説明

半導体装置

【課題】半導体装置をリードフレームに固着するためのペーストや半導体基板によって生じる寄生抵抗を低減する。
【解決手段】半導体基板裏面に裏面電極が形成され、リードフレームに固着されている半導体装置において、リードフレームの表面には凹凸構造が形成されており、凹部に入っているペーストにより、リードフレームの凸部を裏面電極に直接固着することで寄生抵抗を下げ、半導体装置の駆動能力を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高駆動能力が要求される半導体装置に関わる。更に詳しくは、半導体装置に形成されるトランジスタの駆動能力向上に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、半導体基板に多数形成された半導体チップを個別に切離してパッケージなどに実装されて利用される。半導体装置の製造技術の発達と共に、半導体チップ表面に形成されるトランジスタの性能は、さまざまな面で向上している。大電力を要する負荷に電力を供給することのできる高駆動能力を有するトランジスタにおいては、オン抵抗(トランジスタがスイッチオンしたときのトランジスタの内部抵抗)の低減にさまざまな技術が開発されてきた、現在ではトランジスタのオン抵抗低減のために、VDMOS(Vertical Double Diffused MOS)やUMOS (Trench gated MOS)といった半導体基板表面に対し垂直に電流を流す構造のトランジスタが主流となっている。
【0003】
さて、図10(a)は従来技術による高駆動能力を有するトランジスタが形成された半導体チップ009の断面図であり、図10(b)は裏面電極004を有する同半導体チップ009を実装する時に用いられるリードフレーム005に、半導体チップ009の裏面が導電ペースト006で接着された従来技術の半導体装置の断面図である。図2は、図10の半導体チップ009の上表面に形成されているが、図10には図示されていないトランジスタの等価回路図である。トランジスタ011のソース016は、半導体チップ009を形成する半導体基板を介して半導体チップ009の裏面電極004と電気的に接続され、半導体チップ009の裏面電極004から電力の供給を受けている。トランジスタ011のゲート014に加えられる制御信号に応じて、ドレイン015に接続される負荷(図示されていない)に電力を供給する。図2のトランジスタ011のソース016には、導電ペーストによるペースト抵抗013と基板抵抗012(以後、ペースト抵抗013と基板抵抗012の両抵抗を合わせて単に寄生抵抗と称する。)を介してリードフレーム表面017から電力が供給される。このペースト抵抗013は半導体チプ009とリードフレーム005を接着する導電ペーストの抵抗であり、基板抵抗012は、半導体チップ009の裏面電極004からトランジスタ011のソース016の間に介在する、厚みDなる半導体チップを形成する半導体基板の抵抗である。
【0004】
従来は、大電力を前記負荷に供給するために、寄生抵抗に比べれば大きな前記オン抵抗を小さくすれば良かった。しかしながら、前記縦型素子では微細加工技術の発達によりオン抵抗低減は進んだものの、寄生抵抗は低減されないために、寄生抵抗がオン抵抗の誤差として無視できなくなって来た。その対策として、半導体基板の厚みを薄くして基板抵抗012を低減するバックグラインド法(特許文献1参照)や、低抵抗ペースト剤の開発などによるペースト抵抗013低減が行われている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−022899号公報
【特許文献2】特開2003−016838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体基板を薄くする前記バックグラインド法は、図2(a)に示す半導体基板の厚みDを小さくすることであるが、半導体基板の厚みDを薄くしすぎると物理的強度が低下し半導体チップ009割れてしまう。前記低抵抗ペースト剤を利用しても、図2に示すように多かれ少なかれペースト抵抗013が直列に加わるためペースト抵抗をある程度しか小さく出来ない。従って、従来の技術では低減が著しい前記オン抵抗に比較して、寄生抵抗を小さくすることが出来ないという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の手段で前記課題を解決する。
(1)半導体チップと、
前記半導体チップの裏面全面に設けられた、凹凸構造を有していない裏面電極と、
前記裏面電極と導電ペーストにより接着されたリードフレームと、
からなり、
前記裏面電極と前記リードフレームとの間の寄生抵抗を減らすために、前記リードフレームの前記裏面電極側の面である上表面には凹凸構造が設けられており、前記凹凸構造の凹部の内側には前記導電ペーストが入り込み前記裏面電極と前記リードフレームとを接着し、前記リードフレームに設けられた前記凹凸構造の凸部は前記裏面電極と直接接触している半導体装置とした。
(2)(1)記載の半導体装置において、前記凹凸構造がストライプパターンを成す半導体装置とした。
(3)(1)記載の半導体装置において、前記凹凸構造が格子パターンを成す半導体装置とした。
(4)(1)記載の半導体装置において、前記凹凸構造が非直線パターンを成す半導体装置とした。
【発明の効果】
【0008】
図1は本発明の第1の実施例である。ここで図1(a)はバックグラインドした半導体チップ002の裏面に凹凸構造001を設け、その凹凸構造001の表面に金属の裏面電極004を形成した状態であり、図1(b)は(a)の基板を、導電ペースト006を用いてリードフレーム005に接着した状態である。
【0009】
半導体チップ002とリードフレーム005の接触部分に凹凸構造001を設けることにより、寄生抵抗を減少させることができるだけでなく、半導体チップ009を薄くバックグラインドして基板抵抗012を減少させる従来技術より、半導体チップ002の物理的強度は向上する。また、実装時においては、半導体チップ002をリードフレーム005に導電ペースト006を用いて接着する際に、凹凸構造001が、雨天時のタイヤの溝のような効果を発揮し、図1(b)のように導電ペースト006が凹凸構造001の凹部内に入り込み凸部はリードフレーム005と直接接触するため、凸部においては導電ペースト006の寄生抵抗を挟むことなく半導体チップ002とリードフレーム005を接触することができる。このため、裏面電極004とリードフレーム005との間に薄い導電ペースト006が挟まれている従来の方法に比べ、寄生抵抗が大幅に減少する。
【0010】
図1は本発明の第1の実施例である。ここで図1(a)はバックグラインドした半導体チップ002の裏面に凹凸構造001を設け、その凹凸構造001の表面に金電の裏面電極004を形成した状態であり、図1(b)は(a)の基板を、導電ペースト006を用いてリードフレーム005に接着した状態である。図1(a)のように基板裏面に凹凸構造001を設けることにより、基板表面に対し垂直方向の基板抵抗が減少するため、基板の寄生抵抗を減少させることができるだけでなく、基板裏面全体を薄くバックグラインドして基板抵抗を減少させる従来法より物理的強度は向上する。また、実装時においては、この基板をリードフレーム005に導電ペースト006を用いて接着する際に、基板裏面の凹凸構造001が、所謂、雨天時のタイヤの溝のような効果を発揮し、図1(b)のように導電ペースト006が凹部内に入り込み凸部はリードフレーム005と接触するため、凸部においては導電ペースト006の寄生抵抗を挟むことなくリードフレーム005と接触することができる。このため、裏面電極004とリードフレーム005との間に薄い導電ペースト006が挟まれている従来の方法に比べ、寄生抵抗が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の第1実施例の半導体装置を示す断面図である。(b)図1(a)をリードフレームに接着した状態の断面図である。
【図2】半導体装置のトランジスタの等価回路図である。
【図3】本発明の凹凸構造のパターンを示す平面図である。
【図4】本発明の凹凸構造のパターンを示す平面図である。
【図5】本発明の凹凸構造のパターンを示す平面図である。
【図6】本発明の凹凸構造のパターンを示す平面図である。
【図7】本発明の凹凸構造のパターンを示す平面図である。
【図8】本発明の第2実施例の半導体装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第3実施例の半導体装置を示す断面図である。
【図10】(a)従来技術の半導体装置の実施例を示す断面図である。(b)図10(a)をリードフレームに接着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では図面を用いて実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例である。ここで図1(a)は半導体チップ002の裏面に凹凸構造001を設けた後、裏面電極膜004を形成した状態であり、図1(b)は図1(a)の半導体チップ002を、導電ペースト006を用いてリードフレーム005に接着した状態である。
【0014】
図3と図4は、半導体チップに切離される前の結晶方位<110>のOF(オリエントフラット)を有するウエハ状半導体基板を、OFを下にして、ウエハ状半導体基板の裏面から見たウエハ状半導体基板の平面図である。半導体基板の裏面に形成する凹凸構造001は、図3に示すようなストライプ型や、図4に示すような格子型が良い。半導体チップ002の物理的強度がより必要な場合は、結晶方位<110>のウエハ状半導体基板を用い、凹凸構造001を図5や図6のようにOFに対し45°傾け結晶方位<100>と平行にすることで、図3や図4に示す凹凸構造001を設けた半導体基板に形成される半導体チップ002より更に強度を向上させることができる。また、図7に示すように、凹凸構造001を波型の非直線であるパターンとし、強度を一層向上させることも可能である。
【実施例2】
【0015】
ウエハ状半導体基板の裏面側に凹凸構造を設けるのではなく、図8に示すように、リードフレーム005と接触する裏面電極下表面に凹凸構造001を設けると、実施例1と同様の寄生抵抗低減の効果が得られ、ペースト抵抗013を低減させることが可能である。
【実施例3】
【0016】
基板抵抗012が無視できるような場合は、図9の様に半導体チップ002と接触するリードフレーム005の上表面に凹凸構造001を設けることで寄生抵抗を低減することが出来る。
【0017】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で変形して実施できる。
【符号の説明】
【0018】
001 凹凸構造(半導体チップ裏面)
002 半導体チップ
004 裏面電極
005 リードフレーム
006 導電ペースト
009 半導体チップ
011 トランジスタ
012 半導体基板抵抗
013 ペースト抵抗
014 トランジスタのゲート
015 トランジスタのドレイン
016 トランジスタのソース
017 リードフレーム表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップの裏面全面に設けられた、凹凸構造を有していない裏面電極と、
前記裏面電極と導電ペーストにより接着されたリードフレームと、
からなり、
前記裏面電極と前記リードフレームとの間の寄生抵抗を減らすために、前記リードフレームの前記裏面電極側の面である上表面には凹凸構造が設けられており、前記凹凸構造の凹部の内側には前記導電ペーストが入り込み前記裏面電極と前記リードフレームとを接着し、前記リードフレームに設けられた前記凹凸構造の凸部は前記裏面電極と直接接触している半導体装置。
【請求項2】
前記凹凸構造がストライプパターンを成す請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凹凸構造が格子パターンを成す請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記凹凸構造のパターンが、直線でない請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−171766(P2011−171766A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119228(P2011−119228)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2005−118223(P2005−118223)の分割
【原出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】