説明

半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法

【課題】所望のスタンドオフ高さを任意に調節し、リード加工をすることができる半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】図1に示すように、リード5を備えている半導体装置1を収容する装置受けダイ30と、装置受けダイ30より外側に、かつ下側に設けられており、リード5の平坦部が接触する曲げダイ10と、曲げダイ10と対向するように配されており、かつリード5を曲げダイ10の上面との間に挟み込むことにより、成形する曲げパンチ110と、装置受けダイ30と曲げダイ10との高さの差を調節するための位置調整手段60と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の放熱性向上を目的に、リードフレームのダイパッドを封止樹脂下方から露出させる構造が普及している。その結果、封止樹脂の反り形状は複雑化している。一方、リードの外形寸法等のバラつきを少なくする必要がある。加えて、今後はリードの外形寸法以外にも、リードの最下部と封止樹脂の最下部の高さの差を示すスタンドオフ高さも、数μmオーダで制御・管理する必要がある。
【0003】
特許文献1−4には、半導体装置のリード加工装置が開示されている。特許文献1のリード加工装置では、加工したリードの形状が所望の形状に一致しない場合であっても、リードの形状を調整している。特許文献2のリード加工装置では、メッキかすの付着が分散され、メッキかすによる短絡の発生がなく、安定してリードの加工を行っている。特許文献3のリード加工装置では、アウタリードを適正に位置決め、保持している。特許文献4のリード加工装置では、金型の型締め力を適宜制御することによって、高精度に、かつ生産性よくリード加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−111512号公報
【特許文献2】特開2001−24130号公報
【特許文献3】特開平10−229155号公報
【特許文献4】特開平5−326791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタンドオフ高さの制御・管理には、リード成型金型の加工精度確保が必須である。しかしながら、スタンドオフ高さに関しては、リード外形だけでなく封入樹脂の反り形状に依存するため、所定の寸法を満たすことは困難である。リードの成形において所定の寸法のスタンドオフ高さを満たさなかった場合、実装後に電子部品として出来栄えのバラつき等の問題点が生じる。このため、所望の金型を毎回調製する作業が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、リードを備えている半導体装置を収容する装置受けダイと、
上記装置受けダイより外側に、かつ下側に設けられており、上記リードの平坦部が接触する曲げダイと、
上記曲げダイと対向するように配されており、かつ上記リードを上記曲げダイの上面との間に挟み込むことにより、成形する曲げパンチと、
上記装置受けダイと上記曲げダイとの高さの差を調節するための位置調整手段と、
を備える半導体装置の製造装置が提供される。
【0007】
さらに、本発明によれば、リードを有する第1の半導体装置を装置受けダイに収容する収容工程と、
上記装置受けダイより外側に、かつ下側に設けられている曲げダイと対向するように配されている曲げパンチによって、上記曲げダイの上面との間に上記リードを挟み込んで加工する加工工程と、
上記装置受けダイに収容されている上記リードを有する第1の半導体装置から、上記第1の半導体装置とは異なる種類の上記リードを有する第2の半導体装置に切り替える際、上記装置受けダイと、上記曲げダイとの高さの差を位置調節手段によって調節する調節工程と、
を有している半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明によれば、曲げダイが配置されている位置に対する装置受けダイの位置の高さの差を、位置調節手段によって調節できる。このため、所望のスタンドオフ高さを有した半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容易に所望のスタンドオフ高さの半導体装置のリード加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る半導体装置の製造装置の断面図である。
【図2】(a)は、本実施形態に係る装置受けダイの位置調節を説明するための図、(b)は拡大図である。
【図3】本実施形態に係る半導体装置の製造装置における下型ホルダの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造装置の断面図である。
図1に示すように、リード5を備えている半導体装置1を収容する装置受けダイ30と、装置受けダイ30より外側に、かつ下側に設けられており、リード5の平坦部が接触する曲げダイ10と、曲げダイ10と対向するように配されており、かつリード5を曲げダイ10の上面との間に挟み込むことにより、成形する曲げパンチ110と、装置受けダイ30と曲げダイ10との高さの差を調節するための位置調整手段60と、を備えている。
【0013】
なお、曲げダイ10は固定されており、かつ装置受けダイ30は上下に可動する。また、位置調整手段60は、位置調節ボルトであることが好ましい。
【0014】
本実施形態に係る半導体装置の製造装置について、具体的に説明する。
【0015】
図2の(a)は、本実施形態に係る装置受けダイの位置調節を説明するための図、(b)は(a)における主要部の拡大図である。
図2の(a)に示すように、下型ホルダ80には、半導体装置1が収容される装置受けダイ30と、加工したリード5の平坦部が接触する曲げダイ10が別々に設けられている。装置受けダイ30は、半導体装置1を収容するための凹部と、リード5を支えるための肩部を有している。また、曲げダイ10は、成形されたリード5を挟み込むため、リード5と接する上面は平坦になっている。
【0016】
下型ホルダ80の上には曲げダイ10が固定された状態で設けられている。曲げダイ10の側面に挟み込まれるように装置受けダイ30は設けられている。なお、装置受けダイ30における肩部は曲げダイ10の上端より上側に配される。また、装置受けダイ30は、位置調節手段60によって下から支えられている。このため、図2の(b)に示すように、下型ホルダ80に対する位置調節手段60の高さを調節することにより、装置受けダイ30と曲げダイ10との高さの差は、任意に調節できる。つまり、半導体装置1のスタンドオフ高さhを容易に調節できる。
【0017】
位置調節手段60の周囲には入れ子180が配されている。この入れ子180は、下型ホルダ80の上面に固定されており、中心部に貫通孔を有している。位置調節手段60は、この貫通孔を貫通している。位置調節手段60は、入れ子180の内側面に設けたタップ加工部65と噛みあっている。このため、位置調節手段60は回転させることによって上下方向に動く。この位置調節手段60が上下方向に動くことよって、位置調節手段60と連結している装置受けダイ30も上下方向に動く。ただし、位置調節手段60と装置受けダイ30との間には、挿入部が設けられており、吊りボルト190が挿入されている。この吊りボルト190は、装置受けダイ30の上方に挿入されており、装置受けダイ30を固定している。この吊りボルト190と位置調節手段60によって、装置受けダイ30が上方に持ち上がることを防止している。
【0018】
位置調節手段60は、下型ホルダ80に設けられている貫通孔を貫通している。このため、下型ホルダ80と位置調節手段60との隙間においても、位置調節手段60が自在に動けるように、十分な寸法を有し、かつ装置受けダイ30の位置決め後に下型ホルダ80の下面の貫通孔からスクリュプラグ70等によって固定を補助している。なお、曲げダイ10は、入れ子190とダイプレート50によって位置決めしており、カムストッパブロック40とストロークストッパブロック20を有している。
【0019】
さらに、本実施形態に係る半導体装置の製造装置には、リード5の成形に係る曲げパンチ110を備えた上型ホルダ140が設けられている。なお、曲げパンチ110は、下型ホルダ80に設けられている曲げダイ10と対向するよう設けられている。さらに、上型ホルダ140には、曲げパンチ110の下死点位置を決定するストロークストッパ130や、曲げパンチ110の他に曲げパンチ110の動作を制御するカム120、カム用バネ押さえ150、カム用バネ160、およびカムストッパ90が設けられている。また、曲げパンチ110と同様に、ストロークストッパ130は下型ホルダ80に設けられたストロークストッパブロック20と、対向するように配されている。
【0020】
さらに、上型ホルダ140には、曲げパンチ110の動きを制御する曲げパンチローラ100や、曲げパンチが配されているパンチホルダ170も設けられている。
【0021】
図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造装置における下型ホルダの上面図である。
図3に示すように、半導体装置1形状は矩形である。そして、半導体装置1の各辺それぞれから複数のリード5が伸びている。なお、半導体装置1を収容する装置受けダイ30の形状は、半導体装置1より大きな矩形となっている。
曲げダイ10は、矩形である半導体装置1の4辺の外側にそれぞれ設けられている。また、カムストッパブロック40は、半導体装置1の周囲の内、曲げダイ10が配置されていない4角に設けられている。なお、ストロークストッパブロック20は、曲げダイ10およびカムストッパブロック40の外側に、設けられている。
【0022】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0023】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、まず、リード5を有する第1の半導体装置1を装置受けダイ30に収容する。収容された第1の半導体装置1に対して、装置受けダイ30より外側に、かつ下側に設けられている曲げダイ10と対向するように配されている曲げパンチ110によって、曲げダイ10の上面との間にリード5を挟み込んで加工する。次に、装置受けダイ30に収容されている第1の半導体装置1から、第1の半導体装置1とは異なる種類の第2の半導体装置1に切り替える際、装置受けダイ30と、曲げダイ10との高さの差を位置調節手段60によって調節する。
【0024】
その後、第1の半導体装置1と同様に、第2の半導体装置1を装置受けダイ30に収容し、リード5の加工を行う。
【0025】
本実施形態に係る半導体装置1の製造方法のうち、リード5の加工と装置受けダイ30と曲げダイ10の高さの差を調節する工程について具体的に説明する。
【0026】
加工工程では、装置受けダイ30に半導体装置1をセットした後、上型ホルダ140に設けられたカム120が下型ホルダ80に向けて下降する。カム120は、カムストッパ90とカムストッパブロック40が接触するまで、動くことができる。なお、カム120は上型ホルダ140とカム用バネ押さえ150に取り付けられた、カム用バネ160と接続されている。このカム用バネ160の圧縮弾性変形によって、カム120を固定した状態で上型ホルダ140、曲げパンチ110、パンチホルダ170およびストロークストッパ130が下型ホルダ80に向けて下降する。
【0027】
曲げパンチ110は、カム120を固定した状態で下降することで、カム120と接している曲げパンチローラ100を介して曲げパンチ110の動作を制御しながら上下動することができる。曲げパンチ110は、下型ホルダ80に固定されている曲げダイ10と対向する面に設けられているため、曲げパンチ110と曲げダイ10にてリード5を挟み、ストロークストッパ130とストロークストッパブロック20が接触するまで、動くことができる。
【0028】
曲げダイ10に向けて下降した曲げパンチ110は、まず装置受けダイ30に搭載した半導体装置1が備えているリード5と接触する。このとき、半導体装置1とリード5の付け根部分は、装置受けダイに設けられている肩部と接触することで支えられている。このため、リード5を加工する際、リード5の折れ曲がり箇所は毎回半導体装置1から同じ距離離れた箇所で折れ曲がる。
【0029】
曲げパンチ110の下降する力によって、装置受けダイ30の肩部35において折れ曲がり始めたリード5は、曲げパンチ110の下面と曲げダイ10の上面にリード5が挟み込まれるまで加工される。
【0030】
調節工程では、下型ホルダ80の貫通孔内に固定されたスクリュプラグ70を取り外した後、位置調節手段頭部210の調節用溝220を所定の工具によって回転させる。これによって、位置調節手段60は上下方向に動く。この時、装置受けダイ30も上下方向に動く。このため、リード5の曲げ成形時において装置受けダイ30の肩部と曲げダイ10のリード平坦部の上下方向寸法を所定の寸法に調節することができる。
【0031】
なお位置調節手段60に右ねじを使用した際、右に回した場合は位置調節手段60と、これに固定した装置受けダイ30が上方に進行する。これによって、装置受けダイ30の肩部と曲げダイ10の平坦部の上下方向の寸法は大きくなる。この状態で装置受けダイ30の上に半導体装置1をセットした後、リード5の曲げ成形を実施することによって、スタンドオフ高さは高くなる。一方、左に回した場合は位置調節手段60と装置受けダイ30は、下方に進行する。これによって、スタンドオフ高さは低くなる。
【0032】
また、本実施形態に係る調節工程では、位置調節手段60を回転するのみである。このため、スペーサ等の調整部品は使用しない。つまり、煩雑な金型の分解、組込み作業を実施する必要がない。さらに、曲げダイ10の平坦部位置が固定である為、調節作業前後で曲げパンチ110と曲げダイ10の相対位置の変化がない。したがって、曲げパンチ110の下死点位置を調節する作業も不要である。
【0033】
これまでに述べた、収容工程、加工工程、および調節工程、の全3工程を1サイクルとする。そして、異なる種類のリード5を備えている半導体装置1をリード加工するため、調節工程をはじめとする1サイクルを実行する。このようにして、本実施形態では、半導体装置1のリード5加工を行っている。
【0034】
次に、本実施形態による効果を説明する。
【0035】
本実施形態に係る半導体装置の製造装置によると、高さ調節可能な装置受けダイ30と、固定されている曲げダイ10を備えているため、所望のスタンドオフ高さが異なる複数種類の半導体装置1それぞれのリード5の加工を行う際、金型を新規制作しなくても各リード5の加工を行うことができる。これによって、所望のスタンドオフ高さを有した半導体装置1のリード5の加工に掛かるコスト、および時間を削減することができる。
【0036】
なお、位置調節手段60と装置受けダイ30が進行する寸法は、位置調節手段60のピッチにより決まる。例えばピッチが0.10mmの時、位置調節手段60を一回転させることで0.10mm進行する。このことから、0.05mmスタンドオフ高さを高くすべき場合は、ボルトを右回りに半回転することで可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 半導体装置
5 リード
10 曲げダイ
20 ストロークストッパブロック
30 装置受けダイ
40 カムストッパブロック
50 ダイプレート
60 位置調節手段
65 タップ加工部
70 スクリュプラグ
80 下型ホルダ
90 カムストッパ
100 曲げパンチローラ
110 曲げパンチ
120 カム
130 ストロークストッパ
140 上型ホルダ
150 カム用バネ押さえ
160 カム用バネ
170 パンチホルダ
180 入れ子
190 吊りボルト
200 位置調節手段挿入部
210 位置調節手段頭部
220 調節用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードを備えている半導体装置を収容する装置受けダイと、
前記装置受けダイより外側に、かつ下側に設けられており、前記リードの平坦部が接触する曲げダイと、
前記曲げダイと対向するように配されており、かつ前記リードを前記曲げダイの上面との間に挟み込むことにより、成形する曲げパンチと、
前記装置受けダイと前記曲げダイとの高さの差を調節するための位置調整手段と、
を備える半導体装置の製造装置。
【請求項2】
前記曲げダイが固定されており、かつ前記装置受けダイが上下に可動する請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項3】
前記位置調節手段は、位置調節ボルトである請求項1または2に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項4】
リードを有する第1の半導体装置を装置受けダイに収容する収容工程と、
前記装置受けダイより外側に、かつ下側に設けられている曲げダイと対向するように配されている曲げパンチによって、前記曲げダイの上面との間に前記リードを挟み込んで加工する加工工程と、
前記装置受けダイに収容されている前記リードを有する第1の半導体装置から、前記第1の半導体装置とは異なる種類の前記リードを有する第2の半導体装置に切り替える際、前記装置受けダイと、前記曲げダイとの高さの差を位置調節手段によって調節する調節工程と、
を有している半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記曲げダイが固定されており、かつ前記装置受けダイが上下に可動する請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記位置調節手段は、位置調節ボルトである請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−243946(P2012−243946A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112442(P2011−112442)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】