説明

半導体歪みセンサ及びその製造方法

【課題】シリコン単結晶を利用した半導体歪みセンサと比較してさらに高感度の半導体歪みセンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】珪素源と炭素源と触媒を含む液状混合物を容器内に供給し、容器を乾燥室内に導入し、乾燥室内で液状混合物を硬化乾燥することにより、固形物を生成し、生成された固形物を加熱炉内に導入し、加熱炉内で固形物を炭化,焼成し、炭化,焼成された固形物を粉砕することによりβ型の炭化珪素粉体を生成し、β型の炭化珪素粉体と非金属系燃結助剤を混合,造粒することにより造粒体を生成し、生成された造粒体を焼結させることにより炭化ケイ素焼結体を形成し、炭化ケイ素焼結体表面に炭化ケイ素焼結体の歪みに伴う抵抗率の変化を検出するための電極を付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体歪みセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、α型の炭化ケイ素粉末と金属系燃結助剤の混合物を焼結することにより形成された炭化ケイ素焼結体を利用した半導体歪みセンサが知られており、このような半導体歪みセンサによれば、シリコン単結晶を利用した半導体歪みセンサの3倍程度の感度(ピエゾ抵抗係数)が得られることが報告されている。
【非特許文献1】“窒化アルミニウムおよび窒素を共添加した炭化ケイ素セラミックスのピエゾ抵抗効果”,岡田泰行,林秀考,岸本昭,「粉体及び粉末冶金」第53巻第11号,p876-879
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、シリコン単結晶を利用した半導体歪みセンサと比較してさらに高感度の半導体歪みセンサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る半導体歪みセンサは、β型の炭化ケイ素粉末と非金属系燃結助剤の混合物を焼結することにより形成された炭化ケイ素焼結体と、炭化ケイ素焼結体に付設された、炭化ケイ素焼結体の歪みに伴う抵抗率の変化を検出するための電極とを備えることを特徴とする。また本発明に係る半導体歪みセンサの製造方法は、珪素源と炭素源と触媒を含む液状混合物を容器内に供給し、容器を乾燥室内に導入し、乾燥室内で液状混合物を硬化乾燥することにより、固形物を生成する工程と、生成された固形物を加熱炉内に導入し、加熱炉内で固形物を炭化,焼成する工程と、炭化,焼成された固形物を粉砕することにより炭化珪素粉体を生成する工程と、炭化珪素粉体と非金属系燃結助剤を混合,造粒することにより造粒体を生成し、生成された造粒体を焼結させることにより炭化ケイ素焼結体を形成する工程と、炭化ケイ素焼結体表面に炭化ケイ素焼結体の歪みに伴う抵抗率の変化を検出するための電極を付設する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る半導体歪みセンサ及びその製造方法によれば、シリコン単結晶を利用した半導体歪みセンサと比較してさらに高感度の半導体歪みセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の半導体歪みセンサ及びその製造方法を実施例に基づいて説明する。
【0007】
〔実施例〕
実施例では、始めに、珪素源としてのエチルシリケート40(ES40)と、炭素源としての液状のフェノール樹脂PL−2818と、重合又は架橋触媒としてのマレイン酸とを含む液状混合物を容器内に供給した。次に、容器を乾燥室内に導入し、乾燥室内で液状混合物をマイクロウェーブ(電磁波)により硬化乾燥することにより固形物を生成した。次に、生成された固形物を加熱炉内の坩堝に導入し、900[℃]程度の真空雰囲気下で固形物を加熱炭化することにより仮焼成粉末を生成し、仮焼成粉末をさらに1900[℃]程度の真空雰囲気下で焼成することによりβ型の炭化珪素粉体を得た。次に、β型の炭化珪素粉体をジェットミルにより2.118[μm]程度の粒径まで粉砕した後、液状のフェノール樹脂12[wt%]と混合,造粒することにより造粒体(粒径101.8[μm],窒素含有量0.092[%])を生成し、生成された造粒体を2300[℃]のArガス雰囲気下で圧力500[kg/cm]でホットプレス焼結させることによりφ20の炭化珪素焼結体(密度3.026[g/cm],体積抵抗率0.0825[Ω・cm])を得た。そして最後に炭化ケイ素焼結体の表面に電極を付設することにより、実施例の半導体歪みセンサを得た。実施例の半導体歪みセンサに圧縮応力を印加し、応力印加方向に対し垂直方向の電場におけるピエゾ抵抗効果を直流2端子法により評価した結果、ピエゾ抵抗係数は1.1E−08[MPa−1]となり、シリコン単結晶を利用した半導体歪みセンサのピエゾ抵抗係数(1.02E−09[MPa−1])の10.8倍、α型の炭化ケイ素焼結体を利用した半導体歪みセンサのピエゾ抵抗係数(3.4E−09[MPa−1])の約3倍の値を示し、本実施例によればさらに高感度の半導体歪みセンサが得られることが知見された。
【0008】
このことから、この半導体歪みセンサによれば、高温ドリフト,温度依存性,長期信頼性等の高温雰囲気下で利用される圧力センサに係わる問題点を解消することができる。またこの半導体歪みセンサは、金属系の燃結助剤ではなく非金属系の燃結助剤である液状のフェノール樹脂を用いて形成され高純度であるので、不純物汚染が問題となる半導体製造装置内で付加的な装置を用いることなく直接利用することができる。
【0009】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β型の炭化ケイ素粉末と非金属系燃結助剤の混合物を焼結することにより形成された炭化ケイ素焼結体と、
前記炭化ケイ素焼結体に付設された、炭化ケイ素焼結体の歪みに伴う抵抗率の変化を検出するための電極と
を備えることを特徴とする半導体歪みセンサ。
【請求項2】
珪素源と炭素源と触媒を含む液状混合物を容器内に供給し、当該容器を乾燥室内に導入し、乾燥室内で液状混合物を硬化乾燥することにより、固形物を生成する工程と、
生成された固形物を加熱炉内に導入し、加熱炉内で固形物を炭化,焼成する工程と、
炭化,焼成された前記固形物を粉砕することによりβ型の炭化珪素粉体を生成する工程と、
前記β型の炭化珪素粉体と非金属系燃結助剤を混合,造粒することにより造粒体を生成し、生成された造粒体を焼結させることにより炭化ケイ素焼結体を形成する工程と、
前記炭化ケイ素焼結体表面に炭化ケイ素焼結体の歪みに伴う抵抗率の変化を検出するための電極を付設する工程と
を有することを特徴とする半導体歪みセンサの製造方法。

【公開番号】特開2009−168512(P2009−168512A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4678(P2008−4678)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】