説明

半導体装置の製造方法

【課題】本発明は、組立工程における生産性を向上させることができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体素子の一方の面に設けられた接合層を介して前記半導体素子を基材の所定位置に接合するダイボンディング工程と、前記半導体素子に形成された端子と、前記基材に形成された端子と、をボンディングワイヤによって接続するボンディング工程と、前記半導体素子と前記ボンディングワイヤとを封止する封止工程と、を備え、前記ボンディング工程における前記接合層の粘度は、前記封止工程における前記接合層の粘度を越えないように制御されること、を特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の裏面(回路パターンが形成された面と対向する面)に非接触型の塗布装置を用いて接合剤を吐出させるのに適した接合剤が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、半導体装置のそれぞれの組立工程、例えば封止工程などを考慮して接合剤から形成された接合層の粘度を調整しないと生産性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−34582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、組立工程における生産性を向上させることができる半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、半導体素子の一方の面に設けられた接合層を介して前記半導体素子を基材の所定位置に接合するダイボンディング工程と、前記半導体素子に形成された端子と、前記基材に形成された端子と、をボンディングワイヤによって接続するボンディング工程と、前記半導体素子と前記ボンディングワイヤとを封止する封止工程と、を備え、前記ボンディング工程における前記接合層の粘度は、前記封止工程における前記接合層の粘度を越えないように制御されること、を特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組立工程における生産性を向上させることができる半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を例示するための模式図である。
【図2】接合層の粘度が接合に与える影響を例示するための模式図である。
【図3】接合層の粘度が封止に与える影響を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。
ここで、半導体装置の製造工程には、いわゆる前工程における成膜・レジスト塗布・露光・現像・エッチング・レジスト除去などによりウェーハの表面に回路パターンを形成する工程、検査工程、洗浄工程、熱処理工程、不純物導入工程、拡散工程、平坦化工程などがある。また、いわゆる後工程においては、ダイシング工程、ダイボンディング工程、ボンディング工程、封止工程などの組立工程、機能や信頼性の検査を行う検査工程などがある。
【0010】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法においては、組立工程において、半導体素子(半導体チップ)の一方の面に設けられた接合層の粘度(接合層の硬化の程度)、または半導体素子と基材との間の接合層の粘度(接合層の硬化の程度)を制御するようにしている。すなわち、後述するように、ダイボンディング工程、ボンディング工程、および封止工程からなる群より選ばれた少なくとも1つの工程における接合層の粘度が所定の範囲となるように制御される。また、接合層を形成する接合剤の粘度を制御するようにしている。なお、接合層の粘度(接合層の硬化の程度)、接合剤の粘度を制御すること以外は、既知の技術を適用させることができるので前述した各工程の説明は省略する。
【0011】
特に、非接触型の塗布装置をもちいて半導体素子の裏面に接合層を形成する場合と、半導体素子の裏面にダイアタッチメントフィルム(以下、「DAF」と称する場合がある。)をもちいて接合層を形成する場合とでは接合層の粘度の制御に異なる点がある。すなわち、非接触型の塗布装置をもちいて半導体素子の裏面に接合層を形成することは、半導体素子の裏面にDAFを形成することに相当し、完成されたDAFを半導体素子の裏面に貼り付けるのとは異なるからである。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る非接触型の塗布装置をもちいた半導体装置の製造方法を例示するための模式図である。
なお、図1は、後述する接合層を形成する接合剤の粘度、ダイボンディング工程における接合層の粘度、ボンディング工程における接合層の粘度、封止工程における接合層の粘度を概念的に表したものである。また、図中の矢印は、各工程における粘度範囲を概念的に表したものである。
【0013】
まず、ウェーハまたは半導体素子の裏面に付着させる接合剤の粘度に関して例示をする。接合剤としては、溶質である樹脂と溶媒とを含むものを例示することができる。
樹脂としては、絶縁性樹脂を例示することができる。また、絶縁性樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などを例示することができる。この場合、接合性や耐熱性の観点からはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂とすることが好ましく、エポキシ樹脂とすることがより好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などを例示することができる。なお、これらの樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
溶媒としては、溶質である樹脂を溶解可能なものを適宜選択することができる。例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、シクロヘキサノン、イソホロンなどを例示することができる。なお、これらの溶媒を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、必要に応じて既知の硬化促進剤、触媒、フィラー、カップリング剤などを添加することもできる。
【0015】
ここで、形成された接合層の表面に凹凸があると半導体素子を基材に接合する際に空気を巻き込み、ボイドが発生する場合がある。そして、この様なボイドが発生すると接合強度が低下するなどの不具合が生ずるおそれがある。そのため、表面張力差を抑制する作用(レベリング作用)を有する添加剤を添加することで、接合層の表面に凹凸が発生することを抑制するようにすることもできる。表面張力差を抑制する作用を有する添加剤としては、例えば、シリコン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤などを例示することができる。この場合、表面張力の均一化効果が高いシリコン系表面調整剤とすることが好ましい。
【0016】
接合剤を膜状に付着させる方法としては、例えば、塗布方式、インクジェット法、スプレー法、霧状の塗布方式、ロールコーター法、スクリーン印刷法、ジェットディスペンス方式、スキージ方式などを例示することができる。この場合、半導体素子と非接触な状態で接合剤を膜状に付着させることができるインクジェット法、スプレー法とすることが好ましく、均一な厚みの薄い膜を形成することができるインクジェット法とすることがより好ましい。
【0017】
ここで、接合剤を膜状に付着させる方法としてインクジェット法を用いる場合には、吐出ノズルの目詰まりを抑制するために接合剤の25℃における粘度を0.015Pa・s以下とすることが好ましい。なお、この粘度は、B型粘度計(JIS K 7117−2)を用いて測定した場合である。
【0018】
この場合、接合剤の粘度は、溶質である樹脂の量と溶媒の量とにより制御することができる。
【0019】
例えば、溶質をエポキシ樹脂、溶媒をγ−ブチロラクトン(GBL)とした場合に、接合剤におけるエポキシ樹脂の割合を25重量%程度とすれば、25℃における粘度が0.015Pa・s以下となるような接合剤とすることができる。
【0020】
接合剤を膜状に付着させた際の厚み(膜厚み)には限定はないが、後述する溶媒の蒸散を考慮すると接合剤の膜厚みは1回の塗布で1μm(マイクロメートル)程度となるようにすることが好ましい。また、接合剤を膜状に付着させた際の厚みを1μm(マイクロメートル)程度とすれば、接合層の表面に凹凸が発生することを抑制することもできる。
【0021】
この様にして膜状に付着させた接合剤をBステージ状態とすることで接合層が形成される。接合剤をBステージ状態とする際には、膜状に付着させた接合剤を加熱して溶媒を蒸散させるようにする。
膜状に付着させた接合剤の加熱には、ヒータなどの加熱手段を用いることができる。例えば、ヒータなどが内蔵された載置部にウェーハを載置し、ウェーハを介して接合剤を加熱するようにすることができる。
この場合、加熱温度(載置部の温度)は、例えば、40℃以上、120℃以下とすることができる。
【0022】
また、接合剤の組成、接合剤を膜状に付着させた際の厚み(膜厚み)などにより適正な加熱温度を適宜決定するようにする。
例えば、接合剤の溶質をエポキシ樹脂、溶媒をγ−ブチロラクトン(GBL)とし、接合剤におけるエポキシ樹脂の割合を25重量%、接合剤を膜状に付着させた際の厚みを10μm(マイクロメートル)程度とした場合、加熱温度(載置部の温度)を70℃程度とすることができる。
【0023】
以上のようにして、ウェーハの裏面に接合層を形成することができる。
接合層の厚みを厚くする場合には、前述した手順を繰り返すことで積層するようにして接合層を形成するようにすればよい。
【0024】
この様にして、裏面に接合層が形成されたウェーハをダイシングすれば、裏面に接合層が形成された半導体素子を得ることができる。裏面に接合層が形成された半導体素子は、後述するダイボンディング工程において接合層を介して基材と接合される。
【0025】
なお、裏面に接合層が形成されたウェーハをダイシングして裏面に接合層が形成された半導体素子を得る場合を例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、いわゆる先ダイシングを行い、ダイシングされたウェーハの裏面に接合層を形成することで裏面に接合層が形成された半導体素子を得るようにしてもよい。
【0026】
次に、ダイボンディング工程における接合層の粘度(接合層の硬化の程度)に関して例示をする。
ダイボンディング工程においては、裏面に接合層が形成された半導体素子を粘着シートから一個ずつニードルで突き上げ、その突き上げられた半導体素子をボンディングコレットで真空吸着してピックアップする。その後、ボンディングコレットでピックアップされた半導体素子を加熱された基材の所定位置に接合層を介して加圧接合する。すなわち、ダイボンディング工程においては、半導体素子の一方の面に設けられた接合層を介して半導体素子を基材の所定位置に接合する。
【0027】
図2は、接合層の粘度が接合に与える影響を例示するための模式図である。なお、図2(a)は接合層の粘度が高すぎる場合における接合の様子を例示するための模式図である。図2(b)は接合層の粘度が低すぎる場合における接合の様子を例示するための模式図である。
【0028】
ダイボンディング工程において接合層の粘度が高すぎると、図2(a)に示すように、接合部分に筋状の接合ムラ100が発生することがある。この様な接合ムラ100が発生すると接合強度が低下するおそれがある。
一方、接合層の粘度が低すぎると、図2(b)に示すように、接合部分に微小ボイド101が発生することがある。この様な微小ボイド101が発生すると接合強度が低下するおそれがある。また、半導体素子を基材と接合する際に位置ずれを起こす要因ともなる。
このような不具合は、非接触型の塗布装置をもちいて半導体素子の裏面に接合層を形成する場合に特有なものである。一方、完成された接合層であるDAFを半導体素子の裏面に貼り付ける場合にはこのような不具合は生じない。
【0029】
本発明者らの得た知見によれば、接合層のダイボンディング温度における粘度を3000Pa・s以下とすれば、筋状の接合ムラの発生を抑制することができる。また、接合層のダイボンディング温度における粘度を10Pa・s以上とすれば、微小ボイドの発生、位置ずれなどを抑制することができる。すなわち、ダイボンディング工程においては接合層の接合時のダイボンディング温度における粘度が10Pa・s以上、3000Pa・s以下となるように制御される。なお、これらの粘度は、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)を用いて測定した場合である。
【0030】
そのため、図1に示すように、膜状に付着させた接合剤をBステージ状態とすることで形成した接合層の粘度を、ダイボンディング工程における適正な粘度範囲まで上昇させる。この場合、接合層の粘度は加熱処理を行うことで上昇させることができる。また、この加熱処理において接合層の粘度を加熱温度、加熱時間などにより制御するようにすることができる。なお、粘度の測定には、例えば、日本工業規格JISK7244−10に定める既知の粘度測定法を用いることができる。この場合、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)などを用いて粘度を測定するようにすることができる。
【0031】
接合層の加熱処理は、前述したヒータなどが内蔵された載置部により行うことができる。すなわち、膜状に付着させた接合剤をBステージ状態とすることで接合層を形成させる際に、ダイボンディング工程における適正な粘度となるようにすることができる。
また、前述した接合層の形成とダイボンディング工程との間において、加熱炉などを用いて加熱処理を行うようにすることができる。加熱炉としては、例えば、プリキュア(Precure)を行うキュア炉などとすることができる。その様なキュア炉としては、ベルトコンベアの上下にヒータなどの加熱手段を搭載したものや、温風を用いて加熱を行うものなどを例示することができる。
【0032】
また、ダイボンディング工程において接合層を加熱して粘度の制御を行うこともできる。ただし、ダイボンディング工程において接合層の粘度の制御を行う場合であっても、その前段階でダイボンディング工程における粘度の制御が容易となるような接合層の粘度としておくことが好ましい。
この場合、例えば、接合剤の溶質がエポキシ樹脂、溶媒がγ−ブチロラクトン(GBL)、接合剤におけるエポキシ樹脂の割合が25重量%、接合層の厚みが10μm(マイクロメートル)程度、加熱処理前の接合層の25℃における粘度が0.015Pa・s程度の場合、加熱温度を90℃程度、加熱時間を1時間程度とすることができる。この様にすれば、150℃における粘度が100Pa・s程度の接合層とすることができる。
なお、0.015Pa・sの場合はB型粘度計(JIS K 7117−2)を用い、150℃における粘度が100Pa・sの場合は動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)を用いて測定した。
【0033】
次に、ボンディング工程における接合層の粘度(接合層の硬化の程度)に関して例示をする。
ボンディング工程においては、半導体素子に形成された端子と、基板やリードフレームなどの基材に形成された端子と、をボンディングワイヤによって接続するワイヤボンディングが行なわれる。
【0034】
この様なワイヤボンディングを行なうワイヤボンディング装置は、ボンディングヘッドを有しており、このボンディングヘッドには先端にボンディングツールを備えた超音波ホーンが設けられている。そして、この超音波ホーンが、揺動アームとともに駆動源によって揺動駆動されるようになっている。ボンディングツールには金(Au)などからなるボンディングワイヤが通される。このボンディングワイヤの先端にはボールが形成され、このボールを半導体素子に形成された端子、基板やリードフレームなどの基材に形成された端子に超音波振動を与えながら加圧することで、ボンディングを行うようになっている。
【0035】
そのため、ボンディング工程において接合層の粘度が低すぎると、超音波振動が減衰してしまいボンディングワイヤの接合不良、接合強度不足などの不具合が発生するおそれがある。
この場合、接合層の粘度を高くすればボンディングワイヤの接合不良、接合強度不足などを抑制することができる。しかしながら、接合層の粘度を高くしすぎると、後述する封止工程において接合層の粘度制御ができず接合層にボイドが発生するおそれがある。そのため、ボンディング工程における接合層の粘度制御においては、すくなくとも封止工程における接合層の粘度の適正範囲の上限値を超えないように制御される。
すなわち、接合層の粘度を高くするために接合層の溶媒を揮発させて接合層の粘度を一旦高くしてしまうと、接合層の粘度を下げることは出来ないからである。
この場合、封止工程における接合層の粘度が適正範囲の上限値以下に制御される場合には、その値を超えないようにすることが好ましい。すなわち、ボンディング工程における接合層の粘度は、封止工程における接合層の粘度を越えないように制御されるようにすることが好ましい。
【0036】
本発明者らの得た知見によれば、接合層のボンディング温度における粘度を15000Pa・s以上とすれば、ボンディングワイヤの接合不良、接合強度不足などの発生を抑制することができる。また、後述する封止工程における接合層の粘度の上限値以下とすれば、封止工程における接合層の粘度制御が容易となる。そのため、ボンディング工程においては、接合層のボンディング温度における粘度が15000Pa・s以上、10Pa・s以下となるように制御される。この場合、ボンディング工程における接合層の粘度は、封止工程における接合層の粘度を越えないように制御されるようにすることが好ましい。なお、これらの粘度は、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)を用いて測定した場合である。
【0037】
このような粘度の制御、特に、接合層の粘度が後の工程に依存する点は非接触型の塗布装置をもちいて半導体素子の裏面に接合層を形成する場合に特有なものである。本実施例では、ボンディング工程における接合層の粘度の上限値が、後の封止工程における上限値に依存することになる。
【0038】
そのため、図1に示すように、ダイボンディング工程における適正な粘度をさらに上昇させてボンディング工程における適正な粘度とする。この場合、接合層の粘度は加熱処理を行うことで上昇させることができる。また、この加熱処理において接合層の粘度を加熱温度、加熱時間などにより制御するようにすることができる。なお、粘度の測定には、例えば、日本工業規格JISK7244−10に定める既知の粘度測定法を用いることができる。この場合、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)などを用いて粘度を測定するようにすることができる。
【0039】
接合層の加熱処理は、前述したダイボンディング工程とボンディング工程との間において、加熱炉などを用いて行うようにすることができる。加熱炉としては、例えば、プリキュア(Precure)を行うキュア炉などとすることができる。その様なキュア炉としては、ベルトコンベアの上下にヒータなどの加熱手段を搭載したものや、温風を用いて加熱を行うものなどを例示することができる。
また、ボンディング工程において接合層を加熱して粘度の制御を行うこともできる。
【0040】
この場合、例えば、接合剤の溶質がエポキシ樹脂、溶媒がγ−ブチロラクトン(GBL)、接合剤におけるエポキシ樹脂の割合が25重量%、接合層の厚みが10μm(マイクロメートル)程度、加熱処理前の接合層の25℃における粘度が0.015Pa・s程度の場合、加熱温度を90℃程度、加熱時間を1時間程度とすることができる。この様にすれば、接合時の温度が150℃の場合における粘度が100Pa・s程度の接合層とすることができる。なお、この粘度は、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)を用いて測定した場合である。
【0041】
次に、封止工程における接合層の粘度(接合層の硬化の程度)に関して例示をする。
封止工程においては、半導体素子や端子間を接続するボンディングワイヤなどを樹脂で封止する。
この様な樹脂封止を行う樹脂モールド装置は、型開きをすることができる固定型と可動型とを有しており、固定型と可動型とを加熱する加熱手段を備えている。また、固定型と可動型とを型締めすることによりキャビティが形成されるようになっている。
【0042】
この様な樹脂モールド装置を用いて封止を行う場合には、キャビティ内に半導体素子が接合された基板やリードフレームなどがセットされ、溶融化された樹脂がキャビティ内に注入充填される。この様にして溶融化された樹脂が注入充填されると、キャビティの形状に対応して成形された樹脂封止成形体(モールドパッケージ)内に、半導体素子や端子間を接続するボンディングワイヤなどが封止される。
【0043】
図3は、接合層の粘度が封止に与える影響を例示するための模式図である。
接合層の中央部に凸部(例えば、異物が接合層中に残り、半導体素子と基材との間に隙間が生じた部分)が形成される場合がある。この様な凸部が形成されている場合、接合層の粘度(接合層の硬化の程度)が高すぎると、溶融化された樹脂が凸部の内部にまで充填されにくく、図3に示すようなボイド102が発生することがある。
【0044】
ここで、ボイド102は、封止時の注入の圧力によりモールド樹脂が埋込まれるので消失、または、縮小化する。ところが、モールド樹脂の注入が終了した時点で圧力が解放されるので埋込みが充分でない場合が生じ、接合層の付着力が弱いと剥離が発生するおそれがある。よって、モールドの粘度を下げて埋込み性を良くする必要があるが、本発明者らの得た知見によれば、接合層の粘度の適正化を図ることで埋込性をさらに向上させることができる。
【0045】
本発明者らの得た知見によれば、接合層の25℃における粘度を10Pa・s以下とすれば、ボイドを効果的に埋め込むことができる。そのため、封止工程においては接合層のモールド温度(封止工程の温度)における粘度が10Pa・s以下となるように制御される。なお、この粘度は、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)を用いて測定した場合である。
一方、封止工程における接合層の粘度の下限は、前の工程の接合層の粘度の下限に依存する。本実施例の場合、封止工程における接合層の粘度の下限はボンディング工程の下限値である15000Pa・s以上となる。
【0046】
そのため、図1に示すように、封止工程における接合層の粘度が高くなりすぎないように制御される。この場合、必要に応じて、接合層の粘度を加熱処理により上昇させることもできる。また、この加熱処理において接合層の粘度を加熱温度、加熱時間などにより制御するようにすることができる。なお、粘度の測定には、例えば、日本工業規格JISK7244−10に定める既知の粘度測定法を用いることができる。この場合、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)などを用いて粘度を測定するようにすることができる。
【0047】
接合層の加熱処理は、前述したボンディング工程と封止工程との間において、加熱炉などを用いて行うようにすることができる。加熱炉としては、例えば、プリキュア(Precure)を行うキュア炉などとすることができる。その様なキュア炉としては、ベルトコンベアの上下にヒータなどの加熱手段を搭載したものや、温風を用いて加熱を行うものなどを例示することができる。
また、封止工程において接合層を加熱して粘度の制御を行うこともできる。
【0048】
この場合、例えば、接合剤の溶質がエポキシ樹脂、溶媒がγ−ブチロラクトン(GBL)、接合剤におけるエポキシ樹脂の割合が25重量%、接合層の厚みが10μm(マイクロメートル)程度、加熱処理前の接合層の25℃における粘度が0.015Pa・s程度の場合、加熱温度を90℃程度、加熱時間を1時間程度とすることができる。この様にすれば、25℃における粘度が100Pa・s程度の接合層とすることができる。なお、この粘度は、動的粘弾性測定装置(平行平板振動レオメータ)を用いて測定した場合である。
【0049】
組成A
(接合剤の組成比)
本実施の形態に係る接合剤は以下の組成比で作成可能である。例えば、エポキシ樹脂としてjER1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製)100質量部、エポキシ用硬化剤としてフェノール樹脂のBRG−556(昭和高分子株式会社製)10質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製)2質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.2質量部およびU−CAT SA 102(サンアプロ株式会社製)1.5質量部、界面活性剤としてBYK−302(ビックケミージャパン社製)0.2質量部、有機溶剤としてガンマーブチロラクトン(GBL、三菱化学株式会社製)400質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した接合剤組成物(組成A)。
表1は、組成Aの接合剤を用い各組立工程における接合層の粘度を制御した場合の効果を一例として例示するものである。
【表1】

【0050】
また、本実施の形態に係る接合剤は以下の組成比も作成可能である。例えば、エポキシ樹脂としてjER1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製)60質量部、EOCN103S(日本化薬株式会社製)40質量部、エポキシ用硬化剤としてフェノール樹脂のBRG−556(昭和高分子株式会社製)15質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製)2質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)1.0質量部およびU−CAT SA 102(サンアプロ株式会社製)0.5質量部、界面活性剤としてBYK−302(ビックケミージャパン社製)0.2質量部、有機溶剤としてガンマーブチロラクトン(GBL、三菱化学株式会社製)400質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した接合剤組成物(組成B)。
表2は、組成Bの接合剤を用い各組立工程における接合層の粘度を制御した場合の効果を一例として例示するものである。
【表2】

【0051】
また、比較例として以下の組成比を例示する。例えば、エポキシ樹脂としてjER1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製)100質量部、エポキシ用硬化剤として芳香族アミンのエラスマー1000(イハラケミカル株式会社製)15質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製)2質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)1.0質量部、界面活性剤としてBYK−302(ビックケミージャパン社製)0.2質量部、有機溶剤としてガンマーブチロラクトン(GBL、三菱化学株式会社製)400質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した接合剤組成物(組成C)。
表3は、組成Cの接合剤を用い各組立工程における接合層の粘度を制御した場合の効果を一例として例示するものである。
【表3】

【0052】
なお、前述の表1〜3中の「*1)チップ位置ずれ」、「*2)ボイド」、表1〜2中の「*3)異物起因の剥離」は、以下の通りである。
*1)チップ位置ずれ:半導体素子のX、Y方向(水平面内)の位置ずれが100μm(マイクロメートル)以内の場合、「無」としている。
*2)ボイド:超音波映像装置(株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス)で接合状態を撮像し、ボイド(空隙)が全面積中の5%以下の場合を「無」としている。
*3)異物起因の剥離:超音波映像装置(株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス)で接合状態を撮像し、ボイド(空隙)が全面積中の5%以下の場合を「無」としている。
また、表3に例示をした場合においては、ボンディング工程において接合不良が発生したため、封止工程の評価を行わなかった。
【0053】
以上、本実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0054】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
100 接合ムラ、101 微小ボイド、102 ボイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の一方の面に設けられた接合層を介して前記半導体素子を基材の所定位置に接合するダイボンディング工程と、
前記半導体素子に形成された端子と、前記基材に形成された端子と、をボンディングワイヤによって接続するボンディング工程と、
前記半導体素子と前記ボンディングワイヤとを封止する封止工程と、
を備え、
前記ボンディング工程における前記接合層の粘度は、前記封止工程における前記接合層の粘度を越えないように制御されること、を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記封止工程における前記接合層の封止工程の温度における粘度は、10Pa・s以下とように制御されること、を特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ダイボンディング工程における前記接合層の25℃における粘度は、10Pa・s以上、3000Pa・s以下となるように制御されること、を特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ボンディング工程における前記接合層の25℃における粘度は、15000Pa・s以上となるように制御されること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記接合層を形成する接合剤の25℃における粘度は、0.015Pa・s以下となるように制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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