説明

半導体装置及びデータ処理システム

【課題】電力消費を抑えて長周期ジッタに起因するビットエラーの発生を抑制することができるシリアル受信回路を提供する。
【解決手段】クロック信号(CK3)に同期してシリアル信号を受信するシリアル受信回路(2)は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリング位相(CLK(1)〜CLK(N))に同期して前記シリアル信号をサンプリングし、サンプリングした信号に基づいて前記シリアル信号の位相変動によるサンプリング結果への影響が少ないサンプリング位相を最適位相と判別して当該最適位相によりサンプリングした信号を受信データとする受信動作を行い、前記最適位相の判別動作として、第1モード(初期位相検出)と、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モード(位相追跡)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相の異なる同一周波数の複数の多相クロック信号を用いて受信したシリアル信号に対してオーバーサンプリングを行ってデータを抽出するシリアル受信回路を備えた半導体装置、更にはデータ処理システムに関し、例えばディジタル携帯電話システムに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
送信信号のシリアルデータや受信回路のサンプリングクロックのような電気信号には、ジッタと呼ばれるピコ秒やナノ秒単位での時間軸方向の揺らぎの現象が存在し、数百メガHzを超えるような高速伝送になると伝送ビットエラーの主要な要因となる。ジッタの原因としては、電子の熱雑音、電源電圧や温度の変動による電子回路の素子の伝搬遅延量の変動などが挙げられる。ジッタは要因や揺らぎの特徴から複数のパラメータに分類されるが、測定手法や技術分野によっても取り扱いは様々である。ジッタ成分として、短時間で非周期的に揺らぐランダムジッタがある。ランダムジッタは伝送規格の中でも厳密に制限されており、回路設計時にも十分に配慮されている。その他にも、電気回路のクロック周波数に関連した周期性を持つジッタ成分が存在する。こういった周期性ジッタ(特に長周期の成分はワンダーとも呼ぶ)も、長時間安定して伝送を継続する上で障害となるため、高速シリアル伝送の受信回路にCDR(Clock and Data Recovery)と呼ばれる技術が必要となる。
【0003】
CDRは入力されるシリアル信号からデータ成分と最適な位相関係を持つクロック成分を分離して抽出する電気信号の伝送技術であるが、CDRは、高速な差動信号のシリアル通信分野で多く用いられ、大きく二つの方式に分類することが出来る。
【0004】
一つ目の方式であるPLL(Phase Locked Loop)を用いた位相同期方式は、受信したシリアルデータの変化点とサンプリングクロックエッジの位相差を検出し、内蔵するVCO(Voltage Control Oscillator)をチャージポンプで制御することにより、シリアルデータに同期したクロック成分を再生する。この再生クロックを基準としてシリアルデータをサンプリングすることにより受信信号の再生が可能となる。狭義でCDRと呼ぶときは位相同期方式を指すことが多い。PLLを用いた従来技術としては文献1に記載の発明がある。
【0005】
二つ目の方式は、位相の異なる同一周波数の複数の多相クロック信号を用いて、受信したシリアルデータをオーバーサンプリングする位相補間方式である。参照クロックからN本の多相クロックを生成し、フリップフロップを用いてN系列分のサンプリングデータを得る。その後、クロックと最適な位相関係にあるデータ信号をディジタル信号処理により選択して受信信号を得る。位相補間方式は、一般的にPLLを用いた位相同期方式に比べて実装が容易であり消費電力も少ない。オーバーサンプリングを用いた従来技術としては特許文献2,3,4に記載の発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4077454号公報
【特許文献2】特開2002−190724号公報
【特許文献3】特開2005−192192号公報
【特許文献4】特開2006−262165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
位相同期方式は、PLL回路のVCO(voltage controlled oscillator)が受信したシリアルデータに同期するまで、一般的に数百〜数千クロックサイクルの時間を必要とする。そのため受信信号入力から短時間で受信開始を要求するような規格に対応するのは難しい。またVCOは高速化に伴って消費電流が大きくなりがちであり、省電力が要求される移動端末のような装置に大量に搭載するには不向きである。特に複数の差動リンクを搭載するケースでは、受信回路の個数分のVCOが追加で必要となるため、合計の消費動作電流が大きくなってしまう。
【0008】
一方、位相補間方式は受信回路毎に専用のVCOを必要としないため、特に複数のシリアル通信チャネル(差動リンク)を搭載する場合には、位相同期方式に比べて少ない消費動作電流で実装出来る。また、実際にオーバーサンプリングで観測した信号を元に、最適な位相を判断するため、数サイクル〜数十クロックサイクルと非常に高速に、シリアルデータに同期することが可能である。しかしながら、従来の位相補間方式はフレームの先頭に付随するユニークなコードに対するパターンマッチングによって最適な位相を判断するためパターンに応じて回路構成を相違させなければならない。例えば、複数の通信プロトコルに対応するには対応する最適位相を判定する回路構成を通信プロトコル毎にもたなければならない。
【0009】
また、近年の伝送レート高速化のニーズに伴い、多相クロックの位相精度の向上と、更なる多相化の要求が増し、クロックの更なる多相化は回路面積の増加につながり、低消費動作電流のメリットも享受しにくくなる。
【0010】
更に、通信フレームの先頭で最適な位相を判別しても、伝送路特性に経時的変化により、フレームの途中で最適な位相が変化する虞があり、特定のパターンマッチングではそれに対応することができない。伝送路特性の経時的変化の一例として、電源電圧の変動によるアナログ素子(シリアルデータの入力バッファなどに用いられる)の伝搬遅延量が増減する現象が挙げられる。電源電圧が低下するとアナログ素子の伝搬遅延量は増加し、電源電圧が上昇すると逆に減少する傾向にある。こういった素子の傾向は長周期ジッタの原因となり、次のフレームまで最適な位相を再決定することが出来なければ、通信途中でビットエラーを発生させる可能性がある。動的に最適クロック信号を選択して、長周期ジッタを追跡できるようにすることが必要となる。しかも、最適クロック信号の動的な追跡を行うための新たな動作の追加を伴うから、更なる定消費電力を考慮することが必要である。
【0011】
本発明の目的は、電力消費を抑えて長周期ジッタに起因するビットエラーの発生を抑制することができるシリアル受信回路を備えた半導体装置を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、半導体装置間のシリアルインタフェースで電力消費を抑えて長周期ジッタに起因するビットエラーの発生を抑制することができるデータ処理システムを提供することにある。
【0013】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0015】
すなわち、クロック信号に同期してシリアル信号を受信するシリアル受信回路は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリング位相に同期して前記シリアル信号をサンプリングし、サンプリングした信号に基づいて前記シリアル信号の位相変動によるサンプリング結果への影響が少ないサンプリング位相を最適位相と判別して当該最適位相によりサンプリングした信号を受信データとする受信動作を行い、前記最適位相の判別動作として、第1モードと、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モードとを有する。
【0016】
これにより、データサンプリングの最適位相を受信動作の途中で更新できるから長周期ジッタに起因するビットエラーの発生を抑制することができる。更に、長周期ジッタに起因する位相のずれは段階的に且つ緩やかに生ずるから、第1モードで一旦最適位相を判別した後は、サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて最適位相の判別を行っても充分であり、その演算量を低減でき、これによって低消費電力が実現される。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0018】
すなわち、クロック同期によるシリアル受信において電力消費を抑えて長周期ジッタに起因するビットエラーの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はシリアル受信回路の構成を例示するブロック図である。
【図2】図2は本発明の一実施の形態に係る半導体装置を例示するブロック図である。
【図3】図3はリングオシレータで構成した多相クロック生成部を例示する論理回路図である。
【図4】図4は図3の多相クロック生成部で生成されるサンプリングクロック信号のクロック波形図である。
【図5】図5は選択信号生成部の詳細を例示するブロック図である。
【図6】図6は位相選択演算部の詳細を例示するブロック図である。
【図7】図7はデコーダによるクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(N)の生成論理を例示する説明図である。
【図8】図8はステートマシンの状態遷移図である。
【図9】図9はステートマシンの制御フローチャートである。
【図10】図10はシリアルデータのオーバーサンプリングの結果から最適位相を選択するまでの動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は初期位相決定論理と位相追跡論理の二つの位相選択論理を使用したときの動作タイミングチャートである。
【図12】図12はN=8,L=3の場合におけるクロックイネーブル信号の変化タイミングを例示するタイミングチャートである。
【図13】図13は本実施の形態によるシリアル受信回路を適用したデータ処理システムとしてディジタル形態電話システムを例示するブロック図である。
【図14】図14は本実施の形態によるシリアル受信回路を適用したデータ処理システムとしてマルチRATシステムを例示するブロック図である。
【図15】図15は本実施の形態によるシリアル受信回路を移動体通信端末装置のデバイス間インタフェースに応用した例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0021】
〔1〕《サンプリング位相の初期検出と変動追跡》
本発明の代表的な実施の形態に係る半導体装置は、クロック信号(CL3)に同期してシリアル信号を受信するシリアル受信回路を備える。前記シリアル受信回路は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリング位相(CLK(1)〜CLK(N))に同期して前記シリアル信号(SRLS)をサンプリングし、サンプリングした信号に基づいて前記シリアル信号の位相変動によるサンプリング結果への影響が少ないサンプリング位相を最適位相と判別して当該最適位相によりサンプリングした信号を受信データとする受信動作を行い、前記最適位相の判別動作として、第1モード(初期位相検出モード)と、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モード(位相追跡モード)と、を有する。
【0022】
上記により、データサンプリングの最適位相を受信動作の途中で更新できるから長周期ジッタに起因するビットエラーの発生を抑制することができる。更に、長周期ジッタに起因する位相のずれは段階的に且つ緩やかに生ずるから、第1モードで一旦最適位相を判別した後は、サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて最適位相の判別を行っても充分であり、その演算量を低減でき、これによって低消費電力が実現される。
【0023】
〔2〕《判別動作サイクル》
項1の半導体装置において、前記第2モードによる判別動作のサイクルは前記第1モードによる判別動作のサイクルよりも長い。長周期ジッタによる位相変動は一旦判別された最適位相が精々隣のサンプル位相に変動する程度であるから、2モードによる判別動作のサイクルが長くてもビットエラーの虞はなく、更なる低消費電力に資することができる。
【0024】
〔3〕《判別論理》
項2の半導体装置において、前記シリアル受信回路は、各サンプリングされた信号が一つ前のサンプル位相のサンプリング信号と不一致である回数をサンプリング位相の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合うサンプリング位相に対応する積分値がより小さくされたサンプリング位相を、前記最適位相であると判別する。
【0025】
これによれば、隣のサンプリング信号との一致/不一致などに、基づいてシリアル信号の位相変動による影響のないサンプリング位相を判別するものであり、既知のシンボルパターンとの比較によって最適なサンプリング位相の判別を行うものではないから、種々の通信プロトコルのシリアル受信に広く且つ容易に対応することができる。
【0026】
〔4〕《重みを用いた判別論理》
項3の半導体装置において、前記シリアル受信回路は、判別すべき夫々のサンプリング位相に対してスコア(SCORE(n))を計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する。重みを用いた評価により上記判別に精度を高くすることが容易である。
【0027】
〔5〕《同期パターンを用いたサンプリング》
項4の半導体装置において、前記シリアル受信回路は、シリアル信号をフレーム単位で受信し、フレームの前に付随する同期パターンを用いて前記第1モードによる判別を行い、前記フレームの先頭に配置されたフレームデリミタパターンを検出することによって、前記第2モードによる判別を行う。これにより、フレームデリミタパターンを含めてフレーム全体に対してエラーなくデータ受信することができる。これに対応できる同期パターンの形式は項2より一切限定されない。
【0028】
〔6〕《フレームデリミタパターン前の初期位相検出》
項5の半導体装置において、前記シリアル受信回路は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリングクロック信号に同期して前記シリアル信号をサンプリングするオーバーサンプリング部(52)と、前記オーバーサンプリング部でサンプリングされたサンプリングデータに基づいて、前記シリアル信号の位相変動がサンプリング結果に与える影響の少ない一つのサンプリング位相を最適位相と判別する判別部(56)と、前記判別部で判別された最適位相のサンプリングクロック信号でサンプリングされた信号を受信データとして選択するする選択部(53)と、前記同期パターンの検出に応答して前記判別部を前記第1動作モードで動作させ、前記フレームデリミタパターンの検出に応答して、前記判別部を前記第2動作モードで動作させる制御部(57)と、を有する。
【0029】
〔7〕《判別論理》
項6の半導体装置において、前記選択部は、各サンプリングデータが一つ前の位相のサンプリングデータと不一致である回数をサンプリングクロック信号の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合う位相のサンプリングクロック信号に対応する積分値がより小さくされたサンプリングクロック信号を、前記最適位相を持つクロック信号であると判別する。
【0030】
〔8〕《重みを用いた判別論理》
項7の半導体装置において、前記選択部は、判別すべき夫々のサンプリングクロック信号に対してスコアを計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する。
【0031】
〔9〕項8の半導体装置において、前記サンプリングクロック信号の種別数に、前記クロック信号の所定複数サイクル数を乗算した値は、前記同期パターンにおける前記クロック信号のサイクル数より小さい。フレームデリミタパターン前に最適なサンプリング位相の検出を完了させることができる。
【0032】
〔10〕《初期位相検出、最適位相追跡》
本発明の別の実施の形態に係る半導体装置は、クロック信号に同期してシリアル信号を受信するシリアル受信回路を備え、前記シリアル受信回路は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリングクロック信号に同期して前記シリアル信号をサンプリングするオーバーサンプリング部と、前記オーバーサンプリング部でサンプリングされたサンプリングデータに基づいて、前記シリアル信号の位相変動がサンプリング結果に与える影響の少ない一つのサンプリング位相を最適位相と判別する判別部と、前記判別部で判別された最適位相のサンプリングクロック信号でサンプリングされた信号を受信データとして選択する選択部と、前記シリアル信号の入力検出に応答して前記判別部を前記第1動作モードで動作させ、前記シリアル信号に含まれる所定パターンの検出に応答して、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モードで動作させる制御部と、を有する。
【0033】
〔11〕《判別論理》
項10の半導体装置において、前記選択部は、各サンプリングデータが一つ前の位相のサンプリングデータと不一致である回数をサンプリングクロック信号の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合う位相のサンプリングクロック信号に対応する積分値がより小さくされたサンプリングクロック信号を、前記最適位相を持つクロック信号であると判別する。
【0034】
〔12〕《重みを用いた判別論理》
項11の半導体装置において、前記選択部は、判別すべき夫々のサンプリングクロック信号に対してスコアを計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する。
【0035】
〔13〕項12の半導体装置において、前記第2モードによる判別動作のサイクルは前記第1モードによる判別動作のサイクルよりも長い。
【0036】
〔14〕《同期パターンを用いたサンプリング》
項13の半導体装置において、前記シリアル受信回路は、シリアル信号をフレーム単位で受信し、フレームの前に付随する同期パターンの検出に応答して前記判別部を前記第1モードで動作させ、前記フレームの先頭に配置されたフレームデリミタパターンの検出に応答して前記判別部を前記第2モードで動作させ、
前記サンプリングクロック信号の種別数に、前記クロック信号の所定複数サイクル数を乗算した値は、前記同期パターンにおける前記クロック信号のサイクル数より小さい。
【0037】
〔15〕《データ処理システム》
本発明の更に別に実施の形態に係るデータ処理システムは、相互に一方から他方に伝送されたシリアル信号をクロック信号に同期して受信する一対の半導体装置を備える。前記夫々の半導体装置は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリング位相に同期して前記シリアル信号をサンプリングし、サンプリングした信号に基づいて前記シリアル信号の位相変動によるサンプリング結果への影響が少ないサンプリング位相を最適位相と判別して当該最適位相によりサンプリングした信号を受信データとする受信動作を行い、前記最適位相の判別動作として、第1モードと、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モードとを有する。
【0038】
〔16〕《判別論理》
項15のデータ処理システムにおいて、前記選択部は、各サンプリングされた信号が一つ前のサンプル位相のサンプリング信号と不一致である回数をサンプリング位相の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合うサンプリング位相に対応する積分値がより小さくされたサンプリング位相を、前記最適位相であると判別する。
【0039】
〔17〕《重みを用いた判別論理》
項16のデータ処理システムにおいて、前記シリアル受信回路は、判別すべき夫々のサンプリング位相に対してスコアを計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する。
【0040】
〔18〕項17のデータ処理システムにおいて、前記第2モードによる判別動作のサイクルは前記第1モードによる判別動作のサイクルよりも長い。
【0041】
〔19〕項18のデータ処理システムにおいて、一の前記半導体装置はベースバンドプロセッサ部(130)を含み、他の前記半導体装置はアナログフロントエンド部(140)を含む。
【0042】
〔20〕項18のデータ処理システムにおいて、一の前記半導体装置はベースバンドプロセッサ部(183)を含み、他の前記半導体装置はアプリケーションプロセッサ部(182)を含む。
【0043】
2.実施の形態の詳細
図2には本発明の一実施の形態に係る半導体装置が例示される。同図に示される半導体装置1は、特に制限されないが、公知の相補型MOS集積回路製造技術などによって単結晶シリコンのような1個の半導体基板に形成される。この半導体装置1は、例えばプロセッサ機能と共にディジタル信号処理機能等を備え、他の半導体装置と差動シリアルによる高速インタフェース機能が搭載された、システム・オン・チップのベースバンドICとして構成される。
【0044】
半導体装置1は、プロセッサコア(中央処理装置、CPU)5を中心に、MODEM(modulator-demodulator)3及びDSP(Digital Signal Processor)4等のディジタル信号処理部を搭載し、クロック同期でシリアル受信を行うシリアル受信回路(SRLIF)2、非同期で送受信を行うUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)6、及び外部バス制御などを行うバスステートコントローラ(BCONT)7等を備える。9は内部バスである。プロセッサコア5、MODEM3、DSP4、UART6、及びバスステートコントローラ7の同期動作に用いるクロック信号CK1、CK2はシステム用のPLL(Phase Locked Loop)回路(SYSPLL)11で生成する。PLL回路11はクロック端子P1に接続された外部クロック源20からクロック入力バッファ14に供給されたクロック信号を入力し、位相比較器30、ループフィルタ31、電圧制御発振器32、及び分周器33から成る帰還系で当該クロック信号に対して周波数と位相が一定に制御されたクロック信号を生成し、これをそれぞれ分周器35,34で分周して周波数が異なる複数のクロック信号、または周波数が同じクロック信号(クロック信号CK1、CK2)を生成する。
【0045】
差動信号入力端子P3,P4から差動シリアル信号を入力する差動信号受信バッファ12はシリアル信号SRLSをシリアル受信回路2に供給する。シリアル受信回路2はクロック信号CK3に同期してオーバーサンプリングによりシリアル信号SRLSからデータを取り出し、パラレル信号PRLSとしてモデム3に与える。モデム3は与えられたパラレル信号PRLSを復調する。クロック信号CK3はシリアルインタフェース用のPLL回路(SIPLL)10で生成する。PLL回路10はクロック端子P2に接続された外部クロック源21からクロック入力バッファ13に供給されたクロック信号を入力し、位相比較器40、ループフィルタ41、電圧制御発振器42、及び分周器43から成る帰還系で当該クロック信号に対して周波数と位相が一定に制御されたクロック信号CK3を生成する。前記シリアル受信回路2、クロック入力バッファ12,13は、特に制限されないが、プロセッサコア5からの指示に基づいて受信動作が必要にされるとき、MODEM3から出力される受信インタフェースイネーブル信号RENによって操作の活性/非活性が制御される。
【0046】
前記シリアルインタフェース用のPLL回路10は高速伝送のクロック周波数を得るための回路であり、システム用のPLL回路11とは独立したクロック生成回路を構成している。これはDSP4やMODEM3によるディジタル信号処理及びディジタル復調、そしてプロセッサコア5の命令実行動作により消費電流に激しい増減を生じ、これにより電源電圧変動が発生し、そのせいで増加する電圧制御発振器のジッタがシリアル受信回路2における高速シリアルインタフェースに好ましくない影響を与えるからである。シリアルインタフェース用のPLL回路10とシステム用のPLL回路11を別に実装すればこの問題を排除できる。ただし伝送規格の低ジッタ要求に十分耐えられるPLL回路が用意できる場合には兼用し、シリアル用のクロック信号とシステム用のクロック信号との両方を生成することも可能である。その場合には、ベースバンドICとしての半導体装置1全体の消費動作電力をより低減することができる。
【0047】
図1にはシリアル受信回路2の構成が例示される。多相クロック生成部50はリファレンスクロック信号としてクロック信号CK3を入力する。シリアル信号SRLSとクロック信号CK3の位相関係は定義される必要がないが、周波数は同期している必要がある。多相クロック生成部50はクロック信号CK3に対して周波数が同一で、2π/Nずつ位相の異なるN本のサンプリングクロックとしてのクロック信号CLK(1)〜CLK(N)を生成して出力する。ここでは、クロック信号CK3及びクロック信号CLK(1)〜CLK(N)の周波数をfとする。多相クロック生成部50は図3に例示されたリングオシレータで構成され、例えば図4のクロック波形を有する。ただし、N本の多相クロックを生成する方式は、これに限定されない。
【0048】
クロック遮断部51はクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(N)を一方の入力に受ける2入力型の論理積ゲート60〜62によってクロック信号CLK(1)〜CLK(N)のクロックゲーティングを行う。
【0049】
オーバーサンプリング部52はN本の多相クロック信号CLK(1)〜CLK(N)のエッジを用いて、一つのシリアル信号SRLSをN個のフリップフロップ(FF)70〜72にてオーバーサンプリングし、N本のサンプルデータSMPLDAT(1)〜SMPLDAT(N)を得る。
【0050】
選択信号生成部56は、サンプルデータSMPLDAT(1)〜SMPLDAT(N)に基づいて安定した位相関係を持つ多相クロック信号CLK(1)〜CLK(N)を判定し、位相選択信号84と、クロック遮断部51に提供するN本のクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(N)を生成する。安定した位相関係とは、サンプルデータSMPLDAT(1)〜SMPLDAT(N)に基づいて前記シリアル信号SRLSの位相変動によるサンプリング結果への影響がない若しくは影響が少ない、ということである。
【0051】
データ選択部53は、選択信号生成部56で決定されたサンプリング位相のサンプリングクロック信号でサンプリングされたサンプルデータを位相選択信号によって選択し、選択データMUXDATとして出力する。並直変換回路54は、選択データMUXDATをパラレル信号PRLSに変換し、後のディジタル信号処理で扱いやすいサンプリング周波数に信号を変換する。
【0052】
バースト検出部58はシリアル信号SRLSのバーストの開始を検出してバースト検知通知(バースト検知信号)80を活性化し、バーストの終了を検出してバースト終了通知(バースト終了信号)81を活性化する。フレーム先頭検出部55はSOF(Start Of Frame、フレーム先頭)を検出して、フレーム先頭検出通知85を活性化する。バーストとは差動リンクすなわち差動入力端子P3,P4に1ビット以上の連続するシリアルデータが伝送されている状態を指す。例えば、1024ビット前後のシリアルデータを一つのバーストとして扱うが、場合によってはもっと長いバーストを取り扱うケースも存在する。逆に差動リンクにバーストが現れていない状態をここではスリープと呼ぶことにする。また、フレームとは通信プロトコルで定義されたデータ伝送単位を指す。論理的なフレームの先頭はシリアルデータのユニークなビット列として定義したフレームデリミタパターンを持ち、フレーム先頭検出部55はフレームデリミタパターンの照合によってフレームの先頭を検知する。
【0053】
ステートマシン57は受信インタフェースイネーブル信号RENが活性化されると、シリアル信号SRLSの受信状態を管理して、選択信号生成部56の動作を制御する。ステートマシン57はバースト検出通知80の活性化に応答して初期位相検出通知(初期位相検出信号、第1検出信号)82で選択信号生成部56に多相クロック信号CLK(1)〜CLK(N)のうち安定した位相関係を持つサンプル位相を初期的に判別する初期位相検出動作を指示し、フレーム先頭検知通知信号85の活性化に応答して位相追跡通知(位相追跡信号、第2検出信号)83で選択信号生成部56にその後のシリアル信号SRLSの長周期ジッタによる影響に対して安定なサンプル位相を更新する位相追跡動作を指示する。
【0054】
図5には選択信号生成部56の詳細が例示される。選択信号生成部56はN本のサンプルデータSMPLDAT(1)〜SMPLDAT(N)を入力して周波数fのクロック信号(例えばクロック信号CK3)でラッチする入力レジスタ90を備える。入力レジスタ90にラッチされたサンプルデータSMPLDAT(1)〜SMPLDAT(N)と次のクロックサイクルで選択信号生成部56に入力されるサンプルデータSMPLDAT(1)とを時系列に隣同士で排他的論理和によって比較する比較回路91が設けられ、その比較結果は周波数fのクロック信号で順次のシフトレジスタ回路92に送られてラッチされる。比較回路の夫々の排他的論理和の値は、隣り合うサンプル位相によるサンプルデータが相違するとき論理値“1”にされる。要するに排他的論理和が“1”にされる二つのサンプル位相の間でシリアル信号の値が変化していることを意味する。REGは夫々周波数fのクロック信号でラッチ動作を行うラッチ回路である。比較回路91による隣り合うサンプルデータに対する排他的論理和結果の同一系列毎に、シフトレジスタ回路92の入力と各ラッチ段の出力を加算器ADDで加算する加算回路93が設けられる。加算器ADDの出力はその値が大きければ対応する二つのサンプル位相の間でシリアル信号の値が変化している回数が多いことを意味する。二つのサンプル位相の間におけるシリアル信号値の変化は、ジッタに影響されない信号変化もあれば、ジッタに影響された信号変化もある。結局、ジッタに影響されることのないサンプルデータは、加算器ADDの出力が0に対応されるサンプル位相でサンプリングされたデータである。
【0055】
Mは加算回路93で遡って加算する平均回数、即ち、排他的論理輪による比較結果の系列が周波数fのクロック信号のMサイクルあること、を示す。シリアル信号SRLSのこのMサイクル分に期間を積分ブロックとも称することにする。上記より、Mを大きくすれば、長時間安定を保っている位相をより精度良く判定できるようになる。但し、伝送路特性(例えばシリアル伝送における伝搬遅延量)の経時的変化に対する応答速度が鈍化する。最適位相判定の精度と応答速度はトレードオフの関係にあり、最適なMの値はシリアルデータのジッタの最大の規格値と多相クロックのジッタトレランス性能から、設計の際に検討されて決定される事項である。
【0056】
図5では例として、多相クロックの本数N=4、排他的論理輪による比較結果系列のサイクル数M=5の場合を一例とする。4本のサンプルデータSMPLDAT(1)〜SMPLDAT(4)と、隣接する位相のサンプルデータとの排他的論理和を計算し、最初の比較値TRANS(m,n)(m=1、n=1〜4)を得る。この結果は続く4段のシフトレジスタ回路92で順々にラッチ処理され、比較値TRANS(m,n)(m=1、n=1〜4)、TRANS(m,n)(m=2、n=1〜4)、TRANS(m,n)(m=3、n=1〜4)、TRANS(m,n)(m=4、n=1〜4)、TRANS(m,n)(m=5、n=1〜4)の結果が得られる。これらの結果を上述のように組み合わせに分けて、4個の加算値SUM(1)〜SUM(N)を得る。これらの結果は位相選択演算部94に入力される。
【0057】
図6には位相選択演算部94の詳細が例示される。ここでは便宜上図5と同様にN=4、M=5とする。加算値SUM(1)〜SUM(4)は初期位相決定論理100と位相追跡論理101の二つの論理回路に入力される。初期位相決定論理100と位相追跡論理101の論理構成の詳細については後で説明するが、概略的には、加算値SUM(1)〜SUM(4)に基づいてシリアル信号SRLSの位相変動によるサンプリング結果への影響が少ない一つのサンプリング位相を判別する処理である。INIT_PHASEは初期位相決定論理101が導出した最適位相であり、TRACK_PHASEは位相追跡論理101が導出した最適位相である。詳細は後で説明するが、位相追跡論理101は初期位相決定論理100に比べて判別に用いる演算量が減らされるようにされる。
【0058】
位相選択演算部94は、シリアルデータのバースト及びフレームを管理しているステートマシン57から、初期位相検出通知82と位相追跡通知83を入力し、前記初期位相決定論理100と位相追跡論理101のうち何れを有効するかを事前に選択スイッチで制御する。スイッチで選択されて有効にされたな論理回路100又は101の出力結果が後段の論理選択器102で選択される。論理選択器102で選択された結果は位相選択信号84として前記データ選択部53に与えられる。同時に位相選択信号84を受けるデコーダ103は当該位相選択信号84に基づいてクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(4)を生成して、必要な多相クロック信号以外のサンプルクロック信号によるサンプリングをディセーブルに制御することで消費電流の低減を図る。
【0059】
更に、更新タイミング生成部105が設けられ、初期位相検出通知82と位相追跡通知83を用いて、バーストの受信状態を判断し、各位相選択論理100,101の演算周期を決定する。位相追跡論理101はPHASE_UPDATEがイネーブルとなる積分ブロックの時だけTRACK_PHASEを導出する。この例では初初期位相検出通知82で指示される初期位相の検出動作(初期位相検出ステート参照)では、常にPHASE_UPDATEをイネーブルにしているが、位相追跡通知83で指示される位相追跡動作(位相追跡ステート参照)では、複数積分ブロック例えば2積分ブロックにつき1回だけPHASE_UPDATEをイネーブルにする。これによりTRACK_PHASEを、複数積分ブロックにつき一回だけ更新することが可能となり、位相追跡動作における消費動作電流を低減することができる。TRACK_PHASEをイネーブルにする周期は、要求される伝送路の特性に応じてシリアル受信回路2の動作開始前にプロセッサコア5等によって図示を省略する制御レジスタに初期設定される。長周期ジッタの周波数が低ければ、TRACK_PHASEのイネーブル周期もそれに応じて大きくすることが出来、消費動作電流の削減は更に大きくなる。位相追跡動作における演算手法は初期位相決定論理における演算手法と同じでも電力消費は実現され、この複数積分ブロックにつき一回だけ位相追跡のための演算を行う手法には、位相追跡動作における後述のクロックイネーブル制御を併用することも可能である。
【0060】
図8はステートマシン57の状態遷移図であり、図9はステートマシンの制御フローチャートである。ステートマシンは受信インタフェースイネーブル信号RENが活性化されることで動作を開始し、受信OFFステートST1からバースト待ち受けステートST1に遷移する。バースト待ち受けステートST1では、初期位相検出通知82と位相追跡通知83は非活性とされ、且つ全てのクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(4)は無効とされ、消費動作電流を極力削減している。バースト待ち受けステート2中に、バースト検出部58でシリアルデータのバースト開始を検出すると(S1)、第1モードとしての初期位相検出ステートST3に遷移する。初期位相検出ステートST3中は、初期位相検出通知82を活性化し、且つ位相追跡通知83を非活性にすることで(S2)初期位相選択論理100を有効にする。また、最適な位相を持つ多相クロックを探すために、全てのクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(4)を有効にする。
【0061】
初期位相検出ステートST3中に、フレーム先頭検出器55にてフレーム先頭を受信したことを検出すると(S3)、第2モードとしての位相追跡ステートST4に遷移する。位相追跡ステートST4中は、初期位相検出通知82を非活性とし、且つ位相追跡通知83を活性にする(S4)ことで、位相追跡論理101を有効にする。また位相選択演算部94のデコーダ103により、最適位相のクロックとその近傍のクロックのクロックイネーブル信号を有効にし、他のクロックイネーブル信号を停止する。クロック遮断部51では有効なクロックイネーブル信号のみをイネーブルレベルとすることで消費電流を低減しつつ、最適位相を追跡し続ける。
【0062】
位相追跡ステートST4中に、バースト検出部58でシリアル信号SRLSのバースト終了を検出すると(S5)、バースト待ち受けステートST1に戻る。この際、初期位相検出通知82と位相追跡通知83を非活性にし、全てのクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(4)を無効にして(S6)、消費動作電流を削減する。そして次のバースト開始を検出するまで待機する。
【0063】
図11には初期位相決定論理と位相追跡論理の二つの位相選択論理を使用したときの動作タイミングチャートが示される。図6で説明したとおり位相選択演算部94は二つの位相選択論理として初期位相決定論理100と位相追跡論理101を実装している。
【0064】
初期位相決定論理100は初期位相検出ステートST3において用いられる位相選択論理であり、バーストを検出してから、フレーム先頭を検出するまでの短時間で最適位相INIT_PHASEを決定する必要がある。初期位相決定論理100は短時間で最適位相を算出するために、毎積分サイクル位相選択のための演算を行う。
【0065】
位相追跡論理101は位相追跡ステートST4において用いられる位相選択論理であり、フレーム先頭検出後からバースト終了まで、最適位相を再導出し続ける。TRACK_PHASEの更新周期を長周期ジッタで最適位相が変化する時間よりも十分に短く設定すれば、位相追跡ステートST4にて最適位相を追跡し続けることが可能となる。
【0066】
図11の例に従えば、初期位相検出ステートST3において積分ブロック1から最適位相INIT_PHASEとしてAが導出され、積分ブロック2から最適位相INIT_PHASEとしてBが導出され、積分ブロック3から最適位相INIT_PHASEとしてCが導出される、というように、毎積分ブロックで位相決定論理による演算が行われる。位相追跡ステートST4では、PHASE_UPDATEがイネーブルとなる積分ブロック5から最適位相TRACK_PHASEとしてDが導出され、積分ブロック7から最適位相TRACK_PHASEとしてEが導出される。
【0067】
図10には、シリアルデータのオーバーサンプリングの結果から最適位相を選択するまでの動作フローが例示される。ここではオーバーサンプリング用の多相クロック本数N=4、排他的論理輪による比較結果系列のサイクル数M=5の場合を一例とする。
【0068】
シリアル信号SRLSを過去Mサイクル分オーバーサンプリングした結果から一回、最適な位相選択信号84を導出する。そのMサイクルの時間幅をここで積分ブロックと呼ぶ。図10の例では積分ブロックは5サイクル分の時間に相当する。
【0069】
シリアル信号SRLSには、例えば高速シリアルインタフェースの送信部に由来するジッタにより、周期に僅かながら変動を生じ、そのままではサンプリングの誤りを生ずる虞がある。図10では、ジッタによるサンプリング誤りの抑制を一例とする。このケースではN=4であるため多相クロック信号としてを4本のサンプリングクロック信号を使用する。シリアルデータ1サイクル(波長T)を4つのサンプリングクロック信号のエッジでオーバーサンプリングし、サンプルデータSMPLDAT(1)〜SMPLDAT(4)を得る。
【0070】
選択信号生成部56の比較回路91とシフトレジスタ回路92を用いて、隣接するサンプリングクロック間のサンプルデータSMPLDAT同士で排他的論理和を演算し、変化点検出としてTRANS(m,n)を得る。その結果を加算して数1の式よりSUM(n)を導出する。
【0071】
【数1】

【0072】
この例ではM=5、n=1,2,3,4とし、SUM(1)=3、SUM(2)=0、SUM(3)=0、SUM(4)=1となる。これらの結果を位相選択演算部94に入力し、最適な位相選択信号84を導出する。
【0073】
ここで位相選択論理の演算方法について一例を示す。N個の加算値SUM(n)からN個のSCORE(n)を計算する。N個の結果のSCORE(n)のうち、最小値を持つnの番号を最適位相として導出する。SCORE(n)は数2の式で表される。
【0074】
【数2】

【0075】
上記a(l)は、重み係数を示し、パラメータlの中央で極大値を取り、パラメータlの最小最大で、極小値を取る窓関数である。ここではa(l)に三角窓関数を適用する場合を例示する。
N=4(L=3)の時のa(l)の例を挙げれば、
a(1)=1、a(2)=2、a(3)=1となる。
N=6(L=5)の時のa(l)の例を挙げれば、
a(1)=1、a(2)=2、a(3)=4、a(4)=2、a(5)=1となる。
N=8(L=7)の時のa(l)の例を挙げれば、
a(1)=1、a(2)=2、a(3)=4、a(4)=8、a(5)=4、a(6)=2、a(7)=1となる。
【0076】
これらの例ではa(l)の係数を、全て2のべき乗の結果で示している。こうすることにより、バイナリ小数点のビットシフトで、a(l)とSUM(n+l-2)の乗算と等価な結果が得られるので、演算回路を簡略化できるためである。
【0077】
数2のa(l)とSUM(n+l-2)を乗算し、それらの結果を合計することでSCORE(n)を得る。例えば位相番号n=1に対応するSCORE(1)を得る場合、同じ位相番号を持つSUM(1)に最大の重み係数a(2)=2を乗算し、隣接する位相番号SUM(4)とSUM(1)に対しては、それより小さい重み係数a(1)=1,a(3)=1をそれぞれ乗算する。また、最も遠い位相となるSUM(3)に対して重み係数ゼロを乗算する。
【0078】
このように、SCORE(1)と同じ位相番号を持つSUM(1)に最大の重み係数を乗算する理由は、位相番号n=1の不安定度(シリアルデータの変化点から、オーバーサンプリングクロックのエッジがどれだけ近いか)、即ちSUM(1)を最も高く評価するためである。更にSUM(n)位相番号がn=1から遠ざかるにつれ、乗算する重み係数を小さくしてゆくことで、隣接する位相の不安定度も評価に加味しつつも、その影響力を調整する。同様の処理をSCORE(2)、SCORE(3)、SCORE(4)についても行い、以下のような結果を得る。
N=4(L=3)の時のSCORE(n)の演算結果を下記に示す。ただしn+l-2=0は4、n+l-2=5は1と置き換える。
SCORE(1) = SUM(4)*a(1) + SUM(1)*a(2) + SUM(2)*a(3) = 7
SCORE(2) = SUM(1)*a(1) + SUM(2)*a(2) + SUM(3)*a(3) = 3
SCORE(3) = SUM(2)*a(1) + SUM(3)*a(2) + SUM(4)*a(3) = 1
SCORE(4) = SUM(3)*a(1) + SUM(4)*a(2) + SUM(1)*a(3) = 5
上記結果において例えばSCORE(1)は、サンプリングクロックCLK(1)によるサンプルデータの安定性を評価した値であり、当該サンプリングクロックCLK(1)によるサンプルデータの安定度を示す加算値SUM(1)にはa(2)という大きな重みを乗算し、その両隣のサンプリングクロックCLK(2)とCLK(4)によるサンプルデータの安定度を示す加算値SUM(2)、SUM(4)にはa(1)、a(3)という小さな重みを乗算して、得られた値になる。上記の結果を見ると、最小値となるのはSCORE(3)である。これは、過去5回分のサンプリングの結果、位相番号n=3が最もシリアルデータの変化点から遠いエッジを持つオーバーサンプリングクロックであることを示している。最適な位相選択信号としてn=3を得る。
【0079】
上記最適位相の選択論理を踏まえて、図6のデコーダ103のデコード論理について説明する。図7にはデコーダ103によるクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(N)の生成論理が例示される。今までは理解を容易化するためにN=4として説明したが、ここではN=8とする。初期位相検出が指示されたとき(初期位相検出ON;TRUE)は位相選択信号84に拘らず全てのクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(8)が活性化(HIGH)される。位相追跡が指示されたとき(位相追跡ON;TRUE)、位相選択信号84が選択するサンプル位相に応じてクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(8)の内の5個が活性化(HIGH)される。これは数2の式においてN=8,L=3としてSCORE(n)を演算する場合を想定する。そして、長周期ジッタによる位相変動は最適位相が精々隣のサンプル位相に変動する程度であることを前提とし、このことは技術的に認知されていることでもある。例えば、位相選択信号84がサンプル位相(1)を示しているとき、最適位相が変動するとすれば隣のサンプル位相(8)、(2)であるから、サンプル位相(1)、(8)、(2)に対して夫々SCORE(1),SCORE(8),SCORE(2)を演算するために必要なサンプルデータを得るためにクロックイネーブル信号CE(7)、CE(8)、CE(1)〜CE(3)が活性化される。特に図示はしないが、デコーダ103が図7のようなデコード論理を持つ場合、例えば位相追跡論理101はデコーダ103にデコード結果を受取り、有効な値SUM(n)だけを用いて位相追跡のための演算を行うようになっている。
【0080】
図12には上述のN=8,L=3の場合におけるクロックイネーブル信号の変化タイミングが例示される。スリープ状態から、シリアルデータのバースト開始を検出した後の初期位相ステートでは全てのクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(8)が活性(有効)化され、全てのサンプルデータを用いて初期位相生成のための論理演算が初期位相決定論理100で行われる。この結果、例えばCLK(3)によるサンプル位相3が最適とされている。フレーム先頭を受信したことを検出し、その後の最適位相追跡ステートでは、CLK(3)によるサンプル位相3とその前後のサンプル位相2,4に対してSCORE(3)、SCORE(2)、SCORE(4)を演算するためのサンプルデータを得るために必要なクロックイネーブル信号CE(1)〜CE(5)を活性化し、それによって得られたサンプルデータを用いて位相追跡のための論理演算が位相追跡論理101で行われる。この結果、例えばCLK(4)によるサンプル位相4が最適とされている。最適位相追跡ステートにおいて、次は、CLK(4)によるサンプル位相4とその前後のサンプル位相3,5に対してSCORE(4)、SCORE(3)、SCORE(5)を演算するためのサンプルデータを得るために必要なクロックイネーブル信号CE(2)〜CE(6)を活性化し、それによって得られたサンプルデータを用いて位相追跡のための論理演算が位相追跡論理101で行われる。この結果、例えばCLK(5)によるサンプル位相5が最適とされている。その後、バースト終了を検出すると、バースト待ち受けステート(スリープ状態)に戻り、クロックイネーブル信号CE(1)〜(8)は非活性化(停止)される。
【0081】
この一部のクロックイネーブル信号だけを活性化して得られたサンプルデータだけを用いた位相追跡論理の演算手法を採用することにより、最適位相追跡における演算量が減り、低消費電力に資することができる。前述の複数積分ブロックに1回の割合で位相追跡論理演算を行う手法を併せて採用すれば、更なる低消費電力に寄与することができる。
【0082】
図13には上記実施の形態で説明したシリアル受信回路2を適用したデータ処理システムとしてディジタル形態電話システムが例示される。ここでは、次世代の高速ディジタルワイヤレス通信に対応した移動体通信端末装置110において、それぞれ半導体装置としてのベースバンドIC111とアナログフロントエンドIC112との間の高速シリアル伝送に上述のシリアル受信回路2を適用している。シリアル受信回路(SRLIF_RX)120,121はシリアル受信回路2に相当する。シリアル送信回路122,123はシリアル受信回路120,121に差動シリアル信号線を介して結合され、差動リンクを構成する。差動リンクの伝送速度は例えば1456Mbpsである。ベースバンドIC111はベースバンド部130とアプリケーションプロセッサ部131から成り、ベースバンド部130は前記シリアル受信回路120、シリアル送信回路123、DSP及びMODEMを構成するディジタル信号処理部124から成る。アプリケーションプロセッサ部131はプロセッサコアを有し、ボイスコーデック及びビデオコーデックの機能を実現し、外部のオーディオIC113及びビデオIC114にインタフェースされる。アナログフロントエンドIC112はアナログフロントエンド部140とRF部141を有し、アナログフロントエンド部140はシリアル受信回路121、シリアル送信回路122、シリアル受信回路121からのディジタル信号をアナログ信号に変換するディジタル・アナログ変換回路(DAC)126、アナログ信号をディジタル信号に変換してシリアル送信回路122に出力するアナログ・ディジタル変換回路(ADC)127を有する。RF部141はDAC126の出力を受けて周波数変調を行う周波数変調器142、周波数変調器142の出力を電力増幅してアンテナ144を駆動する電力増幅器143、アンテナ144で受信した信号を増幅する電力増幅器145、電力増幅器145の増幅出力を周波数復調してADC127に与える周波数復調器146から成る。差動リンクに用いる同期クロック信号CK3は発振器148から供給される。このクロック信号CK3は、特に制限されないが、他のクロック信号CK1,CK2から分離されている。移動体通信端末装置110は無線基地局装置115と移動体通信を行う。
【0083】
図14には上記実施の形態で説明したシリアル受信回路2を適用したデータ処理システムとしてマルチRATシステムが例示される。
【0084】
携帯電話は、様々な通信方式が各所から提案されている。GSM(Global System for Mobile Communications)は第2世代の携帯電話システムのディジタル無線通信方式の一つであり、欧州やアジアを中心に多くの国家で利用されているのが強みである。W-CDMA(Wideband-CDMA)は第3世代携帯電話の通信方式の一つで、多重化方式にCDMA(Code Division Multiple Access)を採用しているため電波干渉の耐性に優れており、また、一つの搬送波で同時に多数のユーザーを収納できるのが特徴である。LTE(Long Term Evolution)は2010年から世界各地で商用開始が見込まれている携帯電話の新たな通信方式の一つであり、第3世代携帯電話と同じ周波数帯域を使用することも想定しているため第3.9世代とも呼ばれることもある。下りの多重化方式にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)、上りの多重化方式にSC-FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)を採用している。更にMIMO(Multi Input Multi Output)といったマルチアンテナ技術を応用することにより、非常に高速なパケット通信を実現出来るのが特徴である。
【0085】
近年では、日本の携帯電話端末も複数の通信方式に対応したベースバンドICを搭載し、グローバルローミング対応を謳うのが流行となっている。図14は上記三つの通信方式に対応したマルチRAT(Radio Access Technology)システムの一例として移動体通信端末装置170と無線基地局装置171が示される。図14の移動体通信端末装置170は、それぞれ半導体装置としてのベースバンドIC160とアナログフロントエンドIC150との間の高速シリアル伝送に上述のシリアル受信回路2を適用している。シリアル受信回路(SRLIF_RX)120,121はシリアル受信回路2に相当する。シリアル送信回路122,123はシリアル受信回路120,121に差動シリアル信号線介して結合され、差動リンクを構成する。差動リンクの伝送速度は例えば1456Mbpsである。ベースバンドIC160はベースバンド部161とアプリケーションプロセッサ部131から成り、ベースバンド部161は前記シリアル受信回路120、シリアル送信回路123、MODEMインタフェース165、LTE用のDSP及びMODEMを構成するディジタル信号処理部162、W−CDMA用のDSP及びMODEMを構成するディジタル信号処理部163、GSM用のDSP及びMODEMを構成するディジタル信号処理部164から成る。アプリケーションプロセッサ部131はプロセッサコアを有し、ボイスコーデック及びビデオコーデックの機能を実現し、外部のオーディオIC113及びビデオIC114にインタフェースされる。アナログフロントエンドIC150はアナログフロントエンド部157とLTE用のRF部151、W−CDMA用のRF部152、GSM用のRF部153、送受信アンテナ共用器であるデュプレクサ15,155、及びアンテナスイッチ156を有する。アナログフロントエンド部157はシリアル受信回路121、シリアル送信回路122、ディジタル・アナログ変換回路(DAC)126、及びアナログ・ディジタル変換回路(ADC)127を有する。夫々のRF部151,152,153は周波数変調器、周波数変調器の出力を電力増幅する電力増幅器、受信した高周波信号を増幅する電力増幅器、この電力増幅器の増幅出力を周波数復調する周波数復調器から成る。差動リンクに用いる同期クロック信号CK3は発振器148から供給される。移動体通信端末装置170は無線基地極装置171とLTE、W−CDMA又はGSMのプロトコルに従って移動体通信を行う。
【0086】
図15は上記実施の形態で説明したシリアル受信回路2を移動体通信端末装置のデバイス間インタフェースに応用した例を示すブロック図である。移動体通信端末装置180は、夫々半導体装置として個別化されたビデオIC181、アプリケーションプロセッサ182、ベースバンドIC183、及びアナログフロントエンドIC184を備え、夫々の半導体装置間の高速シリアル伝送に上述のシリアル受信回路2を適用している。シリアル受信回路(SRLIF_RX)191はシリアル受信回路2に相当する。シリアル送信回路190はシリアル受信回路191に差動シリアル信号線を介して結合され、差動リンクを構成する。それぞれの半導体装置は、それぞれ異なるパッケージに封入されていてもよい。また、上記半導体装置のうち、二つもしくは二つ以上を一つのパッケージに封入して構成されていてもよい。何れの場合においても、半導体装置間は、上記シリアル受信回路を介して互いに接続される。差動リンクの伝送速度は例えば1456Mbpsである。差動リンクによるシリアル通信の用いるクロック信号CK3の発振回路148は他のクロック信号CK1,CK2から分離されている。
【0087】
以上説明したシリアル受信回路によれば以下の作用効果を得ることが出切る。
【0088】
(1)多相クロック信号によるオーバーサンプリングを行うことにより、高速にロックアップして入力シリアル信号から理想的な受信信号を得ることが出来る。
【0089】
(2)バーストの受信状態をステートマシンで管理することにより、不要な多相サンプリングクロック信号のイネーブルを停止して、消費動作電流を削減することができる。初期位相検出ステートでは、最適なサンプル位相のクロック信号と近傍位相の必要なクロック信号のイネーブルを有効とし、それ以外の多相サンプリングクロック信号を停止することで、消費動作電流を削減することができる。また、最適位相と近傍のサンプリングクロック信号のイネーブルを有効とすることにより、参照クロックと入力シリアル信号の位相関係のゆるやかな経時変化(長周期ジッタ)に応答して追跡することができる。バーストの終了を検出したら、全てのクロックイネーブル信号を停止することで更なる消費電流の削減が可能となる。
【0090】
(3)バーストの受信状態をステートマシンで管理することにより、最適位相選択論理を切り替えることが可能である。高速な同期が求められる初期位相検出ステートでは短時間で最適位相を導出できる位相選択論理を使用する。受信特性の変化が緩やかな位相追跡ステートではより消費動作電流の少ない方式を使用することで、消費動作電流の削減が可能となる。
【0091】
(4)初期位相決定ステートにおいて、多相サンプリングクロック信号をすべてイネーブルにし、演算量の多い位相選択論理を使用することにより、高速な同期を実現することができる。位相追跡ステートにおいて、多相サンプリングクロック信号のうち、現在選択中位相と隣接する位相のそれをイネーブルにし、その他を停止とすることで消費電流の削減を図る。またこの時、受信したシリアルデータとサンプリングクロックエッジの位相関係の変化を追従できる図7のような位相選択を行うことにより、長周期のジッタに追跡する能力を得る。
【0092】
(5)リーズナブルな消費電流で、バースト受信中も随時、最適な位相を判定し、動的にデータ選択を切り替えることができる。
【0093】
(6)CDR等において、少ない消費動作電流、受信信号に対する高速なロックアップ、及び長時間に亘る位相追跡能力の要求を満たすことができる。
【0094】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0095】
例えば、本発明におけるシリアル受信回路は装置間やデバイス間で用いられる高速シリアル伝送の受信回路の信号処理方式に広く適用することができ、例えばパーソナルコンピュータやワークステーションの拡張バス(Serial-ATA、PCI-Express、USB、IEEE1394)、携帯電話端末のデバイス間インタフェース(DigRF、Unipro)、有線のディジタル伝送インタフェース(OBSAI、CPRI)、その他にも高速な差動信号のシリアル通信を有する製品に適用可能である。
【0096】
オーバーサンプリング方式における上述の最適サンプリング位相の演算処理で説明したN,M,Lの値は上記説明に限定されず種々変更可能である。
【0097】
ワンダー追跡能力の無い位相補間方式、例えば既知パターン比較方式でも、クロック信号の一部発振停止を採用することにより消費電力低減に効果を発揮することができる。クロックワンダーを追跡出来ないが、そのような要求が不要な伝送路仕様であればより消費電力の少ない高効率伝送回路が構築できる
【符号の説明】
【0098】
1…半導体装置
5…プロセッサコア
3…MODEM
4…DSP
2…シリアル受信回路
CK1、CK2…システム用のクロック信号
11…システム用のPLL回路
CK3…シリアルインタフェース用のクロック信号
10…シリアルインタフェース用のPLL回路
50…多相クロック生成部
SRLS…シリアル信号
CLK(1)〜CLK(N)…サンプリングクロック信号
51…クロック遮断部
CE(1)〜CE(N) クロックイネーブル信号
60〜62…論理積ゲート
52…オーバーサンプリング部
70〜72…フリップフロップ
SMPLDAT(1)〜SMPLDAT(N)…サンプルデータ
MUXDAT…選択データ
58…バースト検出部
80…バースト検知通知
81…バースト終了通知
55…フレーム先頭検出部
85…フレーム先頭検出通知
57…ステートマシン
REN…受信インタフェースイネーブル信号
82…初期位相検出通知
56…選択信号生成部
83…位相追跡通知
84…位相選択信号
90…入力レジスタ
91…比較回路
92…シフトレジスタ回路
93…加算回路
94…位相選択演算部
SUM(1)〜SUM(4)…加算値
100…初期位相決定論理
101…位相追跡論理
INIT_PHASE…初期位相決定論理101が導出した最適位相
TRACK_PHASE…位相追跡論理101が導出した最適位相
103…デコーダ
105…タイミング生成部
111…ベースバンドIC
112…アナログフロントエンドIC
120,121…シリアル受信回路(SRLIF_RX)
160…ベースバンドIC
150…アナログフロントエンドIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号に同期してシリアル信号を受信するシリアル受信回路を備えた半導体装置であって、
前記シリアル受信回路は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリング位相に同期して前記シリアル信号をサンプリングし、サンプリングした信号に基づいて前記シリアル信号の位相変動によるサンプリング結果への影響が少ないサンプリング位相を最適位相と判別して当該最適位相によりサンプリングした信号を受信データとする受信動作を行い、前記最適位相の判別動作として、第1モードと、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モードとを有する、半導体装置。
【請求項2】
前記第2モードによる判別動作のサイクルは前記第1モードによる判別動作のサイクルよりも長い、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記シリアル受信回路は、各サンプリングされた信号が一つ前のサンプル位相のサンプリング信号と不一致である回数をサンプリング位相の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合うサンプリング位相に対応する積分値がより小さくされたサンプリング位相を、前記最適位相であると判別する、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記シリアル受信回路は、判別すべき夫々のサンプリング位相に対してスコアを計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記シリアル受信回路は、シリアル信号をフレーム単位で受信し、フレームの前に付随する同期パターンを用いて前記第1モードによる判別を行い、前記フレームの先頭に配置されたフレームデリミタパターンを検出することによって、前記第2モードによる判別を行う、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記シリアル受信回路は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリングクロック信号に同期して前記シリアル信号をサンプリングするオーバーサンプリング部と、
前記オーバーサンプリング部でサンプリングされたサンプリングデータに基づいて、前記シリアル信号の位相変動がサンプリング結果に与える影響の少ない一つのサンプリング位相を最適位相と判別する判別部と、
前記判別部で判別された最適位相のサンプリングクロック信号でサンプリングされた信号を受信データとして選択するする選択部と、
前記同期パターンの検出に応答して前記判別部を前記第1動作モードで動作させ、前記フレームデリミタパターンの検出に応答して、前記判別部を前記第2動作モードで動作させる制御部と、を有する請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記選択部は、各サンプリングデータが一つ前の位相のサンプリングデータと不一致である回数をサンプリングクロック信号の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合う位相のサンプリングクロック信号に対応する積分値がより小さくされたサンプリングクロック信号を、前記最適位相を持つクロック信号であると判別する、請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記選択部は、判別すべき夫々のサンプリングクロック信号に対してスコアを計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する、請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記サンプリングクロック信号の種別数に、前記クロック信号の所定複数サイクル数を乗算した値は、前記同期パターンにおける前記クロック信号のサイクル数より小さい、請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
クロック信号に同期してシリアル信号を受信するシリアル受信回路を備えた半導体装置であって、
前記シリアル受信回路は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリングクロック信号に同期して前記シリアル信号をサンプリングするオーバーサンプリング部と、
前記オーバーサンプリング部でサンプリングされたサンプリングデータに基づいて、前記シリアル信号の位相変動がサンプリング結果に与える影響の少ない一つのサンプリング位相を最適位相と判別する判別部と、
前記判別部で判別された最適位相のサンプリングクロック信号でサンプリングされた信号を受信データとして選択する選択部と、
前記シリアル信号の入力検出に応答して前記判別部を前記第1動作モードで動作させ、前記シリアル信号に含まれる所定パターンの検出に応答して、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モードで動作させる制御部と、を有する半導体装置。
【請求項11】
前記選択部は、各サンプリングデータが一つ前の位相のサンプリングデータと不一致である回数をサンプリングクロック信号の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合う位相のサンプリングクロック信号に対応する積分値がより小さくされたサンプリングクロック信号を、前記最適位相を持つクロック信号であると判別する、請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記選択部は、判別すべき夫々のサンプリングクロック信号に対してスコアを計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する、請求項11記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2モードによる判別動作のサイクルは前記第1モードによる判別動作のサイクルよりも長い、請求項12記載の半導体装置。
【請求項14】
前記シリアル受信回路は、シリアル信号をフレーム単位で受信し、フレームの前に付随する同期パターンの検出に応答して前記判別部を前記第1モードで動作させ、前記フレームの先頭に配置されたフレームデリミタパターンの検出に応答して前記判別部を前記第2モードで動作させ、
前記サンプリングクロック信号の種別数に、前記クロック信号の所定複数サイクル数を乗算した値は、前記同期パターンにおける前記クロック信号のサイクル数より小さい、請求項13記載の半導体装置。
【請求項15】
相互に一方から他方に伝送されたシリアル信号をクロック信号に同期して受信する一対の半導体装置を備え、
前記夫々の半導体装置は、前記クロック信号に対して位相をずらした複数相のサンプリング位相に同期して前記シリアル信号をサンプリングし、サンプリングした信号に基づいて前記シリアル信号の位相変動によるサンプリング結果への影響が少ないサンプリング位相を最適位相と判別して当該最適位相によりサンプリングした信号を受信データとする受信動作を行い、前記最適位相の判別動作として、第1モードと、前記第1モードで判別された最適位相の最適性を前記サンプリング数を減らしたサンプリング結果に基づいて判別する第2モードとを有する、データ処理システム。
【請求項16】
前記選択部は、各サンプリングされた信号が一つ前のサンプル位相のサンプリング信号と不一致である回数をサンプリング位相の種別毎に前記クロック信号の所定複数サイクル単位で積分し、積分値がより小さく、且つ、近くに隣り合うサンプリング位相に対応する積分値がより小さくされたサンプリング位相を、前記最適位相であると判別する、請求項15記載のデータ処理システム。
【請求項17】
前記シリアル受信回路は、判別すべき夫々のサンプリング位相に対してスコアを計算し、判別対象の自分自身の積分値に対して大きな第1の重みをもって評価し、判別対象に近い位相のサンプリングクロック信号ほど順次大きく且つ前記第1の重みよりも小さな重みをもって評価する、請求項16記載のデータ処理システム。
【請求項18】
前記第2モードによる判別動作のサイクルは前記第1モードによる判別動作のサイクルよりも長い、請求項17記載のデータ処理システム。
【請求項19】
一の前記半導体装置はベースバンドプロセッサ部を含み、他の前記半導体装置はアナログフロントエンド部を含む、請求項18記載のデータ処理システム。
【請求項20】
一の前記半導体装置はベースバンドプロセッサ部を含み、他の前記半導体装置はアプリケーションプロセッサ部を含む、請求項18記載のデータ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−288235(P2010−288235A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142631(P2009−142631)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】