説明

半導体発光素子

【課題】 半導体層上に透明な導電性酸化物膜を有する半導体発光素子において、十分な透明性を維持し、光の取り出し効率を向上させながら、半導体層と導電性酸化物膜との間のショットキー障壁を低減し、コンタクト抵抗を最小限に留め、良好なオーミック接続を得ることができる電極及びこの電極を備えた半導体発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子であって、前記導電性酸化物膜が、前記半導体層との界面近傍において複数の空隙を有する半導体発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な導電性酸化物膜を電極として有する半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体発光素子として、基板上にp型半導体層およびn型半導体が積層され、p型およびn型の半導体層のそれぞれと電気的に接続する電極が形成された構造が知られている。また、p型の半導体層と電気的に接続する電極として、p型半導体層上全面に透光性材料による電極を形成し、その上に金属電極を形成する構造が知られている。
このような構成の半導体発光素子では、光の取り出し効率を向上させるため、p型半導体層上の全面電極として、透明な金属薄膜や、ITO、ZnO、In23、SnO2等の導電性酸化物膜が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、導電性酸化物膜、例えば、ITO自体は、n型の半導体特性を示すことから、必ずしも半導体層とオーミック性が良好ではなく、半導体層の種類、導電型、成膜方法等の種々の要因から、ショットキー障壁が形成され、コンタクト抵抗を増大させることがある。従って、半導体層と導電性酸化物膜との成膜条件や、種類、不純物濃度、導電型等が制限され、あるいは導電性酸化物膜の半導体層へのオーミック性の悪化により電力効率が低下し、光の取り出し効率が低下するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−196633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、半導体層上に透明な導電性酸化物膜を有する半導体発光素子において、十分な透明性を維持し、光の取り出し効率を向上させながら、半導体層と導電性酸化物膜との間のショットキー障壁を低減し、コンタクト抵抗を最小限に留め、良好なオーミック接続を得ることができる電極を備えた半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体発光素子は、半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を構成元素として含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子であって、前記導電性酸化物膜が、前記半導体層との界面近傍において複数の空隙を有することを特徴とする。
【0007】
この半導体発光素子は、導電性酸化物膜が、表面側よりも半導体層側において密度が低いか、表面側において空隙を有しないか、表面側が平坦な膜であることが好ましい。
また、本発明の別の半導体発光素子は、半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を構成元素として含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子であって、前記導電性酸化物膜が、前記半導体層側の表面に凹凸を有し、凸部において半導体層と接し、凹部において空隙を有し、前記半導体層側と反対の表面が平坦な膜であることを特徴とする。
【0008】
上述した半導体発光素子は、導電性酸化物膜が、構成元素とは異なる微量元素をさらに含む酸化物膜であることが好ましい。
また、微量元素は、スズ、亜鉛、ガリウム、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素とすることができる。
さらに、酸化物膜は、酸素以外の構成元素の20%以下で微量元素を含むか、半導体層との界面近傍における微量元素が、界面に対向する表面近傍の微量元素よりも濃度が高いか、微量元素の濃度が半導体層側表面から反対の表面にかけて単調減少してなることが好ましい。
特に、導電性酸化物膜がITO膜であることが好ましい。
また、導電性酸化物膜は、400〜600nmにおいて光の透過率が80%以上で、比抵抗が1×10-4Ωcm以下、膜厚が100nm以上であることが好ましい。
【0009】
さらに、複数の空隙が、半導体層側から導電性酸化物膜の全膜厚に対して10〜50%の範囲に存在することが好ましい。
また、半導体発光素子が、第1導電型半導体層、発光層、第2導電型半導体層がこの順に積層され、前記第1導電型及び第2導電型半導体層にそれぞれ電極が接続されて構成されてなり、導電性酸化物膜が少なくとも第2導電型半導体層上に形成されてなり、特に、第1導電型半導体層がn型半導体層であり、第2導電型半導体層がp型半導体層であることが好ましい。
【0010】
さらに、半導体発光素子が、第1導電型半導体層、発光層、第2導電型半導体層がこの順に積層され、前記第1導電型及び第2導電型半導体層にそれぞれ電極が接続されて構成されてなり、第1導電型半導体層がn型の窒化物半導体層であり、第2導電型半導体層がp型の窒化物半導体層であり、さらに導電性酸化物膜に接するp型の窒化物半導体層が、p型コンタクト層として膜厚250Å以下の膜厚で、Mg濃度1.5×1020/cm3以上でMgを含有することが好ましい。
【0011】
また、p型コンタクト層は、表面がRMS値3nm以下の面粗さであることが好ましい。
さらに、導電性酸化物膜の上に、さらに金属膜が形成されてなることが好ましい。
また、金属膜が、W、Rh、Ag、Pt、Pd、Al、Tiの単層膜又は積層膜又は合金により形成されてなることが好ましい。
さらに、半導体層が窒化物半導体層であることが好ましい。
【0012】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子の製造方法であって、(1)半導体層側から表面にかけて空隙を有する導電性酸化物膜を形成する第1の工程と、得られた導電性酸化物膜の上に、前記第1の工程の空隙より少ないか、または空隙を有しない導電性酸化物を形成する第2の工程とを備えるか、(2)導電性酸化物膜を形成する第1工程と、前記導電性酸化物膜を加熱して、導電性酸化物膜の半導体層側及びその近傍に空隙を存在させ、表面側を平坦化する第2工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
この半導体発光素子の製造方法では、導電性酸化物膜の加熱により、該導電性酸化物膜の結晶化を促進させることが好ましい。
また、導電性酸化物膜は、構成元素とは異なる微量元素をさらに含む酸化物膜であるか、ITO膜であることが好ましい。
さらに、微量元素は、スズ、亜鉛、ガリウム、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素であることが好ましい。
また、空隙が、半導体層側から導電性酸化物膜の全膜厚に対して10〜50%の範囲に存在することが好ましい。
さらに、半導体層が、窒化物半導体、特に、p型の窒化物半導体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体発光素子によれば、導電性酸化物膜が、半導体層との界面近傍において複数の空隙を有する、つまり、表面側よりも半導体層側において密度が低いため、導電性酸化物膜と半導体層との接触面積が減少するが、導電性酸化物膜自体の結晶性は良好であるために、ショットキー障壁を低減させ、オーミック性を向上させることができる。従って、電力効率を向上させることができる。しかも、特に、導電性酸化物膜の表面側においては、空隙がなく、密度の高い結晶性の良好な領域が存在するために、横方向に電流を均一に広げることができるとともに、光の散乱を防止し、可視光に対する透過率を良好とすることができ、透明電極としての機能を十分に発揮させることができる。
【0015】
また、導電性酸化物膜がITO膜である場合には、上述した効果をより確実に発揮させることができる。
さらに、導電性酸化物膜の400〜600nmにおける光の透過率が80%以上である場合には、半導体発光素子から発生した所望の光を効率よく取り出すことができ、有利である。
また、導電性酸化物膜の比抵抗が1×10-4Ωcm以下である場合には、導電性酸化物膜に投入された電流を効率よく半導体層に拡散させることができ、より電力効率が向上するとともに、これに伴って、光の取り出し効率も良好となる。
複数の空隙が、半導体層側から導電性酸化物膜の全膜厚に対して10〜50%の範囲に存在する場合には、表面側における導電性酸化物膜を通る電流を妨げることなく、より抵抗を低減することができる。
【0016】
半導体発光素子が、第1導電型半導体層、発光層、第2導電型半導体層がこの順に積層され、前記第1導電型及び第2導電型半導体層にそれぞれ電極が接続されて構成されてなり、導電性酸化物膜が少なくとも第2導電型半導体層上に形成されてなる場合には、オーミック性に優れた電極を得ることができるため、電力効率の低下を防止することができ、低消費電力で明るい発光素子を提供することが可能となる。しかも、オーミック性を確保しながら、透光性を良好に維持することができるため、光の取り出し効率を良好にすることができ、高品質、高性能の発光素子を得ることができる。
【0017】
導電性酸化物膜の上に、さらに金属膜が形成され、特に金属膜が、W、Rh、Ag、Pt、Pd、Alの単層膜又は積層膜により形成される場合には、導電性酸化物膜と金属膜との間に形成されるショットキー障壁を低減させることができるとともに、半田による接着、ワイヤボンディング等が施されるなど、金属膜の形態にかかわらず、金属膜と良好な接着性を確保することができる。なかでもW、Rh、Ptを金属膜として用いる場合には、導電性酸化物膜、特にITO膜との密着性がきわめて良好となり、電気的な接続の信頼性を向上させることができる。
【0018】
また、導電性酸化物膜の組成が傾斜していることにより、半導体層との接触抵抗を小さくすることができる。
さらに、p型コンタクト層が、膜厚250Å以下の膜厚で、Mg濃度1.5×1020/cm3以上に設定されてなることにより、正電極に対してオーミック性に優れ、接触抵抗を低く抑えることができるコンタクト層を備えた半導体発光素子を得ることができる。また、コンタクト層の成膜時間、熱処理時間等を短縮させることができ、製造工程が簡略化し、プロセスの再現性を向上させ、安価で高品質の半導体発光素子を得ることができる。
【0019】
特に、p型コンタクト層は、表面がRMS値3nm以下の面粗さに設定されている場合には、正電極との密着性を向上させることがで、p型コンタクト層と正電極とのさらなるオーミック性の向上、接触抵抗の低減を図ることができる。
また、本発明の半導体発光素子の製造方法では、導電性酸化物膜内において、確実に空隙を導入することができ、簡便な製造方法によって、上記の効果を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における実施例1の半導体発光素子の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明における実施例1の半導体発光素子における導電性酸化物膜の断面を示す図である。
【図3】実施例1に対する比較例を示す導電性酸化物膜の断面を示す図である。
【図4】本発明における実施例8の半導体発光素子を用いた発光装置を示す正面図である。
【図5】本発明における実施例8の半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図である。
【図6】本発明における実施例8の半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図である。
【図7】本発明における実施例8の半導体発光素子の電極形状を説明するための平面図である。
【図8】本発明における実施例8の半導体発光素子の別の電極形状を説明するための平面図である。
【図9】本発明における実施例11の半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図である。
【図10】図9の半導体発光素子の部分断面図である。
【図11】本発明における実施例12の半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図である。
【図12】本発明における実施例13の半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図である。
【図13】図12の半導体発光素子のX−X’線断面図である。
【図14】本発明における半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図及びA−A’線断面図である。
【図15】本発明における実施例14の半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図である。
【図16】本発明における実施例15の半導体発光素子のさらに別の電極形状を説明するための平面図である。
【図17】本発明における実施例16の半導体発光素子を用いた発光装置を示す断面図である。
【図18】本発明における実施例17の半導体発光素子を用いた発光装置を示す断面斜視図である。
【図19】本発明における実施例18の半導体発光素子を用いた別の発光装置を示す断面図である。
【図20】本発明における実施例19の半導体発光素子を用いたさらに別の発光装置を示す断面図である。
【図21】本発明における実施例20の半導体発光素子を用いた別の発光装置を示す断面図及び部分拡大図である。
【図22】図21の発光装置に用いたセラミックパッケージの平面図である。
【図23】本発明における実施例21の半導体発光素子を用いた別の発光装置を示す断面図及び部分拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の半導体発光素子は、上述したように、半導体層上に導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される。
【0022】
半導体層上に形成される導電性酸化物膜は、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)及びマグネシウム(Mg)からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む膜である。具体的にはZnO、In23、SnO2、ITO(InとSnとの複合酸化物)、MgOが挙げられる。なかでも、ITO膜が好ましい。
この導電性酸化物膜は、この膜を構成する酸素以外の元素(元素C)のほかに、この構成元素(元素C)とは異なる元素(元素D)が、微量で含有されていてもよい。ここで微量元素Dとは、例えば、スズ、亜鉛、ガリウム、アルミニウムから選択することができ、1種でもよいし、2種以上でもよい。微量元素Dは、導電性酸化物膜の酸素以外の構成元素(元素C)に対して20%以下であることが好ましい。また、この微量元素Dは、半導体層側とその表面側とで濃度が異なっていることが好ましく、半導体層側のほうが表面側に比較して濃度が高いことがより好ましい。さらに、導電性酸化物膜において、微量元素Dの濃度が半導体層側から表面にかけて単調減少していることが好ましい。これにより、半導体層とのオーミック性をより向上させることができるとともに、結晶性にも優れた導電性酸化物膜となる。また、構成元素は、基本的に酸化物を構成する元素、特に、酸素以外の元素を意味し、微量元素を含む場合、酸素以外の元素のおよそ80%以上100%より少ない元素のことをいう。
【0023】
この導電性酸化物膜は、例えば、図2に示すように、半導体層との界面近傍において複数の空隙を有している。言い換えると、半導体層との界面近傍においてのみ、多孔質の状態となっており、導電性酸化物膜の表面側に比較して密度が低い。空隙は、例えば、直径20〜200nm程度が挙げられる。また、密度としては、導電性酸化物膜の表面側の90〜30%程度が挙げられる。このような導電性酸化物膜の状態は、例えば、断面を透過電子顕微鏡法(TEM)により観察する方法、走査型電子顕微鏡法(SEM)により観察する方法、電子回折パターンを測定する方法、超薄膜評価装置で観察する方法等によって測定することができる。
【0024】
なお、導電性酸化物膜の表面側は結晶性が良好で、透明な膜として形成されている。特に表面側は平坦な膜であることが好ましく、図3に示すような全体に空隙を有する導電性酸化物膜に対し、図2に示すような表面側が平坦な導電性酸化物膜の方が、導電性酸化物膜全体に見て、導電性がよく、透光性にも優れている。また、導電性酸化物膜の半導体側の空隙を有する領域においては、部分的にアモルファスな領域を有していてもよいが、アモルファスな状態ではなく、透明な膜又は略透明な膜として形成されていることが好ましい。
【0025】
この半導体層との界面近傍における空隙を有する領域は、半導体層との界面から、導電性酸化物膜の全膜厚の10〜50%の範囲に存在することが適当である。このように半導体層側にのみ空隙が存在することにより、半導体層とのオーミック性を確保しながら、透光性を良好にすることができる。なお、導電性酸化物膜の全膜厚は、特に限定されるものではないが、半導体層側界面近傍での適当な空隙の生成と、比較的低い抵抗と、導電性酸化物膜での光吸収ロス、さらに光取り出し効率を考慮して、例えば、100〜1000nm程度が挙げられる。また、空隙を有する領域の膜厚は、10〜500nm程度が挙げられる。特に、熱処理する場合には、導電性酸化物膜の膜厚が、100nmより小さいと、半導体層側界面近傍の空隙が得られない傾向にある。また導電性酸化物膜を低抵抗な膜として機能するには、1000nm程度あれば十分であり、1000nmより大きいと、導電性酸化物膜での光吸収ロスが大きくなり、光取り出し効率が低下してしまうので、1000nm以下とする。
【0026】
また、導電性酸化物膜は、可視光のみならず、例えば、上述した窒化ガリウム系化合物半導体による活性層から発生する光、つまり波長360nm〜650nm付近、好ましくは380nm〜560nm、400nm〜600nmの波長の光を吸収することなく、効率よく、例えば、透過率が90%以上、あるいは85%以上、80%以上で透過させることができるものであることが好ましい。これにより、意図する波長の半導体発光素子の電極として利用することができる。さらに、導電性酸化物膜は、例えば、比抵抗が1×10-4Ωcm以下、好ましくは1×10-4〜1×10-6Ωcm程度であることが好ましい。これにより、電極として有効に利用することができる。
【0027】
導電性酸化物膜は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、スパッタ法、反応性スパッタ法、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法又はこれらの方法と熱処理の組み合わせ等、種々の方法を利用することができる。
【0028】
具体的には、スパッタ法により導電性酸化物膜、例えば、ITO膜を成膜する際に、スパッタガスとして酸素分圧の小さい又はゼロのガスから大きいガスに切り替えるか、徐々に酸素分圧を増加させて用いる方法、ITO成膜用のターゲットのほかに、In量が多いターゲットまたは酸素量が少ないターゲットを用い、途中でIn量が多いターゲットまたは酸素量が少ないターゲットに切り替える方法、スパッタ装置の投入電力を徐々に又は急激に増大させて成膜する方法等が挙げられる。また、真空蒸着により導電性酸化物膜、例えば、ITO膜を成膜する際に、半導体層の温度を急激又は徐々に上昇または低下させる方法、成膜レートを急激に低下させる方法、イオン銃を用いて酸素イオンを成膜途中から照射する方法等が挙げられる。
【0029】
さらに、イオンプレーティング法により導電性酸化物膜、例えば、ITO膜を成膜する際に、成膜途中から、酸素ガスをプラズマ化させてこの酸素プラズマをITO膜中に取り込ませて成膜する方法、ITOの微粒子を溶媒に溶解又は分散、懸濁させてスプレー法、スピンコート法、ディップ法により成膜する際に、ITOを含有する溶液等のIn含有量又は酸素含有量を変化させた複数種類の溶液等を用いるか、乾燥又は焼成時の雰囲気、温度等を制御する方法、CVD法によりITO膜を形成する際に、酸素ガス又は原料酸素含有ガスの流量を制御する方法が挙げられる。
【0030】
加えて、導電性酸化物膜、例えば、ITO膜を形成した後、例えば、還元性ガス(具体的には、一酸化炭素、水素、アルゴン等又はこれら2種以上の混合ガス)雰囲気下、200〜650℃程度、導電性酸化物膜の膜厚に応じて所定時間アニール処理する方法等が挙げられる。
さらに、導電性酸化物膜を空隙を有した(密度が低い)状態で成膜し、その上に、その膜よりも空隙が少ない又は空隙がない状態(密度が高い)で導電性酸化物膜を成膜/積層する方法でもよい。
また、導電性酸化物膜、例えば、ITO膜を途中まで形成した後、熱処理し、引き続き成膜し、熱処理するなどの多段階での熱処理を利用してもよい。熱処理の方法としては、例えばランプアニール処理、加熱炉によるアニール処理などがある。またITO膜を成膜後の処理としては電子線照射やレーザアブレーションを利用してもよい。さらに、これらの方法を任意に組み合わせてもよい。
【0031】
このような熱処理を行うことにより、膜厚方向の全てにわたって空隙を有するか、空隙を有さないか、あるいは半導体層側において空隙を有し、表面側には空隙を有さず、平坦化された膜とするがその程度が十分でない膜を形成した場合であっても、確実に半導体側において空隙を存在させ、表面側を平坦化することができる。しかも、膜全体の結晶化を促進させて、透明性、導電性を向上させることができる。た、微量元素Dを有する導電性酸化物膜では、特にアニール処理をすることにより、空隙が形成されると共に、空隙を有する半導体層側が、空隙を有しない表面側と比べて微量元素Dが多くなる傾向にある。これはアニール処理により、微量元素Dが移動しているものと考えられ、空隙を有する半導体層側に微量元素Dが多く存在すると、オーミック性が良好になり、またVfも低下するので好都合である。
【0032】
なお、上述した導電性酸化物膜は、半導体発光素子において、少なくともp型半導体層上に略全面を覆う全面電極として形成されていることが好ましい。通常、p型半導体層上へ導電性酸化物膜はオーミック性を得にくいが、上述したような導電性酸化物膜とすることにより、良好なオーミック性を得ることができる。また、導電性酸化物膜は、n型半導体層に形成されていてもよく、さらにp型半導体層及びn型半導体層の双方上に形成されていてもよい。
【0033】
導電性酸化物膜上に形成される金属膜は、その種類及び形態は特に限定されるものではなく、通常、電極として用いられるものであればどのようなものでも使用することができる。例えば、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ランタン(La)、銅(Cu)、銀(Ag)、イットリウム(Y)等の金属、合金の単層膜又は積層膜等が挙げられる。なかでも、抵抗が低いものが好ましく、具体的には、W、Rh、Ag、Pt、Pd、Al、Ti等の単層膜又は積層膜又は合金が挙げられる。さらに、導電性酸化物膜、特に、ITO膜との密着性が良好なもの、具体的には、W、Rh、Ptの単層膜又は積層膜が好ましい。また、この金属膜は、半田により接着され又はワイヤボンディングされたパッド電極等として機能し得るものであることが好ましい。
【0034】
なお、導電性酸化物膜が、後述するようなp型半導体層及びn型半導体層の双方上に形成されている場合の金属膜は、その種類、積層構造、膜厚等が異なっていてもよいし、同じでもよい。双方とも同じ金属膜が形成されていれば、製造工程が簡略化され、結果的に安価で信頼性の高い半導体発光素子が得られる。
【0035】
金属膜は、例えば、半導体層側から、Rh、Pt、Auのそれぞれをスパッタリングにより順に積層させたRh/Pt/Au電極(その膜厚として、例えばそれぞれ100nm/200nm/500nm);Pt、Auのそれぞれをスパッタリングにより順に積層させたPt/Au電極(その膜厚として、例えばそれぞれ20nm/700nm)等が挙げられる。金属膜の最上層をAuとすることによって、Auを主成分とする導電性ワイヤ等と良好な接続を確保することができる。また、RhとAuの間にPtを積層させることによって、Au又はRhの拡散を防止することができ、電極として信頼性の高い電気的な接続を得ることができる。また、Rhは、光反射性およびバリア性に優れ、光取り出し効率が向上するため好適に用いることができる。なかでも、Pt/Au(フェイスアップの場合)、Rh/Au(フェイスダウンの場合)の積層膜が好ましい。
【0036】
本発明の半導体発光素子における半導体層は、特に限定されるものではなく、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、III−V族、II-VI族、VI-VI族等の化合物半導体等が挙げられる。特に、窒化物半導体、なかでも、InXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化ガリウム系化合物半導体が好適に用いられる。半導体層は、単層構造でもよいが、MIS接合、PIN接合又はPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造又はダブルへテロ構造であってもよく、超格子構造や、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造であってもよい。また、n型、p型のいずれかの不純物がドーピングされていてもよい。この半導体層は、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)等の公知の技術により形成することができる。半導体層の膜厚は特に限定されるものではなく、種々の膜厚のものを適用することができる。
【0037】
通常、このような半導体層により、半導体発光素子、例えば、LED、レーザーダイオード等の当該分野で公知の素子が構成されている。具体的には、第1導電型半導体層、発光層、第2導電型半導体層がこの順に積層され、第1導電型及び第2導電型半導体層にそれぞれ電極が接続されて構成される。なお、第1導電型とはn型又はp型、第2導電型とはp型又はn型を意味する。
【0038】
この種の半導体発光素子を形成する基板としては、サファイア等の絶縁性基板、窒化物半導体等の導電性基板を用いることができる。なかでも、絶縁性基板が好ましい。なお、絶縁性基板を最終的に取り除かない場合、通常、p電極およびn電極はいずれも半導体層上の同一面側に形成されることになり、フェイスアップ実装(すなわち半導体層側を主光取出し面とする)、フリップチップ実装(フェイスダウン実装:半導体素子とサブマウント部材のような支持基板とを電気的および機械的に接続する実装方法であって、同一面側に正負両電極が設けられている半導体発光素子の電極形成面を支持基板の導電パターンに対向させ、導電性部材を介して接合する実装方法、すなわち基板側を主光取出し面)のいずれでもよい。この場合、p電極及びn電極の上には、外部電極等と接続させるためのメタライズ層(バンプ:Ag、Au、Sn、In、Bi、Cu、Zn等)がそれぞれ形成され、このメタライズ層がサブマウント上に設けられた正負一対の外部電極とそれぞれ接続され、さらにサブマウントに対してワイアなどが配線される。また、最終的に基板を除去して、フェイスアップ実装又はフリップチップ実装のいずれに用いてもよい。なお、基板としては、サファイアに限定されず、例えば、スピネル、SiC、GaN、GaAs等、公知の基板を用いることができる。また、基板としてSiC、GaN、GaAs等の導電性基板を用いることによりp電極及びn電極を対向して配置してもよい。
【0039】
なお、本発明の半導体発光素子を構成する半導体層としては、次の(1)〜(5)に示すような積層構造が挙げられる。
【0040】
(1)膜厚が200ÅのGaNよりなるバッファ層、膜厚が4μmのSiドープn型GaNよりなるn型コンタクト層、膜厚が30ÅのアンドープIn0.2Ga0.8Nよりなる単一量子井戸構造の発光層、膜厚が0.2μmのMgドープp型Al0.1Ga0.9Nよりなるp型クラッド層、膜厚が0.5μmのMgドープp型GaNよりなるp型コンタクト層。
【0041】
(2)膜厚が約100ÅのAlGaNからなるバッファ層、膜厚1μmのアンドープGaN層、膜厚5μmのSiを4.5×1018/cm3含むGaNからなるn側コンタクト層、3000ÅのアンドープGaNからなる下層と、300ÅのSiを4.5×1018/cm3含むGaNからなる中間層と、50ÅのアンドープGaNからなる上層との3層からなるn側第1多層膜層(総膜厚:3350Å)、アンドープGaNからなる窒化物半導体層を40ÅとアンドープIn0.1Ga0.9Nからなる窒化物半導体層を20Åとが繰り返し交互に10層ずつ積層されてさらにアンドープGaNからなる窒化物半導体層を40Åの膜厚で形成された超格子構造のn側第2多層膜層(総膜厚:640Å)、膜厚が250ÅのアンドープGaNからなる障壁層と膜厚が30ÅのIn0.3Ga0.7Nからなる井戸層とが繰り返し交互に6層ずつ積層され、さらに膜厚が250ÅのアンドープGaNからなる障壁が形成された多重量子井戸構造の発光層(総膜厚:1930Å)、Mgを5×1019/cm3含むAl0.15Ga0.85Nからなる窒化物半導体層を40ÅとMgを5×1019/cm3含むIn0.03Ga0.97Nからなる窒化物半導体層を25Åとが繰り返し5層ずつ交互に積層されて、さらにMgを5×1019/cm3含むAl0.15Ga0.85Nからなる窒化物半導体層を40Åの膜厚で形成された超格子構造のp側多層膜層(総膜厚:365Å)、膜厚が1200ÅのMgを1×1020/cm3含むGaNからなるp側コンタクト層。
【0042】
(3)膜厚が約100オングストロームのAlGaNからなるバッファ層、膜厚1μmのアンドープGaN層、膜厚5μmのSiを4.5×1018/cm3含むGaNからなるn側コンタクト層、3000ÅのアンドープGaNからなる下層と、300ÅのSiを4.5×1018/cm3含むGaNからなる中間層と、50ÅのアンドープGaNからなる上層との3層からなるn側第1多層膜層(総膜厚3350Å)、アンドープGaNからなる窒化物半導体層を40ÅとアンドープIn0.1Ga0.9Nからなる窒化物半導体層を20Åとが繰り返し交互に10層ずつ積層されてさらにアンドープGaNからなる窒化物半導体層を40Åの膜厚で形成された超格子構造のn側第2多層膜層(総膜厚)640Å)、最初に膜厚が250ÅのアンドープGaNからなる障壁層と続いて膜厚が30ÅのIn0.3Ga0.7Nからなる井戸層と膜厚が100ÅのIn0.02Ga0.98Nからなる第1の障壁層と膜厚が150ÅのアンドープGaNからなる第2の障壁層が繰り返し交互に6層ずつ積層されて形成された多重量子井戸構造の活性層(総膜厚1930Å)(繰り返し交互に積層する層は3層〜6層の範囲が好ましい)、Mgを5×1019/cm3含むAl0.15Ga0.85Nからなる窒化物半導体層を40ÅとMgを5×1019/cm3含むIn0.03Ga0.97Nからなる窒化物半導体層を25Åとが繰り返し5層ずつ交互に積層されてさらにMgを5×1019/cm3含むAl0.15Ga0.85Nからなる窒化物半導体層を40Åの膜厚で形成された超格子構造のp側多層膜層(総膜厚365Å)、膜厚が1200ÅのMgを1×1020/cm3含むGaNからなるp側コンタクト層。
【0043】
さらに、n側に設ける3000ÅのアンドープGaNからなる下層を、下から1500ÅのアンドープGaNからなる第1の層と100ÅのSiを5×1017/cm3含むGaNからなる第2の層と1500ÅのアンドープGaNからなる第3の層とからなる3層構造の下層にすることで、発光素子の駆動時間経過に伴うVfの変動を抑えることが可能となる。
【0044】
(4)バッファ層、アンドープGaN層、Siを6.0×1018/cm3含むGaNからなるn側コンタクト層、アンドープGaN層(以上が総膜厚6nmのn型窒化物半導体層)、Siを2.0×1018/cm3含むGaN障壁層とInGaN井戸層とを繰り返し5層ずつ交互に積層された多重量子井戸の活性層(総膜厚:1000Å)、膜厚が1300ÅのMgを5.0×1018/cm3含むGaNからなるp型窒化物半導体層、さらに透光性導電層とp型窒化物半導体層との間にInGaN層を50Åの膜厚で有してもよい。このように30〜100Å、好ましい膜厚として50ÅのInGaN層を設ける場合、この層が正電極と接することとなり、p側コンタクト層となりうる。
【0045】
(5)バッファ層、アンドープGaN層、Siを1.3×1019/cm3含むGaNからなるn側コンタクト層、アンドープGaN層(以上が総膜厚6nmのn型窒化物半導体層)、Siを3.0×1018/cm3含むGaN障壁層とInGaN井戸層とを繰り返し7層ずつ交互に積層された多重量子井戸の活性層(総膜厚:800Å)、膜厚が1300ÅのMgを2.5×1020/cm3含むGaNからなるp型窒化物半導体層、さらに透光性導電層とp型窒化物半導体層との間にInGaN層を50Åの膜厚で有してもよい。このように30〜100Å、好ましい膜厚として50ÅのInGaN層を設ける場合、この層が正電極と接することとなり、p側コンタクト層となりうる。
【0046】
特に、導電性酸化物膜に接する窒化物半導体層は、p側コンタクト層として、窒化物半導体層と電気的に接続される正電極とのコンタクトを良好とするために用いられる。この層は、通常、例えば、p型の窒化物半導体層として、p型コンタクト層とすることが好ましく、p型半導体層で例示した材料の中から適宜選択して、p型半導体層よりも低い抵抗の層とすることが好ましい。なお、p側コンタクト層は、クラッド層やその他の層としての機能を有していてもよい。p側コンタクト層には、p型の不純物がドーピングされていることが好ましい。ドーパントとしては、特に限定されるものではなく、p型コンタクト層の材料によって、p型の導電性を示す元素を用いることが適当である。例えば、p側コンタクト層が窒化物半導体、つまり、GaN、AlN、InN又はこれらの混晶(例えば、InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)等である場合には、p型不純物としては、例えば、Mg、Zn、Cd、Be、Ca、Ba等が挙げられ、なかでも、Mgが好ましい。ドーピング濃度は、例えば、1.5×1020cm-3程度以上であり、好ましくは、1.5×1020〜1×1022cm-3程度が挙げられる。不純物のドーピングは、成膜と同時に行ってもよいし、成膜後、気相拡散、固相拡散、イオン注入等によって行ってもよい。
【0047】
p型コンタクト層の膜厚は、250Å以下であり、好ましくは、50〜250Å程度が挙げられる。また、p型コンタクト層は、その表面の面粗さがRMS(root mean squre;自乗平均粗さ)値3nm程度以下、さらに2nm程度以下に設定されていることが好ましい。p型コンタクト層の表面粗さを調整する方法としては、p型コンタクト層の表面を研磨する方法、RIE法によりエッチングする方法などが挙げられる。なお、RMSは、例えば、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製:SPI3800N及びSPA300)を用いて測定することができる。
【0048】
また、本発明の半導体発光素子は、発光素子から光の一部をそれとは異なる波長の光に変換する光変換部材を有していてもよい。これにより、発光素子の光を変換した発光装置を得ることができ、発光素子の発光と変換光との混色光などにより、白色系、電球色などの発光装置を得ることができる。本発明の導電性酸化物膜と光変換部材とを備えた半導体発光素子または発光装置とすることで、導電性酸化物膜の空隙により光が散乱される傾向にあることから、光変換部材の量を従来に比べて減らしても、白色や電球色など所望の発光を得ることが可能となる。
【0049】
光変換部材としては、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含むアルミニウム・ガーネット系蛍光体、さらに希土類元素から選択された少なくとも一つの元素を含有するアルミニウム・ガーネット系蛍光体等が挙げられる。これにより、発光素子を高出力で高発熱での使用においても、温度特性に優れ、耐久性にも優れた発光装置を得ることができる。
また、光変換部材は、(Re1-xx3(Al1-yGay512(0<x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,La,Lu,Tb,Smからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、RはCe又はCeとPrである)で表される蛍光体であってもよい。これにより上記と同様に、高出力の発光素子において、温度特性、耐久性に優れた素子とでき、特に、活性層がInGaNである場合に、温度特性において黒体放射に沿った変化となり、白色系発光において有利となる。
【0050】
さらに、光変換部材は、Nを含み、かつBe、Mg、Ca、Sr、Ba及びZnから選択された少なくとも一つの元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr及びHfから選択された少なくとも一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で賦活された窒化物系蛍光体であってもよい。具体的には、一般式LXSiY(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLXSiYZ(2/3X+4/3Y-2/3Z):Eu(Lは、Sr若しくはCa、又は、Sr及びCaのいずれか。)が挙げられる。これにより上記蛍光体と同様に、高出力の発光素子において、優れた温度特性、耐久性を得ることができる。なかでも、酸化窒化珪素化合物が好ましい。また、上述したアルミニウム・ガーネット系蛍光体と組み合わせることで、両者の温度特性が相互に作用して、混合色の温度変化が小さい発光装置とできる。
【0051】
また、本発明の半導体発光素子においては、金属膜はパッド電極として用いるだけでなく、さらにパッド電極から突出する補助電極を設けることが好ましい。これにより、活性層全体を効率よく発光させることができ、特に本発明の半導体発光素子をフェイスアップ実装で設けるときに効果的である。なお、このパッド電極の構成については、以下の実施例において詳細に説明する。
【0052】
さらに、本発明の半導体発光素子においては、導電性酸化物膜及び/又は金属膜は、種々の形状、例えば、円形;四角形等の多角形;くし型;ストライプ型等の形状で形成してもよい。特に、導電性酸化物膜及び/又は金属膜が半導体層の全面にわたって形成されている場合には、半導体層、特に発光層の面積が比較的大きな半導体発光素子を得ることができ、発光素子全面にわたって均一な発光を得ることができる。導電性酸化物膜及び/又は金属膜の形状は、以下の実施例においてその詳細を説明する。
【0053】
また、本発明の半導体発光素子は、上述したように、フェイスアップ実装、フェイスダウン実装等を実現する種々のパッケージを適用することができる。つまり、半導体層と反対側の表面に空隙がなく、結晶性がよい導電性酸化物膜を利用することにより、ワイヤボンディングのための半田(フェイスアップ)やバンプ(フェイスダウン)による電気的な接続の際に、導電性酸化物膜及び/又は金属膜にダメージを低減させ、密着性も良好であることから、半導体発光装置としての寿命を向上させることができる。つまり、半導体層と反対側の表面が、複数の空隙を有する半導体層側の導電性酸化物膜に対して、密度の高い導電性酸化物膜であることで、半導体発光装置としての寿命を向上させることができる。その結果、オーミック性の良好な本発明の導電性酸化物膜において、導電性酸化物膜と半導体層とのオーミック性を良好な状態で実装することができ、さらに導電性酸化物膜の良好な透光性によって光取り出し効率を向上させた半導体発光素子を実装した発光装置を得ることができる。導電性酸化物膜及び/又は金属膜の形状は、以下の実施例においてその詳細を説明する。
【0054】
以下に、本発明の半導体発光素子を図面に基づいて詳細に説明する。
実施例1
この実施の形態の半導体発光素子を図1に示す。
この半導体発光素子10は、サファイア基板1の上に、Al0.1Ga0.9Nよりなるバッファ層(図示せず)、ノンドープGaN層(図示せず)が積層され、その上に、n型半導体層2として、SiドープGaNよりなるn型コンタクト層、GaN層(40Å)とInGaN層(20Å)とを交互に10回積層させた超格子のn型クラッド層が積層され、さらにその上に、GaN層(250Å)とInGaN層(30Å)とが交互に3〜6回積層された多重量子井戸構造の活性層3、p型半導体層4として、MgドープAl0.1Ga0.9N層(40Å)とMgドープInGaN層(20Å)とが交互に10回積層された超格子のp型クラッド層、MgドープGaNよりなるp型コンタクト層がこの順に積層されて構成される。
【0055】
n型半導体層2の一部の領域においては、その上に積層された活性層3及びp型半導体層4が除去され、さらにn型半導体層2自体の厚さ方向の一部が除去されて露出しており、その露出したn型半導体層2上にn電極7が形成されている。
【0056】
p型半導体層3上には、ほぼ全面に、ITOからなる導電性酸化物膜5が形成されており、この導電性酸化物膜5の一部上にパッド電極6が形成されている。なお、導電性酸化物膜5は、半導体層側において、膜中に複数の空隙が形成されている。
【0057】
このような半導体発光素子は、以下の製造方法により形成することができる。
<半導体層の形成>
2インチφのサファイア基板1の上に、MOVPE反応装置を用い、Al0.1Ga0.9Nよりなるバッファ層を100Å、ノンドープGaN層を1.5μm、n型半導体層2として、SiドープGaNよりなるn型コンタクト層を2.165μm、GaN層(40Å)とInGaN層(20Å)とを交互に10回積層させた超格子のn型クラッド層5を640Å、GaN層(250Å)とInGaN層(30Å)とを交互に3〜6回積層させた多重量子井戸構造の活性層3、p型半導体層4として、MgドープAl0.1Ga0.9N層(40Å)とMgドープInGaN層(20Å)とを交互に10回積層させた超格子のp型クラッド層を0.2μm、MgドープGaNよりなるp型コンタクト層を0.5μmの膜厚でこの順に成長させ、ウェハを作製した。
【0058】
<エッチング>
得られたウェハを反応容器内で、窒素雰囲気中、600℃にてアニールし、p型クラッド層及びp型コンタクト層をさらに低抵抗化した。
アニール後、ウェハを反応容器から取り出し、最上層のp型コンタクト層の表面に所定の形状のマスクを形成し、エッチング装置でマスクの上からエッチングし、n型コンタクト層の一部を露出させた。
【0059】
<ITO膜の形成>
マスクを除去した後、スパッタ装置にウェハを設置し、In23とSnO2との焼結体からなる酸化物ターゲットをスパッタ装置内に設置した。スパッタ装置によって、酸素ガス雰囲気中、スパッタガスとしてアルゴンガスと酸素との混合ガス(20:1)で、例えば、RFパワー10W/cm2で20分間スパッタリングし、引き続き、RFパワーを2W/cm2に変更して20分間スパッタリングすることにより、ウェハのp型コンタクト層8のほぼ全面に、ITOよりなる導電性酸化物膜5を5000Åの膜厚で形成した。
得られた導電性酸化物膜5は良好な透光性を有し、サファイア基板1まで透けて観測できた。
【0060】
<パッド電極の形成>
導電性酸化物膜5上に、レジストにより所定のパターンを有するマスクを形成し、その上にW層、Pt層およびAu層をこの順に積層し、リフトオフ法により、ボンディング用のパッド電極6を総膜厚1μmで形成した。
【0061】
その後、n型コンタクト層の上に、Rh/Pt/Auからなるn電極7を7000Åの膜厚で形成した。
次いで、アニール装置にて400〜600℃程度で熱処理を施した。
得られたウェハを所定の箇所で分割することにより、半導体発光素子10を得た。
【0062】
以上のようにして形成した半導体発光素子の断面をSTEM(日本電子製:JEM―2010F)により観察した。その際の断面の状態を図2に示す。
図2から、ITO膜は、半導体層側の界面近傍においてのみ、20〜200nm程度の複数の空隙が形成されており、表面側では、密に良好な結晶状態であることが確認された。また、空隙が形成された領域は、ITO膜の全膜厚の50%程度であった。さらに、ITO膜自体は、透明であり、結晶性が良好であることが確認された。
また、ITO膜におけるSn濃度をオージェ電子分光分析装置(日本電子株式会社:JEOL Ltd.のJAMP−7500F)を用いて測定したところ、半導体層との界面近傍のほうが、表面側に対して高濃度で分布しているとともに、半導体層側から表面側かけて、徐々に濃度分布が低くなる傾向を示していることが観察された。なお、Sn濃度は、ITO膜の表面側からAr+を、スパッタレート30nm/分、加速エネルギーが3keVで照射し、デプスプロファイルを測定した後、そのピーク強度を、インジウム、スズ等の各元素が有する相対感度係数(装置固有の値)で除算することにより、定量的に求められた値である。
【0063】
比較例Aとして、ITO膜の成膜工程において、室温にて、RFパワーをITO膜の成膜中10W/cm2と一定として20分間スパッタリング(膜厚4000Å)し、熱処理を行わなかった以外、実施例1と同様の方法によりITO膜を形成した。
この半導体発光素子をSTEM(日本電子製:JEM―2010F)により同様に観察した。その断面の状態を図3に示す。
図3から、ITO膜は、膜厚方向の全体にわたって小さな穴が存在し、膜厚方向全体において結晶性が悪く、透過率が低かった。
【0064】
また、比較例Bとして、成膜温度300℃で、その他は比較例Aと同様に20分間スパッタリングし、膜厚4000ÅのITO膜を形成した。得られた膜は、空隙を有しておらず、膜方向の全てにおいて密であった。
なお、比較例Aで得られた図3のITO膜について、実施例1と同じ条件で熱処理を施したところ、図2に示すITO膜とほぼ同様に、半導体層側の界面近傍においてのみ、20〜200nm程度の複数の空隙が形成され、表面側では、密に良好な結晶状態である膜が形成されたことが確認された。
また、比較例Bで得られたITO膜については、熱処理によっては、その構造に変化は見られなかった。
【0065】
このようなことから、本発明の導電性酸化物膜の構成により、ITO膜と半導体層との間の電流密度を増加させることにより、ショットキー障壁を小さくし、ITO膜と半導体層とのコンタクト抵抗を低減させることができる。また、ITO膜内において、電流を面内方向へ均一に広げることができ、さらに、ITO膜から半導体層全体へ電流を均一に広げることができ、活性層を効率的に発光させることが可能となる。
しかも、ITO膜は、表面側において、密で結晶性が良好となり、光の散乱を防止しながら、透光性を向上させることができ、この電極側を発光観測面とすることができる。
得られた半導体発光素子の特性について評価したところ、本願発明の発光素子では、20mAのときのVfが3.5Vになることが確認された。また、比較例Bとして、ITO膜の半導体層側の界面近傍において、空隙がなく、ITO膜の全体において密に良好な結晶状態のITO膜が形成された発光素子では20mAのときのVfが3.6Vであった。
また、比較例BにおけるITO膜では、半導体層とのオーミック性が不良であり、Vfも安定せず、比較的大きな値であった。
【0066】
実施例2
この実施例の半導体発光素子は、実施例1における製造工程において、ITO膜を成膜する際に、成膜初期は、スパッタガスとして、アルゴンガスを用い、その後、スパッタガスをアルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスに変更する以外は、実質的に実施例1と同様の方法により、同様の構成の半導体発光素子を得る。
なお、成膜時のスパッタガスの圧力を0.01〜0.5Pa程度とした場合に、成膜途中以降の酸素ガスの分圧は、1×10-4〜1×10-2Pa程度とする。また、アルゴンガスで20分間程度成膜し、その後、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた成膜時間は5分間程度とする。
得られた半導体発光素子においても、実施例1と同様に、オーミック性が良好で、透光性がよく、光の取り出し効率を向上させることができ、この電極側を発光観測面とすることができる。
【0067】
実施例3
この実施例の半導体発光素子は、実施例1における製造工程においてITO膜を成膜した後、あるいは、実施例1における製造工程において、室温にてRFパワーを一定に保ちながら5000ÅのITO膜を形成した後、還元ガス雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)にて、例えば、500〜600℃でランプアニールによって処理することにより、実施例1と実質的に同様の構成の半導体発光素子を得る。
得られた半導体発光素子においても、実施例1と同様に、オーミック性が良好で、透光性がよく、光の取り出し効率を向上させることができ、この電極側を発光観測面とすることができる。
【0068】
実施例4
この実施例の半導体発光素子は、実施例1における製造工程において、ITO膜を成膜する際に、スパッタ法に代えて、真空蒸着法を利用する以外は、実質的に実施例1と同様の方法により、同様の構成の半導体発光素子を得る。
n型コンタクト層の一部を露出させたウェハを、真空蒸着装置に入れ、ウェハ温度を100℃に維持しながら、SnO2が10%のITOを電子銃で加熱、蒸発させて、ITO膜を成膜する。成膜中、ウェハ温度を300℃まで、10秒間で急激に上昇させて、膜厚が5000ÅのITO膜を形成する。
【0069】
得られた半導体発光素子においても、実施例1と同様に、オーミック性が良好で、透光性がよく、光の取り出し効率を向上させることができ、この電極側を発光観測面とすることができる。
【0070】
実施例5
この実施例の半導体発光素子は、実施例4における製造工程において、真空蒸着法によりITO膜を形成する際に、ウェハ温度を300℃に維持しながら、イオン銃を利用して、成膜初期にのみ、ウェハ表面(p型半導体層)に酸素イオンを1012個/cm2程度で照射する以外は、実質的に実施例4と同様の方法により、同様の構成の半導体発光素子を得る。
【0071】
実施例6
この実施例の半導体発光素子は、実施例4における製造工程において、真空蒸着法によりITO膜を形成する際に、ウェハ温度を室温に維持しながら、成膜初期の成膜レートを50Å/秒、さらに、5Å/秒に減少させ、その後、ITO膜を加熱して透明化させる以外は、実質的に実施例5と同様の方法により、同様の構成の半導体発光素子を得る。
【0072】
実施例7
この実施例の半導体発光素子は、実施例5における製造工程において、真空蒸着法によりITO膜を形成する際に、ウェハ温度を300℃に維持しながら、成膜初期の成膜レートを50Å/秒とし、その後、5Å/秒に減少させる以外は、実質的に実施例5と同様の方法により、同様の構成の半導体発光素子を得る。
【0073】
実施例8

図4は、本実施例の表面実装(SMD)型の発光装置100を発光観測面側(即ち、パッケージ106の主面方向)から見た模式的な正面図を示す。図4に示すような表面実装(SMD)型の発光装置100は、LEDチップ107と、このLEDチップ107を収納する開口部を備え、LEDチップ107が載置されるリード電極105の主面の一部が開口部の底面から露出されてなるパッケージ106とを備える発光装置である。さらに、開口部は突出部111を有し、開口部の内壁面は、パッケージ106の主面の長軸方向に延伸する内壁面101aと、短軸方向に延伸し互いに対向する一対の内壁面102と、長軸方向に延伸する内壁面101aに対向する内壁面101bと、内壁面101aに対向し、突出部111に設けられる内壁面101cと、この内壁面101bから内壁面101cにかけて所定の角度を付けて連続して設けられる内壁面104とを有する。
【0074】
パッケージ106主面の開口部は、発光装置100と導電性パターンを施した外部の支持基板との実装面にほぼ垂直に設けられ、発光装置は実装面にほぼ平行な方向に発光素子からの光を出光する。さらにパッケージ106は、開口部の一部が実装面方向に突き出た突出部111を有し、この突出部に含まれる内壁面は、対向する一対の内壁面104と内壁面101cである。ここで、突出部111は、図4において、開口部の一部に網掛け領域として示される。この突出部111の底面にはリード電極105主面が延伸し、LEDチップ107の一部分が載置されている。
また、パッケージ106の外壁面から突出しているリード電極103の実装面側の面は、上記突出部111を形成する内壁面101cに対向する外壁面とほぼ同一平面上となるように、パッケージの主面方向に折り曲げられている。さらに、リード電極103の端部は、実装面と反対方向へパッケージの外壁面に沿って折り曲げられている。このようにリード電極103を配置することによって、従来と比較して小型化が可能な発光装置とし、外部の基板に対して安定に実装することができる。
【0075】
本実施例にかかるLEDチップは、発光層として単色性発光ピークが可視光である475nmのIn0.2Ga0.8N半導体を有する窒化物半導体素子を用いる。より具体的に説明すると、LEDチップは、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化物半導体を成膜させることにより形成させることができる。ドーパントガスとしてSiH4とCp2Mgを切り替えることによってn型窒化物半導体やp型窒化物半導体となる層を形成させる。
【0076】
LEDチップの素子構造としてはサファイア基板上に、アンドープの窒化物半導体であるn型GaN層、Siドープのn型電極が形成されn型コンタクト層となるGaN層、アンドープの窒化物半導体であるn型GaN層、次に発光層(バリア層となるGaN層、井戸層となるInGaN層、バリア層となるGaN層を1セットとし、これを5セット積層させた多重量子井戸構造)が形成されている。発光層上にはMgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるGaN層が順次積層されている(なお、サファイア基板上には低温でGaN層を形成させバッファ層としてある。また、p型半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある)。
【0077】
エッチングによりサファイア基板上の窒化物半導体に同一面側で、pn各コンタクト層表面を露出させる。
n型コンタクト層は、1つの辺の中央部において、p型半導体層52及び活性層の一部をエッチングにより除去してn型コンタクト層51が露出した切り欠き部51aを設けることにより露出され、その切り欠き部51aに、n電極53として、スパッタリング法を用いてW/Pt/Auを含む負極パッド電極を形成する。
p型コンタクト層上全面にはITOによる透光性電極を形成した後に、この透光性電極の一部上にパッド電極を形成する。このITO膜は実施例1と同様の方法により形成しており、半導体層側の界面近傍においてのみ、複数の空隙が形成され、表面側では密に良好な結晶状態となっている。
【0078】
p側パッド電極55は、透明電極54上におけるn電極が近接する辺に対向する辺に隣接する位置に形成される。また、p側パッド電極55には2つの線上の補助電極56が接続され、その補助電極56はp側パッド電極55の両側のp側パッド電極55が隣接する辺に沿って伸びている。これにより、p側パッド電極55とn電極53間に位置する活性層を効率よく発光させることができる。さらにp側パッド電極55に接続された補助電極56を透明電極54上に電気的に導通するように形成することにより、効果的にp層全体に電流を拡散させ、発光層全体を効率よく発光させることができる。しかも、p側パッド電極55及び補助電極56の周辺部において輝度の高い発光が得られる。したがって、本発明では、補助電極56の周辺部における輝度の高い発光を効果的に利用することがさらに好ましい。
【0079】
例えば、図5及び図6に示すように、n電極63がLEDチップの1つの隅部に2つの辺に近接するように設けられ、p側のパッド電極がn電極63が近接する隅部と対角をなす他の隅部に設けられる場合には、補助電極66はそれぞれ、円弧状に形成されていることが好ましく、これによってより高輝度でかつより均一な発光が得られる。また、図7に示すように、n電極53がLEDチップの少なくとも1つの辺に近接するように形成されている場合には、補助電極56は、n電極53から等距離になるように円弧状に形成されていることが好ましい。これにより図8に示すように、補助電極56が直線状に設けられた場合に比較して、より均一な発光分布が得られる。
【0080】
なお、図5〜8に示す補助電極56、66と発光層の縁との間隔は、補助電極56、66と、補助電極56、66と補助電極56、66が沿って形成される発光層及びp層の縁との間に上述の輝度の高い発光が得られる周辺部が確保されるように、その縁と補助電極56、66との間に間隔を空けることが好ましい。n型コンタクト層のシート抵抗RnΩ/□と、透光性p電極のシート抵抗RpΩ/□とが、Rp≧Rnの関係を満たしている場合、補助電極56、66と発光層の縁との間隔は、輝度の高い発光が得られる周辺部領域を十分確保し(輝度の高い発光が得られるべき領域が外側にはみ出さない)、隣接辺に沿って発光輝度の低い部分が形成されず、全体としての輝度の向上をもたらす観点から、20μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0081】
このような補助電極は、半導体発光素子に投入された電流を透光性電極全体に拡散させる。得られた半導体ウェハにスクライブラインを引いた後、外力により分割させ半導体発光素子であるLEDチップ(光屈折率2.1)を形成させる。
【0082】
次に、正及び負からなる一対のリード電極がインサートされて閉じられた金型内に、パッケージの主面に対向する下面側にあたるゲートから溶融されたポリフタルアミド樹脂を流し込み、硬化して、図4に示すパッケージを形成する。パッケージは、発光素子を収納可能な開口部を有し、開口部底面から正及び負のリード電極が一方の主面が露出されるように一体成形されている。また、開口部内壁面には、内壁面101a、101b、101c、内壁面102および内壁面104が形成されている。さらに、パッケージの外壁面の一部には、段差を有している。また、パッケージ側面から露出された正及び負のリード電極の各アウタリード部は、発光面と反対側の面の両端部で内側に折り曲げられている。
【0083】
このように形成された開口部の底面に対し、LEDチップの一部分が突出部111にはみ出すように、エポキシ樹脂にてLEDチップをダイボンドする。ここでダイボンドに用いられる接合部材は特に限定されず、Au−Sn合金や導電性材料が含有された樹脂やガラス等を用いることができる。含有される導電性材料はAgが好ましく、含有量が80%〜90%であるAgペーストを用いると放熱性に優れて且つ接合後の応力が小さい発光装置が得られる。
次に、ダイボンドされたLEDチップの各電極と、パッケージ開口部底面から露出された各リード電極とをそれぞれAuワイヤにて電気的導通を取る。
次いで、フェニルメチル系シリコーン樹脂組成物100wt%(屈折率1.53)に対して、拡散剤として平均粒径1.0μm、吸油量70ml/100gである軽質炭酸カルシウム(屈折率1.62)を3wt%含有させ、自転公転ミキサーにて5分間攪拌を行う。次に攪拌処理により生じた熱を冷ますため、30分間放置し樹脂を定温に戻し安定化させる。
【0084】
こうして得られた硬化性組成物をパッケージ開口部内に、開口部の両端部上面と同一平面ラインまで充填させる。最後に、70℃×3時間及び150℃×1時間熱処理を施す。これにより、開口部の両端部上面から中央部にかけてほぼ左右対称の放物線状に凹みを有する発光面が得られる。
【0085】
硬化性組成物の硬化物からなる封止部材は、拡散剤の含有量の多い第一の層と、第一の層より拡散剤の含有量の少ないもしくは含有していない第二の層との2層に分離しており、LEDチップの表面は第一の層にて被覆されている。これにより、LEDチップから発光される光を効率良く外部へ取り出すことができると共に良好な光の均一性が得られる。第一の層は、前記開口部の底面から前記LEDチップの表面にかけて連続して形成されていることが好ましく、これにより、発光面の形状を滑らかな開口部とすることができる。
本実施例の発光装置は、パッケージの開口部に内壁面104を有することにより、発光素子からの出光を無駄なく開口部内から発光観測面方向に出光させることができ、従来と比較して薄型化しつつ導光板の光入射面に対して広範囲に光を入射させることができる。
【0086】
実施例9
上述した実施例において、蛍光物質を含有する封止部材とする以外は、同様にして発光装置を形成する。蛍光物質は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させ、これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。さらにフラックスとしてフッ化バリウムを混合した後坩堝に詰め、空気中1400℃の温度で3時間焼成することにより焼成品が得られる。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して中心粒径が8μmである(Y0.995Gd0.0052.750Al512:Ce0.250蛍光物質を形成する。蛍光体を含有させることにより、発光素子からの光と、該発光素子の光の一部が蛍光体により波長変換された光との混色光が得られる発光装置とすることができる。
本発明により得られた白色発光を示し、得られた発光装置の特性について評価したところ、光度が1012mcdである。
なお、比較例として、ITO膜の半導体層側の界面近傍において、空隙がなく、ITO膜の全体において密に良好な結晶状態のITO膜が形成された発光素子を実装したほかは同様にして形成した発光装置では、970mcdである。
【0087】
実施例10
上記実施例9により得られる発光装置と、導光板とを組み合わせて面状発光装置を形成する。発光装置と導光板とは、直接接着させる。
この実施例の面状光源は、発光装置と容易に位置決めして得ることができ、従来と比較して薄型化された面状光源とすることができる。また、導光板の光入射面に光を散乱させる切り欠き部分を設けるなどして、発光位置によって発光ムラの生じない面状光源とすることができる。
【0088】
実施例11
この実施例の半導体発光素子を、電極形成面側からみた平面図である図9及び図9におけるX−X線の断面図である図10に示す。なお、図10は、p側電極20のパッド部20b(以下、「p側パッド部」ともいう)近傍の断面図であり、p側電極20が設けられた第1の領域の半導体積層構造と、第2の領域に設けられた凸部29との位置関係を示している。
この半導体発光素子は、p側電極20及びn側電極19が同一面側に設けられており、観測面側を電極形成面側とした電極形成面側から光を取り出す構成である。
半導体発光素子を構成する半導体積層構造は、上述した半導体積層構造の(2)と同様であり、サファイア基板11上にGaNバッファ層12、ノンドープGaN層13、n型コンタクト層となるSiドープGaN層14、n型クラッド層となるSiドープGaN層15、活性層となるInGaN層16、p型クラッド層となるMgドープAlGaN層17、p型コンタクト層となるMgドープGaN層18が、順次積層された層構造を有する。さらに、MgドープGaN層18、MgドープAlGaN層17、InGaN層16、SiドープGaN層15、SiドープGaN層14が部分的にエッチング等により除去され、SiドープGaN層14の露出面にn側電極19が形成され、MgドープGaN層18にはp側電極20が設けられている。
【0089】
n側電極19は、n型コンタクト層側から順にW、Pt、Auが積層されてなる。
p側電極20の電流拡散部20a(以下、「p側電流拡散部」ともいう)はp型コンタクト層のほぼ全面に形成されており、p型コンタクト層に接して実施例1と同様のITO膜によって形成されている。パッド部20bはn側電極と同様にW、Pt、Auが順に積層されてなる。
このように、p側パッド部20bとn側電極19とを同一の構成とすることにより、p側パッド部20bとn側電極19の形成工程を1つにすることができる。また、n側パッド電極をp側電流拡散部と同様にITOを用いてもよい。
【0090】
この実施例では、発光領域(第1の領域)を確保するために、p側電流拡散部20aはn側電極19を部分的に囲んでいる。
この半導体発光素子は、複数の凹凸を形成する各凸部29が第1の領域の周囲を囲んでいる。すなわち、この半導体発光素子は、駆動時に発光する第1の領域の周囲を凸部で囲むことにより、半導体発光素子の電極形成面側表面領域を有効に利用して光取り出し効率及び光指向性の制御を行うことができる。
一般に、半導体発光素子はサファイア等の基板上に各種の半導体層を積層した後に、所定の領域を薄膜化し、その薄膜領域にて個々の半導体発光素子に分割する。この実施例では、凸部を形成するための特別な領域を設けてもよいが、例えば、ウエハーを分割する薄膜領域、又はn電極周辺に凸部を複数形成することにより、工程の増加を抑えることができる。すなわち、本来、単に、電極形成面側に設けられるn型コンタクト層平面の所望の領域に、本実施の形態の凸部を形成することが好ましい。
【0091】
ここで、n型コンタクト層は、電極形成面側からみて、p側電極を有する半導体積層構造が設けられた第1の領域と、第1の領域と異なる第2の領域から構成され、第2の領域にはn電極19および複数の凸部29が設けられている。図10に示すように、第2の領域に設けられた各凸部の頂部は、半導体発光素子断面において、活性層よりもp型コンタクト層側、好ましくはp型コンタクト層と実質的に同じ高さとなるように構成される。すなわち、凸部の頂部が活性層よりも高くなるように形成されている。また、凹凸底部は活性層よりも低くなるように形成されている。この半導体発光素子はDH構造(ダブルへテロ構造)であるので、凹凸の頂部は、少なくとも活性層とそれに隣接するn側層との界面より高ければよいが、活性層とそれに隣接するp側層との界面より高いことがより好ましい。また、凹凸の底部は、少なくとも活性層とそれに隣接するp側層との界面より低ければよいが、活性層とそれに隣接するn側層との界面より低いことがより好ましい。
【0092】
このように構成することにより、観測面側への光の取り出し効率を例えば10〜20パーセント向上させることができる。その理由は明らかではないが、以下の理由1〜3ように考えられる。
すなわち、1.n型コンタクト層内を導波する光がn型コンタクト層から凸部内部に光が取り込まれ、凸部の頂部又はその途中部分から光が観測面側に取り出される。
2.活性層端面から側面外部に出射された光が複数の凸部により反射散乱され観測面側へ光が取り出される。
3.n型コンタクト層内を導波する光が凸部の根本(n型コンタクト層と凸部の接続部分)にて乱反射され、観測面側へ光が取り出される。
また、凸部を複数設けることにより、観測面側の全域に渡って均一な光取り出しが可能となる。
【0093】
さらに、凸部をp型コンタクト層を含むように構成することにより、それらの頂部が略同じ高さとなるので、p側電極を有する半導体積層構造が設けられた第1の領域に遮られることなく、凸部頂部から観測面側に効果的に光を取り出すことができる。
また、凸部をp型コンタクト層、好ましくはp型電極よりも高くなるように構成することにより、より効果的に光を取り出すことができる。
【0094】
さらに、上記効果は、凸部断面において、半導体積層方向つまりn型コンタクト層側からp型コンタクト層側に向かって、凸部が徐々に細くなるように傾斜させることで、より大きなものとなる。すなわち、凸部に故意に角度を付けることにより、活性層からの光を凸部表面にて全反射させて、或いは、n型コンタクト層を導波した光を散乱させ、結果として観測面側への光取り出しを効果的に行うことができる。凸部の傾斜角は、30°〜80°が好ましく、40°〜70°がより好ましい。
【0095】
凸部断面の形状は円錐、半円等、種々の形状が可能であるが、好ましくは台形、すなわち凸部自体が円錐台形状であることが好ましい。このように構成することにより、光の指向性制御がより容易になると共に、全体としてより均一な光取り出しが可能となる。p型コンタクト層側から光を取り出し、p側コンタクト層を観測面とする場合に、凸部の観測面側が頂点を含まずに平面を含むことにより、この効果が得られるものと考えられる。
また、凸部断面の形状が台形である場合、台形の上辺(p側)において、さらに凹部を備えることもできる。これにより、n型コンタクト層内を導波してきた光が凸部内部に侵入した際に、凸部の頂部に形成された凹部により、観測面側に光が出射されやすくなるので好ましい。
【0096】
さらに、この半導体発光素子は、n型コンタクト層の第1の領域に形成された半導体積層構造の出射端面とほぼ垂直をなす方向において、2以上、好ましくは3以上の凸部が少なくとも部分的に重複して配置されていることが好ましい。これにより、第1の領域からの光が高確率で凸部を介することになるので、上記効果をより容易に得ることができる。
この凸部は、n側電極を形成するために、n型コンタクト層を露出する際に、同時に形成することが好ましい。すなわち、本実施の形態の半導体発光素子は、同一面側に、p側電極及びn側電極を備える構造であるため、基板上にp型コンタクト層までを積層した後に、半導体積層構造のp側から少なくともn側電極に対応する領域をn型コンタクト層が露出するように除去することが必要となる。例えば、p型コンタクト層を積層した後に、レジスト膜を塗布して所望のパターンに露光し、残存するレジスト膜をマスクとして用い、後にp側電極を設ける部位(第1の領域)、および凸部を形成すべき部位(第2の領域の一部分)以外をn型コンタクト層が露出するまでエッチング等により除去する。これにより、n側電極を形成する露出面を形成すると共に凸部を同時に形成することができるので、工程を簡略化することが可能となる。なお、ここではマスクとしてレジスト膜を用いたが、SiO2等の絶縁膜をマスクとしてもよい。
【0097】
このように形成された凸部は、第1の領域における半導体積層構造と同じ積層構造を備える。しかし、第1の領域に含まれる活性層は発光層として機能するが、第2の領域の凸部に含まれる活性層は発光層として機能しない。これは、第1の領域がp側電極を有するのに対して、第2の領域(凸部)にはp側電極が形成されていないことによる。すなわち、第1の領域の活性層は通電によりキャリア(正孔及び電子)が供給され得るのに対し、第2の領域に設けられた凸部の活性層には通電によりキャリアは供給されない。このように、この凸部はそれ自体で発光しうるものではない。
また、第1の領域の内部に周囲が完全に第1の領域で囲まれた開口部を設け、各開口部内に発光し得ない複数の凸部を設けることもできるが、この場合、開口部が電流経路を阻害する場合があり素子抵抗が上がるばかりでなく、均一な発光が得られない傾向があるので好ましくない。したがって、本来発光すべき領域(第1の領域)では、発光に必要な少なくともn型コンタクト層、活性層、p型コンタクト層が一様に積層され、一様に発光することが好ましく、本来発光しない領域(第2の領域)のみに複数の凸部を設けることが好ましい。いずれにしても、本来発光し得ない領域に複数の凸部を設け、本来発光し得ない領域を有効に利用することにより、上記したような効果を得ることができる。
【0098】
また、上記のように形成された凸部は、第1の領域における半導体積層構造と同じ積層構造となっており、言い換えれば、凸部が材料の異なる複数層からなっている。材料が異なれば、必然的に、各層の屈折率も異なるので、凸部に取り込まれた光が各界面で反射し易くなり、結果として、観測面側への光取り出し向上に寄与しているものと考えられる。
さらに、本件発明における凸部の数、密度等は特に限定されないが、第2の領域において少なくとも100個以上、好ましくは200個以上、さらに好ましくは300個以上、より好ましくは500個以上とすることができる。これにより、上記効果をより向上させることができる。なお、電極形成面側から見て、第2の領域における凸部が占める面積の割合(詳細には、第2の領域における、凸部と第2の領域の界面の面積の占める割合)は、20パーセント以上、好ましくは30パーセント以上、さらに好ましくは40パーセント以上とすることができる。なお上限は特に限定されないが80パーセント以下とすることが好ましい。また、1つの凸部と第2の領域の界面の面積は、3〜300μm2、好ましくは6〜80μm2、さらに好ましくは12〜50μm2とすることができる。
【0099】
このように、この実施例の半導体発光素子は、横方向(半導体発光素子の側面方向)に出射する光を減少させ、上方向(観測面側)へ選択的に出射させるものである。特に、活性層をそれよりも屈折率の低い層で挟んだ構造(所謂ダブルヘテロ構造)を有する半導体発光素子においては、該屈折率の低い層間で光が閉じ込められてしまい、どうしても側面方向の光が主となってしまう。本件発明はこのような素子に対して特に効果的である。
【0100】
さらに、半導体発光素子は実際に使用する際は、一般に、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの有機樹脂からなる封止樹脂でその周囲を封止して使用され、光による樹脂劣化を大幅に軽減することができる。これは、活性層側面からの光が、活性層側面に位置する封止樹脂に集中せずに、複数の凸部により光が分散されることによるものと考えられる。特にエポキシ樹脂は光に対して弱いので、エポキシ樹脂を封止樹脂とした半導体発光素子に特に効果的である。同様に、有機樹脂(例えばナイロン系樹脂)からなる支持体に半導体発光素子を配置した際においても、その支持体自体の寿命を長くすることができる。すなわち、このような半導体発光素子を用いることにより、半導体発光素子側面から出射される光により支持体が劣化するのを大幅に軽減することができる。このような効果は、当然、支持体の表面が半導体発光素子に近いものほどより顕著なものとなる。
なお、この半導体発光素子は、実施例8と同様にして、図8に示す表面実装(SMD)型の発光装置とすることができる。
【0101】
実施例12
この実施例の半導体発光素子は、図11に示すように、第1の領域における半導体積層構造の形状と、それに伴うp側電流拡散部30aの形状と、凸部29の形成領域が異なる他は、実施例11の半導体発光素子と同様の構成である。
すなわち、この半導体発光素子は、電極配置面側からみて、n側電極19とp側電極30との間に位置する第1の領域がくびれ部分を有しており、さらにそのくびれ部分に複数の凸部が形成されている。すなわち、電極配置面側からみて、n側電極とp側電極のパッド部との間に位置する第1の領域に設けられた半導体積層構造が、n側電極とp側電極のパッド部を結ぶ直線に垂直をなす方向において、第1の領域の両側がくびれ部分を有すると共に、くびれ部分に複数の凸部を備える。これにより、発光および観測面側への光取り出しを効果的に行うことができる。
【0102】
具体的には、この半導体発光素子は、p側電極のパッド部30bとn側電極19が直線X−X上に配置されている。そして、図11に示すように、電極形成面側からみて、p側電流拡散部30aが直線X−Xに沿った長手形状をしており、それに伴い半導体発光素子自体の形状も直線X−Xに沿った長手形状としている。また、p側電極のパッド部30bからn側電極19に流れる電流は、その経路が最短になるように主に直線X−Xに流れる。しかし、p側電極のパッド部30bとn側電極19の間のp側電流拡散部30aのうち、直線X−X、p側電極のパッド部30b、n側電極19の3箇所から離れた領域には、電流が供給されにくく、その結果、他の領域に比較して発光が弱い。
【0103】
この半導体発光素子は、上記事情を考慮して、n側電極19とp側電極のパッド部30bとの間に位置する第1の領域にくびれ部分を設け、本来発光すべき、くびれ部分に対応する領域の半導体積層構造を除去し、さらにそのくびれ部分に複数の凸部を形成することにより、結果として良好な光取り出しが実現可能となる。これは、くびれ部分に相当する発光の弱い領域を除去し、その除去した領域に凸部を設けることにより、強い発光がそのまま側面外部に放出され、その放出された強い発光が凸部を介して観測面側に方向転換するために、光の取り出し、光の指向制御性が向上するものと考えられる。
【0104】
また、この半導体発光素子では、n側電極19と第1の領域との間に凸部29を形成している。n側電極19周辺部は比較的発光が強いので、n側電極19とp側電流拡散部30aとの間に凸部29を設けることにより、実施例11の効果をさらに向上させることができる。
さらに、例えば、n電極及び第1の領域近傍の比較的発光の強い領域に複数の凸部を高密度に設け、それと異なる領域の比較的発光の弱い領域に複数の凸部を低密度に設けてもよい。発光領域の強い領域、弱い領域は半導体発光素子の構造によって異なるが、いずれにしても、発光領域の強度を考慮して、複数の凸部の密度を変化させることにより、より効果的な光取り出し及び指向性制御が可能となる。
なお、この半導体発光素子は、実施例8と同様にして、図8に示す表面実装(SMD)型の発光装置とすることができる。
【0105】
実施例13
この実施例の半導体発光素子は、電極側の平面図である図12及び図12のX−X‘線の断面図である図13に示したように、サファイア基板40上にそれぞれ窒化物半導体からなるn型層41、活性層42及びp型層43がこの順に積層されて構成されている。

n型層41は、その表面の一部に露出部を有しており、この露出部に、互いに分離された複数のnライン電極31が形成されている。
【0106】
つまり、n型層41、活性層42及びp型層43からなる積層体において、p型層43及び活性層42の一部がライン状に除去されることにより複数のスリットSLが形成されて、n型層がライン状に露出され、そのスリットSLにより露出されたn型層上にそれぞれnライン電極31が形成される。また、スリットに平行な1つの辺(発光素子の1つの辺:以下第1の辺という。)に沿って、所定の幅にn型層が露出され、そこにも1つのnライン電極31が形成される。なお、第1の辺に沿って、所定の幅にn型層が露出されたnライン電極が形成されるn型層表面を第1領域といい、この第1領域に形成されたnライン電極を第1nライン電極という。また、第1の辺に対向する辺は、第2の辺という。
【0107】
この半導体発光素子では、第1領域と複数のスリットSLは互いに平行でかつ第1領域とスリットSLとの間隔及び隣接するスリットSL間の間隔は互いに等しくなるように形成される。
各nライン電極31はライン状オーミック電極31aとそのライン状オーミック電極31aの一端に設けられたnパッド電極31bとによって構成される。各ライン状オーミック電極の一端に設けられたnパッド電極31bは、第1の辺に直角の1つの辺(第3の辺)に沿って形成される。
【0108】
また、ライン状オーミック電極31aは、その一端部がnパッド電極31bを形成するために広く形成され、その上にnパッド電極31bが形成される。
p側電極は、p型層のほぼ全面に形成された透光性を有するpオーミック電極32と、そのpオーミック電極32の上に形成された複数の電流拡散電極33とによって構成される。なお、pオーミック電極32は、透光性電極層として、実施例1と同様のITOにより形成されている。この電流拡散電極33はライン状オーミック電極31aと平行に形成された複数の拡散ライン電極33aとその拡散ライン電極33aの一端に設けられたpパッド電極33bとによって構成される。拡散ライン電極33aと隣接するnライン電極31との間隔は、互いに等しくなるように形成され、複数の拡散ライン電極33aのうちの1つは第2の辺に沿って形成され、他の拡散ライン電極33aはnライン電極31の間に形成される。すなわち、対向する2つの辺のうちの一方の辺(第1の辺)に沿ってnライン電極を形成した場合、その一方の辺に対向する他方の辺に沿って電流拡散電極33を形成するように構成している。また、各拡散ライン電極33aの一端に設けられたpパッド電極33bはいずれも、nパッド電極31bが形成されている第3の辺に対向する第4の辺に沿って形成される。
【0109】
このような半導体発光素子は、以下のような理由により、発光領域全体に電流が注入されるようにして発光効率を向上させるとともに、比較的大面積(例えば、1000μm×1000μm)の窒化物半導体発光素子においても、発光面全体にわたって均一な発光が可能になるようにしている。
第1に、各nライン電極31の一端にそれぞれnパッド電極31bを形成し、各拡散ライン電極33aの一端にそれぞれpパッド電極33bを形成するようにしている。これにより、発光領域全体に電流がほぼ均一に注入されるようにできる。
【0110】
なお、この半導体発光素子においては、異なるnライン電極31間において、nパッド電極31bからライン状オーミック電極1aの他端までの距離を実質的に等しくでき、異なる電流拡散電極33間において、pパッド電極33bと拡散ライン電極33aの他端までの距離を実質的に等しくでき、発光領域全体に電流が均一に注入されるようにできる。
ここで、上述の距離が実質的に等しいとは、完全に一致していることを意味しているのではなく、距離の違いにより電流の不均一が生じない程度のものは実質的に等しい範囲に含まれるものとする。
【0111】
第2に、隣接するnライン電極31とp側の電流拡散電極33の間隔が等しくなるようにして、発光領域全体に電流が均一に注入されるようにしている。
つまり、ライン状オーミック電極31a及び拡散ライン電極33aは、途中に、角部及び曲線部が形成されないように直線的に形成して、角部及び曲線部における電界の集中や電界の不均一を防止し、それに伴う電流の不均一を防止している。
【0112】
また、拡散ライン電極33aの他端(pパッド電極33bが形成された一端の反対側に位置する端)と、nパッド電極31b(nパッド電極31bが形成されたnライン電極31の一端部)との距離を、拡散ライン電極33aとnライン電極31の間隔にほぼ等しく設定している。
さらに、nライン電極31の他端(nパッド電極31bが形成された一端の反対側に位置する端)と、pパッド電極33b(pパッド電極3bが形成された拡散ライン電極33aの一端部)との距離を、拡散ライン電極33aとnライン電極31の間隔にほぼ等しく設定している。
【0113】
これにより、どの部分においても電流拡散電極33とnライン電極31との間の距離を実質的に等しくできるので、発光領域全体にほぼ均一に電流を注入でき、均一な発光が可能となる。
基板40側を光り取り出し面とする場合には、pオーミック電極32の上に反射膜を設けたり、pオーミック電極32の上に反射性電極層を設けた電極構造とすることができる。光取り出し面を基板40側、p型層43とする場合のいずれでも、pオーミック電極32をITOからなる単層構造又はこれを含む多層構造とすることが好ましい。また、ライン状オーミック電極31aを、pオーミック電極32を構成するITOからなる単層構造又はこれを含む多層構造としてもよい。
【0114】
なお、この実施例の半導体発光素子の変形として、図14(a)、(b)に示すように、基板50と素子構造部501の第1導電型層520との界面に凹凸部550が設けられ、さらに発光構造部510外部の第1導電型層520に、側面540が傾斜面として設けられて基板50が露出された露出部560がさらにその外部に設けられた構造としてもよい。これにより、凹凸部550により基板50界面で光が乱反射されて取り出し効率が向上し、さらに傾斜した側面540により、第1導電型層520内を主に横方向に伝搬する光を反射させて、基板50側からの光取り出しに寄与して、出力が向上する。
【0115】
実施例14
この実施例の半導体発光素子60は、電極形成面側の平面図である図15に示したように、p型半導体層の間にn型半導体層がエッチングによりストライプ状に露出されている。露出されたn型半導体層は、素子の内側において細くなる形状を有しており、この露出されたn型半導体層上に、n電極62が形成されている。なお、p側の拡散電極61は、ストライプ形状であり、発光素子中央部分において、露出されたn型半導体層の幅より広い形状を有している。なお、p側の拡散電極61は、実施例1と同様のITO膜により形成されている。p側の拡散電極61のストライプ列数は、n型半導体層上のn電極62の列数より多い。
【0116】
このように、n電極62がくびれた形状を有することによりp側の拡散電極61の領域面積を大きくすることができ、単位時間あたりに発光素子に投入される電流量を増大させることができる。さらに、発光面において、発光素子の発光に寄与しないn型半導体層の面積を減らし、p型半導体層の面積を相対的に増やすことで発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。したがって、この発光素子では、高輝度を実現することができる。また、拡散電極61を設けることにより、発光素子に投入される電流を均一に発光素子全面に拡散させることができため、発光素子の発光面からの発光を均一とすることができる。
なお、p側の拡散電極上に形成される金属膜およびn電極は、バンプに含有される材料の少なくとも一種を含有することが好ましい。例えば、バンプがAuを材料とするときは、p側の金属膜およびn電極の材料、特にバンプと直接に接する接合面の材料は、AuまたはAuを含む合金とすることが好ましい。また、Ag、Al、Rh、Rh/Irの単層又は多層膜でもよい。
【0117】
さらに、この発光素子をフリップチップ実装する場合には、発光素子の電極と対向されるサブマウントや支持基板の電極材料は、反射率の高い銀白色の材料、例えば、銀、アルミニウムあるいはそれらと他の金属を少なくとも一種以上含む合金とすることが好ましい。
p側の拡散電極とn電極とを同じ材料により形成する場合には、同時に形成することが可能となり、製造工程が簡略化されて好ましい。
【0118】
実施例15
この半導体発光素子においては、図16に示すように、n電極71は、発光素子の1つの角部を含む外周に沿って配置される第1延伸部71aと、第1延伸部71aの端部及び角部から発光素子の内側に向かって伸びる第2延伸部71bとから構成される。なお、n型半導体層は、n電極71の形状と略同じ形状にその表面を露出しており、その表面にn電極71が形成されている。
また、n型半導体層が露出した領域以外の半導体発光素子の表面にp型半導体層が配置しており、その表面のほぼ全面に実施例1と同様のITO膜からなる透明電極82が形成されている。また、透明電極82上であって、n電極71が形成された角部に対向する角部を含む外周に沿って配置される金属膜からなる周縁電極81aと、この周縁電極81aの途中から発光素子の内側に向かって伸びる延伸部82bとからなるパッド電極が形成されており、このパッド電極と透明電極82とでp電極81を構成する。
【0119】
すなわち、n電極71を構成する第2延伸部71bの間に、p電極81を構成する延伸部81bが、略平行に配置することにより、これら第2延伸部71bと延伸部81bとにはさまれるように、発光部90a〜90dが配置されている。また、これら発光部90a〜90dのほかに、n電極71及びp電極81が形成されていない角部であって、周縁電極81aの先端と第2延伸部71bとに囲まれる領域においても、発光部90e、90fがそれぞれ形成されている。
このような電極の形状により、発光素子に投入される電流を均一に発光素子全面に拡散させることができため、発光素子の発光面からの発光を均一とすることができる。
【0120】
実施例16
この実施例では、図17に示したように、実施例13に示した拡散ライン電極とnライン電極を有する半導体発光素子であるLEDチップ200を、実装基体201に、フリップチップ実装することにより発光装置を形成する。
この発光装置は、リード203が固定された実装基体201を含むパッケージ212の凹部202に、接着層204を介してサブマウント基板205に載置されたLEDチップ200が実装されて構成されている。凹部202の側面は反射部206として機能し、実装基体201は放熱部として機能し、外部放熱器(図示せず)に接続されている。また、実装基体201には、凹部202の外部にテラス部207が形成されており、ここに、保護素子(図示せず)が実装されている。実装基体201の凹部202の上方には、光取り出し部208として開口部が形成されており、この開口部に、透光性の封止部材209が埋設されて封止されている。
【0121】
実施例17
この実施例では、図18に示したように、実施例13に示した拡散ライン電極とnライン電極を有する半導体発光素子であるLEDチップ200を、実装基体201に、フェイスアップ実装することにより発光装置を形成する。
この発光装置は、リード203と絶縁分離された実装基体201を含むパッケージ212の凹部202に、LEDチップ200が接着層204を介して固定されている。この凹部202は、その側面が反射部206として機能し、開口方向に向かって広くなる形状(テーパー形状)であることが好ましい。このような形状により、LEDチップ200から出た光が凹部202の側面に反射してパッケージ正面に向かうため、光取り出し効率を向上させることができる。実装基体201は、ガラスエポキシ樹脂、セラミック等によって形成することができる。また、接着層204は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。実装基体201は放熱部として機能し、外部放熱器(図示せず)に接続されている。このように、実装基体201とリード203とを分離するとともに、放熱を確保することができる構成により、熱設計に優れた発光装置を得ることができる。
【0122】
また、実装基体201の凹部202内及びその上方は、光透過性の封止部材209が埋設され、さらに光学レンズ形状に成形されている。光学系(レンズ)を設けることにより、所望の指向性の発光を得ることができる。
さらに、LEDチップ200の電極は、それぞれワイヤ210によってリード203と電気的に接続され、パッケージ外部におよんでいる。
なお、実装基体201の凹部202内表面211は、エンボス加工やプラズマ処理により、封止部材209との接着面積を増やすなどにより密着性を向上させることができる。
【0123】
パッケージ212は、外部電極と一体的に形成していてもよく、さらに、複数の部品に分割され、はめ込みなどにより組み合わせて用いることもできる。外部電極は、例えば、銅、リン青銅板等の表面に銀、銅、パラジウム、金、タングステンなどの金属メッキ、半田メッキなどを施したものが好適に用いられる。このようなパッケージ212は、インサート成形などにより比較的簡単に形成することができる。パッケージ材料としてポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂等の樹脂やセラミック、金属などを用いることができる。特に金属の場合には、紫外線を含む光を発光するLEDチップを用いた発光装置を高出力で使用しても、紫外線によって劣化、黄変等して、発光効率低下、機械的強度の低下を招くことがなく、発光装置の寿命を向上させることができる。また、パッケージを暗色系に着色させる着色剤として、Cr23、MnO2、Fe23、カーボンブラック等の種々の染料、顔料を用いることができる。
【0124】
なお、ワイヤ210は、特に限定されるものではないが、例えば、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用い、10〜70μm程度の直径であることが好ましい。
また、封止部材209は、発光装置の使用用途に応じてLEDチップ200、ワイヤ210、任意に、蛍光体が含有されたコーティング層などを外部から保護するため、あるいは光取り出し効率を向上させるために設けられる。封止部材209は、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。モールド部材に拡散剤を含有させることによってLEDチップ200からの指向性を緩和させ、視野角を増やすこともできる。なお、金属パッケージを使用して、窒素ガスなどと共にLEDチップ200を気密封止する場合は、モールド部材は必須の構成部材ではない。
【0125】

なお、上述した実装形態、パッケージ材料などは、本発明のいずれの実施例に適用してもよく、さらに、金属製の基体に凹部を設けて、発光素子を実装し、基体と絶縁分離されたリードに電気的に接続させて気密封止したもの、COBのように金属基板上の凹部に直接LEDチップを実装してもよい。また、1つの実装基体に又は1つの凹部内に、複数の素子を集積実装したもの、発光素子を実装した基体を複数設けて1つの装置基体で成形したもの等であってもよい。
【0126】
実施例18
この実施例では、図19に示したように、実施例13に示した拡散ライン電極とnライン電極を有する半導体発光素子であるLEDチップ200を、ステム120の凹部120a内に、フェイスアップ実装することにより発光装置を形成する。
ステム120は、CuにAgメッキを施したヒートシンク124、第1のリード121及び第2のリード122を、ポリフタルアミドである熱可塑性樹脂を用いて一体成型されている。ヒートシンク124は、上面に凹部24aを有し、開口部上方が広口の略円錐台の形状を有している。これにより、LEDチップ200からの光を効率よく反射させることができ、光取り出し効率を向上させることができる。
LEDチップ200は、ヒートシンク124の凹部124aの略中央に、エポキシ樹脂からなる接着層によりダイボンドされている。また、LEDチップ200の上面に存在する正負電極が、第1のリード121及び第2のリード122にそれぞれAuワイヤ125によりボンディングされている。
【0127】
このLEDチップ200が載置されたステムの凹部120a内に、第1のシリコーン樹脂130(例えば、粘度1.93Pa・s(23℃)、信越化学工業株式会社製)が、その上面からやや盛り上がるように、気体が入らないように注入されている。また、第1のシリコーン樹脂130の上に、第2のシリコーン樹脂(例えば、粘度5.2Pa・s(23℃)、信越化学工業株式会社製)140が、第1のシリコーン樹脂130とステム120の外側の一部を覆うように注入されている。なお、第1のシリコーン樹脂130と第2のシリコーン樹脂140との界面131aは、組成傾斜しており、第1のシリコーン樹脂の未反応成分と、第2のシリコーン樹脂の硬化成分とが反応している。
このような発光装置は、外的障害物から発光素子を保護しつつ、光取り出し効率の向上を図ることができる。
【0128】
実施例19
この実施例では、図20に示したように、実施例13に示した拡散ライン電極とnライン電極を有する半導体発光素子であるLEDチップ200を、サブマウント部材160を介してステム120の凹部120a内に、フリップチップ実装することにより発光装置を形成する。
ステム120は、第1のリード121及び第2のリード122とが樹脂によって一体成型されており、第1のリード121及び第2のリード122の端部の一部が、ステムの凹部120a内で露出している。露出している第2のリード122の上に、サブマウント部材160が載置されている。このサブマウント部材160上であって、凹部120aの略中央に、LEDチップ200が載置されている。サブマウント部材160に設けられた電極161は、ワイヤを介して第1のリード121と電気的に接続され、また、電極62は、ワイヤを介して第2のリード22と電気的に接続されている。
【0129】
ステムの凹部120a内には、蛍光体150を含む封止部材131が埋設されており、さらにその上に、封止部材141が封止部材131及びステム120の一部を被覆している。
なお、この発光装置においては、サブマウント部材を介さず、LEDチップ200を直接リードにマウントし、超音波振動装置を用いて鉛フリーの半田バンプを介してボンディングして電気的に接続してもよい。
【0130】
実施例20
この実施例では、図21に示したように、実施例16に示した半導体発光素子であるLEDチップ200を、セラミックパッケージ内に、フェイスアップ実装することにより発光装置を形成する。
セラミックパッケージは、基板となるセラミック素地302と、内壁面の形状が開口方向に向かって広くなる貫通孔を有するセラミック素地304とを少なくとも有する。基板となるセラミック素地302には、LEDチップ200に電力を供給するための導体配線305がパッケージの凹部底面からセラミック素地302、204の間を通って発光装置の外壁面に延在している。
【0131】
開口方向に向かって広くなる形状となっているセラミック素地の内壁面は、パッケージの凹部を形成し、この凹部の内壁面に対して光反射部303が設けられており、凹部内に封止部材307が埋設されている。
つまり、図22に示すように、セラミックパッケージは、LEDチップを載置するための凹部を有する。凹部の底面には、正負一対の導体配線305a、305bが施され、セラミック素地316が露出されて正負一対の導体配線を絶縁分離している。LEDチップは、セラミックが露出された凹部底面の中央に載置され、導体配線305aの一部は、LEDチップを包囲するようなパターンとされている。ここで、サファイア基板のような透光性基板の上に半導体が積層されてなるLEDチップの透光性基板側を凹部底面に対向させて固定する構成とする際には、透光性基板を、Al、Agおよびそれらの合金のような光反射率の高い金属で被覆することが好ましい。このように構成することにより、セラミックを透過していた光を発光観測面方向に反射させ、発光装置の光取り出し効率を向上させることができる。保護素子のような別の半導体素子を、導体配線上に載置することもできる。また、セラミックパッケージの側面端部には、正負一対の導体配線305a、305bと接続する正負一対の導体配線317a、317bが露出されている。
【0132】
なお、セラミックパッケージの発光観測面側主面は、カソードの位置を示す一対のマーク318が発光観測面側主面の隅部に印刷されている。カソードの位置を示す一対のマーク318は、タングステンを含む樹脂ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して焼成することにより形成することができる。
このようにLEDチップをセラミックパッケージに実装することで、電力効率が向上するのみならず、プラスチックを材料とするパッケージと比較して放熱性及び耐熱性に優れ、LEDチップを搭載して長時間、高輝度に発光可能な発光装置とすることができる。
導体配線305および光反射部303は、焼成されたタングステン(平均粒径約1μm)含有の樹脂ペースト(粘度約30000ps)がAgにより被覆されて構成されている。
【0133】
LEDチップ200は、パッケージの凹部底面に設けられる導体配線305の表面に絶縁性接着剤を介して固着されている。
このような発光装置は、以下のように形成することができる。
まず、アルミナを主成分としたグリーンシートを所定のサイズで切り出し、セラミック素地202の部分を形成する。さらに、タングステン含有の樹脂ペーストを導体配線305のパターンに従ってスクリーン印刷する。
また、LEDチップを収めることが可能な大きさの貫通孔を有するグリーンシートおよび一方の開口方向に内径が広くなる貫通孔を有するグリーンシートを形成する。さらに、形成されたグリーンシートは、タングステン含有の樹脂ペーストが光反射部303のパターンに従ってスクリーン印刷されセラミック素地304となる。
【0134】

このように形成された複数枚のグリーンシートを、貫通孔の中心を揃えた状態で重ね合わせ、真空中で加熱プレスしパッケージの凹部を仮形成する。
パンチングマシーンを使用して通常の方法で0.3mφのスルーホールを形成する。ここで、スルーホールは少なくとも正負一対形成され、正負それぞれ二つのスルーホールが対応するように形成される。次に、スクリーン印刷によりタングステン含有樹脂ペーストでスルーホールの孔を埋め、セラミックパッケージの外壁面に露出された導体配線306となる部分の印刷を行う。
【0135】
積層されたグリーンシートの一方の主面に所定のパターンに従って溝を形成する。ここで、溝は、スルーホールの中心を結ぶ線に沿って、セラミック基板の長手方向の溝と短手方向の溝との間に凹部が含まれるように、マトリックス状に形成される。溝形成後、焼結させることによってセラミックス基板を構成する。このとき、タングステン含有の樹脂ペーストを配した部分は第一の金属層となる。次に、第一の金属層の露出表面に対し、第二の金属層としてそれぞれNi/Ag多層膜を電気メッキする。これにより、光反射部303および導体配線305が形成され、開口部径2.0mmφ、開口部深さ0.8mm、のセラミック基板が得られる。
【0136】
一方、LEDチップ200は、実施例16に表された電極が形成され、主発光ピークが450nmのInGaN半導体層からなる。つまり、このLEDチップは、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜させることにより形成する。ドーパントガスとしてSiH4とCp2Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成する。(なお、P型半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある。)
【0137】
エッチングによりPN各半導体表面を露出させた後、スパッタリング法により、図16で示されるパターンの各電極をそれぞれ形成する。こうして得られた半導体ウエハーに対してスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子としてLEDチップとする。この青色系が発光可能なLEDチップをエポキシ樹脂でセラミックパッケージ凹部内の所定底辺にダイボンディング後、熱硬化により固定させる。その後、金線を導電性ワイヤとして用い、LEDチップの各電極と、導体配線とにワイヤ−ボンディングさせることにより電気的接続をとる。封止部材の形成材料としてシリコーン樹脂をLEDチップが配置されたセラミック基板の凹部内に注入する。ここで、シリコーン樹脂は、凹部を形成するセラミックパッケージの凹部側壁の上面付近まで注入され硬化される。また、シリコーン樹脂の一部は、硬化される際にセラミックの側壁内部に含浸するか、あるいは上面へ這い上がった状態で硬化される。例えば、発光観測面方向から見て凹部の全周囲にわたって、図21に示されるようにシリコーン樹脂の一部が凹部側壁上面のセラミックの部分に延在している。その延在している部分は、シリコーン樹脂の粘度やセラミックの焼結の程度により態様が異なるが、例えば、図21の拡大断面図において延在部分Yとして示されるように、凹部からこの凹部を形成する側壁の発光観測面側上面にかけて這い上がっている。また、シリコーン樹脂の一部は、側壁を形成する多孔質なセラミック中に含浸している。その含浸している部分は、シリコーン樹脂の粘度やセラミックの焼結の程度により態様が異なるが、例えば、図21の拡大断面図において含浸部分Xとして示される。
【0138】
シリコーン樹脂は、セラミックパッケージの発光観測面側主面をなすセラミック素地306に含浸、あるいは凹部から延在している。本実施例で得られる発光装置は、さらにリフローと呼ばれる工程を経て、導電性パターンを施した基板に対して半田を介して実装されるが、ここで、シリコーン樹脂が延在部分Yに形成されていること、またセラミック素地に含浸していることで、リフロー時に実装面側に配置される半田は、発光観測面側主面

のシリコーン樹脂にて発光面方向への這い上がりが抑制され、半田同士が接触したり、半田がセラミックパッケージ凹部の開口部を被覆することがない。従って、信頼性が高く外部の実装基板に接続することができる発光装置である。
【0139】
実施例21
この発光装置は、図23に示すように、封止部材307が、光反射部303を被覆することなく、LEDチップ200を少なくとも被覆するように形成する以外の構成が、実質的に実施例20の発光装置と同様である。
この場合も、図23の拡大断面図にYとして示されるように、セラミックパッケージの凹部側壁上面をシリコーン樹脂が被覆して形成され、さらにこのシリコーン樹脂の一部は、凹部側壁上面を形成するセラミック素地304内に含浸し、含浸部分Xを形成している。
【0140】
なお、この発光装置においては、封止部材中に蛍光物質を含有させてもよい。
蛍光物質は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させ、これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。さらにフラックスとしてフッ化バリウムを混合した後坩堝に詰め、空気中1400℃の温度で3時間焼成することにより焼成品が得られる。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して中心粒径が8μmである(Y0.995Gd0.0052.750Al512:Ce0.250蛍光物質を形成する。
【0141】
シリコーン樹脂組成物(屈折率1.53)に、上記蛍光物質(屈折率1.84)5.5wt%含有させ、自転公転ミキサーにて5分間攪拌を行う。こうして得られた硬化性組成物をセラミックパッケージの凹部内に充填させる。最後に、70℃×2時間、及び150℃×1時間熱処理を施す。これにより、発光素子からの発光と、該発光を吸収し異なる波長を有する光を出光する蛍光物質による蛍光との混色光が発光可能な発光装置とすることができる。特に、図23における封止部材307に蛍光体を含有させることにより、光反射部303は、混色光を効率よく発光観測面方向に反射させることができる。
【0142】
実施例22
p型半導体層の上に、900℃で、水素雰囲気下、TMGを4cc、アンモニア3.0リットル、キャリアガスとして水素ガスを2.5リットル導入し、p型クラッド層の上にMgを1.5×1020/cm3ドープしたp型GaNからなるp型コンタクト層を250Åの膜厚で成長させ、コンタクト層の表面を、例えば研磨して、表面の面粗さをRMS値3nm程度に調整する以外は、実施例1と、実質的に同様の発光装置を作製した。
これにより、実施例1の発光装置と同様の効果のほか、より一層Vfが低下し、面内分布が安定していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の半導体発光素子は、バックライト光源、ディスプレイ、照明、車両用ランプ等の各種光源を構成する半導体発光素子に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を構成元素として含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子であって、
前記導電性酸化物膜が、前記半導体層との界面近傍において複数の空隙を有することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
導電性酸化物膜が、表面側よりも半導体層側において密度が低い請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記導電性酸化物膜は、表面側において空隙を有しない請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記導電性酸化物膜は、表面側が平坦な膜である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を構成元素として含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子であって
前記導電性酸化物膜が、前記半導体層側の表面に凹凸を有し、凸部において半導体層と接し、凹部において空隙を有し、前記半導体層側と反対の表面が平坦な膜であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項6】
導電性酸化物膜は、構成元素とは異なる微量元素をさらに含む酸化物膜である請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
微量元素は、スズ、亜鉛、ガリウム、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素である請求項6に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
酸化物膜は、酸素以外の構成元素の20%以下で微量元素を含む請求項6又は7に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
酸化物膜は、半導体層との界面近傍における微量元素が、界面に対向する表面近傍の微量元素よりも濃度が高い請求項7又は8に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
酸化物膜は、微量元素の濃度が半導体層側表面から反対の表面にかけて単調減少してなる請求項7〜9のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
導電性酸化物膜がITO膜である請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項12】
400〜600nmにおける導電性酸化物膜の光の透過率が80%以上である請求項1〜11のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項13】
導電性酸化物膜の比抵抗が1×10-4Ωcm以下である請求項1〜12のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項14】
導電性酸化物膜の膜厚が100nm以上である請求項1〜13のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項15】
複数の空隙が、半導体層側から導電性酸化物膜の全膜厚に対して10〜50%の範囲に存在する請求項1〜14のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項16】
半導体発光素子が、第1導電型半導体層、発光層、第2導電型半導体層がこの順に積層され、前記第1導電型及び第2導電型半導体層にそれぞれ電極が接続されて構成されてなり、
導電性酸化物膜が少なくとも第2導電型半導体層上に形成されてなる請求項1〜15のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項17】
第1導電型半導体層がn型半導体層であり、第2導電型半導体層がp型半導体層である請求項16に記載の半導体発光素子。
【請求項18】
半導体発光素子が、第1導電型半導体層、発光層、第2導電型半導体層がこの順に積層され、前記第1導電型及び第2導電型半導体層にそれぞれ電極が接続されて構成されてなり、
第1導電型半導体層がn型の窒化物半導体層であり、第2導電型半導体層がp型の窒化物半導体層であり、さらに導電性酸化物膜に接するp型の窒化物半導体層が、p型コンタクト層として膜厚250Å以下の膜厚で、Mg濃度1.5×1020/cm3以上でMgを含有する請求項1〜15のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項19】
p型コンタクト層は、表面がRMS値3nm以下の面粗さである請求項18に記載の半導体発光素子。
【請求項20】
導電性酸化物膜の上に、さらに金属膜が形成されてなる請求項1〜19のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項21】
金属膜が、W、Rh、Ag、Pt、Pd、Al、Tiの単層膜又は積層膜又は合金により形成されてなる請求項20に記載の半導体発光素子。
【請求項22】
半導体層が窒化物半導体層である請求項1〜21のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項23】
半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子の製造方法であって、
半導体層側から表面にかけて空隙を有する導電性酸化物膜を形成する第1の工程と、
得られた導電性酸化物膜の上に、前記第1の工程の空隙より少ないか、または空隙を有しない導電性酸化物を形成する第2の工程とを備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項24】
半導体層上に、亜鉛、インジウム、スズ及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む導電性酸化物膜が電気的に接続されて構成される半導体発光素子の製造方法であって、
導電性酸化物膜を形成する第1工程と、
前記導電性酸化物膜を加熱して、導電性酸化物膜の半導体層側及びその近傍に空隙を存在させ、表面側を平坦化する第2工程とを備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項25】
導電性酸化物膜の加熱により、該導電性酸化物膜の結晶化を促進させる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
導電性酸化物膜は、構成元素とは異なる微量元素をさらに含む酸化物膜である請求項23〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
微量元素は、スズ、亜鉛、ガリウム、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
導電性酸化物膜がITO膜である請求項23〜27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
空隙が、半導体層側から導電性酸化物膜の全膜厚に対して10〜50%の範囲に存在する請求項23〜28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
前記半導体層が、窒化物半導体である請求項23〜29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
半導体層が、p型の窒化物半導体である請求項23〜30のいずれか1つに記載の方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【国際公開番号】WO2005/069388
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517107(P2005−517107)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000578
【国際出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】