説明

半導体基板用パッシベーション膜形成用材料、半導体基板用パッシベーション膜及びその製造方法、並びに太陽電池素子及びその製造方法

【課題】簡便な手法で優れたパッシベーション特性を有する半導体基板用パッシベーション膜を形成可能な半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を提供する。
【解決手段】半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を、アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物と、分散媒と、金属アルコキシドとを含んで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料、半導体基板用パッシベーション膜及びその製造方法、並びに太陽電池素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン太陽電池素子の製造工程について説明する。
まず、光閉じ込め効果を促して高効率化を図るよう、テクスチャー構造を形成したp型シリコン基板を準備し、続いてオキシ塩化リン(POCl)、窒素、酸素の混合ガス雰囲気において800℃〜900℃で数十分の処理を行って一様にn型拡散層を形成する。この従来の方法では、混合ガスを用いてリンの拡散を行うため、表面のみならず、側面、裏面にもn型拡散層が形成される。そのため、側面のn型拡散層を除去するためのサイドエッチングを行う。また、裏面のn型拡散層はp型拡散層へ変換する必要があり、裏面にアルミペーストを印刷し、これを焼成して、n型拡散層をp型拡散層にするのと同時に、オーミックコンタクトを得ている。
【0003】
しかしながら、アルミペーストから形成されるアルミ層は導電率が低いため、シート抵抗を下げるために、通常裏面全面に形成したアルミ層は焼成後において10μm〜20μmほどの厚みを有していなければならない。さらに、シリコンとアルミニウムでは熱膨張率が大きく異なることから、焼成および冷却の過程で、シリコン基板中に大きな内部応力を発生させ、結晶粒界のダメージ、結晶欠陥増長及び反りの原因となる。
【0004】
この問題を解決するために、アルミペーストの塗布量を減らし、裏面電極層を薄くする方法がある。しかしながら、アルミペーストの塗布量を減らすと、p型シリコン半導体基板の表面から内部に拡散するアルミニウムの量が不十分となる。その結果、所望のBSF(Back Surface Field)効果(p型拡散層の存在により生成キャリアの収集効率が向上する効果)を達成することができないため、太陽電池の特性が低下するという問題が生じる。
【0005】
上記に関連して、アルミペーストをシリコン基板表面の一部に付与して部分的にp層とアルミ電極とを形成するポイントコンタンクトの手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような受光面とは反対側(以下、「裏面側」ともいう)にポイントコンタクト構造を有する太陽電池の場合、アルミ電極以外の部分の表面において、少数キャリアの再結合速度を抑制する必要がある。そのための裏面側用のパッシベーション膜として、SiO膜などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。これは、酸化膜を形成することによりシリコン基板の裏面表層部シリコン原子の未結合手を終端させ、再結合の原因となる表面準位密度を低減させるものである。
【0006】
また、受光面側の反射防止膜として広く使用されているSiN(窒化ケイ素)膜を裏面用のパッシベーション膜としても使用する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3107287号明細書
【特許文献2】特開2004−6565号公報
【特許文献3】特開2010−537423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3において提案されているSiO膜及びSiN膜は、一般に熱酸化法またはCVD法などを用いて形成される。熱酸化法においては、通常、1000℃以上の高温処理が必要な上、ガス流量、ガス流量分布等のプロセス条件の管理が必要である。またCVD装置を用いる場合、用いる反応ガス種によっては、反応性ガスの分解により水素パッシベーションの効果が期待できる場合があるが、スループットが低いこと、装置メンテナンスが頻繁であることなどにより製造装置コストが高いという課題があった。
さらに裏面用のパッシベーション膜の開口部形成には、通常、フォトリソグラフィ工程を用いるため、工程数、装置コスト等にも課題があった。
【0009】
本発明は、以上の従来の問題点に鑑みなされたものであり、簡便な手法で優れたパッシベーション特性を有する半導体基板用パッシベーション膜を形成可能な半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を提供することを課題とする。また該半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて形成される半導体基板用パッシベーション膜及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物と、分散媒と、金属アルコキシドとを含む半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0011】
<2> 前記高分子化合物は、炭素原子と、水素原子、フッ素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される主鎖を有する前記<1>に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0012】
<3> 前記高分子化合物は、炭素原子と、水素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される主鎖を有する前記<1>又は<2>に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0013】
<4> 前記高分子化合物は、芳香族基を有する前記<3>に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0014】
<5> 前記高分子化合物は、炭素原子及びフッ素原子から構成される主鎖を有する前記<1>又は<2>に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0015】
<6> 前記金属アルコキシドは、シリコンアルコキシドである前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0016】
<7> さらに酸性化合物の少なくとも1種を含む前記<1>〜<6>に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0017】
<8> 前記高分子化合物の含有量に対する前記金属アルコキシドの含有率が、0.1質量%〜200質量%である前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0018】
<9> 前記分散媒は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0019】
<10> 前記高分子化合物は、スルホン酸基を有する前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0020】
<11> 前記高分子化合物は、ポリパーフルオロオレフィンスルホン酸誘導体、スルホン化ポリスチレン誘導体及びスルホン化ポリアリールエーテルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記<1>〜<10>に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【0021】
<12> 半導体基板上に設けられ、アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物を含む前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の塗膜である半導体基板用パッシベーション膜。
【0022】
<13> 半導体基板上に、アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物を含む前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布する塗布層形成工程と、前記塗布層を乾燥して塗膜を形成する塗膜形成工程と、を有する半導体基板用パッシベーション膜の製造方法。
【0023】
<14> 前記塗布層形成工程の前に、半導体基板上にフッ酸水溶液を付与する工程をさらに有する前記<13>に記載の半導体基板用パッシベーション膜の製造方法。
【0024】
<15> 前記塗膜形成工程の後に、前記塗膜を加湿処理する工程をさらに有する前記<13>又は<14>に記載の半導体基板用パッシベーション膜の製造方法。
【0025】
<16> pn接合を有する半導体基板と、電極と、前記半導体基板上に設けられた前記<12>に記載の半導体基板用パッシベーション膜とを有する太陽電池素子。
【0026】
<17> pn接合を有し、電極が設けられた半導体基板上に、前記<12>に記載の半導体基板用パッシベーション膜を形成する工程を有する太陽電池素子の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡便な手法で優れたパッシベーション特性を有する半導体基板用パッシベーション膜を形成可能な半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を提供することができる。また該半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて形成される半導体基板用パッシベーション膜及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態にかかる半導体基板用パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態にかかる半導体基板用パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本実施形態にかかる半導体基板用パッシベーション膜を有する裏面電極型太陽電池素子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0030】
<半導体基板用パッシベーション膜形成用材料>
本発明の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物(以下、「特定樹脂」ともいう)の少なくとも1種と、分散媒と、金属アルコキシドの少なくとも1種とを含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
かかる半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を半導体基板に付与して塗膜とすることで、優れた表面パッシベーション効果を有するパッシベーション膜を、簡便な手法で所望の領域に形成することができる。
【0031】
これは例えば以下のように考えることができる。
半導体基板表面に存在する欠陥と、解離性基であるアニオン性基又はカチオン性基から解離したイオンとが反応又は相互作用することで欠陥を終端させることができると考えられる。例えば、プロトン型のアニオン性基から解離するプロトンとダングリングボンドとが反応することでダングリングボンドを終端させることができると考えることができる。また欠陥における電子を解離したカチオン性基が受容することで欠陥を終端させることができると考えることができる。
【0032】
また前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料が金属アルコキシドを含むことで、塗膜を形成する際の分散媒を揮発させる過程において、前記金属アルコキシドに由来する金属酸化物粒子が塗膜中に形成される。この金属酸化物粒子が保湿成分として働き、高温環境下におかれた後でも優れた表面パッシベーション特性を示すと考えられる。またさらに前記金属酸化物粒子を含んで形成されたパッシベーション膜は光反射性が良好であり、これを裏面に有して太陽電池素子を構成した場合、より優れた発電効率を示すと考えられる。
【0033】
本明細書において表面パッシベーション効果は、半導体基板用パッシベーション膜を付与した半導体基板内の少数キャリアの実効ライフタイムの測定を、反射マイクロ波導電減衰法によって測定することで評価することができる。
【0034】
ここで、実効ライフタイムτは、シリコン基板内部のバルクライフタイムτと、シリコン基板表面の表面ライフタイムτとによって下記式(I)のように表される。シリコン基板表面の表面準位密度が小さい場合にはτが大きくなる結果、実効ライフタイムτが大きくなる。また、シリコン基板内部のダングリングボンド等の欠陥が少なくなっても、バルクライフタイムτが大きくなって実効ライフタイムτが大きくなる。すなわち、実効ライフタイムτの測定によってパッシベーション膜/シリコン基板の界面特性、及び、ダングリングボンドなどの半導体基板の内部特性を評価することができる。
1/τ=1/τ+1/τ (I)
尚、実効ライフタイムが長いほど少数キャリアの再結合速度が遅いことを示す。また太陽電池として使用した場合には変換効率が向上することが一般的に知られている。
【0035】
[高分子化合物]
アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物(特定樹脂)は、高分子化合物を構成する主鎖と、該主鎖に結合したアニオン性基又はカチオン性基を有する側鎖とを有する化合物であれば特に制限はされず、通常用いられる高分子化合物から適宜選択して用いることができる。アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物は、ポリマー及びオリゴマーのいずれであってもよい。
さらに特定樹脂は、例えば、イオン交換樹脂として用いられるものであってもよい。
【0036】
前記特定樹脂における主鎖は特に制限されず、炭化水素系の主鎖であっても、炭化フッ素系の主鎖であってもよい。
炭化水素系の主鎖を構成するオリゴマー又はポリマーとしては、ポリエーテルケトン、ポリスルフィド、ポリホスファゼン、ポリフェニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素、ポリスルホン、ポリスルホネート、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリチアゾール、ポリフェニルキノキサリン、ポリキノリン、ポリシロキサン、ポリトリアジン、ポリジエン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリオキサチアゾール、ポリテトラザピレン、ポリオキサゾール、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリピロリドン、ポリアクリレート誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリスチレン誘導体、及びフェノール樹脂誘導体等が挙げられる。
【0037】
炭化水素系の主鎖を構成するオリゴマー又はポリマーとして好ましくは、ポリエーテルケトン、ポリスルフィド、ポリホスファゼン、ポリフェニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素、ポリスルホン、ポリスルホネート、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリフェニルキノキサリン、ポリキノリン、ポリトリアジン、ポリジエン、ポリピリジン、ポリオキサチアゾール、ポリアクリレート誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリスチレン誘導体、及びフェノール樹脂誘導体等が挙げられる。
より好ましくは、ポリエーテルケトン、ポリスルフィド、ポリホスファゼン、ポリフェニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素、ポリスルホン、ポリスルホネート、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリフェニルキノキサリン、ポリキノリン、ポリトリアジン、ポリジエン、ポリアクリレート誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリスチレン誘導体、及びフェノール樹脂誘導体等が挙げられる。
【0038】
また炭化フッ素系の主鎖を構成するポリマー及びオリゴマーとしては例えば、ポリパーフルオロエチレン、ポリパーフルオロプロペン、ポリパーフルオロアルコキシアルケン等のポリパーフルオロオレフィン樹脂、ポリパーフルオロオレフィン樹脂のフッ素原子の一部が水素原子に置換されたポリフルオロオレフィン樹脂などを挙げることができる。
【0039】
前記特定樹脂における主鎖としては、表面パッシベーション効果と該当する高分子化合物の製造の容易さの観点から、炭素原子と、水素原子、フッ素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される主鎖であることが好ましく、炭素原子と、水素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される主鎖であることがより好ましく、炭素原子と、水素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子とから構成され、芳香族基を有する主鎖であることがさらに好ましい。
また前記特定樹脂における主鎖としては、表面パッシベーション効果と化学的耐久性の観点から、炭素原子及びフッ素原子から構成される主鎖であることもまた好ましい。
【0040】
前記特定樹脂における主鎖として具体的には、スチレン−オレフィン共重合体及びポリスチレン等のポリスチレン誘導体、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、並びにポリパーフルオロオレフィン等を挙げることができ、スチレン−オレフィン共重合体及びポリスチレン等のポリスチレン誘導体、ポリアリールエーテルスルホン、並びにポリパーフルオロオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0041】
前記特定樹脂は、アニオン性基又はカチオン性基を有する側鎖が主鎖に結合した構造を有することが好ましい。アニオン性基及びカチオン性基を有する側鎖が主鎖に結合する態様は特に制限されず、アニオン性基及びカチオン性基が主鎖に直接結合する態様であっても、アニオン性基及びカチオン性基が2価の連結基を介して主鎖に結合する態様であってもよい。
アニオン性基及びカチオン性基が2価の連結基を介して主鎖に結合する態様である場合における2価の連結基は、アニオン性基及びカチオン性基と主鎖とを連結可能であれば特に制限されない。2価の連結基は、例えば、炭素原子、水素原子、フッ素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種から構成されることが好ましい。
2価の連結基として具体的には、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アリーレン基、アリーレンオキシ基、パーフルオロアルキレン基、及びパーフルオロアルキレンオキシ基並びにこれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0042】
前記アニオン性基を有する高分子化合物におけるアニオン性基としては、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基及びフェノール性水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、スルホン酸基、カルボキシ基及びリン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがよりこのましく、スルホン酸基であることが更に好ましい。
かかるアニオン性基であることで、半導体基板用パッシベーション膜に効率よく固定電荷を付与できる。
【0043】
前記スルホン酸基、カルボキシ基、ホスホン酸基、リン酸基、及びフェノール性水酸基としては、具体的にはそれぞれ−SO、−COO、−PO2−、−OPO2−、及び−Ar−Oで表される官能基であることが好ましい。
上記式中、X及びYはそれぞれ独立して、プロトン(H)、1価の金属陽イオン、NH、NH、NH、NHR、NR、又はピリジニウムイオンを表し、Rはそれぞれ独立してアルキル基又はアリール基を表し、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。またArはアリーレン基を表す。
【0044】
アニオン性基を有する高分子化合物は、上記官能基の中でも、少なくともスルホン酸基を有する高分子化合物であることが好ましく、プロトン型のスルホン酸基(−SOH基)を有する高分子化合物であることがより好ましい。
詳細な理由は不明であるが、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料がスルホン酸基を有する高分子化合物を少なくとも含むことで、より優れたパッシベーション効果が得られる傾向にある。これは例えば以下のように考えることができる。
【0045】
一般に、スルホン酸基はイオンの解離度が大きく、導電率も高い為、固体高分子型及び直接メタノール型燃料電池用のプロトン伝導型電解質膜としても好適に使用されている。このような高いイオン乖離度が半導体基板内、及び半導体基板表面に存在する欠陥と反応し、半導体基板に存在する再結合中心の数を減らすため、優れたパッシベーション効果を示すと考えられる。特に、プロトン型とすることで、ダングリングボンドとプロトンとが反応し、ダングリングボンドを効率的に終端させることができると考えられる。また、半導体基板用パッシベーション膜を形成する前に、フッ酸水溶液などで半導体基板を洗浄している場合、ダングリングボンドがフッ酸処理によってSi−H結合を形成すると考えられる。フッ酸処理の後、スルホン酸基を有する高分子化合物によって覆われることで、形成されたSi−H結合が安定化されると考えられる。
【0046】
本発明におけるアニオン性基を有する高分子化合物は、表面パッシベーション効果と半導体基板との密着性の観点から、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)等のパーフルオロポリオレフィンスルホン酸誘導体、フレミオン(登録商標、旭硝子社製)等のパーフルオロオレフィンカルボン酸誘導体、スルホン化ポリスチレン及びスルホン化スチレン−オレフィン共重合体等のスルホン化ポリスチレン誘導体、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリアミド、スルホン化ポリイミド、並びにスルホン化ポリアリールエーテスルホンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、パーフルオロポリオレフィンスルホン酸誘導体、スルホン化ポリスチレン誘導体及びスルホン化ポリアリールエーテルスルホンから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0047】
前記カチオン性基を有する高分子化合物におけるカチオン性基としては、ピリジニウム基、アルキルアンモニウム基及びイミダゾリウム基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
かかるカチオン性基であることで、半導体基板用パッシベーション膜に効率的に固定電荷を付与できる。
【0048】
このようなカチオン性基を有する高分子化合物としては、例えば、4級アンモニウム化処理したポリ−4−ビニルピリジン、ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−2−メチル−5−ビニルピリジン、ポリ−1−ピリジン−4−イルカルボニルオキシエチレン等が挙げられる。ここで、ポリ−4−ビニルピリジンの4級アンモニウム化処理は、ポリ−4−ビニルピリジンを、臭化メチル、臭化エチル等のアルキルハライドと反応させることによって行うことができる。また、アンモニウムビニルモノマー、イミダゾリウムビニルモノマーなどの4級アンモニウム化モノマーを重合してカチオン性基を有する高分子化合物を得ることもできる。
【0049】
アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物(特定樹脂)に含まれるアニオン性基及びカチオン性基の含有量は、目的に応じて適宜選択することができる。中でも、表面パッシベーション効果の観点から、高分子化合物のイオン交換容量として、0.01mmol/g〜10mmol/gであることが好ましく、0.1mmol/g〜5mmol/gであることがより好ましい。パッシベーション膜形成用材料に含まれるアニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物のイオン交換容量が0.01mmol/g以上であると、十分なパッシベーション効果が得られ易い。
【0050】
前記特定樹脂の分子量は特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。分子量は重量平均分子量として、100以上1000000以下であることが好ましく、500から500000であることがより好ましく、1000から300000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が1000000以下であると加工性が向上し、より均一な表面パッシベーション効果を得ることができる。
尚、特定樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて常法により測定(標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)される。
【0051】
前記特定樹脂は常法により、所望の構造を有する高分子化合物として製造することができる。またイオン交換樹脂等として市販されている樹脂を用いてもよい。
以下、特定樹脂の製造方法について説明する。
【0052】
アニオン性基を有する高分子化合物は、例えば、アニオン性基を有するモノマーの少なくとも1種を含み、必要に応じてアニオン性基を有しないモノマーを含むモノマー組成物を重合することで製造することができる。
【0053】
例えば、スルホン酸基を有する高分子化合物を製造する場合、スルホン酸基含有モノマーを製造するために用いられるスルホン化剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、濃硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸、無水硫酸錯体等を好適に使用することができる。
【0054】
スルホン酸基含有モノマーの製造は、これらの試薬を用い、化合物構造に応じた反応条件を適宜選択することにより実施することができる。
【0055】
また、これらのスルホン化剤に加えて、特許第2884189号明細書に記載のスルホン化剤、すなわち、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4−ジスルホン酸、1,2,4−トリメチルベンゼン−5−スルホン酸、1,2,4−トリメチルベンゼン−3−スルホン酸、1,2,3−トリメチルベンゼン−4−スルホン酸、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン−5−スルホン酸、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン−4−スルホン酸、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン−3−スルホン酸、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン−3,6−ジスルホン酸、1,2,3,4,5−ペンタメチルベンゼン−6−スルホン酸、1,3,5−トリエチルベンゼン−2−スルホン酸、1−エチル−3,5−ジメチルベンゼン−2−スルホン酸、1−エチル−3,5−ジメチルベンゼン−4−スルホン酸、1−エチル−3,4−ジメチルベンゼン−6−スルホン酸、1−エチル−2,5−ジメチルベンゼン−3−スルホン酸、1,2,3,4−テトラエチルベンゼン−5−スルホン酸、1,2,4,5−テトラエチルベンゼン−3−スルホン酸、1,2,3,4,5−ペンタエチルベンゼン−6−スルホン酸、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2−スルホン酸、1−プロピル−3,5−ジメチルベンゼン−4−スルホン酸等を用いることも可能である。
【0056】
上記のスルホン化剤の中でも、スルホン酸基の両側のオルト位に低級アルキルが置換された化合物、たとえば、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン−3−スルホン酸、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン−4−スルホン酸、1,2,3,4,5−ペンタメチルベンゼン−6−スルホン酸、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4−ジスルホン酸、1,3,5−トルエチルベンゼン−2−スルホン酸、等が特に好ましく、さらには、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸が最も好ましい。
【0057】
スルホン酸基含有モノマーを製造する際のモノマー原料としては、分子内に重合性基とスルホン化可能な官能基とを有するものであれば特に制限されない。具体的には、スチレン、ビフェニル、ジビニルベンゼン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、及びトリメチルスチレン等を挙げることができる。
【0058】
スルホン酸基含有モノマーを製造する際は、モノマー原料100質量部に対して、これらのスルホン化剤は、30質量部〜5000質量部の範囲で加えることが好ましく、50質量部〜2000質量部の範囲で加えればさらに好ましい。
スルホン化剤の添加量が30質量部以上であると、スルホン化反応が十分に進行する傾向にある。またスルホン化剤の添加量が5000質量部以下であると、反応後のスルホン化剤処理が容易になる傾向にある。
【0059】
モノマー原料のスルホン化に用いる有機溶剤としては、特に限定されるものではなく、スルホン化反応に悪影響を及ぼさないものであれば従来から公知のものを使用することができる。
具体例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、ニトロメタン、ニトロベンゼン、等のニトロ化合物類、トリメチルベンゼン、トリブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン等のアルキルベンゼン類、スルホラン等の複素環化合物類、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の直鎖、分枝鎖又は環状の脂肪族飽和炭化水素類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド等の非プロトン極性溶剤や、メタノール、エタノールな等のアルコール系溶剤及びフェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。
これらの溶剤は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶剤量は、反応させるモノマー及び触媒の総質量に対して0.01〜2倍の範囲で用いることができる。
【0060】
これらの溶剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用してもよく、その使用量は、適宜選択される。通常はスルホン化剤100質量部に対して100質量部〜2000質量部の範囲にあることが好ましい。
溶剤の量が100質量部以上であると、スルホン化反応がより均一に進行する傾向にある。また溶剤の量が2000質量部以下であると、反応後の溶剤とスルホン化剤との分離、溶剤の回収が容易になる傾向にある。
【0061】
スルホン化反応としては例えば、反応温度−20℃〜150℃の範囲、反応時間0.5時間〜50時間の範囲で実施できる。
ここで、反応温度が−20℃以上であると、スルホン化反応が効率的に進行する。また反応温度が150℃以下であると、特定の芳香族環にのみスルホン酸基を導入することが容易になる傾向にある。
また、スルホン酸基を有さない高分子化合物を直接スルホン化してもよい。例えば、ポリスチレン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドを濃硫酸中に分散、または発煙硫酸に接触させて、反応温度−20℃〜120℃の範囲、反応時間0.5時間〜50時間の範囲でスルホン化することができる。
【0062】
一方、カルボキシ基、ホスホン酸基、又はリン酸基を有する高分子化合物を合成する場合、カルボキシ基、ホスホン酸基、又はリン酸基を有するモノマーから合成することが好ましい。またフェノール性水酸基を有する高分子化合物を合成する場合、フェノール又はフェノール誘導体をモノマーとして合成することが好ましい。
【0063】
アニオン性基を有する高分子化合物を製造する際に用いる、アニオン性基を有しないモノマーとしては、アニオン性基を有するモノマーと重合可能であれば特に制限されず、アニオン性基を有するモノマーに応じて適宜選択することができる。
具体的には例えば、スチレン、酢酸ビニル、ビフェニル誘導体、フェニルエーテル誘導体、ベンゼン誘導体等を挙げることができる。
【0064】
アニオン性基を有するモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合する方法は特に制限されず、モノマー組成物の構成に応じて適宜選択することができる。
例えば、熱重合開始剤等を用いて常法により、前記モノマー組成物を重合して、アニオン性基を有する高分子化合物を製造することができる。
【0065】
アニオン性基を有するモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合して得られるアニオン性基を有する高分子化合物の精製方法は、従来から公知の精製方法を好適に使用可能である。例えば、得られたアニオン性基を有する高分子化合物が固体状の場合には濾過後に溶剤等で洗浄し、乾燥することにより精製することができる。また得られたアニオン性基を有する高分子化合物がオイル状の場合には分液することにより精製することができる。さらに得られたアニオン性基を有する高分子化合物が反応溶液に溶解している場合には有機溶媒を蒸発除去することにより、精製することができる。
【0066】
あるいは、アニオン性基を有するモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合して得られるアニオン性基を有する高分子化合物が含まれる反応液に水を加え、必要に応じてアルカリ成分を加えて溶解し、溶剤相と水相に分離した後に、水相より酸析や塩析等の方法により沈殿化させ、濾過後に溶剤で洗浄して乾燥させることにより精製することもできる。
また、アニオン性基を有する高分子化合物は、アニオン性基を有し、2個以上の置換反応可能な官能基を有するモノマーと、このモノマーと置換反応可能な2個以上の官能基を有するモノマーを縮合反応することにより製造することもできる。
【0067】
アニオン性基を有する高分子化合物を縮合反応で製造する場合、触媒の存在下に溶媒中で製造することができる。触媒量は、反応させるモノマーの全モル数に対して、0.1倍から100倍で使用できる。
反応温度は0℃〜350℃であり、好ましくは40℃〜260℃である。反応時間は、2時間〜500時間で反応を行うことができる。
【0068】
以上、アニオン性基を有する高分子化合物の製造方法について説明したが、アニオン性基有するモノマーに代えてカチオン性基を有するモノマーを用いることで、同様にしてカチオン性基を有する高分子化合物を製造することができる。
【0069】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、アニオン性基を有する高分子化合物及びカチオン性基を有する高分子化合物の一方を含んで構成されることが好ましい。半導体基板用パッシベーション膜形成用材料に含まれるアニオン性基を有する高分子化合物及びカチオン性基を有する高分子化合物は、それぞれ1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0070】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料におけるアニオン性基を有する高分子化合物又はカチオン性基を有する高分子化合物の含有量は、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の全質量(100質量部)中に0.1質量部〜95質量部であることが好ましく、1質量部〜80質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは3質量部〜50質量部である。
含有量が0.1質量部以上であると、形成される半導体基板用パッシベーション膜が十分にパッシベーション効果を示すことができる。
【0071】
(分散媒)
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、分散媒を含む。前記特定樹脂は分散中に溶解していても、固体状態又はエマルションの状態で分散していてもよい。
分散媒としては、水;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤類;ジクロロベンゼン及びトリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤類;ニトロメタン及びニトロベンゼン等のニトロ化合物類;トリメチルベンゼン、トリブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン及びペンタメチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;スルホラン等の複素環化合物類;オクタン、デカン及びシクロヘキサン等の直鎖、分枝鎖又は環状の脂肪族飽和炭化水素系溶剤類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及びヘキサメチルホスホンアミド等の非プロトン極性溶剤;メタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノール等のアルコール系溶剤;及びフェノール及びクレゾール等のフェノール系溶剤から適切なものを選ぶことができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
これらの中でも少なくとも水及びアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。水を含むことで、金属アルコキシドの加水分解反応が促進される。またアルコール系溶剤の少なくとも1種を含むことで、半導体基板、特にシリコン基板に対する濡れ性を向上することができる。
【0073】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料における分散媒の含有量は特に制限されない。例えば、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の総量100質量部中に、1質量部〜99質量部であることが好ましく、40質量部〜95質量部であることがより好ましい。
【0074】
また前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、イオン液体を含む高分子化合物であってもよい。このような材料は、任意の相溶する高分子化合物とイオン液体を混合することで用いることができる。
イオン液体とは、融点が100℃以下であり、100℃以下の低い温度で液状の外観を呈する塩である。
【0075】
前記イオン液体の組成に特に制限はなく、特定樹脂に分散できる組成であれば好適に用いることができる。例えば、カチオンとして、アンモニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピロリウム、オキサゾリウム、オキサゾリニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム及びスルホニウムが挙げられる。またアニオンとしてはN(SOF)、N(SOCF、N(SO、BF、PF、CFSO及びCFCOが挙げられる。これらのカチオンとアニオンを組み合わせたイオン液体を用いることができる。上記イオン液体は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0076】
これらのアニオンの中でも、特に疎水性のアニオンであるN(SOF)、N(SOCF、N(SO、CFSO、またはCFCOが好適に用いられる。疎水性のアニオンを用いることによって、それによって構成されるイオン液体の取り扱い性、特に空気雰囲気での取り扱い性が容易になり、また、それを用いた半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の取り扱い性が容易になる。
【0077】
イオン液体のイオン伝導率は好ましくは0.01mS/cm以上であり、さらに好ましくは0.1mS/cm以上である。0.01mS/cm以上であると、イオン液体を特定樹脂に混合したことによる効果が十分に得られる。
尚、イオン液体のイオン伝導率は、電気伝導率計を用いて25℃で測定される。
【0078】
また、イオン液体のカチオン又はアニオンが特定樹脂の側鎖と化学結合していてもよい。
【0079】
(金属アルコキシド)
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、金属アルコキシドの少なくとも1種を含む。金属アルコキシドを含むことで前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を半導体基板へ塗布、乾燥して塗膜を形成する工程において、前記金属アルコキシドに起因するゾル−ゲル反応が進行する。これにより前記金属アルコキシドに由来する金属酸化物がパッシベーション膜中に均一に分散され、形成されたパッシベーション膜の保湿性が向上する。
そのため、詳細な理由は不明であるが、高温下におかれた後でも優れたパッシベーション効果を維持することができると考えられる。
【0080】
金属アルコキシドの中心金属原子は金属アルコキシドを形成可能であれば特に制限されない。具体的には、シリコン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、イットリウム、リチウム、銅、亜鉛、ホウ素、ガリウム、ゲルマニウム、リン、アンチモン、バナジウム、タンタル、タングステン、及びランタン等を挙げることができる。
中でも前記金属アルコキシドは、パッシベーション効果の観点から、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、シリコンアルコキシドの少なくとも1種であることがさらに好ましく、テトラアルコシキシランの少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0081】
金属アルコキシドを構成するアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基である。
前記アルコキシ基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、プチル基、i-プロピル基、i-プチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t-オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、及びオクチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
アルコキシ基の炭素数が大きいほど金属アルコシキドが安定になる場合があり、反応性が悪くなってしまうので、パッシベーション膜の形成条件等に応じて、適切なアルコキシ基を選ぶことが好ましい。
【0082】
前記金属アルコキシドは、パッシベーション効果の観点から、炭素数1〜24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基を有する、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基を有する、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である。さらに好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基を有する、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である。特に好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルオキシ基を有するシリコンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種である。
【0083】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料における金属アルコキシドの含有量は、金属アルコキシドの種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記高分子化合物の含有量に対する前記金属アルコキシドの含有率は、0.1質量%〜200質量%であることが好ましく、1質量%〜50質量%であることがより好ましく、5質量%〜30質量%であることがさらに好ましい。0.1質量%以上であると、保湿性の効果が十分に得られ易い傾向にある。また200質量%以下であると、アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物によるパッシベーション効果が十分に得られる傾向にある。
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、金属アルコキシドを1種単独でも2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0084】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、前記金属アルコキシドに加えて、酸性化合物又はアルカリ性化合物の少なくとも1種をさらに含むことが好ましく、酸性化合物の少なくとも1種をさらに含むことがより好ましい。酸性化合物又はアルカリ性化合物を含むことで、例えば、これらが触媒として機能して前記金属アルコキシドの加水分解及び脱水縮重合を所望の状態に容易に調節することができ、パッシベーション効果をより向上させることができる。
【0085】
前記アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、及びアンモニア等を挙げることができる。
また酸性化合物としては、無機プロトン酸又は有機プロトン酸を挙げることができる。無機プロトン酸としては、塩酸、硫酸、ホウ酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、及び臭化水素酸等が挙げられる。また有機プロトン酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、クエン酸、シュウ酸、イタコン酸、及びリンゴ酸等が挙げられる。
【0086】
これらの中でも、硝酸、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、イタコン酸、及びリンゴ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、硝酸、酢酸及び硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0087】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料が酸性化合物又はアルカリ性化合物を含む場合、その含有量は、金属アルコキシド1モルに対して0.0001モル〜2モルであることが好ましく、0.001モル〜0.5モルであることがより好ましい。
前記酸性化合物又はアルカリ性化合物は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、前記金属アルコキシドに加えて、金属アルコキシドを構成する金属原子にキレート化しうる化学改質剤の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。これにより金属アルコキシドの反応性をより容易に制御することができる。
化学改質剤としては、例えばアセト酢酸エステル類(アセト酢酸エチル等)、1,3−ジケトン類(アセチルアセトン等)、アセトアセタミド類(N,N’−ジメチルアミノアセトアセタミド等)等が挙げられる。
【0089】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料が、化学改質剤を含む場合、これら化学改質剤の含有量は、金属アルコキシド1モルに対して0.01モル〜2モルであることが好ましく、0.1モル〜1.0モルであることがより好ましい。2モル以下であると、ゾル−ゲル反応の反応速度が低下することを抑制できる傾向がある。
前記化学改質剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
(フィラー)
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、フィラーの少なくとも1種を含んでいてもよい。フィラーを含むことで形成される半導体基板用パッシベーション膜の機械的強度、保湿性、反射率、耐熱性をより向上することができる傾向にある。
前記フィラーとしては特に制限されず、有機フィラーであっても、無機フィラーであってもよい。中でもフィラーは、機械的強度、保湿性、反射率及び耐熱性の観点から無機フィラーであることが好ましい。
【0091】
前記有機フィラーを構成する樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリオレフィン、フッ素樹脂、及びポリビニルアルコールなどが挙げられる。具体的には、ナイロン46(PA46)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66T(PA66T)、ナイロン610(PA610)、ナイロン66(PA66)、ナイロン6T(PA6T)、PA・MXD6などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイソブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、及び全芳香族アリレート(PAR)などのポリエステル;ポリエーテルニトリル(PENT)及びポリエーテルエーテルケトン(PENT)などのポリエーテル;ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリスルフィド;シンジオタクティックポリスチレン(SPS)などのポリスチレン;ポリフェニレンオキサイド(PPO)などの芳香族ポリエーテル;ポリプロピレン(PP)及びポリ4−メチル−1−ペンテン(PMP)などのポリオレフィン;四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン樹脂(PFA)及びポリ四フッ化エチレン(PTFE)などのフッ素樹脂;ポリビニルアルコール(EVOH)などが挙げられる。
【0092】
また前記無機フィラーとしてはAl(酸化アルミニウム)、ZnO(酸化亜鉛)、SiO(酸化ケイ素)、ZrO(酸化ジルコニウム)、TiO(酸化チタン)、SiC(炭化ケイ素)、MgO(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)、ゼオライト、AlN(窒化アルミニウム)、BN(窒化ホウ素)、SnO(酸化スズ)、酸化アンチモン(Sb)、フェライト類、及びこれらの複合酸化物、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、マイカ、モンモリロナイト並びにタルク等の無機粒子を挙げることができる。
無機フィラーはこれらの中でも、Al(酸化アルミニウム)、SiO(酸化ケイ素)、ZrO(酸化ジルコニウム)、及びTiO(酸化チタン)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、SiO(酸化ケイ素)が好ましい。
【0093】
SiO(酸化ケイ素)の中でもヒュームドシリカを用いることが好ましい。ヒュームドシリカを用いる場合、パッシベーション膜形成用材料の増粘材、チキソトリピー付与材としての機能も付与することができる。さらにヒュームドシリカの中でも親水性ヒュームドシリカを用いることで、パッシベーション膜の含水率を向上することができる。
これらの金属酸化物は表面に水酸基を多数持っているため、水と相互作用しやすく保湿性が高い。そのためこれらを無機フィラーとして添加することで、パッシベーション膜の保湿性をより向上することができる。
【0094】
特にシリコン太陽電池において、前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて、受光面と反対側の裏面にパッシベーション膜を形成する場合、フィラーを含むことで反射率を向上することができる。その場合、フィラーとしてはSiOを用いることが好ましい。
【0095】
フィラーは、半導体基板用パッシベーション膜が形成された時点で所望の組成になっていればよい。例えばフィラーとして無機フィラーを用いる場合、無機フィラー前駆体、特定樹脂及び液状媒体を含む半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布、乾燥して塗膜を形成する工程で、無機フィラー前駆体が無機フィラーへと変化してもよい。
無機フィラー前駆体としては、例えば、前記金属アルコキシドを挙げることができる。
【0096】
フィラーの平均二次粒子径は特に制限されない。中でも重量平均粒子径(50%D)として10nm〜30μmであることが好ましく、0.1μm〜10μmであることがより好ましい。
10nm以上であると半導体基板用パッシベーション膜形成用材料中でより均一な分散が可能になる。また30μm以下であると機械的強度、保湿性、反射率、耐熱性の向上効果が十分に得られる傾向がなる。
ここで、フィラーの重量平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0097】
フィラーの含有率は特に制限されない。半導体基板用パッシベーション膜形成用材料に含まれる特定樹脂に対して0.1質量%〜200質量%のフィラーを含むことが好ましい。0.1質量%以上であると、フィラーを加えた効果が十分に得られる。また200質量%以下であると、パッシベーション膜の柔軟性が低下することを抑制し、ピンホールなどが生成を抑制できる。
【0098】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤を含むことで、半導体基板、特にシリコン基板に対する濡れ性を向上することができる。
シランカップリング剤としては特に制限されず、通常用いられるシランカップリング剤から適宜選択することができる。
【0099】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、帯電防止ポリマーを更に含むことができる。ここでいう帯電防止ポリマーとは、帯電防止剤を練りこんだポリマー及びポリマーそのものが帯電防止性を示すものを示す。帯電防止剤としては界面活性剤を用いることが好ましい。またプロトン伝導性ポリマーと帯電防止ポリマーを混合して使用してもよい。
【0100】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤はカチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれであってもよい。界面活性剤を含むことでパッシベーション膜に固定電荷をさらに付与できる場合がある。
【0101】
<半導体基板用パッシベーション膜の製造方法>
半導体基板用パッシベーション膜の製造方法は、半導体基板上に、アニオン性基を有する高分子化合物を含む前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布する塗布層形成工程と、前記塗布層を乾燥して塗膜を形成する塗膜形成工程とを有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いることで、優れた表面パッシベーション効果を有する半導体基板用パッシベーション膜を形成することができる。
【0102】
前記半導体基板上のp型層は、p型半導体基板に由来するp型層であっても、p型拡散層又はp型拡散層として半導体基板上に形成されたものであってもよい。
【0103】
前記半導体基板用パッシベーション膜の製造方法においては前記塗布層形成工程の前に、半導体基板のp型層上にフッ酸水溶液を付与する工程をさらに有することが好ましく、フッ酸水溶液を付与する工程の前にアルカリ水溶液を付与する工程をさらに有することがより好ましい。
すなわち、半導体基板のp型層上に前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布する前に、p型層の表面をフッ酸水溶液で洗浄することが好ましく、更にp型層の表面をアルカリ水溶液で洗浄した後、フッ酸水溶液で洗浄することがより好ましい。
【0104】
フッ酸水溶液で洗浄することで、半導体基板表面に存在するシリコン酸化物を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する。
また、半導体基板に存在するダングリングボンドをSi−H結合に変えることができる。これに前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布することで、形成されたSi−H結合を安定化できる可能性がある。
【0105】
またアルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄などを例示することができる。例えばアンモニア水−過酸化水素水の混合溶液に半導体基板を浸し、60℃〜80℃で処理することで、有機物及びパーティクルを除去、洗浄することができる。
フッ酸水溶液のフッ酸の濃度としては特に制限はない。例えば0.1質量%〜40質量%水溶液を用いることができ、0.5質量%〜10質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であると、十分な洗浄効果が得られる傾向がある。また40質量%以下であると、洗浄プロセスのハンドリング性が低下することを抑制できる。
洗浄時間は、アルカリ洗浄及びフッ酸洗浄どちらにおいても、10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがさらに好ましい。
【0106】
また半導体基板用パッシベーション膜の製造方法は、半導体基板のn型層上に、カチオン性基を有する高分子化合物を含む前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布する塗布層形成工程と、前記塗布層を乾燥して塗膜を形成する工程とを有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いることで、優れた表面パッシベーション効果を有する半導体基板用パッシベーション膜を形成することができる。
【0107】
前記半導体基板上のn型層は、n型半導体基板に由来するn型層であっても、n型拡散層又はn型拡散層として半導体基板上に形成されたものであってもよい。
【0108】
本発明においては前記塗布層形成工程の前に、半導体基板のn型層上にフッ酸水溶液を付与する工程をさらに有することが好ましく、フッ酸水溶液を付与する工程の前にアルカリ水溶液を付与する工程をさらに有することがより好ましい。
すなわち、半導体基板のn型層上に前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布する前に、n型層の表面をフッ酸水溶液で洗浄することが好ましく、更にn型層の表面をアルカリ水溶液で洗浄した後、フッ酸水溶液で洗浄することがより好ましい。
【0109】
n型層表面のフッ酸水溶液による洗浄及びアルカリ水溶液による洗浄は、既述のp型層表面のフッ酸水溶液による洗浄及びアルカリ水溶液による洗浄と同様である。
【0110】
半導体基板上に、前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布して塗布層を形成する方法には特に制限はなく、公知の塗布方法を用いることができる。具体的には、浸漬法、印刷法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法及びインクジェット法などを挙げることができる。
【0111】
前記半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の塗布量は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、形成される半導体基板用パッシベーション膜の膜厚が10nm〜50μmとなるようにすることができる。
【0112】
半導体基板用パッシベーション膜形成材料によって形成された塗布層を、乾燥して塗膜を形成することで、半導体基板上に半導体基板用パッシベーション膜を形成することができる。
塗布層の乾燥条件は塗膜を形成可能であれば特に制限されない。例えば、加熱温度条件として50℃以上300℃以下で乾燥することが好ましく、80℃以上250℃以下で乾燥することがより好ましい。50℃以上300℃以下で乾燥することで、ほとんどの溶媒を揮発させることができ、また金属アルコキシドの加水分解反応(ゾル−ゲル反応)が進行しやすくなる。さらに前記温度範囲で乾燥することで、パッシベーション効果が発現しやすい。この理由は不明であるが、例えば、スルホン酸基を有する高分子化合物を含む半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いた場合、高分子化合物から半導体基板へとプロトンの拡散が促進され、半導体基板の欠陥を修復できるためと考えられる。
一方、300℃を超える温度で乾燥させた場合には、パッシベーション効果が小さくなる場合がある。しかし後述するように、乾燥後、室温まで冷却した後に、加湿処理することで十分なパッシベーション効果を達成することができる。
【0113】
前記半導体基板用パッシベーション膜の製造方法においては、塗布層を乾燥して塗膜を形成する塗膜形成工程後に、前記塗膜を加湿処理する加湿工程をさらに有することが好ましい。加湿処理することにより、より優れたパッシベーション効果が得られる。
これは例えば、形成された半導体基板用パッシベーション膜中に含まれる金属アルコキシドに由来する金属酸化物粒子の保湿効果によって、パッシベーション効果がより向上すると考えることができる。
【0114】
前記塗膜を加湿処理する方法は特に制限されない。例えば、少なくとも水を塗膜に付与する方法や、40%RH〜100%RH、10℃〜100℃の環境下で、10秒〜4時間放置する方法等を挙げることができる。
なお、塗膜に水を付与した後、10℃〜100℃の温度条件下で、10秒〜4時間さらに放置してもよい。
塗膜に水を付与する場合、付与する水の量としては特に制限されず、パッシベーション膜の膜厚等に応じて適宜選択することができる。また水の付与方法としては、液体の水をスプレー等で付与する方法であっても、気体状の水を付与する方法であってもよい。
【0115】
前記半導体基板用パッシベーション膜の製造方法によって製造される半導体基板用パッシベーション膜の膜厚は特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。例えば、10nm〜50μmであることが好ましく、100nm〜30μmであることが好ましく、500nm〜20μmであることが更に好ましい。
10nm以上であると半導体基板表面の所望の領域全体を均一に覆うことが容易になる傾向にある。また膜厚が厚いほど、表面パッシベーション効果が高い傾向にある。
【0116】
尚、形成された半導体基板用パッシベーション膜の膜厚は、触針式段差・表面形状測定装置(例えば、Ambios社製)を用いて常法により測定される。
【0117】
本発明においては、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を半導体基板に塗布、乾燥して得られるパッシベーション膜に含まれる特定樹脂又は必要に応じて含まれるその他の樹脂に対して架橋処理を行ってもよい。架橋処理を行うことで、耐熱性をより向上することができる。
架橋処理の方法は特に制限されず、通常用いられる架橋方法から適宜選択して用いることができる。
【0118】
次に図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる半導体基板用パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として例示したものである。但し、この工程図は本発明の使用方法をなんら制限するものではない。
【0119】
図1(a)に示すように、p型半導体基板1には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、表面に反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが知られている。反射防止膜3とp型半導体基板1との間に酸化ケイ素などの表面保護膜(図示せず)が存在していてもよい。また本発明のパッシベーション膜を表面保護膜として使用してもよい。
【0120】
次いで図1(b)に示すように、裏面の一部の領域にアルミ電極ペーストなどの裏面電極5を形成する材料を塗布した後に熱処理して、裏面電極5を形成すると共にアルミを拡散させてp型拡散層4を形成する。
【0121】
次いで図1(c)に示すように、受光面側に電極形成用ペーストを塗布した後に熱処理して表面電極7を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粉末を含むものを用いることで、図1(c)に示すように反射防止膜3を貫通して、n型拡散層2の上に、表面電極7を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。
【0122】
最後に図1(d)に示すように、裏面電極5以外の裏面のp型層上に、アニオン性基を有する高分子化合物を含む半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を、スクリーン印刷等の塗布法により塗布、乾燥してパッシベーション膜6を形成する。p型層上に裏面パッシベーション膜6を形成することで、発電効率に優れた太陽電池素子を製造することができる。
【0123】
図1に示す製造工程を含む製造方法で製造される太陽電池素子では、アルミなどからなる裏面電極をポイントコンタクト構造とすることができ、基板の反りなどを低減することができる。
【0124】
また図1(d)では裏面部分にのみパッシベーション膜を形成する方法を示したが、半導体基板1の裏面側に加えて、側面にも半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布、乾燥することで半導体基板1の側面(エッジ)にパッシベーション膜をさらに形成してもよい(図示せず)。これにより、発電効率により優れた太陽電池素子を製造することができる。
さらにまた、裏面部分にパッシベーション膜を形成せず、側面のみに本発明の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布、乾燥してパッシベーション膜を形成してもよい。本発明の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、側面のような結晶欠陥が多い場所に使用すると、その効果が特に大きい。
【0125】
図1では電極形成後にパッシベーション膜を形成する態様について説明したが、パッシベーション膜形成後に、更にアルミなどの電極を蒸着などによって形成してもよく、また、高温で焼成する必要のない電極を前面に形成してもよい。
【0126】
図2は、本実施形態にかかる半導体基板用パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の別の一例を模式的に示す工程図を断面図として例示したものである。具体的には、図2はアルミ電極ペースト又は熱拡散処理によりp型拡散層を形成可能なp型拡散層形成用組成物を用いてp型拡散層を形成後、アルミ電極ペーストの熱処理物又はp型拡散層形成用組成物の熱処理物を除去する工程を含む工程図を断面図として説明するものである。
ここでp型拡散層形成用組成物は、例えば、アクセプタ元素含有物質とガラス成分とを含んで構成することができる。
【0127】
図2(a)に示すように、p型半導体基板1には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、表面に反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが知られている。
【0128】
次いで図2(b)に示すように、裏面の一部の領域にp型拡散層形成用組成物を塗布した後に熱処理して、p型拡散層4を形成する。p型拡散層4上にはp型拡散層形成用組成物の熱処理物8が形成されている。
ここでp型拡散層形成用組成物に代えて、アルミ電極ペーストを用いてもよい。アルミ電極ペーストを用いた場合には、p型拡散層4上にはアルミ電極8が形成される。
【0129】
次いで図2(c)に示すように、p型拡散層4上に形成されたp型拡散層形成用組成物の熱処理物8又はアルミ電極8をエッチングなどの手法により除去する。
【0130】
次いで図2(d)に示すように、受光面(表面)及び裏面の一部の領域に選択的に電極形成用ペーストを塗布した後に熱処理して、受光面(表面)に表面電極7を、裏面に裏面電極5をそれぞれ形成する。受光面側に塗布する電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粉末を含むものを用いることで、図2(c)に示すように反射防止膜3を貫通して、n型拡散層2の上に、表面電極7が形成されてオーミックコンタクトを得ることができる。
また裏面電極が形成される領域にはすでにp型拡散層4が形成されているため、裏面電極5を形成する電極形成用ペーストには、アルミ電極ペーストに限定されず、銀電極ペースト等のより低抵抗な電極を形成可能な電極用ペーストを用いることもできる。これにより、さらに発電効率を高めることも可能になる。
【0131】
最後に図2(e)に示すように、裏面電極5以外の裏面のp型層上に、アニオン性基を有する高分子化合物を含む半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布、乾燥してパッシベーション膜6を形成する。p型層上に裏面パッシベーション膜6を形成することで、発電効率に優れた太陽電池素子を製造することができる。
【0132】
また図2(e)では裏面部分にのみパッシベーション膜を形成する方法を示したが、p型半導体基板1の裏面側に加えて、側面にも半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布、乾燥することでp型半導体基板1の側面(エッジ)にパッシベーション膜をさらに形成してもよい(図示せず)。これにより、発電効率により優れた太陽電池素子を製造することができる。
さらにまた、裏面部分にパッシベーション膜を形成せず、側面のみに本発明の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布、乾燥してパッシベーション膜を形成してもよい。本発明の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、側面のような結晶欠陥が多い場所に使用すると、その効果が特に大きい。
【0133】
図1では電極形成後にパッシベーション膜を形成する態様について説明したが、パッシベーション膜形成後に、更にアルミなどの電極を蒸着などによって全面に形成してもよく、また、高温で焼成する必要のない電極を前面に形成してもよい。
【0134】
上述した実施形態では、受光面にn型拡散層が形成されたp型半導体基板を用いた場合について説明を行ったが、受光面にp型拡散層が形成されたn型半導体基板を用いた場合にも同様にして、太陽電池素子を製造することができる。尚、その場合は裏面側にn型拡散層を形成することとなる。
【0135】
さらに半導体基板用パッシベーション膜形成用材料は、図3に示すような裏面側のみに電極を配した裏面電極型太陽電池素子の受光面側又は裏面側のパッシベーション膜6を形成することにも使用できる。
図3に概略断面図を示すように、p型半導体基板1の受光面側には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、その表面にパッシベーション膜6及び反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが知られている。またパッシベーション膜6は、本発明の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布、乾燥して形成される。
【0136】
p型半導体基板1の裏面側には、p型拡散層4及びn型拡散層2上にそれぞれ裏面電極5が設けられ、さらに裏面の電極が形成されていない領域にはパッシベーション膜6が設けられている。
型拡散層4は、上述のようにp型拡散層形成用組成物又はアルミ電極ペーストを所望の領域に塗布した後に熱処理することで形成することができる。またn型拡散層2は、例えば熱拡散処理によりn型拡散層を形成可能なn型拡散層形成用組成物を所望の領域に塗布した後に熱処理することで形成することができる。
ここでn型拡散層形成用組成物は、例えば、ドナー元素含有物質とガラス成分とを含んで構成することができる。
【0137】
型拡散層4及びn型拡散層2上にそれぞれ設けられる裏面電極5は、銀電極ペースト等の通常用いられる電極形成用ペーストを用いて形成することができる。
また、p型拡散層4上に設けられる裏面電極5は、アルミ電極ペーストを用いてp型拡散層4と共に形成されるアルミ電極であってもよい。
裏面に設けられるパッシベーション膜6は、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を裏面電極5が設けられていない領域に塗布し乾燥することで形成することができる。またパッシベーション膜6は半導体基板1の裏面のみならず、さらに側面にも形成してよい(図示せず)。
【0138】
図3に示すような裏面電極型太陽電池素子においては、受光面側に電極がないため発電効率に優れる。さらに裏面の電極が形成されていない領域にパッシベーション膜が形成されているため、さらに発電効率に優れる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に記述が無い限り、薬品は全て試薬を使用した。また特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0140】
<実施例1>
(半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の調製)
5質量%ナフィオン樹脂分散液(パーフルオロポリオレフィンスルホン酸誘導体、1−プロパノール/2−プロパノール=45/55(質量比)、水:15〜20%、アルドリッチ社製)10gに、テトラエトキシシラン(多摩化学工業製)0.35g、10%HNO水溶液0.035gを加えて半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を調製した。
【0141】
(パッシベーション膜の形成)
半導体基板として、表面がミラー形状の単結晶型p型シリコン基板(SUMCO製、25mm角、厚さ:625μm)を用いた。シリコン基板をRCA洗浄液(関東化学製Frontier Cleaner−A01)を用いて70℃にて5分間洗浄後、2.5質量%フッ酸水溶液に室温にて5分間浸漬した。次いで、水で洗浄後、エタノールで洗浄し、次いで風乾して前処理した。
その後、シリコン基板を上記で前処理して得られた半導体基板用パッシベーション膜形成用材料にディップ(浸漬)して引き上げた後に、ホットプレート上で、90℃、150℃、200℃及び250℃のそれぞれの温度で10分間乾燥後、室温で放冷して評価用基板をそれぞれ作製した。各温度で乾燥して得られた評価用基板について、以下のようにして実効ライフタイムを測定して評価した。
【0142】
(実効ライフタイムの測定)
乾燥後のパッシベーション膜を塗布したシリコン基板の実効ライフタイム(μs)を、ライフタイム測定装置(日本セミラボ製WT−2000PVN)を用いて、反射マイクロ波光電導減衰法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0143】
<実施例2>
(半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の調製)
5質量%ナフィオン樹脂分散液(1−プロパノール/2−プロパノール=45/55(質量比)、水:15〜20%、アルドリッチ社製)10gに、テトラエトキシシラン(多摩化学工業製)0.18gと、10%HNO水溶液0.018gとを加えて半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を調製した。
調製した半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて、実施例1と同様にしてシリコン基板上にパッシベーション膜を形成し、同様にして評価した。
【0144】
<実施例3>
(半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の調製)
スルホン化ポリスチレン水溶液(ワコーケミカル社製)を150℃にて蒸発乾固し、スルホン化ポリスチレンを得た。これをエタノールに溶解した後、水、2−プロパノール、テトラエトキシシラン、10%HNO水溶液を加え、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を調製した。各成分の比率はスルホン化ポリスチレン/エタノール/2−プロパノール/水/テトラエトキシシラン/10%HNO水溶液=5/76.15/5/10/3.5/0.35(質量比)とした。
調製した半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて、実施例1と同様にしてシリコン基板上にパッシベーション膜を形成し、同様にして評価した。
【0145】
<実施例4>
(半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の調製)
スルホン化ポリスチレン水溶液(ワコーケミカル社製)を150℃にて蒸発乾固し、スルホン化ポリスチレンを得た。これをエタノールに溶解した後、水、2−プロパノール、テトラエトキシシラン、10%HNO水溶液を加え、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を調製した。各成分の比率はスルホン化ポリスチレン/エタノール/2−プロパノール/水/テトラエトキシシラン/10%HNO水溶液=5/72.3/5/10/7/0.7(質量比)とした。
調製した半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて、実施例1と同様にしてシリコン基板上にパッシベーション膜を形成し、同様にして評価した。
【0146】
<実施例5>
(半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の調製)
スルホン化ポリスチレン水溶液(ワコーケミカル社製)を150℃にて蒸発乾固し、スルホン化ポリスチレンを得た。これをエタノールに溶解した後、水、2−プロパノール、テトラエトキシシラン、10%HNO水溶液を加え、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を調製した。各成分の比率はスルホン化ポリスチレン/エタノール/2−プロパノール/水/テトラエトキシシラン/10%HNO水溶液=5/78.9/5/10/1.0/0.1(質量比)とした。後は実施例1と同様にした。
調製した半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて、実施例1と同様にしてシリコン基板上にパッシベーション膜を形成し、同様にして評価した。
【0147】
<実施例6>
実施例1において、乾燥温度を250℃としてシリコン基板上にパッシベーション膜を形成した後、以下のようにして加湿処理して評価用基板を作製した。
加湿処理は、評価用基板を100℃に熱した純水上5cmの位置に10秒間保持して形成されたパッシベーション膜に水蒸気を当てた後、圧縮空気で5秒間風乾して行なった。
得られた評価用基板の実効ライフタイムは、80μsであった。
【0148】
<実施例7>
実施例3において、シリコン基板上にパッシベーション膜形成用材料を塗布し、90℃で10分間乾燥してシリコン基板上にパッシベーション膜を形成した後に、25℃相対湿度50%の状態で2時間放置したこと以外は、同様にして評価用基板を作製した。
得られた評価用基板の実効ライフタイムは、200μsであった。
【0149】
<実施例8>
実施例7において、基板の前処理として2.5質量%フッ酸水溶液による前処理を行わなかったこと以外は、同様にして評価用基板を作製した。
得られた評価用基板の実効ライフタイムは、130μsであった。
【0150】
<比較例1>
実施例1において、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の塗布を行わなかった以外は実施例1と同様にして、シリコン基板における実効ライフタイムを測定して評価した。
【0151】
<比較例2>
実施例1において、テトラエトキシシランを加えずに、半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を調製した。
調製した半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を用いて、実施例1と同様にしてシリコン基板上にパッシベーション膜を形成し、同様にして評価した。
【0152】
【表1】



【0153】
以上より、特定樹脂と金属アルコキシドと分散媒とを含む半導体基板用パッシベーション膜形成材料を、半導体基板表面に塗布、乾燥して、半導体基板上にパッシベーション膜を形成することで、半導体基板内及び表面中の少数キャリアの実効ライフタイムを大幅に向上し、優れたパッシベーション効果を得ることができた。
【符号の説明】
【0154】
1 p型半導体基板
2 n型拡散層
3 反射防止膜
4 p型拡散層
5 裏面電極
6 パッシベーション膜
7 表面電極
8 p型拡散層形成組成物の熱処理物又はアルミ電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物と、分散媒と、金属アルコキシドとを含む半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項2】
前記高分子化合物は、炭素原子と、水素原子、フッ素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される主鎖を有する請求項1に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項3】
前記高分子化合物は、炭素原子と、水素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子とから構成される主鎖を有する請求項1又は請求項2に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項4】
前記高分子化合物は、芳香族基を有する請求項3に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項5】
前記高分子化合物は、炭素原子及びフッ素原子から構成される主鎖を有する請求項1又は請求項2に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項6】
前記金属アルコキシドは、シリコンアルコキシドである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項7】
さらに酸性化合物の少なくとも1種を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項8】
前記高分子化合物の含有量に対する前記金属アルコキシドの含有率が、0.1質量%〜200質量%である前記請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項9】
前記分散媒は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項10】
前記高分子化合物は、スルホン酸基を有する請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項11】
前記高分子化合物は、ポリパーフルオロオレフィンスルホン酸誘導体、スルホン化ポリスチレン誘導体及びスルホン化ポリアリールエーテルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料。
【請求項12】
半導体基板上に設けられ、アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物を含む請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料の塗膜である半導体基板用パッシベーション膜。
【請求項13】
半導体基板上に、アニオン性基又はカチオン性基を有する高分子化合物を含む請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の半導体基板用パッシベーション膜形成用材料を塗布する塗布層形成工程と、前記塗布層を乾燥して塗膜を形成する塗膜形成工程と、を有する半導体基板用パッシベーション膜の製造方法。
【請求項14】
前記塗布層形成工程の前に、半導体基板上にフッ酸水溶液を付与する工程をさらに有する請求項13に記載の半導体基板用パッシベーション膜の製造方法。
【請求項15】
前記塗膜形成工程の後に、前記塗膜を加湿処理する工程をさらに有する請求項13又は請求項14に記載の半導体基板用パッシベーション膜の製造方法。
【請求項16】
pn接合を有する半導体基板と、電極と、前記半導体基板上に設けられた請求項12に記載の半導体基板用パッシベーション膜とを有する太陽電池素子。
【請求項17】
pn接合を有し、電極が設けられた半導体基板上に、請求項12に記載の半導体基板用パッシベーション膜を形成する工程を有する太陽電池素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−8871(P2013−8871A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141068(P2011−141068)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】