説明

半導体装置

【課題】樹脂で封止された半導体装置の樹脂未充填領域を減らした半導体装置を提供するる。
【解決手段】バンプ4aを有する半導体チップ4を電気的に接続するパッド2a及び外部接続用ランド2bを有する配線パターン2のパッド2a上に半導体チップ4を封止するための樹脂5に含まれる無機フィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分のメッキ層2cを設け、バンプ4aを有する半導体チップを電気的に接続して実装し、半導体チップ4の全周面及び配線パターンの半導体チップ側を樹脂5で封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを実装する回路部材、該回路部材に半導体チップを実装した半導体装置及び該半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で薄型の半導体装置の製造方法として、ステンレス鋼板等の導電性基板にメッキにより外部接続用ランド、半導体チップを電気的に接続する半導体チップ接続用パッドを備えた配線パターンを形成した回路部材の前記半導体チップ接続用パッドと半導体チップのバンプ(例えば、半導体チップの電極部分にスタッドワイヤボンディングで形成された金バンプ)とを電気的に接続し、前記半導体チップを樹脂封止した後、前記導電性基板を剥離して前記樹脂面に前記配線パターンを転写してなる半導体装置の製造方法が知られている。(前記記載事項において、転写により配線パターンを形成した回路部材に係る先行技術について特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)
【0003】
【特許文献1】特開平9−266267号公報
【特許文献2】特開平10−50885号公報
【特許文献3】特開平10−116935号公報
【0004】
以下、前記回路部材に半導体チップを実装する半導体装置の製造方法の一例を図3及び図4を参照しながら説明する。
図3に示す例では半導体チップ4を2個示しているが、実際は半導体チップ4が前記回路部材3上にマトリクス状に配列されて半導体装置が製造される。
ここで、図3は要部断面図を、図4は図3の符号Bで示す部分の拡大斜視図をそれぞれ示している。
【0005】
図3及び図4に示ように、ステンレス鋼板などの導電性基板1の配線パターン形成面1aにメッキにより配線パターン2を形成して回路部材3を作製する。
前記導電性基板1に配線パターン2を形成する方法として、前記導電性基板1の配線パターン形成面1aにレジストをコートし、該レジストに前記配線パターンのマスクで覆い、露光・現像を行う。残されたレジストをマスクとして前記導電性基板1の配線パターン形成面1aにニッケル・クロームをメッキし、さらに必要に応じて金メッキを施す。前記メッキ処理の後、前記レジストを除去して前記導電性基板1の配線パターン形成面1aに目的の配線パターン2を形成する。
【0006】
配線パターンの一例として図4に示すように、配線パターン2は半導体チップ4が電気的に接続される半導体チップ接続用パッド2aと該パッド2aに連なり裏側(導電性基板側)が外部回路(プリント配線板など)との接続面となる外部接続用ランド2bから形成されている。
このように形成された前記配線パターン2の前記パッド2aと半導体チップ4のバンプ4aとを超音波フリップチップボンディング法で電気的に接続し、半導体チップ4を前記回路部材3に実装する。
【0007】
しかる後、前記回路部材3を上金型と下金型(図示せず)に挟んでトランスファーモールド法等で前記配線パターン2及び半導体チップ4を含めて片側全面を一括して樹脂5で封止し(図3)、前記半導体チップ4、前記配線パターン2、樹脂5及び回路部材3が一体の樹脂成形品を作製する。
【0008】
ここで、前記樹脂5で封止される個所は、前記導電性基板1の前記配線パターン2側において、前記半導体チップ4の周面全体、前記配線パターン2、導電性基板1の配線パターン形成面1aと前記半導体チップ4との間、前記配線パターン2と前記半導体チップ4との間に樹脂5が充填されるが、本発明の課題である樹脂封止した際の問題点について後述する。
【0009】
次に、前記回路部材3の配線パターン2を前記樹脂5で封止した成型品から前記導電性基板1を剥離すると、前記導電性基板1に形成された前記配線パターン2が前記樹脂5の底面と同一面となるように前記樹脂5に転写される。この後、前記半導体チップ4間の前記樹脂5を格子状に切断部6で切断することで各半導体装置が作製される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
超音波フリップチップボンディング法により半導体チップ4のバンプ4aと前記半導体チップ接続ランド2aとを電気的に接続する際、前記バンプ4aの潰れが避けられず、その結果、前記半導体チップ4と前記配線パターン2との間隔は前記バンプ4aの厚さ20μm程度と非常に狭い状態になる。
【0011】
前記導電性基板1に前記配線パターン2を形成する際、前述のように配線パターン2をメッキ工法で形成するのが一般的である。このとき、配線パターン2をメッキで形成した場合、一例として配線パターン2はその厚さが最大で通常30μm、バンプ4aの厚さを20μmとして樹脂5で封止した結果、図4に示すように、面積が比較的広い前記外部接続用ランド2bと半導体チップ4との間において、樹脂未充填領域7(鎖線で囲まれた樹脂が達しない領域)が残る配線パターンが多数発生した。なお、図4では樹脂5は図示していない。
この樹脂未充填領域7の発生により配線パターン2上に空気だまりが多数発生した。その結果、樹脂5への配線パターンの前記転写不良が生じることになる。また、転写不良に到らなくても前記樹脂5と前記配線パターン2との接合面積が小さくなって接合強度の弱い部分が生じることになる。
前記樹脂未充填領域7が発生する要因の一つとして前記樹脂5に結合剤として含まれる無機フィラー(例えば、ガラスの微粒子)の最大粒径が影響することを知見した。
【0012】
封止に使用される樹脂の一例としてその特性が、スパイラルフロー(cm)170、ゲル化時間(秒)45、溶融粘度(Pa・s)6、無機フィラーの最大粒径(μm)24(開口24μmのメッシュでふるい落とした無機フィラー)を使用し、トランスファーモールドの成形条件として充填速度2.5mm/s、充填圧力8.5MPa、型締め力392KN、金型温度180℃で封止を行った。
【0013】
前記配線パターン2全体のメッキ厚が30μm、前記半導体チップ4のバンプ4aの厚さが20μmの場合は、前記配線パターン2と前記半導体チップ4との間に前記特性を有する樹脂が充填されている状態を観察した結果、樹脂が配線パターンと半導体チップ間全体に充填されているものは略17%であった。
また、配線パターン2全体のメッキ厚を60μmとその厚さを大きくしてみたが、この場合、樹脂が全体に充填されているものが約47%得られたが、製造歩留が良好なものということはできない。
前記樹脂未充填領域7が実際に発生する要因として種々検討した結果、配線パターンと半導体チップ間に充填される樹脂の充填状態は、前記樹脂に含まれる無機フィラーの最大粒径が影響していることが分かった。
【0014】
本発明は、前記樹脂未充填領域を減らし、半導体装置の製造歩留を向上することができる回路部材、該回路部材を利用した半導体装置び半導体装置の製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の半導体装置用回路部材は、導電性基板と、該導電性基板上に、バンプを有する半導体チップを電気的に接続するパッド及び外部接続用ランドを有する配線パターンをメッキにて形成してなる前記配線パターンの前記パッドを前記半導体チップを封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成してなる。
【0016】
本発明の半導体装置は、バンプを有する半導体チップを電気的に接続するパッド及び外部接続用ランドを有する配線パターンの前記パッドを前記半導体チップを封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成してなる半導体装置用の回路部材の前記パッドに、前記バンプを有する半導体チップを電気的に接続して実装し、前記半導体チップの全周面及び配線パターンの半導体チップ側を樹脂で封止してなる。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、導電性基板と、該導電性基板上に、バンプを有する半導体チップを電気的に接続するパッド及び外部接続用ランドを有する配線パターンをメッキにて形成してなる半導体装置用の回路部材を用い、
前記配線パターンの前記パッドを前記半導体チップを封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成してなる回路部材に半導体チップを実装し、前記半導体チップの全周面及び及び前記配線パターンの前記半導体側を樹脂封止し、前記樹脂から前記導電性基板を剥離する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前記配線パターンの前記パッドを前記半導体チップを封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成することで、配線パターンと半導体チップの間に充填される樹脂の未充填領域を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図1及び図2を参照しながら説明する。なお、従来例(図3、図4)と同一の構成要素には同一の符号を付している。
図1に示す例では半導体チップ4を2個示しているが、実際は半導体チップ4が後述する回路部材上にマトリクス状に配列されて半導体装置が製造される。ここで図1は要部断面図を、図2は図1の符号Aで示す部分の拡大斜視図を示している。
【0020】
図1及び図2に示ように、ステンレス鋼板などの導電性基板1の配線パターン形成面1aにメッキにより配線パターン2を形成して回路部材3aを作製する。
前記導電性基板1に配線パターン2を形成方法として、ステンレス鋼板等の導電性基板の配線パターン形成面1aにレジストをコートし、該レジストに配線パターンのマスクで覆い、露光・現像を行う。残されたレジストをマスクとして導電性基板の配線パターン形成面1aにニッケル・クロームをメッキし、さらに必要に応じて金メッキを施す。前記メッキ処理の後、前記レジストを除去して前記導電性基板1の配線パターン形成面1aに目的の配線パターン2を形成する。
【0021】
配線パターンの一例として図2に示すように、配線パターン2aは半導体チップ4が電気的に接続される半導体チップ接続用パッド2aと該パッド2aに連なり裏側(導電性基板側)が外部回路(プリント配線板など)との接続面となる外部接続用ランド2bから形成されている。
次に、前記半導体チップ接続用パッド2aの上面に2段目のメッキ層2cを形成し、該メッキ層2cを樹脂封止するための樹脂に含まれる無機フィラーの最大粒径よりも大きな厚さにメッキする。このようにパッド部分を2段メッキすることで配線パターン2に厚さが(2a+2c)のパッド2dを形成する。
このように形成された前記配線パターン2の前記パッド2dのメッキ層2cと前記半導体チップ4のバンプ4aとを超音波フリップチップボンディング法で電気的に接続し、半導体チップ4を前記回路部材3aに実装する。
【0022】
しかる後、前記回路部材3aを上金型と下金型(図示せず)に挟んでトランスファーモールド法等で前記配線パターン2及び半導体チップ4を含めて片側全面を一括して樹脂5で封止し(図1)、前記半導体チップ4、前記配線パターン2、樹脂5及び回路部材3aが一体の樹脂成形品を作製する。
【0023】
ここで、前記樹脂5で封止される個所は、前記導電性基板1の前記配線パターン2側において、前記半導体チップ4の周面全体、前記配線パターン2、導電性基板1の配線パターン形成面1aと前記半導体チップ4との間、前記配線パターン2と前記半導体チップ4との間に樹脂5が充填される。
【0024】
次に、前記回路部材3aの配線パターン2を樹脂5で封止した成型品から前記導電性基板1を剥離すると、前記導電性基板1に形成された配線パターン2が樹脂5の底面と同一面となるように樹脂5に転写される。この後、前記半導体チップ4間の樹脂を格子状に切断部6で切断することで各半導体装置が作製される。
【0025】
本発明は、前記配線パターン2の前記パッド2dの前記メッキ層2c厚さを前記半導体チップ4を封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成することで、配線パターン2と半導体チップ4の間に充填される樹脂の未充填領域を大幅に低減することができた。
【実施例】
【0026】
前記配線パターン2のメッキ厚さ(1段目メッキ厚さ)が30μm、前記半導体チップ接続用パッド2aの上面に施した2段目メッキ層2cの厚さ30μmとして新たなパッド2dの厚さを60μmに形成する。
このように形成された前記配線パターン2の前記パッド2dと半導体チップ4のバンプ4aとを超音波フリップチップボンディング法で電気的に接続し、半導体チップ4を前記回路部材3aに実装する。
【0027】
そして、封止に使用される樹脂の一例としてその特性が、スパイラルフロー(cm)170、ゲル化時間(秒)45、溶融粘度(Pa・s)6、無機フィラーの最大粒径(μm)24(開口24μmのメッシュでふるい落とした無機フィラー)を使用し、トランスファーモールドの成形条件として充填速度2.5mm/s、充填圧力8.5MPa、型締め力392KN、金型温度180℃で封止を行った。
【0028】
すると、前記配線パターン2と前記半導体チップ4との間に前記特性を有する樹脂が充填されている状態を観察した結果、樹脂5が前記配線パターン2と前記半導体チップ4との間全体に前記樹脂が充填されているものが80%以上となり、半導体装置の製造歩留をかなり高めることができた。
これは、前記パッド2dの厚さを60μmとしたことで前記配線パターン2と前記半導体チップ4との間隔が略50μm(メッキ層2cとバンプ4aの厚さ)となるが、これは前記樹脂5に含まれる無機フィラーの最大粒径24μmよりも十分に大きくしたことによるものである。
前記実施例では、前記配線パターンの前記パッド2dの厚さの調整を2段メッキで行ったが、前記樹脂に含まれる無機フィラーの最大粒径に応じてメッキの回数を増加して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の半導体装置を製造する際の工程を説明する断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の配線パターンの要部斜視図である。
【図3】従来の半導体装置を製造する際の工程を説明する断面図である。
【図4】従来の半導体装置の配線パターンの要部斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1・・導電性基板 2・・配線パターン 4・・半導体チップ 5・・樹脂
2d・・配線パターンのパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板と、該導電性基板上に、バンプを有する半導体チップを電気的に接続するパッド及び外部接続用ランドを有する配線パターンをメッキにて形成してなる樹脂封止半導体装置用の回路部材であって、
前記配線パターンの前記パッドを前記半導体チップを封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成してなる樹脂封止半導体装置用の回路部材。
【請求項2】
バンプを有する半導体チップを電気的に接続するパッド及び外部接続用ランドを有する配線パターンの前記パッドを前記半導体チップを封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成してなる半導体装置用の回路部材の前記パッドに、前記バンプを有する半導体チップを電気的に接続して実装し、前記半導体チップの全周面及び配線パターンの半導体チップ側を樹脂で封止してなる半導体装置。
【請求項3】
導電性基板と、該導電性基板上に、バンプを有する半導体チップを電気的に接続するパッド及び外部接続用ランドを有する配線パターンをメッキにて形成してなる半導体装置用の回路部材を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記配線パターンの前記パッドを前記半導体チップを封止するための樹脂に含まれるフィラーの最大粒径よりも大きな厚さ分厚く形成してなる回路部材に半導体チップを実装し、前記半導体チップの全周面及び及び前記配線パターンの前記半導体側を樹脂封止し、前記樹脂から前記導電性基板を剥離してなる半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記パッドを2段以上のメッキで形成することを特徴とする請求項3の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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