説明

半導体発光素子

【課題】 光出力の劣化を抑制することが可能な半導体発光素子を提供する。
【解決手段】 一定の波長の光を反射するn型DBR層13、n型DBR層13の上に形成された同波長の光を放射する発光層15を有する発光領域層17、発光領域層17の側部にプロトン注入により形成された高抵抗領域20、発光領域層17及び高抵抗領域20の上に接して、高抵抗領域20との界面近傍に拡散されたプロトンを有し、実質的に電流拡散の機能を有する、同波長の光を反射するp型DBR層22、p型DBR層22の上、且つ、発光領域層17の上方にp型コンタクト層24を介して形成されたp側電極25、及び、p側電極25とは反対側のn型DBR層13の下方に形成されたn側電極29を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、III−V属化合物半導体を利用した発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD、Laser Diode)が光通信機器、マルチメディア関連機器、LED表示パネル等に使用され急速に普及してきている。
【0003】
光通信は、一般的には、赤外領域の波長の光素子と石英系光ファイバーとを用いた長距離(幹線系等)の大容量光通信が知られている。しかし、この数年、可視光のLEDを含む光素子とプラスチック光ファイバー(POF、Plastic Optical Fiber)とを用いた10〜100m程度の短距離の光通信が注目されている。中でも、低価格なアクリル系ポリマーのPOFの低損失領域が赤色波長帯、例えば、660nm帯にあることから、ホームネットワーク、車内LAN、FA(Factory Automation)機器等の高速POFデータリンク用途に向け、赤色の半導体発光素子の高速化及び低価格化が期待されている。
【0004】
そこで、伝送速度500M〜1Gbpsクラスの可視光短距離光通信のIII−V属化合物半導体発光素子として期待されているのが、レゾナントキャビティ(Resonant Cavity)型LED(RC型LED)である。このRC型LEDは、いわば垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL、Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)と従来のLEDの中間とも言える特徴を持つ発光素子で、その高速応答性に向けた開発が進められている。
【0005】
例えば、高速な半導体発光素子として、下側DBR(Distributed Bragg Reflector)層、下側DBR層上に形成され電流注入により光を放射する発光層、発光層上に形成され下側DBR層よりも反射率の低い上側DBR層、上側DBR層上に形成された電流拡散層、及び、電流拡散層上に形成されたバンドギャップが電流拡散層よりも狭いコンタクト層を有し、電流拡散層、上側DBR層、及び発光層にプロトンを注入して形成された高抵抗化領域を備えた発光素子が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
開示された半導体発光素子は、高速応答性を有するものの、電流注入により光を放射し続けると、光出力の低下が起こり、比較的短時間で、高速POFデータリンク用途等に要求される基準を満たせない恐れがある。特に、高温高湿条件では、光出力の低下に至る時間は、一層短時間であることが見出されている。
【特許文献1】特開2004−281559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光出力の劣化を抑制することが可能な半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の半導体発光素子は、一定の波長の光を反射する第1の反射膜と、前記第1の反射膜の上に形成された前記波長の光を放射する発光層を有する発光領域層と、前記発光領域層の側部にイオン注入により形成された高抵抗領域と、前記発光領域層及び前記高抵抗領域の上に接して、前記高抵抗領域との界面近傍に拡散された前記注入元素を有し、前記波長の光を反射する第2の反射膜と、前記第2の反射膜の上、且つ、前記発光領域層の上方にコンタクト層を介して形成された第1の電極と、前記第1の電極とは反対側の前記第1の反射膜の下方に形成された第2の電極とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様の半導体発光素子は、一定の波長の光を反射する第1の反射膜と、前記第1の反射膜の上に形成された前記波長の光を放射する発光層を有する発光領域層と、前記発光領域層の上に接して、前記波長の光を反射する第2の反射膜と、前記発光領域層及び第2の反射膜の側部にイオン注入により形成された高抵抗領域と、前記第2の反射膜及び前記高抵抗領域の上に接して、前記高抵抗領域との界面近傍に拡散された前記注入元素を有する電流拡散層と、前記電流拡散層の上、且つ、前記発光領域層の上方にコンタクト層を介して形成された第1の電極と、前記第1の電極とは反対側の前記第1の反射膜の下方に形成された第2の電極とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様の半導体発光素子は、第1の電流拡散層と、前記第1の電流拡散層の上に形成された一定の波長の光を放射する発光層を有する発光領域層と、前記発光領域層の側部にイオン注入により形成された高抵抗領域と、前記発光領域層及び前記高抵抗領域の上に接して、前記高抵抗領域との界面近傍に拡散された前記注入元素を有する第2の電流拡散層と、前記第2の電流拡散層の上、且つ、前記発光領域層の上方にコンタクト層を介して形成された第1の電極と、前記第1の電極とは反対側の前記第1の電流拡散層の下方に形成された第2の電極とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光出力の劣化を抑制することが可能な半導体発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明者らは、半導体発光素子の高温高湿環境下における劣化現象を検討し、以下のような知見を得た。なお、検討した半導体発光素子101は、図8に示すように、上記特許文献1に記載された半導体層の構造と類似した構造を有するRC型LEDであって、表面の半導体層の高抵抗領域120とp型コンタクト層124の両方に接してリング状の部分、及び、リングの内側に十字形の細線が接続された電極125が形成されている。
【0013】
この半導体発光素子101は、通電劣化時、p側電極125近傍の半導体層に変質が確認できる。この変質は、高温となった半導体層の表面が水分と反応した、いわゆる酸化であることが確認されている。酸化は、表面のp側電極125の細線部分が起点になっている。
【0014】
酸化のメカニズムは次のように推測される。半導体発光素子101は、光出力を高く取るために、表面のp側電極を細線構造として、発光領域内部まで電流を効率良く供給する構造になっている。リング状をなすp側電極125の周辺部は高抵抗領域120に接しているため、注入される電流は、リング状のp側電極125の内側及び十字形の細線部分に集中する。その結果、p側電極125の内側及び十字形の細線部分に局所的な発熱が起こり、同時に、電流によるイオンの発生及び泳動が起こる。すなわち、半導体発光素子101の表面に付着した水分の中の水酸イオン及び酸素イオン等は、電流による電界により表面から浸透し、ジュール熱も加わり、発熱が酸化による変質を促進していると考えられる。
【0015】
この、酸化による半導体層の変質は、RC型LEDに限定されるものではなく、VCSELや従来のDBR層を備えていないLED等においても起こり得る。
【0016】
なお、以下の説明では、理解を容易にするために、共振波長λFPと、PL発光波長(発光層からの発光波長)λPLとは等しいものとして説明する。しかし、厳密には、PL発光波長λPLは、温度の上昇と共に長波長にシフトする。DBR層による共振波長λFPも温度の上昇と共に長波長にシフトする。λPLのシフトの方がλFPのシフトより大きいので、ある温度で両波長が一致するように、室温でのλFPをλPLより幾分長波長(5〜10nm)に調整してある。
【0017】
以下、上述の知見を基に得られた本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、図において、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1に係る半導体発光素子について、その製造方法を加えて、図1乃至図3を参照して説明する。図1は半導体発光素子の構造を模式的に示す図で、図1(a)は正面方向の断面図、図1(b)は半導体発光素子を上方から見た平面図で、A−A線に沿った断面の一部が図1(a)の断面図に相当する。図2は半導体発光素子の製造工程を、工程順に模式的に示す断面図である。図3は半導体発光素子の注入電流の流れを模式的に示す図である。
【0019】
図1(a)に示すように、半導体発光素子1は、n型GaAs基板11の主面上に、n型のバッファ層12を介して形成された第1の反射膜であるn型DBR層13、n型DBR層13の上に順次形成されたn型クラッド層14と発光層15とp型クラッド層16とからなる発光領域層17、発光領域層17の側部及びn型DBR層13の上部にプロトン注入により形成された高抵抗領域20、発光領域層17及び高抵抗領域20の上に接して形成された電流拡散の機能も有する第2の反射膜であるp型DBR層22、p型DBR層22の上、且つ、前記発光領域層17の上方にp型コンタクト層24を介して形成された第1の電極であるp側電極25、及び、p側電極25とは反対側のn型GaAs基板11の下側(裏面側)に形成された第2の電極であるn側電極29を主要構成要素として有している。
【0020】
n型GaAs基板11の主面上に、GaAsからなるn型のバッファ層12が形成されている。n型DBR層13は、AlGaAs系、すなわち、Al0.5Ga0.5AsとAl0.95Ga0.05Asを交互に積層した構造で、繰り返し数は40ペアである(後述参照)。n型及びp型クラッド層14、16は、それぞれ、n型及びp型のIn0.5(Ga0.5Al0.50.5Pである。発光層15は、発光ピーク波長が約665nmとなるように調整されたアンドープのInGaAlP系MQW構造である。
【0021】
発光領域層17は、発光層15、n型及びp型クラッド層14、16からなる直径100μmの平面的には円形、3次元的には、円柱状をなす領域である。高抵抗領域20は、一部が、発光領域層17に対して平行な位置において、この円柱状をなす領域を取り囲み、一部が、n型DBR層13の上部において、発光領域層17側から連続して形成されている。高抵抗領域20は、発光領域層17側から選択的にプロトンをイオン注入して高抵抗化されている。従って、発光領域層17に対して平行な位置において、発光領域層17と連続する部分は、発光領域層17と同じ主成分を有し、n型DBR層13の上部において、発光領域層17側から連続して形成された部分はn型DBR層13と同じ主成分を有している。なお、高抵抗領域20の下側をなすn型DBR層13への広がり部分は、最小限に抑制されてもよい。
【0022】
p型DBR層22は、発光領域層17及び高抵抗領域20に接して直上にあり、n型DBR層13と同様な組成でp型にドープされた積層構造をなし、繰り返し数は10ペア、膜厚は約1μmである。高抵抗領域20に接するp型DBR層22は、後述するように、プロトンのイオン注入の影響は受けず、結晶成長時の熱の影響等によりプロトンの拡散が見られる程度である。
【0023】
n型及びp型DBR層13、22は、光学的には、屈折率の高いAl0.5Ga0.5Asと、屈折率の低いAl0.95Ga0.05Asとを、反射すべき光の光学波長の1/4の膜厚として、交互に積層されている。下側のn型DBR層13は、99.9%以上の反射率を有し、光を放射する上側のp型DBR層22は、約95%の反射率を有している。また、n型及びp型DBR層13、22は、電気的には、2〜4×1018cm−3と高濃度に、n型DBR層13にはシリコンが、p型DBR層22には炭素がドープされ、低抵抗化が図られている。
【0024】
p型コンタクト層24は、GaAs層に、不純物として炭素が2×1019cm−3と高濃度にドープされ、膜厚が20nm程度に形成されている。p型コンタクト層24は、注入電流に対して抵抗が低く、しかも、発光波長の吸収を抑制するために薄く形成されている。
【0025】
図1(b)に示すように、p側電極25は、AuZnを主材料として、p型コンタクト層24とオーミックコンタクトが形成される。リング状の電極内径が95μm、幅が5μmに形成され、リング内側の十字状細線は幅が3μmである。p側電極25は、近接して配置されたボンディングパッド26に接続されている。リング状のp側電極25は、円形の発光領域層17と高抵抗領域20との境界に、上面から見て中心をほぼ一致させて重なる関係にある。n側電極29は、n型GaAs基板11の主面の反対側に、基板厚を調整した後、AuGeを主材料として、全面にオーミックコンタクトが形成されている。
【0026】
次に、半導体発光素子1の製造方法を説明する。まず、図2(a)に示すように、1回目の結晶成長が行われる。n型GaAs基板11の主面上に、n型のバッファ層12、n型DBR層13、n型クラッド層14、発光層15、p型クラッド層16を順次成長し、その後、連続して、例えば、膜厚約0.7μmのn型InGaP調整層18、及び、例えば、膜厚約0.1μmのn型GaAs保護層19を、MOCVD(有機金属気相成長)法により形成する。
【0027】
MOCVD法では、In原料はトリメチルインジウム(TMI)、Ga原料はトリメチルガリウム(TMG)、Al原料はトリメチルアルミニウム(TMA)、As原料はアルシン(AsH)、P原料はホスフィン(PH)等の有機金属原料及び半導体材料ガスを使用する周知の方法が採用されている。n型ドーパントの原料にはシラン(SiH)、p型ドーパントの原料にはジメチル亜鉛(DMZ)または4臭化炭素(CBr)等を利用することができる。
【0028】
図2(b)に示すように、発光領域となる予定の直径100μmの円形領域のn型GaAs保護層19上に、例えば、シリコン酸化膜からなるマスク層31を形成し、n型GaAs保護層19の上方から、プロトンをイオン注入する。このとき、イオン注入の加速エネルギーは、例えば、150keVに設定される。n型クラッド層14及び発光層15に、プロトンの濃度のピークが来るように、n型InGaP調整層18及びn型GaAs保護層19の膜厚は調整されている。発光領域層17にあるpn接合部分が高抵抗化される。なお、ドーズ量は、例えば、1×1015cm−2とした。
【0029】
図2(c)に示すように、マスク層31、n型InGaP調整層18及びn型GaAs保護層19は、順次、エッチング除去される。プロトンがマスク層31で遮蔽された発光領域層17が形成され、同時に、プロトンが注入された高抵抗領域20が選択的に形成される。
【0030】
図2(d)に示すように、2回目の結晶成長が行われる。表面に露出している平坦なp型クラッド層16及び高抵抗領域20の上に、p型DBR層22及びGaAsからなるp型コンタクト層24が、順次、MOCVD法により形成される。また、p型コンタクト層24の上に、例えば、n型InGaAlPからなる保護層(図示略)が形成される。
【0031】
この2回目の結晶成長は、前の工程で形成されている高抵抗領域20を維持しながら、新たに成長する結晶の品質を維持することが必要となる。すなわち、高抵抗領域20のプロトンが拡散する程の高温にすることなく、p型DBR層22及びp型コンタクト層24の結晶性を悪化させる程の低温ではない温度範囲での結晶成長である。選択した温度範囲は、500〜550℃である。
【0032】
発明者らの検討では、上述またはそれに類するプロトン打ち込み条件の試料は、約550℃より上昇すると回復現象が発生し、抵抗率が下がって行く。つまり、イオン注入後は550℃以下の温度でのプロセスのみ可能ということである。
【0033】
また、2回目の結晶成長で積層するp型DBR層22は、光を取り出す側の反射層及び電気伝導を目的とする層であり、また、p型コンタクト層24は電気伝導を目的とする層であるため、例えば、発光層15を含む発光領域層17のような高品質の結晶である必要は必ずしもない。発光領域層17を高品質の結晶とするためには、例えば、700℃で成長する必要があるが、p型DBR層22及びp型コンタクト層24は500℃で成長したものでも十分機能を果たすことが見出された。しかも、AlGaAsとGaAsは、比較的低温でも高濃度の炭素ドーピングが可能となり、p型の電気伝導層には適するものとなるという知見を得て、アルシン(AsH)の供給量を調整することにより、有機金属自体の炭素のオートドーピングを行い、AlGaAs系のp型DBR層22は2〜4×1018cm−3、GaAsからなるp型コンタクト層24は2×1019cm−3にドーピングを行った。
【0034】
そして、2回目の結晶成長後、保護層が除去され、表面に露出したp型コンタクト層24の上に、内側に十字形を有するリング状のp側電極25及び円形のボンディングパッド26が、AuZn等の蒸着及びリフトオフ技術により形成された(図1(b)参照)。次に、n側電極29は、n型GaAs基板11の主面の反対側に、基板厚を薄く調整した後、AuGe等が全面に蒸着され、形成された。以上の製造工程を経て、図1(a)及び図1(b)に示すような、1辺が250〜300μmの概略直方体の半導体発光素子1が形成される。
【0035】
上述した半導体発光素子1は、n型DBR層13の上に、n型クラッド層14と発光層15とp型クラッド層16とからなる発光領域層17を有し、発光領域層17の側部及びn型DBR層13の上部にプロトン注入により形成された高抵抗領域20、発光領域層17及び高抵抗領域20の上に接して形成された電流拡散層の機能も有するp型DBR層22、最上面に内側に十字形を有するリング状のp側電極55を備えるRC型LEDである。
【0036】
この半導体発光素子1は、p側及びn側電極25、29から発光層15に電流が注入され、発光層15から波長665nm付近の光が放射される。この光は、反射膜としての上下のn型及びp型DBR層13、22によって反射され、共振されて、フォトンリサイクリング効果により、発光スペクトル幅が約5nmまで狭められる。図1の半導体発光素子1では、発光層15からの光に対する反射率は、下側のn型DBR層13が99.9%と高いのに対し、上側のp型DBR層22が約95%と低い。このため、共振された光は、反射率が低い上側のp型DBR層22を介して、上側のp側電極25側に放射される。
【0037】
半導体発光素子1は、樹脂封止されてないパッケージに塔載され、動作試験及び高温高湿試験に掛けられた。10mAのDCで駆動すると、半導体発光素子1の光出力は、1.5mWとなった。これは、同様な条件でパッケージ化された比較のための半導体発光素子101と比べて、約25%の光出力の向上となる。また、パッケージ温度60℃、湿度90%で、10mAの連続通電試験を行った。試験開始時の光出力に対する1000時間後の光出力の低下は、0.1dB以内であることが判明した。これは、例えば、同条件での要求仕様の一例である1dB以内を十分クリアしており、劣化が抑制されたことを示すものである。
【0038】
なお、この高温高湿試験において、半導体発光素子1の劣化が抑制される理由は、従来例と比較して、次のように推測される。半導体発光素子1の高抵抗領域20は、上部のp側電極25と下部のn側電極29の間、特に、p側電極25から約1μm離間した位置にあって、電流通路を狭窄する作用を有する。
【0039】
図3に示すように、p側電極25とn側電極29との間に通電されると、電流35は、炭素が高濃度にドープされて低抵抗化されたp型コンタクト層24及びp型DBR層22を通り、発光領域層17にあるpn接合部に供給される。p側電極25からの電流35を妨げるものは、半導体発光素子1の表面近傍には存在しない。すなわち、従来、半導体発光素子101では、イオン注入で形成された高抵抗領域120を有し、高抵抗領域120が接したp側電極125の表面の細線部分等を起点として発生していた酸化による変質が、半導体発光素子1では、発生せず、その結果、光出力の低下は起こらないと推測される。
【0040】
また、従来に比較して、光出力の向上が図れる理由は、次のように推測される。半導体発光素子1は、p側電極25のp型コンタクト層24との接触面を全て有効に使って接触抵抗を低減し、炭素が高濃度にドープされたp型コンタクト層24及びp型DBR層22が低抵抗化され、比較的多くの電流が、比較的均一にpn接合部に供給された結果であると考えられる。
【0041】
また、半導体発光素子1は、高速応答性が実現されている。n型クラッド層14及び発光層15に、プロトンの濃度のピークが来るように、n型InGaP調整層18及びn型GaAs保護層19の膜厚は調整されている。このpn接合部分が効率よく高抵抗化された結果、接合の容量は低減化されたことによる。
【実施例2】
【0042】
本発明の実施例2に係る半導体発光素子について、図4を参照しながら説明する。図4は半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図である。実施例1と同様な半導体層構造を基に、n型及びp型DBR層を厚くして、VCSELに適用している点が、実施例1とは異なっている。以下、実施例1と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略し、異なる構成部分について説明する。
【0043】
図4に示すように、半導体発光素子2は、実施例1の半導体発光素子1と多くの構成要素が同じであるが、主に、n型DBR層43、発光領域層17の径、p型DBR層52、及びp側電極55が異なっている。
【0044】
n型DBR層43は、AlGaAs系、すなわち、Al0.5Ga0.5AsとAl0.95Ga0.05Asを交互に積層した構造で、繰り返し数は50ペアである。
【0045】
発光領域層17は、直径が10μmと小さくされた他は、半導体発光素子1と同様である。その結果、高抵抗領域20は、直径10μmの発光領域層17の側部を、半導体発光素子1と同様に取り囲んでいる。
【0046】
p型DBR層52は、発光領域層17及び高抵抗領域20に接して直上にあり、n型DBR層13と同様な組成でp型にドープされた積層構造をなし、繰り返し数は30ペア、膜厚は約3μmである。
【0047】
p側電極55は、リング状をなし、リングの内径が9μm、幅が5μmに形成されている。p側電極55は、近接して配置されたボンディングパッド(図示略)に接続されている。リング状のp側電極55は、円形の発光領域層17と高抵抗領域20との境界に、上面から見て、中心をほぼ一致させて重なる関係にある。
【0048】
半導体発光素子2の製造方法は、実施例1の半導体発光素子1とほぼ同様である。ただし、n型及びp型DBR層43、52は厚く結晶成長される。p型DBR層52は膜厚約3μmと厚くなるが、このp型DBR層52を成長する前に、プロトン注入により高抵抗領域20を形成することができるために、プロトン注入条件の変更等は必要ない。また、発光領域層17の直径が10μmと小さく、それに見合うp側電極55も小さくなるので、使用するマスクパターン等を変更して形成する。その結果、1辺が250〜300μmの概略直方体の半導体発光素子2が形成される。
【0049】
上述した半導体発光素子2は、n型DBR層43の上に、n型クラッド層14と発光層15とp型クラッド層16とからなる発光領域層17を有し、発光領域層17の側部及びn型DBR層43の上部にプロトン注入により形成された高抵抗領域20、発光領域層17及び高抵抗領域20の上に接して形成された電流拡散層の機能も有するp型DBR層52、最上面にリング状のp側電極55を備えるVCSELである。
【0050】
この半導体発光素子2は、p側及びn側電極55、29から発光層15に電流が注入され、発光層15から波長665nmの光が放射される。この光は、反射膜としての上下のn型及びp型DBR層43、52によって反射され、共振されて、誘導放出が起こり、レーザ光となる。半導体発光素子2では、発光層15からの光に対する反射率は、下側のn型DBR層43が99.95%と高いのに対し、上側のp型DBR層52が約99%と幾分低い。このため、共振された光は、反射率が低い上側のp型DBR層52を介して、上側のp側電極55側に放射される。
【0051】
半導体発光素子2の動作試験では、発振しきい値電流約2.5mA、最高発振温度60℃と、この波長帯のLDとしては、良好な特性が得られた。VCSELである半導体発光素子2は、RC型LEDである実施例1の半導体発光素子1と一概に比較することはできない。そこで、従来の半導体発光素子101とほぼ同様な半導体層構造を有し、発光領域層の径を10μmとしたVCSELを作製して、比較した。その結果、本実施例の半導体発光素子2は、2000時間の通電発振後もしきい値の変動は小さく、近視野像にも異常は見られなかった。半導体発光素子2の表面には、p側電極55の細線部分を起点するような酸化は見られず、劣化は起こってない。一方、従来の半導体発光素子101では、1000時間で表面に変色が観察され、発振不能な素子が発生した。
【0052】
また、半導体発光素子2は、プロトン注入時のダメージの影響を受けにくいので、良好な特性を有している。つまり、高抵抗領域20を作製するとき、プロトンを注入する加速エネルギーが約150keVと小さく、そのダメージも小さく抑えられている。一方、従来の半導体発光素子101とほぼ同様な半導体層構造を有するVCSELでは、高抵抗領域を作製するとき、既に成長済みのp型DBR層を介してプロトンを注入するために、相当高い加速エネルギーが必要となり、このプロトン注入によるダメージが、発振特性を劣化させている可能性が考えられる。
【0053】
また、プロトン注入による半導体発光素子2は、偏波制御のため傾斜基板を用いても、結晶の異方性の影響は小さい。つまり、いわゆる選択酸化型のVCSELは、偏波制御のため傾斜基板を用いると、選択酸化に異方性が生じ、異方性の影響を考慮しなければならないという別の問題が発生するが、半導体発光素子2では異方性の問題が抑制されるので、煩雑な工程を必要としない。
【0054】
また、半導体発光素子2は、従来の半導体発光素子101よりスロープ効率が改善されている。光出力の向上が図られている。半導体発光素子1と同様に、p側電極55のp型コンタクト層24との接触面を全て有効に使って接触抵抗を低減し、炭素が高濃度にドープされたp型コンタクト層24及びp型DBR層52が低抵抗化され、比較的多くの電流が、比較的均一にpn接合部に供給された結果であると考えられる。
【0055】
また、半導体発光素子2は、pn接合部分が効率よく高抵抗化されるので、接合の容量は低減化され、高速応答性が実現されている。
【実施例3】
【0056】
本発明の実施例3に係る半導体発光素子について、図5を参照しながら説明する。図5は半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図である。実施例1とは、p型DBR層の形態が異なっている。以下、実施例1と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略し、異なる構成部分について説明する。
【0057】
図5に示すように、半導体発光素子3は、実施例1の半導体発光素子1と多くの構成要素が同じであるが、主に、p型DBR層62、p型電流拡散層63、及びp側電極65が異なっている。
【0058】
p型DBR層62は、発光領域層17の上に、Al0.5Ga0.5AsとAl0.95Ga0.05Asを交互に6ペア積層した構造で、1回目の結晶成長で形成されている。成長後、調整層及び保護層(図示略)等を介して、p型DBR層62の上方から、プロトン注入が実行され、p型DBR層62の側部も、高抵抗領域20に組み込まれている。側部を高抵抗領域20に囲まれた、プロトンが注入されてない円柱状の領域は、上部から、p型DBR層62、発光領域層17、及びn型DBR層13の上部である。
【0059】
p型電流拡散層63は、p型DBR層62及び高抵抗領域20の上に、2回目の結晶成長で形成される。炭素が2〜4×1018cm−3の濃度にドープされたp型のAl0.7Ga0.3Asからなる膜厚約0.6μm単層である。
【0060】
p側電極65は、p型電流拡散層63の上のp型コンタクト層24上に、リングの内径が110μm、幅が5μmのリング状に形成されている。p側電極65は、近接して配置されたボンディングパッド(図示略)に接続されている。リング状のp側電極65は、p型DBR層62と高抵抗領域20との円形の境界に対して、上面から見て中心をほぼ一致させて外側にリング内径が配置されている。p側電極65の材料等は、半導体発光素子1のp側電極25と同様である。
【0061】
半導体発光素子3の製造方法は、一部上述したように、p型DBR層62を1回目の結晶成長で形成する。プロトン注入時、発光領域層17のpn接合部の表面からの位置を、実施例1とほぼ同じにするために、n型InGaP調整層(図示略)の厚さを、約0.1μmとなるように薄く形成する。その後、実施例1とほぼ同じ条件で、プロトン注入を行う。
【0062】
2回目の結晶成長は、p型DBR層62及び高抵抗領域20の上に、p型電流拡散層63が成長される。また、p側電極65は、径が大きくなるので、使用するマスクパターン等を変更して形成する。他の製造方法は、実施例1の半導体発光素子1の製造方法とほぼ同様である。その結果、1辺が250〜300μmの概略直方体の半導体発光素子3が形成される。
【0063】
上述した半導体発光素子3は、発光領域層17の上に、p型DBR層62を有し、発光領域層17とp型DBR層62の側部、及びn型DBR層13の上部にプロトン注入により形成された高抵抗領域20、p型DBR層62及び高抵抗領域20の上に接して形成されたp型電流拡散層63、最上面にリング状のp側電極65を備えるRC型LEDである。
【0064】
この半導体発光素子3は、実施例1の半導体発光素子1と同様に動作試験及び高温高湿試験に掛けられた。半導体発光素子3では、発光層15からの光に対する反射率は、下側のn型DBR層13が99.9%と高いのに対し、上側のp型DBR層62が約90%と低い。このため、共振された光は、反射率が低い上側のp型DBR層62を介して、上側のp側電極65側に放射される。
【0065】
10mAのDCで駆動されると、半導体発光素子3の光出力は、半導体発光素子1に比較して約5〜10%の向上が見られる。また、パッケージ温度60℃、湿度90%で、10mAの連続通電試験では、半導体発光素子1と同様な結果が得られる。半導体発光素子1と比較して、上側のp型DBR層62の繰り返し数は少ないので、共振効果は低下するものの、p型DBR層62の上に、電流拡散のためのp型電流拡散層63を形成したことにより、電流拡散の効果は大きくなる。その結果、リング状のp側電極65から発光領域層17のpn接合部へ、より均一化された電流が供給され、また、内径を大きくしたリング状のp側電極65により、放射光の取り出しが妨げられる割合が減少したことによって、光出力の向上となる。
【0066】
その他に、実施例1の半導体発光素子1と同様な効果を有している。
【実施例4】
【0067】
本発明の実施例4に係る半導体発光素子について、図6を参照しながら説明する。図6は半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図である。実施例1とは、n型及びp型DBR層をn型及びp型電流拡散層に置き換えた点が異なっている。以下、実施例1と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略し、異なる構成部分について説明する。
【0068】
図6に示すように、半導体発光素子4は、実施例1の半導体発光素子1と多くの構成要素が同じであるが、主に、n型電流拡散層73及びp型電流拡散層82が異なっている。
【0069】
n型電流拡散層73は、n型のバッファ層12の上に、n型の不純物、例えば、シリコンが高濃度にドープされたn型のAl0.7Ga0.3Asからなる膜厚約4μmの単層である。
【0070】
p型電流拡散層82は、発光領域層17及び高抵抗領域20の上に、2回目の結晶成長で形成される。炭素が2〜4×1018cm−3の濃度にドープされたp型のAl0.7Ga0.3Asからなる膜厚約1μmの単層である。
【0071】
半導体発光素子4の製造方法は、n型電流拡散層73を1回目の結晶成長で形成し、p型電流拡散層82を2回目の結晶成長で形成する。実施例1のn型及びp型DBR層を置き換えて、それぞれ、これらの単層を結晶成長する。
【0072】
上述した半導体発光素子4は、n型のバッファ層12の上にn型電流拡散層73を有し、発光領域層17の側部及びn型電流拡散層73の上部にプロトン注入により形成された高抵抗領域20、発光領域層17及び高抵抗領域20の上に接して形成されたp型電流拡散層82、最上面に十字形の細線が内側に接続されたリング状のp側電極25を備えるLEDである。
【0073】
この半導体発光素子4は、実施例1の半導体発光素子1と同様に動作試験及び高温高湿試験に掛けられた。半導体発光素子4では、n型及びp型DBR層を備えていないので、半導体発光素子1のような意図的な反射は起こらず、発光した光は、発光領域層17の円柱に沿った上側から強く放射され、同時に、側面からも放射される。
【0074】
10mAのDCで駆動されると、半導体発光素子4の光出力は、半導体発光素子1に比較して約10%の向上が見られた。また、パッケージ温度60℃、湿度90%で、10mAの連続通電試験では、半導体発光素子1と同様な結果が得られている。半導体発光素子1と比較して、発光領域層17の上側に接するp型電流拡散層82を形成したことにより、電流拡散の効果は大きくなる。その結果、十字形の細線が内側に接続されたリング状のp側電極25から発光領域層17のpn接合部へ、より均一化された電流が供給されることによって、光出力の向上となる。ただし、共振構造をなくしたことによるフォトンリサイクリング効果がないため、出力の改善は約10%にとどまる。
【0075】
なお、発光領域層17とp側電極25との間にある、p型電流拡散層82は、厚い方がpn接合部へより均一化された電流が供給されることが分かっているが、p型電流拡散層82の厚さが約5μmを越えると、電流の経路が長くなり、抵抗が増加して、駆動電圧が増加し、高速動作が難しくなることが分かった。逆に、p型電流拡散層83は、薄くなると、抵抗が小さくなるものの、pn接合部へ均一化された電流が供給されにくくなり、約0.5μmを下回ると光出力は低下することも分かった。
【0076】
また、半導体発光素子4は、実施例1の半導体発光素子1と比較して、n型及びp型DBR層を不要とするので、構造が簡単で、生産歩留まりは高くなる。n型クラッド層14及び発光層15に、プロトンの濃度のピークが来るように、高抵抗領域20が形成された結果、接合の容量は低減化されているので、250Mbps程度の高速応答性が実現されている。実施例1の半導体発光素子1より伝送速度が小さくなるが、低価格用途に適用可能である。その他に、実施例1の半導体発光素子1と同様な効果を有している。
【0077】
次に、本発明の実施例4の変形例を図7を参照しながら説明する。図7は半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図である。実施例4とは、n型GaAs基板をn型GaP基板に置き換えた点が異なっている。以下、実施例4と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略し、異なる構成部分について説明する。
【0078】
図7に示すように、半導体発光素子5は、上述の半導体発光素子4と多くの構成要素が同じであるが、主に、n型GaP基板71及び接着層72が異なっている。
【0079】
n型GaP基板71は、n型GaAs基板を置き換えた位置に配置され、n型電流拡散層73とは、接着層72を介して、接合されている。
【0080】
半導体発光素子3の製造方法は、実施例4の半導体発光素子4とは大きく異なっている。図示を省略するが、1回目の結晶成長で、pn接合を逆の方向から、例えば、n型GaAs基板上に、バッファ層、n型InGaP調整層、p型クラッド層16、発光層15、n型クラッド層14、n型電流拡散層73、及びn型接着層72が順次成長される。次に、n型接着層72に接して、高温処理により、n型GaP基板71が接着される。次に、n型GaAs基板及びバッファ層がエッチング除去され、n型InGaP調整層が露出される。以降は、半導体発光素子4と同様に、n型InGaP調整層の上方からプロトンのイオン注入、n型InGaP調整層の除去後、次に、2回目の結晶成長が行われる。なお、表面を保護するための保護層及びエッチング停止層等は省略されている。
【0081】
上述した半導体発光素子5は、n型GaP基板71の上にn型接着層72を介してn型電流拡散層73を有し、発光領域層17の側部及びn型電流拡散層73の上部にプロトン注入により形成された高抵抗領域20、発光領域層17及び高抵抗領域20の上に接して形成されたp型電流拡散層82、最上面に十字形の細線が内側に接続されたリング状のp側電極25を備えるLEDである。
【0082】
この半導体発光素子5は、実施例4の半導体発光素子4と同様に動作試験及び高温高湿試験に掛けられた。半導体発光素子5は、半導体発光素子4と同様な効果を有している。その他に、発光波長に透明なn型GaP基板71を備えているので、発光した光は、発光領域層17の円柱形状に沿った上側からばかりでなく、下側のn型GaP基板71の側面からも放出され、実施例4の半導体発光素子4の約1.5倍の光出力を示す。
【0083】
本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々、変形して実施することができる。
【0084】
例えば、実施例では、半導体発光素子は、n型GaAs基板またはn型GaP基板の上に、n型の半導体層、発光層、次にp型の半導体層が形成されているが、逆に、p型GaAs基板またはp型GaP基板の上に、p型の半導体層、活性層、次にn型の半導体層が形成されていてもよい。
【0085】
また、実施例では、発光波長は約665nmの赤色のRC型LED、VCSEL、通常のLEDの例を説明したが、他の波長、例えば、近赤外で発光する同様な半導体発光素子、あるいは、赤色より短波長で発光する同様な半導体発光素子に適用することは可能である。
【0086】
また、実施例では、p型DBR層、p型電流拡散層、p型コンタクト層等に炭素をオートドーピングする例を説明したが、炭素を他の半導体材料ガス等から供給してもよいし、他の不純物、例えば、亜鉛等を使用することも可能である。
【0087】
また、実施例では、RC型LED及びVCSELの下側のn型DBR層を、Al0.5Ga0.5AsとAl0.95Ga0.05Asを交互に積層した繰り返し数40〜50ペアで構成する例を示したが、反射率が99.9%以上であれば、他の反射膜で置き換えることは可能である。
【0088】
本発明は、以下の付記に記載されるような構成が考えられる。
(付記1) 一定の波長の光を反射する第1の反射膜と、前記第1の反射膜の上に形成された前記波長の光を放射する発光層を有する発光領域層と、前記発光領域層の側部にイオン注入により形成された高抵抗領域と、前記発光領域層及び前記高抵抗領域の上に接して、前記高抵抗領域との界面近傍に拡散された前記注入元素を有し、前記波長の光を反射する第2の反射膜と、前記第2の反射膜の上、且つ、前記発光領域層の上方にコンタクト層を介して形成された第1の電極と、前記第1の電極とは反対側の前記第1の反射膜の下方に形成された第2の電極とを備えている半導体発光素子。
【0089】
(付記2) 前記発光領域層と前記第1の電極との間にある層は、キャリア濃度が1×1018cm−3以上2×1019cm−3以下である付記1に記載の半導体発光素子。
【0090】
(付記3) 前記波長は665nmである付記1に記載の半導体発光素子。
【0091】
(付記4) 前記高抵抗領域と前記第1の電極との間にある層は、ドーパントが炭素であるp型のGaAs及びAlGaAsの少なくとも1つである付記1に記載の半導体発光素子。
【0092】
(付記5) 前記第1の電極は、リング状をなしている付記1に記載の半導体発光素子。
【0093】
(付記6) 前記発光領域層に垂直な方向から見て、前記発光領域層の中心とリング状の前記第1の電極の中心とは、実質的に一致する付記4に記載の半導体発光素子。
【0094】
(付記7) 前記第1の電極は、前記リングの内側に、更に、十字状の電極が接続されている付記5に記載の半導体発光素子。
【0095】
(付記8) 前記第2の反射膜は、屈折率の高い反射膜と屈折率の低い反射膜の繰り返し数が5ペア以上50ペア以下である付記1に記載の半導体発光素子。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体発光素子の構造を模式的に示す図で、図1(a)は正面方向断面図、図1(b)は半導体発光素子を上方から見た平面図。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体発光素子の製造工程を、工程順に模式的に示す断面図。
【図3】本発明の実施例1に係る半導体発光素子の注入電流の流れを模式的に示す図。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図。
【図5】本発明の実施例3に係る半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の実施例4に係る半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図。
【図7】本発明の実施例4の変形例に係る半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図。
【図8】従来の半導体発光素子の構造を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0097】
1、2、3、4、5、101 半導体発光素子
11、111 n型GaAs基板
12、112 バッファ層
13、43、113 n型DBR層
14、114 n型クラッド層
15、115 発光層
16、116 p型クラッド層
17、117 発光領域層
18 n型InGaP調整層
19 n型GaAs保護層
20、120 高抵抗領域
22、52、62、112 p型DBR層
24、124 p型コンタクト層
25、55、65、125 p側電極
26 ボンディングパッド
29、129 n側電極
31 マスク層
35 電流
63、82 p型電流拡散層
71 n型GaP基板
72 n型接着層
73 n型電流拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の波長の光を反射する第1の反射膜と、
前記第1の反射膜の上に形成された前記波長の光を放射する発光層を有する発光領域層と、
前記発光領域層の側部にイオン注入により形成された高抵抗領域と、
前記発光領域層及び前記高抵抗領域の上に接して、前記高抵抗領域との界面近傍に拡散された前記注入元素を有し、前記波長の光を反射する第2の反射膜と、
前記第2の反射膜の上、且つ、前記発光領域層の上方にコンタクト層を介して形成された第1の電極と、
前記第1の電極とは反対側の前記第1の反射膜の下方に形成された第2の電極と、
を備えていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
一定の波長の光を反射する第1の反射膜と、
前記第1の反射膜の上に形成された前記波長の光を放射する発光層を有する発光領域層と、
前記発光領域層の上に接して、前記波長の光を反射する第2の反射膜と、
前記発光領域層及び第2の反射膜の側部にイオン注入により形成された高抵抗領域と、
前記第2の反射膜及び前記高抵抗領域の上に接して、前記高抵抗領域との界面近傍に拡散された前記注入元素を有する電流拡散層と、
前記電流拡散層の上、且つ、前記発光領域層の上方にコンタクト層を介して形成された第1の電極と、
前記第1の電極とは反対側の前記第1の反射膜の下方に形成された第2の電極と、
を備えていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
第1の電流拡散層と、
前記第1の電流拡散層の上に形成された一定の波長の光を放射する発光層を有する発光領域層と、
前記発光領域層の側部にイオン注入により形成された高抵抗領域と、
前記発光領域層及び前記高抵抗領域の上に接して、前記高抵抗領域との界面近傍に拡散された前記注入元素を有する第2の電流拡散層と、
前記第2の電流拡散層の上、且つ、前記発光領域層の上方にコンタクト層を介して形成された第1の電極と、
前記第1の電極とは反対側の前記第1の電流拡散層の下方に形成された第2の電極と、
を備えていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項4】
前記注入されるイオンはプロトンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記発光領域層と前記第1の電極との間にある層は、厚さが0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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