半導体装置の製造プロセス最適化手法及び半導体装置の製造方法
【課題】電気的に重要な箇所の寸法精度を向上し、性能・歩留まり向上、チップコスト低減の効果を得る。
【解決手段】半導体装置の製造プロセス最適化手法は、回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて露光プロセスにより回路設計データに基づいたパターンを基板上に形成する。この最適化手法は、フォトマスクを用いて第1露光条件で第1露光装置にて基板上に形成されるパターンと、フォトマスクを用いて第2露光条件で第2露光装置にて基板上に形成されるパターンとの、予め定めた複数の箇所における差分の分布に基づく統計量を算出する際に、回路設計データより抽出した電気的特性情報に基づいて差分に重み付けをした上で統計量を算出する工程と、第2露光条件を変化させて算出する工程を繰り返し、変化させた第2露光条件の中で合計が最小或いは所定の基準値以下となる露光条件を第2露光装置の最適露光条件21として選定する工程(S27)とを含む。
【解決手段】半導体装置の製造プロセス最適化手法は、回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて露光プロセスにより回路設計データに基づいたパターンを基板上に形成する。この最適化手法は、フォトマスクを用いて第1露光条件で第1露光装置にて基板上に形成されるパターンと、フォトマスクを用いて第2露光条件で第2露光装置にて基板上に形成されるパターンとの、予め定めた複数の箇所における差分の分布に基づく統計量を算出する際に、回路設計データより抽出した電気的特性情報に基づいて差分に重み付けをした上で統計量を算出する工程と、第2露光条件を変化させて算出する工程を繰り返し、変化させた第2露光条件の中で合計が最小或いは所定の基準値以下となる露光条件を第2露光装置の最適露光条件21として選定する工程(S27)とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造プロセス最適化手法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、タイミングマージンの少ないパス(クリティカルパス:Critical path)など、電気的特性上のマージンが少ない箇所は、レイアウト上から読み取ることが難しいため、プロセス側で考慮して製造することが難しい。近年のリソグラフィプロセス設計においては、同世代のあらゆる製品レイアウトにおいて製造歩留りを高めるため、デザインルールで許容されたパターンピッチ、形状全てにおいて充分なプロセスマージンを保てるような露光条件(開口数(NA)、絞り、照明形状等)を算出し選択する。さらに実際に量産を行う露光装置においては、複数の装置を用いるが、装置間には性能における差異が存在する。これらの差異を補償するために、種々の露光パラメータ(開口数(NA)、輪帯照明の外径(σ_Out)、輪帯照明の内径(σ_In)、照明系に対するウエハの傾き(Tilt)等)を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111385号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proc. of SPIE Vol.7640,76402U
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、例えばデザインルール内から200通りのパターンピッチを選択し、基準となる装置・条件から得た寸法データと、評価対象の装置・条件における寸法データの最小二乗法による差分が最小となるように照明条件を探索する方法がある。しかし、このような方法では、タイミングマージンの少ないパス(クリティカルパス)など、電気的特性上のマージンが少ないパターンとマージンに余裕があるパターンを同等に扱うため、電気的特性歩留まりを考慮した装置設定が出来ず、結果として電気的特性歩留りを効果的に向上することが出来ないという問題がある。半導体設計ルールの微細化に伴い、製造プロセスの困難度が増大し、製造バラツキが増大する。製造ばらつき分を見込んで設計をするものの、設計マージンの少ない回路、即ち、バラつきに弱い電気的危険箇所は増加してきている。従って、電気的な重要性(設計インテント)を考慮したプロセス管理を行うことが、所望の回路動作性能を達成するために必要となってくる。
【0006】
本発明の一つの実施形態は、電気的に重要な箇所の寸法精度が向上し、性能・歩留まり向上、チップコスト低減の効果が得られる半導体装置の製造プロセス最適化手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法は、回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて露光プロセスにより当該回路設計データに基づいたパターンを半導体基板上に形成する。半導体装置の製造プロセス最適化手法は、前記フォトマスクを用いて第1の露光条件で第1の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンと、前記フォトマスクを用いて第2の露光条件で第2の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンとの、予め定めた複数の箇所における差分の分布に基づく統計量を算出する際に、前記回路設計データより抽出した電気的特性情報に基づいて前記差分に重み付けをした上で前記統計量を算出する工程と、前記第2の露光条件を変化させて前記算出する工程を繰り返し、変化させた前記第2の露光条件の中で前記合計が最小或いは所定の基準値以下となる露光条件を前記第2の露光装置の最適露光条件として選定する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態の比較例にかかる照明条件最適化フローを示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の照明条件最適化フローを示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかるクリティカルパスの変動を最小限に留めたチューニング(照明条件最適化)の効果を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の最適化のクリティカルパスの配線幅とクリティカルパス以外の配線幅に対する効果を比較例と比較した具体例を示す図である。
【図5】図5は、第2の実施形態の比較例にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法フローを示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法フローを示す図である。
【図7】図7は、第2の実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法による効果を模式的に示した図である。
【図8】図8は、第3の実施形態の比較例においてウエハ上のパターン寸法バラつきから露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図9】図9は、第3の実施形態においてウエハ上のパターン寸法バラつきから露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図10】図10は、第3の実施形態の別の例において露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図11】図11は、第3の実施形態のさらに別の例において露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図12】図12は、第3の実施形態にかかる露光量調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法及び半導体装置の製造方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法はプロセス条件の最適化に関し、例えば同一の製品に対する同一のフォトマスクを異なる露光装置で用いて同一の製品を製造する場合に適用可能である。
【0011】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法ついて説明する前に、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明する。図1は、比較例としての露光装置横展開時の露光パラメータ微調整による照明条件最適化フローの例を示す図である。
【0012】
まず、レイアウトの中でパターンの形状にのみ着目した場合において、リソグラフィプロセスにおいてプロセス変動に対する寸法変動が大きく、プロセスマージンの少ない歩留り危険パターン、例えばL字形状や突き当て形状等のパターンを多数含んだマスクである横展開判定マスク10に対して、測定パターンの測定箇所の選定(ステップS10)を行う。
【0013】
そして第1の露光装置Aでは、最適化用の上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)によってウエハ1に対して露光を実行し(ステップS11)、ステップS10で選定された測定パターンにおける寸法測定を行う(ステップS12)。寸法測定で測定したパターンの寸法から、ある設計レイアウトに対応するあるマスクパターンから光学シミュレーションを行いウエハ上に形成されるパターンを予測する汎用的なシミュレーションモデルを作成する(ステップS13)。このシミュレーションモデルは使用した露光装置の特性および照明条件が反映したモデルとなっている。
【0014】
実際に照明条件の微調整を行う第2の露光装置Bでは、上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)および照明条件(基本条件)から露光パラメータを様々に変更した複数条件(調整条件)によってウエハ2に対して露光を実行し(ステップS14)、ステップS12と同様の寸法測定を行い(ステップS15)、シミュレーションモデルを作成する(ステップS16)。ここで露光パラメータとしては、例えば、開口数(NA)、照明形状、照明系に対するウエハの傾きをはじめとする種々の条件のうち1つ以上を変更するものとする。
【0015】
そして、ウエハ上のパターンの評価対象として予め定めた複数の箇所において、ステップS13で求めたシミュレーションモデルの予測パターンと、露光装置Bの照明条件の変化に応じて変化するステップS16で求めたシミュレーションモデルの変化する予測パターンとの寸法変動の差分の平均二乗偏差(RMS: Root Mean Square)が最小となる露光装置Bの照明条件、または寸法変動の差分が所定の範囲内に収まる露光装置Bの照明条件を最適条件として算出する(ステップS17)。即ち、開口数(NA)、照明形状、照明系に対するウエハの傾きをはじめとする種々の条件についての最適条件11を算出する(ステップS17)。
【0016】
ステップS17で決定された最適条件11の下、ウエハ3に対して露光装置Bにおいて再度露光を行い(ステップS18)、ウエハ3の検証を行う(ステップS19)。最適化された照明条件では、リソグラフィー工程におけるパターン寸法が最も目論見通りになるよう調整されており、露光装置間に発生する誤差を緩和している。これにより、露光装置の変更によるパターン形状の寸法変動を抑えることができるので、露光装置A用に作成したフォトマスクを露光装置Bでもそのまま使用できることになる。
【0017】
次に、本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法としての照明条件最適化フローの例を図2に示す。
【0018】
まず、レイアウトの中で形状的な部分にのみ着目して寸法変動がリソグラフィー的に厳しい注意すべき危険パターン、例えばL字形状が向かい合っているパターン等を含んだマスクである横展開判定マスク10に対して、測定パターンの選定(ステップS20)を行う。
【0019】
そして第1の露光装置Aでは、最適化用の上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)によってウエハ1に対して露光を実行し(ステップS21)、ステップS10で選定された測定パターンにおける寸法測定を行う(ステップS22)。寸法測定で測定したパターンの寸法から、ある設計レイアウトに対応するマスクパターンからウエハ上に形成されるパターンを予測する汎用的なシミュレーションモデルを作成する(ステップS23)。
【0020】
実際に照明条件の微調整を行う第2の露光装置Bでは、上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)および照明条件(基本条件)から露光パラメータを様々に変更した複数条件(調整条件)によってウエハ2に対して露光を実行し(ステップS24)、ステップS22と同様の寸法測定を行い(ステップS25)、シミュレーションモデルを作成する(ステップS26)。ここで露光パラメータは、例えば、開口数(NA)、照明形状、照明系に対するウエハの傾きをはじめとする種々の条件のうち1つ以上を変更する。また、第2の露光装置Bで変動させるプロセス条件として、照明形状、照明分布、偏光状態、動的フォーカス設定、マスク種類、露光量、収差、レジスト種、レジスト膜厚、PEB(Post Exposure Bake)、現像条件のいずれか一つ以上を含むようにしてもかまわない。
【0021】
本実施の形態においては、この後、ウエハ上のパターンの評価対象として予め定めた複数の箇所において、ステップS23で求めたシミュレーションモデルの予測パターンと、露光装置Bの照明条件の変化に応じて変化するステップS26で求めたシミュレーションモデルの変化する予測パターンとの寸法変動の差分のRMSが最小となる露光条件、または寸法変動の差分が所定の範囲内に収まる露光条件を求めるにあたり、製品マスク20の中で電気的特性上クリティカルなパターン(クリティカルパス:C.P.)に重み付けして計算する。即ち、差分の分布に基づく統計量に重み付けをして計算する。
【0022】
電気的特性上クリティカルなパターンとは、例えば、所望の電気的特性を維持するための半導体基板上に形成されるパターンの変動マージンが所定の基準値よりも小さい回路パターンである。回路設計データより抽出された回路パターンが電気的特性上クリティカルかどうかを判定するための情報としては、セル設計およびチップ設計の段階で、トランジスタ、プリミティブセル、セルの集合であるインスタンス、パス、ネット毎にタイミング検証により得られるタイミング解析情報を用いることができる。さらに詳細な電気的特性としては、IR-Dropによる電源電圧の低下、遅延時間、クロックスキュー値、シグナルインテグリティ、クロストーク、プロセス変動モデル、ホットエレクトロン効果、エレクトロマイグレーション効果、デバイスの信頼性、リソグラフィー(Trバラつき、配線バラつき、マルチVth)、エッチング、ストレス、チップ内の温度バラつきなどを考慮することができる。
【0023】
具体的には、製品マスク20の中で電気的特性上クリティカルな回路に対応するパターンを抽出して、それと同じあるいはそれに近いパターンを上記予測パターンから探し出し、露光装置Bの照明条件の最適条件の算出の際に、当該箇所の電気的特性上のマージンを考慮して上述した差分の分布に基づく統計量に重み付けを行った上で最適条件の算出を実施する(ステップS27)。即ち、比較例のステップS17においては単純に寸法変動の差分の絶対値の合計を算出していたのに対し、本実施の形態においては電気的特性上クリティカルな回路に対応するパターンにおける寸法変動の差分には重み付けをして絶対値の合計を算出する(ステップS27)。この合計値の値が、第2の露光装置Bについて変化させた露光条件の中で最小、あるいは所定の基準値以下となる露光条件を第2の露光装置Bの最適露光条件として選択する。これにより最適条件の決定時には電気的特性上クリティカルな回路に対応するパターンの寸法変動は極力抑えることが可能となりデバイスの電気的特性が極力変動しない露光装置Bの照明条件を最適条件として選定できるようなる。なお、上記最適化においては、設定された許容寸法変動量情報を対応する回路レイアウトパターン上に関連づけた図形(トランジスタおよび配線)データを作成し、それを元にプロセス条件探索を実施してもよい。
【0024】
これにより、電気的特性上のマージンが小さいパターンにおいては、他のパターンに比較してパターン重要度を高めるように考慮した条件の算出を実施することが可能となる。具体的には、設計レイアウトが持っているパターンの電気的特性上のマージンに関する情報に注目して、電気的特性上のマージンが小さく細かい調整が必要な部分(クリティカルな回路に対応するパターン)と、電気的特性上のマージンが大きく多少の寸法変動があってもデバイス特性にあまり影響を与えない部分に分けて、デバイス特性への影響が大きいクリティカルなパターンに注目してデバイスの設計基準を満たすように露光装置Bにおける露光最適条件を調整する。従って、同一のフォトマスクを用いた場合に露光装置Aで作成したデバイスに対して露光装置Bで作成したデバイスのデバイス性能の変動を抑えることが可能となる。
【0025】
このように決定された最適条件21(照明条件)の下、ウエハ3に対して露光装置Bにおいて再度露光を行い(ステップS28)、ウエハ3の検証を行う(ステップS29)。図3に、本実施の形態にかかるクリティカルパスの変動を最小限に留めたチューニング(照明条件最適化)の概念図を示す。図3の横軸はパターンのバリエーションで、縦軸は光近接効果変動、即ち露光装置が変わることによる形成されるパターンの寸法変動である。同一製品を同じマスクを用いて異なる露光装置で製造する場合、マスクごとに最適化されたクリティカルパスを重視した本実施の形態による照明条件(C.P.重視Tuning)では、比較手法(通常Tuning)に比較して電気的特性の危険度をプロセス側で緩和しており、電気的特性の歩留まりがさらに向上する。
【0026】
より、具体的に示せば、例えば図4に示すように、スタンダードセルのトランジスタ上のゲートとして機能する部分の配線幅に着目した場合、クリティカルパス上のゲートに係わる配線幅Aの変動ΔAと、非クリティカルパス上のゲートに係わる配線幅Bの変動ΔBとを考えてみる。比較例の最適化においては、パターン形状のみ重視して最適化していたので、幅Aも幅Bも全て同じものとして、一律に露光時のパラメータを調整する。従って、例えば図4の右の表に示すように、比較例の最適化では、露光装置を変化させたときの変動ΔAおよびΔBが、ΔA=ΔB=3とある程度同じになるような照明条件が設定されていた。
【0027】
これに対して、本実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法により、例えばクリティカルパス上である配線幅AについてはΔA=2と寸法変動を抑えることが可能となり、回路の電気的特性歩留まりを効果的に向上することが可能となる。この場合回路の電気的特性が保障できるのであれば、例えば非クリティカルパス上である配線幅BについてはΔB=9と寸法変動に対する基準を緩めてもかまわない。
【0028】
(第2の実施形態)
第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法はSMO(Source Mask Optimization:光源輝度分布・形状、マスク形状の最適化を行う技術)に関し、例えば同じ露光装置で異なる製品に対応する異なるフォトマスクを用いて異なる製品を作る場合に適用可能である。この例では、マスク上のパターンと対応する電気的特性情報を元に、SMO(Source Mask Optimization)による光源最適化を行っている。SMOとは、照明形状とマスク上のパターン形状を同時に最適化しウエハ上で所望のパターン形状および寸法を得る手法である。ここでのSMOとしては照明形状の最適化を行う。
【0029】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法ついて説明する前に、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明する。図5は、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明するフロー図である。
【0030】
図5のステップS51において入力されたリソグラフィー設計の段階でデザインルール内のマージンが少ないマスクパターン、例えば、その世代のラインアンドスペースパターンの代表例となるパターンに対して、SMOにより最適化(ステップS52)された条件である照明形状に対して通常のリソグラフィーシミュレーションを行う(ステップS53)。そして、リソグラフィーシミュレーションにより得られたウエハ上に解像されると予測されるパターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうか判定する(ステップS54)。形状、寸法、およびマージンが基準を満たさなかった場合(ステップS54:No)は危険パターン(プロセスマージンが不足するパターン)を代表パターンに追加し(ステップS55)、追加された代表パターンを入力して(ステップS51)、再度照明形状を最適化する(ステップS52)。その後、リソグラフィーシミュレーションを行い(ステップS53)、形状、寸法、およびマージンが基準を満たせば(ステップS54:Yes)、基本的にデザインルールの世代毎に共通に最適化された一つの照明条件であるSMO基準条件50が得られる。
【0031】
SMO基準条件50が得られたら、フルチップのマスクパターンデータを入力して(ステップS56)、OPC(Optical Proximity Correction)を考慮したマスク形状の最適化(ステップS57)、リソグラフィーシミュレーション(ステップS58)を実行して、ウエハ上のパターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうか判定する(ステップS59)。パターン形状、寸法、およびプロセスマージンが基準を満たさなかった場合(ステップS59:No)は、実際に基準を満たさなかった歩留り危険パターンであるホットスポットパターンを代表パターンに追加し(ステップS60)、ステップS51からやり直す。パターン形状、寸法、およびマージンが基準を満たした場合は、マスクデータの完成である(ステップS61)。
【0032】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法においては、図6のフローに示すように、基本的なパターンバリエーションを考慮したベースとなる条件(SMO基準条件60)を一旦作っておき、さらに製品ごとに異なるクリティカルパスを用いて最適化を実施し(SMOオーダーメイド(ステップS77))、製品レイアウトにカスタマイズした条件を準備することを特徴としている。
【0033】
図6のフローの代表パターン入力(ステップS71)、SMO(ステップS72)、リソグラフィーシミュレーション(ステップS73)、ウエハ上パターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうかの判定(ステップS74)、危険パターン(プロセスマージンが不足するパターン)の追加(ステップS75)を経て、SMO基準条件60を得るまでの流れは、図5に示した比較例と同様である。
【0034】
本実施形態の図6のフローでは、SMO基準条件60をもとに、例えば複数のチップA、B、Cのチップ毎に、フルチップのマスクパターンデータを入力する(ステップS76−1、S76−2、S76−3)。この各マスクパターンデータはそれぞれ独自のクリティカルパスを含んでいる。その後、本実施形態においては、各チップ別の回路設計データより抽出された回路パターンの電気的特性情報に基づいて、所望の電気的特性を維持するためのウエハ上のパターンの変動マージンがより小さい回路パターンはプロセスマージンがより大きくなるように、露光装置の照明条件とフォトマスクの形状とを共に最適化する(SMOオーダーメイド)(ステップS77−1、S77−2、S77−3)。具体的には、クリティカルパスに対して重み付けをして各チップ別のSMOを実行する。例えば、電気的特性を考慮した寸法変動許容度の小さいパス・セル・図形に含まれるレイアウトを抽出し、これを対象として、当該許容度内に収まるように照明形状の最適化を行う。
【0035】
その後、各チップ別にそれぞれ、OPC(Optical Proximity Correction)を考慮したマスク形状の最適化(ステップS78−1、S78−2、S78−3)、リソグラフィーシミュレーション(ステップS79−1、S79−2、S79−3)を実行して、ウエハ上のクリティカルパスを含むパターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうか判定する(ステップステップS80−1、S80−2、S80−3)。その結果、電気的にクリティカルなパスのマージンがクリティカルパスに対する基準を満たさなかった場合(ステップステップS80−1:No、S80−2:No、S80−3:No)、該当するクリティカルパターンを代表パターンに追加して(ステップS81)、SMO基準条件60をつくり直す。なお、ステップS80−1、S80−2、S80−3では、形状のみに着目したパターンについても基準を満たすか否かが判定され、満たさない場合は(ステップステップS80−1:No、S80−2:No、S80−3:No)、危険パターンであるホットスポットパターンを代表パターンに追加する(ステップS81)。ステップS80−1、S80−2、S80−3で、クリティカルパスが所望のマージンを満たし、ホットスポットパターンの検出も無い場合は(ステップステップS80−1:Yes、S80−2:Yes、S80−3:Yes)、マスクデータが完成する(ステップS82−1、S82−2、S82−3)。これにより、製品ごとのクリティカルパスに注力した最適化によるオーダーメイドが可能となる。
【0036】
本実施形態の図6に示した半導体装置の製造プロセス最適化手法により、電気的にクリティカルなパターンに着目したプロセス条件を選ぶことが可能となる様子を図7に模式的に示す。クリティカルパスに特化してマージンを向上させる場合のイメージを示す。図7の横軸はパターンのバリエーションで、縦軸はプロセスマージンである。プロセスマージンは露光量およびフォーカス値からなる2次元の値であるが、ここではプロセスウインドウよりマージンが取れるかどうかという観点から1次元に模式化してある。通常の照明条件では、必要プロセスウインドウに対してマージンが取れないパターンが生じても、SMOを実行して得られたデザインルールの世代毎に共通に最適化された一つの照明条件であるSMO基準条件により必要プロセスウインドウ以上のマージンは確保される。本実施形態のクリティカルパスに特化したSMOにより、パターンバリエーション全体のマージンを確保しつつ、クリティカルパスに対して十分大きなマージンを得ることが可能となる。
【0037】
(第3の実施形態)
第3の実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法はウエハ上のパターンの寸法バラつきの分布を調整するための露光量の調整、即ち露光機における露光量の調整マップに関する。
【0038】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法ついて説明する前に、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明する。この例においては、露光量調整マップを作成してウエハ上の寸法バラつきを低減する。
【0039】
設計レイアウトを元にフォトマスクを作成し、フォトマスク上のパターンの寸法バラつきの分布を測定する。次にMEEF(Mask Error Enhancement Factor)を実験またはリソグラフィーシミュレーション等を用いて求めて、ウエハ上のパターンの寸法バラつきの分布を測定する。MEEFは、マスクを等倍マスクに換算した場合、マスク上の寸法変動がウエハ上で何倍に増大するかを示す値であり、(ウエハ上での寸法変動)=MEEF×(マスクの寸法変動)の関係にある。
【0040】
次に、ウエハ上のパターン寸法バラつきが少なくなるように、露光機における露光量の調整マップを作成し、この露光量調整マップに基づいて露光を行う。ウエハ上の寸法バラつきを考慮して露光量の調整マップを作成する例を図8に示す。比較例においてはウエハ上の寸法バラつきを考慮し、調整領域ごとの寸法の太め/細めバラつきを考慮し、調整領域内のより多くのパターンが寸法どおりに仕上がるように、図8の下に示した露光量調整マップに示すように露光量を調整する。即ち、二次元的にメッシュで区分した部分領域毎に調整する。
【0041】
このとき、比較例においてはパターンの寸法については考慮するが、設計における回路的特性、電気的特性を考慮していない。このため、回路的に重要ではないパターンを所望寸法どおりに仕上げる一方、重要なパターンが寸法どおりに仕上がらず、所望の回路特性が達成できないことが懸念される。
【0042】
そこで本実施形態においては、露光量調整マップを作成する際に、回路的特性および電気的特性的にクリティカルな回路上のパターンの位置情報を考慮する。回路的特性および電気的特性的にクリティカルな回路上のパターンとは、回路設計データより抽出された電気的特性情報に基づいて所定の電気的特性を維持するためには、ウエハ上に形成されたパターンの変動マージンが所定の値より小さい回路パターンである。たとえば図9においては、クリティカルな回路上のパターン91〜94の位置を鑑みて、クリティカルな回路のパターン寸法が所望どおりに仕上がるように図9の下に示した露光量調整マップにて露光量調整領域内の露光量を調整する。
【0043】
本実施形態の別の例としては、図10の露光量調整マップに示すようにクリティカルな回路上のパターン91〜94の位置を鑑みて、クリティカルな回路のパターンを含む領域の露光量調整領域をさらに細分化して細分化した領域毎に設定することにより、クリティカル回路上のパターンが所望の寸法に仕上がるように調整領域内の露光量を調整する。
【0044】
本実施形態のさらに別の例としては、図11の露光量調整マップに示すようにクリティカルな回路上のパターン91〜94に関して、近傍の領域における露光量と回路的特性を鑑み、良好な回路的特性が得られる値に露光量を調整する。たとえばEM(エレクトロマイグレーション)危険箇所に関して、電流密度が局部的に高くならないように太めに仕上がる値に露光量調整領域の値を調整する。
【0045】
以上説明した、本実施形態にかかる露光量調整方法について、図12にフローチャートを示す。まず、与えられた設計データよりレイアウトを作成する(ステップS91)。次にマスクデータを作成し(ステップS92)、マスクデータ上の寸法測長箇所を指定する(ステップS93)。ステップS93で指定した箇所のマスクの寸法を測長し(ステップS94)、マスクの寸法バラつきの分布を得る(ステップS95)。ここで得られたマスクの寸法バラつきの分布から上述したMEEFを用いてウエハ上のパターンの寸法分布を得る(ステップS96)。ウエハ上のパターンの寸法分布から、回路的特性および電気的特性的にクリティカルな回路上のパターンの位置情報を考慮して上述したように露光量マップを作成する(ステップS97)。露光量マップに基づき二次元上で分割された領域毎に露光量を調整して露光する(ステップS98)ことにより、クリティカルな回路上のパターンが所望の電気特性を維持したパターンとしてウエハ上に作成することができる。
【0046】
本実施形態では、パターンと対応する電気的特性情報を元に、露光におけるドーズマッピング手法を用いて露光ドーズ最適化を行っている。露光面におけるスリット方向、スキャン方向におけるドーズバラつきを測定し、場所ごとの最適なドーズをマッピングして露光を行う。
【0047】
比較例においてはマスク、ウエハ上パターンの寸法の分布をもとに露光量の補正値を算出し、露光ドーズを決めていた。回路的重要な箇所、電気特性的にマージンの少ない箇所を考慮することなく、ドーズを決めていたため、電気特性マージンが不足したり、デバイス特性に不良を生じたりする危険があった。
【0048】
本実施形態においては、回路的重要な箇所、電気特性的にマージンの少ない箇所を考慮して露光ドーズをマッピングする。電気特性的マージンの少ない箇所に関して、必要に応じてマージンが増加する方向にドーズを調整する。これにより、電気的に重要な箇所の寸法精度が向上し、性能・歩留まり向上、チップコスト低減の効果が見込まれる。
【0049】
なお、上記第1乃至第3の実施形態においては、セル設計、チップ設計において電気的特性上クリティカルなネット、セルインスタンス、トランジスタ、図形を抽出し、プロセス変動を考慮した検証を行ってネット、セルインスタンス、トランジスタ、図形ごとに許容度を割り当てることができる。そして設計データの完成時にはネット、セルインスタンス、トランジスタ、図形とそれらに対応する許容度をレイアウト・データと共にテープ・アウトする。半導体装置製造における露光装置の照明条件等を決定する際に、タイミングマージンの少ないパスなど電気特性上のマージンが少ない箇所のプロセス許容度を考慮した露光パラメータの微調整を実施する。
【0050】
これにより、電気的特性とパターン毎のプロセス許容度を考慮して、必要な箇所に必要なマージンを持たせることが可能となり、電気的に正しく回路動作する半導体装置を効率的に製造することが可能となる。即ち、電気的特性に関する歩留まりを向上し、より短いTAT(Turn Around Time)でより品質の高いレイアウトとデバイス性能を有した半導体回路を製造できることになるので、チップコストの低減が可能となる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 横展開判定マスク、20 製品マスク、50、60 SMO基準条件、91〜94 クリティカルな回路上のパターン。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造プロセス最適化手法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、タイミングマージンの少ないパス(クリティカルパス:Critical path)など、電気的特性上のマージンが少ない箇所は、レイアウト上から読み取ることが難しいため、プロセス側で考慮して製造することが難しい。近年のリソグラフィプロセス設計においては、同世代のあらゆる製品レイアウトにおいて製造歩留りを高めるため、デザインルールで許容されたパターンピッチ、形状全てにおいて充分なプロセスマージンを保てるような露光条件(開口数(NA)、絞り、照明形状等)を算出し選択する。さらに実際に量産を行う露光装置においては、複数の装置を用いるが、装置間には性能における差異が存在する。これらの差異を補償するために、種々の露光パラメータ(開口数(NA)、輪帯照明の外径(σ_Out)、輪帯照明の内径(σ_In)、照明系に対するウエハの傾き(Tilt)等)を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111385号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proc. of SPIE Vol.7640,76402U
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、例えばデザインルール内から200通りのパターンピッチを選択し、基準となる装置・条件から得た寸法データと、評価対象の装置・条件における寸法データの最小二乗法による差分が最小となるように照明条件を探索する方法がある。しかし、このような方法では、タイミングマージンの少ないパス(クリティカルパス)など、電気的特性上のマージンが少ないパターンとマージンに余裕があるパターンを同等に扱うため、電気的特性歩留まりを考慮した装置設定が出来ず、結果として電気的特性歩留りを効果的に向上することが出来ないという問題がある。半導体設計ルールの微細化に伴い、製造プロセスの困難度が増大し、製造バラツキが増大する。製造ばらつき分を見込んで設計をするものの、設計マージンの少ない回路、即ち、バラつきに弱い電気的危険箇所は増加してきている。従って、電気的な重要性(設計インテント)を考慮したプロセス管理を行うことが、所望の回路動作性能を達成するために必要となってくる。
【0006】
本発明の一つの実施形態は、電気的に重要な箇所の寸法精度が向上し、性能・歩留まり向上、チップコスト低減の効果が得られる半導体装置の製造プロセス最適化手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法は、回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて露光プロセスにより当該回路設計データに基づいたパターンを半導体基板上に形成する。半導体装置の製造プロセス最適化手法は、前記フォトマスクを用いて第1の露光条件で第1の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンと、前記フォトマスクを用いて第2の露光条件で第2の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンとの、予め定めた複数の箇所における差分の分布に基づく統計量を算出する際に、前記回路設計データより抽出した電気的特性情報に基づいて前記差分に重み付けをした上で前記統計量を算出する工程と、前記第2の露光条件を変化させて前記算出する工程を繰り返し、変化させた前記第2の露光条件の中で前記合計が最小或いは所定の基準値以下となる露光条件を前記第2の露光装置の最適露光条件として選定する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態の比較例にかかる照明条件最適化フローを示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の照明条件最適化フローを示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態にかかるクリティカルパスの変動を最小限に留めたチューニング(照明条件最適化)の効果を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の最適化のクリティカルパスの配線幅とクリティカルパス以外の配線幅に対する効果を比較例と比較した具体例を示す図である。
【図5】図5は、第2の実施形態の比較例にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法フローを示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法フローを示す図である。
【図7】図7は、第2の実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法による効果を模式的に示した図である。
【図8】図8は、第3の実施形態の比較例においてウエハ上のパターン寸法バラつきから露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図9】図9は、第3の実施形態においてウエハ上のパターン寸法バラつきから露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図10】図10は、第3の実施形態の別の例において露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図11】図11は、第3の実施形態のさらに別の例において露光量調整マップを作成する様子を示した図である。
【図12】図12は、第3の実施形態にかかる露光量調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法及び半導体装置の製造方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法はプロセス条件の最適化に関し、例えば同一の製品に対する同一のフォトマスクを異なる露光装置で用いて同一の製品を製造する場合に適用可能である。
【0011】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法ついて説明する前に、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明する。図1は、比較例としての露光装置横展開時の露光パラメータ微調整による照明条件最適化フローの例を示す図である。
【0012】
まず、レイアウトの中でパターンの形状にのみ着目した場合において、リソグラフィプロセスにおいてプロセス変動に対する寸法変動が大きく、プロセスマージンの少ない歩留り危険パターン、例えばL字形状や突き当て形状等のパターンを多数含んだマスクである横展開判定マスク10に対して、測定パターンの測定箇所の選定(ステップS10)を行う。
【0013】
そして第1の露光装置Aでは、最適化用の上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)によってウエハ1に対して露光を実行し(ステップS11)、ステップS10で選定された測定パターンにおける寸法測定を行う(ステップS12)。寸法測定で測定したパターンの寸法から、ある設計レイアウトに対応するあるマスクパターンから光学シミュレーションを行いウエハ上に形成されるパターンを予測する汎用的なシミュレーションモデルを作成する(ステップS13)。このシミュレーションモデルは使用した露光装置の特性および照明条件が反映したモデルとなっている。
【0014】
実際に照明条件の微調整を行う第2の露光装置Bでは、上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)および照明条件(基本条件)から露光パラメータを様々に変更した複数条件(調整条件)によってウエハ2に対して露光を実行し(ステップS14)、ステップS12と同様の寸法測定を行い(ステップS15)、シミュレーションモデルを作成する(ステップS16)。ここで露光パラメータとしては、例えば、開口数(NA)、照明形状、照明系に対するウエハの傾きをはじめとする種々の条件のうち1つ以上を変更するものとする。
【0015】
そして、ウエハ上のパターンの評価対象として予め定めた複数の箇所において、ステップS13で求めたシミュレーションモデルの予測パターンと、露光装置Bの照明条件の変化に応じて変化するステップS16で求めたシミュレーションモデルの変化する予測パターンとの寸法変動の差分の平均二乗偏差(RMS: Root Mean Square)が最小となる露光装置Bの照明条件、または寸法変動の差分が所定の範囲内に収まる露光装置Bの照明条件を最適条件として算出する(ステップS17)。即ち、開口数(NA)、照明形状、照明系に対するウエハの傾きをはじめとする種々の条件についての最適条件11を算出する(ステップS17)。
【0016】
ステップS17で決定された最適条件11の下、ウエハ3に対して露光装置Bにおいて再度露光を行い(ステップS18)、ウエハ3の検証を行う(ステップS19)。最適化された照明条件では、リソグラフィー工程におけるパターン寸法が最も目論見通りになるよう調整されており、露光装置間に発生する誤差を緩和している。これにより、露光装置の変更によるパターン形状の寸法変動を抑えることができるので、露光装置A用に作成したフォトマスクを露光装置Bでもそのまま使用できることになる。
【0017】
次に、本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法としての照明条件最適化フローの例を図2に示す。
【0018】
まず、レイアウトの中で形状的な部分にのみ着目して寸法変動がリソグラフィー的に厳しい注意すべき危険パターン、例えばL字形状が向かい合っているパターン等を含んだマスクである横展開判定マスク10に対して、測定パターンの選定(ステップS20)を行う。
【0019】
そして第1の露光装置Aでは、最適化用の上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)によってウエハ1に対して露光を実行し(ステップS21)、ステップS10で選定された測定パターンにおける寸法測定を行う(ステップS22)。寸法測定で測定したパターンの寸法から、ある設計レイアウトに対応するマスクパターンからウエハ上に形成されるパターンを予測する汎用的なシミュレーションモデルを作成する(ステップS23)。
【0020】
実際に照明条件の微調整を行う第2の露光装置Bでは、上記横展開判定マスク10を用いて、元となる照明条件(基本条件)および照明条件(基本条件)から露光パラメータを様々に変更した複数条件(調整条件)によってウエハ2に対して露光を実行し(ステップS24)、ステップS22と同様の寸法測定を行い(ステップS25)、シミュレーションモデルを作成する(ステップS26)。ここで露光パラメータは、例えば、開口数(NA)、照明形状、照明系に対するウエハの傾きをはじめとする種々の条件のうち1つ以上を変更する。また、第2の露光装置Bで変動させるプロセス条件として、照明形状、照明分布、偏光状態、動的フォーカス設定、マスク種類、露光量、収差、レジスト種、レジスト膜厚、PEB(Post Exposure Bake)、現像条件のいずれか一つ以上を含むようにしてもかまわない。
【0021】
本実施の形態においては、この後、ウエハ上のパターンの評価対象として予め定めた複数の箇所において、ステップS23で求めたシミュレーションモデルの予測パターンと、露光装置Bの照明条件の変化に応じて変化するステップS26で求めたシミュレーションモデルの変化する予測パターンとの寸法変動の差分のRMSが最小となる露光条件、または寸法変動の差分が所定の範囲内に収まる露光条件を求めるにあたり、製品マスク20の中で電気的特性上クリティカルなパターン(クリティカルパス:C.P.)に重み付けして計算する。即ち、差分の分布に基づく統計量に重み付けをして計算する。
【0022】
電気的特性上クリティカルなパターンとは、例えば、所望の電気的特性を維持するための半導体基板上に形成されるパターンの変動マージンが所定の基準値よりも小さい回路パターンである。回路設計データより抽出された回路パターンが電気的特性上クリティカルかどうかを判定するための情報としては、セル設計およびチップ設計の段階で、トランジスタ、プリミティブセル、セルの集合であるインスタンス、パス、ネット毎にタイミング検証により得られるタイミング解析情報を用いることができる。さらに詳細な電気的特性としては、IR-Dropによる電源電圧の低下、遅延時間、クロックスキュー値、シグナルインテグリティ、クロストーク、プロセス変動モデル、ホットエレクトロン効果、エレクトロマイグレーション効果、デバイスの信頼性、リソグラフィー(Trバラつき、配線バラつき、マルチVth)、エッチング、ストレス、チップ内の温度バラつきなどを考慮することができる。
【0023】
具体的には、製品マスク20の中で電気的特性上クリティカルな回路に対応するパターンを抽出して、それと同じあるいはそれに近いパターンを上記予測パターンから探し出し、露光装置Bの照明条件の最適条件の算出の際に、当該箇所の電気的特性上のマージンを考慮して上述した差分の分布に基づく統計量に重み付けを行った上で最適条件の算出を実施する(ステップS27)。即ち、比較例のステップS17においては単純に寸法変動の差分の絶対値の合計を算出していたのに対し、本実施の形態においては電気的特性上クリティカルな回路に対応するパターンにおける寸法変動の差分には重み付けをして絶対値の合計を算出する(ステップS27)。この合計値の値が、第2の露光装置Bについて変化させた露光条件の中で最小、あるいは所定の基準値以下となる露光条件を第2の露光装置Bの最適露光条件として選択する。これにより最適条件の決定時には電気的特性上クリティカルな回路に対応するパターンの寸法変動は極力抑えることが可能となりデバイスの電気的特性が極力変動しない露光装置Bの照明条件を最適条件として選定できるようなる。なお、上記最適化においては、設定された許容寸法変動量情報を対応する回路レイアウトパターン上に関連づけた図形(トランジスタおよび配線)データを作成し、それを元にプロセス条件探索を実施してもよい。
【0024】
これにより、電気的特性上のマージンが小さいパターンにおいては、他のパターンに比較してパターン重要度を高めるように考慮した条件の算出を実施することが可能となる。具体的には、設計レイアウトが持っているパターンの電気的特性上のマージンに関する情報に注目して、電気的特性上のマージンが小さく細かい調整が必要な部分(クリティカルな回路に対応するパターン)と、電気的特性上のマージンが大きく多少の寸法変動があってもデバイス特性にあまり影響を与えない部分に分けて、デバイス特性への影響が大きいクリティカルなパターンに注目してデバイスの設計基準を満たすように露光装置Bにおける露光最適条件を調整する。従って、同一のフォトマスクを用いた場合に露光装置Aで作成したデバイスに対して露光装置Bで作成したデバイスのデバイス性能の変動を抑えることが可能となる。
【0025】
このように決定された最適条件21(照明条件)の下、ウエハ3に対して露光装置Bにおいて再度露光を行い(ステップS28)、ウエハ3の検証を行う(ステップS29)。図3に、本実施の形態にかかるクリティカルパスの変動を最小限に留めたチューニング(照明条件最適化)の概念図を示す。図3の横軸はパターンのバリエーションで、縦軸は光近接効果変動、即ち露光装置が変わることによる形成されるパターンの寸法変動である。同一製品を同じマスクを用いて異なる露光装置で製造する場合、マスクごとに最適化されたクリティカルパスを重視した本実施の形態による照明条件(C.P.重視Tuning)では、比較手法(通常Tuning)に比較して電気的特性の危険度をプロセス側で緩和しており、電気的特性の歩留まりがさらに向上する。
【0026】
より、具体的に示せば、例えば図4に示すように、スタンダードセルのトランジスタ上のゲートとして機能する部分の配線幅に着目した場合、クリティカルパス上のゲートに係わる配線幅Aの変動ΔAと、非クリティカルパス上のゲートに係わる配線幅Bの変動ΔBとを考えてみる。比較例の最適化においては、パターン形状のみ重視して最適化していたので、幅Aも幅Bも全て同じものとして、一律に露光時のパラメータを調整する。従って、例えば図4の右の表に示すように、比較例の最適化では、露光装置を変化させたときの変動ΔAおよびΔBが、ΔA=ΔB=3とある程度同じになるような照明条件が設定されていた。
【0027】
これに対して、本実施形態の半導体装置の製造プロセス最適化手法により、例えばクリティカルパス上である配線幅AについてはΔA=2と寸法変動を抑えることが可能となり、回路の電気的特性歩留まりを効果的に向上することが可能となる。この場合回路の電気的特性が保障できるのであれば、例えば非クリティカルパス上である配線幅BについてはΔB=9と寸法変動に対する基準を緩めてもかまわない。
【0028】
(第2の実施形態)
第2の実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法はSMO(Source Mask Optimization:光源輝度分布・形状、マスク形状の最適化を行う技術)に関し、例えば同じ露光装置で異なる製品に対応する異なるフォトマスクを用いて異なる製品を作る場合に適用可能である。この例では、マスク上のパターンと対応する電気的特性情報を元に、SMO(Source Mask Optimization)による光源最適化を行っている。SMOとは、照明形状とマスク上のパターン形状を同時に最適化しウエハ上で所望のパターン形状および寸法を得る手法である。ここでのSMOとしては照明形状の最適化を行う。
【0029】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法ついて説明する前に、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明する。図5は、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明するフロー図である。
【0030】
図5のステップS51において入力されたリソグラフィー設計の段階でデザインルール内のマージンが少ないマスクパターン、例えば、その世代のラインアンドスペースパターンの代表例となるパターンに対して、SMOにより最適化(ステップS52)された条件である照明形状に対して通常のリソグラフィーシミュレーションを行う(ステップS53)。そして、リソグラフィーシミュレーションにより得られたウエハ上に解像されると予測されるパターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうか判定する(ステップS54)。形状、寸法、およびマージンが基準を満たさなかった場合(ステップS54:No)は危険パターン(プロセスマージンが不足するパターン)を代表パターンに追加し(ステップS55)、追加された代表パターンを入力して(ステップS51)、再度照明形状を最適化する(ステップS52)。その後、リソグラフィーシミュレーションを行い(ステップS53)、形状、寸法、およびマージンが基準を満たせば(ステップS54:Yes)、基本的にデザインルールの世代毎に共通に最適化された一つの照明条件であるSMO基準条件50が得られる。
【0031】
SMO基準条件50が得られたら、フルチップのマスクパターンデータを入力して(ステップS56)、OPC(Optical Proximity Correction)を考慮したマスク形状の最適化(ステップS57)、リソグラフィーシミュレーション(ステップS58)を実行して、ウエハ上のパターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうか判定する(ステップS59)。パターン形状、寸法、およびプロセスマージンが基準を満たさなかった場合(ステップS59:No)は、実際に基準を満たさなかった歩留り危険パターンであるホットスポットパターンを代表パターンに追加し(ステップS60)、ステップS51からやり直す。パターン形状、寸法、およびマージンが基準を満たした場合は、マスクデータの完成である(ステップS61)。
【0032】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法においては、図6のフローに示すように、基本的なパターンバリエーションを考慮したベースとなる条件(SMO基準条件60)を一旦作っておき、さらに製品ごとに異なるクリティカルパスを用いて最適化を実施し(SMOオーダーメイド(ステップS77))、製品レイアウトにカスタマイズした条件を準備することを特徴としている。
【0033】
図6のフローの代表パターン入力(ステップS71)、SMO(ステップS72)、リソグラフィーシミュレーション(ステップS73)、ウエハ上パターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうかの判定(ステップS74)、危険パターン(プロセスマージンが不足するパターン)の追加(ステップS75)を経て、SMO基準条件60を得るまでの流れは、図5に示した比較例と同様である。
【0034】
本実施形態の図6のフローでは、SMO基準条件60をもとに、例えば複数のチップA、B、Cのチップ毎に、フルチップのマスクパターンデータを入力する(ステップS76−1、S76−2、S76−3)。この各マスクパターンデータはそれぞれ独自のクリティカルパスを含んでいる。その後、本実施形態においては、各チップ別の回路設計データより抽出された回路パターンの電気的特性情報に基づいて、所望の電気的特性を維持するためのウエハ上のパターンの変動マージンがより小さい回路パターンはプロセスマージンがより大きくなるように、露光装置の照明条件とフォトマスクの形状とを共に最適化する(SMOオーダーメイド)(ステップS77−1、S77−2、S77−3)。具体的には、クリティカルパスに対して重み付けをして各チップ別のSMOを実行する。例えば、電気的特性を考慮した寸法変動許容度の小さいパス・セル・図形に含まれるレイアウトを抽出し、これを対象として、当該許容度内に収まるように照明形状の最適化を行う。
【0035】
その後、各チップ別にそれぞれ、OPC(Optical Proximity Correction)を考慮したマスク形状の最適化(ステップS78−1、S78−2、S78−3)、リソグラフィーシミュレーション(ステップS79−1、S79−2、S79−3)を実行して、ウエハ上のクリティカルパスを含むパターンが、所望の形状、寸法、およびマージンを満たすかどうか判定する(ステップステップS80−1、S80−2、S80−3)。その結果、電気的にクリティカルなパスのマージンがクリティカルパスに対する基準を満たさなかった場合(ステップステップS80−1:No、S80−2:No、S80−3:No)、該当するクリティカルパターンを代表パターンに追加して(ステップS81)、SMO基準条件60をつくり直す。なお、ステップS80−1、S80−2、S80−3では、形状のみに着目したパターンについても基準を満たすか否かが判定され、満たさない場合は(ステップステップS80−1:No、S80−2:No、S80−3:No)、危険パターンであるホットスポットパターンを代表パターンに追加する(ステップS81)。ステップS80−1、S80−2、S80−3で、クリティカルパスが所望のマージンを満たし、ホットスポットパターンの検出も無い場合は(ステップステップS80−1:Yes、S80−2:Yes、S80−3:Yes)、マスクデータが完成する(ステップS82−1、S82−2、S82−3)。これにより、製品ごとのクリティカルパスに注力した最適化によるオーダーメイドが可能となる。
【0036】
本実施形態の図6に示した半導体装置の製造プロセス最適化手法により、電気的にクリティカルなパターンに着目したプロセス条件を選ぶことが可能となる様子を図7に模式的に示す。クリティカルパスに特化してマージンを向上させる場合のイメージを示す。図7の横軸はパターンのバリエーションで、縦軸はプロセスマージンである。プロセスマージンは露光量およびフォーカス値からなる2次元の値であるが、ここではプロセスウインドウよりマージンが取れるかどうかという観点から1次元に模式化してある。通常の照明条件では、必要プロセスウインドウに対してマージンが取れないパターンが生じても、SMOを実行して得られたデザインルールの世代毎に共通に最適化された一つの照明条件であるSMO基準条件により必要プロセスウインドウ以上のマージンは確保される。本実施形態のクリティカルパスに特化したSMOにより、パターンバリエーション全体のマージンを確保しつつ、クリティカルパスに対して十分大きなマージンを得ることが可能となる。
【0037】
(第3の実施形態)
第3の実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法はウエハ上のパターンの寸法バラつきの分布を調整するための露光量の調整、即ち露光機における露光量の調整マップに関する。
【0038】
本実施の形態にかかる半導体装置の製造プロセス最適化手法ついて説明する前に、比較例となる半導体装置の製造プロセス最適化手法について説明する。この例においては、露光量調整マップを作成してウエハ上の寸法バラつきを低減する。
【0039】
設計レイアウトを元にフォトマスクを作成し、フォトマスク上のパターンの寸法バラつきの分布を測定する。次にMEEF(Mask Error Enhancement Factor)を実験またはリソグラフィーシミュレーション等を用いて求めて、ウエハ上のパターンの寸法バラつきの分布を測定する。MEEFは、マスクを等倍マスクに換算した場合、マスク上の寸法変動がウエハ上で何倍に増大するかを示す値であり、(ウエハ上での寸法変動)=MEEF×(マスクの寸法変動)の関係にある。
【0040】
次に、ウエハ上のパターン寸法バラつきが少なくなるように、露光機における露光量の調整マップを作成し、この露光量調整マップに基づいて露光を行う。ウエハ上の寸法バラつきを考慮して露光量の調整マップを作成する例を図8に示す。比較例においてはウエハ上の寸法バラつきを考慮し、調整領域ごとの寸法の太め/細めバラつきを考慮し、調整領域内のより多くのパターンが寸法どおりに仕上がるように、図8の下に示した露光量調整マップに示すように露光量を調整する。即ち、二次元的にメッシュで区分した部分領域毎に調整する。
【0041】
このとき、比較例においてはパターンの寸法については考慮するが、設計における回路的特性、電気的特性を考慮していない。このため、回路的に重要ではないパターンを所望寸法どおりに仕上げる一方、重要なパターンが寸法どおりに仕上がらず、所望の回路特性が達成できないことが懸念される。
【0042】
そこで本実施形態においては、露光量調整マップを作成する際に、回路的特性および電気的特性的にクリティカルな回路上のパターンの位置情報を考慮する。回路的特性および電気的特性的にクリティカルな回路上のパターンとは、回路設計データより抽出された電気的特性情報に基づいて所定の電気的特性を維持するためには、ウエハ上に形成されたパターンの変動マージンが所定の値より小さい回路パターンである。たとえば図9においては、クリティカルな回路上のパターン91〜94の位置を鑑みて、クリティカルな回路のパターン寸法が所望どおりに仕上がるように図9の下に示した露光量調整マップにて露光量調整領域内の露光量を調整する。
【0043】
本実施形態の別の例としては、図10の露光量調整マップに示すようにクリティカルな回路上のパターン91〜94の位置を鑑みて、クリティカルな回路のパターンを含む領域の露光量調整領域をさらに細分化して細分化した領域毎に設定することにより、クリティカル回路上のパターンが所望の寸法に仕上がるように調整領域内の露光量を調整する。
【0044】
本実施形態のさらに別の例としては、図11の露光量調整マップに示すようにクリティカルな回路上のパターン91〜94に関して、近傍の領域における露光量と回路的特性を鑑み、良好な回路的特性が得られる値に露光量を調整する。たとえばEM(エレクトロマイグレーション)危険箇所に関して、電流密度が局部的に高くならないように太めに仕上がる値に露光量調整領域の値を調整する。
【0045】
以上説明した、本実施形態にかかる露光量調整方法について、図12にフローチャートを示す。まず、与えられた設計データよりレイアウトを作成する(ステップS91)。次にマスクデータを作成し(ステップS92)、マスクデータ上の寸法測長箇所を指定する(ステップS93)。ステップS93で指定した箇所のマスクの寸法を測長し(ステップS94)、マスクの寸法バラつきの分布を得る(ステップS95)。ここで得られたマスクの寸法バラつきの分布から上述したMEEFを用いてウエハ上のパターンの寸法分布を得る(ステップS96)。ウエハ上のパターンの寸法分布から、回路的特性および電気的特性的にクリティカルな回路上のパターンの位置情報を考慮して上述したように露光量マップを作成する(ステップS97)。露光量マップに基づき二次元上で分割された領域毎に露光量を調整して露光する(ステップS98)ことにより、クリティカルな回路上のパターンが所望の電気特性を維持したパターンとしてウエハ上に作成することができる。
【0046】
本実施形態では、パターンと対応する電気的特性情報を元に、露光におけるドーズマッピング手法を用いて露光ドーズ最適化を行っている。露光面におけるスリット方向、スキャン方向におけるドーズバラつきを測定し、場所ごとの最適なドーズをマッピングして露光を行う。
【0047】
比較例においてはマスク、ウエハ上パターンの寸法の分布をもとに露光量の補正値を算出し、露光ドーズを決めていた。回路的重要な箇所、電気特性的にマージンの少ない箇所を考慮することなく、ドーズを決めていたため、電気特性マージンが不足したり、デバイス特性に不良を生じたりする危険があった。
【0048】
本実施形態においては、回路的重要な箇所、電気特性的にマージンの少ない箇所を考慮して露光ドーズをマッピングする。電気特性的マージンの少ない箇所に関して、必要に応じてマージンが増加する方向にドーズを調整する。これにより、電気的に重要な箇所の寸法精度が向上し、性能・歩留まり向上、チップコスト低減の効果が見込まれる。
【0049】
なお、上記第1乃至第3の実施形態においては、セル設計、チップ設計において電気的特性上クリティカルなネット、セルインスタンス、トランジスタ、図形を抽出し、プロセス変動を考慮した検証を行ってネット、セルインスタンス、トランジスタ、図形ごとに許容度を割り当てることができる。そして設計データの完成時にはネット、セルインスタンス、トランジスタ、図形とそれらに対応する許容度をレイアウト・データと共にテープ・アウトする。半導体装置製造における露光装置の照明条件等を決定する際に、タイミングマージンの少ないパスなど電気特性上のマージンが少ない箇所のプロセス許容度を考慮した露光パラメータの微調整を実施する。
【0050】
これにより、電気的特性とパターン毎のプロセス許容度を考慮して、必要な箇所に必要なマージンを持たせることが可能となり、電気的に正しく回路動作する半導体装置を効率的に製造することが可能となる。即ち、電気的特性に関する歩留まりを向上し、より短いTAT(Turn Around Time)でより品質の高いレイアウトとデバイス性能を有した半導体回路を製造できることになるので、チップコストの低減が可能となる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 横展開判定マスク、20 製品マスク、50、60 SMO基準条件、91〜94 クリティカルな回路上のパターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて露光プロセスにより当該回路設計データに基づいたパターンを半導体基板上に形成する半導体装置の製造プロセス最適化手法であって、
前記フォトマスクを用いて第1の露光条件で第1の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンと、前記フォトマスクを用いて第2の露光条件で第2の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンとの、予め定めた複数の箇所における差分の分布に基づく統計量を算出する際に、前記回路設計データより抽出した電気的特性情報に基づいて前記差分に重み付けをした上で前記統計量を算出する工程と、
前記第2の露光条件を変化させて前記算出する工程を繰り返し、変化させた前記第2の露光条件の中で前記合計が最小或いは所定の基準値以下となる露光条件を前記第2の露光装置の最適露光条件として選定する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項2】
与えられた回路設計データに基づいて半導体基板上に形成される回路パターンのプロセスマージンが大きくなるように、露光装置の照明条件と前記回路設計データから作成されたフォトマスクの形状とを共に最適化するに際し、
前記回路設計データより抽出された電気的特性情報に基づき所定の電気的特性を維持するための変動マージンがより小さい前記回路パターンは、プロセスマージンがより大きくなるように前記照明条件と前記フォトマスクの形状を選択する
ことを特徴とする半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項3】
前記最適化を、複数の半導体基板にそれぞれ形成する複数の前記回路設計データごとに実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項4】
回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて半導体基板上の複数の部分領域毎に独立して露光量を調整可能な露光装置により前記基板上に形成される回路パターンの寸法バラつきを小さくするように前記露光量を調整する際に、
前記回路設計データより抽出された電気的特性情報に基づき所定の電気的特性を維持するための変動マージンが所定の値より小さい前記回路パターンを含む前記部分領域に対しては、より寸法バラつきを小さくするように前記露光量を調整する
ことを特徴とする半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項5】
変動マージンが所定の値より小さい前記回路パターンを含む前記部分領域をさらに分割して、新たに分割された領域毎に前記露光量を調整する
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の半導体装置の製造プロセス最適化手法を用いて得られたプロセス条件の下で半導体装置を製造する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて露光プロセスにより当該回路設計データに基づいたパターンを半導体基板上に形成する半導体装置の製造プロセス最適化手法であって、
前記フォトマスクを用いて第1の露光条件で第1の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンと、前記フォトマスクを用いて第2の露光条件で第2の露光装置にて半導体基板上に形成されるパターンとの、予め定めた複数の箇所における差分の分布に基づく統計量を算出する際に、前記回路設計データより抽出した電気的特性情報に基づいて前記差分に重み付けをした上で前記統計量を算出する工程と、
前記第2の露光条件を変化させて前記算出する工程を繰り返し、変化させた前記第2の露光条件の中で前記合計が最小或いは所定の基準値以下となる露光条件を前記第2の露光装置の最適露光条件として選定する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項2】
与えられた回路設計データに基づいて半導体基板上に形成される回路パターンのプロセスマージンが大きくなるように、露光装置の照明条件と前記回路設計データから作成されたフォトマスクの形状とを共に最適化するに際し、
前記回路設計データより抽出された電気的特性情報に基づき所定の電気的特性を維持するための変動マージンがより小さい前記回路パターンは、プロセスマージンがより大きくなるように前記照明条件と前記フォトマスクの形状を選択する
ことを特徴とする半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項3】
前記最適化を、複数の半導体基板にそれぞれ形成する複数の前記回路設計データごとに実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項4】
回路設計データから作成されたフォトマスクを用いて半導体基板上の複数の部分領域毎に独立して露光量を調整可能な露光装置により前記基板上に形成される回路パターンの寸法バラつきを小さくするように前記露光量を調整する際に、
前記回路設計データより抽出された電気的特性情報に基づき所定の電気的特性を維持するための変動マージンが所定の値より小さい前記回路パターンを含む前記部分領域に対しては、より寸法バラつきを小さくするように前記露光量を調整する
ことを特徴とする半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項5】
変動マージンが所定の値より小さい前記回路パターンを含む前記部分領域をさらに分割して、新たに分割された領域毎に前記露光量を調整する
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造プロセス最適化手法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の半導体装置の製造プロセス最適化手法を用いて得られたプロセス条件の下で半導体装置を製造する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−160521(P2012−160521A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17956(P2011−17956)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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