説明

半導体装置、回路配線基板及び半導体装置の製造方法

【課題】信頼性の高い半導体装置を作製する。
【解決手段】回路配線基板20と半導体パッケージ10とを実装させた半導体装置1において、回路配線基板20の表面にパターニングされた電極21と、半導体パッケージ10に電極端子としてアレイ状に形成された半田11とが中間層30を介して電気的に接続されていることを特徴とする。中間層30は、加熱処理によって電極21の上に成長させた層であり、半田11の主たる成分及び電極21の主たる成分を共に含有している。これにより、半田11にかかる応力が緩和され、オープン不良が抑止された、信頼性の高い半導体装置1の実現が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置、回路配線基板及び半導体装置の製造方法に関し、特に実装技術を利用した半導体装置、回路配線基板及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器などの小型化、高密度化、高性能化に伴い、半導体装置の小型化及び高密度実装化が要求され、その要求に応えるため、BGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)といったエリアアレイ型と呼ばれるプラスチックパッケージ型半導体装置の需要が増加してきている。
【0003】
このような半導体装置の実装においては、半田ボールを介して半導体パッケージをプリント基板である回路配線基板に接続して、実装するのが一般的である。
図6は実装方法を説明する要部断面模式図であり、(A)は実装前のBGAと回路配線基板の要部断面模式図であり、(B)は実装後のBGAと回路配線基板の要部断面模式図である。
【0004】
図6(A)に示すように、BGA型の半導体パッケージ100の下面には、周期的に配列された半田ボール120が電極パッド110を介して形成されている。半田ボール120の材質は、例えばSn(錫)−Pb(鉛)(Sn−37Pb)共晶半田である。また、回路配線基板200上には、配線パターンとしての電極210が形成されている。電極210の材質は、例えば、Cu(銅)である。
【0005】
そして、図6(B)に示すように、半導体装置の下面に所定のピッチで形成された半田ボール120と、回路配線基板200上に形成された電極210との位置合わせを行い、リフローによって半導体パッケージ100と回路配線基板200を半田接合する。
【0006】
このような半導体装置は、半導体パッケージをリード線を介して回路配線基板に接合させた半導体装置と比較し、半導体パッケージ100を半田ボール120を介して回路配線基板200の電極210に電気的接続させているため、配線長が短くなり、高速電気特性に優れている。また、半田ボール120自体を半導体パッケージ100の下面に多数形成できるので、多ピン構造になり、素子の高密度化を図ることができる。
【0007】
ところで、半田ボールの材料としては、伸び特性が大きく、半田接続部の疲労寿命特性に優れているSn−Pb共晶半田をベースとした材料が用いられている。この材料は、伸び特性が大きいので回路配線基板の反りを吸収すると共に、回路配線基板の熱膨張による影響を緩和することができ、オープン不良が問題とならない。
【0008】
但し、近年、Sn−Pb共晶半田はPbを含有していることから、環境に与える影響が問題となり、その使用が規制されている。そして、最近では、半田に鉛を含まない、いわゆる、鉛フリー半田が使用されつつある。その材料は、Snを主成分とした材料、例えば、Sn−Ag(銀)−Cuで構成される材料である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−32724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、鉛フリー半田は、従来のSn−Pb共晶半田の融点である183℃と比較して約40℃程度高い217℃の融点を有する。Sn−Ag−Cu等を半田ボールとして実装に用いる場合、その融点がSn−Pb共晶半田よりも約40℃程度高くなり、室温と融点との温度差が約200℃になる。従って、このような材料の半田ボールを用いて実装を行うと、室温まで冷却したときに回路配線基板と半導体パッケージの熱膨張差に起因して変形が生じ易いということが問題になっている。特に、半導体パッケージの外周部においては、変形の影響が大きい。例えば、30mm角を超えるような大型パッケージになるほど、外周部におけるオープン不良(接合部の剥がれによる導通不良)が生じ易くなる。
【0011】
また、鉛フリー半田の機械的性質、例えば弾性率(ヤング率)や引張強さ等は、Sn−Pb共晶半田と比較して大きい。その結果、伸び特性が低下し、疲労寿命特性に悪影響を及ぼすことが問題になっている。特に、最近のBGA型の半導体パッケージでは、微細化を図るために、半田ボール径を600〜750μmφ、半田ボール配列のピッチを1〜1.5mmにしたサイズを使用することもある。その結果、半田接合部界面での応力集中がより著しくなる。そして、同様に半導体パッケージ外周部において回路オープン不良が生じ易くなる。
【0012】
さらに、鉛フリー半田の融点がより高温であるため、半田ボールと電極との接合界面に生成する反応相が充分に成長しないという問題がある。その結果、落下衝撃といった動的歪みに対する実装後の半導体装置の強度低下が問題となっている。
【0013】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、鉛フリー半田を用いた場合に発生するオープン不良を抑止し、信頼性の高い半導体装置、回路配線基板及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では上記課題を解決するために、図1に例示する構成で実現可能な半導体装置1が提供される。本発明の半導体装置1は、回路配線基板20と半導体パッケージ10とを実装させた半導体装置1であり、回路配線基板20の表面にパターニングされた電極21と、半導体パッケージ10に電極端子として形成された半田11とが錫銅合金(CuSn合金)を主たる成分とする中間層30を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0015】
このような半導体装置1によれば、回路配線基板20の電極21と、半導体パッケージ10に形成された半田11とが中間層30を介して電気的に接続される。
また、回路配線基板20は、半導体パッケージ10に形成された半田11の主たる成分と、電極21の主たる成分を共に含有するCuSn合金を主たる成分とする層(中間層30)を電極21の上に備えていることを特徴とする。
【0016】
また、半導体装置1の製造方法は、回路配線基板と半導体パッケージとを実装する半導体装置の製造方法であり、前記回路配線基板に配設された電極の表面が開口するようにレジストを前記回路配線基板の上にパターニングする工程と、開口された前記電極の上に、銅錫合金(CuSn合金)を含む中間層を形成する工程と、前記中間層を形成した後に、前記中間層と、前記半導体パッケージに形成されている半田とをリフローにて接合する工程と、を有することを特徴としている。
【0017】
このような半導体装置の製造方法によれば、回路配線基板に配設された電極の表面が開口するようにレジストが回路配線基板の上にパターニングされ、開口された電極の上に、CuSn合金を含む中間層が形成され、中間層が形成された後に、中間層と、半導体パッケージに形成されている半田とがリフローにて接合される。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、回路配線基板の表面にパターニングされた電極と、半導体パッケージに電極端子として形成された半田とをCuSn合金を主たる成分とする中間層を介して電気的に接続するようにした。
【0019】
また、回路配線基板には、半導体パッケージに形成される半田の主たる成分と、回路配線基板の電極の主たる成分を共に含有するCuSn合金を主たる成分とする層を電極の上に備えるようにした。
【0020】
また、半導体装置の製造方法においては、回路配線基板に配設された電極の表面が開口するようにレジストを回路配線基板の上にパターニングし、開口された電極の上に、CuSn合金を含む中間層を形成し、中間層を形成した後に、中間層と、半導体パッケージに形成されている半田とをリフローにて接合するようにした。
【0021】
これにより、半田にかかる応力が緩和され、オープン不良が抑止された、信頼性の高い半導体装置、回路配線基板及び半導体装置の製造方法の実現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】半導体装置の実装構造を説明する要部断面模式図である。
【図2】電解めっき法による半導体装置の製造工程を説明する要部断面模式図である。
【図3】印刷法による半導体装置の製造工程を説明する要部断面模式図である。
【図4】信頼性試験の結果を説明する図である。
【図5】CuSn層の膜厚と最大応力との関係を説明する図である。
【図6】実装方法を説明する要部断面模式図であり、(A)は実装前のBGAと回路配線基板の要部断面模式図であり、(B)は実装後のBGAと回路配線基板の要部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は半導体装置の実装構造を説明する要部断面模式図である。実装後の半導体装置1は、樹脂で封止されたBGA型の半導体パッケージ10と、回路配線基板20と、半導体パッケージ10と回路配線基板20とを電気的に接続するボール状の半田11を備えた構造をしている。半田11は、ボール状であり、電極端子として半導体パッケージ10にアレイ状に形成されている。
【0024】
半導体パッケージ10の下面には、電極パッドとしてのCu層13とNi(ニッケル)層12を介して、半田11が周期的に形成されている。尚、Ni層12の表面にはAu(金)がめっきされている(不図示)。また、半田11の材質としては、鉛フリーの材料を用いている(後述)。
【0025】
また、回路配線基板20は、例えば、ガラスエポキシ樹脂で構成され、その表面には電極21がパターニングされている。電極21の材質は、例えば、その主成分がCuである。そして、電極21と半田11の間には、例えばCuSnで構成された厚膜の中間層30が形成されている。即ち、半田11と電極21とは、直接的に接合せず、厚膜の中間層30を介して半田11と電極21とを接合させている。即ち、電極21と半田11とが中間層30を介して電気的に接続されている。
【0026】
ここで、中間層30は、後述する加熱処理によって、電極21上に成長させた層である。加熱処理によって、中間層30を成長させた結果、電極21と中間層30とは、それぞれの金属成分が固相拡散し、強固に密着している。また、中間層30にSnが含有していることから、半田11と中間層30とは、後述するリフローによってもそれぞれの金属成分が固相拡散し、強固に密着している。即ち、中間層30は、半田11の主成分及び電極21の主成分を共に含有している材料で構成されている。
【0027】
このように、本発明の実施の形態では、半田11及び電極21が半田11及び電極21と組成の異なる中間層30を介して接合されている。
ところで、CuSn層自体は、半田11と電極21とを直接的に接合させた場合でも、リフローによって半田11と電極21との界面に生成することが知られている。但し、リフローのみでの加熱処理で生成するCuSn層の膜厚は、1μm程度またはそれ以下であり、非常に薄く、半田11にかかる応力を充分に減少させることができない。
【0028】
然るに、本発明の実施の形態においては、予め5μm以上の厚膜の中間層30を備え、半田11と電極21とを直接的に接合せず、厚膜の中間層30を介して半田11と電極21とを接合させている。その結果、半導体パッケージ10と回路配線基板20の熱膨張差に起因して生じる半田11にかかる応力が半田11と電極21とを直接的に接合させた場合に比べ緩和される。
【0029】
そして、本発明の実施の形態においては、上述したように、半田11として鉛フリーの材料を用いている。
具体的には、半田11を構成する材料の主成分であるSnに対し、Bi(ビスマス)、In(インジウム)、Zn(亜鉛)、Ag、Cuの少なくとも一つの元素を添加した材料を用いている。このような元素をSnに添加すると、半田11自体の融点を下げることができる。これにより、半田接合プロセスの低温化を達成することができ、純粋なSnを半田11の材料とした場合に比べ、室温まで冷却させたときに半田11にかかる応力をより減少させることができる。
【0030】
また、主成分であるSnに対し、Ag、Inの少なくとも一つの元素を添加させると、ボール状の半田の弾性率の低減及び伸び特性の向上を図ることができ、機械的特性が向上する。
【0031】
また、主成分であるSnに対し、Sb(アンチモン)を添加させてもよい。Sbを添加することにより、半田11の融点が上昇するが、他の部位の半田接合を行う場合、Sbを添加させた半田11の融点が高くなるために、当該半田11が溶融し難くなり、プロセスで生じるオープン不良を防止できるという利点がある。
【0032】
また、主成分であるSnに対し、Cuを添加させてもよい。Cuを添加することにより、半田11に拡散されるCuを所定の量に制限することができる。
そして、以上の添加剤は一つに限らず、主成分であるSnにBi、In、Zn、Ag、Cu、Sbの少なくとも一つの元素を組み合わせて添加した材料を用いてもよい。
【0033】
尚、ここに示した半導体装置は一例であり、半導体パッケージ10の代用として、例えばLGA(Land Grid Array)型の半導体パッケージを用いてもよい。この場合、半田はボール状ではなく、島状になる。
【0034】
また、中間層30にも、Bi、In、Zn、Ag、Cu、Sbの少なくとも一つの元素を添加させてもよい。
次に、図1に示す半導体装置の実装構造を製造する工程について説明する。
【0035】
以下に説明する製造工程においては、図1に示す中間層30を生成するために、SnまたはCuSn合金を、電解めっき法または印刷法によって電極21上に形成し、中間層としてのCuSn層(Cu6Sn5)を成長させる2つの製造プロセスを説明する。
【0036】
(第1の製造プロセス)
図2は電解めっき法による半導体装置の製造工程を説明する要部断面模式図である。先ず、図2(a)に示すように、回路配線基板20上にパターン形成した電極21の表面を開口するように、レジストパターン22を形成した後、電極21の表面に、図1に示す中間層30の原材料となる被膜を形成する。具体的には、電解めっき法によりSnめっき膜31を中間層30の原材料となる被膜として、5〜7μm程度形成する。尚、電極21の厚さは、例えば、10μmである。
【0037】
続いて、図2(b)に示すように、図2(a)のレジストパターン22を除去した後、Snめっき膜31を無酸素雰囲気中の加熱処理によってCuSn層32に変化させる。ここで、図2(a)のSnめっき膜31にCuが含有し、図2(b)に示すようなCuSn層32となるのは、無酸素雰囲気中での加熱処理によって、電極21の材料であるCuがSnめっき膜31中に固相拡散するためである。
【0038】
CuSn層32の膜厚の調整は、150℃以上300℃以下の範囲での温度と加熱時間を設定し、無酸素雰囲気中の加熱処理によって所望の膜厚となるまで、CuSn合金相を成長させることにより行う。即ち、中間層となるCuSn層32の膜厚を加熱温度または加熱時間で制御する。具体的には、窒素雰囲気の電気炉内にて、220℃で、15時間以上20時間以下での加熱処理を行った場合、成長させたCuSn層32の膜厚は、例えば、10μmになる。そして、RMタイプのフラックスをCuSn層32表面に塗布する。
【0039】
このように、電極21の上に、図1に示すボール状の半田11の主成分と、電極21の主成分を共に含有するCuSn層32を備えた回路配線基板20を予め作製する。
次に、図2(c)に示すように、半導体パッケージ10の半田11とCuSn層32との位置合わせし、対向させる。そして、互いに矢印の方向で、半導体パッケージ10と回路配線基板20とを接近させ、半田11とCuSn層32とを接触させる。そして、窒素雰囲気のコンベア炉において、最高加熱温度250℃、2分の条件で半田11とCuSn層32とをリフローによって半田付けによって接合する。接合した後の実装構造は、図1に示す半導体装置になる。CuSn層32が図1に示した中間層30であることは言うまでもない。
【0040】
尚、半田11の材質は、一例として、主成分であるSnにAgとCuを添加させたSn−3.0Ag−0.5Cu(融点217℃)である。また、半田11の径は600〜750μmφであり、ボール状の半田11の配列ピッチは、1〜1.5mmである。
【0041】
尚、CuSn層32にBi、In、Zn、Ag、Cu、Sbの少なくとも一つの元素を添加させてもよい。
(第2の製造プロセス)
図3は印刷法による半導体装置の製造工程を説明する要部断面模式図である。先ず、図3(a)に示すように、回路配線基板20上にパターン形成した電極21の表面を開口するように、レジストパターン22を形成した後、電極21の表面に、図1に示す中間層30の原材料となる被膜を形成する。具体的には、CuSn合金粉末を混合した半田ペースト膜33を中間層30の原材料となる被膜として、スクリーン印刷法によりスキージング形成する。尚、半田ペースト膜33の金属含有量は90wt%である。また、電極21の厚さは、例えば、10μmである。
【0042】
続いて、例えば、210〜230℃で数分、予備加熱を行い、図3(a)の半田ペースト膜33に含有する有機物を除去し、金属成分だけを固化し、一体化する。
そして、図3(b)に示すように、レジストを除去し、固化させた半田ペースト膜33を無酸素雰囲気中の加熱処理によってCuSn層(Cu6Sn5)34に変化させる。このCuSn層34が図1に示した中間層30になる。尚、半田ペースト膜33には、予めCuが含有しているが、無酸素雰囲気中での加熱処理によって、電極21の材料であるCuが半田ペースト膜33中に固相拡散する。その結果、スクリーン印刷をした直後の半田ペースト膜33に比べ、膜厚が大きいCuSn層34が成長する。
【0043】
ここで、CuSn層34の膜厚の調整は、150℃以上300℃以下の範囲での温度と加熱時間を設定し、無酸素雰囲気中の加熱処理によって所望の膜厚となるまで、CuSn合金相を成長させることにより行う。即ち、中間層となるCuSn層34の膜厚を加熱温度または加熱時間で制御する。具体的には、窒素雰囲気の電気炉内にて、220℃で、15時間以上20時間以下での加熱処理を行う。成長させたCuSn層34の膜厚は、例えば、10μmである。そして、RMタイプのフラックスをCuSn層34表面に塗布する。
【0044】
このように、電極21の上に、図1に示す半田11の主成分と、電極21の主成分を共に含有するCuSn層34を備えた回路配線基板20を予め作製する。
その後は、図2(c)と同様の工程によって、図1に示す半導体装置を作製する。
【0045】
尚、CuSn層34にBi、In、Zn、Ag、Cu、Sbの少なくとも一つの元素を添加させてもよい。
次に、以上の工程で製造した実装後の半導体装置の信頼性試験についての検討を行った。信頼性試験で用いた試料は、第1の製造プロセス(電解めっき法)で作製した半導体装置Aと、第2の製造プロセス(印刷法)で作製した半導体装置Bと、上記CuSn層を設けず、半田11と電極21とを直接半田接合させた半導体装置Cである。
【0046】
また、信頼性試験は、試験イ及び試験ロの2種類で行った。
試験イは、実装後の半導体装置を−55℃に冷却し、30分間保持する。そして、125℃まで上昇させた後、30分間保持する。そして、再び−55℃に冷却し、30分間保持する。そして、再び125℃まで上昇させた後、30分間保持するという加速試験を500サイクル行うものである。
【0047】
試験ロは、実装後の半導体装置を床面から高さ10cmから自由落下させ、床面での衝撃を半導体装置に200サイクル与えるものである。また、それぞれの試料の個数は、20個作製した。
【0048】
図4は信頼性試験の結果を説明する図である。結果は、半導体装置Aでは、試験イ及び試験ロのいずれの試験においても、ボール状の半田と中間層であるCuSn層との界面、中間層であるCuSn層と回路配線基板上の電極との界面にオープン不良は生じなかった。また、半導体装置Aについては、試験イ及び試験ロ終了後においても、接合界面における電気的導通を確保した。
【0049】
半導体装置Bでは、試験イ及び試験ロのいずれの試験においても、ボール状の半田と中間層であるCuSn層との界面、中間層であるCuSn層と回路配線基板上の電極との界面にオープン不良は生じなかった。また、半導体装置Bについては、試験イ及び試験ロ終了後においても、接合界面における電気的導通を確保した。
【0050】
一方、半導体装置Cでは、試験イにおいて、ボール状の半田と回路配線基板上の電極との界面に7個の半導体装置にオープン不良が生じた。また、試験ロにおいて、15個の半導体装置にオープン不良が生じた。
【0051】
このように、第1の製造プロセス(電解めっき法)で作製した半導体装置Aと、第2の製造プロセス(印刷法)で作製した半導体装置Bは、半導体装置Cよりも信頼性が高いことが分かった。
【0052】
また、回路配線基板の電極上に形成させたCuSn層の膜厚を変化させた場合に、ボール状の半田にかかる応力がどのように変化するのか、有限要素法によるシミュレーション解析により検討した。
【0053】
図5はCuSn層の膜厚と最大応力との関係を説明する図である。横軸は、電極の膜厚とCuSn層の膜厚とを合計した膜厚に対するCuSn層の膜厚の比率(%)を表している。また、縦軸は、ボール状の半田にかかる最大応力値(MPa)を表している。電極の幅は、600〜750μmφである。
【0054】
この図から、比率が0%近くでは、最大応力値が175(MPa)に及ぶことが分かった。即ち、CuSn層をボール状の半田と電極の間に設けず、ボール状の半田を電極に直接接合させた場合は、最大応力値が最大になることが分かった。そして、CuSn層の膜厚を徐々に増加させ、比率が25%になると、最大応力値が120(MPa)に減少し、その後、比率を増加させても最大応力値の減少は飽和する傾向にあることが分かった。即ち、電極の膜厚とCuSn層の膜厚とを合計した膜厚に対するCuSn層の膜厚の比率(%)として、25%以上70%以下になるCuSn層を回路配線基板の電極上に形成させることにより、回路配線基板の電極界面付近での最大応力がCuSn層を形成させない場合、または形成させても1μm(比率10%)以下の場合に比べ、3分の2以下に減少する効果があることが分かった。
【0055】
ところで、上記の半導体装置においては、回路配線基板の電極からボール状の半田までの構成がCu/CuSn合金/Sn−Ag−Cu半田といった成分の異なる3種類の金属を備えた構造をしている。ここで、機械的性質である弾性率を比較すると、Cu>CuSn合金>Sn−Ag−Cu半田の順に減少する。
【0056】
弾性率の値では、CuとCuSnで2倍の差があり、CuSnとSn−Ag−Cuで2倍の差がある。従って、CuとSn−Ag−Cuでは約4倍の弾性率の差がある。即ち、上記多層構造では、CuSn層をボール状の半田と電極の間に設けず、ボール状の半田を電極に直接接合させた場合に比べ、弾性率が接合界面を隔てて大幅に減少するのではなく、弾性率が複数の接合界面を隔てて徐々に減少する実装構造が形成していると考えられる。
【0057】
(付記1) 回路配線基板と半導体パッケージとを実装させた半導体装置において、
前記回路配線基板の表面にパターニングされた電極と、前記半導体パッケージに電極端子として形成された半田とが中間層を介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【0058】
(付記2) 前記中間層が加熱処理によって前記電極の上に成長させた層であり、前記中間層の材料が前記半田の主たる成分及び前記電極の主たる成分を含有していることを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0059】
(付記3) 前記半田が鉛(Pb)フリー半田であることを特徴とする付記1または2記載の半導体装置。
(付記4) 前記半田の材料は、主たる成分が錫(Sn)であり、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)から選択された少なくとも一つの元素を添加した前記半田であることを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0060】
(付記5) 前記電極の主たる成分が銅(Cu)であることを特徴とする付記1または2記載の半導体装置。
(付記6) 前記中間層の主たる成分が銅錫合金(CuSn合金)であることを特徴とする付記1または2記載の半導体装置。
【0061】
(付記7) 前記電極の膜厚及び前記中間層の膜厚を合計した膜厚に対する前記中間層の膜厚の割合の下限が25%であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0062】
(付記8) 前記電極の膜厚及び前記中間層の膜厚を合計した膜厚に対する前記中間層の膜厚の割合が25%以上70%以下であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0063】
(付記9) 表面に電極がパターニングされた回路配線基板であって、前記電極の上に、半導体パッケージに形成された半田の主たる成分と、前記電極の主たる成分を共に含有する層が備えられた回路配線基板。
【0064】
(付記10) 前記半田が鉛(Pb)フリー半田であることを特徴とする付記9記載の回路配線基板。
(付記11) 前記半田の材料は、主たる成分が錫(Sn)であり、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)から選択された少なくとも一つの元素を添加した前記半田であることを特徴とする付記9または10記載の回路配線基板。
【0065】
(付記12) 前記電極の主たる成分が銅(Cu)であることを特徴とする付記9記載の回路配線基板。
(付記13) 前記層の主たる成分が銅錫合金(CuSn合金)であることを特徴とする付記9記載の回路配線基板。
【0066】
(付記14) 前記電極の膜厚及び前記層の膜厚を合計した膜厚に対する前記層の膜厚の割合の下限が25%であることを特徴とする付記9乃至13のいずれか一項に記載の回路配線基板。
【0067】
(付記15) 前記電極の膜厚及び前記層の膜厚を合計した膜厚に対する前記層の膜厚の割合が25%以上70%以下であることを特徴とする付記9乃至13のいずれか一項に記載の回路配線基板。
【0068】
(付記16) 回路配線基板と半導体パッケージとを実装する半導体装置の製造方法において、
前記回路配線基板に配設された電極の表面が開口するようにレジストを前記回路配線基板の上にパターニングする工程と、
開口された前記電極の上に、中間層の原材料となる被膜を形成する工程と、
形成された前記原材料を加熱処理して、前記電極の上に前記中間層を成長させる工程と、
成長させた前記中間層と、前記半導体パッケージに形成されている半田とを接合する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0069】
(付記17) 前記電極の主たる成分が銅(Cu)であることを特徴とする付記16記載の半導体装置の製造方法。
(付記18) 前記原材料が錫(Sn)または銅錫合金(CuSn合金)であることを特徴とする付記16記載の半導体装置の製造方法。
【0070】
(付記19) 前記原材料が錫(Sn)である場合には、電解めっき法により、前記電極の上に錫(Sn)の前記被膜を形成することを特徴とする付記16または18記載の半導体装置の製造方法。
【0071】
(付記20) 前記原材料が銅錫合金(CuSn合金)である場合には、印刷法により、前記電極の上に銅錫合金(CuSn合金)の前記被膜を形成することを特徴とする付記16または18記載の半導体装置の製造方法。
【0072】
(付記21) 印刷法により、ペースト状の銅錫合金(CuSn合金)を前記電極の上に塗布し、予備加熱によって銅錫合金(CuSn合金)の前記被膜を前記電極の上に形成することを特徴とする付記20記載の半導体装置の製造方法。
【0073】
(付記22) 前記半田が鉛(Pb)フリー半田であることを特徴とする付記16記載の半導体装置の製造方法。
(付記23) 前記半田の材料は、主たる成分が錫(Sn)であり、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)から選択された少なくとも一つの元素を添加した前記半田であることを特徴とする付記16または22記載の半導体装置の製造方法。
【0074】
(付記24) 前記電極の上に前記中間層を成長させる工程においては、無酸素雰囲気下で、前記原材料を150℃以上300℃以下の温度範囲で、15時間以上20時間以下の加熱処理を行うことを特徴とする付記16乃至23のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0075】
(付記25) 成長させた前記中間層の主たる成分が銅錫合金(CuSn合金)であることを特徴とする付記16乃至24のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記26) 前記中間層の膜厚を加熱温度または加熱時間で制御することを特徴とする付記16乃至25のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0076】
(付記27) 前記電極の膜厚及び前記中間層の膜厚を合計した膜厚に対する前記中間層の膜厚の割合の下限が25%であることを特徴とする付記16乃至26のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0077】
(付記28) 前記電極の膜厚及び前記中間層の膜厚を合計した膜厚に対する前記中間層の膜厚の割合が25%以上70%以下であることを特徴とする付記16乃至26のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体装置
10 半導体パッケージ
11 半田
12 Ni層
13 Cu層
20 回路配線基板
21 電極
22 レジストパターン
30 中間層
31 Snめっき膜
32,34 CuSn層
33 半田ペースト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路配線基板と半導体パッケージとを実装させた半導体装置において、
前記回路配線基板の表面にパターニングされた電極と、前記半導体パッケージに電極端子として形成された半田とが錫銅合金(CuSn合金)を主たる成分とする中間層を介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記中間層の材料が前記半田の主たる成分及び前記電極の主たる成分を含有していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半田が鉛(Pb)フリー半田であることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電極の主たる成分が銅(Cu)であることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項5】
表面に電極がパターニングされた回路配線基板であって、前記電極の上に、半導体パッケージに形成された半田の主たる成分と、前記電極の主たる成分を共に含有する錫銅合金(CuSn合金)を主たる成分とする層が備えられた回路配線基板。
【請求項6】
回路配線基板と半導体パッケージとを実装する半導体装置の製造方法において、
前記回路配線基板に配設された電極の表面が開口するようにレジストを前記回路配線基板の上にパターニングする工程と、
開口された前記電極の上に、銅錫合金(CuSn合金)を含む中間層を形成する工程と、
前記中間層を形成した後に、前記中間層と、前記半導体パッケージに形成されている半田とをリフローにて接合する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−19244(P2012−19244A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232391(P2011−232391)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2006−332123(P2006−332123)の分割
【原出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】