説明

半導体受光素子

【課題】受光部とメサ部との間に樹脂膜が埋め込まれる構造であっても、入射光に対する光学的な影響を低減することが可能な半導体受光素子を提供すること。
【解決手段】本発明は、n型InP基板10上に設けられ、上面および側面を有する半導体構造からなる受光部16と、n型InP基板10上に受光部16に隣接して設けられ、上面および側面を有する半導体構造からなるダミーメサ部20a(電極接続部)と、受光部16の側面、ダミーメサ部20aの側面、および受光部16とダミーメサ部20aとの間のn型InP基板10を覆う第1絶縁膜26と、第1絶縁膜26上の受光部16とダミーメサ部20aとの間を埋め込む樹脂膜28と、受光部16の上面と直接接し、かつ樹脂膜28を覆う第2絶縁膜30と、を備える半導体受光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に半導体層からなるメサ構造の受光部が設けられ、受光部を構成する半導体層上に形成された電極と電気的に接続する電極パッドが、受光部のメサとは別のダミーメサ部上に形成される構造の半導体受光素子が知られている(例えば、特許文献1)。このような構造では、受光部を構成する半導体層上に形成された電極とダミーメサ部上に形成された電極パッドとを電気的に接続させる配線を設けることがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−290477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造に対して、寄生容量を低減することを目的として、受光部とダミーメサ部との間に低誘電率の樹脂膜を埋め込む構造を検討した。この樹脂膜上に、受光部に設けられた電極とダミーメサ部上に設けられた電極パッドとの間を電気的に接続する配線を設けることができる。ここで、樹脂膜の耐湿性や密着性を良くするために、樹脂膜の上下に絶縁膜を形成して、樹脂膜を絶縁膜で覆うことが考えられる。このような構造は、受光部とダミーメサ部とを覆うように半導体基板全面に第1絶縁膜を堆積した後、第1絶縁膜上であって受光部とダミーメサ部との間に樹脂膜を埋め込み、その後、樹脂膜の上面を覆うように半導体基板全面に第2絶縁膜を堆積することで形成できる。
【0005】
しかしながら、上記の構造では、樹脂膜が設けられた領域以外の領域では、第1絶縁膜と第2絶縁膜とが積層された積層絶縁膜が設けられる。つまり、受光部の上面に形成された絶縁膜は、2度の成膜工程により堆積された第1絶縁膜と第2絶縁膜との積層絶縁膜となる。受光部の上面に形成される絶縁膜は、表面入射型の半導体受光素子および裏面入射型の半導体受光素子いずれの場合であっても、入射光を良好に透過する性質を有することが求められる。しかしながら、2度の成膜工程により堆積された積層絶縁膜の場合では、入射光に対して意図せぬ光学的影響を及ぼす場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、受光部とメサ部との間に樹脂膜が埋め込まれる構造であっても、入射光に対する光学的な影響を低減することが可能な半導体受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体受光素子は、半導体基板上に設けられ、上面および側面を有する半導体構造からなる受光部と、前記半導体基板上に前記受光部に隣接して設けられ、上面および側面を有する半導体構造からなる電極接続部と、前記受光部の側面、前記電極接続部の側面、および前記受光部と前記電極接続部との間の前記半導体基板を覆う第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上の前記受光部と前記電極接続部との間を埋め込む樹脂膜と、前記受光部の上面と直接接し、かつ前記樹脂膜を覆う第2絶縁膜と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る半導体受光素子によれば、受光部の上面には第2絶縁膜のみが形成されるため、入射光に対する光学的な影響を低減することができる。
【0008】
上記構成において、前記受光部の上面に設けられた、前記第1絶縁膜が除去された領域に前記第2絶縁膜が設けられてもよい。これによれば、受光部の上面に第2絶縁膜のみを容易に設けることができる。
【0009】
上記構成において、前記電極接続部の上面に設けられた電極パッドと、前記電極パッドと前記受光部の上面との間を電気的に接続する配線と、を備えてもよい。これによれば、電極パッドを受光部の上面よりも突出させることができ、半導体受光素子と外部基板との接続が容易となる。
【0010】
上記構成において、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは同じ材料からなってもよい。また、上記構成において、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは窒化シリコン膜あるいは酸化シリコン膜のうちのいずれかによって構成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受光部とメサ部との間に樹脂膜が埋め込まれる構造であっても、入射光に対する光学的な影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)から図1(c)は、比較例に係る半導体受光素子の製造方法を示す断面図の例である。
【図2】図2は、実施例1に係る半導体受光素子の上面図の例である。
【図3】図3は、図2のA−A間の断面図の例である。
【図4】図4(a)から図4(d)は、実施例1に係る半導体受光素子の製造方法を示す断面図(その1)の例である。
【図5】図5(a)から図5(d)は、実施例1に係る半導体受光素子の製造方法を示す断面図(その2)の例である。
【図6】図6(a)は、実施例2に係る半導体受光素子の上面図の例であり、図6(b)は、下面図の例である。
【図7】図7は、図6(a)のA−A間の断面図の例である。
【図8】図8(a)から図8(c)は、実施例2に係る半導体受光素子の製造方法を示す断面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、比較例に係る半導体受光素子について説明する。比較例に係る半導体受光素子は、表面入射型の半導体受光素子の例である。図1(a)から図1(c)は、比較例に係る半導体受光素子の製造方法を示す断面図の例である。図1(a)に示すように、例えばn型InP基板50上に、光吸収層として機能するノンドープInGaAs層52と、p型InP層54と、を順次堆積した後、マスク層を使用して、p型InP層54とノンドープInGaAs層52とをエッチングして、n型InP基板50の上面を露出させる。これにより、メサ構造の受光部56と、受光部56の周りにダミーメサ部58と、が形成される。ダミーメサ部58は、入射光を受光する受光部としては機能しない。受光部56とダミーメサ部58とを覆うように、n型InP基板50全面に第1絶縁膜60を堆積する。その後、第1絶縁膜60上であって、受光部56とダミーメサ部58との間に樹脂膜62を埋め込む。
【0014】
図1(b)に示すように、n型InP基板50全面に樹脂膜62の上面を覆う第2絶縁膜64を堆積する。これにより、樹脂膜62の上下に第1絶縁膜60と第2絶縁膜64とが形成され、樹脂膜62は、第1絶縁膜60と第2絶縁膜64とに覆われて耐湿性や密着性が良好となる。樹脂膜62が形成された領域以外の領域では、第1絶縁膜60と第2絶縁膜64とが積層された積層絶縁膜が形成され、受光部56の上面においても、第1絶縁膜60と第2絶縁膜64とが積層された積層絶縁膜が形成される。
【0015】
図1(c)に示すように、マスク層を使用して、受光部56の上面の外周部分における第1絶縁膜60と第2絶縁膜64とをエッチングして、受光部56の上面を露出する開口を形成する。その後、開口に埋め込まれるp電極66と、p電極66に接し、第2絶縁膜64の上面を、樹脂膜62上を経由してダミーメサ部58上まで延在するp側配線67を形成する。p電極66は、開口に埋め込まれることで、p型InP層54と接して電気的に接続する。ダミーメサ部58上であって、p側配線67の上面に接してp電極パッド68を形成する。これにより、p電極パッド68は、p側配線67およびp電極66を介して、p型InP層54と電気的に接続する。
【0016】
このように、比較例によれば、受光部56の上面に、2度の成膜工程で堆積された第1絶縁膜60と第2絶縁膜64との積層絶縁膜が設けられる。第1絶縁膜60と第2絶縁膜64とを同じ成膜条件で堆積したとしても、第1絶縁膜60と第2絶縁膜64との膜質が異なり、第1絶縁膜60と第2絶縁膜64との間に界面が形成される場合がある。また、樹脂膜62を形成する際には、第1絶縁膜60の上面は大気に触れさせられることになるため、第1絶縁膜60と第2絶縁膜64との間に、大気に触れた際に形成された層による界面が形成される場合がある。
【0017】
表面入射型の半導体受光素子では、受光部56の上面は、受光部56の上方から入射される入射光を受光する受光面となる。このため、受光部56の上面に設けられた第1絶縁膜60と第2絶縁膜64との積層絶縁膜は、入射光に対して透明で反射を防止する反射防止膜として機能することが求められる。しかしながら、上述したように、2度の成膜工程により堆積された第1絶縁膜60と第2絶縁膜64との積層絶縁膜では、第1絶縁膜60と第2絶縁膜64との間に界面が形成される場合があり、この界面で入射光が散乱してしまうなど、入射光に対して意図せぬ光学的影響を及ぼすことがある。そこで、このような課題を解決すべく、受光部とダミーメサ部との間に樹脂膜が埋め込まれる構造であっても、入射光に対する光学的な影響を低減することが可能な半導体受光素子についての実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る半導体受光素子は、表面入射型の半導体受光素子の場合の例である。図2は、実施例1に係る半導体受光素子の上面図の例である。図3は、図2のA−A間の断面図の例である。図2および図3に示すように、実施例1に係る半導体受光素子100は、n型InP基板10上に、ノンドープInGaAs層12とp型InP層14とが順次積層された、メサ構造の受光部16を有する。ノンドープInGaAs層12は、光吸収層として機能する。受光部16は、上方から見て略正方形状をしたn型InP基板10の中央部分に設けられており、直径が例えば50μmの円柱形状をしている。
【0019】
受光部16の周囲には、n型InP基板10上に、ノンドープInGaAs層12とp型InP層14とが順次積層された、メサ構造である4つのダミーメサ部が設けられている。ダミーメサ部は、入射光を受光する受光部としては機能しない。4つのダミーメサ部は、受光部16を中心とした略正方形の各頂点の位置に設けられていて、直径が例えば50μmの円柱形状をしている。4つのダミーメサ部のうちの1つのダミーメサ部20aは、受光部16を構成するp型InP層14と電気的に接続するp電極パッド22が、上部に設けられたダミーメサ部であり、残りの3つのダミーメサ部20bは、受光部16を構成するn型InP基板10と電気的に接続するn電極パッド24が、上部に設けられたダミーメサ部である。なお、ダミーメサ部20aおよび20bは、ノンドープInGaAs層12とp型InP層14とが積層された構造以外の構造の場合であってもよい。
【0020】
受光部16とダミーメサ部20aとの間には、受光部16の側面からダミーメサ部20aの側面へとn型InP基板10の上面に沿って、例えば窒化シリコン膜である第1絶縁膜26が延在して設けられている。第1絶縁膜26の厚さは、例えば0.2μmである。第1絶縁膜26上であって、受光部16とダミーメサ部20aとの間の凹部に樹脂膜28が埋め込まれている。第1絶縁膜26の幅は、例えば20μmであり、樹脂膜28の幅は、例えば10μmである。
【0021】
受光部16、ダミーメサ部20aおよび20b、樹脂膜28の上面を覆うように、第2絶縁膜30が設けられている。樹脂膜28は、上下を第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とにより覆われ、耐湿性および密着性が良好となっている。
【0022】
第2絶縁膜30は、受光部16の上面に直接接していて、受光部16の上面において、リング形状にくり抜かれた開口が設けられ、この開口では受光部16の上面が露出している。受光部16上面の第2絶縁膜30に設けられたリング形状の開口にはp電極32が埋め込まれている。即ち、p電極32は、受光部16の上面でリング形状をしている。p電極32は、リング形状の開口に埋め込まれることで、p型InP層14と接して電気的に接続している。p電極32のリング形状の内径は、例えば40μmであり、リング幅は、例えば5μmである。また、p電極32と電気的に接し、樹脂膜28上からダミーメサ部20a上にかけて、第2絶縁膜30の上面を延在するp側配線33が設けられている。p電極32およびp側配線33は、例えば第2絶縁膜30側からTi、Pt、Auが積層された構造をしており、Tiの厚さは0.1μmで、PtとAuの厚さは0.2μmである。
【0023】
ダミーメサ部20a上であって、p側配線33の上面に接してp電極パッド22が設けられている。p電極パッド22は、例えばAuからなり、厚さは3μmである。p電極パッド22は、p側配線33およびp電極32を介して、p型InP層14と電気的に接続している。
【0024】
受光部16とダミーメサ部20bとの間の凹部において、第2絶縁膜30に開口が設けられ、この開口ではn型InP基板10の上面が露出している。受光部16とダミーメサ部20bとの間の第2絶縁膜30に設けられた開口には、n型InP基板10と接して電気的に接続するオーミック電極34が埋め込まれている。オーミック電極34は、例えばAuGeからなり、厚さは0.2μmである。オーミック電極34の上面に接すると共に、第2絶縁膜30の上面を延在してn側配線36が設けられている。n側配線36は、受光部16を中心とした扇形形状をすると共に、ダミーメサ部20b上にまで延在している。n側配線36は、例えば第2絶縁膜30側からTi、Pt、Auが積層された構造をしており、Tiの厚さは0.1μmで、PtとAuの厚さは0.2μmである。
【0025】
ダミーメサ部20b上であって、n側配線36の上面に接してn電極パッド24が設けられている。n電極パッド24は、例えばAuからなり、厚さは3μmである。n電極パッド24は、n側配線36とオーミック電極34とを介して、n型InP基板10と電気的に接続している。
【0026】
次に、実施例1に係る半導体受光素子の製造方法を説明する。図4(a)から図5(d)は、実施例1に係る半導体受光素子の製造方法を示す断面図の例である。図4(a)に示すように、例えば厚さ100μmのn型InP基板10上に、例えばMOCVD(有機金属気相成長)法を用いて、ノンドープInGaAs層12とp型InP層14とを順次成長させる。その後、p型InP層14上に形成したマスク層を使用して、n型InP基板10が露出するまで、p型InP層14とノンドープInGaAs層12とを、例えばドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いてエッチングする。このエッチングにより、メサ構造の受光部16、ダミーメサ部20aおよび20bが形成される。受光部16、ダミーメサ部20aおよび20bの高さは、例えば4μmである。
【0027】
図4(b)に示すように、例えばプラズマCVD法を用いて、n型InP基板10全面に、受光部16、ダミーメサ部20aおよび20bを覆う第1絶縁膜26を堆積する。プラズマCVD法により窒化シリコン膜である第1絶縁膜26を堆積する場合、原料ガスとして、例えばシラン(SiH)、アンモニア(NH)、窒素(N)を用いることができる。その後、第1絶縁膜26上であって、受光部16とダミーメサ部20aとの間の凹部に、樹脂膜28を埋め込む。樹脂膜28は、n型InP基板10全面に形成されたのち、樹脂膜28上に形成したマスク層を使用して、例えばドライエッチング法を用いて除去する。
【0028】
図4(c)に示すように、樹脂膜28および第1絶縁膜26上に形成したマスク層をマスクとして使用して、第1絶縁膜26を、例えばドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いて除去する。これにより、樹脂膜28が形成された領域およびその近傍の領域以外の領域に堆積された第1絶縁膜26は全て除去される。即ち、受光部16、ダミーメサ部20aおよび20bの上面に堆積された第1絶縁膜26は除去される。また、受光部16とダミーメサ部20bとの間の凹部に堆積された第1絶縁膜26も除去される。
【0029】
図4(d)に示すように、例えばプラズマCVD法を用いて、n型InP基板10全面に樹脂膜28の上面を覆う第2絶縁膜30を堆積する。これにより、樹脂膜28は、上下を第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とで覆われて、耐湿性および密着性が良好となる。また、n型InP基板10全面に第2絶縁膜30を堆積するため、受光部16の上面にも第2絶縁膜30が堆積される。受光部16の上面は、第1絶縁膜26が除去されて露出しているため、第2絶縁膜30は、受光部16の上面に接して形成される。即ち、受光部16の上面には、1度の成膜工程により堆積された第2絶縁膜30のみが形成される。
【0030】
図5(a)に示すように、第2絶縁膜30上に形成したマスク層を使用して、受光部16とダミーメサ部20bとの間の凹部に堆積された第2絶縁膜30を、例えばドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いて除去する。そして、第2絶縁膜30を除去した領域に、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて、オーミック電極34を形成する。
【0031】
図5(b)に示すように、第2絶縁膜30上に形成したマスク層を使用して、受光部16の上面に堆積された第2絶縁膜30を、例えばドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いて除去して、リング形状の開口38を形成する。
【0032】
図5(c)に示すように、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて、開口38に埋め込まれるp電極32と、p電極32に接し、第2絶縁膜30の上面を樹脂膜28上を経由してダミーメサ部20a上まで延在するp側配線33を形成する。同時に、オーミック電極34の上面に接し、第2絶縁膜30の上面をダミーメサ部20b上まで延在するn側配線36を形成する。
【0033】
図5(d)に示すように、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて、ダミーメサ部20a上であってp側配線33の上面に接してp電極パッド22と、ダミーメサ部20b上であってn側配線36の上面に接してn電極パッド24と、を同時に形成する。
【0034】
以上説明してきたように、実施例1に係る半導体受光素子の製造方法によれば、図4(a)に示すように、n型InP基板10上に、ノンドープInGaAs層12とp型InP層14とからなるメサ構造の受光部16と、ダミーメサ部20aおよび20bと、を形成した後、図4(b)に示すように、受光部16の側面からダミーメサ部20aの側面へとn型InP基板10の上面に沿って第1絶縁膜26を形成する。そして、第1絶縁膜26上であって、受光部16とダミーメサ部20aとの間に樹脂膜28を埋め込む。その後、図4(c)に示すように、樹脂膜28が形成された領域およびその近傍の領域以外の領域に堆積された第1絶縁膜26を全て除去する。そして、図4(d)に示すように、受光部16の上面と樹脂膜28の上面に第2絶縁膜30を形成する。
【0035】
このような製造方法により、図3に示すように、n型InP基板10上に、上面および側面を有する半導体構造からなる受光部16と、受光部16に隣接して、上面および側面を有する半導体構造からなるダミーメサ部20aおよび20b(電極接続部)と、が設けられる。そして、受光部16の側面、ダミーメサ部20aの側面、および受光部16とダミーメサ部20aとの間のn型InP基板10の上面を覆う第1絶縁膜26が設けられ、第1絶縁膜26上の受光部16とダミーメサ部20aとの間に樹脂膜28が埋め込まれる。そして、受光部16の上面と直接接し、且つ樹脂膜28を覆う第2絶縁膜30が設けられる。このように、受光部16の上面には、1度の成膜工程により堆積された第2絶縁膜30のみが設けられる。即ち、受光部16の上面に、内部に界面を有さない第2絶縁膜30のみが設けられる。
【0036】
実施例1に係る半導体受光素子は表面入射型であることから、図3に示すように、受光部16上方から入射される入射光は、リング形状をしたp電極32の内側の領域(受光領域)から受光部16の内部に進入する。この場合、入射光は第2絶縁膜30を透過することとなる。受光部16の上面に形成された第2絶縁膜30は、1度の成膜工程により堆積され、内部に界面を有さないいわゆる単層で形成されていることから、第2絶縁膜30で入射光が散乱してしまうなどの意図せぬ光学的影響を抑制できる。つまり、実施例1によれば、入射光に対する光学的な影響を低減することができる。また、第2絶縁膜30の厚みは、これを成長するときの条件(時間、成長速度など)で決定できる。このため、第2絶縁膜30の厚みの精度は高い。内部に界面を残さないことを目指せば、第1絶縁膜26のみを残すことも考えられる。しかし、この場合、第1絶縁膜26上に第2絶縁膜30が堆積されるため、ここから第2絶縁膜30だけを制御性よく除去することは困難である。特に第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とを同じ材料で構成した場合は顕著である。即ち、第1絶縁膜26だけを残すことは、膜厚の制御性に劣るため、第2絶縁膜30を残すほうが好ましい。
【0037】
図4(b)および図4(c)に示すように、n型InP基板10上に受光部16とダミーメサ部20aおよび20bとを覆う第1絶縁膜26を堆積した後、第1絶縁膜26上であって受光部16とダミーメサ部20aとの間に樹脂膜28を埋め込み、その後、樹脂膜28が埋め込まれた領域およびその近傍の領域以外の領域に堆積された第1絶縁膜26を除去することが好ましい。これにより、樹脂膜28をより確実に第1絶縁膜26上に形成することができ、樹脂膜28の上下を第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とで覆うことをより確実に実現できる。また、受光部16の上面に第2絶縁膜30を形成する前に、受光部16の上面に形成された第1絶縁膜26を除去して、受光部16の上面に第1絶縁膜26を除去した領域を形成するため、受光部16の上面に1度の成膜工程により堆積された第2絶縁膜30のみを容易に形成することができる。
【0038】
なお、実施例1では、n型InP基板10上に受光部16とダミーメサ部20aおよび20bとを覆う第1絶縁膜26を堆積した後、樹脂膜28が埋め込まれた領域およびその近傍の領域以外の領域に堆積された第1絶縁膜26を全て除去する場合を例に示したがこれに限られる訳ではない。第1絶縁膜26は、n型InP基板10上に受光部16とダミーメサ部20aおよび20bとを覆う第1絶縁膜26を堆積した後、少なくとも受光部16上に堆積された第1絶縁膜26を除去すればよい。このように、受光部16の上面に第2絶縁膜30を形成する前に、少なくとも受光部16上の第1絶縁膜26を除去することで、受光部16の上面に1度の成膜工程により堆積された第2絶縁膜30のみを容易に形成することができる。したがって、受光部16の上面に形成された第1絶縁膜26を除去して、受光部16の上面に設けられた、第1絶縁膜26が除去された領域に、第2絶縁膜30が設けられることが好ましい。なお、樹脂膜28は、第1絶縁膜26をn型InP基板10全面に堆積した後、受光部16上に堆積された第1絶縁膜26を除去する前に形成してもよいし、受光部16上に堆積された第1絶縁膜26を除去した後に形成してもよい。
【0039】
また、第1絶縁膜26をn型InP基板10全面に堆積せずに、例えばマスク層を用いて、受光部16の側面からダミーメサ部20aの側面へとn型InP基板10の上面に沿ってのみ延在する第1絶縁膜26を形成し、第1絶縁膜26上に樹脂膜28を形成する場合でもよい。
【0040】
図5(d)に示すように、ダミーメサ部20a上に、p電極32およびp側配線33を介して、p型InP層14と電気的に接続するp電極パッド22を形成し、ダミーメサ部20b上に、n側配線36およびオーミック電極34を介して、n型InP基板10と電気的に接続するn電極パッド24を形成することが好ましい。即ち、ダミーメサ部20aおよび20b上に、p電極パッド22およびn電極パッド24が設けられ、p電極パッド22と受光部16の上面であるp型InP層14との間を電気的に接続するp側配線33が設けられている場合が好ましい。これにより、電極パッドを受光部16の上面よりも突出させることができるため、例えばワイヤ接続による、半導体受光素子100と外部基板との接続が容易となる。また、半導体受光素子100を外部基板にフリップチップ実装させることもできる。
【0041】
図4(a)に示すように、受光部16とダミーメサ部20aおよび20bとを、同一のエッチング工程により同時に形成することが好ましい。これにより、製造工程を短縮することができる。
【0042】
実施例1では、第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とは共に窒化シリコン膜である場合を例に示した。このように、第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とを共に窒化シリコン膜とすることで、樹脂膜28の耐湿性および密着性を良好とすることができると共に、受光部16上方から入射する入射光に対して透明で反射を防止する反射防止膜として機能させることができる。
【0043】
なお、第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とは窒化シリコン膜以外の材料からなる場合でもよく、例えば酸化シリコン膜からなる場合でもよい。また、第1絶縁膜26と第2絶縁膜30とが同じ材料からなる場合に限られず、異なる材料からなる場合でもよい。例えば、第1絶縁膜26が酸化シリコン膜で、第2絶縁膜30が窒化シリコン膜である場合や、その逆の場合でもよい。第2絶縁膜30は、入射光に対して透明で反射を防止する反射防止膜として機能することが求められる。
【0044】
実施例1では、受光部16は、n型InP基板10上に、ノンドープInGaAs層12とp型InP層14とが積層された構造の場合を例に示したが、p型InP基板上にノンドープInGaAs層とn型InP層とが積層された構造の場合でもよい。また、受光部16を構成する各層の材料も上記の材料に限定されず、その他の材料を用いる場合でもよい。また、半導体受光素子として、PIN型フォトダイオードの場合だけでなく、アバランシェフォトダイオード等のその他のフォトダイオードの場合でもよい。
【実施例2】
【0045】
実施例2に係る半導体受光素子は、裏面入射型の半導体受光素子の場合の例である。図6(a)は、実施例2に係る半導体受光素子の上面図の例であり、図6(b)は、実施例2に係る半導体受光素子の下面図の例である。図7は、図6(a)のA−A間の断面図の例である。図6(a)から図7に示すように、実施例2に係る半導体受光素子200は、受光部16に相対するn型InP基板10の下面に、レンズ40が設けられている。受光部16上には、リング形状をしたp電極32の内側領域の第2絶縁膜30の上面を覆う配線42が設けられている。配線42は受光部16上からダミーメサ部20a上にまで、p側配線33の上面に沿って延在して設けられている。p電極パッド22は配線42上に設けられている。また、オーミック電極34の上面に接し、ダミーメサ部20b上にかけて設けられたn側配線36の上面に沿って配線46が設けられ、n電極パッド24は配線46上に設けられている。配線42および配線46は、例えばAuからなり、厚さは0.4μmである。その他の構成は、実施例1と同じであり、図2および図3に示しているため、ここでは説明を省略する。
【0046】
次に、実施例2に係る半導体受光素子の製造方法を説明する。図8(a)から図8(c)は、実施例2に係る半導体受光素子の製造方法を示す断面図の例である。まず、実施例1の図4(a)から図5(c)で説明した工程を実施する。その後、図8(a)に示すように、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて、受光部16上のリング形状をしたp電極32の内側領域における第2絶縁膜30の上面を覆い、p側配線33の上面に沿ってダミーメサ部20a上まで延在する配線42を形成する。それと同時に、n側配線36の上面に沿ってダミーメサ部20b上まで延在する配線46を形成する。
【0047】
図8(b)に示すように、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用いて、ダミーメサ部20a上であって配線42の上面に接してp電極パッド22と、ダミーメサ部20b上であって配線46の上面に接してn電極パッド24と、を同時に形成する。図8(c)に示すように、受光部16に相対するn型InP基板10の下面に、レンズ40を形成する。
【0048】
実施例2に係る半導体受光素子は裏面入射型であることから、図7に示すように、n型InP基板10の下面側から入射され、レンズ40によって集光された入射光が受光部16に入射する。光吸収層(ノンドープInGaAs層12)では、入射した光の全てを吸収しきれず、一部の入射光は光吸収層を通過する。通過した光は、リング形状をしたp電極32の内側領域に設けられた第2絶縁膜30を透過し、配線42に到達して、配線42で受光部16に向かって反射される。これにより、光吸収層で反射光を再度吸収することが可能となり、光の吸収効率が向上する。
【0049】
このように裏面入射型の半導体受光素子の場合であっても、光吸収層で吸収しきれなかった入射光の一部は、受光部16の上面に形成された第2絶縁膜30を透過することとなる。したがって、受光部16の上面に、1度の成膜工程により堆積され、内部に界面を有さないいわゆる単層で形成された第2絶縁膜30が設けられることで、入射光に対する光学的な影響を低減することができる。
【0050】
実施例1および実施例2では、ダミーメサ部20aおよび20bを構成する半導体層は電気的には利用されていない。しかし、ダミーメサ部20aおよび20bは受光部16と同じ半導体層構造で構成されているので、これを受光素子として利用することも可能である。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 n型InP基板
12 ノンドープInGaAs層
14 p型InP層
16 受光部
20a ダミーメサ部
20b ダミーメサ部
22 p電極パッド
24 n電極パッド
26 第1絶縁膜
28 樹脂膜
30 第2絶縁膜
32 p電極
33 p側配線
34 オーミック電極
36 n側配線
38 開口
40 レンズ
42 配線
46 配線
100 半導体受光素子
200 半導体受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に設けられ、上面および側面を有する半導体構造からなる受光部と、
前記半導体基板上に前記受光部に隣接して設けられ、上面および側面を有する半導体構造からなる電極接続部と、
前記受光部の側面、前記電極接続部の側面、および前記受光部と前記電極接続部との間の前記半導体基板を覆う第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上の前記受光部と前記電極接続部との間を埋め込む樹脂膜と、
前記受光部の上面と直接接し、かつ前記樹脂膜を覆う第2絶縁膜と、を備えることを特徴とする半導体受光素子。
【請求項2】
前記受光部の上面に設けられた、前記第1絶縁膜が除去された領域に前記第2絶縁膜が設けられてなることを特徴とする請求項1記載の半導体受光素子。
【請求項3】
前記電極接続部の上面に設けられた電極パッドと、
前記電極パッドと前記受光部の上面との間を電気的に接続する配線と、を備えることを特徴とする請求項1または2記載の半導体受光素子。
【請求項4】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは同じ材料からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の半導体受光素子。
【請求項5】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは窒化シリコン膜あるいは酸化シリコン膜のうちのいずれかによって構成されてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の半導体受光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227215(P2012−227215A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91119(P2011−91119)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】