説明

半導体処理システムにおけるイオン源の洗浄

所望のフィラメントの成長、あるいはフィラメントのエッチングを行うために、アークチャンバ内の適切な温度制御によってアークチャンバのイオン源内にある前記フィラメントの成長/エッチングを可能にする反応性洗浄試薬を利用する、イオン注入システムまたはその構成要素の洗浄。また、イオン注入装置の領域または注入装置の構成要素を洗浄するために、インサイチュまたはエクスサイチュ洗浄構成で、周囲温度、高温、またはプラズマ条件下で、XeFx、WFx、AsFx、PFx、およびTaFx(ここで、xは、化学量論的に適切な値または値の範囲を有する)などの反応性ガスを使用することが記載される。特定の反応性洗浄剤のうち、BrFが、インサイチュまたはエクスサイチュ洗浄構成で、イオン注入システムまたはその構成要素を洗浄するのに有用と記載される。また、フォアラインからイオン化関連堆積物の少なくとも一部を除去するために、イオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法であって、前記フォアラインを洗浄ガスと接触させるステップを含み、前記洗浄ガスが前記堆積物との化学的反応性を有する方法が記載される。また、カソードをガス混合物と接触させるステップを含む、イオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、半導体処理システムの構成要素、特にイオン注入システム上への材料堆積の監視、制御、および洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
イオン注入は、集積回路製造において、制御された量のドーパント不純物を半導体ウェハに正確に導入するために使用され、マイクロエレクトロニクス/半導体製造で重要なプロセスである。そのような注入システムでは、イオン源は、所望のドーパント元素ガスをイオン化し、そのイオンが、発生源から、所望のエネルギーのイオンビームの形で抽出される。抽出は、抽出されたビームが通過するためのアパーチャを組み込む適切な形状の抽出電極間に高電圧を印加することによって実現される。次いで、イオンビームが、ドーパント元素を加工物に注入するために、半導体ウェハなど加工物の表面に向けられる。ビームのイオンは、加工物の表面に浸透して、所望の導電性の領域を形成する。
【0003】
市販のイオン注入システムでは、いくつかのタイプのイオン源が一般に使用されており、それには、熱電極を使用し、電気アークによって電力供給されるフリーマン型およびバーナス型、マグネトロンを使用するマイクロ波タイプ、間接加熱カソード源、およびRFプラズマ源が含まれ、それらは全て、典型的には真空中で動作する。イオン源は、ドーパントガス(一般に「原料ガス」と呼ばれる)で充填された真空チャンバ内に電子を導入することによってイオンを発生する。電子とガス中のドーパント原子および分子との衝突により、正および負のドーパントイオンからなるイオン化されたプラズマが発生する。負または正のバイアスを有する抽出電極は、それぞれ、正または負のイオンがアパーチャを通過して、コリメートされたイオンビームとしてイオン源から出られるようにし、このビームが加工物に向けて加速される。原料ガスは、BF、B1014、B1822、PH、AsH、PF、AsF、HSe、N、Ar、GeF、SiF、O、H、およびGeHを含むが、それらに限定されない。
【0004】
現在、従来技術デバイスの製造では10〜15注入ステップ以上ある。ウェハサイズの増大、臨界寸法の減少、および回路複雑性の高まりにより、より良いプロセス制御、低エネルギーでの高いビーム電流の送達、および平均故障間隔(MTBF)の短縮に関して、より大きな要求がイオン注入ツールに課されている。
【0005】
保守が最も必要なイオン注入装置ツールの部品としては、動作条件に依存して約100〜300時間の動作時間後に点検しなければならないイオン源と、通常は数百時間の動作時間後に洗浄を必要とする抽出電極および高電圧絶縁体と、イオン源ターボポンプおよびその関連のフォアラインを含むイオン注入真空システムのフォアラインおよび真空ポンプとが挙げられる。さらに、動作後に、イオン源のフィラメントを交換する必要があることもある。
【0006】
理想的な場合には、全ての原料分子がイオン化されて抽出されるが、現実には、ある量の原料分解が生じ、その結果、イオン源領域での堆積および汚染が生じる。例えば、リン残留物(例えば、ホスフィンなどの原料ガスの使用に起因する)が、イオン源領域内の表面上に堆積しやすい。残留物は、イオン源内の低電圧絶縁体上に生じることがあり、電気的短絡を引き起こし、これは、熱電子を生成するのに必要なアークを妨害する可能性がある。この現象は、一般に「発生源グリッチ(source glitching)」として知られており、イオンビーム不安定性の主要な原因であり、最終的に発生源の早期の故障をもたらすことがある。残留物はまた、発生源絶縁体や抽出電極の表面など、イオン注入装置の高電圧部品上にも生じ、高エネルギー高電圧スパークを引き起こす。そのようなスパークは、ビーム不安定性の別の原因であり、これらのスパークによって放出されるエネルギーは、壊れやすい電子部品を損傷して、機器故障の増加およびMTBFの悪化をもたらすおそれがある。
【0007】
別の一般的な問題は、固体ドーピング材料としてSbを使用するアンチモン(Sb+)注入に伴って生じることがあり、これは、ホウ素(B)を流入させることによってSb+注入のわずか数時間後でさえ悪化することがある。ホウ素ビーム電流が大幅に低下することがあり、イオン源の性能および寿命が大幅に損なわれる。この性能低下の原因は、発生源チャンバおよびその部品上に堆積された余剰のSbによるものである。イオン源が故障すると、より頻繁な予防保守またはより少ないビーム電流によってスループットが減少されるので、注入装置生産性が大幅に低下する。Sb注入は、アナログバイポーラデバイスで広く使用されており、また、MOS(金属酸化物半導体)デバイスのための浅い接合形成用のn型ドーピングとしても使用されるので、Sb+がドーパントして使用されるとき、特にSb注入後にBに切り替えるときに、発生源チャンバおよびその部品上に堆積されたSbを除去することができる方法を開発することが当技術分野で必要である。
【0008】
さらに、B、Ge、Si、P、およびAsなどのドーパント原子は、イオン源ターボポンプ内、および下流でその関連の真空フォアライン内に堆積することがある。時間と共に、これらの堆積物が蓄積して洗浄が必要となり、これは従来、人為的に行われていた。しかし、堆積物のいくつか(例えば固体リン)は自然発火性であり、人為的な保守操作中に発火するおそれがある。これは火災の危険であるだけでなく、毒性化合物が放出されるおそれもある。したがって、気体洗浄剤を用いてインサイチュで堆積物を望ましく洗浄することができる改良された方法を開発することが当技術分野で必要である。
【0009】
イオン源故障の別の原因において、様々な材料(例えばタングステンW)が、長期のイオン注入プロセス中にカソード上に蓄積することがある。これらが臨界レベルに達すると、カソード出力は、ビーム電流設定値に見合う十分な温度を保つことがもはやできない。これは、イオンビーム電流の損失をもたらし、イオン源の交換を必要とする。結果として生じるイオン源の性能低下および短い寿命により、イオン注入装置システムの生産性が低下する。
【0010】
イオン源故障のさらに別の原因は、カソード材料の腐食(またはスパッタリング)である。例えば、カソードからの金属材料(例えば、W、Moなど)が、アークチャンバのプラズマ中のイオンによってスパッタリングされる。スパッタリングは、主にプラズマ中の最も重いイオンによって行われるので、イオン質量が増加するにつれてスパッタリング効果が悪化することがある。実際、材料の連続的なスパッタリングは、カソードを「薄く」し、最終的にはカソードに穴を形成することになる(「カソード穿孔」)。その結果、イオン源の性能および寿命が大幅に低減される。したがって、イオン源寿命を延ばすためにカソード上での材料の蓄積と腐食との間で均衡を保つことができる方法が当技術分野で引き続き探究されている。
【0011】
さらに、残留物は、システム内部での条件によっては、原材料とイオン注入システムの構成要素との反応をもたらすことがある。そのような反応により、システムのさらなる構成要素上に残留物が堆積することがある。
【0012】
堆積物は、フィラメントやリペラ電極などのイオン源要素上で一般的である。そのような内部堆積物は、一般にアークチャンバ材料から構成されており、タングステンまたはモリブデンから構成されたアークチャンバと共にフッ化物原料を用いて高いプラズマ出力を投入するときに最も一般的に見られる。非ハロゲン化物を含有する原材料を使用するイオン注入システムに関するイオン源寿命予想は一般に約100〜300時間であるが、GeFなどなんらかのハロゲン化物を含有する材料を用いると、イオン源寿命は、発生源動作に対する内部堆積物の悪影響により、10〜50時間程度と低くなることがある。
【0013】
また、イオン注入装置内で残留物によって引き起こされる動作上の難点に加えて、構成要素が洗浄のために取り外されるときに毒性または腐食性蒸気が放出することにより、人員の安全性の問題も大きい。安全性の問題は、残留物が存在するところではどこでも生じるが、イオン源は最も頻繁に保守されるイオン注入装置構成要素であるので、イオン源領域で特に重要である。ダウンタイムを最小限にするために、汚染されたイオン源が室温よりもかなり高い温度で注入装置から取り外されることが多く、それにより蒸気の放出が増加し、安全性の問題が悪化する。
【0014】
上の難点に対処する従来の方法は、堆積物の生成を防止する試みと、抽出電極上およびイオン源上(すなわち、米国特許出願公開第2006/0272776号、米国特許出願公開第2006/0272775号、および国際公開第2005/059942A2号で論じられているように、抽出電極上)に生じた堆積物の洗浄とを含んでいる。しかし、イオン注入システムの全ての要素を洗浄する追加のプロセスの必要性が依然として残っている。
【0015】
したがって、個別の洗浄ステーションを有するエクスサイチュ(ex situ)洗浄プロセスを提供することがイオン注入の技術分野において望まれており、それによって、注入装置から取り外された汚染されている構成要素は、黒鉛電極など壊れやすい構成要素を損傷するおそれがある機械的な摩耗を何ら受けずに安全に洗浄することができる。したがって、注入システムからの取外し後に構成要素を選択的にかつ破壊せずに、さらに最小のダウンタイムで洗浄するために使用することができるオフライン洗浄ステーションを提供することも、イオン注入の技術分野での大きな進歩である。
【0016】
また、注入中に、注入装置全体に、特にイオン源領域に堆積された望ましくない残留物を効果的にかつ選択的に除去するためのインサイチュ洗浄プロセスを提供することも、イオン注入の技術分野での大きな進歩である。そのようなインサイチュ洗浄は、人員の安全性を高め、安定した中断されない注入機器の動作に寄与する。
【0017】
インサイチュ洗浄プロセスは、プロセスチャンバを解体せずに行われる。インサイチュプロセスでは、ガス状物質が、連続式、パルス式、またはハイブリッド連続/パルス式でプロセスチャンバを通して流されて、蓄積された被膜を除去する。状況に応じて、そのような洗浄中にプラズマが発生されることも発生されないこともある。
【0018】
半導体処理チャンバから固体残留物を除去するために、三フッ化塩素(ClF)および他のフッ化物原材料(例えばCF、NF、C、C、SF、およびClF)を使用するプラズマを伴わない洗浄プロセスまたは乾燥洗浄プロセスを使用することがあり、例えば、固体残留物と反応して揮発性反応生成物を生成し、この揮発性反応生成物は、真空または他の除去条件で処理チャンバから除去することがあり、そのような場合、これらの洗浄試薬は高温洗浄条件を要することがある。Y. Saitoらの"Plasmaless Cleaning Process of Silicon Surface Using Chlorine Trifluoride", APPLIED PHYSICS LETTERS, vol 56(8), pp 1119-1121 (1990)を参照されたい。また、D. E. Ibbotsonらの"Plasmaless Dry Etching of Silicon with Fluorine-Containing Compounds", JOURNAL OF APPLIED PHYSICS, vol 56(10), pp 2939-2942 (1984)も参照されたい。
【0019】
米国特許第4,498,953号には、BrF、BrF、ClF、またはIFなどのハロゲン間化合物が、チャンバ内部での所定の圧力を維持しながら処理チャンバを通して連続的に流されるインサイチュ洗浄方法が記載されている。処理の終了時に、ハロゲン間化合物ガスの流れが終了される。そのようなプロセスは、Cl、Br、またはIを含有する副生成物およびフッ素を含有する副生成物を生成することがあり、それにより、処理または他の処分を必要とするかなりの量の有害な廃棄材料を生み出す。さらに、そのような連続流洗浄は、非常に低圧の条件下で行われ、そのような条件では洗浄効率がかなり低下する。
【0020】
いくつかのイオン源用途では、より長いイオン源寿命を実現するために、BF、PH、および/またはAsHの戦略的な時間的配列が行われている。
【0021】
さらに、GeF、SiF、および/またはBFが洗浄ガスとして使用されているが、常に、発生源チャンバ内で照射されるプラズマと共に使用される。
【0022】
半導体処理機器を洗浄するためにフッ素ラジカルまたはフッ素含有ハロゲン間化合物を使用することには、その商業的実現可能性を制限しているいくつかの関連の困難性がある。ClFを含むフッ素ラジカルおよびフッ素含有ハロゲン間化合物は、特性上、非常に腐食性が高い。さらに、ハロゲン間化合物は、ヒトの気道に対して非常に刺激が強い。例えば、ClF蒸気のヒト許容レベルのしきい値は、100ppb程度と低いことがあり、300ppmで1時間程度で50%致死濃度である。
【0023】
新たな洗浄剤、ならびにエクスサイチュおよびインサイチュシステムおよびプロセス、ならびに関連の監視および制御装置および方法が当技術分野で引き続き探究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
発明の概要
本発明は、一般に、イオン注入システムまたはその構成要素を監視、制御、および洗浄するための装置および方法、ならびにそのような洗浄のために有用に採用される組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
一態様では、本発明は、システムの動作中にイオン注入システムのフィラメントの状態を監視する方法であって、(a)アークチャンバ内でプラズマを発生するのに十分な初期電流を、イオン源の前記アークチャンバ内のフィラメントに通電するステップと、(b)連続プラズマ発生の所定の時間に、アークチャンバ内でのプラズマを維持するためにフィラメントへの電流入力を測定するステップと、(c)所定の時間に測定された電流入力を初期電流と比較するステップと、(d)そのような比較から、材料がフィラメント上に堆積しているかどうか、またはフィラメントのエッチングが行われたかどうかを決定するステップであって、初期電流に比べて大きい所定の時間での電流が、フィラメント上での材料の堆積を示し、初期電流に比べて小さい所定の時間での電流が、フィラメントのエッチングを示すステップと、を含む方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、システムの動作中にイオン注入システムのフィラメントの状態を制御する方法であって、(a)アークチャンバ内でプラズマを発生するのに十分な初期電流を、イオン源の前記アークチャンバ内のフィラメントに通電するステップと、(b)連続プラズマ発生の所定の時間に、アークチャンバ内でのプラズマを維持するためにフィラメントへの電流入力を測定するステップと、(c)所定の時間に測定された電流入力を初期電流と比較するステップと、(d)そのような比較から、材料がフィラメント上に堆積しているかどうか、またはフィラメントのエッチングが行われたかどうかを決定するステップであって、初期電流に比べて大きい所定の時間での電流が、フィラメント上の材料の堆積を示し、初期電流に比べて小さい所定の時間での電流が、フィラメントのエッチングを示すステップと、(e)決定するステップに応答して、初期電流入力または前記初期電流入力の所定の範囲内の電流入力が再確立される程度まで、堆積された材料をフィラメントから除去するステップ、あるいはフィラメント上に追加の材料を堆積するステップとを含む方法を提供する。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、イオン源の動作効率を維持するために、イオン源のアークチャンバ内にあるフィラメントを含むイオン注入システムを動作させる方法であって、
(a)タングステンをフィラメント上に堆積する条件と、
(b)堆積された材料をフィラメントからエッチングする条件と
からなる群から選択される条件下でフィラメントをタングステン試薬と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、1つ以上の構成要素からイオン化関連堆積物の少なくとも一部を除去するために、イオン注入システムの前記1つ以上の構成要素を洗浄する方法であって、
(a)材料をフィラメント上に堆積する条件と、
(b)堆積された材料をフィラメントからエッチングする条件と
からなる群から選択される条件下でシステムに洗浄ガスを流すステップを含む方法に関する。
【0029】
本発明のさらなる態様は、アークチャンバ内にあるイオン源のフィラメントの所定の電気抵抗を維持する方法であって、前記所定の電気抵抗を維持するために、アークチャンバ内の温度に依存して、フィラメント上に材料を堆積する、またはフィラメントから材料をエッチングするのに効果的な試薬とフィラメントとを接触させるステップと、フィラメントでの材料の堆積またはエッチングを行うためにアークチャンバ内の温度を制御するステップとを含む方法に関する。
【0030】
別の態様では、本発明は、イオン注入システムまたはその1つ以上の構成要素からイオン化関連堆積物を除去するために、イオン注入システムまたはその1つ以上の構成要素を洗浄する方法であって、BrFが、堆積物の少なくとも一部の除去を行うために堆積物との化学的反応性を有するという条件下で、イオン注入システムまたはその1つ以上の構成要素を前記BrFと接触させるステップを含む方法に関する。
【0031】
別の態様では、本発明は、イオン注入システムのフォアラインからイオン化関連堆積物を除去するために、イオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法であって、洗浄ガスが、堆積物の少なくとも一部の除去を行うために堆積物との化学的反応性を有するという条件下で、イオン注入システムのフォアラインを前記洗浄ガスと接触させるステップを含む方法に関する。そのような方法は、イオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばすことができる。
【0032】
別の態様では、本発明は、イオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法であって、少なくとも1つの洗浄ガスと少なくとも1つの堆積ガスとを含むガス混合物とカソードとを接触させるステップを含み、前記ガス混合物が、カソード上への材料の堆積と、同じまたは他の材料のカソードからの腐食との均衡を保つ方法に関する。
【0033】
本発明の他の態様、特徴、および実施形態は、以下の開示および添付の特許請求の範囲からさらに十分に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面の簡単な説明
【図1】インサイチュ洗浄プロセスの導入前および後の発生源寿命データのグラフであり、プロセスによる寿命の延長を示すグラフである。
【図2】実施例1に詳述する抑制器漏れ電流に対するXeFの効果を示すグラフである。
【図3A】実施例1に詳述するインサイチュ洗浄の洗浄効果の証拠を示す写真である。
【図3B】実施例1に詳述するインサイチュ洗浄の洗浄効果の証拠を示す写真である。
【図4A】実施例5に詳述するインサイチュ洗浄の洗浄効果を示す図である。
【図4B】実施例5に詳述するインサイチュ洗浄の洗浄効果を示す図である。
【図5A】XeF流を用いた、経過時間にわたるフィラメント重量の増加を示すグラフである。
【図5B】XeF流を用いた、経過時間にわたるフィラメント電流の増加を示すグラフである。
【図6】XeF流を用いたシステム内部でのタングステン搬送に関する、フィラメント電流の関数としてのフィラメント重量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、半導体処理システムおよび/またはその構成要素を監視、制御、および洗浄するため装置および方法、ならびにそのような洗浄のための組成物に関する。
【0036】
一態様では、本発明は、システムまたはシステム構成要素が気相反応性材料を含む洗浄組成物と接触される、半導体処理システムまたは半導体処理システムの構成要素からの堆積物の除去に関する。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「気相反応性材料」は、気体または蒸気の状態でのハロゲン化物化合物および/または錯体、イオンおよびプラズマ形態のそのような化合物および/または錯体、ならびにそのような化合物、錯体、およびイオンおよびプラズマ形態に由来する元素およびイオンを含む材料を意味するものとして広く解釈されるものと意図されている。また、気相反応性材料は、本発明の広範な実施で利用されるとき、限定されないが、「気相反応性組成物」、「洗浄剤」、「洗浄ガス」、「エッチャントガス」、「気体ハロゲン化物」、「気体洗浄剤」、「反応性ハロゲン化合物」、「洗浄化合物」、「洗浄組成物」、「洗浄蒸気」、「エッチャント蒸気」、またはそのような用語の任意の組合せで、様々に表現されることがある。
【0038】
本明細書で使用するとき、イオン注入装置に関連する「イオン源領域」は、真空チャンバ、発生源アークチャンバ、発生源絶縁体、抽出電極、抑制電極、高電圧絶縁体、発生源ブッシング、フィラメント、およびリペラ電極を含む。
【0039】
本発明は、半導体処理システムおよびその構成要素、ならびに通常の処理動作中に上に堆積物の生成を受けやすい他の基板および装置の洗浄を意図する。
【0040】
本発明は、様々な態様において、所望のフィラメントの成長、あるいはフィラメントのエッチングを行うために、アークチャンバ内の温度の適切な制御によってアークチャンバのイオン源内にあるフィラメントを成長/エッチングさせることができる能力を備えるイオン注入システムを提供する。
【0041】
本発明の追加の態様は、イオン注入装置の領域または注入装置の構成要素を洗浄するために、インサイチュまたはエクスサイチュの洗浄構成で、プラズマまたは高温条件の下、WF、AsF、PF、およびTaF(ここで、xは、化学量論的に適切な値または値の範囲を有する)などの反応性ガスを使用することに関する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、イオン注入システムまたはその構成要素を洗浄するために、インサイチュまたはエクスサイチュ洗浄構成で、周囲温度、高温、またはプラズマ条件下でBrFを使用することに関する。
【0043】
イオン注入システムの動作により、システムおよびその構成要素内にイオン化関連材料が堆積する。本発明は、システムおよび/またはその構成要素からそのようなイオン化関連堆積物の少なくとも一部を除去するために、イオン注入システムまたはその1つ以上の構成要素を監視、制御、および/または洗浄することを意図する。洗浄方法は、堆積物の少なくとも一部の除去を行うために、気相反応性材料と堆積物との反応を可能にする条件下で、システムおよび/またはその構成要素を気相反応性材料を含む洗浄組成物と接触させるステップを含む。
【0044】
原料ガス自体から生じるイオン化関連堆積物に加えて、原料ガスとシステム構成要素を構成する材料との反応性により、イオン注入システム内部で生成される堆積物または残留物が生じることがあることも判明している。例えば、イオン注入システムの真空チャンバは、ステンレス鋼またはアルミニウムを利用して構成されることがある。真空チャンバ内部のシステム構成要素は、黒鉛(例えば標準またはガラス状)、絶縁体材料(例えば、窒化ホウ素)、および/またはシーラント材料、例えばTeflon(登録商標)、Kel−F(商標)、PEEK(商標)、Delrin(商標)、Vespel(商標)、Viton(商標)、Buna−N、シリコンなどを利用して構成されることがある。イオン注入システム内に存在し、システム内での堆積物生成化学反応の影響を受けやすい可能性がある他の材料として、限定されないが、セラミックスや、酸化鉛、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、および窒化ホウ素を含有するエポキシ組成物が挙げられる。
【0045】
イオン源自体は、時として少量の銅および銀と共に、タングステン、黒鉛、モリブデン、またはタンタルから構成することができる。イオン源アークチャンバは、通常、タングステンまたはモリブデン、あるいはタングステンまたはモリブデンでライニングされた黒鉛体から構成される。そのような状況では、例えばBF、GeF、SiF、AsF、AsF、PF、および/またはPFなどのフッ素原料が、アークチャンバの材料、例えばチャンバまたはチャンバのライニングからのタングステンまたはモリブデンと動作温度で反応して中間副生成物を生成し、この中間副生成物がさらにシステム内に移動して分解し、タングステンまたはモリブデンを堆積し、フッ素を遊離することがある。
【0046】
例えば、GeFなどの原料ガスがイオン源チャンバ内で遊離し、生じた遊離フッ化物が、タングステンなどアークチャンバの材料を腐食する。この反応は、より低温の表面上のタングステンで起こり、したがって、プラズマが照射され、それによりフィラメントが熱い場合には、フッ化物はアークチャンバの壁上のタングステンと反応して、壁をエッチングし、WFガスを生成する。次いで、WFが熱いフィラメント上にタングステンを堆積し、フィラメントのサイズを増加させる。
【0047】
GeFは大量の遊離フッ素を生成するが、BFやSiFなどの原料ガスは、より少量の遊離フッ素を生成し、それに対応してフィラメント上により低レベルのタングステン堆積を生成する。この堆積は、より少ないが、依然として有意な量である。
【0048】
PHおよびAsHなどフッ素を含有しない原料ガスは、アークチャンバの壁上にフィラメントからの金属を堆積させる点で問題であり、その結果、フィラメントが細くなる。
【0049】
したがって、本発明は、アークチャンバの材料と同じイオン化関連堆積物の少なくとも一部を除去するために、イオン注入システムまたはその構成要素を洗浄することを意図する。
【0050】
本発明による洗浄は、複数の原料ガスがシステムに同時に導入されるイオン注入システムで行うことができる。また、原料ガスを、1つ以上の気相反応性材料と同時に使用することもでき、あるいは1つ以上の気相反応性材料と交互にシステム内にパルス式に導入することができる。
【0051】
本発明の洗浄方法の対象であるイオン化関連堆積物は、例えばイオン源または他のイオン化プロセス機器内での生成および蓄積によってイオン注入システムの正常な動作を妨げることがある様々な材料を含む。堆積される材料は、様々な形で、ケイ素、ホウ素、リン、ゲルマニウム、ヒ素、タングステン、モリブデン、セレン、アンチモン、インジウム、炭素、アルミニウム、および/またはタンタルを含む、それらからなる、またはそれらから本質的になることがある。
【0052】
イオン源アークチャンバ内および抽出電極上のイオン化関連堆積物は、剥がれ落ちて、小さな粒子を生成することがある。これらの粒子は、一旦生成されると、イオンビーム、例えばウェハ内に注入されるドーパントイオンのビーム中で搬送される可能性がある。そのようにして搬送される粒子がウェハに達する場合、ウェハ上で生じる粒子汚染が、ウェハ上に製造することができる有用なデバイスの歩留まりを大幅に低減する可能性がある。本発明の洗浄プロセスは、そのようなイオン化関連堆積物を、それらがフレークおよび粒子を生成することができるようになる前に除去し、それにより、製品ウェハ上での粒子の減少および半導体デバイスの歩留まりの増加を実現する。
【0053】
本発明による洗浄に使用される気相反応性材料または洗浄ガスは、イオン注入システム内のイオン化関連堆積物の少なくとも一部を除去するのに効果的な任意の材料を含むことができる。
【0054】
また、本発明は、反応の適切な制御によって、望ましくない位置からイオン化関連堆積物を除去するため、および/または所望の位置で材料を堆積するための気相反応性材料の使用を意図する。本発明の特定の実施形態では、タングステンは、望ましくない堆積物として除去される材料であり、他の実施形態では、タングステンは、望ましく表面上に堆積されて、その存在から利益が得られる。したがって、XeF、GeF、SiF、BF、AsF、AsF、PF、および/またはPFのような、フッ化タングステン中間生成物を生成するための反応性を有するガスを、本発明の制御および洗浄方法で使用することができる。さらに、WF、WF、および/またはWFのようなフッ化タングステンガスを、本発明の制御および洗浄方法で直接利用することができる。したがって、本発明の気相反応性材料には、XeF、GeF、SiF、BF、AsF、AsF、PF、PF、F、TaF、TaF、WF、WF、および/またはWFが含まれるが、それらに限定されない。
【0055】
様々な特定の実施形態では、気相反応性材料は、気相反応性材料の揮発性を高める「洗浄増強剤」または「共反応物」と共に同時に添加することができ、その結果、洗浄増強剤または共反応物を用いない気相反応性材料よりも多くの堆積物が除去される。例えば、XeFによるイリジウム堆積物の除去は、ルイス塩基および電子バックボンド種を同時に添加することによって向上させることができる。特定の用途では、一酸化炭素、三フッ化リン、およびトリアルキルリンを採用することができる。
【0056】
さらなる例として、タングステン壁を有するアークチャンバ内で維持されるプラズマ中で供給ガスがイオン化されるイオン注入システムであって、タングステン壁の一方の側にフィラメントが取り付けられ、他方の側にリペラが取り付けられ、それらがセラミック絶縁体によって壁から分離されているイオン注入システムでは、アークチャンバの構成要素は、供給ガスの分解生成物、アークチャンバの元素、および炭素で汚染されることがある。
【0057】
そのような状況では、XeFのような揮発性フッ化物を生成するタングステンのような金属汚染物質の除去に有用な洗浄剤を、酸素含有添加物と組み合わせることができ、この酸素含有添加物は、CO、CO、および/またはCOFに転化することによって汚染物質炭素を除去するのに効果的である。本発明の特定の実施形態では、そのような目的に有用な酸素含有添加成分は、限定されないが、NO、NO、NO、CO、および/またはOを含む。
【0058】
したがって、本発明は、金属汚染物質を、そのような金属の揮発性(気体)フッ化物化合物を生成する反応によって除去するのに効果的な洗浄剤と、炭素汚染物質を、それらから揮発性酸化物またはオキシフッ化物を生成することによって除去するのに効果的な洗浄剤との両方を含む洗浄組成物を意図する。これらの洗浄試薬は、アークチャンバ内に同時にまたは順次に流すことができる。
【0059】
一実施形態では、これらの試薬は、イオン化条件下でアークチャンバ内に同時に流され、それにより両方の洗浄剤がイオン化されて、金属および炭素汚染物質を揮発性化合物に転化し、これらの化合物は、チャンバの機械的なポンピングによってチャンバから容易に除去される。
【0060】
気相反応性材料と堆積物の反応を可能にする条件は、温度、圧力、流量、組成など任意の適切な条件を含んでもよく、それらの条件下で、気相反応性材料が、汚染物質と接触して化学的に相互作用して、基板、例えば堆積された材料によって汚染された注入装置機器の表面からそのような材料が除去される。
【0061】
採用することができる様々な条件の例として、限定されないが、周囲温度、周囲温度を超える温度、プラズマの存在、プラズマの不在、大気圧未満の圧力、大気圧、および大気圧よりも高い圧力が挙げられる。
【0062】
様々な実施形態において、堆積物を除去するために接触する気相反応性材料に関する特定の温度は、約0℃〜約1000℃の範囲であってよい。接触には、キャリアガスとして、または純粋な状態で、またはさらなる洗浄剤やドーパントなどとの混合状態で気相反応性材料を送達することを含んでもよい。反応の速度を高めるために、気相反応性材料を加熱して、周囲温度にある堆積物と化学反応させることができる。
【0063】
洗浄剤と汚染物質との反応の様々な特性に基づいて、気相反応性材料と汚染堆積物との反応を監視および/または調整することができる。そのような反応特性として、圧力、時間、温度、濃度、特定の種の存在、圧力変化の速度、(特定の種の)濃度変化の速度、電流の変化などを挙げることができる。したがって、真空チャンバ内での所定の圧力、所定の時間量の経過、または所定の温度、システム内での特定の元素の濃度、システム内での特定の副生成物、反応生成物、もしくは他の種の存在、または監視操作時の所定の電流条件の実現など、所定の反応特性の達成に基づいてシステムへの気相反応性材料の導入を終了することができる。
【0064】
タングステン堆積物は、供給ガスと注入装置システムのアークチャンバとの反応から生じることがある。そのような堆積物を洗浄するのに使用される方法は、システムの温度勾配、および/またはフィラメントに流れて通過する電流、および/または有用に決定されて監視することができる任意の他の特性に依存することがある。
【0065】
例えば、供給材料からのフッ素が、第1の温度でアークチャンバと反応して、反応(1)または(2)によってWFを生成することがある。
3F(g)+W(s)→WF(g) (1)
6F(g)+W(s)→WF(g) (2)
また、以下のような、洗浄ガスとアークチャンバのタングステン材料との反応もあり得る。
3XeF+W→3Xe+WF (3)
あるいは、WF(またはWFまたはWF)がシステムに直接供給されることもある。
【0066】
一旦生成された、あるいはシステム内に存在するフッ化タングステンは、次いで、システム内の別の位置に移動することができる。他の位置の温度に応じて、フッ化タングステンは、その位置でタングステンをエッチングまたは堆積する。フィラメントでは、温度は主にそこを通過する実際の電流束に依存する。アークチャンバ内の他の位置での温度は、アークチャンバの特定の位置および設計、フィラメント電流、ならびにフィラメント電流以外の他の電流に応じて異なることがある。
【0067】
第2の位置が高温である場合、フッ化タングステンが分解され、タングステンが堆積されてフッ素が放出され、フッ化タングステンが存在し続ける限りタングステン堆積物がサイズを増す。堆積反応は、以下の反応(4)、(5)、および/または(6)を含むことができる。
WF→W+3F (4)
2WF→2W+5F (5)
WF→W+2F (6)
【0068】
逆に、第2の位置が中程度の温度である場合、フッ化タングステンは、その位置をエッチングすることができ、タングステンを除去し、反応生成物中にフッ素を残し、それにより、エッチングが続くにつれてエッチング位置が減っていく。そのようなエッチング反応は、以下の反応(7)、(8)、および/または(9)を含むことができる。
WF(g)+2W(s)→3WF(g) (7)
2WF(g)+W(s)→3WF(g) (8)
5WF(g)+W(s)→6WF(g) (9)
【0069】
したがって、タングステン堆積物を除去するために、除去の速度および程度が最大になるように、堆積物を担持する構成要素の温度を選択することができる。
【0070】
本発明の他の実施形態では、アークチャンバ内のホウ素および/またはモリブデン堆積物が、対応する態様で除去される。
【0071】
本発明の方法における洗浄剤とプロセス機器との接触は、接触中の圧力変化を監視しながら行うことができ、接触は、圧力変化がゼロになったときに終了する。
【0072】
あるいは、接触は、気相反応性材料、またはそれに由来する反応物、または接触時に生成される反応生成物の分圧を監視しながら行うことができ、接触は、分圧が所定の値、すなわち終点(end point)に達したときに終了する。そのような終点監視は、例えば、適切な終点モニタを用いて行うことができ、例えば、米国特許第6,534,007号および米国特許出願第10/273,036号、同第10/784,606号、同第10/784,750号、および同第10/758,825号にさらに十分に記載されているようなタイプの終点モニタ、またはサーモパイル赤外線検出器(TPIR)もしくは他の赤外線検出器である。
【0073】
別の実施形態では、接触は、気相反応性材料の分圧の調整、ひいては反応速度の制御を可能にするプロセス機器システムの構成要素を使用して、気相反応性材料の制御された流れによって行われてもよい。
【0074】
さらに別の実施形態では、洗浄操作を行うために、所定の流量でのガス反応性材料の連続的な流れが採用される。
【0075】
反応(1)〜(9)を参照して本明細書で上述したように、タングステンのイオン化関連堆積物は、非常に高い温度では堆積することができ、低〜中程度の温度ではエッチングすることができる。堆積またはエッチングの位置が、注入装置システムのフィラメントである場合、温度と電流束が互いに直接関連付けられる。フィラメントがエッチングされるとき、フィラメントはより細くなり、電流に対する抵抗は、フィラメントの断面積が減少するにつれて増加し、それによりフィラメントを通る電流が減少される。フィラメントでの条件がフィラメント上への堆積を促す場合、電流に対する抵抗は、フィラメントの断面積が増加してフィラメントがより太くなるにつれて、連続的な堆積と共に減少し、それに対応してフィラメントを通る電流が増加される。
【0076】
別の態様では、本発明は、発生源フィラメント上での堆積、およびその結果生じるフィラメントの成長を監視する方法であって、フィラメントを通る電流の監視を含む方法に関する。堆積によりフィラメント断面積が増加するにつれて、電流に対する抵抗が減少し、電流が増加して、フィラメントを、アークチャンバ内でのプラズマをサポートするのに必要な温度に保つ。したがって、監視される電流増加を、フィラメント洗浄の必要性を示すために使用することができる。
【0077】
さらなる態様では、本発明は、フィラメントを通る電流を監視することによって、フィラメントのエッチングまたは洗浄を監視する方法に関する。エッチング、スパッタリング、または蒸発によりフィラメント断面積が減少するにつれて、電流に対する抵抗が増加し、電流が減少して、フィラメントを、アークチャンバ内でのプラズマをサポートするのに必要な温度に保つ。したがって、監視されるそのような電流の減少を、エッチングされたフィラメントへの追加の材料の堆積の必要性、あるいは洗浄またはイオン化プロセスの終了の必要性を示すために使用することができる。
【0078】
本発明の別の実装形態は、上で詳述したように、フィラメントを通して流される電流の監視に基づいてフィラメントの状態を制御する方法を含む。
【0079】
一実施形態では、監視されるフィラメント電流の減少は、フィラメントが破断されそうであることを示し、それに応答して、気相反応性材料がシステム内に流され、例えばそれと同時にプラズマが照射され、あるいはプラズマがオフの状態であるがフィラメントは依然として熱く(例えば、約200℃)、それにより、フィラメント上での金属、例えばアークチャンバ壁からのタングステンの堆積を生成する反応を誘発する。そのような反応は、電流が、イオン注入システムの効果的な動作のための所定の範囲内に入り、フィラメントが十分に「再成長」したことを示すまで継続されてもよい。
【0080】
別の実施形態では、監視されるフィラメント電流の増加は、フィラメントが材料堆積により成長していることを示す。それに応答して、フィラメントのエッチングを可能にするのに十分なようにフィラメントが冷却されるように所定の期間にわたって、または所定の温度(例えば、室温〜最大約1200℃の範囲内であってよい)までフィラメントを冷却させた後に、気相反応性材料がシステム内に流される。気相反応性材料を媒介とする後続のエッチング反応は、その後、電流が、イオン注入システムの効果的な動作のための所定の範囲内に入り、フィラメントが適切なレベルまで細くされたことを示すまで継続されてもよい。
【0081】
したがって、本発明の方法は、基板から堆積物の少なくとも一部を除去するのに十分な時間にわたって基板を気相反応性材料と接触させることによって、ホウ素、ケイ素、ヒ素、リン、ゲルマニウム、タングステン、モリブデン、セレン、アンチモン、インジウム、タンタル、および炭素の少なくとも1つを含む堆積物を基板から除去するために使用することができる。そのような目的のための気相反応性材料は、XeF、XeF、XeF、GeF、SiF、BF、AsF、AsF、PF、PF、F、TaF、TaF、WF、WF、WF、NF、IF、IF、KrF、SF、C、CF、Cl、HCl、ClF、ClO、N、N、NF、NFH、NHF、HOBr、Br、BrF、C、C、C、CHF、CH、CHF、COF、HF、CHF、C、C、C、CF、C、COCl、CCl、CHCl、CHCl、およびCHClの1つ以上を含むことがある。
【0082】
本発明の実施において、洗浄剤およびプラズマ源試薬としてフッ化キセノン化合物を使用することができ、これは任意の適切な数のフッ素原子を含むことができる。Xeに対するFの比率がより高いと、より低いF/Xeの化合物に比べて、比較的高速で、より効率の良い洗浄が可能になる。より高い蒸気圧が、洗浄剤の送達速度を高め、より多くの材料の送達を可能にする。
【0083】
本発明の一実施形態では、洗浄剤またはプラズマ源試薬として六フッ化キセノンが採用される。室温でのXeF蒸気圧は、XeFの蒸気圧よりも約7倍高いが、XeFは、XeFと同様に、水との反応性が非常に高い。XeFは、最も有利には、水、炭化水素、水素、または還元剤の存在または発生を伴わない洗浄環境で採用される。しかし、より低い蒸気圧を有する洗浄化合物が使用されるとき、流れ経路内での過剰な圧力降下を回避するために、および洗浄剤の適切に高い送達速度を維持するために、流れ回路に対する調節が必要とされてもよい。
【0084】
本発明の方法を実施するための装置は、気相反応性材料を用いた洗浄に対応するのに適した任意の態様で構成され配置されてもよい。
【0085】
一実施形態では、本発明は、イオン注入および洗浄アセンブリであって、(i)システム内でのイオン注入処理中にイオン化関連堆積物が上に蓄積される1つ以上の構成要素を含むイオン注入システムと、(ii)洗浄組成物の堆積物との接触を伴う洗浄条件下で1つ以上の構成要素から堆積物の少なくとも一部の除去を行うために、堆積物と反応性がある気相反応性材料、例えばハロゲン化物化合物を含む洗浄組成物を貯留する洗浄組成物源を含む洗浄アセンブリと、(iii)洗浄条件下で1つ以上の構成要素に接触するように、洗浄組成物を洗浄組成物源から1つ以上の構成要素に搬送するように構成された流れ回路と、(iv)1つ以上の構成要素から堆積物の少なくとも一部の除去を行うために、洗浄条件中に流れ回路を通る洗浄組成物の流れを制御するように構成された流通部品とを備えるアセンブリを提供する。
【0086】
上述したアセンブリ内の流通部品は、任意の適切なタイプのものであってよく、例えば、弁、弁アクチュエータ、流量制限器、整流器、ポンプ、質量流量制御装置、圧力計、残留ガス分析器、中央処理装置、膜などを含む。そのような流通部品は、採用される特定の洗浄条件下で動作するように適切に構成される。
【0087】
システム内でのイオン注入処理中にイオン化関連堆積物が上に蓄積される注入装置内の1つ以上の構成要素は、任意の適切なタイプのものであってよく、例えば真空チャンバ、アークチャンバ、電極、フィラメント、高電圧ブッシング、磁石導波路、ウェハ処理構成要素、クランプリング、ホイール、ディスクなどであってよい。一実施形態では、構成要素は、真空チャンバまたはその内部に含まれる構成要素である。
【0088】
洗浄組成物源は、洗浄組成物を貯留する材料貯蔵および計量供給パッケージを備えることができる。材料貯蔵および計量供給パッケージは、内部体積を画定する容器を含み、容器は、例えばほぼ円筒形状であってもよい。特定の一実施形態では、洗浄組成物は、周囲温度条件で固体であってもよく、そのような洗浄組成物は、容器内部で、より大きな表面領域上に支持されてもよい。そのようなより大きな表面領域は、例えば陽極処理アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、青銅などからなる米国特許第6,921,062号に記載されるようなトレイまたは有孔不活性発泡体などの構造を含んでもよく、それにより、洗浄材料の一定の蒸発速度を提供し、さらに、関連の洗浄プロセスの計量供給およびイオン化ステップに十分な蒸気圧を提供する。トレイが利用される場合、洗浄組成物がトレイの表面上に支持されてもよく、トレイは、計量供給操作時に容器内で容器の計量供給口へと上方に向かう蒸気の流れのために、それに接続した流通管路を有する。
【0089】
上述した機器構成内の流れ回路は、洗浄条件下で洗浄組成物源からアークチャンバに洗浄組成物を搬送するように構成される。そのような構成は、洗浄組成物の様々な特性に基づいてもよい。例えば、洗浄組成物が低い蒸気圧を有するときには、流れ経路内での不要な圧力降下を回避するために高いコンダクタンスを使用することができる。フローコンダクタンスを最大にし、流れ狭窄を最小にする方法は、当技術分野で周知である。
【0090】
本発明の全ての洗浄方法において、洗浄は、任意選択で、イオン注入システム、特にイオン源の寿命を延ばすための追加の方法および装置と共に利用することができる。そのような寿命を延ばす手法は、特定の基板、堆積された材料、および/または気相反応性材料に対応するようにイオン注入システムの変更を含むことがある。システム装置の変更は、限定されないが、以下のことを含んでもよい。能動熱制御システムを有する抽出電極の具備、放電の頻度/発生を減少する能動的に加熱される抽出電極の具備、金属、好ましくはアルミニウム、モリブデン、またはアルミナ(Al)を含む抽出電極の具備、遠隔プラズマ源の具備、抽出電極の加熱器との接続の具備、抽出電極の冷却デバイスとの接続の具備、滑らかで凹凸のない抽出電極の具備、イオン化チャンバに反応性ガスを搬送するためのチャンバ出口および管路を通る反応性ガスの流れを生成するためにプラズマによって解離可能な発生源ガスを受け入れるように構成されたプラズマチャンバの具備、反応性ガスとプロセスシステム内の表面上の汚染物質との発熱反応の実質的な終了を検出するように設計された温度検出器の具備、気相反応性材料によって害を受けやすいプロセス機器内の構成要素の保護の具備(例えば、そのような材料に敏感な構成要素の周囲への、気相反応性材料に対するシールドの具備)、および/またはアルミニウムまたはアルミナを備えるシステム構成要素の使用の具備。
【0091】
プロセス機器の寿命を延ばすための方法は、限定されないが、以下のことを含んでもよい。放電の頻度および発生を減少させるために抽出電極を能動的に加熱すること、イオン源に送達される原材料の凝縮温度よりも高い温度に抽出電極を加熱すること、採用されるイオン源の特定のタイプに適合させて抽出電極の温度を能動的に制御すること(例えば、加熱または冷却されるイオン源と組み合わせて電極を加熱または冷却すること)、および/または抽出中に高温で抽出電極を維持すること。そのような追加の装置変更および方法は、米国特許出願公開第2006/0272776号および第2006/0272775号、ならびに国際公開第05/059942号にさらに十分に記載されており、それらの全体を参照により本明細書に援用する。
【0092】
特定の実施形態でのイオン注入システムは、アークチャンバおよびドーパント源を含み、ドーパント源は、例えば、BF、XeF、AsH、PH、GeF、SiF、HSe、AsF、AsF、PF、PF、または他のホウ素、ケイ素、ヒ素、リン、またはゲルマニウム含有ドーパント源を含んでもよい。
【0093】
別の実装形態では、本発明は、注入用のドーパント源イオンを生成するためにアークチャンバを通して流されるドーパント源ガスから、イオン注入システムのアークチャンバ内でプラズマを発生させることを含むイオン注入方法であって、ドーパント源ガスがアークチャンバを通して流される時間の少なくとも一部の間に、ドーパント源ガスと同時に気相反応性材料がアークチャンバを通して流されて、イオン注入システム内で洗浄を行う方法に関する。
【0094】
一般に、インサイチュ洗浄を実現するために、ドーパント源ガスと気相反応性材料の並流がなされることがあるが、典型的には、順次に洗浄操作を行うことが好ましく、例えば、イオン源が第1のドーパント源から第1のプラズマを発生し、その後、イオン源が第2のドーパント源から第2のプラズマを発生するときに、それらの間に入る洗浄ステップが採用され、気相反応性材料が、プラズマ発生を伴って、または伴わずにイオン源を通して流される。
【0095】
一実施形態では、本発明は、シリコン基板にXeイオンを注入し、その後、シリコン基板にドーパントイオンを注入することを含む、ドープシリコン基板を形成する方法を提供する。そのようなプロセスでは、Xeイオンの注入は、基板の結晶構造を非晶質化する働きをする。
【0096】
フッ化キセノンプラズマ、例えばXeFプラズマの発生時、洗浄のために、Xeイオンは、発生源自体のいくぶん低いエネルギーのスパッタリング洗浄を行ってもよい。抽出後、Xeイオンは、真空壁、イオン光学構成要素、ウェハディスク、およびウェハホルダなど、イオン源の下流にある構成要素のいくぶん高いエネルギーのスパッタリングを行ってもよい。
【0097】
同様に、WF、WF、および/またはWFなどのタングステンフッ化物種が利用される場合、遊離フッ化物がイオン源の様々な構成要素をスパッタリング洗浄してもよく、かつ/またはタングステンがイオン源の様々な構成要素上に堆積されてもよい。行われる作用(洗浄と堆積のどちらか)は、システム内の個々の構成要素の温度に依存する。
【0098】
本発明は、様々な態様において、マイクロ電子デバイスの製造時に使用されるイオン注入システムのイオン源領域を洗浄するための方法および装置に関する。例えば、イオン源領域は、間接的に加熱されるカソード源、フリーマン型イオン源、またはバーナス型イオン源を含んでもよい。
【0099】
本発明は、一実施形態では、真空チャンバおよび/または構成要素から残留物の少なくとも一部を除去するのに、十分な時間にわたって十分な条件下で真空チャンバおよび/または構成要素を気相反応性ハロゲン化物組成物と接触させることによって、イオン注入装置の真空チャンバおよびイオン注入装置の内部に含まれる構成要素から残留物をインサイチュ除去することに関し、その際、残留物と真空チャンバおよび/または構成要素を構成する材料とが異なるときには、気相反応性材料が、残留物と選択的に反応性があり、イオン注入装置の真空チャンバおよび/または構成要素を構成する材料とは最小の反応性であり(例えば実質的に非反応性であり、好ましくは完全に非反応性であり)、残留物と真空チャンバおよび/または構成要素を構成する材料とが同じであるときには、気相反応性材料が、残留物と真空チャンバおよび/または構成要素の両方と反応性があるようにする。
【0100】
本明細書で使用するとき、用語「選択的に」は、気相反応性ハロゲン化物と残留物との反応性について用いるとき、気相反応性ハロゲン化物と残留物との選択的な反応を表すために使用される。気相反応性ハロゲン化物は、イオン注入装置の真空チャンバおよび/または構成要素を構成する材料とは本質的に非反応性のままであるが、真空チャンバおよび/または構成要素が残留物自体のものと同じまたは同様の元素を含む場合、いくぶんはイオン注入装置の真空チャンバおよび/または構成要素を構成する材料と反応してもよい。例えば、気相反応性材料は、選択的に反応性があり、タングステン堆積物を構成要素から除去する一方で、構成要素自体のタングステンとも反応してよい。そのような共反応が生じるために、残留物と構成要素とは、全く同じ材料を有する必要はないが、いくつかの材料を共通して含むことがある。
【0101】
別の実施形態では、イオン注入装置構成要素は、別個の専用チャンバ内でエクスサイチュで洗浄され、構成要素は、イオン注入装置からその専用チャンバに取り外される。
【0102】
インサイチュ洗浄をさらに詳細に考察すると、そのような洗浄は、主に3つの因子に依存する。すなわち、洗浄前駆体の反応特性と、洗浄反応副生成物の揮発性と、化学洗浄で採用される反応条件とである。洗浄組成物は、注入装置の構成材料の摩耗を最小限にしながら、望ましくない残留物を除去しなければならない。洗浄反応によって発生する副生成物は、イオン注入装置の真空システムまたは他のポンピング装置による副生成物の除去を容易にするのに十分に揮発性でなければならない。
【0103】
注入装置の構成要素と同じ材料から生成される残留物の洗浄は、構成要素自体のいくらかの摩耗を生じる。具体的には、タングステンアークチャンバを利用するシステムからタングステン堆積物を除去するために洗浄剤としてXeFを使用することにより、アークチャンバの内部からいくらかのタングステンが除去される。しかし、システム効率を最大にするために、アークチャンバの内部材料のいくらかの損失は、システムが洗浄されずにタングステン堆積物がシステム内に蓄積される場合に低下されるシステム性能に鑑みれば重要ではない。
【0104】
例えば、気相反応性材料は、XeF蒸気など、フッ化キセノン化合物の蒸気を含んでもよい。XeFは、好ましい反応性ハロゲン化物ガスであり、室温で昇華するが、昇華の速度を高めるために加熱器を使用して加熱されてもよい。XeFは、効果的なシリコンエッチャントとして知られており、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイス処理中にシリコン選択性エッチャントとして使用されている。具体的には、XeFは、以下の反応に従ってシリコンと反応する。
2XeF(g)+Si(s)→2Xe(g)+SiF(g) (10)
シリコン/XeF反応は、活性化させることなく、すなわちプラズマまたは熱的加熱を伴わずに行うことができる。XeFとSiとの反応速度は、XeFとSiOとの反応速度よりもはるかに高く、これは、XeFをSiとの反応に関して選択性があるものにする。
【0105】
XeFまたは他のフッ化キセノン化合物は、本発明の実施において、金属ホウ素用のエッチャントとして有用に採用される。理論に拘束されることを望まないが、ホウ素は、以下の反応(11)に従ってエッチングされると考えられる。
3XeF(g)+2B(s)→3Xe(g)+2BF(g) (11)
ヒ素、リン、およびゲルマニウム用のエッチャントとしてのXeFの使用が本発明によって意図されており、以下の反応を含んでもよい。
5XeF(g)+2As(s)→5Xe(g)+2AsF(g) (12)
5XeF(g)+2P(s)→5Xe(g)+2PF(g) (13)
2XeF(g)+Ge(s)→2Xe(g)+GeF(g) (14)
そのような反応は、エネルギー活性化を伴って、または伴わずに行うことができる。
【0106】
本発明の方法および装置は、イオン注入装置の構成要素から残留物の少なくとも一部を除去するのに有用であり、例えば、そのような残留物の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%を除去し、その際、イオン注入装置の構成要素を構成する材料、例えばアルミニウム、タングステン、モリブデン、黒鉛、絶縁体材料、シーラント材料などと残留物が異なるときには、残留物はそれらの材料に関して選択的に除去されるようにする。
【0107】
残留物と構成要素の構成材料とが同じ材料であるときには、同様のレベルの残留物除去が望ましく、その一方で、構成要素からの材料の除去を低レベルで、例えば数ミクロンまたは数十ミクロンの範囲内で保ち、構成要素の性能に大きな影響を及ぼさないようにする。さらに、堆積物は、一般に均一な厚さまたは堆積を有しないので、洗浄プロセスにおいて構成要素自体の材料よりも反応性が高いことがあり、したがって、気相反応性材料組成物は、構成要素部品との反応よりも残留物との反応に対して選択性がある。
【0108】
停滞モード、連続モード、および直接導入モードを含む、インサイチュ洗浄のためにイオン源領域に気相反応性材料組成物を送達するいくつかのモードを採用することができる。そのような洗浄モードは、本発明の実施において有用に採用される装置および方法と共に、国際公開第07/127865号にさらに十分に記載されている。国際公開第07/127865号の開示は、その全体を参照により本明細書に援用する。本明細書では、洗浄組成物としてのXeFの使用を本発明の様々な実施形態に関連して説明するが、WF、WF、および/またはWFなど他のフッ素化化合物を、XeFの代わりに、またはXeFと組み合わせて使用することができ、あるいは他のフッ素化化合物およびさらなるフッ素化化合物を採用することもできることを理解されたい。例えば、プラズマを伴わずにタングステンをエッチングするためにBrFを使用することができる。別の態様では、本発明は、固体ドーピング材料を採用するイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法であって、前記固体ドーピング材料に関するキャリアガスとしてXeFまたはNを使用することを含む方法に関する。固体ドーピング材料は、SbおよびInClを含むが、それらに限定されない。本発明によって意図されるように、Sb、InCl、または他の固体ドーピング材料用のキャリアガスとしてのXeFまたはNの使用により、発生源チャンバおよびその構成要素上に堆積されたSb、In、および他のドーパントが除去される。この方法は、Sb注入後にホウ素に切り替えた場合でさえ有用である。本発明の方法によって得られる利点は、少なくとも2つある。すなわち、第1に、イオン源チャンバおよびその構成要素上のドーパント蓄積を防止または低減するためにリアルタイムの発生源洗浄を提供し、それによりイオン源性能を改善し、イオン源寿命を延ばす。第2に、プラズマおよび/またはビーム電流を増強および/または安定させる。
【0109】
別の態様では、本発明は、気体ドーピング材料を採用するイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法であって、気体ドーピング材料との並流ガスとしてXeFまたはNを使用することを含む方法に関する。気体ドーピング材料は、GeHを含むが、それに限定されない。本発明によって意図されるように、GeHまたは他の気体ドーピング材料との並流ガスとしてのXeFまたはNの使用により、発生源チャンバおよびその構成要素上に堆積されるGeまたは他のドーパントが除去される。本発明のこの実施によって得られる利点は、少なくとも2つある。すなわち、第1に、イオン源チャンバおよびその構成要素上のドーパントの蓄積を防止または低減するためにリアルタイムの発生源洗浄を提供し、それによりイオン源性能を改善し、イオン源寿命を延ばす。第2に、プラズマおよび/またはビーム電流を増強および/または安定させる。
【0110】
別の態様では、本発明は、イオン注入システムのフォアラインからイオン化関連堆積物を除去するために、イオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法であって、洗浄ガスが、堆積物の少なくとも一部の除去を行うために堆積物との化学的反応性を有するという条件下で、イオン注入システムのフォアラインを前記洗浄ガスと接触させるステップを含む方法に関する。堆積物は、B、Ge、Si、P、およびAs、またはそれらの混合物を含む堆積物を含むが、それらに限定されない。洗浄ガスは、XeF、N、F、および前述のように構成された堆積物と反応性がある他のフッ素化種を含むが、それらに限定されない。当業者に理解されるように、必要とされる洗浄ガスの量は、存在する堆積物の量に依存する。同様に、洗浄ガスと堆積物との反応中に放出される熱量は、洗浄ガスの流量に依存する。洗浄プロセスから生じる副生成物種の同定および濃度は、洗浄ガス流量、堆積物の組成的構成、およびポンプパージ流量に依存する。限定されない例示のみの目的で、フォアラインからリンを洗浄するためにXeFを使用する例を以下に説明する。
【0111】
洗浄プロセスで必要とされるXeFの量を決定するために使用される化学反応は、5XeF(g)+2P(s)→5Xe(g)+2PF(g)である。生成エンタルピー(kJ/mol単位)は、LangeのHandbook of Chemistry (14th ed)から得られ、そこには、反応中に放出される熱の特定に関して以下のように列挙されている。XeF(−164);Xe(0);P(0);およびPF(−1594.4)。XeFの流量が、洗浄プロセスに必要な時間の長さ、および放出される熱を決定する。XeFシリンダを加熱する手段を設けない場合、維持される最大流量は、適切な送達配管のコンダクタンスを仮定して、約50sccmである。この流量は、加熱ジャケットを使用することによってシリンダが室温で維持される場合には、100sccm以上まで高めることができる。リン堆積物を洗浄するのに必要なXeFの量が表1に示され、洗浄反応中に放出される熱量が表2に示される。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
上述した洗浄反応からの様々な副生成物の最大発生速度が表3に示される。
【0115】
【表3】

【0116】
当業者には理解されるように、残留物の組成が変わることがあるので、表3に示されるデータは、副生成物量が、その元素の100%の組成的構成を仮定して各元素ごとに測定されるという仮定に基づく。さらに、これらの種の最大濃度は、排気システム内での希釈流量に依存する。例えば、粗引ポンプのすぐ下流で、PFの最大定常状態濃度は、ポンプが10slpmの窒素パージを有する場合には3330ppmである。この値は、XeFの流量が50sccmよりも高い場合に増加してもよい。
【0117】
上述した方法の一実施形態では、洗浄ガスは、ターボポンプがオフであるが粗引ポンプがオンの状態で注入源チャンバ内に流れる。この実施は、フォアライン堆積物の上を通る洗浄ガスの流量を高め、それにより、より高速の洗浄プロセスを提供する。さらに、洗浄ガス流量は、ガスシリンダを加熱することによって高めることができ、ガスシリンダ内で洗浄ガスは室温以上で貯蔵される。この実施においては、ガスシリンダからイオン注入装置への送達ラインも同様に加熱されることが好ましい。
【0118】
上述した方法の別の実施形態では、洗浄ガスは、パルス流で注入源チャンバ内に流れ、注入源チャンバ、ポンプ、およびフォアラインが、ある圧力まで満たされ、その後、より低い圧力まで吐出される。このプロセスは、イオン注入システムのフォアライン上の堆積物が除去されるまで繰り返される。この実施は、好ましくは、粗引ポンプの入口で隔離弁を採用する。
【0119】
好ましい実施では、上述の実施形態は、ガスシリンダを加熱するステップをさらに含み、洗浄ガスが室温以上で貯蔵される。
【0120】
全ての実施形態に関して、この方法は、洗浄プロセスから生成される揮発性副生成物を除去するために粗引ポンプ出口にスクラバをさらに備えることが好ましい。
【0121】
各実施形態が、Air Products and Chemicals, Inc.(PA, USA)から市販されているものなどXe回収システムをさらに備えることが好ましく、これは、本明細書に援用するhttp://www.fabtech.org/product_briefings/_a/new_product_air_products_offers_on_ site_xenon_recoveryに記載されている。
【0122】
イオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法の別の実施形態は、ターボポンプの下流に洗浄ガスを供給し、前記洗浄ガスをイオン注入システムのフォアラインに連続的に流すことを含む。この実施は、好ましくは、注入プロセスが実施されている間でさえフォアライン上の堆積物を洗浄し、それによりイオン注入の動作の乱れを減らす。
【0123】
上述した実施形態では、洗浄ガスは、ガスシリンダ内に貯蔵されることが好ましい。この方法は、ガスシリンダを加熱するステップをさらに含み、洗浄ガスが室温以上で貯蔵されることが好ましい。
【0124】
上述した実施形態は、洗浄プロセスから生成された揮発性副生成物を除去するために粗引ポンプ出口にスクラバを備えることをさらに含むことが好ましい。
【0125】
上述した実施形態は、Air Products and Chemicals, Inc.(PA, USA)から市販されているものなどXe回収システムを備えることをさらに含み、これは、本明細書に援用するhttp://www.fabtech.org/product_briefings/_a/new_product_air_products_offers_on_site_xenon_recoveryに記載されている。
【0126】
別の態様では、本発明は、カソードを有するイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法であって、少なくとも1つの洗浄ガスおよび少なくとも1つの堆積ガスを含むガス混合物とカソードとを接触させるステップを含み、前記ガス混合物が、カソード上への材料の堆積と、カソードからの同じまたは他の材料の剥脱との均衡を保つ方法に関する。ガス混合物の洗浄ガスが、カソード上に堆積されたドーパントおよびカソードの材料を除去し、一方、ガス混合物の堆積ガスは、直接または間接的に、カソード上にドーパントを堆積させる。そのようなガス混合物は、ドーパント材料の蓄積と、カソード上での同じまたは他の材料の剥脱との間で均衡を保ち、したがってイオン源寿命を延ばす。イオン源注入装置内へのガス混合物の貯蔵および計量供給は、その内容を参照により本明細書に援用する米国特許第5,518,528号に記載されている吸着脱着装置(SDS−安全送達源とも呼ばれる)を使用することによって達成することができ、また、その内容を参照により本明細書に援用する米国特許第6,101,816号に記載されている所望の圧力で流体を保持するための容器(VAC−真空作動式シリンダとも呼ばれる)を備える液体貯蔵および計量供給システムを使用することによって達成することもでき、また、その内容を参照により本明細書に援用する米国特許第6,089,027号に記載されているSDSおよびVACのハイブリッド流体貯蔵および計量供給システム(VAC−Sorbと呼ばれる)を使用することによって達成することもできる。これらの流体貯蔵および計量供給システムは、ガスを大気圧未満の圧力で送達できるようにし、それにより、高圧流体貯蔵および計量供給システムよりも安全であり、効率が良い。さらに、高圧流体貯蔵および計量供給システムの下で共存するには相性の悪いガス混合物のガスのいくつかを、SDS、VAC、またはVAC−Sorbシステムの下では共に貯蔵して計量供給することができる。
【0127】
上述した方法の一実施形態では、ガス混合物のガスは、カソードに接触するように同時に流れる。
【0128】
上述した方法の別の実施形態では、ガス混合物のガスは、カソードに接触するように順次に流れる。
【0129】
上述した方法の別の実施形態では、ガス混合物が、少なくとも1つの水素含有ガスと少なくとも1つのフッ素含有ガスとの組合せを備え、水素含有ガスが洗浄ガスとして働き、フッ素含有ガスが堆積ガスとして働く。
【0130】
上述した方法の別の実施形態では、ガス混合物が、少なくとも1つの非ドーパントガス(すなわちガスがAs、P、Ge、B、Si、またはCを含まない)と、少なくとも1つのドーパントガスとの組合せを含み、非ドーパントガスが洗浄ガスとして働き、ドーパントガスが堆積ガスとして働く。
【0131】
洗浄ガスの例は、Xe/H、Ar/H、Ne/H、Xe/NH、Ar/NH、Ne/NH、Ar/Xe、およびAr/Xe/Hであるが、それらに限定されない。
【0132】
堆積ガスの例は、F、N、ClF、WF、MoF、およびNFであるが、それらに限定されない。
【0133】
ガス混合物の例は、AsH/AsF、AsH/AsF、PH/PF、PH/PF、SiH/SiF、H/Xe/SiF、GeH/GeF、H/Xe/GeF、H/GeF、B/BF、H/BF、F/BF、CO/F、CO/CF、CO/F、CO/CF、COF/F、COF/CH、COF/Hであるが、それらに限定されない。
【0134】
本発明の特徴および利点は、以下の限定されない実施例によってさらに十分に示される。
【実施例】
【0135】
実施例1
この実施例は、化学洗浄剤を使用して堆積物を除去することによって実現することができる、イオン源の寿命および注入装置の利用性の改善を示す。好ましくは、注入装置内での汚染物質フレークおよび導電被膜の蓄積を防止するために、堆積物を定期的に除去する。
【0136】
イオン注入装置のガスボックス内に位置決めされたXeFの供給容器からXeFを定期的に導入することによって、インサイチュ洗浄を行った。XeF洗浄蒸気を1日に2回、10〜15分間、イオン源内に導入した。洗浄試薬の流れの動力学を評価するために、試験用に高電流注入装置を利用した。XeF洗浄特性を特定し、注入装置のビームライン構成要素に対して洗浄剤が悪影響を及ぼさないことを検証した。次いで、中電流注入装置と共に使用するために、XeF試薬を使用する洗浄プロセスの適性を検査した。
【0137】
図1は、インサイチュ洗浄プロセスの実施前および実施後の、そのような中電流注入装置からの、蓄積された発生源寿命データのグラフである。データは、アルシンおよびホスフィンを含むドーパント組成物に関して得た。洗浄前、イオン源は、約250±90時間の平均動作寿命を有し、これは2つの一般的な故障モードによって制限されていた。
【0138】
主要な故障モードは、抑制器電圧供給源からの過剰な漏れであった。安定したイオンビームを正常に抽出するために、アークチャンバの外部に位置決めされた電極に抑制器電圧が印加される。電極は、いくつかの小さな絶縁体によって電気的に絶縁され、これらの1つ以上の絶縁体上への導電被膜の蓄積が、過剰な抑制器漏れを引き起こすおそれがある。
【0139】
第2の故障モードは、堆積された材料のフレークに起因するアークチャンバ内の構成要素の短絡であった。
【0140】
これらの故障モードは、インサイチュ化学洗浄プロセスによって最小限に抑えられることが判明した。定期的な1日2回の洗浄が、製造時に発生源の寿命を延ばした。
【0141】
さらに、抑制器漏れ電流に対するXeFの効果が図2に示されており、図2は、インサイチュ洗浄を導入する前および後の、中電流ツールに関する漏れ電流のグラフである。各データ点が、ウェハロットに注入するのに必要な時間中の平均抑制器電流を表し、それらの点は、複数のイオン源の寿命にわたってプロットされている。漏れの大きさは、最後の予防保守で絶縁体を交換してからの経過時間に依存する。このデータは、定期的なインサイチュ洗浄が漏れ電流を大幅に減少させ、したがって、定期保守以外の発生源保守が必要とされる1.5mAの管理上限に漏れ電流が達することは決してなかったことを示す。
【0142】
また、BFおよびPHを含む注入ドーパント混合物を使用して、インサイチュ洗浄効果を評価した。発生源は、これらの条件下で497時間稼動し、BF化学反応に起因するフィラメント上のタングステン堆積物に関わるアーク制限状態により故障した。試験システムでの497時間の単一発生源寿命は、好ましくは、同じシステムでの299時間の長期履歴平均に匹敵する。これは、単一のデータ点であるが、確立されているパターンに適合する。この場合の発生源寿命の改善は、発生源アークチャンバ内のタングステン堆積物をXeFによってエッチングしたことによるものであると考えられる。
【0143】
図3Aおよび図3Bの写真が、洗浄剤の効果の証拠をさらに示す。どちらの写真にも、各場合に約98日の製造後に定期的な予防保守のためにイオン源アセンブリを取り外した後のイオン源ハウジングの様子が示されている。図3Aの写真は、インサイチュ洗浄を1日2回行ったものであり、図3Bの写真は、洗浄を行わなかったものである。
【0144】
洗浄を行わなかった場合、かなりの量の材料が堆積し、そのいくらかが層剥離して剥がれ落ち始めた。定期的な保守活動中、堆積された材料をハウジングの内面から除去するために、人為的なこすり落としを行った。ハウジングは、インサイチュ洗浄によってはるかに清浄になったように見え、人為的な洗浄にはほとんどまたは全く時間を費やさなかった。アークチャンバから流出して真空チャンバ壁に進んだ未反応のXeFによって堆積物が除去され、ドーパントおよび他の堆積物は、化学反応によって除去された。
【0145】
イオン源内部および周囲の堆積物は、いわゆる「注入装置メモリ効果(implanter memory effect)」をもたらす。あるドーパント源ガスから別のドーパント源ガスに切り替えるとき、第1のドーパントガスの流れが終了した後、長期にわたって、第1のドーパントの元素からのイオンがイオン源プラズマから抽出され続ける。この効果は、場合によっては、所望のイオンビームの激しい汚染を引き起こし、その結果、注入プロセスを機能低下させる。
【0146】
注入装置メモリ効果の一例は、BF注入におけるP汚染である。プロセスの歩留まりに対するこの汚染の重大性は非常に大きいため、多くの半導体製造設備が、同じツールでリンおよびホウ素注入を計画することを回避している。これは、注入操作を計画する際に大きな障害となる。P/BF汚染は、PHを用いた注入からの発生源内のリン堆積物により生じる。BF注入のためにBFガスに切り替えた後、フッ素のいくらかが反応して、3119を生成する。3119の質量は、50である。これは、1119についての所望の質量49に十分に近く、したがってPFがBFイオンと同時注入される。その結果、BF注入は、特定の質量エネルギー範囲で限界質量分解能を有するいくつかの高電流システムで制限される。
【0147】
注入装置メモリ効果に対する影響を求めるために、PHドーパントガスからのPイオンビームを用いたシミュレートされた製造において、約200時間にわたって動作させた高電流注入装置を使用して、XeF洗浄を評価した。システムをBFガスに切り替え、高線量(5×1015イオン/cm)のBFを使用して、未加工のシリコンモニタウェハにすぐに注入を行った。BF注入中、システムの分析磁石のリゾルビングアパーチャ(resolving aperture)を通常よりも大きく開いて、二次イオン質量分析法(SIMS)を使用する簡便な測定に対して、汚染効果が十分に大きくなることを確実にした。
【0148】
BF、アルゴン、およびXeFの洗浄効果を、3つのガスそれぞれを流入させ、次いで、モニタウェハにBFを注入することによって、残留した汚染の量を定期的に監視することによって、比較した。BFと同時注入されたPの量をSIMSによって測定した。注入されたリンの典型的なSIMSスペクトルが図4Aに示され、図4Aにおいて、リンスペクトルのピークは、イオン源から抽出されるPFイオンの注入深さに対応し、線量は、BF中の約3%のPFの汚染レベルに対応する。
【0149】
図4Bは、BFまたはXeFを用いた洗浄時間の関数としての汚染レベルのプロットであり、ここで、プロットは、PHからBFへの切替え直後に、汚染レベルに正規化されている。BFプラズマを投入したとき、2時間後でさえ、PF汚染に対する効果はほとんどなかった。アルゴンプラズマを使用したとき、同様の結果(図示せず)が得られた。対照的に、XeFを用いたインサイチュ洗浄のわずか15分後に、PF汚染が2分の1に減少され、XeFを用いたインサイチュ洗浄の30分後には、約5分の1になった。
【0150】
インサイチュ洗浄を使用する前、中電流注入装置ユニットは、ツール当たり1ヶ月で平均3.3回の発生源切替えがあり、平均発生源切替えおよび後続の適性試験には、平均約5時間かかり、これは、年間でツール当たり約200時間の製造時間の損失に相当した。発生源寿命は、インサイチュ洗浄によって効果的に倍増され、各中電流ツール毎に約100時間の追加の製造時間を生み出した。その結果得られた、テストウェハの節約、ならびに適性検査済ウェハ(各中電流注入装置ごとに年間で最大40回の適性検査が行われる)の後処理に必要な製造時間および計測ツールの節約が、インサイチュ洗浄の効果を示した。
【0151】
実施例2
この実施例は、例示的なイオン注入装置システムのイオン源内でのフィラメント成長の制御を示す。
【0152】
図5Aは、フィラメント電流および重量の増加に対するXeF流およびアーク電力変化の効果を示すグラフである。このグラフは、注入装置システムの動作の経過時間(単位は時間)の関数としてフィラメント重量(単位はグラム)を示す。グラフ中の上側の線は、2.2標準立方センチメートル毎分(sccm)のXeF流および100ボルト/0.05アンペアのアーク電力での動作を表し、これに関して、3時間の動作後に、319ミリグラム/時のフィラメント重量増量が測定された。グラフ中の下側の線は、0.5sccmのXeF流および40ボルト/0.05アンペアのアーク電力を反映し、これは、3時間の動作期間で63ミリグラム/時のフィラメント重量増量を生み出した。
【0153】
図5Bは、フィラメント電流に対するXeF流およびアーク電力変化の効果を示すグラフである。グラフは、注入装置システムの動作時間の関数としてフィラメント電流(単位はアンペア)を示す。グラフ中の上側の線は、2.2標準立方センチメートル毎分(sccm)のXeF流および100ボルト/0.05アンペアのアーク電力での動作を表し、これに関して、16アンペア/時のフィラメント電流上昇が測定された。グラフ中の下側の線は、0.5sccmのXeF流および40ボルト/0.05アンペアのアーク電力を反映し、これは、3時間の動作期間で2.3アンペア/時のフィラメント電流上昇を生み出した。
【0154】
図6は、平均フィラメント電流(単位はアンペア)の関数としてのフィラメント重量変化(単位はミリグラム/時)のグラフである。このグラフは、タングステン搬送に関する熱流(プラズマなし)条件およびプラズマ条件の効果を示し、低流量および高流量の熱いフィラメント条件に関するデータ、ならびに低流量および高流量のプラズマ条件に関するデータを含む。これらのデータは、フィラメントでの材料の堆積またはエッチングを行うのに適切なプロセス条件を選択することによって、システム内でのタングステンの搬送を選択的に調節することができることを示す。
【0155】
本発明を、様々な特定の実施形態に関して本明細書で説明してきたが、当業者には理解されるように、本発明はそれらに限定されず、様々な他の修正および実施形態まで及んで包含することを理解されたい。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲に従って広くみなされて解釈されることを意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの動作中にイオン注入システムのフィラメントの状態を監視する方法であって、
(a)アークチャンバ内でプラズマを発生するのに十分な初期電流を、イオン源の前記アークチャンバ内のフィラメントに通電するステップと、
(b)連続プラズマ発生の所定の時間に、前記アークチャンバ内でのプラズマを維持するために前記フィラメントへの電流入力を測定するステップと、
(c)前記所定の時間に測定された前記電流入力を前記初期電流と比較するステップと、
(d)前記比較から、材料が前記フィラメント上に堆積しているかどうか、または前記フィラメントのエッチングが行われたかどうかを決定するステップであって、前記初期電流に比べて大きい前記所定の時間での電流が、前記フィラメント上での材料の堆積を示し、前記初期電流に比べて小さい前記所定の時間での電流が、前記フィラメントのエッチングを示すステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記フィラメントがタングステンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較から、材料が前記フィラメント上に堆積されていると決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラメント上に堆積される前記材料が、ホウ素、ケイ素、ヒ素、リン、ゲルマニウム、タングステン、モリブデン、セレン、アンチモン、インジウム、タンタル、および炭素からなる群から選択される材料を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記比較から、前記フィラメントのエッチングが行われたと決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
システムの動作中にイオン注入システムのフィラメントの状態を制御する方法であって、
(a)アークチャンバ内でプラズマを発生するのに十分な初期電流を、イオン源の前記アークチャンバ内のフィラメントに通電するステップと、
(b)連続プラズマ発生の所定の時間に、前記アークチャンバ内でのプラズマを維持するために前記フィラメントへの電流入力を測定するステップと、
(c)前記所定の時間に測定された前記電流入力を前記初期電流と比較するステップと、
(d)前記比較から、材料が前記フィラメント上に堆積しているかどうか、または前記フィラメントのエッチングが行われたかどうかを決定するステップであって、前記初期電流に比べて大きい前記所定の時間での電流が、前記フィラメント上の材料の堆積を示し、前記初期電流に比べて小さい前記所定の時間での電流が、前記フィラメントのエッチングを示すステップと、
(e)前記決定するステップに応答して、前記初期電流入力または前記初期電流入力の所定の範囲内の電流入力が再確立される程度まで、堆積された材料を前記フィラメントから除去する、あるいは前記フィラメント上に追加の材料を堆積するステップとを含む方法。
【請求項7】
堆積された材料を前記フィラメントから除去する、あるいは前記フィラメント上に追加の材料を堆積する前記ステップが、前記イオン源に洗浄ガスを流すステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フィラメント上に追加の材料を堆積するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記追加の材料がタングステンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラズマが発生されている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
プラズマが発生されていない、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
イオン源の動作効率を維持するために、前記イオン源のアークチャンバ内にあるフィラメントを含むイオン注入システムを動作させる方法であって、
(a)タングステンを前記フィラメント上に堆積する条件と、
(b)堆積された材料を前記フィラメントからエッチングする条件と
からなる群から選択される条件下で前記フィラメントをタングステン試薬と接触させるステップを含む方法。
【請求項13】
1つ以上の構成要素からイオン化関連堆積物の少なくとも一部を除去するために、イオン注入システムの1つ以上の構成要素を洗浄する方法であって、
(a)材料を前記フィラメント上に堆積する条件と、
(b)堆積された材料を前記フィラメントからエッチングする条件と
からなる群から選択される条件下で前記システムに洗浄ガスを流すステップを含む方法。
【請求項14】
材料を前記フィラメント上に堆積する条件を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記材料の堆積がタングステンの堆積を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
堆積された材料を前記フィラメントからエッチングする条件を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記洗浄ガスが、XeF、XeF、XeF、GeF、SiF、BF、AsF、AsF、PF、PF、F、TaF、TaF、WF、WF、WF、NF、IF、IF、KrF、SF、C、CF、Cl、HCl、ClF、ClO、N、N、NF、NFH、NHF、HOBr、Br、BrF、C、C、C、CHF、CH、CHF、COF、HF、CHF、C、C、C、CF、C、COCl、CCl、CHCl、CHCl、およびCHClの1つ以上を含む、請求項7または請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記フィラメントが熱い、請求項8または請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記条件が、プラズマ発生を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記条件が、プラズマ発生がないことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記フィラメントが周囲温度である、請求項8または請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記エッチングが25℃〜1200℃の範囲内の温度で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
アークチャンバ内にあるイオン源のフィラメントの所定の電気抵抗を維持する方法であって、前記所定の電気抵抗を維持するために、前記アークチャンバ内の温度に依存して、前記フィラメント上に材料を堆積する、または前記フィラメントから材料をエッチングするのに効果的な試薬と前記フィラメントとを接触させるステップと、前記フィラメントでの材料の堆積またはエッチングを行うために前記アークチャンバ内の温度を制御するステップとを含む方法。
【請求項24】
前記所定の電気抵抗が、電気抵抗値の所定の動作範囲内にある電気抵抗である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試薬が、XeF、XeF、XeF、GeF、SiF、BF、AsF、AsF、PF、PF、F、TaF、TaF、WF、WF、WF、NF、IF、IF、KrF、SF、C、CF、Cl、HCl、ClF、ClO、N、N、NF、NFH、NHF、HOBr、Br、BrF、C、C、C、CHF、CH、CHF、COF、HF、CHF、C、C、C、CF、C、COCl、CCl、CHCl、CHCl、およびCHClからなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記試薬が、フッ化タングステン、フッ化ヒ素、フッ化リン、およびフッ化タンタルからなる群から選択される1つ以上のフッ化化合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
イオン注入システムのフォアラインからイオン化関連堆積物を除去するために、イオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法であって、洗浄ガスが、前記堆積物の少なくとも一部の除去を行うために前記堆積物との化学的反応性を有するという条件下で、イオン注入システムの前記フォアラインを前記洗浄ガスと接触させるステップを含む方法。
【請求項28】
前記堆積物が、B、Ge、Si、P、またはAs、またはそれらの混合物を含む、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項29】
前記洗浄ガスが、XeF、N、F、または請求項28に記載の堆積物と反応性がある他のフッ素化種を含む、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項30】
前記注入システムが、ターボポンプおよび粗引ポンプをさらに備え、ターボポンプをオフにし、粗引ポンプをオンにした状態で、前記洗浄ガスが前記注入源チャンバ内に流れる、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項31】
前記洗浄ガスがガスシリンダ内に貯蔵され、前記ガスシリンダを加熱するステップをさらに含み、前記洗浄ガスが室温以上で貯蔵される、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項32】
送達ラインが前記ガスシリンダに接続し、イオン注入システムが室温よりも高く加熱される、請求項31に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項33】
パルス流によって前記注入源チャンバ内に前記洗浄ガスを流すステップと、その後、前記注入源チャンバ内の前記ガスを排気するステップと、任意選択で、前記イオン注入システムの前記フォアラインでの堆積物が除去されるまで前記パルス流と排気とを繰り返すステップとを含む、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項34】
ターボポンプの下流に前記洗浄ガスを供給するステップと、前記イオン注入システムの前記フォアライン内に連続的に前記洗浄ガスを流すステップとを含む、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項35】
前記洗浄プロセスから生成される揮発性副生成物を除去するために、前記粗引ポンプ出口にスクラバを備えることをさらに含む、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項36】
Xe回収システムを備えることをさらに含む、請求項27に記載のイオン注入システムのフォアラインを洗浄する方法。
【請求項37】
カソードを有するイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法であって、少なくとも1つの洗浄ガスと少なくとも1つの堆積ガスとを含むガス混合物と前記カソードとを接触させるステップを含み、前記ガス混合物が、前記カソード上への材料の堆積と、前記カソードからの同じまたは他の材料の剥脱との均衡を保つ方法。
【請求項38】
前記ガス混合物のガスが、前記カソードに接触するように同時に流れる、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項39】
前記ガス混合物のガスが、前記カソードに接触するように順次に流れる、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項40】
前記ガス混合物が、少なくとも1つの水素含有ガスと少なくとも1つのフッ素含有ガスとの組合せを含む、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項41】
前記洗浄ガスが、Xe/H、Ar/H、Ne/H、Xe/NH、Ar/NH、Ne/NH、Ar/Xe、およびAr/Xe/Hから選択される、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項42】
前記堆積ガスが、F、N、ClF、WF、MoF、およびNFから選択される、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項43】
前記ガス混合物が、少なくとも1つの非ドーパントガスと少なくとも1つのドーパントガスとの組合せを含む、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項44】
前記ガス混合物が、AsH/AsF、AsH/AsF、PH/PF、PH/PF、SiH/SiF、H/Xe/SiF、GeH/GeF、H/Xe/GeF、H/GeF、B/BF、H/BF、F/BF、CO/F、CO/CF、CO/F、CO/CF、COF/F、COF/CH、およびCOF/Hから選択される、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項45】
前記ガス混合物が、SDS、VAC、またはVAC−Sorbシステムによって共に貯蔵および計量供給される、請求項37に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項46】
固体ドーピング材料用のキャリアガスとして請求項17に記載のXeF、N、または他の洗浄ガスを使用することを含む、前記固体ドーピング材料を採用するイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項47】
前記固体ドーピング材料が、Sb、InCl、または他の注入固体原材料である、請求項46に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項48】
気体ドーピング材料用の並流ガスとしてXeFまたはNを使用することを含む、前記気体ドーピング材料を採用するイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。
【請求項49】
前記気体ドーピング材料がGeHである、請求項48に記載のイオン注入システムの性能を改善し、寿命を延ばす方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−512015(P2011−512015A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546872(P2010−546872)
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/033754
【国際公開番号】WO2009/102762
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】