半導体装置
【課題】本発明は、半導体装置に含まれる増幅回路における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えるとともに、増幅器自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明は、外部と接続する複数の端子を有する配線基板72に、半導体チップ71を実装してパッケージングしてある半導体装置である。半導体装置は、半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの差動増幅器61と、平衡信号線路を差動増幅器61と接続し、半導体チップ71上に形成してある、少なくとも一つのバラン62とを備える。差動増幅器61の接地配線と、バラン62の接地配線とは、半導体チップ71上に分離して形成してあり、差動増幅器61の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数が、バラン62の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤの77数より多い。
【解決手段】本発明は、外部と接続する複数の端子を有する配線基板72に、半導体チップ71を実装してパッケージングしてある半導体装置である。半導体装置は、半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの差動増幅器61と、平衡信号線路を差動増幅器61と接続し、半導体チップ71上に形成してある、少なくとも一つのバラン62とを備える。差動増幅器61の接地配線と、バラン62の接地配線とは、半導体チップ71上に分離して形成してあり、差動増幅器61の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数が、バラン62の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤの77数より多い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子を有する配線基板に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、特に、半導体チップ上に増幅器と、平衡不平衡変換器とを形成してある半導体装置である。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機は、従来の通信規格であるGSM(Global System for Mobile Communications)、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)およびWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)と、3.9世代高速データ通信の通信規格であるLTE(Long Term Evolution)とに対応する必要があるため、マルチモード用のトランシーバICであるRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)の開発が進められている。
【0003】
マルチモード用のトランシーバICであるRFICは、複数の通信規格に対応するために、送受信することが可能な信号の周波数帯域を広くするとともに、携帯電話機の小型化、低価格化に対応するため、半導体チップのサイズを小さく、低コスト化する必要がある。
【0004】
マルチモード用のトランシーバICであるRFICを低コスト化するため、たとえばRFICの送信部は、送信する信号を単相にする。ただし、RFICの送信部は、雑音対策のために差動信号を用いているので、送信する信号を単相にするためには、差動信号を単相の信号に変換する平衡不平衡変換器(以下、バランとも称す)を備える必要がある。
【0005】
具体的に、RFICは、送信部に、たとえば非特許文献1に開示してある送信増幅回路を用いる必要がある。非特許文献1に開示してある送信増幅回路は、入力バラン、第1差動増幅器、第2差動増幅器、および出力バランを備えている。そして、入力バラン、第1差動増幅器、第2差動増幅器、および出力バランの接地配線は、それぞれ独立したパッドからボンディングワイヤを介して、配線基板に備える共通の接地配線に接続してある。送信増幅回路は、単相の入力信号を入力バランで差動信号に変換し、変換した差動信号を第1差動増幅器、および第2差動増幅器で増幅し、増幅した差動信号を出力バランで変換して単相の出力信号として、出力端子から出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】キム ジファン(Jihwan Kim) 他7名、「離散的リサイジングならびにコンカレント電力結合構造」("A Discrete Resizing and Concurrent Power Combining Structure for Linear CMOS Power Amplifier")、IEEE高周波集積回路シンポジウム(Radio Frequency Integrated Circuit Symposium)、IEEE電気電子学会(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.)(アメリカ)、2010年、RTU1C-1、p.387-390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RFICの送信部が、非特許文献1に開示してある送信増幅回路のような、能動素子であるトランジスタを含む差動増幅器を備えている場合、差動増幅器は、トランジスタ特性の歪みにより、増幅した信号が非線形に歪み、入力信号に対する出力信号(増幅した信号)の特性(以下、入出力特性と称す)の線形性が劣化するという問題があった。
【0008】
また、トランジスタ特性の歪みにより、差動増幅器で増幅した信号が非線形に歪むとともに、差動増幅器の接地配線に流れる電流も非線形に歪む。この歪みを持つ電流は、配線基板に備える共通の接地配線を介して入力バラン、および出力バランにも流入する。歪みを持つ電流が、入力バラン、および出力バランの接地配線に流入すると、送信増幅回路の入出力特性の線形性が劣化するという問題があった。
【0009】
それゆえに、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、半導体装置に含まれる増幅回路における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えるとともに、増幅回路に含まれる増幅器自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成は、外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置である。上記課題を解決するために、本発明は、半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの増幅器と、平衡信号線路を増幅器と接続し、半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの平衡不平衡変換器とを備え、増幅器の第1接地配線と、平衡不平衡変換器の第2接地配線とは、半導体チップ上に分離して形成してあり、一つの第1接地配線と基材とを接続する第1接続体の数が、一つの第2接地配線と基材とを接続する第2接続体の数より多い。
【0011】
本発明の別の構成は、外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、半導体チップ上に形成してある複数の増幅器と、複数の平衡信号線路をそれぞれ複数の増幅器と接続し、半導体チップ上に形成してある複数の平衡不平衡変換器とを備え、複数の増幅器は、第1および第2の増幅器を有し、増幅器の第1接地配線と、第1の増幅器に接続してある平衡不平衡変換器の第2接地配線と、第2の増幅器に接続してある平衡不平衡変換器の第3接地配線とは、半導体チップ上に分離して形成してあり、第1接地配線、第2接地配線、および第3接地配線はそれぞれ第1接続体、第2接続体、および第3接続体により基材と接続する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る半導体装置によれば、増幅器の第1接地配線と、平衡不平衡変換器の第2接地配線とは、半導体チップ上に分離して形成してあるので、増幅器の接地配線に流れる電流の歪みによる、平衡不平衡変換器の入出力特性への影響を軽減して、半導体装置に含まれる増幅回路における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。また、一つの第1接地配線と基材とを接続する第1接続体の数が、一つの第2接地配線と基材とを接続する第2接続体の数より多いので、第2接地配線と基材との接続に比べて、第1接地配線と基材との接続のインピーダンスが減少し、増幅器の接地配線に流れる電流の歪みが減り、増幅器自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムに含まれるフロントエンドモジュールの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るRFICに含まれる送信部の構成を示すブロック図である。
【図4】RFPGAの出力信号に、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND が重畳した場合の出力信号の変化を示すグラフである。
【図5】RFPGAにおける入出力特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態1に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図7】BGA構造であるRFICの構成を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るRFICに含まれるRFPGAのパッド電極間の距離を示す概略図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態4の変形例に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1に示す無線通信システム1は、携帯電話機やデータ通信機に実装されるシステムである。無線通信システム1は、RFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)10と、ベースバンドIC(Integrated Circuit)5と、HPA(High Power Amplifier:高出力増幅器)モジュール11と、フロントエンドモジュール(FEM:Front End Module)12と、アンテナ13とを含む。
【0015】
RFIC10は、大きく分けて“GSM/EDGE”、“WCDMA”、“HSPA”、“HSPA+”、および“LTE”の5つの送受信方式の通信規格に準拠して、アンテナ13を介して基地局との間でRF(Radio-Frequency)信号の送信および受信を可能とする1チップのマルチモード用のトランシーバIC(通信用半導体集積回路)である。
【0016】
ここで、GSM(Global System for Mobile Communication)は、FDD(周波数分割複信:Frequency Division Duplex)−TDMA(時分割多元接続:Time Division Multiple Access)方式で実現されている第2世代(2G)の通信規格であり、デジタル変調方式としてGMSK方式を用いる。また、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)は、GSM方式の中のパケット通信の拡張規格である。EDGEでは、デジタル変調方式として8PSK(8位相偏移変調方式:8 Phase Shift Keying)が使用されている。
【0017】
WCDMA(Wideband Code Divided Multiple Access)は、FDD−CDMA(符号分割多元接続:Code Division Multiple Access)方式で実現されている第3世代(3G)の通信規格である。欧米ではUMTS(Universal Mobile Telecommunications Systems)として知られている。
【0018】
HSPA(High Speed Packet Access)およびHSPA+は、WCDMAにおける高速パケット通信の拡張規格であり、特に第3.5世代(3.5G)の通信規格と呼ばれている。
【0019】
LTE(Long Term Evolution)は、HSPAよりさらに高速化・広帯域化を図った携帯電話機の通信規格で第3.9世代(3.9G)の通信規格と呼ばれている。LTEでは、下りはOFDMA(直交周波数分割多元接続:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され、上りはSC−FDMA(シングルキャリア周波数分割多元接続:Single Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用される。
【0020】
RFIC10は、受信部(RX)21、送信部(TX)22、およびデジタルRFインターフェース(DigRF IF)を含む。
【0021】
受信部21は、アンテナ13で受信した基地局からの受信RF信号を、ローカルキャリア信号(局部発振信号)を使ってアナログ受信ベースバンド信号にダウンコンバートする。さらに、受信部21は、アナログ受信ベースバンド信号をAD(Analog-to-Digital)変換してデジタル受信ベースバンド信号を生成する。
【0022】
送信部22は、逆に、デジタル送信ベースバンド信号をDA(Digital-to-Analog)変換してアナログ送信ベースバンド信号を生成し、ローカルキャリア信号を使って生成したアナログ送信ベースバンド信号を送信RF信号にアップコンバートする。そして、送信部22は、アンテナ13を介して基地局に送信RF信号を無線で送信する。
【0023】
デジタルRFインターフェース20は、RFIC10とベースバンドIC5とをつなぐインターフェースであり、MIPI Alliance(MIPI:Mobile Industry Processor Interface)により策定されたインターフェース規格に従っている。
【0024】
RFIC10は、さらに、送信RF信号を出力する複数の出力端子Tx1〜Txnと、受信RF信号を入力する複数の入力端子Rx1〜Rxnとを含む。出力端子および入力端子は、(Tx1,Rx1),・・・,(Txn,Rxn)のように出力端子と入力端子とがペアをなしており、RFIC10が使用するバンド(周波数帯)に応じて、使用する出力端子と入力端子とのペアが決められている。
【0025】
ベースバンドIC5は、RFIC10から受取ったデジタル受信ベースバンド信号に対して、前述の5つの送受信方式の通信規格に対応したデジタル復調とその他の信号処理を行い、デジタル受信ベースバンド信号から受信データ(音声、画像またはその他のデータ)を生成する。また、ベースバンドIC5は、送信データ(音声、画像又はその他データ)に、前述の5つの送受信方式の通信規格に対応したデジタル変調その他の信号処理を行い、送信データからデジタル送信ベースバンド信号を生成し、RFIC10に受渡す。なお、図1には図示しないが、無線通信システム1を搭載した携帯電話機は、アプリケーションプロセッサ、メモリ、スピーカ、マイクロホン、入力キー、液晶モニタを含み、それぞれとベースバンドIC5との間で信号の受取りおよび受渡しを行なう。
【0026】
HPAモジュール11は、出力端子Tx1〜Txnにそれぞれ対応して設けられた複数のHPA(高出力増幅器:High Power Amplifier)40を含む。各HPA40は、対応する出力端子Tx1〜Txnから受取った送信RF信号を増幅する。各HPA40は、対応する出力端子Tx1〜Txnから受取った送信RF信号の周波数に応じて最適化されている半導体チップやSMD(表面実装素子:Surface Mount Device)デバイスなどで構成し、一つのパッケージとしてモジュール化されている。
【0027】
フロントエンドモジュール12は、出力端子と入力端子とのペア(Tx1,Rx1),・・・,(Txn,Rxn)のうちの1組を選択し、選択した出力端子と入力端子とのペア(Txi,Rxi)(iは、1〜nまでの自然数)と、アンテナ13とを接続する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システム1に含まれるフロントエンドモジュール12の構成を示すブロック図である。図2に示すフロントエンドモジュール12は、アンテナスイッチ(ANT−SW)15と、出力端子と入力端子とのペア(Tx1,Rx1),・・・,(Txn,Rxn)のそれぞれ対応する複数のデュプレクサ(DPX)14_1〜14_n(なお、特定のデュプレクサ14_1〜14_nを示す以外は、デュプレクサ14と記載する)とを含む。
【0029】
アンテナスイッチ15は、使用するバンドに応じて1つのデュプレクサ14を選択し、選択したデュプレクサ14_i(iは、1〜nまでの自然数)とアンテナ13とを接続する。選択したデュプレクサ14_iは、対応する出力端子Txi(iは、1〜nまでの自然数)から受取った送信RF信号をアンテナ13に受渡すと同時に、アンテナ13から受信RF信号を受取り、対応する入力端子Rxiに受渡す。このとき、デュプレクサ14は、送信RF信号が入力端子Rxiに漏れることを抑制するとともに、受信RF信号が出力端子Txiに漏れることを抑制する。フロントエンドモジュール12は、前述の構成とすることでアンテナ13と基地局との間で送受信方式をFDD方式にすることができる。フロントエンドモジュール12は、アンテナスイッチ15および複数のデュプレクサ14を1つの半導体チップで構成し、一つのパッケージとしてモジュール化されている。
【0030】
次に、RFIC10に含まれる送信部22について、さらに詳しく説明する。送信部22は、図1には図示しないが、第2世代(2G)の通信規格であるGSMおよびEDGEの送受信方式で送信RF信号を処理する回路と、第3世代(3G)以上の通信規格であるWCDMA、HSPA、HSPA+およびLTEの送受信方式で送信RF信号を処理する回路とを含む。なお、送信部22で送信RF信号を変調する処理を行なう場合、送信部22は、ポーラー変調方式やダイレクトアップ方式などの変調方式を用いる。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置であるRFIC10に含まれる送信部22の構成を示すブロック図である。図3に示す送信部22は、図1に示すベースバンドIC5で生成したデジタル送信ベースバンド信号を、デジタルRFインターフェース20を介して受取る。送信部22は、受取ったデジタル送信ベースバンド信号をダイレクトコンバージョン方式でアップコンバートして送信RF信号を生成する。
【0032】
送信部22は、700MHz〜2.6GHz帯において複数のバンドの送信RF信号を生成することが可能である。たとえば、送信部22は、2.5GHz〜2.57GHz帯をバンドH、1.92GHz〜1.98GHz帯をバンドM、および824MHz〜849MHz帯をバンドLとして、それぞれのバンドで送信RF信号を生成する。
【0033】
送信部22は、マルチプレクサ(MPX)221、デジタルプログラマブルゲインアンプ(DPGA:Digital Programmable Gain Amplifier)222、デジタル−アナログ変換器(DAC:Digital to Analog Converter)223と、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)224とを含む。
【0034】
デジタルRFインターフェース20を介してベースバンドIC5から受取ったデジタル送信ベースバンド信号(送信データ)は、シリアル転送された1ビットのデータ信号で、同相成分信号(I信号)と直交成分信号(Q信号)とを含む。1ビットのデータ信号に付随して、デジタル送信ベースバンド信号は、1ビットのデータ信号が同期する1ビットのクロック信号と、送信データの取込みを許可する1ビットのイネーブル信号とをさらに含む。
【0035】
マルチプレクサ221は、シリアル転送されたI信号およびQ信号を分離(マルチプレクス)するとともに、シリアル信号であるI信号およびQ信号を、複数のビットからなるパラレル信号に変換する。
【0036】
DPGA222は、デジタル信号に対してゲイン(利得)を可変することが可能な増幅器である。DPGA222は、パラレル信号に変換したデジタル信号のI信号を増幅し、同様に、パラレル信号に変換したデジタル信号のQ信号も増幅する。つまり、DPGA222は、パラレル信号に変換したデジタル信号のI信号およびQ信号の値にゲインを乗算した値に変換する。
【0037】
DAC223は、DPGA222で増幅したデジタル信号のI信号およびQ信号を、差動信号であるアナログ信号のI信号およびQ信号に変換する。DAC223で変換したアナログ信号のI信号およびQ信号は、ローパスフィルタ224を通過することにより遮断周波数より高い帯域の周波数が除去される。
【0038】
送信部22は、さらに、局部発振器225、分周器226、複数の直交変調器227、および複数のRFプログラマブルゲインアンプ(RFPGA:Radio Frequency Programmable Gain Amplifier)228を含む。局部発振器225、分周器226、直交変調器227およびRFPGA228は、原則的に、使用するバンドに応じて設けられるが、近接したバンドであれば、異なるバンドに対して共通に利用してもよい。
【0039】
局部発振器225は、分周器226で利用する差動信号の局部発振信号LOを生成する。
【0040】
分周器226は、局部発振器225で生成した局部発振信号LOを分周比にしたがって周波数を分周し、使用するバンド(H,M,L)ごとに周波数の異なる局部発振信号LOI,LOQを生成する。バンドHの局部発振信号は、LOI_H,LOQ_Hと、バンドMの局部発振信号は、LOI_M,LOQ_Mと、バンドLの局部発振信号は、LOI_L,LOQ_Lとそれぞれ表す。ただし、特定のバンドの局部発振信号を示す以外は、局部発振信号LOI,LOQと記載する。
【0041】
分周器226の分周比は、使用するバンドに応じて制御ロジック229により制御されており、代表的な分周器226の分周比をバンド(H,M,L)ごとに2,4,8の値とする。なお、局部発振信号LOIは、元の局部発振信号LOの立上がりエッジに同期し、局部発振信号LOQは元の局部発振信号LOの立下がりエッジに同期する。これにより、局部発振信号LOQは、局部発振信号LOIの位相に対して90度移相した信号となる。
【0042】
直交変調器227は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられ(QMOD_HB,QMOD_MB,QMOD_LB)、使用するバンド(H,M,L)に応じた局部発振信号LOI,LOQと、ローパスフィルタ224を通過したアナログ信号のI信号およびQ信号を受取る。直交変調器227は、局部発振信号LOI,LOQと、アナログ信号のI信号およびQ信号とを乗算して、アナログ信号のI信号およびQ信号を局部発振信号LOI,LOQの周波数にアップコンバートしたアナログ信号の送信RF信号を生成する。直交変調器227は、生成した送信RF信号をRFPGA228に受渡す。なお、直交変調器227は、複数設けている場合、それぞれ排他的に動作する。つまり、バンドHの直交変調器227が動作している間、バンドM,Lの直交変調器227は動作できない。
【0043】
RFPGA228は、送信増幅回路であり、直交変調器227で生成した送信RF信号を増幅する。RFPGA228送信増幅回路は、後述するように能動素子であるトランジスタを含む差動増幅器と、受動素子であるバランとを含んでいる。差動増幅器は、能動素子であるトランジスタを含むので、トランジスタ特性の歪みにより増幅した信号が非線形に歪み、入出力特性の線形性が劣化する。
【0044】
具体的に、差動増幅器をMOSトランジスタで構成した場合、出力電流io (出力信号(増幅した信号))に生じる非線形の歪みは、動作点におけるテイラー展開の3次の項までを考慮に入れて、入力電圧vi (入力信号)の関数として(式1)と表すことができる。ここで、an (n=10,1,2,3)は、3次の項までの各係数である。
【0045】
【数1】
【0046】
さらに、入力電圧vi を、vi+=−vi-=(1/2)Vm cosωtとして、(式1)に代入すると、出力電流io+は(式2)と、出力電流io-は(式3)とそれぞれ表すことができる。
【0047】
【数2】
【0048】
【数3】
【0049】
よって、差動増幅器から出力される差動出力電流io,diffは、(式4)と表すことができる。
【0050】
【数4】
【0051】
差動出力電流io,diffは、(式4)から分かるように、(式1)の奇数次の項に起因する非線形の歪みが生じた出力信号である。
【0052】
一方、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND は、出力電流io+と、出力電流io-との和となるので、(式5)と表すことができる。
【0053】
【数5】
【0054】
差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND は、(式5)から分かるように、(式1)の偶数次の項に起因する非線形の歪みが生じた出力信号である。
【0055】
RFPGA228において、差動増幅器の接地配線と、バランの接地配線とがつながっている場合、差動増幅器の接地配線に電流iGND が流れると、バランの接地配線を介してバランの出力信号に電流iGND が影響を与え、バランの出力信号およびRFPGA228の出力信号の品質が低下する。つまり、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の非線形の歪みにより、バランおよびRFPGA228における入出力特性の線形性が劣化する。
【0056】
図4は、RFPGA228の出力信号に、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND が重畳した場合の出力信号の変化を示すグラフである。図4に示すグラフでは、図中左側に、出力信号の波形aと、出力信号の波形aの約2倍の波長である差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の波形bとが図示してある。そして、出力信号の波形aに、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の波形bを重畳した波形cが、図中右側に図示してある。差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の波形bによって、出力信号の波形aに歪みが生じ、振幅が大きくなっていることが、波形cから分かる。なお、図4では、簡略化のため、出力信号の直流成分を無視して図示してある。
【0057】
図5は、RFPGA228における入出力特性を示すグラフである。図5では、横軸を入力電圧、縦軸を出力電圧としてある。携帯電話機などの移動無線通信では、帯域外輻射電力に対する制限が厳しく、RFPGA228における入出力特性が高い線形性を有していることが求められている。
【0058】
一般に、回路の線形性を示す指標としてP1dB(1dB Compression point:1dB利得圧縮点)がある。指標P1dBは、理想的な直線状の利得特性に対して1dB利得が低下した入力電圧をIP1dB(Input P1dB)、出力電圧をOP1dB(Output P1dB)としている。
【0059】
図5に示す波形dにおける入出力特性を、RFPGA228が有している場合、RFPGA228は、入力信号の入力電圧がIP1dB以上の振幅になると、出力電圧として出力信号に出力されない入力電圧の部分を帯域外スペクトル放射として出力することになる。出力した帯域外スペクトル放射は、隣接するチャネルへ漏洩して隣接するチャネルの出力信号の干渉波となる。そのため、RFPGA228は、入力信号の入力電圧がIP1dB未満の振幅に制限して、出力信号が隣接するチャネルの出力信号の干渉波とならないように、入出力特性の線形性が高い範囲で信号を増幅する。
【0060】
しかし、図4で示したように、RFPGA228の出力信号に、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND が重畳すると、RFPGA228の出力信号の振幅が増大する。そのため、RFPGA228における入出力特性は、図5に示す波形dから波形eへと、非線形の歪みが大きくなる。つまり、RFPGA228における入出力特性は、指標P1dBが低下し、高い線形性を有している範囲が狭くなり、信号を増幅することができるRFPGA228の入力電圧および出力電圧の範囲は狭くなる。
【0061】
また、RFPGA228における入出力特性の線形性は、RFPGA228に流れる電流にも依存する。そのため、RFPGA228は、必要な線形性を確保するために、より多くの電流を流す必要があり、バッテリーで駆動する携帯電話機などの駆動時間を短くするという問題があった。
【0062】
そこで、本発明の実施の形態1に係るRFIC10に含まれるRFPGA228では、RFPGA228における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる構成を採用している。図6は、本発明の実施の形態1に係るRFIC10に含まれるRFPGA228の構成を示すブロック図である。RFPGA228は、差動増幅器61と、バラン62とを含む。
【0063】
差動増幅器61は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられ(DA_HB,DA_MB,DA_LB)、使用するバンド(H,M,L)に応じて直交変調器(QMOD_HB,QMOD_MB,QMOD_LB)227から受取った送信RF信号を増幅する。なお、差動増幅器61は、複数設けている場合、それぞれ排他的に動作する。つまり、バンドHの差動増幅器(DA_HB)61が動作している間、バンドM,Lの差動増幅器(DA_MB,LB)61は動作できない。
【0064】
バラン62は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられ(Ba_HB,Ba_MB,Ba_LB)、使用するバンド(H,M,L)に応じて差動増幅器61で増幅した送信RF信号を差動信号から単相信号に変換する。バラン62で変換した単相信号の送信RF信号は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられた出力端子TX1〜TX3から出力される。バラン62は、平衡信号線路を差動増幅器61と接続し、非平衡信号線路の一端を接地端子VSS_TX1に、非平衡信号線路の他端を出力端子TX1〜TX3にそれぞれ接続している。また、バラン62の給電点に、電源端子VDD_TXを接続してある。
【0065】
ここで、RFPGA228を含むRFIC10は、たとえばBGA(Ball Grid Array)構造である。図7は、BGA構造であるRFIC10の構成を示す概略図である。RFIC10は、差動増幅器61、バラン62などを形成してある半導体チップ71と、半導体チップ71を実装する基材である配線基板72とを有している。
【0066】
配線基板72は、基板内部に形成してあるパターン配線73と、出力端子TX1〜TX3などを構成するバンプ電極74と、パッド電極75とを有している。半導体チップ71と、配線基板72とを電気的に接続するため、配線基板72に形成してあるパッド電極75と、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76とをボンディングワイヤ77で接続してある。
【0067】
なお、半導体チップ71およびボンディングワイヤ77などは、配線基板72の主面に被覆されたエポキシ樹脂などの封止部材78によって封止されている。
【0068】
図6に戻って、半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77で接続してある。
【0069】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドH,M,Lのバラン(Ba_H,Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1に接続してある。接地端子VSS_TX1は、RFIC10の外から接地電位を受け、ボンディングワイヤ77を介してその接続する半導体チップ71のバッド電極76に供給する。パッド電極76は接地電位を受け、接地配線を介してバラン62に供給する。
【0070】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。接地端子VSS_TX0は、RFIC10の外から接地電位を受け、2本のボンディングワイヤ77を介してその接続する半導体チップ71のバッド電極76に供給する。パッド電極76は接地電位を受け接地配線を介して差動増幅器61に供給する。
【0071】
一つの配線にまとめられた差動増幅器61の接地配線、および一つの配線にまとめられたバラン62の接地配線は、半導体チップ71上でさらに一つの配線にまとめられることなく、半導体チップ71上で分離して形成され、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0,VSS_TX1にそれぞれ接続してある。
【0072】
そのため、半導体チップ71上で、差動増幅器61の接地配線に流れる電流と、バラン62の接地配線に流れる電流とは互いに干渉することがないので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減することができ、RFPGA228における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0073】
また、差動増幅器61は、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。つまり、差動増幅器61の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数(2本)が、バラン62の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数(1本)より多い。そのため、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少し、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0074】
なお、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスを減少させている。これは、差動増幅器61は、能動素子であるトランジスタを含んでいるため、トランジスタ特性の歪みにより、差動増幅器61の接地配線に流れる電流が歪みが、バラン62の接地配線に流れる電流が歪みより大きくなるためである。
【0075】
また、前述のようにRFPGA228における入出力特性の線形性は、RFPGA228を流れる電流にも依存する。そのため、RFPGA228は、入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることで電流を減らして、バッテリーで駆動する携帯電話機などの駆動時間を長くすることができる。
【0076】
以上のように、本発明の実施の形態1に係るRFIC10は、差動増幅器61の接地配線(第1接地配線)と、バラン62の接地配線(第2接地配線)とは、半導体チップ71上に分離して形成してあるので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減して、RFIC10に含まれるRFPGA228における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0077】
また、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ(第1接続体)77の数が、バラン62の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ(第2接続体)77の数より多い。そのため、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少し、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減るため、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数は2本に限定されるものでは、3本以上であってもよい。ボンディングワイヤ77の数は、増えるほど、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少する。
【0078】
なお、RFIC10は、BGA構造に限らず、リードフレームのダイパッドに搭載した半導体チップを、ボンディングワイヤを介してリードフレームのインナーリードに接続する、例えばQFP(Quad Flat Package)タイプのパッケージであってもよい。また、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続する接続体、およびバラン62の接地配線と配線基板72とを接続する接続体は、ボンディングワイヤ77に限定されるものでもない。
【0079】
たとえば、RFIC10が、FCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)構造であれば、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続する接続体、およびバラン62の接地配線と配線基板72とを接続する接続体は、Auバンプや半田バンプなどである。一般的に、Auバンプや半田バンプなどに比べて、ボンディングワイヤのインピーダンスは高いので、接続体にAuバンプや半田バンプなどを用いる場合に比べて、ボンディングワイヤを用いる場合の方が、本発明の効果がより大きくなる。
【0080】
また、図6に示すように、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続する2本のボンディングワイヤ77同士の距離は、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77と、バラン62の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77との距離に比べて近い。つまり、矩形状の半導体チップ71の一辺に沿って配置されたパッド電極76のうち、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極76間の距離が、差動増幅器61の接地配線と接続するパッド電極76とバラン62の接地配線と接続するパッド電極76との距離に比べて短い。
【0081】
図8は、本発明の実施の形態1に係るRFIC10に含まれるRFPGA228のパッド電極間の距離を示す概略図である。図8に示すように、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極(接地端子VSS_TX01,VSS_TX02)76間の距離L1が、差動増幅器61の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX01)76と、バラン62の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX11)76との距離L2に比べて短い。距離L1は、一個分のパッド電極76を挟む距離で、距離L2は、五個分のパッド電極76を挟む距離である。なお、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極(接地端子VSS_TX01,VSS_TX02)76間にあるパッド電極76や、差動増幅器61の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX01)76と、バラン62の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX11)76との間にあるパッド電極76は、別の機能を有したパッド電極76である。また、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極(接地端子VSS_TX01,VSS_TX02)76間に別の機能を有したパッド電極76を挟まずに、隣接させてもよい。
【0082】
上記のような構成にすることで、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77と、バラン62の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77との電磁気的結合により、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62の接地配線に流れる電流への影響を緩和することができる。
【0083】
さらに、図6に示すように、差動増幅器61の接地配線が接続する接地端子VSS_TX0と、バラン62の接地配線が接続する接地端子VSS_TX1とが異なる。そのため、接地端子VSS_TX0から流れ込む電流のバラン62の接地配線に与える影響を抑えることができ、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0084】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係るRFIC10に含まれるRFPGA228aの構成を示すブロック図である。RFPGA228aは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228aは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図6に示すRFPGA228と同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0085】
半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77でそれぞれ接続してある。
【0086】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX3に接続してある。
【0087】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0088】
一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、および使用するバンドごとのバラン(Ba_H,Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上でさらに一つの配線にまとめられることなく、半導体チップ71上で分離して形成され、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0〜VSS_TX3にそれぞれ接続してある。
【0089】
そのため、半導体チップ71上で、差動増幅器61の接地配線に流れる電流と、バラン62の接地配線に流れる電流とは互いに干渉することがないので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減することができ、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0090】
さらに、バラン62の接地配線は、使用するバンドごとに、半導体チップ71上で分離して形成され、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1〜VSS_TX3にそれぞれ接続してあるので、使用するバンドごとのバラン62の接地配線に流れる電流が互いに干渉することなく、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのをより抑えることができる。
【0091】
また、差動増幅器61は、実施の形態1と同様、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。そのため、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少し、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0092】
以上のように、本発明の実施の形態2に係るRFPGA228aは、各々のバラン62の接地配線が、半導体チップ71上に分離して形成してあり、差動増幅器61の接地配線およびバラン62の接地配線が、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、配線ごとに異なる接地端子VSS_TX1〜VSS_TX3に接続してある。そのため、各々のバラン62の接地配線流れる電流は互いに干渉することなく、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのをより抑えることができる。
【0093】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係るRFIC10に含まれるRFPGA228bの構成を示すブロック図である。RFPGA228bは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228bは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図6に示すRFPGA228と同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77でそれぞれ接続してある。
【0095】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX2に接続してある。
【0096】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0097】
一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線、およびバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上でさらに一つの配線にまとめられることなく、半導体チップ71上で分離して形成され、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0〜VSS_TX2にそれぞれ接続してある。
【0098】
そのため、半導体チップ71上で、差動増幅器61の接地配線に流れる電流と、バラン62の接地配線に流れる電流とは互いに干渉することがないので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減することができ、RFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0099】
さらに、ボンディングワイヤ77のインピーダンス、およびボンディングワイヤ77間の磁気的な結合によるRFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのは、周波数に依存している。そのため、高周波の送信RF信号を取扱うバンドHのバラン(Ba_H)62の方が、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62に比べて、ボンディングワイヤ77のインピーダンスが高くなり、線形性の劣化が大きくなる。
【0100】
そこで、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線と、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線とは、半導体チップ71上に分離して形成して、それぞれ異なるボンディングワイヤ77に接続してある。そのため、バンドHのバラン(Ba_H)62におけるボンディングワイヤ77のインピーダンスを、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62におけるボンディングワイヤ77のインピーダンスに比べて、低くして、RFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑える。なお、バンドHの周波数帯を、たとえば2GHz帯以上とし、バンドM,Lの周波数帯を、たとえば2GHz帯未満とする。
【0101】
また、差動増幅器61は、実施の形態1と同様、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。そのため、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0102】
以上のように、本発明の実施の形態3に係るRFIC10は、高周波の信号を増幅する差動増幅器61に接続してあるバンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線と、他の周波の信号を増幅する差動増幅器61に接続してあるバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線とは、半導体チップ71上に分離して形成してある。そのため、
バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線と、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線とは、それぞれ異なるボンディングワイヤ77に接続することができるので、バンドHのバラン(Ba_H)62におけるボンディングワイヤ77のインピーダンスを低くして、RFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0103】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4に係るRFIC10に含まれるRFPGA228cの構成を示すブロック図である。RFPGA228cは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228cは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図6に示すRFPGA228と同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0104】
半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77でそれぞれ接続してある。
【0105】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0106】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0107】
RFPGA228cの半導体チップ71上での配線は、図10に示すRFPGA228bの半導体チップ71上での配線と同じであるが、RFPGA228cの配線基板72上での配線は、図10に示すRFPGA228bの配線基板72上での配線と異なる。
【0108】
具体的に、一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線、およびバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して配線基板72に接続され、配線基板72上で一つの配線にまとめられ、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0109】
そのため、RFPGA228cは、差動増幅器61の接地配線と接続する接地端子と、バラン62の接地配線と接続する接地端子とを別々に設ける場合に比べて、端子の数を減らすことができる。
【0110】
また、差動増幅器61は、実施の形態1と同様、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。そのため、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0111】
以上のように、本発明の実施の形態4に係るRFIC10は、差動増幅器61の接地配線およびバラン62の接地配線は、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して一つの接地端子VSS_TX0に接続してあるので、差動増幅器61の接地配線と接続する接地端子と、バラン62の接地配線と接続する接地端子とを別々に設ける場合に比べて、端子の数を減らすことができる。この一つの接地端子VSS_TX0に複数の接地配線が接続される配線基板72の構造は、図6又は図9に示す半導体チップ71の実装基板としてにも適用されてもよい。
【0112】
なお、図12は、本発明の実施の形態4の変形例に係るRFIC10に含まれるRFPGA228dの構成を示すブロック図である。RFPGA228dは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228dは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図11に示すRFPGA228cと同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図12に示す一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線、およびバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、配線基板72上で一つの配線にまとめられ、複数の接地端子VSS_TXに接続してある。この配線基板の構造は、図12に示す半導体チップ71に限られず、図6又は図9に示す半導体チップ71の実装基板として適用してもよい。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
1 無線通信システム、5 ベースバンドIC、11 HPAモジュール、12 フロントエンドモジュール、13 アンテナ、14 デュプレクサ、15 アンテナスイッチ、20 デジタルRFインターフェース、21 受信部、22 送信部、61 差動増幅器、62 バラン、71 半導体チップ、72 配線基板、73 パターン配線、74 バンプ電極、75,76 パッド電極、77 ボンディングワイヤ、78 封止部材、221 マルチプレクサ、224 ローパスフィルタ、225 局部発振器、226 分周器、227 直交変調器、229 制御ロジック。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端子を有する配線基板に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、特に、半導体チップ上に増幅器と、平衡不平衡変換器とを形成してある半導体装置である。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機は、従来の通信規格であるGSM(Global System for Mobile Communications)、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)およびWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)と、3.9世代高速データ通信の通信規格であるLTE(Long Term Evolution)とに対応する必要があるため、マルチモード用のトランシーバICであるRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)の開発が進められている。
【0003】
マルチモード用のトランシーバICであるRFICは、複数の通信規格に対応するために、送受信することが可能な信号の周波数帯域を広くするとともに、携帯電話機の小型化、低価格化に対応するため、半導体チップのサイズを小さく、低コスト化する必要がある。
【0004】
マルチモード用のトランシーバICであるRFICを低コスト化するため、たとえばRFICの送信部は、送信する信号を単相にする。ただし、RFICの送信部は、雑音対策のために差動信号を用いているので、送信する信号を単相にするためには、差動信号を単相の信号に変換する平衡不平衡変換器(以下、バランとも称す)を備える必要がある。
【0005】
具体的に、RFICは、送信部に、たとえば非特許文献1に開示してある送信増幅回路を用いる必要がある。非特許文献1に開示してある送信増幅回路は、入力バラン、第1差動増幅器、第2差動増幅器、および出力バランを備えている。そして、入力バラン、第1差動増幅器、第2差動増幅器、および出力バランの接地配線は、それぞれ独立したパッドからボンディングワイヤを介して、配線基板に備える共通の接地配線に接続してある。送信増幅回路は、単相の入力信号を入力バランで差動信号に変換し、変換した差動信号を第1差動増幅器、および第2差動増幅器で増幅し、増幅した差動信号を出力バランで変換して単相の出力信号として、出力端子から出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】キム ジファン(Jihwan Kim) 他7名、「離散的リサイジングならびにコンカレント電力結合構造」("A Discrete Resizing and Concurrent Power Combining Structure for Linear CMOS Power Amplifier")、IEEE高周波集積回路シンポジウム(Radio Frequency Integrated Circuit Symposium)、IEEE電気電子学会(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.)(アメリカ)、2010年、RTU1C-1、p.387-390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RFICの送信部が、非特許文献1に開示してある送信増幅回路のような、能動素子であるトランジスタを含む差動増幅器を備えている場合、差動増幅器は、トランジスタ特性の歪みにより、増幅した信号が非線形に歪み、入力信号に対する出力信号(増幅した信号)の特性(以下、入出力特性と称す)の線形性が劣化するという問題があった。
【0008】
また、トランジスタ特性の歪みにより、差動増幅器で増幅した信号が非線形に歪むとともに、差動増幅器の接地配線に流れる電流も非線形に歪む。この歪みを持つ電流は、配線基板に備える共通の接地配線を介して入力バラン、および出力バランにも流入する。歪みを持つ電流が、入力バラン、および出力バランの接地配線に流入すると、送信増幅回路の入出力特性の線形性が劣化するという問題があった。
【0009】
それゆえに、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、半導体装置に含まれる増幅回路における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えるとともに、増幅回路に含まれる増幅器自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成は、外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置である。上記課題を解決するために、本発明は、半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの増幅器と、平衡信号線路を増幅器と接続し、半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの平衡不平衡変換器とを備え、増幅器の第1接地配線と、平衡不平衡変換器の第2接地配線とは、半導体チップ上に分離して形成してあり、一つの第1接地配線と基材とを接続する第1接続体の数が、一つの第2接地配線と基材とを接続する第2接続体の数より多い。
【0011】
本発明の別の構成は、外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、半導体チップ上に形成してある複数の増幅器と、複数の平衡信号線路をそれぞれ複数の増幅器と接続し、半導体チップ上に形成してある複数の平衡不平衡変換器とを備え、複数の増幅器は、第1および第2の増幅器を有し、増幅器の第1接地配線と、第1の増幅器に接続してある平衡不平衡変換器の第2接地配線と、第2の増幅器に接続してある平衡不平衡変換器の第3接地配線とは、半導体チップ上に分離して形成してあり、第1接地配線、第2接地配線、および第3接地配線はそれぞれ第1接続体、第2接続体、および第3接続体により基材と接続する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る半導体装置によれば、増幅器の第1接地配線と、平衡不平衡変換器の第2接地配線とは、半導体チップ上に分離して形成してあるので、増幅器の接地配線に流れる電流の歪みによる、平衡不平衡変換器の入出力特性への影響を軽減して、半導体装置に含まれる増幅回路における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。また、一つの第1接地配線と基材とを接続する第1接続体の数が、一つの第2接地配線と基材とを接続する第2接続体の数より多いので、第2接地配線と基材との接続に比べて、第1接地配線と基材との接続のインピーダンスが減少し、増幅器の接地配線に流れる電流の歪みが減り、増幅器自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る無線通信システムに含まれるフロントエンドモジュールの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るRFICに含まれる送信部の構成を示すブロック図である。
【図4】RFPGAの出力信号に、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND が重畳した場合の出力信号の変化を示すグラフである。
【図5】RFPGAにおける入出力特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態1に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図7】BGA構造であるRFICの構成を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るRFICに含まれるRFPGAのパッド電極間の距離を示す概略図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態4の変形例に係るRFICに含まれるRFPGAの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1に示す無線通信システム1は、携帯電話機やデータ通信機に実装されるシステムである。無線通信システム1は、RFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)10と、ベースバンドIC(Integrated Circuit)5と、HPA(High Power Amplifier:高出力増幅器)モジュール11と、フロントエンドモジュール(FEM:Front End Module)12と、アンテナ13とを含む。
【0015】
RFIC10は、大きく分けて“GSM/EDGE”、“WCDMA”、“HSPA”、“HSPA+”、および“LTE”の5つの送受信方式の通信規格に準拠して、アンテナ13を介して基地局との間でRF(Radio-Frequency)信号の送信および受信を可能とする1チップのマルチモード用のトランシーバIC(通信用半導体集積回路)である。
【0016】
ここで、GSM(Global System for Mobile Communication)は、FDD(周波数分割複信:Frequency Division Duplex)−TDMA(時分割多元接続:Time Division Multiple Access)方式で実現されている第2世代(2G)の通信規格であり、デジタル変調方式としてGMSK方式を用いる。また、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)は、GSM方式の中のパケット通信の拡張規格である。EDGEでは、デジタル変調方式として8PSK(8位相偏移変調方式:8 Phase Shift Keying)が使用されている。
【0017】
WCDMA(Wideband Code Divided Multiple Access)は、FDD−CDMA(符号分割多元接続:Code Division Multiple Access)方式で実現されている第3世代(3G)の通信規格である。欧米ではUMTS(Universal Mobile Telecommunications Systems)として知られている。
【0018】
HSPA(High Speed Packet Access)およびHSPA+は、WCDMAにおける高速パケット通信の拡張規格であり、特に第3.5世代(3.5G)の通信規格と呼ばれている。
【0019】
LTE(Long Term Evolution)は、HSPAよりさらに高速化・広帯域化を図った携帯電話機の通信規格で第3.9世代(3.9G)の通信規格と呼ばれている。LTEでは、下りはOFDMA(直交周波数分割多元接続:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され、上りはSC−FDMA(シングルキャリア周波数分割多元接続:Single Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用される。
【0020】
RFIC10は、受信部(RX)21、送信部(TX)22、およびデジタルRFインターフェース(DigRF IF)を含む。
【0021】
受信部21は、アンテナ13で受信した基地局からの受信RF信号を、ローカルキャリア信号(局部発振信号)を使ってアナログ受信ベースバンド信号にダウンコンバートする。さらに、受信部21は、アナログ受信ベースバンド信号をAD(Analog-to-Digital)変換してデジタル受信ベースバンド信号を生成する。
【0022】
送信部22は、逆に、デジタル送信ベースバンド信号をDA(Digital-to-Analog)変換してアナログ送信ベースバンド信号を生成し、ローカルキャリア信号を使って生成したアナログ送信ベースバンド信号を送信RF信号にアップコンバートする。そして、送信部22は、アンテナ13を介して基地局に送信RF信号を無線で送信する。
【0023】
デジタルRFインターフェース20は、RFIC10とベースバンドIC5とをつなぐインターフェースであり、MIPI Alliance(MIPI:Mobile Industry Processor Interface)により策定されたインターフェース規格に従っている。
【0024】
RFIC10は、さらに、送信RF信号を出力する複数の出力端子Tx1〜Txnと、受信RF信号を入力する複数の入力端子Rx1〜Rxnとを含む。出力端子および入力端子は、(Tx1,Rx1),・・・,(Txn,Rxn)のように出力端子と入力端子とがペアをなしており、RFIC10が使用するバンド(周波数帯)に応じて、使用する出力端子と入力端子とのペアが決められている。
【0025】
ベースバンドIC5は、RFIC10から受取ったデジタル受信ベースバンド信号に対して、前述の5つの送受信方式の通信規格に対応したデジタル復調とその他の信号処理を行い、デジタル受信ベースバンド信号から受信データ(音声、画像またはその他のデータ)を生成する。また、ベースバンドIC5は、送信データ(音声、画像又はその他データ)に、前述の5つの送受信方式の通信規格に対応したデジタル変調その他の信号処理を行い、送信データからデジタル送信ベースバンド信号を生成し、RFIC10に受渡す。なお、図1には図示しないが、無線通信システム1を搭載した携帯電話機は、アプリケーションプロセッサ、メモリ、スピーカ、マイクロホン、入力キー、液晶モニタを含み、それぞれとベースバンドIC5との間で信号の受取りおよび受渡しを行なう。
【0026】
HPAモジュール11は、出力端子Tx1〜Txnにそれぞれ対応して設けられた複数のHPA(高出力増幅器:High Power Amplifier)40を含む。各HPA40は、対応する出力端子Tx1〜Txnから受取った送信RF信号を増幅する。各HPA40は、対応する出力端子Tx1〜Txnから受取った送信RF信号の周波数に応じて最適化されている半導体チップやSMD(表面実装素子:Surface Mount Device)デバイスなどで構成し、一つのパッケージとしてモジュール化されている。
【0027】
フロントエンドモジュール12は、出力端子と入力端子とのペア(Tx1,Rx1),・・・,(Txn,Rxn)のうちの1組を選択し、選択した出力端子と入力端子とのペア(Txi,Rxi)(iは、1〜nまでの自然数)と、アンテナ13とを接続する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システム1に含まれるフロントエンドモジュール12の構成を示すブロック図である。図2に示すフロントエンドモジュール12は、アンテナスイッチ(ANT−SW)15と、出力端子と入力端子とのペア(Tx1,Rx1),・・・,(Txn,Rxn)のそれぞれ対応する複数のデュプレクサ(DPX)14_1〜14_n(なお、特定のデュプレクサ14_1〜14_nを示す以外は、デュプレクサ14と記載する)とを含む。
【0029】
アンテナスイッチ15は、使用するバンドに応じて1つのデュプレクサ14を選択し、選択したデュプレクサ14_i(iは、1〜nまでの自然数)とアンテナ13とを接続する。選択したデュプレクサ14_iは、対応する出力端子Txi(iは、1〜nまでの自然数)から受取った送信RF信号をアンテナ13に受渡すと同時に、アンテナ13から受信RF信号を受取り、対応する入力端子Rxiに受渡す。このとき、デュプレクサ14は、送信RF信号が入力端子Rxiに漏れることを抑制するとともに、受信RF信号が出力端子Txiに漏れることを抑制する。フロントエンドモジュール12は、前述の構成とすることでアンテナ13と基地局との間で送受信方式をFDD方式にすることができる。フロントエンドモジュール12は、アンテナスイッチ15および複数のデュプレクサ14を1つの半導体チップで構成し、一つのパッケージとしてモジュール化されている。
【0030】
次に、RFIC10に含まれる送信部22について、さらに詳しく説明する。送信部22は、図1には図示しないが、第2世代(2G)の通信規格であるGSMおよびEDGEの送受信方式で送信RF信号を処理する回路と、第3世代(3G)以上の通信規格であるWCDMA、HSPA、HSPA+およびLTEの送受信方式で送信RF信号を処理する回路とを含む。なお、送信部22で送信RF信号を変調する処理を行なう場合、送信部22は、ポーラー変調方式やダイレクトアップ方式などの変調方式を用いる。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置であるRFIC10に含まれる送信部22の構成を示すブロック図である。図3に示す送信部22は、図1に示すベースバンドIC5で生成したデジタル送信ベースバンド信号を、デジタルRFインターフェース20を介して受取る。送信部22は、受取ったデジタル送信ベースバンド信号をダイレクトコンバージョン方式でアップコンバートして送信RF信号を生成する。
【0032】
送信部22は、700MHz〜2.6GHz帯において複数のバンドの送信RF信号を生成することが可能である。たとえば、送信部22は、2.5GHz〜2.57GHz帯をバンドH、1.92GHz〜1.98GHz帯をバンドM、および824MHz〜849MHz帯をバンドLとして、それぞれのバンドで送信RF信号を生成する。
【0033】
送信部22は、マルチプレクサ(MPX)221、デジタルプログラマブルゲインアンプ(DPGA:Digital Programmable Gain Amplifier)222、デジタル−アナログ変換器(DAC:Digital to Analog Converter)223と、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)224とを含む。
【0034】
デジタルRFインターフェース20を介してベースバンドIC5から受取ったデジタル送信ベースバンド信号(送信データ)は、シリアル転送された1ビットのデータ信号で、同相成分信号(I信号)と直交成分信号(Q信号)とを含む。1ビットのデータ信号に付随して、デジタル送信ベースバンド信号は、1ビットのデータ信号が同期する1ビットのクロック信号と、送信データの取込みを許可する1ビットのイネーブル信号とをさらに含む。
【0035】
マルチプレクサ221は、シリアル転送されたI信号およびQ信号を分離(マルチプレクス)するとともに、シリアル信号であるI信号およびQ信号を、複数のビットからなるパラレル信号に変換する。
【0036】
DPGA222は、デジタル信号に対してゲイン(利得)を可変することが可能な増幅器である。DPGA222は、パラレル信号に変換したデジタル信号のI信号を増幅し、同様に、パラレル信号に変換したデジタル信号のQ信号も増幅する。つまり、DPGA222は、パラレル信号に変換したデジタル信号のI信号およびQ信号の値にゲインを乗算した値に変換する。
【0037】
DAC223は、DPGA222で増幅したデジタル信号のI信号およびQ信号を、差動信号であるアナログ信号のI信号およびQ信号に変換する。DAC223で変換したアナログ信号のI信号およびQ信号は、ローパスフィルタ224を通過することにより遮断周波数より高い帯域の周波数が除去される。
【0038】
送信部22は、さらに、局部発振器225、分周器226、複数の直交変調器227、および複数のRFプログラマブルゲインアンプ(RFPGA:Radio Frequency Programmable Gain Amplifier)228を含む。局部発振器225、分周器226、直交変調器227およびRFPGA228は、原則的に、使用するバンドに応じて設けられるが、近接したバンドであれば、異なるバンドに対して共通に利用してもよい。
【0039】
局部発振器225は、分周器226で利用する差動信号の局部発振信号LOを生成する。
【0040】
分周器226は、局部発振器225で生成した局部発振信号LOを分周比にしたがって周波数を分周し、使用するバンド(H,M,L)ごとに周波数の異なる局部発振信号LOI,LOQを生成する。バンドHの局部発振信号は、LOI_H,LOQ_Hと、バンドMの局部発振信号は、LOI_M,LOQ_Mと、バンドLの局部発振信号は、LOI_L,LOQ_Lとそれぞれ表す。ただし、特定のバンドの局部発振信号を示す以外は、局部発振信号LOI,LOQと記載する。
【0041】
分周器226の分周比は、使用するバンドに応じて制御ロジック229により制御されており、代表的な分周器226の分周比をバンド(H,M,L)ごとに2,4,8の値とする。なお、局部発振信号LOIは、元の局部発振信号LOの立上がりエッジに同期し、局部発振信号LOQは元の局部発振信号LOの立下がりエッジに同期する。これにより、局部発振信号LOQは、局部発振信号LOIの位相に対して90度移相した信号となる。
【0042】
直交変調器227は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられ(QMOD_HB,QMOD_MB,QMOD_LB)、使用するバンド(H,M,L)に応じた局部発振信号LOI,LOQと、ローパスフィルタ224を通過したアナログ信号のI信号およびQ信号を受取る。直交変調器227は、局部発振信号LOI,LOQと、アナログ信号のI信号およびQ信号とを乗算して、アナログ信号のI信号およびQ信号を局部発振信号LOI,LOQの周波数にアップコンバートしたアナログ信号の送信RF信号を生成する。直交変調器227は、生成した送信RF信号をRFPGA228に受渡す。なお、直交変調器227は、複数設けている場合、それぞれ排他的に動作する。つまり、バンドHの直交変調器227が動作している間、バンドM,Lの直交変調器227は動作できない。
【0043】
RFPGA228は、送信増幅回路であり、直交変調器227で生成した送信RF信号を増幅する。RFPGA228送信増幅回路は、後述するように能動素子であるトランジスタを含む差動増幅器と、受動素子であるバランとを含んでいる。差動増幅器は、能動素子であるトランジスタを含むので、トランジスタ特性の歪みにより増幅した信号が非線形に歪み、入出力特性の線形性が劣化する。
【0044】
具体的に、差動増幅器をMOSトランジスタで構成した場合、出力電流io (出力信号(増幅した信号))に生じる非線形の歪みは、動作点におけるテイラー展開の3次の項までを考慮に入れて、入力電圧vi (入力信号)の関数として(式1)と表すことができる。ここで、an (n=10,1,2,3)は、3次の項までの各係数である。
【0045】
【数1】
【0046】
さらに、入力電圧vi を、vi+=−vi-=(1/2)Vm cosωtとして、(式1)に代入すると、出力電流io+は(式2)と、出力電流io-は(式3)とそれぞれ表すことができる。
【0047】
【数2】
【0048】
【数3】
【0049】
よって、差動増幅器から出力される差動出力電流io,diffは、(式4)と表すことができる。
【0050】
【数4】
【0051】
差動出力電流io,diffは、(式4)から分かるように、(式1)の奇数次の項に起因する非線形の歪みが生じた出力信号である。
【0052】
一方、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND は、出力電流io+と、出力電流io-との和となるので、(式5)と表すことができる。
【0053】
【数5】
【0054】
差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND は、(式5)から分かるように、(式1)の偶数次の項に起因する非線形の歪みが生じた出力信号である。
【0055】
RFPGA228において、差動増幅器の接地配線と、バランの接地配線とがつながっている場合、差動増幅器の接地配線に電流iGND が流れると、バランの接地配線を介してバランの出力信号に電流iGND が影響を与え、バランの出力信号およびRFPGA228の出力信号の品質が低下する。つまり、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の非線形の歪みにより、バランおよびRFPGA228における入出力特性の線形性が劣化する。
【0056】
図4は、RFPGA228の出力信号に、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND が重畳した場合の出力信号の変化を示すグラフである。図4に示すグラフでは、図中左側に、出力信号の波形aと、出力信号の波形aの約2倍の波長である差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の波形bとが図示してある。そして、出力信号の波形aに、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の波形bを重畳した波形cが、図中右側に図示してある。差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND の波形bによって、出力信号の波形aに歪みが生じ、振幅が大きくなっていることが、波形cから分かる。なお、図4では、簡略化のため、出力信号の直流成分を無視して図示してある。
【0057】
図5は、RFPGA228における入出力特性を示すグラフである。図5では、横軸を入力電圧、縦軸を出力電圧としてある。携帯電話機などの移動無線通信では、帯域外輻射電力に対する制限が厳しく、RFPGA228における入出力特性が高い線形性を有していることが求められている。
【0058】
一般に、回路の線形性を示す指標としてP1dB(1dB Compression point:1dB利得圧縮点)がある。指標P1dBは、理想的な直線状の利得特性に対して1dB利得が低下した入力電圧をIP1dB(Input P1dB)、出力電圧をOP1dB(Output P1dB)としている。
【0059】
図5に示す波形dにおける入出力特性を、RFPGA228が有している場合、RFPGA228は、入力信号の入力電圧がIP1dB以上の振幅になると、出力電圧として出力信号に出力されない入力電圧の部分を帯域外スペクトル放射として出力することになる。出力した帯域外スペクトル放射は、隣接するチャネルへ漏洩して隣接するチャネルの出力信号の干渉波となる。そのため、RFPGA228は、入力信号の入力電圧がIP1dB未満の振幅に制限して、出力信号が隣接するチャネルの出力信号の干渉波とならないように、入出力特性の線形性が高い範囲で信号を増幅する。
【0060】
しかし、図4で示したように、RFPGA228の出力信号に、差動増幅器の接地配線に流れる電流iGND が重畳すると、RFPGA228の出力信号の振幅が増大する。そのため、RFPGA228における入出力特性は、図5に示す波形dから波形eへと、非線形の歪みが大きくなる。つまり、RFPGA228における入出力特性は、指標P1dBが低下し、高い線形性を有している範囲が狭くなり、信号を増幅することができるRFPGA228の入力電圧および出力電圧の範囲は狭くなる。
【0061】
また、RFPGA228における入出力特性の線形性は、RFPGA228に流れる電流にも依存する。そのため、RFPGA228は、必要な線形性を確保するために、より多くの電流を流す必要があり、バッテリーで駆動する携帯電話機などの駆動時間を短くするという問題があった。
【0062】
そこで、本発明の実施の形態1に係るRFIC10に含まれるRFPGA228では、RFPGA228における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる構成を採用している。図6は、本発明の実施の形態1に係るRFIC10に含まれるRFPGA228の構成を示すブロック図である。RFPGA228は、差動増幅器61と、バラン62とを含む。
【0063】
差動増幅器61は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられ(DA_HB,DA_MB,DA_LB)、使用するバンド(H,M,L)に応じて直交変調器(QMOD_HB,QMOD_MB,QMOD_LB)227から受取った送信RF信号を増幅する。なお、差動増幅器61は、複数設けている場合、それぞれ排他的に動作する。つまり、バンドHの差動増幅器(DA_HB)61が動作している間、バンドM,Lの差動増幅器(DA_MB,LB)61は動作できない。
【0064】
バラン62は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられ(Ba_HB,Ba_MB,Ba_LB)、使用するバンド(H,M,L)に応じて差動増幅器61で増幅した送信RF信号を差動信号から単相信号に変換する。バラン62で変換した単相信号の送信RF信号は、使用するバンド(H,M,L)ごとに設けられた出力端子TX1〜TX3から出力される。バラン62は、平衡信号線路を差動増幅器61と接続し、非平衡信号線路の一端を接地端子VSS_TX1に、非平衡信号線路の他端を出力端子TX1〜TX3にそれぞれ接続している。また、バラン62の給電点に、電源端子VDD_TXを接続してある。
【0065】
ここで、RFPGA228を含むRFIC10は、たとえばBGA(Ball Grid Array)構造である。図7は、BGA構造であるRFIC10の構成を示す概略図である。RFIC10は、差動増幅器61、バラン62などを形成してある半導体チップ71と、半導体チップ71を実装する基材である配線基板72とを有している。
【0066】
配線基板72は、基板内部に形成してあるパターン配線73と、出力端子TX1〜TX3などを構成するバンプ電極74と、パッド電極75とを有している。半導体チップ71と、配線基板72とを電気的に接続するため、配線基板72に形成してあるパッド電極75と、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76とをボンディングワイヤ77で接続してある。
【0067】
なお、半導体チップ71およびボンディングワイヤ77などは、配線基板72の主面に被覆されたエポキシ樹脂などの封止部材78によって封止されている。
【0068】
図6に戻って、半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77で接続してある。
【0069】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドH,M,Lのバラン(Ba_H,Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1に接続してある。接地端子VSS_TX1は、RFIC10の外から接地電位を受け、ボンディングワイヤ77を介してその接続する半導体チップ71のバッド電極76に供給する。パッド電極76は接地電位を受け、接地配線を介してバラン62に供給する。
【0070】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。接地端子VSS_TX0は、RFIC10の外から接地電位を受け、2本のボンディングワイヤ77を介してその接続する半導体チップ71のバッド電極76に供給する。パッド電極76は接地電位を受け接地配線を介して差動増幅器61に供給する。
【0071】
一つの配線にまとめられた差動増幅器61の接地配線、および一つの配線にまとめられたバラン62の接地配線は、半導体チップ71上でさらに一つの配線にまとめられることなく、半導体チップ71上で分離して形成され、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0,VSS_TX1にそれぞれ接続してある。
【0072】
そのため、半導体チップ71上で、差動増幅器61の接地配線に流れる電流と、バラン62の接地配線に流れる電流とは互いに干渉することがないので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減することができ、RFPGA228における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0073】
また、差動増幅器61は、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。つまり、差動増幅器61の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数(2本)が、バラン62の一つの接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数(1本)より多い。そのため、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少し、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0074】
なお、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスを減少させている。これは、差動増幅器61は、能動素子であるトランジスタを含んでいるため、トランジスタ特性の歪みにより、差動増幅器61の接地配線に流れる電流が歪みが、バラン62の接地配線に流れる電流が歪みより大きくなるためである。
【0075】
また、前述のようにRFPGA228における入出力特性の線形性は、RFPGA228を流れる電流にも依存する。そのため、RFPGA228は、入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることで電流を減らして、バッテリーで駆動する携帯電話機などの駆動時間を長くすることができる。
【0076】
以上のように、本発明の実施の形態1に係るRFIC10は、差動増幅器61の接地配線(第1接地配線)と、バラン62の接地配線(第2接地配線)とは、半導体チップ71上に分離して形成してあるので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減して、RFIC10に含まれるRFPGA228における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0077】
また、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ(第1接続体)77の数が、バラン62の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ(第2接続体)77の数より多い。そのため、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少し、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減るため、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77の数は2本に限定されるものでは、3本以上であってもよい。ボンディングワイヤ77の数は、増えるほど、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少する。
【0078】
なお、RFIC10は、BGA構造に限らず、リードフレームのダイパッドに搭載した半導体チップを、ボンディングワイヤを介してリードフレームのインナーリードに接続する、例えばQFP(Quad Flat Package)タイプのパッケージであってもよい。また、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続する接続体、およびバラン62の接地配線と配線基板72とを接続する接続体は、ボンディングワイヤ77に限定されるものでもない。
【0079】
たとえば、RFIC10が、FCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)構造であれば、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続する接続体、およびバラン62の接地配線と配線基板72とを接続する接続体は、Auバンプや半田バンプなどである。一般的に、Auバンプや半田バンプなどに比べて、ボンディングワイヤのインピーダンスは高いので、接続体にAuバンプや半田バンプなどを用いる場合に比べて、ボンディングワイヤを用いる場合の方が、本発明の効果がより大きくなる。
【0080】
また、図6に示すように、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続する2本のボンディングワイヤ77同士の距離は、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77と、バラン62の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77との距離に比べて近い。つまり、矩形状の半導体チップ71の一辺に沿って配置されたパッド電極76のうち、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極76間の距離が、差動増幅器61の接地配線と接続するパッド電極76とバラン62の接地配線と接続するパッド電極76との距離に比べて短い。
【0081】
図8は、本発明の実施の形態1に係るRFIC10に含まれるRFPGA228のパッド電極間の距離を示す概略図である。図8に示すように、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極(接地端子VSS_TX01,VSS_TX02)76間の距離L1が、差動増幅器61の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX01)76と、バラン62の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX11)76との距離L2に比べて短い。距離L1は、一個分のパッド電極76を挟む距離で、距離L2は、五個分のパッド電極76を挟む距離である。なお、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極(接地端子VSS_TX01,VSS_TX02)76間にあるパッド電極76や、差動増幅器61の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX01)76と、バラン62の接地配線と接続するパッド電極(接地端子VSS_TX11)76との間にあるパッド電極76は、別の機能を有したパッド電極76である。また、差動増幅器61の接地配線と接続する2つのパッド電極(接地端子VSS_TX01,VSS_TX02)76間に別の機能を有したパッド電極76を挟まずに、隣接させてもよい。
【0082】
上記のような構成にすることで、差動増幅器61の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77と、バラン62の接地配線と配線基板72とを接続するボンディングワイヤ77との電磁気的結合により、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62の接地配線に流れる電流への影響を緩和することができる。
【0083】
さらに、図6に示すように、差動増幅器61の接地配線が接続する接地端子VSS_TX0と、バラン62の接地配線が接続する接地端子VSS_TX1とが異なる。そのため、接地端子VSS_TX0から流れ込む電流のバラン62の接地配線に与える影響を抑えることができ、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0084】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係るRFIC10に含まれるRFPGA228aの構成を示すブロック図である。RFPGA228aは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228aは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図6に示すRFPGA228と同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0085】
半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77でそれぞれ接続してある。
【0086】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX3に接続してある。
【0087】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0088】
一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、および使用するバンドごとのバラン(Ba_H,Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上でさらに一つの配線にまとめられることなく、半導体チップ71上で分離して形成され、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0〜VSS_TX3にそれぞれ接続してある。
【0089】
そのため、半導体チップ71上で、差動増幅器61の接地配線に流れる電流と、バラン62の接地配線に流れる電流とは互いに干渉することがないので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減することができ、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0090】
さらに、バラン62の接地配線は、使用するバンドごとに、半導体チップ71上で分離して形成され、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1〜VSS_TX3にそれぞれ接続してあるので、使用するバンドごとのバラン62の接地配線に流れる電流が互いに干渉することなく、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのをより抑えることができる。
【0091】
また、差動増幅器61は、実施の形態1と同様、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。そのため、バラン62の接地配線と配線基板72との接続に比べて、差動増幅器61の接地配線と配線基板72との接続のインピーダンスが減少し、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0092】
以上のように、本発明の実施の形態2に係るRFPGA228aは、各々のバラン62の接地配線が、半導体チップ71上に分離して形成してあり、差動増幅器61の接地配線およびバラン62の接地配線が、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、配線ごとに異なる接地端子VSS_TX1〜VSS_TX3に接続してある。そのため、各々のバラン62の接地配線流れる電流は互いに干渉することなく、RFPGA228aにおける入出力特性の線形性が劣化するのをより抑えることができる。
【0093】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係るRFIC10に含まれるRFPGA228bの構成を示すブロック図である。RFPGA228bは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228bは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図6に示すRFPGA228と同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77でそれぞれ接続してある。
【0095】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX1に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX2に接続してある。
【0096】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0097】
一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線、およびバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上でさらに一つの配線にまとめられることなく、半導体チップ71上で分離して形成され、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0〜VSS_TX2にそれぞれ接続してある。
【0098】
そのため、半導体チップ71上で、差動増幅器61の接地配線に流れる電流と、バラン62の接地配線に流れる電流とは互いに干渉することがないので、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みによる、バラン62における入出力特性への影響を軽減することができ、RFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0099】
さらに、ボンディングワイヤ77のインピーダンス、およびボンディングワイヤ77間の磁気的な結合によるRFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのは、周波数に依存している。そのため、高周波の送信RF信号を取扱うバンドHのバラン(Ba_H)62の方が、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62に比べて、ボンディングワイヤ77のインピーダンスが高くなり、線形性の劣化が大きくなる。
【0100】
そこで、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線と、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線とは、半導体チップ71上に分離して形成して、それぞれ異なるボンディングワイヤ77に接続してある。そのため、バンドHのバラン(Ba_H)62におけるボンディングワイヤ77のインピーダンスを、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62におけるボンディングワイヤ77のインピーダンスに比べて、低くして、RFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑える。なお、バンドHの周波数帯を、たとえば2GHz帯以上とし、バンドM,Lの周波数帯を、たとえば2GHz帯未満とする。
【0101】
また、差動増幅器61は、実施の形態1と同様、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。そのため、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0102】
以上のように、本発明の実施の形態3に係るRFIC10は、高周波の信号を増幅する差動増幅器61に接続してあるバンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線と、他の周波の信号を増幅する差動増幅器61に接続してあるバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線とは、半導体チップ71上に分離して形成してある。そのため、
バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線と、バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線とは、それぞれ異なるボンディングワイヤ77に接続することができるので、バンドHのバラン(Ba_H)62におけるボンディングワイヤ77のインピーダンスを低くして、RFPGA228bにおける入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0103】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4に係るRFIC10に含まれるRFPGA228cの構成を示すブロック図である。RFPGA228cは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228cは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図6に示すRFPGA228と同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0104】
半導体チップ71に形成してあるバラン62の出力配線と、配線基板72に形成してある出力端子TX1〜TX3とをそれぞれ電気的に接続するために、半導体チップ71に形成してあるパッド電極76と、配線基板72に形成してあるパッド電極75とをボンディングワイヤ77でそれぞれ接続してある。
【0105】
具体的に、バンドHのバラン(Ba_H)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX1に接続してある。バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線は、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。バンドMのバラン(Ba_M)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX2に接続してある。バンドLのバラン(Ba_L)62の出力配線は、ボンディングワイヤ77を介して、出力端子TX3に接続してある。バンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0106】
差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の電源配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、電源端子VDD_TXに接続してある。差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線は、半導体チップ71上で一つの配線にまとめられ、ボンディングワイヤ77を介して、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0107】
RFPGA228cの半導体チップ71上での配線は、図10に示すRFPGA228bの半導体チップ71上での配線と同じであるが、RFPGA228cの配線基板72上での配線は、図10に示すRFPGA228bの配線基板72上での配線と異なる。
【0108】
具体的に、一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線、およびバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して配線基板72に接続され、配線基板72上で一つの配線にまとめられ、接地端子VSS_TX0に接続してある。
【0109】
そのため、RFPGA228cは、差動増幅器61の接地配線と接続する接地端子と、バラン62の接地配線と接続する接地端子とを別々に設ける場合に比べて、端子の数を減らすことができる。
【0110】
また、差動増幅器61は、実施の形態1と同様、2本のボンディングワイヤ77を介して、電源配線を電源端子VDD_TXに、接地配線を接地端子VSS_TX0にそれぞれ接続してある。そのため、差動増幅器61の接地配線に流れる電流の歪みが減り、差動増幅器61自体における入出力特性の線形性が劣化するのを抑えることができる。
【0111】
以上のように、本発明の実施の形態4に係るRFIC10は、差動増幅器61の接地配線およびバラン62の接地配線は、それぞれ異なるボンディングワイヤ77を介して一つの接地端子VSS_TX0に接続してあるので、差動増幅器61の接地配線と接続する接地端子と、バラン62の接地配線と接続する接地端子とを別々に設ける場合に比べて、端子の数を減らすことができる。この一つの接地端子VSS_TX0に複数の接地配線が接続される配線基板72の構造は、図6又は図9に示す半導体チップ71の実装基板としてにも適用されてもよい。
【0112】
なお、図12は、本発明の実施の形態4の変形例に係るRFIC10に含まれるRFPGA228dの構成を示すブロック図である。RFPGA228dは、差動増幅器61と、バラン62とを含む。なお、RFPGA228dは、差動増幅器61およびバラン62と端子とをつなぐ配線の構成が異なる以外、図11に示すRFPGA228cと同じ構成であるので、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図12に示す一つの配線にまとめられた差動増幅器(DA_HB,DA_MB,DA_LB)61の接地配線、バンドHのバラン(Ba_H)62の接地配線、およびバンドM,Lのバラン(Ba_M,Ba_L)62の接地配線は、配線基板72上で一つの配線にまとめられ、複数の接地端子VSS_TXに接続してある。この配線基板の構造は、図12に示す半導体チップ71に限られず、図6又は図9に示す半導体チップ71の実装基板として適用してもよい。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
1 無線通信システム、5 ベースバンドIC、11 HPAモジュール、12 フロントエンドモジュール、13 アンテナ、14 デュプレクサ、15 アンテナスイッチ、20 デジタルRFインターフェース、21 受信部、22 送信部、61 差動増幅器、62 バラン、71 半導体チップ、72 配線基板、73 パターン配線、74 バンプ電極、75,76 パッド電極、77 ボンディングワイヤ、78 封止部材、221 マルチプレクサ、224 ローパスフィルタ、225 局部発振器、226 分周器、227 直交変調器、229 制御ロジック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、
前記半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの増幅器と、
平衡信号線路を前記増幅器と接続し、前記半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの平衡不平衡変換器と
を備え、
前記増幅器の第1接地配線と、前記平衡不平衡変換器の第2接地配線とは、前記半導体チップ上に分離して形成してあり、
一つの前記第1接地配線と前記基材とを接続する第1接続体の数が、一つの前記第2接地配線と前記基材とを接続する第2接続体の数より多い、半導体装置。
【請求項2】
前記第1接続体同士の距離は、前記第1接続体と前記第2接続体との距離に比べて近い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、
前記半導体チップ上に形成してある複数の増幅器と、
複数の平衡信号線路をそれぞれ前記複数の増幅器と接続し、前記半導体チップ上に形成してある複数の平衡不平衡変換器と
を備え、
前記複数の増幅器は、第1および第2の増幅器を有し、
前記増幅器の第1接地配線と、前記第1の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器の第2接地配線と、前記第2の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器の第3接地配線とは、前記半導体チップ上に分離して形成してあり、前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線はそれぞれ第1接続体、第2接続体、および第3接続体により前記基材と接続する半導体装置。
【請求項4】
前記第1および前記第2の増幅器は、互いに異なる周波数の信号を増幅する請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数の増幅器は、さらに第3の増幅器を有し、
前記第1の増幅器の増幅する信号の周波数は、前記第2および前記第3の増幅器の増幅する信号のそれぞれ周波数よりも高く、
前記第3の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器は、前記第3接地配線に接続してある、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の増幅器は、さらに第3の増幅器を有し、
前記第3の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器の第4接地配線と、前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線とは、それぞれ前記半導体チップ上に分離して形成してある、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1接地配線および前記第2接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体および前記第2接続体を介して、配線ごとに異なる前記端子に接続してある、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1接地配線および前記第2接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体および前記第2接続体を介して少なくとも一つの前記端子に接続してある、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1接続体および前記第2接続体は、ボンディングワイヤである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体、前記第2接続体、および前記第3接続体を介して、配線ごとに異なる前記端子に接続してある、請求項3〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体、前記第2接続体、および前記第3接続体を介して少なくとも一つの前記端子に接続してある、請求項3〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1接続体、前記第2接続体、および前記第3接続体は、ボンディングワイヤである、請求項3〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項1】
外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、
前記半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの増幅器と、
平衡信号線路を前記増幅器と接続し、前記半導体チップ上に形成してある、少なくとも一つの平衡不平衡変換器と
を備え、
前記増幅器の第1接地配線と、前記平衡不平衡変換器の第2接地配線とは、前記半導体チップ上に分離して形成してあり、
一つの前記第1接地配線と前記基材とを接続する第1接続体の数が、一つの前記第2接地配線と前記基材とを接続する第2接続体の数より多い、半導体装置。
【請求項2】
前記第1接続体同士の距離は、前記第1接続体と前記第2接続体との距離に比べて近い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
外部と接続する複数の端子を有する基材に、半導体チップを実装してパッケージングしてある半導体装置であって、
前記半導体チップ上に形成してある複数の増幅器と、
複数の平衡信号線路をそれぞれ前記複数の増幅器と接続し、前記半導体チップ上に形成してある複数の平衡不平衡変換器と
を備え、
前記複数の増幅器は、第1および第2の増幅器を有し、
前記増幅器の第1接地配線と、前記第1の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器の第2接地配線と、前記第2の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器の第3接地配線とは、前記半導体チップ上に分離して形成してあり、前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線はそれぞれ第1接続体、第2接続体、および第3接続体により前記基材と接続する半導体装置。
【請求項4】
前記第1および前記第2の増幅器は、互いに異なる周波数の信号を増幅する請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数の増幅器は、さらに第3の増幅器を有し、
前記第1の増幅器の増幅する信号の周波数は、前記第2および前記第3の増幅器の増幅する信号のそれぞれ周波数よりも高く、
前記第3の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器は、前記第3接地配線に接続してある、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の増幅器は、さらに第3の増幅器を有し、
前記第3の増幅器に接続してある前記平衡不平衡変換器の第4接地配線と、前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線とは、それぞれ前記半導体チップ上に分離して形成してある、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1接地配線および前記第2接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体および前記第2接続体を介して、配線ごとに異なる前記端子に接続してある、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1接地配線および前記第2接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体および前記第2接続体を介して少なくとも一つの前記端子に接続してある、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1接続体および前記第2接続体は、ボンディングワイヤである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体、前記第2接続体、および前記第3接続体を介して、配線ごとに異なる前記端子に接続してある、請求項3〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1接地配線、前記第2接地配線、および前記第3接地配線は、それぞれ異なる前記第1接続体、前記第2接続体、および前記第3接続体を介して少なくとも一つの前記端子に接続してある、請求項3〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1接続体、前記第2接続体、および前記第3接続体は、ボンディングワイヤである、請求項3〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−213090(P2012−213090A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78308(P2011−78308)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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