説明

半導体素子及び半導体素子の製造方法

【課題】製造工程等で高温下に曝された場合であっても、半導体領域と電極との間での原子の相互拡散が抑制され、かつ界面抵抗の上昇が抑えられる半導体素子を提供すること、及びこのような半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、シリコンを含む半導体領域、アルミニウムを主成分として含む電極、及び上記半導体領域と電極との間に介在し、ゲルマニウムを含有する拡散防止層を備え、上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量が4原子%以上である半導体素子である。本発明の半導体素子の製造方法は、シリコンを含む半導体領域の表面に、ゲルマニウムを含むアルミニウム合金膜を形成する工程、及び上記アルミニウム合金膜が形成された半導体領域に熱処理を行う工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁ゲート(MOS)型の半導体装置が、大電力を制御するパワーデバイスとして普及している。上記MOS型半導体装置としては、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)や、パワーMOSFET(パワーMOS型電界効果トランジスタ)等が挙げられる。
【0003】
上記MOS型半導体装置として代表的なIGBTの一般的な構造を、図1を参照しつつ以下に説明する。図1のIGBT1は、p型のコレクタ層2、このコレクタ層2の表面に形成されるn型のベース層3、このベース層3の表面に分断されて形成されるp型のボディ領域4、この各ボディ領域4の表面に形成されるn型のエミッタ層5を備えている。このコレクタ層2,ベース層3、ボディ領域4及びエミッタ層5が、通常基板の内部に形成される部分である。上記コレクタ層2には、コレクタ電極6が接続されている。上記ベース層3のうち、2つのエミッタ層5間に位置する領域がチャネル領域7である。このIGBT1は、さらにチャネル領域7の表面に形成されるゲート絶縁膜8及びゲート電極膜9をこの順に有する。また、エミッタ層5の表面には、エミッタ電極10が形成されている。このエミッタ電極10とゲート電極9とは、層間絶縁膜11により絶縁されている。コレクタ電極6は、回路基板などにはんだ層を介して直接固定され、電気的に接続される。エミッタ電極10の表面には、金属製のワイヤーやリボンが接続され、これらを通じて外部端子に電気的に接続される。なお、コレクタ電極6等の電極には、純アルミニウムやアルミニウム合金からなるアルミニウム系電極等が用いられる。
【0004】
チャネル領域7がp型のIGBT1においては、エミッタ電極10に負のバイアス、コレクタ電極6に正のバイアスを印加するのと並行し、ゲート電極9に正のバイアスを印加する。このようにすることで、チャネル領域7に反転層が形成され、エミッタ層5とベース層3とが反転層で接続され、電流がコレクタ電流に流れることとなる。
【0005】
このようなIGBT1におけるn型半導体領域(ベース層3やエミッタ層5)及びp型半導体領域(コレクタ層2やボディ領域4)は、例えば、シリコン(Si)等からなる基板に、リン(P)、ヒ素(As)、ホウ素(B)等をイオン注入し、その後、活性化のための熱処理を行うことで形成される。なお、上記イオン注入は、各領域毎に定められたドーズ量、加速電圧、注入角度等にて行われ、熱処理も各領域毎に定められた温度、時間等で行われる。具体的には、上記IGBT1の製造プロセスにおいては、例えば基板表面にエミッタ電極10を形成後、基板の裏面よりコレクタ層2へのイオン注入を行う。次いで、450℃以下の熱処理を行うことによって活性化を行う。また、はんだにて接合する際は、250℃程度に加温されるリフロー工程がある場合がある。
【0006】
このような製造工程において、通常、上記熱処理の温度が高くなるほど、互いに接触する電極とシリコン(半導体領域)との間での原子の相互拡散が増大する(図3参照)。この相互拡散を防止するために、電極にシリコンが1〜数%含有されたAl−Si合金を用いることがある。しかし、このような合金を用いても、450℃以上の熱処理に対しては、上述の相互拡散を防止しきれない。なお、特許文献1には、コレクタ層を活性化する目的で800〜950℃の熱処理を施すことが記載されているが、この様な高温での熱処理は、電極の形成前に限られている。電極を形成した状態では、450℃以下の熱処理しか施されておらず、より高温で熱処理することについては記載されていない。
【0007】
このように、Al系電極を形成した状態で熱処理を行う場合、熱処理温度を450℃以上に高くすると、互いに接触する電極とシリコンとの間で原子の相互拡散が生じる。しかし、逆に熱処理温度を比較的低めにすると、コレクタ層の活性化に数時間もの時間を要したり、活性化が不十分となってしまう。係る観点から、従来は熱処理温度の上限は450℃程度であったが、昨今、特性向上の要求に対応すべく、より高温での熱処理必要性が高まっている。そこで、450℃よりも高温で熱処理しても上記相互拡散が発生しにくいAl系電極が求められている。また、上述の通り、はんだ接合の際は、250℃程度までの熱がAl系電極に加わることもあるが、このような熱処理に対しても相互拡散が発生しにくいAl系電極が求められている。
【0008】
このような中、上述の相互拡散を抑制させる技術として、特許文献2には、Al系電極と半導体領域との界面に拡散防止層としての窒化層を配する方法が開示されている。しかし、上記窒化層は、絶縁性のSiNやAlN等からなるため、界面抵抗が高まり、電力損失に繋がる。なお、上記窒化層を例えば10nm以下に十分薄くすればトンネル現象などにより抵抗をある程度抑えられるが、そもそも絶縁体であるためこの効果には限界がある。また、上記窒化層は薄くなるほど相互拡散もしやすくなるため、拡散防止性能と界面抵抗の低減とはトレードオフの関係にある。そのため、上記方法を用いる場合は、窒化層をバランスの良い厚さに精密に制御する必要があるが、現実的には非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−242699号公報
【特許文献2】特開2008−10801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、製造工程等で高温下に曝された場合であっても、半導体領域と電極との間での原子の相互拡散が抑制され、かつ界面抵抗の上昇が抑えられる半導体素子を提供すること、及びこのような半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた発明は、
シリコンを含む半導体領域、アルミニウムを主成分として含む電極、及び上記半導体領域と電極との間に介在し、ゲルマニウムを含有する拡散防止層を備え、
上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量が4原子%以上である半導体素子である。
【0012】
当該半導体素子によれば、半導体領域と電極との間に所定量のゲルマニウムを含む拡散防止層が介在するため、この間の原子の相互拡散を抑えることができる。また、当該半導体素子によれば、上記拡散防止層が半導体のゲルマニウムを含むことで、この拡散防止層の存在による界面抵抗の上昇を抑えることができる。
【0013】
上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量が4原子%以上50原子%以下であり、上記拡散防止層の膜厚が0.5nm以上100nm以下であるとよい。上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量及び膜厚を上記範囲とすることで、生産コストを抑えつつ、優れた拡散防止能を発揮させることができる。
【0014】
上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量が20原子%以上30原子%以下であり、上記拡散防止層の膜厚が1nm以上5nm以下であるとさらによい。上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量及び膜厚をさらに上記範囲に限定することで、上記効果をより高めることができる。
【0015】
本発明の半導体素子の製造方法は、
シリコンを含む半導体領域の表面に、ゲルマニウムを含むアルミニウム合金膜を形成する工程、及び
上記アルミニウム合金膜が形成された半導体領域に熱処理を行う工程
を有する。
【0016】
当該製造方法によれば、上記熱処理の際に半導体領域とアルミニウム合金膜との間に、ゲルマニウムを含む拡散防止層が形成されるため、この熱処理の際等における半導体領域とアルミニウム合金膜(電極)との間の原子の相互拡散を抑制することができる。
【0017】
従って、当該製造方法により得られた半導体素子は、半導体領域とアルミニウム合金膜(電極)との間の原子の相互拡散が抑制されており、また、拡散防止層が形成されているにもかかわらず、界面抵抗の上昇が抑えられている。
【0018】
ここで、元素の含有量(原子%)は、EDX(エネルギー分散型X線分析)を用いた元素分析による値である。また、上記拡散防止層の「一部」とは、上記分析の際の一の測定における測定領域をいう。上記拡散防止層の膜厚は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用い、任意の5点の膜厚を測定した平均値である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の半導体素子によれば、高温下に曝された場合であっても、半導体領域と電極との間における原子の相互拡散が抑制され、かつ界面抵抗の上昇が抑えられる。従って、当該半導体素子は、MOS型半導体装置等に好適に用いることができる。また、当該製造方法によれば、上述のような半導体素子を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一般的なIGBTを示す模式的断面図
【図2】実施例の半導体素子における半導体領域と電極との界面を示す断面TEM写真
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の半導体素子及び半導体素子の製造方法の実施の形態を詳説する。
【0022】
<半導体素子>
本発明の半導体素子は、半導体領域、電極、及び上記半導体領域と電極との間に介在する拡散防止層を備える。
【0023】
上記半導体領域は、シリコンを含む。上記半導体領域は、通常、シリコンを主成分として含む公知の半導体材料(シリコン基板、シリコンカーバイド基板等)から形成される。上記半導体領域は、シリコンの他、リン、ヒ素、ホウ素等を含有することで、通常のp型半導体又はn型半導体として機能する。
【0024】
上記電極は、上記拡散防止層を介して上記半導体領域と接している。後に詳述するように上記拡散防止層は絶縁性ではないため、上記電極は上記半導体領域に電気的に接続している。
【0025】
上記電極は、アルミニウムを主成分として含む。上記電極としては、公知の純アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができる。この合金成分としては、特に限定されず、シリコン、銅、窒素、希土類元素(ネオジム、イットリウム等)などを挙げることができる。
【0026】
上記拡散防止層は、上述のように半導体領域と電極との間に介在する。具体的には、例えば半導体領域がコレクタ層であり、電極がこのコレクタ層と電気的に接続するコレクタ電極である場合、上記コレクタ層とコレクタ電極との間に上記拡散防止層が介在する。また、半導体領域がエミッタ層であり、電極がこのエミッタ層と電気的に接続するエミッタ電極である場合、上記エミッタ層とエミッタ電極との間に上記拡散防止層が介在する。
【0027】
上記拡散防止層は、ゲルマニウムを含む。当該半導体素子によれば、ゲルマニウムを含む拡散防止層を有することで、高温(例えば450℃を超える温度)での熱処理を施しても半導体領域のシリコンと電極のアルミニウムとの相互拡散を抑えることができる。
【0028】
ここで、ゲルマニウムは半導体であるが、室温では抵抗率が約70μΩ・cmであり、金属に近い値を有する。従って、上記拡散防止層が仮にゲルマニウムのみから形成されている場合も、従来の絶縁性の拡散防止層(SiN等)の場合に比べて、界面抵抗を格段に下げることができる。また、当該半導体素子においては、ゲルマニウムを含む拡散防止層が存在するため、半導体領域中のケイ素とゲルマニウムとで、共有結合性を有するSi−Ge結合を形成させることができる。Si−Geも半導体であるが、熱が加わった際、電極のアルミニウムが自動的にアクセプタとしてドーピングされ、上記拡散防止層は低抵抗化する。
【0029】
このように、当該半導体素子によれば、ゲルマニウムを含む拡散防止層を有することで、この拡散防止層がゲルマニウムのみから形成されるか、他の元素(例えばケイ素等)を含むかにかかわらず、従来の拡散防止層に比して界面抵抗を下げることができる。なお、この界面抵抗は、上記拡散防止層の膜厚に対して敏感ではない。従って、当該半導体素子によれば、上記拡散防止層の膜厚を厳密に制御する必要性が高くないため、製造プロセスの制御条件を緩和でき、容易に拡散防止層を形成することができる。
【0030】
上記拡散防止層の少なくとも一部におけるゲルマニウム含有量の下限としては、4原子%であり、20原子%であることが好ましい。ゲルマニウム含有量を上記下限以上とすることで、上記拡散防止層が十分な拡散防止能を発揮することができる。
【0031】
このゲルマニウム含有量の上限としては、特に限定されないが、コスト面等を考慮すると、50原子%が好ましく、30原子%がより好ましい。上記上限以下とした場合においても、化学量論的及び実質的に十分なSi−Ge結合が形成されていると考えられ、十分な拡散防止能を発揮することができるとともに、低抵抗化を図ることができる。
【0032】
上記拡散防止層におけるゲルマニウム以外の成分としては、シリコンやアルミニウムを含むことができる。
【0033】
上記拡散防止層の少なくとも一部におけるシリコンの含有量の下限としては、4原子%が好ましく、20原子%がより好ましい。一方、この上限としては、50原子%が好ましく、30原子%がより好ましい。また、上記一部におけるゲルマニウム含有量(原子%)に対するシリコン含有量(原子%)としては、0.3以上3以下が好ましく、0.5以上2以下がより好ましい。上記拡散防止層におけるシリコン含有量を上記範囲とすることで、拡散防止層中に十分なSi−Ge結合を形成することができ、拡散防止能を高め、低抵抗化を図ることができる。
【0034】
上記拡散防止層の膜厚の下限としては、0.5nmが好ましく、1nmがより好ましい。膜厚を上記下限以上とすることで、上記拡散防止層が十分な拡散防止能を発揮することができる。
【0035】
なお、上記拡散防止層の膜厚が1nm以上であり、かつ、この拡散防止層の少なくとも一部におけるゲルマニウム含有量が20原子%以上である場合、例えば500℃20分の加熱においても、ほぼ100%の拡散防止能を発揮することができる。
【0036】
この拡散防止層の膜厚の上限としては、特に限定されないが、コスト面等を考慮すると、100nmが好ましく、5nmがより好ましい。
【0037】
このように当該半導体素子によれば、高温下に曝された場合であっても、半導体領域と電極との間における原子の相互拡散が抑制され、かつ界面抵抗の上昇が抑えられる。その結果、本発明を用いると、例えばIGBTの製造プロセスにおいて、コレクタ層のイオン活性化等のための熱処理を450℃以上の高温で行うことができる。このように高温で熱処理できると、工程時間を短縮でき、製造コストが低減できる。また、当該半導体素子によれば、高温熱処理により、コレクタ層等にイオン注入されたドーパントの活性化率が上がり、特性向上を実現できる。さらに、当該半導体素子によれば、動作中に何らかの原因でサージ的に電流が流れ、そのジュール熱により局所的に温度が急上昇した場合にも、原子の相互拡散を抑制することができるため、不可逆的破壊が起こりにくくなり信頼性が高まる。
【0038】
<半導体素子の製造方法>
当該半導体素子の製造方法としては、特に限定されず、
(1)シリコンを含む半導体領域の表面に、ゲルマニウムを含むアルミニウム合金膜を形成する工程、及び
上記アルミニウム合金膜が形成された半導体領域に熱処理を行う工程
を有する製造方法や、
(2)シリコンを含む半導体領域の表面に、スパッタ等により拡散防止層を形成する工程、及び
上記拡散防止層の表面にアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜を形成する工程
を有する製造方法等を用いることができる。なお、上記アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜が、得られた半導体素子において電極として機能する。
【0039】
これらの製造方法の中でも、上記(1)の製造方法が好ましい。上記(1)の製造方法においては、熱処理することにより、アルミニウム合金膜から界面にゲルマニウムが析出又は濃化する。そのため、熱処理の際に、半導体領域とアルミニウム合金膜との間に、ゲルマニウムを含む拡散防止層が形成される。従って、この熱処理の際等における半導体領域とアルミニウム合金膜との間の原子の相互拡散を抑制することができる。また、上記(1)の製造方法によれば、アルミニウム合金膜中のゲルマニウム含有量を調整すること等により、形成される拡散防止層の膜厚を容易に制御することができる。この場合、例えば、5nm以下の薄い拡散防止層の形成も比較的容易に行うことができ、高価なゲルマニウムの使用量を抑えることができる。
【0040】
従って、上記製造方法により得られた半導体素子は、半導体領域とアルミニウム合金膜(電極)との間の原子の相互拡散が抑制されており、また、拡散防止層が形成されているにもかかわらず、界面抵抗の上昇が抑えられている。
【0041】
上記アルミニウム合金膜を成膜する方法としては、特に限定されず、公知の方法(スパッタ法、蒸着法等)を用いることができる。
【0042】
上記アルミニウム合金膜におけるゲルマニウムの含有量としては、特に限定されないが、例えば、0.1原子%以上3原子%以下とすることができる。
【0043】
上記熱処理の方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。なお、上記熱処理は、半導体領域へのイオン注入後の活性化のための熱処理と兼用してもよいし、独立した熱処理を行ってもよい。
【0044】
上記熱処理の温度や時間も特に限定されない。温度としては、例えば300℃以上600℃以下とすることができる。時間としては、例えば5分以上1時間以下とすることができる。
【0045】
なお、当該半導体素子の製造において、上記工程以外(例えばイオン注入等)については、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
得られた半導体素子の拡散防止層における各成分の含有量及び膜厚を以下の方法にて測定した。
【0048】
<含有量>
各成分の含有量は、EDXライン分析により行った。このEDXライン分析は、電界放射型透過電子顕微鏡HF−2000(日立製作所製)及びこれに付加したEDX分析装置Sigma(Kevex製)を用いた。この際、EDXライン分析は約5nm間隔で測定点でデータ取得した。
【0049】
なお、用いた上記装置における入射電子ビーム径は1〜2nm程度だが、試料内部での電子線散乱の影響により5nm程度に拡がり、その情報を拾う。また、EDX分析半定量計算は、10%程度の誤差が生じる。従って、含有量の絶対値は分析点データの絶対値の側面だけでなく、ライン分析データの相対的意味合いももつことに注意して解釈すべきである。
【0050】
<膜厚>
TEM(上記電界放射型透過電子顕微鏡HF−2000(日立製作所製))を用い、拡散防止膜状の任意の5点の膜厚を測定し、この平均値をとった。
【0051】
[実施例1]
半導体領域としての単結晶シリコン基板(面方位100)表面に、マグネトロン・スパッタ法にて、ゲルマニウムを0.5原子%含むアルミニウム合金膜を成膜した。続いて、不活性ガス(N)雰囲気下にて、500℃20分間保持する熱処理を行った。このようにして、シリコン基板(半導体領域)とアルミニウム合金膜(電極)との間に拡散防止層を形成し、実施例1の半導体素子を得た。
【0052】
得られた半導体素子の拡散防止層における各成分の含有量及び膜厚を以下の方法にて測定した。各成分の含有量を表1に示す。また、得られた半導体素子の断面TEM写真を図2に示す。なお、表1における「ポイント」は、図2の矢印の位置をしめす。また、膜厚は、3.0nmであった。
【0053】
【表1】

【0054】
図2の断面TEM写真に示されるように、電極(Al)21と半導導体領域(Si)22との間に、拡散防止層23が形成されていることが確認されたとともに、AlとSiの相互拡散は見られなかった。
【0055】
この拡散防止層23は、アルミニウム合金膜に含まれていたGeが、熱処理のごく初期から半導体領域の界面に凝集し、Si−Geの共有結合により強固な層を形成したものであると考えられる。もし熱処理中に、部分的にでもAlとSiとが直接接する界面があったとすれば、AlとSiとの拡散速度は非常に高いため、その部分から拡散が既に起こっていて然るべきである。これが観察されないという事実から、熱処理のごく初期段階で拡散防止層が形成されており、熱処理後、界面(AlとSiとの間)にGeが濃化していること、その拡散防止の役割はGe又はGeとSiとの結合が担っていると判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の半導体素子は、IGBTやパワーMOSFET等のMOS型半導体装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 IGBT
2 コレクタ層
3 ベース層
4 ボディ領域
5 エミッタ層
6 コレクタ電極
7 チャネル領域
8 ゲート絶縁膜
9 ゲート電極膜
10 エミッタ電極
11 層間絶縁膜
21 電極(Al)
22 半導体領域(Si)
23 拡散防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む半導体領域、アルミニウムを主成分として含む電極、及び上記半導体領域と電極との間に介在し、ゲルマニウムを含有する拡散防止層を備え、
上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量が4原子%以上である半導体素子。
【請求項2】
上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量が4原子%以上50原子%以下であり、
上記拡散防止層の膜厚が0.5nm以上100nm以下である請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
上記拡散防止層の少なくとも一部のゲルマニウム含有量が20原子%以上30原子%以下であり、
上記拡散防止層の膜厚が1nm以上5nm以下である請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
シリコンを含む半導体領域の表面に、ゲルマニウムを含むアルミニウム合金膜を形成する工程、及び
上記アルミニウム合金膜が形成された半導体領域に熱処理を行う工程
を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により得られた半導体素子。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−26308(P2013−26308A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157571(P2011−157571)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】