形成し、前記凹凸状端面を嵌合して接合することを特徴とする請求項2記載の半導体リードフレームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−134640(P2007−134640A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328712(P2005−328712)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(592181602)古河精密金属工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】