説明

半導体光波形整形装置

【課題】多重信号光用の光中継装置を少ない部品数で実現できる半導体光波形整形装置を提供する。
【解決手段】半導体光波形整形装置1は、第1光信号を増幅するための、第1光信号と波長又は偏光方向が異なる第2光信号に対する利得係数が、第1光信号に対する利得係数の10%以下となっている第1活性層11と、第2光信号を増幅するための、第1光信号に対する利得係数が、第2光信号に対する利得係数の10%以下となっている第2活性層12と、第1活性層と第2活性層との間に設けられた,各層に対するキャリアの供給源として機能するキャリア供給層13とを含む導波路コアを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光波形整形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバにて数十kmを超える長距離伝送を行う場合には、再生中継器にて、光ファイバでのパワー損失及び波形劣化を補償することが行われている。そして、現在、使用されている再生中継器は、光信号を一旦電気信号に変換するものとなっているのであるが、そのような再生中継器は、消費電力が大きく、製造コストがかかり、比較的に大サイズのものとならざるを得ない。
【0003】
そのため、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)が有してい
る図14に示したような性質、すなわち、入力信号が大きすぎると利得が飽和する性質、を利用して光信号を光信号のまま整形及び増幅する半導体光波形整形装置の開発が進められている。
【0004】
なお、半導体光増幅器で光信号の波形整形を行うためには、利得飽和の応答時間が速い(キャリア寿命が短い)ことが必要である。そのため、半導体光波形整形装置としては、図15に示したように、SOAに外部からレーザ光(アシスト光)を導入し、キャリア寿命を早めるようにしたものが開発されている。また、図16に模式的に示したように、SOAの素子長を長くし、その長いSOA内で発生するASE(amplified spontaneous emission:増幅された自然放出)光によりキャリア寿命を早めた半導体光波形整形装置(半導体光増幅器)も知られている。また、量子ドットを用いることにより、キャリア寿命を早めた半導体光波形整形装置(半導体光増幅器)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−176229号公報
【特許文献2】特開平4−32287号公報
【特許文献3】特開2006−196788号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tsurusawa, et.al. Indium Phosphide and Related Materials, 2001. IPRM. IEEE International Conference On, 2001、 174-177.
【非特許文献2】Gutierrez-Castrejon, et.al. IEEE J. Quantum Electron., 2000, Vol.36(12), 1476-1484.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような半導体光波形整形装置を用いれば、より小型の再生中継器を実現することが出来る。しかしながら、既存の半導体光波形整形装置は、単一の光信号(比較的に狭い波長範囲の光信号)の波形整形しか行えないものとなっている。そのため、近年発展している波長多重信号光についての光中継装置を既存の半導体光波形整形装置を用いて実現する場合、波長多重信号光に含まれる光信号数と同数の半導体光波形整形装置を用いざるを得なかった。
【0008】
そこで、開示の技術の課題は、多重信号光用の光中継装置を、既存の半導体光波形整形装置を用いた場合よりも少ない部品数で実現できる半導体光波形整形装置を提供すること
にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、開示の技術の一態様の半導体光波形整形装置は、第1光信号を増幅するための第1活性層と、第2光信号を増幅するための第2活性層と、第1活性層と第2活性層との間に設けられ、第1活性層と第2活性層に対するキャリアの供給源として機能するキャリア供給層とを含む導波路コアを備え、第2光信号は、第1光信号と波長又は偏光方向が異なり、第1活性層は、第2光信号に対する利得係数が、第1光信号に対する利得係数の10%以下となり、第2活性層は、第1光信号に対する利得係数が、第2光信号に対する利得係数の10%以下となっている構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を採用しておけば、2種の光信号の波形整形を行える半導体光波形整形装置、すなわち、多重信号光用の光中継装置を既存の半導体光波形整形装置を用いた場合よりも少ない部品数で実現できる半導体光波形整形装置、を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る半導体光波形整形装置の断面図。
【図2】第1実施形態に係る半導体光波形整形装置の上面図。
【図3】出力光のS/N比と各活性層の利得係数比との間の関係を示した図。
【図4】活性層の利得係数比と、量子ドットのサイズ及びサイズばらつきとの間の関係を示した図。
【図5】第1実施形態に係る半導体光波形整形装置の等価回路図。
【図6】第1実施形態に係る半導体光波形整形装置が備えるキャリア供給層の機能の説明図。
【図7】第1実施形態に係る半導体光波形整形装置が備える各活性層の利得係数の波長依存性の説明図。
【図8】第1実施形態に係る半導体光波形整形装置の製造方法例の説明図。
【図9】第2実施形態に係る半導体光波形整形装置の断面図。
【図10】第2実施形態に係る半導体光波形整形装置の上面図。
【図11】第2実施形態に係る半導体光波形整形装置の等価回路図。
【図12】第2実施形態に係る半導体光波形整形装置が備えるキャリア供給層の機能の説明図。
【図13】第1実施形態に係る半導体光波形整形装置に採用可能な構成の説明図。
【図14】半導体光波形整形装置の波形整形原理の説明図。
【図15】既存の半導体光波形整形装置の説明図。
【図16】既存の半導体光波形整形装置(半導体光増幅器)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明者が開発した半導体光波形整形装置の二態様(以下、第1、第2実施形態に係る半導体光波形整形装置1、2と表記する。)を、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
《第1実施形態》
まず、図1及び図2を用いて、第1実施形態に係る半導体光波形整形装置1の概要を説明する。なお、これらの図のうち、図1は、半導体光波形整形装置1の断面図であり、図2は、半導体光波形整形装置1の上面図である。
【0014】
図1に示してあるように、第1実施形態に係る半導体光波形整形装置1は、半導体基板10、第1活性層11、キャリア供給層13a、第2活性層12、上部クラッド14、第1〜第3電極15〜17等を備えた装置(半導体光増幅器)である。
【0015】
この半導体光波形整形装置1(以下、単に、光波形整形装置1とも表記する)は、波長1480nmの第1光信号及び波長1620nmの第2光信号に対する波形整形及び増幅を行える装置である。また、光波形整形装置1は、第3電極17を接地し、第1電極15及び第2電極16にそれぞれ正電位を与え、導波路コアに、第1光信号と第2光信号とを含む多重信号光を入力(入射)する(図2参照。)ことにより、使用する装置となっている。なお、光波形整形装置1の導波路コアとは、第1活性層11と、キャリア供給層13aの,活性層11、12に挟まれた部分と、第2活性層12とからなる部分のことである。
【0016】
以上のことを前提に、以下、光波形整形装置1の構成及び機能をさらに具体的に説明する。なお、以下の説明において、或る部材(半導体基板10等)の上面、下面とは、それぞれ、当該部材の図1における上側、下側の面のことである。また、或る部材の幅とは、当該部材の図1、図2における左右方向の長さのことである。
【0017】
図1に示してあるように、光波形整形装置1は、半導体基板10(本実施形態では、p−InP(311)B基板)と、半導体基板10の上面に形成された第1活性層11と、半導体基板10の下面に形成された第1電極15とを、備えている。また、光波形整形装置1は、第1活性層11上から導波路コア外まで伸びた形状のキャリア供給層13aも備えている。
【0018】
キャリア供給層13aの,第1活性層11上の部分に相当する端部上には、第1活性層11と同幅の第2活性層12が形成されている。また、キャリア供給層13aの他方の端部上には、第3電極17が形成されている。
【0019】
第2活性層12上には、第2活性層12(及び第1活性層11)と同幅の上部クラッド14(本実施形態では、p−InP層)が形成されている。また、半導体基板10上(及びキャリア供給層13a上)には、導波路コアの側面を覆うように、埋込層18(本実施形態では、半絶縁性InP層)が形成されている。そして、上部クラッド14上には、第2電極16が形成されている。
【0020】
この光波形整形装置1が備える各活性層11、12は、形成面との間の格子定数のミスマッチを利用して、内部に多数の量子ドットを形成した自己形成量子ドット層(本実施形態では、In(Ga)As量子ドット層)である。各活性層11、12は、各量子ドットの底面サイズ(底面の直径:以下、単に、サイズとも表記する)が15nm以下となり、各量子ドットのサイズのばらつきが3%以内となるように、形成したものとなっている。また、第1活性層11、第2活性層12は、利得ピーク波長が、それぞれ、1480nm程度、1620nm程度となるように、形成したものともなっている。
【0021】
各活性層11、12の利得ピーク波長を上記波長としているのは、第1活性層11、第2活性層12を、それぞれ、第1光信号(波長:1480nm)、第2光信号(波長:1620nm)増幅用の活性層とするためである。ただし、既に説明したように、光波形整形装置1は、第1光信号と第2光信号とを含む多重信号光を、導波路コアに入射して使用する装置(つまり、各活性層11、12に、第1光信号と第2光信号とが入射される装置)となっている。
【0022】
従って、第1活性層11の第2光信号に対する利得や、第2活性層12の第1光信号に対する利得が過度に大きい場合には、入力光よりも出力光のS/N比が小さい光波形整形装置1が得られてしまうことになる。
【0023】
そのため、この光波形整形装置1の開発時には、各活性層11、12の利得係数比がどの程度の値であれば、入力光よりもS/N比が大きな出力光が得られるのかを、シミュレーション計算により調べることが行われている。なお、第1活性層11の利得係数比とは、第1活性層11の“第2光信号に対する利得係数/第1光信号に対する利得係数”(単位は、%)のことであり、第2活性層12の利得係数比とは、第2活性層12の“第1光信号に対する利得係数/第2光信号に対する利得係数”(単位は、%)のことである。また、上記調査・研究のために行ったシミュレーション計算は、独立して機能するものでありさえすれば、量子ドット層ではない二活性層についても成立する条件を使用したものとなっている。
【0024】
そして、その結果として、各活性層11、12が独立している場合には、図3に示したように、各活性層11、12の利得係数比が10%以下であれば、入力光よりも出力光のS/N比が大きくなることが判明している。
【0025】
従って、各活性層11、12が独立した活性層として機能し、かつ、各活性層11、12の利得係数比が10%以下となるようにしておけば、第1光信号と第2光信号とを含む多重信号光の波形整形が可能な光波形整形装置を実現できることになる。ただし、各活性層11、12として、量子ドット層ではないものを採用した場合、キャリア寿命が比較的に長い光波形整形装置(高速光信号を処理できない光波形整形装置)が得られてしまうことになる。そのため、光波形整形装置1の各活性層11、12を、量子ドット層としているのである。
【0026】
また、別途行った,各種In(Ga)As量子ドット層の利得係数比を測定する実験からは、In(Ga)As量子ドット層内の量子ドットのサイズと利得係数比との間に、図4に示した関係があることが分かっている。すなわち、各量子ドットのサイズ(図では、ドット底面サイズ)が15nm以下となり、各量子ドットのサイズのばらつきが3%以内となるようにしておけば、利得係数比が10%以下のIn(Ga)As量子ドット層が得られることが分かっている。
【0027】
そのため、光波形整形装置1の各活性層11、12を、各量子ドットのサイズが15nm以下であり、各量子ドットのサイズのばらつきが3%以内となっているものとしているのである。
【0028】
図1に戻って、光波形整形装置1の説明を続ける。
キャリア供給層13aは、各活性層11、12を、独立した活性層(他方の活性層の状態変化の影響を受けない活性層)として機能させるために、設けられている層である。
【0029】
各活性層11、12を独立した活性層として機能させることのみを目的とした場合、このキャリア供給層13aは、導電性層(導電性を有する材料からなる層)でありさえすれば良い。何故ならば、キャリア供給層13aが導電性層であれば、第3電極17を接地し、第1電極15及び第2電極16にそれぞれ正電位を与えた場合、図5及び図6に模式的に示したように、キャリア供給層13aが各活性層11、12へのキャリアの供給源として機能することになる。そして、キャリア供給層13aが各活性層11、12へのキャリアの供給源として機能すれば、キャリアが第1活性層11・第2活性層12間で直接的に移動することがなくなる結果として、各活性層11、12が独立した活性層として機能することになるからである。
【0030】
ただし、任意の材料上に、In(Ga)As自己形成量子ドット層(第2活性層12)を形成できる訳ではない。そのため、光波形整形装置1は、キャリア供給層13aとして、n−InP層を採用したものとなっている。
【0031】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光波形整形装置1の構成、すなわち、『第1光信号を増幅するための、第2光信号に対する利得係数が第1光信号に対する利得係数の10%以下となっている第1活性層11と、第2光信号を増幅するための、第1光信号に対する利得係数が第2光信号に対する利得係数の10%以下となっている第2活性層12と、両活性層11、12間に設けられた,各活性層11、12に対するキャリアの供給源として機能するキャリア供給層13aとを含む導波路コアを備えた構成』を採用しておけば、2種類の光信号の波形整形及び増幅を行える光波形整形装置を実現することが出来る。
【0032】
なお、上記構成を採用した光波形整形装置の実際の性能は、各活性層11、12の利得係数比や長さに応じたものとなる。
【0033】
具体的には、図3から明らかなように、波形整形性能を高めるためには、各活性層11、12の利得係数比は、小さい方が良い。また、光導波路(導波路コアを中心とした部分)を、単一モード導波路とおいた方が、損失を小さくできる。そのため、光波形整形装置1は、各活性層11、12を、図7に示した特性を有するもの(利得係数比を極力小さくしたもの)とし、光導波路が単一モード導波路となるように、各活性層11、12の形状を決定したものとなっている。
【0034】
また、高速光信号の波形整形を可能とするためには、各活性層11、12におけるキャリア寿命が短いことが必要とされる。より具体的には、40Gbps程度の第1、第2光信号の波形整形を可能とするためには、各活性層11、12におけるキャリア寿命を10ps程度にする必要がある。そして、各活性層11,12の出力端におけるASE光強度が100mW程度となるようにしておけば、キャリア寿命を10ps程度にすることが出来る。また、各活性層11,12の高次準位における利得を35dB程度にすれば、各活性層11,12の出力端におけるASE光強度を100mW程度とすることが出来る。そのため、光波形整形装置1は、各活性層11、12の高次準位における利得が35dB程度となるように素子長等を決定したものともなっている。
【0035】
最後に、光波形整形装置1の製造方法を簡単に説明しておくことにする。
【0036】
上記のような構成を有する光波形整形装置1は、様々な手順で製造できる。例えば(図1参照。)、キャリア供給層13aの形成面(第1活性層11とキャリア供給層13a下の埋込層18)を、半導体基板10上に形成した後、残りの各層(キャリア供給層13a、第2活性層12等)を形成することにより、光波形整形装置1を製造することも出来る。
【0037】
ただし、そのような手順だと、キャリア供給層13a形成後に、複雑なプロセスが必要とされることになる。そのため、光波形整形装置1の製造時には、以下の手順を採用しておくことが望ましい。
【0038】
まず、一般的な光波形整形装置の製造時と同様の手順で、図8に示したような構成を得る。すなわち、半導体基板10上に、第1活性層11、キャリア供給層13aの一部13a′、第2活性層12及び上部クラッド14の積層体が形成されている構成を得る。次いで、当該構成の,図8における右側(又は左側)の部分に、第1活性層11と同じ厚さの埋込層18を形成する。そして、形成した埋込層18上へ、キャリア供給層13aの残りの部分を形成してから、キャリア供給層13a上への埋込層18の形成等を行うことによって、光波形整形装置1を製造する。
【0039】
《第2実施形態》
図9、図10に、それぞれ、第2実施形態に係る光波形整形装置(半導体光波形整形装置)2の断面図、上面図を示す。
【0040】
この光波形整形装置2も、上記した光波形整形装置1と同様に、第1活性層11と第2活性層12とを含む導波路コアを備え、当該導波路コアに、波長1480nmの第1光信号と波長1620nmの第2光信号とを含む多重信号光を入力して使用する装置である。
【0041】
また、光波形整形装置2は、第1活性層11、第2活性層12、上部クラッド14、埋込層18として、光波形整形装置1が備えるものと同じものを備えた装置となっている。
【0042】
すなわち、光波形整形装置2は、第1活性層11として、各量子ドットの底面サイズが15nm以下であり、各量子ドットのサイズのばらつきが3%以内であり、利得ピーク波長が1480nm付近にあるIn(Ga)As自己形成量子ドット層を備えている。また、光波形整形装置2は、第2活性層12として、各量子ドットの底面サイズが15nm以下であり、各量子ドットのサイズのばらつきが3%以内であり、利得ピーク波長が1620nm付近にあるIn(Ga)As自己形成量子ドット層を備えている。さらに、光波形整形装置2は、上部クラッド14、埋込層18として、それぞれ、n−InP層、半絶縁性InP層を備えている。
【0043】
このように、光波形整形装置2は、光波形整形装置1と類似した構成を有するものなのであるが、光波形整形装置2に使用されている半導体基板10は、p−InP(311)B基板ではなく、n−InP(311)B基板となっている。
【0044】
また、光波形整形装置2の第1活性層11と第2活性層12との間には、幅広のキャリア供給層13a(図1参照)ではなく、第1活性層11等と同じ幅のキャリア供給層13bが設けられている。
【0045】
そして、光波形整形装置2は、このキャリア供給層13bを、n−InGaAs(1019cm-3)/p−InGaAs(1019cm-3)で構成されたトンネル接合(トンネル障壁層)としたものとなっている。
【0046】
要するに、光波形整形装置2は、第1電極15を接地し,第2電極16に正電位を与えた場合、図11、図12に模式的に示したような形で、各活性層11,12にキャリア(電子又は正孔)が注入される構成を有している。すなわち、光波形整形装置2は、装置の駆動時に、キャリア供給層13bが、各活性層11、12へのキャリアの供給源(又は、第1活性層11・第2活性層12間でのキャリアの直接的な移動を抑止する層)として機能する構成を有している。従って、光波形整形装置2の各活性層11,12は、独立した活性層として機能することになる。
【0047】
そして、光波形整形装置2の各活性層11、12は、利得係数比が10%以下の層となっている。そのため(図3,4参照)、この光波形整形装置2の構成を採用しておいても、2種類の光信号の波形整形及び増幅を行える光波形整形装置を実現出来ることになる。
【0048】
《変形形態》
上記した光波形整形装置1、2は、各種の変形を行えるものである。例えば、各実施形態に係る光波形整形装置1、2は、利得ピーク波長の異なる活性層11、12を備えたものであったが、光波形整形装置1、2を、利得を有する光信号の偏光方向が異なる活性層11、12を備えたものに変形することも出来る。すなわち、光波形整形装置1、2を、所定方向に偏光した第1光信号に対する利得が特に大きな第1活性層11(又は第2活性
層12)、第1光信号とは偏光方向が異なる第2光信号に対する利得が特に大きな第2活性層12(又は第1活性層11)を備えたものに変形することも出来る。
【0049】
また、『波形整形対象の波長帯が1.3μm帯である場合には、GaAs基板、GaAs系量子ドット層を用いる』といったように、波形整形対象の波長帯などに応じて、半導体基板10や各活性層11、12の材料は変更することができる。ただし、半導体基板1としてInP基板を使用する場合には、(311)B基板を使用しておくことが好ましい。何故ならば、InP(311)B基板を使用しておけば、量子ドットのサイズの小型化・均一化を比較的に簡単に実現できるからである。
【0050】
光波形整形装置1を、図13に示した構成を有するものに変形することも出来る。すなわち、光波形整形装置1を、半導体基板10上に、第1活性層11、キャリア供給層13aの一部13a′、第2活性層12及び上部クラッド14の積層体を形成した後(図8参照。)、当該積層体の両側に同時に埋込層18等を形成できる構成を有するものに変形することも出来る。
【0051】
また、光波形整形装置1を、半導体基板10、上部クラッド14が、いずれも、n型半導体であり、キャリア供給層13aが、p型半導体である装置に変形することも出来る。ただし、そのように変形すると、損失が大きくなるし、素子抵抗も高くなる。そのため、半導体基板10、上部クラッド14は、p型半導体とし、キャリア供給層13aは、p型半導体としておくことが望ましい。
【0052】
また、各活性層11、12を、量子ドットを含まない層としておくことも出来る。ただし、各活性層11、12を、量子ドットを含まない層として、高性能かつ小型の光波形整形装置を実現することは困難である。そのため、各活性層11、12としては、量子ドット層を採用しておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0053】
1、2・・・半導体光波形整形装置
10・・・半導体基板
11・・・第1活性層
12・・・第2活性層
13a、13b・・・キャリア供給層
14・・・上部クラッド
15・・・第1電極
16・・・第2電極
17・・・第3電極
18・・・埋込層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光信号を増幅するための第1活性層と、
第2光信号を増幅するための第2活性層と、
前記第1活性層と前記第2活性層との間に設けられ、前記第1活性層と前記第2活性層に対するキャリアの供給源として機能するキャリア供給層と
を含む導波路コアを備え、
前記第2光信号は、前記第1光信号と波長又は偏光方向が異なり、
前記第1活性層は、前記第2光信号に対する利得係数が、前記第1光信号に対する利得係数の10%以下となり、
前記第2活性層は、前記第1光信号に対する利得係数が、前記第2光信号に対する利得係数の10%以下となっている
ことを特徴とする半導体光波形整形装置。
【請求項2】
前記第1活性層及び前記第2活性層が、いずれも、ドット底面サイズが15nm未満、かつ、サイズばらつきが3%未満の量子ドット活性層である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体光波形整形装置。
【請求項3】
前記キャリア供給層が、前記キャリア供給層の電位を所定電位に維持するための電極を備えた導電層である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体光波形整形装置。
【請求項4】
前記キャリア供給層が、トンネル接合である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体光波形整形装置。
【請求項5】
前記第1活性層の,前記キャリア供給層と対向していない面側と、前記第2活性層の,前記キャリア供給層と対向していない面側とに、それぞれ、第1種半導体層が設けられており、
前記キャリア供給層が、前記第1種半導体層とはキャリアが異なる第2種半導体層である
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体光波形整形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−199172(P2011−199172A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66641(P2010−66641)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「ナノ技術を活用した超高機能ネットワーク技術の研究開発」のうち、「ナノ技術を活用した高能率中継技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】