説明

半導体装置

【課題】半導体チップが基板にフリップチップ実装されて構成された半導体装置において、搭載された素子の特性の変動量を均一にすることが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】上面31と、底面の中央部である第1の底面32と、底面の外周端部である第2の底面33とを有する半導体チップ3と、第1の底面32に形成された外部接続電極4とを備え、上面31から第2の底面33までの距離は、上面31から第1の底面32までの距離よりも短く、上面31から半導体チップ3の外周の一辺の中央における第2の底面33までの距離は、上面31から半導体チップ3の外周の一辺の端における第2の底面33までの距離よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に半導体チップをフリップチップ接続して構成される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板の高密度化、及び半導体回路素子の高集積化による半導体チップの多ピン化、及び実装間隔の狭ピッチ化に伴い、半導体チップを直接フェイスダウンで接続するフリップチップ実装が注目されている。
【0003】
フリップチップ実装により形成される従来の半導体装置(フリップチップ接続型の半導体装置)としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−182155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下、図11によりフリップチップ接続型の半導体装置について説明する。図11は、フリップチップ接続型の半導体装置の断面図である。
【0006】
このフリップチップ接続型の半導体装置101では、基板102とフリップチップ接続用の半導体チップ103とが半田などの金属バンプ104を介して接続される。半導体チップ103は、特定の一つの平面上に配された複数の電極パッドと、該複数の電極パッドの夫々に設けられた接続用の金属バンプ104とを備えている。
【0007】
この半導体装置の製造方法では、まず半導体チップ103の電極パッドに半田からなる接続用の金属バンプ104が接着され、少なくとも1つの半導体チップ103の電極パッド上に形成された接続用の金属バンプ104と基板102の特定の一つの平面上に形成されたランドとが電気的に接合される。さらに、基板102と半導体チップ103との間には、熱ストレス及び機械的ストレスなどを緩和するため、アンダーフィル105と呼ばれる樹脂が充填され、熱処理などで、樹脂の硬化処理がなされる。
【0008】
特許文献1の半導体装置では、半導体チップが実装される基板に切り欠き部が設けられている。この半導体装置における切り欠き部は、アンダーフィルの充填が容易にできるよう、また、充填したアンダーフィルの半導体チップ上面へのせり上がりを防止するために設けられる。
【0009】
ところで、従来のフリップチップ接続型の半導体装置においては、基板に半導体チップを実装する際、アンダーフィルを充填し、アンダーフィルの硬化処理を行うと、アンダーフィルが収縮し、基板と半導体チップとの間で引っ張り応力が発生する。この応力は一般に、半導体チップの外周端部(コーナー部)で最も大きく、半導体チップの中心部で小さくなる。図12に半導体装置における応力の分布の模式図を示す。この応力により、半導体チップに形成(搭載)された素子の特性が変動する。このような特性の変動量は、半導体チップの場所によって異なる。その結果、半導体チップにおいて素子の特性の変動量が異なり、特性の変動量の分布が不均一になる。このような変動量の分布は、回路設計においては、必要以上に設計マージンを取る必要が発生するため、回路規模の増大及び設計期間の増大、さらには、半導体装置の品質の低下などを招くこととなる。
【0010】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、半導体チップが基板にフリップチップ実装されて構成された半導体装置において搭載された素子の特性の変動量を均一にすることが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る半導体装置は、上面と、底面の中央部である第1の底面と、底面の外周端部である第2の底面とを有する半導体チップと、前記第1の底面に形成された外部接続電極とを備え、前記上面から前記第2の底面までの距離は、前記上面から前記第1の底面までの距離よりも短く、前記上面から前記半導体チップの外周の一辺の中央における前記第2の底面までの距離は、前記上面から前記半導体チップの外周の一辺の端における前記第2の底面までの距離よりも短いことを特徴とする。
【0012】
このように半導体チップの外周端部に、高さの異なる段差部を設けることにより、実装基板と半導体チップとの間に充填するアンダーフィルの量を制御してアンダーフィルの硬化後の収縮応力を制御し、半導体チップにかかる応力を均一にすることができる。従って、半導体チップが実装基板にフリップチップ実装されて構成された半導体装置において、搭載された素子のアンダーフィル注入後の収縮応力による特性の変動量を均一にすることができる。その結果、低コストで信頼性の高い半導体装置を実現できる。
【0013】
ここで、前記半導体チップは、前記第1の底面と前記第2の底面とをつなぐ第1の側面と、前記第2の底面と前記上面とをつなぐ第2の側面とを有してもよい。
【0014】
また、前記第2の側面から前記半導体チップの外周の一辺の中央における前記第1の側面までの距離は、前記第2の側面から前記半導体チップの外周の一辺の端における前記第1の側面までの距離よりも長くてもよい。
【0015】
このようにすると、半導体チップを基板に実装する際、半導体チップの外周の一辺の中央により多くのアンダーフィルが充填されることとなり、半導体チップの外周の一辺の端に発生する応力を緩和することができる。
【0016】
また、前記第2の側面から前記第1の側面における前記上面に近い領域までの距離は、前記第2の側面から前記第1の側面における前記第1の底面に近い領域までの距離よりも長くもよい。
【0017】
このようにすると、第1の底面と第2の底面との接続部に鋭角の切り欠け部を形成できるので、半導体チップを基板に実装する際、切り欠け部に、より多くのアンダーフィルが充填されることとなり、半導体チップの外周端部に発生する応力を緩和することができる。
【0018】
また、前記半導体チップの外周の一辺を側方からみたとき、前記第2の底面は前記半導体チップの外周の一辺の端から中央に向かう直線状の斜面を形成していてもよい。
【0019】
また、前記半導体チップの外周の一辺を側方からみたとき、前記第2の底面は前記半導体チップの外周の一辺の端から中央に向かう曲線状の斜面を形成していてもよい。
【0020】
また、前記半導体チップは、底面の外周端部である第3の底面を有し、前記上面から前記第3の底面までの距離は、前記上面から前記第2の底面までの距離よりも短く、前記第3の底面は、前記半導体チップの外周の一辺の中央に形成されていてもよい。
【0021】
また、前記半導体装置は、さらに、前記半導体チップと前記外部接続電極によって電気的に接続された実装基板を備えてもよい。
【0022】
また、前記実装基板の前記半導体チップが形成された上面には、前記半導体チップを取り囲むように、枠状の溝部が形成されていてもよい。
【0023】
このようにすると、アンダーフィルが実装基板外部に溢れることを防ぐことができる。また、溝部は半導体チップを取り囲むように形成されているので、半導体チップに発生する応力を緩和させることができる。
【0024】
また、前記半導体チップの外周の一辺の中央の下方に位置する前記溝部の深さは、前記半導体チップの外周の一辺の端の下方に位置する前記溝部の深さより深くても良い。
【0025】
また、前記溝部は、前記半導体チップの外周端部の下方に形成されていてもよい。
このようにすると、半導体チップの外周端部に発生する応力を緩和することができる。このように、半導体チップに設けた段差部と実装基板に設けた溝部との組み合わせにより、実装基板と半導体チップとの間に充填するアンダーフィルの量を制御し、結果としてアンダーフィルの硬化後の収縮応力を制御して半導体チップにかかる応力を均一にすることができる。これにより半導体チップに搭載されている素子(デバイス)の特性変動量の分布を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様により、簡単な構成で半導体チップの応力の分布を制御し半導体チップの素子の特性変動量の分布を均一にすることができるので、信頼性の高い半導体装置を得る事ができる。さらには、アンダーフィルの充填がしやすいという効果をもつ半導体装置を得る事ができる。その結果、フリップチップ実装により形成される半導体装置の高品質化及び高精度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す上面図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す断面図(図1AのA−A'での断面図)である。
【図1C】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す側面図である。
【図2】半導体装置における応力の分布を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例1に係る半導体装置の構成の概略を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例2に係る半導体装置の構成の概略を示す側面図である。
【図5A】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す上面図である。
【図5B】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す断面図(図5AのB−B'での断面図)である。
【図5C】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す側面図である。
【図6A】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す上面図である。
【図6B】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す断面図(図6AのC−C'での断面図)である。
【図6C】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す側面図である。
【図7A】本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す上面図である。
【図7B】本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す断面図(図7AのD−D'での断面図)である。
【図7C】本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の構成の概略を示す断面図(図7AのE−E'での断面図)である。
【図8】本発明の第4の実施形態の変形例3に係る半導体装置の構成の概略を示す上面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態の変形例4に係る半導体装置の構成の概略を示す断面図(図7AのE−E'での断面図)である。
【図10】本発明の第4の実施形態の変形例5に係る半導体装置の構成の概略を示す断面図(図7AのE−E'での断面図)である。
【図11】フリップチップ接続型の半導体装置の構成の概略を示す断面図である。
【図12】半導体装置における応力の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の半導体装置を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
まず、図1A〜図1C及び図2を用いて本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について説明する。
【0030】
図1Aは、本実施形態に係る半導体装置1の構成の概略を示す上面図である。図1Bは、同半導体装置1の構成の概略を示す断面図(図1AのA−A’断面図)である。図1Cは、同半導体装置1の構成の概略を示す側面図である。
【0031】
この半導体装置1は、フリップチップ接続型の半導体装置であって、基板(実装基板)2、半導体チップ3、外部接続電極4及びアンダーフィル5を備える。
【0032】
半導体チップ3は、上面31と、上面31に対向する半導体チップ3の中央部の底面(底面の中央部)である第1の底面32とを有し、第1の底面32に外部接続電極4が形成されている。半導体チップ3の上面31の形状は、矩形形状である。外部接続電極4は、第1の底面32上に設けられた複数の電極パッド(図外)のそれぞれに対応して設けられ、対応する電極パッドの上に形成されている。外部接続電極4としては、例えば半田バンプなどの金属バンプが挙げられる。基板2とこれにフリップチップ接続される半導体チップ3とは、外部接続電極4を介して電気的に接続されている。
【0033】
アンダーフィル5は、熱処理などで硬化処理された樹脂より構成され、基板2と半導体チップ3との間に設けられ、熱ストレス及び機械的ストレスなどを緩和する。
【0034】
半導体チップ3は、外周端部において段差部6を有し、上面31に対向する半導体チップ3の外周端部の底面(底面の外周端部)である第2の底面33と、第1の底面32と第2の底面33とをつなぐ第1の側面34と、第2の底面33と上面31とをつなぐ第2の側面35とを有する。第2の側面35は第1の側面34よりも外側に形成され、第2の底面33は第1の底面32よりも外側に形成されている。第1の側面34と第2の側面35との距離は、半導体チップ3の外周の一辺で一定である。
【0035】
ここで、図1Bに示すように、上面31から第2の底面33までの距離Aは、上面31から第1の底面32までの距離Bよりも短くなっている。また、図1Cに示すように、半導体チップ3の外周の一辺を側方からみたとき、段差部6の第2の底面33は半導体チップ3の外周の一辺の端から中央に向かう直線状の斜面を形成しており、上面31から半導体チップ3の外周の一辺の中央における第2の底面33までの距離Cは、上面31から半導体チップ3の外周の一辺の端における第2の底面33までの距離Dよりも短くなっている。言い換えれば、半導体チップ3において、上面は一様に平坦であるが、底面については外周端部に段差部(段差形状)6が形成されている。そして、この段差部6は半導体チップ3の対向する側面間の中間地点において、側面付近よりも、その厚み(上面31と第2の底面33との間の距離)が薄くなっている。つまり、段差部6の幅(第2の側面35と第1の側面34との間の距離)は一定であるものの、段差部6の段差(第1の底面32と第2の底面33との間の距離)は、半導体チップ3の外周の一辺の中心(中間)付近で高く、半導体チップ3の外周の一辺の端付近で低くなっている。言い換えると、段差部6の厚みは、半導体チップ3の外周の一辺の中心付近で薄く、半導体チップ3の外周の一辺の端付近で厚くなっている。
【0036】
この段差部6は、例えば、チップ分離のためのレーザーグルービングにおいてレーザーのパワーを調節することにより形成することができる。具体的には、ウエハ状態から個々の半導体チップ3に切り出す際に、ウエハ状態で、半導体チップ3同士の間に存在するスクライブラインの両側にレーザーにより溝が形成される。このとき、半導体チップ3の外周の各辺の中心に対し、レーザーのフォーカス位置を深くすることにより、溝の深さが調節される。この溝を除くスクライブラインの中心部をブレードにより切断することで、段差部6のある半導体チップ3を得ることができる。
【0037】
このように段差部6の形成された半導体チップ3は、外部接続電極4を介して、基板2にフリップチップ接続され、半導体チップ3と基板2との間にはアンダーフィル5が充填される。
【0038】
本実施形態の半導体装置1では、アンダーフィル5の硬化処理において基板2と半導体チップ3との間で引っ張り応力が発生し、この応力は図2の曲線Eに示すように半導体チップ3の中央部付近で大きく外周端部付近で小さく、半導体チップ3で異なる分布特性を持つ。しかし、半導体チップ3の外周端部、すなわち第2の底面33を有する領域においては、半導体チップ3の対向する側面同士の中間地点で、段差部6の厚みが薄いので、段差部6と基板2との間のアンダーフィル5の体積は大きくなる。これとは逆に、半導体チップ3の側面付近においては、段差部6の厚みが厚いので、段差部6と基板2との間のアンダーフィル5の体積は小さくなる。一般的に樹脂の体積が大きいほど収縮応力は大きくなる。従って、段差部6の厚さを実際に使用するアンダーフィル5の応力分布特性にあわせて調整することにより、図2の曲線Fに示すように応力分布特性を緩和し、さらには均一にすることが可能である。応力分布特性を均一に出来れば、応力を起因とする半導体チップ3の素子の特性変動量の分布も緩和することができる。
【0039】
(変形例1)
次に、図3を用いて本実施形態の変形例1に係る半導体装置1について説明する。
【0040】
図3は、本変形例に係る半導体装置1の構成の概略を示す側面図である。
この半導体装置1は、半導体チップ3の外周の一辺を側方からみたとき段差部6の第2の底面33が半導体チップ3の外周の一辺の端から中央に向かう曲線状の斜面を形成しており、半導体チップ3の一辺で段差部6の段差(厚み)が段階的でなく連続的に変化している点で本実施形態に係る半導体装置1と異なる。
【0041】
この段差部6の側面形状は、ブレードダイシングにおけるブレードの切り込み深さを変化させることにより形成される。
【0042】
(変形例2)
次に、図4を用いて本実施形態の変形例2に係る半導体装置1について説明する。
【0043】
図4は、本変形例に係る半導体装置1の構成の概略を示す側面図である。
この半導体装置1は、半導体チップ3を側方からみたとき段差部6の第2の底面33の中央に上面31と対向する第3の底面36が形成されており、半導体チップ3の外周の一辺で段差部6の段差が段階的に変化している点で本実施形態に係る半導体装置1と異なる。
【0044】
半導体チップ3は、上面31と対向する半導体チップ3の外周端部の底面(底面の外周端部)である第3の底面36を有する。上面31から第3の底面36までの距離は、上面31から第2の底面33までの距離よりも短く、第3の底面36は、半導体チップ3の外周の一辺の中央に形成されている。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、図5A〜図5Cを用いて本発明の第2の実施形態に係る半導体装置について説明する。
【0046】
図5Aは、本実施形態に係る半導体装置1の構成の概略を示す上面図である。図5Bは、同半導体装置1の構成の概略を示す断面図(図5AのB−B’断面図)である。図5Cは、同半導体装置1の構成の概略を示す側面図である。
【0047】
この半導体装置1は、段差部6の段差(厚み)だけでなく、段差部6の幅も半導体チップ3の側面間の中間地点と側面付近とで異なるという点で第1の実施形態の半導体装置1と異なる。この半導体装置1は、フリップチップ接続型の半導体装置であって、基板(実装基板)2、半導体チップ3、外部接続電極4及びアンダーフィル5を備える。
【0048】
半導体チップ3は、上面31と、第1の底面32と、第2の底面33と、第1の側面34と、第2の側面35とを有している。
【0049】
ここで、第2の側面35から半導体チップ3の外周の一辺の中央における第1の側面34までの距離Gは、第2の側面35から半導体チップ3の外周の一辺の端における第1の側面34までの距離Jよりも長くなっている。言い換えれば、段差部6では、半導体チップ3の外周の一辺の中央付近で最も幅が広く、端で最も幅が薄くなっている。この段差部6の幅の変化は、例えば、上述の第1の実施形態で述べた段差部6の段差の形成方法と同様にレーザーグルービングにおいて半導体チップ3の外周の一辺の中心に対し、径が広いレーザービームを照射することにより形成される。
【0050】
このように段差部6の形成された半導体チップ3は、外部接続電極4を介して、基板2にフリップチップ接続され、半導体チップ3と基板2との間にアンダーフィル5が充填される。
【0051】
本実施形態の半導体装置1では、アンダーフィル5の硬化処理において応力分布特性が形成される。しかし、半導体チップ3の外周の一辺の中央付近では、段差部6の厚みが薄く幅が広いので、段差部6と基板2との間のアンダーフィル5の体積は大きい。これとは逆に、半導体チップ3の外周の一辺の端付近では、段差部6の厚みが厚く幅が狭いので、段差部6と基板2との間のアンダーフィル5の体積は小さい。一般的に樹脂の体積が大きいほど収縮応力は大きくなる。従って、段差部6の幅を実際に使用するアンダーフィル5の応力分布特性にあわせて調整することにより、応力分布特性を緩和し、さらには均一にすることが可能である。応力分布特性を均一に出来れば、応力を起因とする半導体チップ3の素子の特性変動量の分布も緩和することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、図6A〜図6Cを用いて本発明の第3の実施形態に係る半導体装置について説明する。
【0053】
図6Aは、本実施形態に係る半導体装置1の構成の概略を示す上面図である。図6Bは、同半導体装置1の構成の概略を示す断面図(図6AのC−C’断面図)である。図6Cは、同半導体装置1の構成の概略を示す側面図である。
【0054】
この半導体装置1は、半導体チップ3の第1の側面34に切り欠き部が形成されているという点で第1の実施形態の半導体装置1と異なる。この半導体装置1は、フリップチップ接続型の半導体装置であって、基板(実装基板)2、半導体チップ3、外部接続電極4及びアンダーフィル5を備える。
【0055】
半導体チップ3は、上面31と、第1の底面32と、第2の底面33と、第1の側面34と、第2の側面35とを有している。
【0056】
ここで、半導体チップ3の第2の側面35から第1の側面34における上面31に近い領域までの距離Hは、半導体チップ3の第2の側面35から第1の側面34における第1の底面32に近い領域までの距離Iよりも長くなっている。言い換えれば、半導体チップ3の第1の底面32と第2の底面33との接続部としての第1の側面34に鋭角の切り欠け部が形成されている。
【0057】
本実施形態の半導体装置1では、半導体チップ3の第1の側面34に切り欠き部が形成されているので、基板2への半導体チップ3の実装の際、切り欠け部に、より多くのアンダーフィル5が充填されることとなり、半導体チップ3の外周端部に発生する応力を緩和することができる。
【0058】
(第4の実施形態)
次に、図7A〜図7Cを用いて本発明の第4の実施形態に係る半導体装置について説明する。
【0059】
図7Aは、本実施形態に係る半導体装置1の構成の概略を示す上面図である。図7Bは、同半導体装置1の構成の概略を示す断面図(図7AのD−D’断面図)である。図7Cは、同半導体装置1の構成の概略を示す断面図(図7AのE−E’断面図)である。
【0060】
この半導体装置1は、半導体チップ3に段差部6が設けられるとともに、基板2に溝部7が設けられている点で第1の実施形態の半導体装置1と異なる。この半導体装置1は、フリップチップ接続型の半導体装置であって、基板(実装基板)2、半導体チップ3、外部接続電極4及びアンダーフィル5を備える。
【0061】
半導体チップ3は、上面31と、第1の底面32と、第2の底面33と、第1の側面34と、第2の側面35とを有している。基板2の半導体チップ3が搭載(形成)された上面の外周部には、半導体チップ3を取り囲むように、矩形の枠状の溝部7が形成されている。溝部7の矩形の各辺は対応する半導体チップ3(基板2)の各辺に沿って形成され、溝部7の半導体チップ3を取り囲む一辺の中央における深さは、溝部7の半導体チップ3を取り囲む一辺の端における深さより深い。溝部7は、半導体チップ3の外周端部の下方に形成されている。従って、半導体チップ3の外周の一辺の中央の下方に位置する溝部7の深さは、半導体チップ3の外周の一辺の端の下方に位置する溝部7の深さより深い。
【0062】
ここで、半導体装置1を上方からみたとき、溝部7は半導体チップ3の外側にも位置し、半導体チップ3の周囲を取り囲んでいる。これにより、半導体チップ3に発生する応力を緩和させることができる。
【0063】
また、半導体装置1を上方からみたとき、溝部7は半導体チップ3の表面と一部重なるように形成されている。これにより、アンダーフィル5が基板2外部に溢れることを抑えることができる。
【0064】
本実施形態の半導体装置1では、溝部7は半導体チップ3の外周の一辺の中央付近の下方で最も深く、半導体チップ3の外周の一辺の端付近の下方で最も浅い。これにより、第1の実施形態で説明したように、半導体チップ3の外周の一辺の中央付近で段差部6と基板2との間のアンダーフィル5の体積は大きく、半導体チップ3の外周の一辺の端付近で段差部6と基板2との間のアンダーフィル5の体積は小さくなる。結果として、応力分布特性を緩和し、さらには均一にすることが可能である。応力分布特性を均一に出来れば、応力を起因とする半導体チップ3の素子の特性変動量の分布も緩和することができる。
【0065】
(変形例3)
次に、図8を用いて本実施形態の変形例3に係る半導体装置1について説明する。
【0066】
図8は、本変形例に係る半導体装置1の構成の概略を示す上面図である。
この半導体装置1は、溝部7の深さだけでなく溝部7の幅も変化し、溝部7が基板2の一辺(半導体チップ3の一辺)の中央部分で幅が最も広くなっており、一辺の端部で最も幅が狭くなっている点で本実施形態に係る半導体装置1と異なる。
【0067】
溝部7の半導体チップ3を取り囲む一辺の中央における開口の幅Kは、溝部7の半導体チップ3を取り囲む一辺の端における開口の幅Lより深い。つまり、半導体チップ3の外周の一辺の中央の下方に位置する溝部7の開口の幅Kは、半導体チップ3の外周の一辺の端の下方に位置する溝部7の開口の幅Lより深い。
【0068】
(変形例4)
次に、図9を用いて本実施形態の変形例4に係る半導体装置1について説明する。
【0069】
図9は、本変形例に係る半導体装置1の構成の概略を示す断面図(図7AのE−E'断面図)である。
【0070】
この半導体装置1は、溝部7の深さが連続的に変化し、溝部7の底面が断面形状(基板2の上面に垂直な断面形状)において曲線状に変化している点で本実施形態に係る半導体装置1と異なる。なお、図8の半導体装置と同様に、溝部7の幅が変化していてもよい。
【0071】
溝部7の深さは、半導体チップ3を取り囲む一辺の端から中央に向けて連続的に深くなっている。
【0072】
(変形例5)
次に、図10を用いて本実施形態の変形例5に係る半導体装置1について説明する。
【0073】
図10は、本変形例に係る半導体装置1の構成の概略を示す断面図(図7AのE−E'断面図)である。
【0074】
この半導体装置1は、溝部7の深さが段階的に変化し、溝部7の底面が断面形状(基板2の上面に垂直な断面形状)において階段状に変化している点で本実施形態に係る半導体装置1と異なる。なお、図8の半導体装置と同様に、溝部7の幅が変化していてもよい。
【0075】
溝部7の深さは、半導体チップ3を取り囲む一辺の端から中央に向けて段階的に深くなっている。
【0076】
以上、本発明の半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、複数の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0077】
例えば、上記実施形態では、基板2に1個の半導体チップ3がフリップチップ実装されるとしたが、複数個の半導体チップ3がフリップチップ実装される場合でも同様の効果が期待できる。
【0078】
また、上記実施形態に示した半導体チップ3の段差部6の形状、厚さ及び幅は自由に組み合わせ可能である。また、基板2の溝部7の形状、深さ及び幅も自由に組み合わせ可能である。組み合わせを変えることにより、容易に半導体チップ3の素子の特性変動量の分布を緩和することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、半導体装置に有用であり、特にフリップチップ実装により形成される半導体装置等に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1、101 半導体装置
2、102 基板
3、103 半導体チップ
4 外部接続電極
5、105 アンダーフィル
6 段差部
7 溝部
31 上面
32 第1の底面
33 第2の底面
34 第1の側面
35 第2の側面
36 第3の底面
104 金属バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、底面の中央部である第1の底面と、底面の外周端部である第2の底面とを有する半導体チップと、
前記第1の底面に形成された外部接続電極とを備え、
前記上面から前記第2の底面までの距離は、前記上面から前記第1の底面までの距離よりも短く、
前記上面から前記半導体チップの外周の一辺の中央における前記第2の底面までの距離は、前記上面から前記半導体チップの外周の一辺の端における前記第2の底面までの距離よりも短い
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップの外周の一辺を側方からみたとき、前記第2の底面は前記半導体チップの外周の一辺の端から中央に向かう直線状の斜面を形成している
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップの外周の一辺を側方からみたとき、前記第2の底面は前記半導体チップの外周の一辺の端から中央に向かう曲線状の斜面を形成している
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップは、前記第1の底面と前記第2の底面とをつなぐ第1の側面と、前記第2の底面と前記上面とをつなぐ第2の側面とを有する
請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の側面から前記半導体チップの外周の一辺の中央における前記第1の側面までの距離は、前記第2の側面から前記半導体チップの外周の一辺の端における前記第1の側面までの距離よりも長い
請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の側面から前記第1の側面における前記上面に近い領域までの距離は、前記第2の側面から前記第1の側面における前記第1の底面に近い領域までの距離よりも長い
請求項4記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップは、底面の外周端部である第3の底面を有し、
前記上面から前記第3の底面までの距離は、前記上面から前記第2の底面までの距離よりも短く、
前記第3の底面は、前記半導体チップの外周の一辺の中央に形成されている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体装置は、さらに、
前記半導体チップと前記外部接続電極によって電気的に接続された実装基板を備える
請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記実装基板の前記半導体チップが形成された上面には、前記半導体チップを取り囲むように、枠状の溝部が形成されている
請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記溝部は、前記半導体チップの外周端部の下方に形成されている
請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体チップの外周の一辺の中央の下方に位置する前記溝部の深さは、前記半導体チップの外周の一辺の端の下方に位置する前記溝部の深さより深い
請求項10記載の半導体装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−23158(P2012−23158A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159199(P2010−159199)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】