説明

半導体装置の製造方法

【課題】多数の半導体ウエハを水平に保持して使用する高温熱処理用ボートを使用しても半導体ウエハへのスリップ欠陥の発生を抑制することのできる半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】一体に固着された複数の高耐熱性支柱1がそれぞれ所定の間隔に刻まれた支持溝2を備え、該支持溝2は、前記複数の高耐熱性支柱1を直立させた状態で複数枚の半導体ウエハ3a、3bを水平に前記所定の間隔で保持する相互配列を備える高温熱処理用ボート10を使用して、該ボート10に保持される複数枚の半導体ウエハ群領域6、7の直上、直下に少なくともダミーウエハ3b(1)を1枚配設し、該ダミーウエハ3b(1)の直上、直下には少なくとも1枚分の空間を空けて、さらに延長部にダミーウエハ3bを複数枚配設して高温熱処理炉に炉入れする高温熱処理工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハプロセスで多数枚の半導体ウエハ等を一度にバッチ処理するためのウエハ支持ボートを使用して半導体ウエハに高温熱処理を施す工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハを用いて半導体装置(半導体デバイス)を製造する際に、バッチ処理にかかるウエハプロセスには、高温の酸化雰囲気中での熱処理を伴う酸化膜形成工程、電導度や導電型を制御する不純物を半導体ウエハに導入するための高温熱拡散処理工程などが含まれる。
【0003】
近年、これらの多数枚の半導体ウエハをバッチ処理するための熱処理装置として、従来は横置き型の熱処理炉が使用されていたが、近年は、その優れた均一性、大気からの巻き込み酸素の低減、フットプリントを小さくできる等の理由から、縦型の熱処理炉が多く使用されている。
【0004】
この縦型の熱処理炉を用いた高温熱処理工程の一例について以下簡単に説明する。例えば、縦型の熱処理炉を700〜800℃といった温度に保持した後、多数枚の半導体ウエハを保持する、図3に示す高耐熱の半導体ウエハ支持ボート(以降単にボートともいう)が炉入れされる。炉入れされたボートに保持された多数枚の半導体ウエハ(以降単にウエハともいう)は前記設定温度に加熱される。その後、所定の昇温速度で、例えば、1000〜1200℃といった高温にまで昇温して所要時間保持し、所要のガス雰囲気中で所要の酸化膜形成または熱拡散処理などを施す。再び、所定の降温速度で、例えば、700〜800℃といった温度まで降温し、炉体から熱処理済みのウエハが保持されたボートを炉出しすることで高温熱処理工程が終了する。
【0005】
この熱処理炉に使用されるボート20は、図3、図4に示すような、高純度、高耐熱の石英ガラス製などの支柱21を複数備える。この複数の支柱21には上下方向に所定の間隔でウエハの支持溝22が複数設けられている。この支持溝22にウエハ3外周部の裏面側を接触させて支持することにより、ウエハ3がボート20に保持される。これらの支持溝22の位置は、複数の各支柱を直立にした状態で、多数枚のウエハ3を所定の上下間隔で一枚毎、水平に保持することができるように、高さが水平に揃えられている。
【0006】
前述の高温熱処理工程では、熱処理炉に急激な温度変化が生じる際に、ボート20に水平に保持されているウエハ3では、支持溝との接触部(ウエハ周辺部)と非接触部(ウエハ内周部)とで温度変化に差が生じ、その差に起因する応力がウエハ3外周部に発生する。その量が一定の値を超えると、図5に示すように、誘起された応力を緩和しようとして、結晶の原子間にわずかなずれが生じる結果、ウエハ3の外周部の接触部にスリップ欠陥4と呼ばれる転位欠陥が発生することがある。
【0007】
このスリップ欠陥4が、ウエハ3内に形成されている半導体デバイス領域(図示せず)を横切ると、接合付近でのリーク不良等、素子特性を悪化させる要因となる。従って、このスリップ欠陥4の発生を抑制する製造プロセス技術の確立が必要不可欠である。
【0008】
このスリップ欠陥4と呼ばれる転位欠陥が発生する主な応力要因としては、第1に、ウエハ面内における内周と外周での温度差に起因する熱応力である。第2に、ウエハの自重が、ウエハ裏面の外周部を支持する支持溝に掛かっている状態で熱処理が行われることによる重力と熱との複合応力である。中でも、特に、ウエハの自重が掛かっている支持溝に接触するウエハ外周部の裏面に発生する物理的応力がスリップ欠陥4の最大要因となり易い。
【0009】
ウエハ3にスリップ欠陥4が発生する前述の要因は、とりわけ、ウエハ3面内での温度不均一性や、自重そのものが大きくなり易い近年のウエハの大口径化に伴い、いっそう顕著となる方向にあるため、スリップ欠陥4の抑制はますます難しくなる傾向にある。
【0010】
また、前述のように、この熱処理は、ボートに多数枚のウエハを水平状態で上下方向に一定の間隔を置いて重ねるように保持して充填した状態でのバッチ処理として行われるので、ボート内の最上部と最下部のウエハの熱的状態は、ボート中心付近のウエハの熱的状態とは異なる状態になり易い。すなわち、最上部と最下部のウエハの温度均一性や熱応答性はボート中心部のウエハに比して悪化し易い。このため、従来、ボートの最上部と最下部の外側には通常、ダミーウエハと呼ばれるウエハを複数枚配置することによって、ダミーウエハで挟まれる内側のウエハ群内では温度分布の不均一性などの熱的状態を改善するようにしている。
【0011】
このようなバッチ処理において発生し易い前述のような複数枚のウエハ間またはウエハ面内の熱的状態の不均一性を改善するために、従来、次のような対策が行われている。例えば、ウエハを支持するボートの形状、とりわけ支持溝でのウエハの接触面積を広げることにより過度の荷重を分散させる方法である(特許文献1)。また、温度の不均一性を生じさせる昇降温の速度を低下させることにより温度追従性を高めて、前記温度不均一を小さくする方法も知られている。さらに、ボートに積載されるウエハの支持溝の上下間隔を広げることにより、ガスの回り込みや熱輻射を改善して温度追従性を高めることにより、温度均一性を向上させる方法等が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−50967号公報
【特許文献2】特開平7−45547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述の支持溝部分でウエハとの接触面積を広げることにより、過度のウエハによる荷重を分散させる方法では、実際には支持溝の支持面は微視的には完全に平坦ではなく、さらにウエハの反りや平坦度も完全ではないことから、ウエハ裏面外周部の支持面は点接触となっていることが多い。その結果、効果的に荷重を分散させるには至らず、充分なスリップ欠陥の抑制効果が得られていないという問題がある。
【0014】
また、昇降温の速度を低下させる方法では、適正な昇降温速度を選択すれば、スリップ欠陥を抑制できる可能性があるが、一方で昇降温速度の低下により熱処理からウエハの炉出し温度までの時間も長くなるため、スループットの低下を引き起こすことが問題である。加えて、支持溝の上下間隔を広げる方法でも、1回当たりに処理されるウエハ枚数が減少し、大幅なスループット低下を招くことから、生産性の面で課題が残る。
【0015】
他方で、スリップ欠陥は、実際には、ウエハが支持溝で接触する裏面の外周部という特定領域でのみ発生し易いので、この特定領域でのスリップ欠陥を確実に防ぐ方法を見つけることが課題となる。この課題の解消のため、実際にはボートの最上部と最下部のウエハの直上、直下には、ウエハの熱容量を確保し温度の均一性や熱応答性がボートの中心付近とほぼ同程度になるように、ダミーウエハと呼ばれるウエハを、例えば、それぞれ10枚程度積載する方法が行われている。
【0016】
しかしながら、スリップ欠陥の発生の原因となるウエハ面内の温度の不均一性については、熱処理温度が高温になる程、許容される温度の不均一性が厳しくなる。また、熱処理温度に達した後の保持状態だけでなく、昇温、降温の過程を含めて、ウエハ面内の温度の不均一性を抑える必要が出てくる。この場合、前述のようにダミーウエハの枚数を変えるだけでは、ボートの上部と下部におけるスリップの発生を抑制することができない場合のあることが分かってきた。
【0017】
また、ウエハの大口径化に伴い、ウエハ面内の温度均一性の確保がより厳しくなり、さらには自重も増加する影響でウエハ外周部の接触部への応力が集中する傾向がより高くなる。特に、ウエハ内に取り込まれている酸素濃度が低く、スリップ耐性の低いFZ(フローティング ゾーン)法の半導体結晶により製造された半導体ウエハでは、前述の方法では、スリップ欠陥の発生を完全に抑制することはできないことが判明している。
【0018】
また一方、ウエハ面内での温度均一性を改善するためにダミーウエハを積載することは、その分、本来の製品ウエハが処理される単位バッチ量を減らす結果となるため、ボートの上部と下部に配置されるダミーウエハについては、効果を落とさずに極力、枚数を少なくすることが望まれる。
【0019】
本発明は、以上説明した点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、多数枚の半導体ウエハを水平に保持して使用する高温熱処理用ボートを使用しても半導体ウエハへのスリップ欠陥の発生を抑制することのできる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記本発明の目的を達成するために、本発明では、一体に固着された複数の高耐熱性支柱がそれぞれ所定の間隔に刻まれた支持溝を備え、該支持溝は、前記複数の高耐熱性支柱を直立させた状態で複数枚の半導体ウエハを水平に前記所定の間隔で保持する相互配列を備える高温熱処理用ボートを使用して、該ボートに保持される複数枚の半導体ウエハ群の直上、直下に少なくともダミーウエハを1枚配置し、該ダミーウエハの直上、直下には少なくとも1枚分の空間を空けて、さらに延長部にダミーウエハを複数枚配置して高温熱処理炉に炉入れする高温熱処理工程を有する半導体装置の製造方法とする。
【0021】
前記高温熱処理が、1000℃乃至1200℃のいずれかの保持温度を有することが好ましい。前記高温熱処理用ボートの材料が石英ガラスであることも好ましい。半導体ウエハがシリコン半導体ウエハであることもよい。高温熱処理工程が酸化膜形成工程または熱拡散処理工程であることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多数枚の半導体ウエハを水平に保持して使用する高温熱処理用ボートを使用しても半導体ウエハへのスリップ欠陥の発生を抑制することのできる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる、上部にウエハが配置されている半導体ウエハの支持ボートを示す上端部断面図である。
【図2】本発明にかかる、下部にウエハが配置されている半導体ウエハの支持ボートを示す下端部断面図である。
【図3】半導体ウエハが従来の支持ボートにより保持される状態を示す半導体ウエハの支持ボートの上端部断面図である。
【図4】半導体ウエハが従来の支持ボートにより保持される状態を示す半導体ウエハの支持ボートから3本の支柱を固着する天板を除いた状態の平面図である。
【図5】支持ボートに保持される半導体ウエハに発生するスリップ欠陥を示す半導体ウエハの支持ボートの上端部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる半導体装置の製造方法の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
本発明にかかる半導体装置の製造方法の実施例について、以下、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、目的とする半導体デバイスを製造するための半導体ウエハを製品ウエハと記すことにより、ダミーウエハと区別して説明する。また、高温熱処理用のウエハ支持ボートの支持溝に積載して充填された複数の製品ウエハをまとめて製品ウエハ群と言うことがある。半導体ウエハの材料としては、シリコン半導体、炭化珪素半導体、窒化ガリウム半導体などの半導体結晶材料を用いることができる。
【0026】
図1は、本発明の半導体装置の製造方法の実施例にかかる半導体ウエハ支持ボートを用いてバッチ処理で高温熱処理を行う製造プロセスにおいて、ウエハ支持ボート10へのウエハの配置に係わるボート10の上端部近傍を示す断面図である。このうち、製品ウエハ群領域6は、製品ウエハ3aが実際に処理される際に配置される領域であり、ダミーウエハ群領域5は、ダミーウエハ3bが配置される領域である。符号3a、3bの後の括弧内の数字はウエハ群領域内の端部からのウエハの並び順である。図2は図1とは反対側の下端部近傍を示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、本発明にかかる半導体ウエハ支持ボート10では、第1に、ウエハ支持ボート10に5mm間隔で保持された製品ウエハ群領域6の直上、直下の延長部分にも、少なくともダミーウエハ3bがそれぞれ1枚づつ配置されるようにボートの石英支柱1に支持溝2が同間隔で延長してボート端部付近まで設けられている。このようなダミーウエハ3bの配置により製品ウエハ群領域6の最端部の製品ウエハ3a(1)は、他の製品ウエハ3aと同じ5mm間隔でダミーウエハ3b(1)が5mm間隔で隣接配置されているため、熱処理において使用されるガスの流れ方が中心部と同等になる効果が得られる。この結果、とりわけ、酸素雰囲気で熱処理を行い、熱酸化膜を成長させる製造プロセスにおいては、製品ウエハ間の酸素ガスの流れがウエハ群の中心部と周辺部とで同等となるため、全製品ウエハで同等の酸化膜厚が確保される効果が得られる。
【0028】
一方で、製品ウエハ群領域6の直上及び直下の延長部分にダミーウエハが無い場合には、最周辺部(最上部、最下部)の製品ウエハでは、ガス(酸化性ガス)の流れが中心部の製品ウエハに比べて変わるため、製品ウエハ群の周辺部の製品ウエハの酸化膜厚が中心部の製品ウエハの膜厚と異なることになる。例えば、ダミーウエハが無い場合、ガスが最周辺部の製品ウエハ面に対して接触する量が増えて膜厚が厚くなる。ただし、製品ウエハの酸化膜の膜厚が特性に関係するのは表面側の酸化膜であるので、最下部の製品ウエハでは、裏面側のガスの流れが表面側に比べて変わって裏面側の酸化膜厚が厚くなっても特性面への影響が少ない。しかし、酸化膜厚が厚くなると、熱の伝播による影響は避けられず、拡散深さのばらつきにつながる可能性もあるため、最下部の製品ウエハの下部の延長部にもダミーウエハを配置することが好ましい。
【0029】
第2に、製品ウエハ群領域6の直上、直下の延長部に配置されたダミーウエハ3b(1)のさらに直上および直下には直ちにダミーウエハを配置せず、少なくともウエハ1枚分の空間9aを空けてから、さらに延長部に複数枚のダミーウエハ3bを配置することが好ましい。このようなダミーウエハ3bの配置とすることにより、ダミーウエハ間に空間9aを空けた領域付近では、ウエハの間隔が広がったことと等価の状態となり、ガスの回り込みや熱輻射が改善され、ウエハの温度追従性が高まることにより、温度均一性が向上する効果が得られる。この結果、より厳しい温度制御が求められる高温の熱処理プロセスや、ウエハの大口径化、スリップ耐性の低いFZ結晶などの半導体ウエハに対しても、スリップ欠陥の発生を抑えることが可能となる。この効果については表1を用いて後ほど、明らかにする。
【0030】
また、本発明と従来の半導体ウエハのボートへの配置に関して比較すると、従来は、製品ウエハ群領域6の上下部の延長部に、ダミーウエハ3bを所定の間隔で空間を設けずに連続的に複数枚配置し、熱容量を確保することで、温度の均一性や熱応答性を改善させてきた。その場合、本発明の実施例と比較して、ボートの上部と下部の延長部に配置するダミーウエハの枚数が多く必要となる。その分、従来の方法では、製品ウエハ群領域の範囲を狭めることになる。一方、本発明の実施例では、前述のようにダミーウエハの枚数を減らすことが可能となるため、生産性が向上する。
【0031】
図1で、ダミーウエハ3bが配置されるダミーウエハ群領域5では、製品ウエハ群領域6に隣接するように、製品ウエハ群領域6の直上にダミーウエハ3b(1)が1枚配置されている。さらに、その上部延長部には、ウエハ1枚分の空間9aを空けた状態に続いて、ダミーウエハ3b(2)以下複数枚のダミーウエハ3bが配置されている。
【0032】
このような配列でウエハをウエハ支持ボート10へ保持させることで、製品ウエハ群領域6の直上にダミーウエハ3bが配置されているため、製品ウエハ群領域6の最上部の製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域6と同じウエハ間隔を保つことができる。この結果、製造プロセス中に流される所要のプロセスガスは、製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域6と同等の流れを作ることが可能となり、とりわけ、酸素ガスを流して熱酸化を行う製造プロセスにおいては、全製品ウエハ群領域6で同等の熱酸化膜厚を得ることを可能とする。
【0033】
また、このダミーウエハ3b(1)は、プロセスガスの流れを決めるウエハ間隔が他の製品ウエハ群領域6と同一になればよいため、製品ウエハ群領域6の直上に少なくとも1枚配置されていればよい。一方、このダミーウエハ3b(1)を2枚以上配置しても、プロセスガスの流れを制御する効果は同様に得られるので悪くはないが、後述するスリップ欠陥の発生を抑制する温度追従性が低くなる方向であり、製品ウエハ群領域6の最上部の製品ウエハ3aでスリップ欠陥が発生し易くなることから、1枚のみ配置するのが好ましい。
【0034】
さらに、製品ウエハ群領域6の製品ウエハ3a(1)の直上に配置されたダミーウエハ3b(1)の上部延長部は、前述のようにウエハ1枚分の空間9aを空けた状態に続いて、複数枚のダミーウエハ3bが配置される。この配置により、空間9aを空けた領域付近では、ウエハの間隔が広がったことと等価の状態となり、ガスの回り込みや熱輻射が改善され、温度追従性が高まることにより、温度均一性が向上する効果が得られる。この影響は、直接的には製品ウエハ群領域6の製品ウエハ3a(1)の直上に配置されたダミーウエハ3b(1)が影響を受けることとなるが、温度追従性と温度均一性が向上したダミーウエハ3b(1)を介して、その下部に配置された製品ウエハ群領域6にも間接的に影響を及ぼす。この結果、製品ウエハ群領域6のウエハ面内温度均一性が向上し、スリップ欠陥の発生が抑制される。
【0035】
図2は、ウエハ支持ボート10への下端部のウエハ配置について示している。このうち、製品ウエハ群領域7は、製品ウエハ3aが実際に処理される際に配置される領域であり、ダミーウエハ群領域8は、ダミーウエハ3bが配置される領域である。
【0036】
ダミーウエハ3bが配置されるダミーウエハ群領域8では、製品ウエハ群領域7に隣接するように、製品ウエハ群領域7の直下にダミーウエハ3b(1)が1枚配置されている。さらに、その下部の延長部には、ウエハ1枚分の空間9bを空けた状態に続いて、ダミーウエハ3b(2)以下の複数枚のダミーウエハ3bが配置されている。
【0037】
このような配列でウエハをウエハ支持ボート10へ保持させることにより、製品ウエハ群領域7の直下にはダミーウエハ3bが配置されているため、製品ウエハ群領域7の最下部の製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域7と同じウエハ間隔となる。この結果、製造プロセス中に流されるプロセスガスは、製品ウエハ群領域7の最下部の製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域7と同等の流れを作ることが可能となる。一方、最下部の製品ウエハ3a(1)は、半導体デバイス領域が形成される表面側が製品ウエハ群領域7と接しており、他の製品ウエハ群領域7と同じウエハ間隔となっている。このため、酸素ガスによる熱酸化で酸化膜を形成する製造プロセスにおいては、直下に配置されるダミーウエハ3bによって他の製品ウエハ群領域7と同等のガスの流れを作る必要性は必ずしも無いが、熱の伝播による影響は避けられず、拡散深さのばらつきにつながるため、下部の延長部にもダミーウエハ3bを配置することが好ましい。
【0038】
さらに、製品ウエハ群領域7の下部に配置されるダミーウエハ3bの下部の延長部には、ウエハ1枚分の空間9bを空けた状態に続いて、複数枚のダミーウエハ3bが配置される。このようなウエハの配置により、ウエハ支持ボートの上部と同様に、空間9bを空けた領域付近では、ウエハの間隔が広がったことと等価の状態となり、ガスの回り込みや熱輻射が改善され、温度追従性が高まることにより、温度均一性が向上する効果が得られる。この結果、製品ウエハ群領域7はその直下に配置されるダミーウエハ3bを介して、間接的に製品ウエハ3a面内の温度均一性が向上し、スリップ欠陥の発生が抑制される。
【0039】
表1は、8インチウエハを用いて、熱処理温度1150℃で熱処理を行い、従来のダミーウエハを空間9a、9b無く配置した場合と、本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配列を適用した場合について、ウエハ支持ボートの上部、及び下部におけるスリップ欠陥の発生の有無を評価した結果を示している。
【0040】
【表1】

スリップ欠陥の確認には、透過型X線トポグラフィを用いた。透過型X線トポグラフィは、結晶面のずれであるスリップ欠陥を感度良く検出可能なため、スリップ欠陥の評価として、一般的に用いられる方法の一つである。
【0041】
前記表1に示すように、本発明の半導体装置の製造方法を適用した場合、ウエハ支持ボートの下端部では、ウエハ支持ボートの上端部から6枚目以降は中心部に向かってでスリップ欠陥の発生が抑えられている。従来の方法では、ウエハ支持ボートの上端部から12枚目までスリップ欠陥が発生している。一方、ウエハ支持ボートの下端部では、本発明の場合、下端部から5枚目以降は中心部に向かってスリップ欠陥の発生が抑えられているが、従来の方法では、下端部から10枚目までスリップ欠陥が発生している。この結果から、前述した本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配置とすることによるスリップ欠陥抑制効果が高いことが明らかである。
【0042】
従って、本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配置とすることで、従来と比較して、ウエハ支持ボートの上端部と下端部に配置されるダミーウエハの枚数が従来の12枚から5枚に削減され、製品ウエハ群領域の範囲を広げることが可能となるため、生産性を高めることができる。
【0043】
以上、実施例で説明したように、本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配列とすることにより、以下に示す効果を得ることが可能となる。
第1に、ウエハ支持ボートの上部と下部領域における温度均一性、追従性が従来よりも向上して熱的な安定性が高まったことにより、スリップ欠陥の発生を抑制することができる。
【0044】
第2に、従来よりも製品ウエハ群領域の上部及び下部に配置されるダミーウエハの枚数を減らすことができる。この結果、製品ウエハ群領域となる範囲を狭めることなく、1回あたりの熱処理で得られる製品ウエハ枚数を増やし、生産性を高めることができる。
【0045】
第3に、本発明では、製品ウエハ群領域直上及び直下にはダミーウエハが隣接して配置されているため、ガスの流れが変わることはなく、酸化膜の形成時にも影響を及ぼさない。
【0046】
第4に、ウエハを大口径化しても、従来と比較して、その影響を軽減でき、スリップ欠陥の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、21 石英支柱
2、22 支持溝
3a 製品ウエハ
3b ダミーウエハ
4 スリップ欠陥
5 ウエハ支持ボート上部のダミーウエハ群領域
6 ウエハ支持ボート上部の製品ウエハ群領域
7 ウエハ支持ボート下部の製品ウエハ群領域
8 ウエハ支持ボート下部のダミーウエハ群領域
10 本発明のウエハ支持ボート
20 従来のウエハ支持ボート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体に固定された複数の高耐熱性支柱がそれぞれ所定の間隔に刻まれた支持溝を備え、該支持溝は、前記複数の高耐熱性支柱を直立させた状態で複数枚の半導体ウエハを水平に前記所定の間隔で保持する相互配列を備える高温熱処理用ボートを使用して、該ボートに保持される複数枚の半導体ウエハ群の直上、直下にダミーウエハを少なくとも1枚配値し、該ダミーウエハの直上、直下には少なくとも1枚分の空間を空けて、さらにダミーウエハを複数枚配値して高温熱処理炉に炉入れする高温熱処理工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記高温熱処理が、1000℃乃至1200℃のいずれかの保持温度を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記高温熱処理用ボートの材料が石英ガラスであることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体ウエハがシリコン半導体ウエハであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
高温熱処理工程が酸化膜形成工程または熱拡散処理工程であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69985(P2013−69985A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209085(P2011−209085)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】