説明

半導体装置用ソケット

【課題】隣接するコンタクトの変形の度合いの差を小さくし、それにより隣接するコンタクトが短絡することがない半導体装置用ソケットを提供する。
【解決手段】ソケット本体と、該ソケット本体に対して上下動可能な、半導体装置が載置される載置面を有するフローティングプレートと、水平方向に突出する弾性変形部を有し、半導体装置の外部接点に接触する接触部が上下可能である複数のコンタクトと、半導体装置及びフローティングプレートを押し下げる押圧体とを少なくとも備える半導体装置用ソケットであって、前記フローティングプレートには、上方から半導体装置の外部接点が臨み、下方からコンタクトの接触部が挿入される複数の貫通孔が設けられ、各貫通孔には第1の段部が形成され、前記複数のコンタクト各々には、前記第1の段部の下方に位置する突部が形成され、第1の段部と突部との間の距離を所定の距離とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用ソケットに関し、特に、例えば、くの字形、C字形のような水平方向に突出する弾性変形部を有し、垂直方向に弾性変位可能なコンタクトを備える半導体装置用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、くの字形、C字形のような水平方向に突出する弾性変形部を有し、垂直方向に弾性変位可能なコンタクトを備える半導体装置用ソケットは、特許文献1及び2などに見られるように、従来から良く知られている。このタイプの半導体装置用ソケットは、ソケット本体に対してか移動可能な半導体装置押し込み用のラッチや蓋で半導体装置を下方に向けて押し込み、ソケット本体に取り付けられているコンタクトを変位させることにより、半導体装置の外部接点である半田ボールとコンタクトとの電気的接触力を得るように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−202344号公報
【特許文献2】特開2003−86315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このタイプの半導体装置用ソケットは、通常、半導体装置の外部接点である半田ボールの配列に合わせてコンタクトも配列されている。従って、半導体装置用ソケットに搭載される半導体装置の品種が異なるすなわち半導体装置に外部接点の配列が異なるごとに、コンタクトの配列が異なる半導体装置用ソケットを用意する必要があり、半導体装置用ソケットを保管するスペースを用意することも含めて半導体装置用ソケットの製造及び保管にかかるコストを増大させる。また、特に半導体装置のスクリーニングとしてのバーンインテストなどに使用される半導体装置用ソケットにおいては、半導体装置に品種が異なるごとに、半導体装置用ソケットを交換する必要があり、テストにかかる時間を増大させる。
【0005】
そこで、このような問題点を少しでも解消する手段として、少なくとも同じピッチまたは整数倍のピッチで配列される外部接点を有し、該外部接点の数が異なる半導体装置に対して、同じ半導体装置用ソケットを使用することが考えられる。この場合、コンタクトが変位するものと変位しないものとが生じることにより、隣接するコンタクト間で短絡する恐れがある。
【0006】
図8を用いてこの短絡現象について簡単に説明する。図8は、従来の半導体装置用ソケットに半導体装置が装着されたときの要部拡大図である。
【0007】
半導体装置500は、半導体装置用ソケットに上下動自在に設けられているフローティングプレート530の上面に載置されると、半導体装置500の外部接点である半田ボール501が、該フローティングプレート530に対応して形成されている貫通孔531に入り込む。その後、図に示されるように、半導体装置500は、半導体装置用ソケットに設けられているラッチや蓋により、フローティングプレート530とともに垂直方向下方に押し下げられる。その結果、半導体装置500の半田ボール501は、半導体装置用ソケットのコンタクト550の接触部551に接触し、コンタクトを垂直方向下方に変位させることで所定の接触圧を持って電気的に接触する。
【0008】
ここで、図に示されるように、真ん中のコンタクト550’に対応する半田ボールが存在しない半導体装置500を想定する。この場合、半田ボール501が存在しないため、これに対応するコンタクト550’の接触部551’は、半導体装置500の本体に当接することで、くの字形の弾性変形部552’は、ほとんど変形しない。これに対して、半田ボール501が存在する左右のコンタクト550においては、その接触部551が半田ボール501に接触し、コンタクト550’の接触部551’に比べて半田ボール501の分下方に大きく変位するため、それにより、弾性変形部552は、屈曲し、変形する。その結果、図に示す例においては、真ん中のコンタクト550’と右側のコンタクト550のそれぞれの弾性変形部552’及び552の変形の度合いの差が大きいことにより、両者は、短絡する。もちろん、コンタクト550の弾性変形部552の変形の度合いの差、言い換えれば、コンタクト550の接触部551の変位の差を小さくすれば、このような短絡減少の発生する確率は小さくなるが、その場合、半導体装置500の半田ボール501とコンタクト550の接触部551との必要とされる接触圧が得られず、安定した電気的接続が得られない恐れが生じる。なお、この短絡現象は、近年の半導体装置に求められる半導体装置の外部接点のピッチが小さくなるほど発生する確率が高い。
【0009】
本発明の目的は、上述する問題点に鑑み、隣接するコンタクトの変形の度合いの差を小さくし、それにより隣接するコンタクトが短絡することがない半導体装置用ソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明の半導体装置用ソケットは、ソケット本体と、該ソケット本体に対して上下動可能な、半導体装置が載置される載置面を有するフローティングプレートと、水平方向に突出する弾性変形部を有し、半導体装置の外部接点に接触する接触部が上下可能である複数のコンタクトと、半導体装置及びフローティングプレートを押し下げる押圧体と、を少なくとも備える半導体装置用ソケットであって、前記フローティングプレートには、上方から半導体装置の外部接点が臨み、下方からコンタクトの接触部が挿入される複数の貫通孔が設けられ、各貫通孔には第1の段部が形成され、前記複数のコンタクト各々には、前記第1の段部の下方に位置する突部が形成され、前記段部と突部との間の距離は、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の外部接点と前記コンタクトの接触部との間の距離より大きく、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の底面と前記コンタクトの接触部との間の距離より小さくなるように設定されることを特徴とする。
【0011】
さらに、本願発明の半導体装置用ソケットは、前記フローティングプレートには、上方から半導体装置の外部接点が臨み、下方からコンタクトの接触部が挿入される複数の貫通孔が設けられ、各貫通孔には突部が形成され、前記複数のコンタクト各々には、前記突部の下方に位置する第1の段部が形成され、前記突部と段部との間の距離は、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の外部接点と前記コンタクトの接触部との間の距離より大きく、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の底面と前記コンタクトの接触部との間の距離より小さくなるように設定されてもよい。
【0012】
また、この場合における半導体装置用ソケットにおいても、前記複数のコンタクト各々には、前記貫通孔の突部の上方に位置する第2の段部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本願発明は、特に、フローティングプレートに形成される貫通孔に第1の段部が設けられ、該貫通孔にその接触部が下から挿入されるコンタクトに、貫通孔の第1の段部の下方に位置する突部が形成されるとともに、第1の段部と突部との間の距離を所定の距離とすることで、半導体装置の外部接点の有無により隣り合うコンタクトの変形が異なり、その変形の差によるコンタクト間の短絡を防止することができる。延いては、本願発明における半導体装置用ソケットは、少なくとも同じピッチか整数倍のピッチを有し、外部接点の数が異なる半導体装置に共用することを可能とし、全ての半導体装置に対応して半導体装置用ソケットを用意する必要がなくなる。あるいは、フローティングプレートに形成される貫通孔に突部が設けられ、該貫通孔にその接触部が下から挿入されるコンタクトに、貫通孔の突部の下方に位置する第1の段部が形成されるとともに、第1の段部と突部との間の距離を所定の距離とすることでも同様の作用効果が得られる。
【0014】
さらに、本願発明は、第1の段部に対して突部を挟んで第2の段部を設けることで、外部接点の設計誤差により各コンタクト間の変形を小さくすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1ないし7を用いて、本願発明の実施態様について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本願発明が適用される半導体装置用ソケットの概略断面図であり、操作部材が押し下げられた状態を示している。図2は、半導体装置用ソケットに半導体装置が装着されていない状態の本願発明の1つの実施例の要部拡大断面図である。図3は、本願発明に係るコンタクトの変形の度合いの差を小さくするための機構を説明するための図であり、(a)は、半導体装置がフローティングプレートの上に載置されてはいるが、まだ下方に押し込まれていないコンタクトがフリーの状態を示す要部拡大断面図であり、(b)は、半導体装置が下方に押し込まれ、コンタクトと所定の接触圧で電気的に接触している状態を示す(a)と同様の要部拡大断面図である。図4は、図3(b)に示される状態におけるコンタクトの変形を示す要部拡大断面図である。図5は、本発明に使用し得るフローティングプレートの製造を説明するための概略斜視図である。図6は、本発明に使用し得る別のフローティングプレートの概略斜視図である。図7は、本発明の別の実施例の要部拡大断面図である。
【0017】
(実施例1)
最初に、本発明が適用される半導体装置用ソケット1の構造について説明する。
【0018】
図1に示されるように、半導体装置用ソケット1は、本実施例では、オープントップ型ソケットであり、概略、ソケット本体10、操作部材20、フローティングプレート30、位置決め部材40、複数のコンタクト50及び一対のラッチ60を備えている。半導体装置用ソケット1は、複数のコンタクト50を除いて、実質的に電気的に絶縁性の材料で作られる。
【0019】
ソケット本体10は、概略断面矩形状であり、底壁11に形成される貫通孔12を介してコンタクト50を支持するとともに、それぞればね部材(不図示)を介して、操作部材20及びフローティングプレート30をソケット本体10に対して上下動自在に支持している。
【0020】
操作部材20は、ソケット本体10の断面形状と同じ断面矩形状をなしており、上述したように、圧縮コイルバネのようなばね部材(不図示)を介してソケット本体10に対して上方に付勢されるとともに、上下動自在に該ソケット本体10に支持されている。操作部材20は、ソケット本体10に対して押し下げられることにより、一対のラッチ60を開き、フローティングプレート30上から後退させる。操作部材20から押し下げ力が解除されると、操作部材20は、介在するばね部材(不図示)により上昇し、元の位置に戻る。それにより、一対のラッチ60は、閉じ、フローティングプレート30上に前進する。
【0021】
フローティングプレート30は、その上面に半導体装置100が載置される載置面38を有し、載置される半導体装置100の外部接点である半田ボール101に対応してフローティングプレート30を上下方向に貫通する複数の貫通孔32が形成されている。本願発明の特徴点である貫通孔32は、図5、図6に示されるように、コンタクト50の断面に相似形の断面矩形状であり、また、図2に示されるように、貫通孔32は、上方孔部32a、該上方孔部32aより幅が大きい下方孔部32cを備え、上方孔部32aと下方孔部32cとの間には第1の段部32bが形成されている。そして上方孔部32aには、上方から半導体装置100の半田ボール101が臨み、下方からコンタクト50の接触部51が下方孔部32cを介して挿入されている。
【0022】
なお、貫通孔32は、本実施例においては、断面矩形状であるとして説明したが、これに限られるものではなく断面円形であってもよい。この場合であっても、下方孔部32cは、本実施例と同様に矩形断面であることが好ましい。すなわち、このように構成することにより、コンタクト50の上下動をぶれることなく案内することができるからである。
【0023】
フローティングプレート30は、また、上述したように、ソケット本体10に対してばね部材(不図示)を介して上方に付勢されるとともに、上下動自在に支持されており、載置面38に半導体装置100が載置され、一対のラッチ60が閉じたとき、該一対のラッチ60に押されて半導体装置100とともに下降し得る。
【0024】
フローティングプレート30の製造方法は、図5に示されるように、側面に貫通孔32が開放した形の複数の溝32’が形成された板状体31a、31b、31c、31d・・・を重ね合わせ、連結部材33などで一体化するようにしてもよいし、図6に示されるように、金型成形により貫通孔32を備えた形で一体的に製造されてもよい。さらに、図5、図6に示されるように、マトリックス状に配列された複数の貫通孔32を有するブロックを、別途作成されるフローティング部材と組み合わせて、フローティングプレート30としてもよい。
【0025】
位置決め部材40は、フローティングプレート30の載置面38上に、通常、載置される半導体装置100の四隅に対応して配置され、半導体装置100を載置面38に案内し、載置面38上における半導体装置100の位置決めする。したがって、位置決め部材40は、半導体装置100を案内すべく、内側に傾斜面41及び垂直面42を有することが好ましい。
【0026】
コンタクト50は、導電性材料からなる薄板を打抜き加工などにより形成される。図2、図3(a)及び図4に示されるように、コンタクト50は、半導体装置100の外部接点である半田ボール101に接触する接触部51、接触部51の上下方向の変位を許容する水平方向に突出する略C字状の弾性変形部52及び電気機器やテストボード(不図示)の外部接点に接続される端子部53を備えている点では従来例の構成と同じである。本願発明において、コネクタ50は、図2、図3(a)及び図4に示されるように、接触部51の弾性変形部52寄りに、該接触部51の左右方向に突出する一対の突部54が形成されている。該突部54は、組み立てられたとき、図3(a)に示されるように、フローティングプレート30の貫通孔32に形成される第1の段部32bより距離Dだけ下方に位置するように設けられる。該突部54は、載置される半導体装置100の対応する半田ボール101が存在しないとき、フローティングプレート30の下降に伴い、フローティングプレート30の貫通孔32に形成されている第1の段部32bに当接し、該突部54が形成されているコンタクト50を強制的に下方に変位させる。
【0027】
一対のラッチ60は、本実施例においては、図1において紙面に垂直方向に設けられており、ソケット本体10に対して回動自在に、それにより各ラッチ60の半導体押圧部61がフローティングプレート30の載置部38に対して前進後退自在(図1において、紙面に対して垂直方向に移動自在)に、すなわち、開閉自在に支持されている(詳細な構成は、特開2004−55407号公報または上記特許文献2など参照)。
【0028】
一対のラッチ60は、半導体装置用ソケット1が半導体装置を搭載せず、且つ操作部材20が操作されていないフリーの状態のとき、フローティングプレート30の載置面38上に前進し、閉じた状態にあるように構成される。この時、一対のラッチ60自身も、閉じる方向にばね部材により付勢されていることが好ましい。一対のラッチ60が閉じているとき、各ラッチ60の半導体押圧部61とフローティングプレート30の載置面38との間は、所定の間隔を持って離れているように構成される。該間隔x(不図示)は、コンタクト50との接触圧を決定するものである。一対のラッチ60は、図1に示されるように、操作部材20が押し下げられることにより、開かれ、載置面38から後退し得る。この時、半導体装置100がフローティングプレート30の載置面38上に載置することが可能となる。
【0029】
半導体装置100が載置面38上に載置され、操作部材20の押し下げ力を解除すると、一対のラッチ60は、閉じつつ、載置面38上に前進する。それにより、一対のラッチ60の半導体押圧部61は、フローティングプレート30上に載置された半導体装置100をフローティングプレート30と一緒に押し下げ、通常、半導体装置100の半田ボール101を、対応するコンタクト50の接触部51に接触させる。
【0030】
これらの説明から理解されるように、本実施例における一対のラッチ60は、フローティングプレート30の載置面38に載置された半導体装置100をフローティングプレート30とともに押し下げる押圧体として機能する。言い換えると、半導体装置100及びフローティングプレート30を同時に押し下げることができるのであれば、押圧体は、本実施例の一対のラッチ60に限られることはなく、例えば2対のラッチであってもよいし、手動により上方から押し下げる押圧体であってもよいし、あるいはクラムシェルタイプのソケットにおける蓋体に取り付けられた押圧体であってもよい。
【0031】
次に、以上のような構成を備える半導体装置用ソケット1において、半導体装置100を装着するときの動作を、図3及び図4を参照して詳細に説明する。なお、図3及び4において示されるように、本実施例においては、真ん中のコンタクト50’に対応する半導体装置100の外部接点である半田ボール101が存在しないものとして説明する。
【0032】
半導体装置用ソケット1の操作部材20を押し下げ、一対のラッチ60をフローティングプレート30の載置面38から後退させた状態において、半導体装置100を上方からフローティングプレート30の載置面38上に載置する。
【0033】
半導体装置100は、位置決め部材40に案内され、その外部接点である半田ボール101は、図3(a)に示されるように、対応する貫通孔32に嵌まり込む。この時点では、図にも示されるように、半田ボール101とコンタクト50の接触部51は、隙間Aを有して離れた状態にある。該隙間Aは、半導体装置100を半導体装置用ソケット1から取り外すとき、半田ボール101とコンタクト50とが完全に離脱して後、半導体装置100を容易に取り外すことを可能とすべく設けられているもので、予め設定されている。従って、半田ボール101の半導体装置100の底面102からの突出量をBとすると、真ん中のコンタクト50’の接点部51’は、半導体装置100の底面102から(A+B)だけ離れている。なお、隙間Aは、あることが好ましいが、なくてもよい。
【0034】
この状態から、操作部材20に加えられている押し下げ力を解除すると、操作部材20は、ソケット本体10との間に介在するばね部材により元の位置に上昇する。それにより、一対のラッチ60が閉じ、同様に元の位置に戻る。
【0035】
半田ボール101とコンタクト50の接触部51が所定の電気的接触圧で接触し得るために、半田ボール101に対応するコンタクト50の接触部51が距離hだけ押し下げられる必要があるとすると、半導体装置100は、図3(b)に示されるように、距離(A+h)だけ押し下げられる必要がある。この押し下げ量(A+h)は、(半導体装置100の厚さ−間隔x)であることは当然に理解される。
【0036】
ここで、本願発明は、従来コンタクト50’が半導体装置100の底面102に当接して変位する場合、隣接するコンタクト50(本実施例では、右隣のコンタクト50)に接触し短絡する恐れがある(図8参照)ことを考慮して、それらの変位の差を小さくすることで、結果として、図4に示されるように、弾性変形部52’と52間で短絡しないようにすることを目的としている。本願発明は、コンタクト50とコンタクト50’の変位の差を小さくすべく、コンタクト50’の変位量を大きくし、コンタクト50の変位に近づけることでこれを達成しようとするものである。そのためには、コンタクト50’の変位に関し、図3(b)において、少なくともコンタクト50’を半導体装置100の底面102に当接させることなく変位させることが必須の要件であることが理解される。言い換えれば、図3(b)に示される場合において、コンタクト50’と半田ボール101との間隔をCとすると、少なくともC>0としようとするものである。そうであるとすると、C=A+B−Dであるから、少なくとも、D<A+Bであるように距離Dを設定すればよいことが理解される。
【0037】
ところで、上述のように、半導体装置100がA+hだけ押し下げられるとき、半田ボール101が存在しない真ん中のコンタクト50’は、該コンタクト50’の突起54’が貫通孔32の第1の段部32bに当接することで、A+h−Dだけ変位することが理解される。真ん中のコンタクト50’と右隣のコンタクト50との変位量の差は、h−(A+h−D)=D−Aであることから、変位量を少なくするためには、D=Aであること、すなわちC=Bであることが望ましいことになる。しかしながら、接触圧を勘案するとこの距離Dは、少なくともD>Aであるように設定される。
【0038】
以上のことから、第1の段部32bと突部54との間の距離Dは、本実施例の場合、A+B>D>Aの範囲内にあるように設定されることが好ましいことが理解される。このように、本願発明においては、半導体装置100は、その外部接点が異なっていても、従来例のように隣り合うコンタクト50が短絡することなく、同じ半導体装置用ソケット1に装着されることが可能となる。
【0039】
なお、装着された半導体装置100を半導体装置用ソケット1から取り外すには、操作部材20を押し込み、一対のラッチ60をフローティングプレート30の載置面38から後退させ、手動あるいは真空吸着などの機械的駆動により半導体装置100を載置面38から取り除けばよい。
【0040】
(実施例2)
次に、図7に本願発明の別の実施例を示す。本実施例は、上記実施例1と比べて、突部と段部の設ける部材が逆になっている点でのみ相違し、その他の構成は全く同じである。すなわち、本実施例においては、フローティングプレート30の貫通孔32内の所定の位置に左右一対の突部34を設け、コンタクト50の接触部51の弾性変形部52寄りに、一対の突部34に対応して左右一対の凹部55が形成される。各凹部55は、突起34に当接する上方に位置する第2の段部57及び下方に位置する第1の段部を56有する。該凹部55の第1の段部56と対応する突部34との距離をDとするとき、DをA+B>D>Aの範囲内にあるように設定すれば、上記実施例と同様に、半導体装置100の外部接点が異なっていても、隣り合うコンタクト50が短絡することなく、同じ半導体装置用ソケット1に装着されることが可能となる。
【0041】
以上本願発明は、オープントップ型ソケットについて説明されてきたが、クラムシェル型ソケットにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願発明が適用される半導体装置用ソケットの概略断面図であり、操作部材が押し下げられた状態を示している。
【図2】半導体装置用ソケットに半導体装置が装着されていない状態の本願発明の1つの実施例の要部拡大断面図である。
【図3】本願発明に係るコンタクトの変形の度合いの差を小さくするための機構を説明するための図であり、(a)は、半導体装置がフローティングプレートの上に載置されてはいるが、まだ下方に押し込まれていないコンタクトがフリーの状態を示す要部拡大断面図であり、(b)は、半導体装置が下方に押し込まれ、コンタクトと所定の接触圧で電気的に接触している状態を示す(a)と同様の要部拡大断面図である。
【図4】図3(b)に示される状態におけるコンタクトの変形を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明に使用し得るフローティングプレートの製造を説明するための概略斜視図である。
【図6】本発明に使用し得る別のフローティングプレートの概略斜視図である。
【図7】本発明の別の実施例の要部拡大断面図である。
【図8】従来の半導体装置用ソケットに半導体装置が装着されたときの要部拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体装置用ソケット
10 ソケット本体
20 操作部材
30 フローティングプレート
32 貫通孔
32b 第1の段部
34 突部
40 位置決め装置
50 コンタクト
54 突部
56 第1の段部
57 第2の段部
60 ラッチ(押圧体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット本体と、該ソケット本体に対して上下動可能な、半導体装置が載置される載置面を有するフローティングプレートと、水平方向に突出する弾性変形部を有し、半導体装置の外部接点に接触する接触部が上下可能である複数のコンタクトと、半導体装置及びフローティングプレートを押し下げる押圧体と、を少なくとも備える半導体装置用ソケットにおいて、
前記フローティングプレートには、上方から半導体装置の外部接点が臨み、下方からコンタクトの接触部が挿入される複数の貫通孔が設けられ、各貫通孔には第1の段部が形成され、
前記複数のコンタクト各々には、前記第1の段部の下方に位置する突部が形成され、
前記段部と突部との間の距離は、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の外部接点と前記コンタクトの接触部との間の距離より大きく、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の底面と前記コンタクトの接触部との間の距離より小さくなるように設定されることを特徴とする半導体装置用ソケット。
【請求項2】
ソケット本体と、該ソケット本体に対して上下動可能な、半導体装置が載置される載置面を有するフローティングプレートと、水平方向に突出する弾性変形部を有し、半導体装置の外部接点に接触する接触部が上下可能である複数のコンタクトと、半導体装置及びフローティングプレートを押し下げる押圧体と、を少なくとも備える半導体装置用ソケットにおいて、
前記フローティングプレートには、上方から半導体装置の外部接点が臨み、下方からコンタクトの接触部が挿入される複数の貫通孔が設けられ、各貫通孔には突部が形成され、
前記複数のコンタクト各々には、前記突部の下方に位置する第1の段部が形成され、
前記突部と段部との間の距離は、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の外部接点と前記コンタクトの接触部との間の距離より大きく、前記フローティングプレートの載置面に載置された状態における前記半導体装置の底面と前記コンタクトの接触部との間の距離より小さくなるように設定されることを特徴とする半導体装置用ソケット。
【請求項3】
前記複数のコンタクト各々には、前記貫通孔の突部の上方に位置する第2の段部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−265771(P2007−265771A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88542(P2006−88542)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】