説明

半導体装置の製造方法

【課題】基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合するとともに、基板と半導体チップとの間に熱硬化樹脂によりアンダーフィルを施す半導体装置の製造方法であって、アンダーフィル材の硬化工程において、加熱により電極端子の接合が破断してしまうことのない半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板6と半導体チップ4との電極端子6a,4a同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、基板6と半導体チップ4との間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材10を充填するアンダーフィル充填工程と、アンダーフィル材10を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記アンダーフィル硬化工程で、基板6と半導体チップ4とのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合するとともに、基板と半導体チップとの間に熱硬化樹脂によりアンダーフィルを施す半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージ等の半導体装置を製造するにあたって半導体チップを基板(配線基板)にフリップチップ接合して搭載する際、半導体チップのバンプ等の電極端子と基板のパッド等の電極端子とを当接させ、当該電極端子同士を固相拡散により接合する方法が用いられている。固相拡散により電極端子を接合するための具体的な方法としては、基板の電極端子と半導体チップの電極端子とを当接させた状態で、半導体チップに超音波振動を印加する超音波接合法や、電極端子間に圧力を加えることで接合する常温活性接合法などが用いられている。
【0003】
特許文献1に、超音波接合法を用いた従来の半導体装置の製造方法が記載されている。特許文献1記載の半導体装置の製造方法を以下に説明する。
まず、図5(a)に示すように、ステージ91上に半導体チップを搭載するための基板92を載置する。その際、基板92上に配置されかつチップと電気的接続を取るためのリード部に対して、アンダーフィル材(UF材)93を貼り付けるか、または塗布する。このとき、UF材93の温度は、ステージ91からの加熱によりUF材軟化温度にて一定温度に保たれる。
【0004】
ついで、図5(b)に示すように、トレーなどに配置されかつAuバンプ95Aを被着したAuバンプ付きチップ95を超音波振動を与えるためのホーン94の底面で真空吸着し、チップ95を保持したホーン94をステージ91上の基板92に対して位置合わせを行い、ホーン94をUF材93上に下降させる。また、このときのホーン94(あるいはチップ95)の温度は、UF材93が軟化しかつ硬化しない温度に設定される。
【0005】
ついで、図5(c)に示すように、UF材93上にチップ95が移送されてくると、UF材93は上下からの加熱によりゲル化し、硬化反応加熱温度以下で超音波併用熱圧着方式により、金バンプ95Aとリード接続部の金属接合を行う。この金属接合が完了すると、樹脂部となっているUF材93に対し、チップ保持機構の外部に設けられた加熱装置96により熱エネルギー与え、UF材93の硬化反応温度を得る。
【0006】
さらに、図5(d)に示すように、UF材93の硬化が完了すると、ホーン94はチップ95の吸着を解放し、上昇する。その際、ホーン94の温度は、UF材93の硬化反応温度近傍まで上昇しているため、ホーン94とは別に設けられた冷却装置97により冷却され、所定の温度まで下げられる。
以上により、金バンプ95Aが形成された1つのチップ95を、UF材93があらかじめ供給された基板92などのリード接続部にフリップチップ実装することができる。
【0007】
図6(a)〜(d)はそれぞれ図5における製造各部材の温度や荷重等の特性図である。まず、図6(a)に示すように、ステージ91上に載置される基板92は、チップ95を接続するための接続端子(リード)を覆うように、アンダーフィル材(UF材)93を塗布するか、あるいは貼り付けるが、このときのUF材93の温度は、UF材の軟化温度Tまで上昇する。UF材の軟化温度Tに達すると、ほぼ一定となる。さらに、UF材93がゲル化し、外部の加熱装置96によってUF材93の温度が上昇し、硬化温度Tになると、UF材93が硬化する。このUF材93が硬化した後は、冷却装置97によりホーン94が冷却されるため、UF材93は初期の温度まで下がる。
【0008】
一方、図6(b)に示すように、基板92に接続固定されるチップ95は、ホーン94に裏面側を真空吸着され、ホーン94と共にほぼ均一の温度T′に保持される。この温度T′は、ホーンの超音波振幅を一定に保つために、超音波(US)印加中は一定に保たれる。外部加熱装置96により、ホーン温度がT′に上昇すると、UF材93が硬化温度Tに達する。UF材93が硬化すると、ホーン94の温度は、再度均一の温度T′に保持される。
【0009】
また、図6(c)に示すように、チップが基板に接続される時にチップにかかる荷重は、USエネルギーが効率よく伝達するような特性が得られるように設定される。
さらに、図6(d)に示すように、ホーン94に加わる超音波の発振のタイミグは、印加される荷重が金バンプとリードの接続を得る上で最適な値に到達した時点となる。
【0010】
【特許文献1】特開2004−356419号公報(段落0016−0020,0031−0034,第1,4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載の半導体装置の製造方法には、以下のような課題がある。
主に樹脂からなる基板と、主にシリコンから成る半導体チップとは、熱膨張係数(熱膨張率)が大きく異なる。例えば、主に樹脂から成る基板は熱膨張係数が15ppm程度、主にシリコンから成る半導体チップは熱膨張係数が3ppm程度などであることが多い。このため、両者の接続端子を超音波接合(固相拡散による接合)した後に、アンダーフィル材の硬化のために加熱を行った際、基板および半導体チップが膨張して、両者の間で熱による膨張量に差が生じ、接合されていた接続端子が破断してしまうことがあるという課題がある。
【0012】
そこで、本願発明は、上記課題を解決すべく成され、その目的とするところは、基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合するとともに、基板と半導体チップとの間に熱硬化樹脂によりアンダーフィルを施す半導体装置の製造方法であって、アンダーフィル材の硬化工程において、加熱により電極端子の接合が破断してしまうことのない半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体チップの接合方法は、上記課題を解決するために、以下の構成を備える。すなわち、基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記基板と前記半導体チップとの間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を充填するアンダーフィル充填工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記アンダーフィル硬化工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱することを特徴とする。
これによれば、アンダーフィル硬化工程の加熱において、基板と半導体チップとの熱膨張量の差が小さくなり、両者間の電極端子の接合が破断してしまうことを防ぐことができる。
【0014】
また、基板の電極端子の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を塗布するアンダーフィル塗布工程と、前記基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記アンダーフィル硬化工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱することを特徴とする。
これによれば、アンダーフィル硬化工程の加熱において、基板と半導体チップとの熱膨張量の差が小さくなり、両者間の電極端子の接合が破断してしまうことを防ぐことができる。
【0015】
また、基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記基板と前記半導体チップとの間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を充填するアンダーフィル充填工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材を、より高い温度に加熱して、前記接合を行うことを特徴とする。
これによれば、接合工程において、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材をより高温に加熱しておくことで、アンダーフィル硬化工程の加熱において、熱膨張率の高い方の部材の熱膨張量を小さく抑えることができるから、両者間の電極端子の接合が破断してしまうことを防ぐことができる。
【0016】
また、基板の電極端子の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を塗布するアンダーフィル塗布工程と、前記基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材を、より高い温度に加熱して、前記接合を行うことを特徴とする。
これによれば、接合工程において、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材をより高温に加熱しておくことで、アンダーフィル硬化工程の加熱において、熱膨張率の高い方の部材の熱膨張量を小さく抑えることができるから、両者間の電極端子の接合が破断してしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、アンダーフィル材の硬化工程において、加熱により電極端子の接合が破断してしまうことない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法を実施するための最良の形態を、添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【0020】
(接合工程)
まず、図1(a)に示すように、ステージ8上に基板6を載置し、超音波ヘッド2に半導体チップ4を真空吸着により保持させて、半導体チップ4の電極端子としてのバンプ4aと、基板6の電極端子としてのパッド6aとを位置合わせして当接させ、超音波ヘッド2を図示しない超音波発振装置により超音波振動させて、バンプ4aとパッド6a同士を固相拡散により接合する。
【0021】
(アンダーフィル充填工程)
続いて、図1(b)に示すように、基板6と半導体チップ4との間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材10を充填する。充填されるアンダーフィル材10は、予め軟化温度に加熱されて、十分な流動性を有する状態に設定されている。このとき、アンダーフィル材10の温度が適正な軟化温度より低いと、粘性が高く、電極端子間の微細な隙間にまで行き渡らず、空気泡ができてしまう恐れがある。また、もちろん、この軟化温度は熱硬化樹脂が硬化する硬化温度よりも低く設定される。なお、アンダーフィル材10として用いられる一般的な熱硬化樹脂の軟化温度は70℃から100℃程度である。
【0022】
(アンダーフィル硬化工程)
続いて、図1(c)に示すように、半導体チップ4のバンプ4a形成面の反対面に、加熱部材12を当接または近接させて半導体チップ4を加熱するとともに、ステージ8を加熱して基板6を加熱する。これにより、アンダーフィル材10を硬化温度以上に加熱して硬化させる。なお、アンダーフィル材10として用いられる一般的な熱硬化樹脂の硬化温度はおよそ150℃程度である。
【0023】
このアンダーフィル硬化工程で、基板6と半導体チップ4とのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱する。
例えば、半導体チップ4は主材がシリコンであってその熱膨張係数は3ppm、基板6は主材が樹脂であってその熱膨張係数は15ppmであるものとする。この場合、より熱膨張率の低い半導体チップ4を、基板6よりも高い温度に加熱する。
【0024】
より好適には、加熱による基板6と半導体チップ4との各熱膨張量が等しくなるよう、基板6と半導体チップ4との加熱温度をそれぞれ設定する。以下、具体的に説明する。
接合工程における基板6および半導体チップ4の温度が100℃であり、アンダーフィル硬化工程において加熱部材12により半導体チップ4を160℃まで加熱するものとする。半導体チップ4の熱膨張係数が3ppm、基板6の熱膨張係数が15ppmの場合、3ppm×(160℃−100℃)=15ppm×(t−100℃) の式を満たすような温度t(すなわち112℃)に、基板6を加熱することにより、基板6と半導体チップ4との各熱膨張量を等しくすることができる。
【0025】
一般には、接合工程における基板6および半導体チップ4の温度をt、半導体チップ4のアンダーフィル硬化工程における加熱温度および熱膨張係数をtおよびk、基板6のアンダーフィル硬化工程における加熱温度および熱膨張係数をtおよびkで表した場合、k×(t−t)=k×(t−t) の式を満たすよう、t、t、およびtを設定することにより、アンダーフィル硬化工程での加熱による基板6と半導体チップ4との各熱膨張量を等しくすることができる。
なお、本発明はこの式を満たすものに限定されるものではなく、この式を満たさなくとも、アンダーフィル硬化工程で、基板6と半導体チップ4とのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱することで、両者の熱膨張量の差を小さく抑えることができる。
【0026】
上記の例において、基板6の加熱温度は112℃と、アンダーフィル材10の硬化温度に満たない温度であるが、一般に半導体チップ4は基板6に対して体積および熱容量が非常に小さいため、半導体チップ4を硬化温度以上に加熱することによりアンダーフィル材10も硬化温度まで加熱することができる。
なお、半導体チップ4のみを加熱することでアンダーフィル材10を硬化温度まで加熱することができる場合には、必ずしもステージ8は加熱しなくとも良い。
【0027】
本実施例1に係る半導体装置の製造方法によれば、アンダーフィル硬化工程の加熱において、基板6と半導体チップ4との熱膨張量の差が小さくまたは熱膨張量が等しくなり、両者間の電極端子6a,4aの接合が破断してしまうことを防ぐことができる。
【実施例2】
【0028】
図2は、本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
なお、実施例2において、実施例1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
(アンダーフィル塗布工程)
まず、図2(a)に示すように、ステージ8上に基板6を載置し、基板6の電極端子(パッド6a)の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材14を塗布する。塗布されるアンダーフィル材14は、予め軟化温度に加熱されて、十分な流動性を有する状態に設定されている。
【0030】
(接合工程)
続いて、図2(b)に示すように、超音波ヘッド2に半導体チップ4を真空吸着により保持させて、半導体チップ4の電極端子としてのバンプ4aと、基板6の電極端子としてのパッド6aとを位置合わせして当接させ、超音波ヘッド2を図示しない超音波発振装置により超音波振動させて、バンプ4aとパッド6a同士を固相拡散により接合する。
【0031】
(アンダーフィル硬化工程)
続いて、図2(c)に示すように、半導体チップ4のバンプ4a形成面の反対面に、加熱部材12を当接または近接させて半導体チップ4を加熱するとともに、ステージ8を加熱して基板6を加熱する。これにより、アンダーフィル材14を硬化温度以上に加熱して硬化させる。
【0032】
なお、アンダーフィル硬化工程の構成は、実施例1と同様であるため説明を省略する。
本実施例2に係る半導体装置の製造方法によっても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
なお、本実施例2に係る半導体装置の製造方法において、図2(b)の接合工程で、超音波ヘッド2を加熱部材と兼用して、加熱しておいた超音波ヘッド2により、電極端子4a,6aの超音波接合とアンダーフィル材14の硬化とを同時に行う構成も考えられる。
しかしながら、この構成は、半導体チップ4と基板6との間から漏れ出したアンダーフィル材14が超音波ヘッド2に付着して硬化してしまうことがあり、超音波ヘッド2から硬化したアンダーフィル材を除去する工程が必要となるため、好ましくない。
【実施例3】
【0034】
図3は、本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
なお、実施例3において、実施例1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
(接合工程)
まず、図3(a)に示すように、ステージ8上に基板6を載置する。この際、ステージ8を予め加熱しておくことにより、基板6を加熱する。そして、超音波ヘッド2に半導体チップ4を真空吸着により保持させて、半導体チップ4の電極端子としてのバンプ4aと、基板6の電極端子としてのパッド6aとを位置合わせして当接させ、超音波ヘッド2を図示しない超音波発振装置により超音波振動させて、バンプ4aとパッド6a同士を固相拡散により接合する。
【0036】
(アンダーフィル充填工程)
続いて、図3(b)に示すように、基板6と半導体チップ4との間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材10を充填する。充填されるアンダーフィル材10は、予め軟化温度に加熱されて、十分な流動性を有する状態に設定されている。
【0037】
(アンダーフィル硬化工程)
続いて、図3(c)に示すように、半導体装置を硬化炉16内に入れて加熱することで、アンダーフィル材10を硬化温度以上に加熱して硬化させる。
【0038】
好適には、基板6と半導体チップ4との、電極端子4a,6aの接合時に対する硬化炉16での加熱時の各熱膨張量が等しくなるよう、接合時の基板6の加熱温度を設定する。以下、具体的に説明する。
接合工程における半導体チップ4の温度が70℃であり、アンダーフィル硬化工程において半導体チップ4、基板6、およびアンダーフィル材10を150℃まで加熱するものとする。半導体チップ4の熱膨張係数が3ppm、基板6の熱膨張係数が15ppmの場合、3ppm×(150℃−70℃)=15ppm×(150℃−t) の式を満たすような温度t(すなわち134℃)に、接合時の基板6を加熱しておくことにより、接合時に対する硬化炉16での加熱時の基板6と半導体チップ4との各熱膨張量を、等しくすることができる。
【0039】
一般には、接合工程における基板6の温度をt、接合工程における半導体チップ4の温度をt、アンダーフィル硬化工程における加熱温度をt、半導体チップ4の熱膨張係数をk、基板6の熱膨張係数をkで表した場合、k×(t−t)=k×(t−t) の式を満たすよう、t、t、およびtを設定することにより、アンダーフィル硬化工程での加熱による基板6と半導体チップ4との各熱膨張量を等しくすることができる。
なお、本発明はこの式を満たすものに限定されるものではなく、この式を満たさなくとも、接合工程で、基板6と半導体チップ4とのうちより熱膨張率の高い部材を、より高い温度に加熱しておくことで、アンダーフィル硬化工程における両者の熱膨張量の差を小さく抑えることができる。
【0040】
本実施例3に係る半導体装置の製造方法によれば、アンダーフィル硬化工程の加熱において、基板6と半導体チップ4との熱膨張量の差が小さくまたは熱膨張量が等しくなり、両者間の電極端子6a,4aの接合が破断してしまうことを防ぐことができる。
【実施例4】
【0041】
図4は、本発明の実施例4に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
なお、実施例4において、実施例1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
(アンダーフィル塗布工程)
まず、図4(a)に示すように、ステージ8上に基板6を載置し、基板6の電極端子(パッド6a)の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材14を塗布する。塗布されるアンダーフィル材14は、予め軟化温度に加熱されて、十分な流動性を有する状態に設定されている。
【0043】
(接合工程)
続いて、図4(b)に示すように、ステージ8を加熱することにより、基板6を加熱する。そして、超音波ヘッド2に半導体チップ4を真空吸着により保持させて、半導体チップ4の電極端子としてのバンプ4aと、基板6の電極端子としてのパッド6aとを位置合わせして当接させ、超音波ヘッド2を図示しない超音波発振装置により超音波振動させて、バンプ4aとパッド6a同士を固相拡散により接合する。
【0044】
(アンダーフィル硬化工程)
続いて、図4(c)に示すように、半導体装置を硬化炉16内に入れて加熱することで、アンダーフィル材14を硬化温度以上に加熱して硬化させる。
【0045】
なお、接合工程における半導体チップ4の温度および基板6の加熱温度、ならびに、アンダーフィル硬化工程における半導体装置の加熱温度の構成については、実施例3と同様であるため説明を省略する。
本実施例4に係る半導体装置の製造方法によっても、実施例3と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
上記実施例1〜4においては、固相拡散による電極端子4a,6aの接合として、超音波振動法を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電極端子間に圧力を加えることで接合する常温活性接合法を用いるものも含む。
【0047】
(付記1)
基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記基板と前記半導体チップとの間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を充填するアンダーフィル充填工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記アンダーフィル硬化工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記2)
前記アンダーフィル硬化工程で、加熱による前記基板と前記半導体チップとの各熱膨張量が等しくなるよう、基板と半導体チップとの加熱温度をそれぞれ設定することを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
(付記3)
前記半導体チップは、前記基板よりも熱膨張率が低く設けられ、前記アンダーフィル硬化工程で、前記半導体チップの電極端子形成面の反対面に、加熱部材を当接または近接させることで、半導体チップおよび前記アンダーフィル材を加熱して、アンダーフィル材を硬化させることを特徴とする付記1または2記載の半導体装置の製造方法。
(付記4)
前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとの電極端子同士を当接させ、半導体チップに超音波振動を印加することで、該電極端子同士を固相拡散により接合することを特徴とする付記1〜3のうちのいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)
基板の電極端子の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を塗布するアンダーフィル塗布工程と、前記基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記アンダーフィル硬化工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記6)
前記アンダーフィル硬化工程で、加熱による前記基板と前記半導体チップとの各熱膨張量が等しくなるよう、基板と半導体チップとの加熱温度をそれぞれ設定することを特徴とする付記5記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)
前記半導体チップは、前記基板よりも熱膨張率が低く設けられ、前記アンダーフィル硬化工程で、前記半導体チップの電極端子形成面の反対面に、加熱部材を当接または近接させることで、半導体チップおよび前記アンダーフィル材を加熱して、アンダーフィル材を硬化させることを特徴とする付記5または6記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとの電極端子同士を当接させ、半導体チップに超音波振動を印加することで、該電極端子同士を固相拡散により接合することを特徴とする付記5〜7のうちのいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記基板と前記半導体チップとの間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を充填するアンダーフィル充填工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材を、より高い温度に加熱して、前記接合を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記接合工程における前記より熱膨張率の高い部材の加熱温度は、前記アンダーフィル硬化工程における前記アンダーフィル材の加熱温度以下であることを特徴とする付記9記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとの電極端子同士を当接させ、半導体チップに超音波振動を印加することで、該電極端子同士を固相拡散により接合することを特徴とする付記9または10記載の半導体装置の製造方法。
(付記12)
基板の電極端子の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を塗布するアンダーフィル塗布工程と、前記基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材を、より高い温度に加熱して、前記接合を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記13)
前記接合工程における前記より熱膨張率の高い部材の加熱温度は、前記アンダーフィル硬化工程における前記アンダーフィル材の加熱温度以下であることを特徴とする付記12記載の半導体装置の製造方法。
(付記14)
前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップの電極端子同士を当接させ、半導体チップに超音波振動を印加することで、該電極端子同士を固相拡散により接合することを特徴とする付記12または13記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例4に係る半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図5】従来の半導体装置の製造方法を示す説明図である。
【図6】従来の半導体装置の製造方法における製造各部材の温度や荷重等の特性図である。
【符号の説明】
【0049】
2 超音波ヘッド
4 半導体チップ
4a バンプ(電極端子)
6 基板
6a パッド(電極端子)
8 ステージ
10,14 アンダーフィル材
12 加熱部材
16 硬化炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、
前記基板と前記半導体チップとの間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を充填するアンダーフィル充填工程と、
前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、
前記アンダーフィル硬化工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板の電極端子の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を塗布するアンダーフィル塗布工程と、
前記基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、
前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、
前記アンダーフィル硬化工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の低い部材を、より高い温度に加熱することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、
前記基板と前記半導体チップとの間に熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を充填するアンダーフィル充填工程と、
前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、
前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材を、より高い温度に加熱して、前記接合を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板の電極端子の形成面に、熱硬化樹脂から成るアンダーフィル材を塗布するアンダーフィル塗布工程と、
前記基板と半導体チップとの電極端子同士を固相拡散によりフリップチップ接合する接合工程と、
前記アンダーフィル材を硬化温度に加熱して硬化させるアンダーフィル硬化工程とを含む半導体装置の製造方法において、
前記接合工程で、前記基板と前記半導体チップとのうちより熱膨張率の高い部材を、より高い温度に加熱して、前記接合を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−305799(P2007−305799A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132967(P2006−132967)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】