半導体装置
【課題】
マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体チップおよび半導体パッケージ(ディジタル受信装置)を提供することを目的とする
【解決手段】
半導体チップと、前記半導体チップ上に配置されたディジタル部と、前記半導体チップ上に配置されたアナログRF部と、前記ディジタル部から伝播するノイズを遮断するような位置に配置された周期構造を有する誘電体と、を備えた半導体装置である。
マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体チップおよび半導体パッケージ(ディジタル受信装置)を提供することを目的とする
【解決手段】
半導体チップと、前記半導体チップ上に配置されたディジタル部と、前記半導体チップ上に配置されたアナログRF部と、前記ディジタル部から伝播するノイズを遮断するような位置に配置された周期構造を有する誘電体と、を備えた半導体装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝搬ノイズを低減させることを可能とする半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、PHSなどLSIを備えた移動体通信機器(ディジタル受信装置)の利用が普及し、また、移動体通信機器の小型化・高密度化が進んでいる。
移動体通信機器(ディジタル受信装置)とは、片方または両方の端末が移動することのできる(通信線路に接続されていないかつ固定無線局でない)電気通信の総称であり、アナログRF(RF:Radio Frequency)処理用LSI(Large Scale Integrated Circuit)、ディジタル処理用LSI等の各種LSIが搭載されて構成される。また、RFとは、電磁波や電気信号のうち、無線通信に利用できる周波数を指す。
【0003】
例えば特許文献1には、「小信号を扱う小信号回路とノイズ源回路と、が主面側の異なる領域に形成されている半導体基板の周囲を覆うパッケージと、を有する。ノイズ源回路に対し主面側から接地電位を供給する第1接地体と、半導体基板裏面の一部に電気的に接続または容量結合し、かつ、ビクティム回路に対して接地電位を供給する他の設置体と物理的に離れた第2接地体とが、ノイズ源回路に接地電位を供給するパッケージ内導体に含まれる半導体装置」が開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、「フォトニック結晶構造体中に形成された光導波路が電気光相互変換素子に隣接して配置され、該光導波路が電気光相互変換素子と光伝送用導波媒体を光接続することを特徴とするアクティブ光コネクタ」が開示されている。
【0005】
また、例えば非特許文献1には、光の伝搬を防ぐストップバンドを形成して光を制御する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−263077号公報
【特許文献2】特開2001−330760号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】航空電子技法No.25“二次元フォトニック結晶”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の、移動体通信機器の小型化、高密度化に伴い、LSIのディジタル信号処理部の動作周波数の高調波が伝導、放射ノイズとなり他のアナログRF機器に影響を与える電磁干渉(EMI:Electro−Magnetic Intereference)が問題となっている。
一方で、これらのLSIが搭載される移動体通信機器の更なる小型化に伴い、今後、アナログRF用の半導体チップやディジタル信号処理用の半導体チップは、ワンチップ化されていくことが見込まれる。ワンチップ化されると、特にディジタル処理用のLSIの回路(以後、「加害回路」と呼ぶ)からアナログRF処理用のLSIの回路(以後、「被害回路」と呼ぶ)に対してノイズが発生する。アナログRF用の半導体チップやディジタル信号処理用の半導体チップがワンチップ化されると、デジタル処理用LSIやアナログRF処理用LSIが搭載されている半導体チップ上または該半導体チップの内部を伝搬し、デジタル信号用LSIからアナログRF処理用LSIに対してノイズが伝搬し、電磁干渉を引き起こすことになると考えられる。
【0009】
特許文献1に開示された方法によると、ノイズの伝搬経路のインピーダンスを低周波数から高周波数帯域まで低インピーダンスにすることができるが、低インピーダンスのノイズ経路を形成しようとすると、高周波帯においてインダクタンス成分を小さくする必要があり設計が困難となるという課題がある。
一方、特許文献2や非特許文献1に代表されるフォトニック結晶は、光の伝搬を防ぐストップバンドを形成し光を制御する構造であり、この構造をマイクロ波の領域で形成できればノイズの伝搬を防ぐことが可能となる。しかし、この技術をマイクロ波帯域に適用しようとすると、周期構造が半導体チップのサイズより大きくなり現実的ではない。
【0010】
そこで、本願では、マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体装置(ディジタル受信装置、半導体パッケージ)を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
半導体チップと、前記半導体チップ上に配置されたディジタル部と、前記半導体チップ上に配置されたアナログRF部と、前記ディジタル部から伝播するノイズを遮断するような位置に配置された周期構造を有する誘電体と、を備えた半導体装置である。
【発明の効果】
【0014】
本願によれば、マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る半導体装置の第一の実施例の説明図である。
【図2】従来の電子機器におけるノイズ伝搬の説明図である。
【図3】従来の半導体チップにおけるノイズ伝搬の説明図である。
【図4】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の側面図である。
【図5】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップの拡大図である。
【図6】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップの周期構造の説明図である。
【図7】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例における、周波数と比誘電率との関係を示す図である。
【図8】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の電磁波抑制効果を示す図である。
【図9】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の変形例である。
【図10】本発明に係る半導体装置の第二の実施例の説明図である。
【図11】本発明に係る半導体装置の第三の実施例の説明図である。
【図12】本発明に係る半導体装置の第四の実施例の説明図である。
【図13】本発明に係る半導体装置の第五の実施例の説明図である。
【図14】本発明に係る半導体装置の第六の実施例の説明図である。
【図15】本発明に係る半導体装置の第七の実施例の説明図である。
【図16】本発明に係る半導体装置の第八の実施例の説明図である。
【図17】本発明に係る半導体装置の第九の実施例の説明図である。
【図18】本発明に係る半導体装置の第二の実施例の変形例である。
【図19】本発明に係る半導体装置の第二の実施例の変形例である。
【図20】本発明に係る半導体装置の第十の実施例の変形例である。
【図21】本発明に係る半導体装置の第十一の実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
図2および図3は、従来の電子機器や半導体チップにおけるノイズ伝搬を説明する図である。
図2は、従来の電子機器におけるノイズ伝搬の説明図である。電子回路基板10上にデジタル信号処理LSI11とアナログRF処理LSI12とが搭載されている。移動体通信機器の小型化・高密度化に伴い、移動体通信機器に搭載されている図2のような電子回路基板10のデジタル信号処理LSI11の信号処理部の動作周波数の高調波が伝導・放射ノイズ13となって、例えばアナログRF処理LSI12のような他のアナログRF機器に電磁干渉するようになっている。
【0018】
図3は、従来の半導体チップにおけるノイズ伝搬の説明図である。半導体チップ1上にデジタル部回路(加害回路)2とアナログRF部(被害回路)とが搭載されている。今後ワンチップ化が進むと、図3のような半導体チップにおいて、ノイズが半導体チップ1の内部または上部を伝搬し、加害回路2から被害回路への電磁干渉13を引き起こすことになる。
【0019】
ここでいうノイズには、空気中を伝搬するものと電子機器や半導体チップの内部を伝搬するものとがあるが、本願では電子機器や半導体チップを介して伝搬するノイズの遮断に関する。
【実施例1】
【0020】
以下では、本発明に係る半導体装置および半導体チップ等の第一の実施例について説明する。図1、図4、図5および図6は、本実施の形態の半導体装置および半導体チップ等の構成例を示す図である。
【0021】
図1は、本発明に係る半導体装置の第一の実施例の説明図である。図1記載の半導体装置は、半導体パッケージ基板6、BGA7、半導体チップ1、デジタル部2、アナログRF部3等を備えて構成される。
半導体パッケージ基板6の裏面にはBGA7が配置されており、表面には半導体チップ1が搭載されている。半導体チップ1には、加害回路であるデジタル部2と被害回路であるアナログRF部3とが搭載されている。また、デジタル部2とアナログRF部3との間には周期構造5を有する誘電体4が配置されている。この誘電体4および周期構造5の部分は、半導体チップ1とは誘電率の異なる物質で形成されている。
【0022】
図4は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の側面図である。側面から見ると、加害回路2および被害回路3は半導体チップ1の上部に配置されており、誘電体4は加害回路2および被害回路3とを遮断するように、半導体チップ1の底面まで貫通して配置されている。
誘電体4が半導体チップ1の底面まで貫通して配置されている場合、半導体チップ1の上面や内部を伝搬するノイズをすべて遮断することができるため、高いノイズ遮断効果を得ることができる。
【0023】
図5は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップにおける拡大図である。半導体チップ1の縦、横および高さをそれぞれa、b、tとすると、誘電体4は半導体チップ1の横方向を横断するように長さbだけ配置されている。半導体チップ1の表面に対して誘電体4が横断するように配置され、隙間がないことによって、加害回路2から被害回路3に対して半導体チップ1の上面や内部を介して伝搬するノイズが遮断され、電磁干渉を抑制することが可能となる。
【0024】
図6は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップの誘電体4の周期構造5の説明図である。これは、図5の誘電体4の構造を上面から見た図であり、周期構造5は円筒構造の集合体として表現されている。
【0025】
ここで、次世代の携帯電話通信規格の使用周波数3.4〜3.6GHz帯において、例えば非特許文献1のように電波を通さないストップバンドを実現する周期構造5の間隔を、波長と比誘電率の関係式である(数1)および(数2)より求める。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
(数1)および(数2)において、λは波長、cは光速、fは周波数、εrは周期構造を形成する誘電体の比誘電率、dは周期構造の間隔、Aは波長で正規化されたストップバンドが出現する周波数間隔であり、これは非特許文献1より0.434〜0.487である。半導体チップ材質をシリコンとして比誘電率εrを11とすると、(数1)および(数2)より、周期構造5の間隔dは128mm以上となることがわかる。この間隔は半導体チップの大きさを遥かに上回っており、本願のようなマイクロ波帯域において用いるには適さない。
【0028】
そこで本願では、周期構造5を誘電体4内に形成することにより波長短縮を起こし、周期構造5の微細化を図ることとした。周期構造5の微細化に必要な誘電体4の誘電率は、(数1)および(数3)から(数4)のように表すことができる。
【0029】
【数3】
【数4】
【0030】
ここでnは周期構造5の段数、wは誘電体4の幅(図6の誘電体の上面図における半導体チップの縦側の長さ)を示している。ここで、半導体チップのサイズをa×bとし周期構造5をn列形成する場合を考える。例えば半導体チップサイズa×bを20mm×20mmとする。周期構造5を図6のように形成する場合、周期構造5の占める幅wを半導体チップサイズの1/10を上限と規定すると、(数4)より誘電体の比誘電率εrは図7のように求まる。
誘電体材料として、例えばペロブスカイトは比誘電率が100から10000を超える場合があるが、これを用いれば図7に示す通り、半導体チップ1に周期構造5を作る場合の半導体パッケージサイズの制約条件を満足する。また、周波数が高くなれば比誘電率は下がる傾向があり、ターゲットとする周波数帯を10GHzとした場合、誘電体4の比誘電率εrは53以上であればよい。
【0031】
このように、加害回路であるデジタル部2から被害回路であるアナログRF部3に対して伝搬する電波ノイズを遮断するために、デジタル部2とアナログRF部3との間に周期構造5部分を備えることで、周期構造5の部分でストップバンドを形成し、電波ノイズの伝搬を抑制することができる。
また、周期構造5を誘電体4内に形成することで周期構造の微細化が可能となるため、半導体パッケージサイズの制約条件を満たす誘電体を用いることで、マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体チップおよび半導体パッケージを実現することができる。
【0032】
図6に示す構造体で実際の効果を検証する。半導体チップ1は比誘電率が11のシリコンで形成され、中央部に誘電体4(比誘電率200)が形成され、周期構造5は比誘電率1の空気で形成されている。周期構造5の段数nは1段とし、図6のPort1からPort2の間の周波数を3.6GHzとする。
図8は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の電磁波抑制効果を示す図である。半導体チップ1上の加害回路と被害回路との間に誘電体4および周期構造5が配置されている場合には、20dBに近い電磁波低減効果が得られることが分かる。半導体チップ1上の加害回路と被害回路との間に誘電体4のみを形成した場合の電磁波低減効果2.39dBと比較すると、17.3dBの低減効果がある。
【0033】
図6では、半導体チップ1として比誘電率が11のシリコンを用いたが、シリコンである必要はなく、例えば比誘電率が10程度のGaAsや、通常状態での比誘電率が9〜11程度のSiC等を用いても良い。
また、周期構造5は非誘電率が1の空気により形成したが、空気である必要はなく、例えば半導体チップと同じシリコンを用いたり、樹脂を封止することによって形成しても良い。本願では、ストップバンドを形成するために、周期構造5と誘電体4の比誘電率値に差があることが必要であり、これにより本願の効果を得ることができる。
また、シリコンや樹脂などの比誘電率が1よりも大きい材料を用いて周期構造を形成するよりも、比誘電率が1の空気により周期構造を形成した方が、プロセス上容易に形成可能である。
また、図6では、周期構造は円筒構造の集合体として表現されているが、円筒構造である必要はない。例えば、上面から見た場合に円ではなく三角や四角などの多角形でも良いし、楕円状などの形状でも良い。周期構造を備え、周期構造部分の比誘電率と誘電体部分の比誘電率とが異なる値であれば、ストップバンドが形成されるため、周期構造の形状は任意に設定可能である。
ただし、周期構造を円(円筒)状とした場合には、伝搬ノイズの抑制を均一に行うことができる。つまり、加害回路2からのノイズは図6のPort1から入りPort2の方向に向かうが、半導体チップ1の上辺や下辺に対して平行に通過するとは限らず、斜め方向に通過する場合もある。そのような場合に周期構造が多角形や楕円形状であると、ノイズの遮断が均一ではなくなる。そのため、円状の周期構造の場合が最も均一にノイズを遮断することができる。
図9は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の変形例である。周期構造5を備えた誘電体4が半導体チップ1を貫通することなく内蔵される形で形成されている。誘電体4および周期構造5は図4のように半導体チップを貫通するように形成した方が、加害回路2から被害回路3への伝搬ノイズの抑制の観点からは効果が大きいが、図9のように加害回路2および電磁干渉を受ける被害回路3が半導体チップ表面に形成されている場合は、図9のように誘電体4を貫通させなくても電磁波の経路が表面に集中しているため、表面近くに周期構造によるストップバンドを形成すれば減衰効果が見込める。また、半導体装置の製造の観点からすると、図4のように間に誘電体4を挟んで両脇から複数の半導体チップ1を接着する必要がなく、従来の半導体装置の製造工程を一部変更することで対応可能なため、製造コストが安価になるという効果を奏する。
【実施例2】
【0034】
実施の形態1では、加害回路・被害回路ともに1回路ずつであり、ノイズは半導体チップの内部または上部を通るため、加害回路と被害回路との間に誘電体を配置していたが、加害回路が複数ある場合には、いずれの加害回路からのノイズも防ぐことが必要である。
【0035】
図10は、本発明に係る半導体装置の第二の実施例の説明図である。加害回路2が半導体チップ1上に複数ある場合には、すべての加害回路2からのノイズを遮断することが必要である。図10では、半導体チップ1の表面上の被害回路3の周囲に周期構造5を備えた誘電体4を配置することで、複数の加害回路2からのノイズが伝搬して被害回路3に電磁干渉することを防ぐことができる。
本願では、被害回路と加害回路との間に周期構造を備えた誘電体を配置することで、加害回路からの被害回路にノイズが伝搬することを防ぐことができればよく、必ずしも被害回路を周期構造を備えた誘電体が囲んでいることは必要ではない。例えば図18のように、複数の加害回路2と被害回路3との間に周期構造5を備えた誘電体4を配置してあればよく、誘電体4は1つである必要はない。
また、図19のように複数の加害回路2のそれぞれが、周期構造5を備えた誘電体4によって個別に分けられていても良い。本願では、加害回路2から発生するノイズが被害回路3に影響を与えるという前提で記載しているが、実際には、加害回路2が複数ある場合は加害回路2同士も干渉し、また、被害回路3同士も干渉するため、各回路へのノイズの相互の影響を考慮すると、すべての回路の組み合わせによる干渉を防ぐために、各回路を個別に分けることが望ましい。
【0036】
図10のように被害回路3を取り囲むように、誘電体4および周期構造5を形成した場合には、誘電体4および周期構造5が半導体チップ1上に占める割合を減らすことができる。
【実施例3】
【0037】
図11は本発明に係る半導体装置の第三の実施例の説明図である。被害回路3が半導体チップ1上に複数ある場合には、加害回路2を取り囲むように誘電体4、周期構造5を形成しても良い。この場合も、誘電体4および周期構造5が半導体チップ1上に占める割合が小さいことが望ましく、例えば図11のように加害回路2を囲むように周期構造5を備えた誘電体4を配置する。
【実施例4】
【0038】
図12は本発明に係る半導体装置の第四の実施例の説明図である。
BGA7を裏面に配置した半導体パッケージ基板6の表面に、複数枚積層した半導体積層チップ21を配置する。該半導体積層チップ21は、複数毎の半導体チップが積層されており、例えば、下から2層目の半導体チップが例えばディジタル信号処理回路のような加害半導体チップ23であり、上から2層目の半導体チップが例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害半導体チップ24である場合には、半導体積層チップ21を貫通して加害半導体チップ23と被害半導体チップ24とを接続する貫通ビア22をノイズ電流25が通ることで、被害半導体チップ24にノイズ13が伝搬する。
そこで、被害半導体チップ24の貫通ビア22周辺に誘電体4および周期構造5を設けることで、被害半導体チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
また、実施の形態1乃至3と同様に、加害半導体チップ23の層に周期構造を備えた誘電体を備えることによって、加害半導体チップ23から伝搬するノイズを他の層に伝搬させることなく遮断することも可能である。
ここでは、半導体積層チップ21は6層の半導体チップにより構成されているが、6層以外の半導体チップの枚数により構成されていても良い。
【実施例5】
【0039】
図13は本発明に係る半導体装置の第五の実施例の説明図である。
全体の構造は実施の形態4と同様で、BGA7を裏面に備えた半導体パッケージ基板6の表面に半導体積層チップ21が載置されている。図13では、半導体積層チップ21は6層の半導体チップから構成されている。上から2層目の半導体チップが例えばディジタル信号処理回路のような加害回路を持つ加害半導体チップ23であり、それ以外の半導体チップはすべて例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害回路を持つ被害半導体チップ24である。加害半導体チップ23と複数の被害半導体チップ24は、貫通ビア22により各々接続されており、加害半導体チップ23から発生するノイズが貫通ビア22を通って被害半導体チップ24に伝搬する。
そこで、本実施の形態では、加害半導体チップ23の貫通ビア22の周辺に誘電体4および周期構造5を設けることで、加害半導体チップ23からノイズが伝搬することを防ぎ、各被害半導体チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
この場合、周期構造5付き誘電体4の占める割合が多くなってはしまうが、各被害半導体チップ24の層において周期構造5を備えた誘電体4を配置しても良い。
【実施例6】
【0040】
図14は本発明に係る半導体装置の第六の実施例の説明図である。裏面にBGA7を備えた半導体パッケージ基板6の表面に半導体積層チップ21が配置されている。図14記載の半導体積層チップ21は3層からなり、半導体パッケージ基板6の表面に接する位置に、例えばディジタル信号処理回路のような加害回路を持つ加害半導体チップ23が配置され、該加害半導体チップ23に接して通常の半導体チップが配置され、該通常の半導体チップに接して該加害半導体チップ23とは反対側の面に、例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害回路を持つ被害半導体チップ24が積層されている。
また、各半導体チップは、ワイヤボンディング26−1、26−2、26−3により半導体パッケージ基板6にそれぞれ接続されている。
ここでは、加害半導体チップ23で発生したノイズ電流25が、加害半導体チップ23に接続されたワイヤボンディング26−2を通過することでワイヤボンディング26−2からノイズ13が放射され、被害半導体チップのワイヤボンディング26−3に干渉する。そこで、ワイヤボンディング26−3周辺の被害半導体チップ24に誘電体4および周期構造5を設けることで、被害チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
【実施例7】
【0041】
図15は本発明に係る半導体装置の第七の実施例の説明図である。構成は図14とほぼ同様であるが、3層に積層された半導体積層チップ21のうち、半導体パッケージ基板6に接して配置される半導体チップ23が例えばディジタル信号処理回路のような加害回路を持つ加害半導体チップ21であり、上の2層の半導体チップは例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害回路を持つ被害半導体チップ24である。
このように被害半導体チップが複数ある場合には、加害半導体チップ23で発生したノイズ13が、加害半導体チップに接続されたワイヤボンディング26−2に伝搬するのを防ぐため、ワイヤボンディング26−2周辺の加害半導体チップ23に誘電体4および周期構造5を設けることで、各被害半導体チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
【実施例8】
【0042】
図16は本発明に係る半導体装置の第八の実施例の説明図である。図16では、BGA7を裏面に有する半導体パッケージ基板6の表面に加害半導体チップ23と被害半導体チップ24とが配置されており、加害半導体チップ23の被害半導体チップ24側の辺に、周期構造5を備える誘電体4が配置されている。
ここでは、被害半導体チップ24と加害半導体チップ23との間を遮断するように周期構造5付き誘電体4が配置されているわけではなく、加害半導体チップ23の被害半導体チップ24側の一辺に配置している。
この場合は、ノイズ電流は加害半導体チップ23の誘電体4が配置された辺とは別の辺からも伝搬するため、ノイズ電流を完全に遮断することはできないが、最も多く伝搬すると思われる被害半導体チップ24に面した辺を誘電体4により遮断することで、半導体パッケージ基板6の表面に対する誘電体4の占める割合を増やさずに効率的にノイズ電流を抑制することが可能となる。
【実施例9】
【0043】
図17は本発明に係る半導体装置の第九の実施例の説明図である。構成は図16とほぼ同様であるが、周期構造5を備えた誘電体4が加害半導体チップ23ではなく、加害半導体チップ23と被害半導体チップ24との間の半導体パッケージ基板6上に配置されている点で異なる。
図17の構成によっても、図16と同様にノイズ伝搬を抑制する効果を得ることができる。
【実施例10】
【0044】
図20は、本発明に係る半導体装置の第一の実施例の変形例である。
図5は加害回路2と被害回路3との間に周期構造4を備えた誘電体5を配置する構造であるが、図20のように、半導体チップ1の表面のうち、加害回路2や被害回路3の配置されていない領域をすべて周期構造4付きの誘電体5により覆うことで、伝搬ノイズ遮断の効果を大きくすることができる。
【実施例11】
【0045】
図21は、本発明に係る半導体装置の第十の実施例の説明図である。
実施例1乃至10においては、シリコン等により構成される半導体チップ1上に加害回路2や被害回路3を設けて、それらの回路間に周期構造4付きの誘電体5を配置することにより、加害回路2から被害回路3へのノイズ伝搬を遮断した半導体装置が可能であるが、半導体チップ自体を周期構造付きの誘電体により構成しても良い。その場合は、比誘電率が所定の値以上の半導体チップを用いることにより、半導体チップ自体が誘電体としてノイズ遮断することが可能となるため、半導体製造の工程において、半導体チップ内に誘電体を内蔵させるステップが不要となる。
【符号の説明】
【0046】
1 半導体チップ、2 加害回路、3 被害回路、4 誘電体、5 周期構造、6 半導体パッケージ基板、7 BGA、10 電子回路基板、
11 ディジタル信号処理LSI、12 アナログRF処理LSI、13 ノイズ、21 半導体積層チップ、22 貫通ビア、23 加害チップ、24 被害チップ、25 ノイズ電流、26−1 ワイヤボンディング、26−2 ワイヤボンディング、26−3 ワイヤボンディング
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝搬ノイズを低減させることを可能とする半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、PHSなどLSIを備えた移動体通信機器(ディジタル受信装置)の利用が普及し、また、移動体通信機器の小型化・高密度化が進んでいる。
移動体通信機器(ディジタル受信装置)とは、片方または両方の端末が移動することのできる(通信線路に接続されていないかつ固定無線局でない)電気通信の総称であり、アナログRF(RF:Radio Frequency)処理用LSI(Large Scale Integrated Circuit)、ディジタル処理用LSI等の各種LSIが搭載されて構成される。また、RFとは、電磁波や電気信号のうち、無線通信に利用できる周波数を指す。
【0003】
例えば特許文献1には、「小信号を扱う小信号回路とノイズ源回路と、が主面側の異なる領域に形成されている半導体基板の周囲を覆うパッケージと、を有する。ノイズ源回路に対し主面側から接地電位を供給する第1接地体と、半導体基板裏面の一部に電気的に接続または容量結合し、かつ、ビクティム回路に対して接地電位を供給する他の設置体と物理的に離れた第2接地体とが、ノイズ源回路に接地電位を供給するパッケージ内導体に含まれる半導体装置」が開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、「フォトニック結晶構造体中に形成された光導波路が電気光相互変換素子に隣接して配置され、該光導波路が電気光相互変換素子と光伝送用導波媒体を光接続することを特徴とするアクティブ光コネクタ」が開示されている。
【0005】
また、例えば非特許文献1には、光の伝搬を防ぐストップバンドを形成して光を制御する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−263077号公報
【特許文献2】特開2001−330760号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】航空電子技法No.25“二次元フォトニック結晶”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の、移動体通信機器の小型化、高密度化に伴い、LSIのディジタル信号処理部の動作周波数の高調波が伝導、放射ノイズとなり他のアナログRF機器に影響を与える電磁干渉(EMI:Electro−Magnetic Intereference)が問題となっている。
一方で、これらのLSIが搭載される移動体通信機器の更なる小型化に伴い、今後、アナログRF用の半導体チップやディジタル信号処理用の半導体チップは、ワンチップ化されていくことが見込まれる。ワンチップ化されると、特にディジタル処理用のLSIの回路(以後、「加害回路」と呼ぶ)からアナログRF処理用のLSIの回路(以後、「被害回路」と呼ぶ)に対してノイズが発生する。アナログRF用の半導体チップやディジタル信号処理用の半導体チップがワンチップ化されると、デジタル処理用LSIやアナログRF処理用LSIが搭載されている半導体チップ上または該半導体チップの内部を伝搬し、デジタル信号用LSIからアナログRF処理用LSIに対してノイズが伝搬し、電磁干渉を引き起こすことになると考えられる。
【0009】
特許文献1に開示された方法によると、ノイズの伝搬経路のインピーダンスを低周波数から高周波数帯域まで低インピーダンスにすることができるが、低インピーダンスのノイズ経路を形成しようとすると、高周波帯においてインダクタンス成分を小さくする必要があり設計が困難となるという課題がある。
一方、特許文献2や非特許文献1に代表されるフォトニック結晶は、光の伝搬を防ぐストップバンドを形成し光を制御する構造であり、この構造をマイクロ波の領域で形成できればノイズの伝搬を防ぐことが可能となる。しかし、この技術をマイクロ波帯域に適用しようとすると、周期構造が半導体チップのサイズより大きくなり現実的ではない。
【0010】
そこで、本願では、マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体装置(ディジタル受信装置、半導体パッケージ)を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
半導体チップと、前記半導体チップ上に配置されたディジタル部と、前記半導体チップ上に配置されたアナログRF部と、前記ディジタル部から伝播するノイズを遮断するような位置に配置された周期構造を有する誘電体と、を備えた半導体装置である。
【発明の効果】
【0014】
本願によれば、マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る半導体装置の第一の実施例の説明図である。
【図2】従来の電子機器におけるノイズ伝搬の説明図である。
【図3】従来の半導体チップにおけるノイズ伝搬の説明図である。
【図4】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の側面図である。
【図5】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップの拡大図である。
【図6】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップの周期構造の説明図である。
【図7】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例における、周波数と比誘電率との関係を示す図である。
【図8】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の電磁波抑制効果を示す図である。
【図9】図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の変形例である。
【図10】本発明に係る半導体装置の第二の実施例の説明図である。
【図11】本発明に係る半導体装置の第三の実施例の説明図である。
【図12】本発明に係る半導体装置の第四の実施例の説明図である。
【図13】本発明に係る半導体装置の第五の実施例の説明図である。
【図14】本発明に係る半導体装置の第六の実施例の説明図である。
【図15】本発明に係る半導体装置の第七の実施例の説明図である。
【図16】本発明に係る半導体装置の第八の実施例の説明図である。
【図17】本発明に係る半導体装置の第九の実施例の説明図である。
【図18】本発明に係る半導体装置の第二の実施例の変形例である。
【図19】本発明に係る半導体装置の第二の実施例の変形例である。
【図20】本発明に係る半導体装置の第十の実施例の変形例である。
【図21】本発明に係る半導体装置の第十一の実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
図2および図3は、従来の電子機器や半導体チップにおけるノイズ伝搬を説明する図である。
図2は、従来の電子機器におけるノイズ伝搬の説明図である。電子回路基板10上にデジタル信号処理LSI11とアナログRF処理LSI12とが搭載されている。移動体通信機器の小型化・高密度化に伴い、移動体通信機器に搭載されている図2のような電子回路基板10のデジタル信号処理LSI11の信号処理部の動作周波数の高調波が伝導・放射ノイズ13となって、例えばアナログRF処理LSI12のような他のアナログRF機器に電磁干渉するようになっている。
【0018】
図3は、従来の半導体チップにおけるノイズ伝搬の説明図である。半導体チップ1上にデジタル部回路(加害回路)2とアナログRF部(被害回路)とが搭載されている。今後ワンチップ化が進むと、図3のような半導体チップにおいて、ノイズが半導体チップ1の内部または上部を伝搬し、加害回路2から被害回路への電磁干渉13を引き起こすことになる。
【0019】
ここでいうノイズには、空気中を伝搬するものと電子機器や半導体チップの内部を伝搬するものとがあるが、本願では電子機器や半導体チップを介して伝搬するノイズの遮断に関する。
【実施例1】
【0020】
以下では、本発明に係る半導体装置および半導体チップ等の第一の実施例について説明する。図1、図4、図5および図6は、本実施の形態の半導体装置および半導体チップ等の構成例を示す図である。
【0021】
図1は、本発明に係る半導体装置の第一の実施例の説明図である。図1記載の半導体装置は、半導体パッケージ基板6、BGA7、半導体チップ1、デジタル部2、アナログRF部3等を備えて構成される。
半導体パッケージ基板6の裏面にはBGA7が配置されており、表面には半導体チップ1が搭載されている。半導体チップ1には、加害回路であるデジタル部2と被害回路であるアナログRF部3とが搭載されている。また、デジタル部2とアナログRF部3との間には周期構造5を有する誘電体4が配置されている。この誘電体4および周期構造5の部分は、半導体チップ1とは誘電率の異なる物質で形成されている。
【0022】
図4は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の側面図である。側面から見ると、加害回路2および被害回路3は半導体チップ1の上部に配置されており、誘電体4は加害回路2および被害回路3とを遮断するように、半導体チップ1の底面まで貫通して配置されている。
誘電体4が半導体チップ1の底面まで貫通して配置されている場合、半導体チップ1の上面や内部を伝搬するノイズをすべて遮断することができるため、高いノイズ遮断効果を得ることができる。
【0023】
図5は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップにおける拡大図である。半導体チップ1の縦、横および高さをそれぞれa、b、tとすると、誘電体4は半導体チップ1の横方向を横断するように長さbだけ配置されている。半導体チップ1の表面に対して誘電体4が横断するように配置され、隙間がないことによって、加害回路2から被害回路3に対して半導体チップ1の上面や内部を介して伝搬するノイズが遮断され、電磁干渉を抑制することが可能となる。
【0024】
図6は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の半導体チップの誘電体4の周期構造5の説明図である。これは、図5の誘電体4の構造を上面から見た図であり、周期構造5は円筒構造の集合体として表現されている。
【0025】
ここで、次世代の携帯電話通信規格の使用周波数3.4〜3.6GHz帯において、例えば非特許文献1のように電波を通さないストップバンドを実現する周期構造5の間隔を、波長と比誘電率の関係式である(数1)および(数2)より求める。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
(数1)および(数2)において、λは波長、cは光速、fは周波数、εrは周期構造を形成する誘電体の比誘電率、dは周期構造の間隔、Aは波長で正規化されたストップバンドが出現する周波数間隔であり、これは非特許文献1より0.434〜0.487である。半導体チップ材質をシリコンとして比誘電率εrを11とすると、(数1)および(数2)より、周期構造5の間隔dは128mm以上となることがわかる。この間隔は半導体チップの大きさを遥かに上回っており、本願のようなマイクロ波帯域において用いるには適さない。
【0028】
そこで本願では、周期構造5を誘電体4内に形成することにより波長短縮を起こし、周期構造5の微細化を図ることとした。周期構造5の微細化に必要な誘電体4の誘電率は、(数1)および(数3)から(数4)のように表すことができる。
【0029】
【数3】
【数4】
【0030】
ここでnは周期構造5の段数、wは誘電体4の幅(図6の誘電体の上面図における半導体チップの縦側の長さ)を示している。ここで、半導体チップのサイズをa×bとし周期構造5をn列形成する場合を考える。例えば半導体チップサイズa×bを20mm×20mmとする。周期構造5を図6のように形成する場合、周期構造5の占める幅wを半導体チップサイズの1/10を上限と規定すると、(数4)より誘電体の比誘電率εrは図7のように求まる。
誘電体材料として、例えばペロブスカイトは比誘電率が100から10000を超える場合があるが、これを用いれば図7に示す通り、半導体チップ1に周期構造5を作る場合の半導体パッケージサイズの制約条件を満足する。また、周波数が高くなれば比誘電率は下がる傾向があり、ターゲットとする周波数帯を10GHzとした場合、誘電体4の比誘電率εrは53以上であればよい。
【0031】
このように、加害回路であるデジタル部2から被害回路であるアナログRF部3に対して伝搬する電波ノイズを遮断するために、デジタル部2とアナログRF部3との間に周期構造5部分を備えることで、周期構造5の部分でストップバンドを形成し、電波ノイズの伝搬を抑制することができる。
また、周期構造5を誘電体4内に形成することで周期構造の微細化が可能となるため、半導体パッケージサイズの制約条件を満たす誘電体を用いることで、マイクロ波帯域において容易に設計可能な半導体チップおよび半導体パッケージを実現することができる。
【0032】
図6に示す構造体で実際の効果を検証する。半導体チップ1は比誘電率が11のシリコンで形成され、中央部に誘電体4(比誘電率200)が形成され、周期構造5は比誘電率1の空気で形成されている。周期構造5の段数nは1段とし、図6のPort1からPort2の間の周波数を3.6GHzとする。
図8は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の電磁波抑制効果を示す図である。半導体チップ1上の加害回路と被害回路との間に誘電体4および周期構造5が配置されている場合には、20dBに近い電磁波低減効果が得られることが分かる。半導体チップ1上の加害回路と被害回路との間に誘電体4のみを形成した場合の電磁波低減効果2.39dBと比較すると、17.3dBの低減効果がある。
【0033】
図6では、半導体チップ1として比誘電率が11のシリコンを用いたが、シリコンである必要はなく、例えば比誘電率が10程度のGaAsや、通常状態での比誘電率が9〜11程度のSiC等を用いても良い。
また、周期構造5は非誘電率が1の空気により形成したが、空気である必要はなく、例えば半導体チップと同じシリコンを用いたり、樹脂を封止することによって形成しても良い。本願では、ストップバンドを形成するために、周期構造5と誘電体4の比誘電率値に差があることが必要であり、これにより本願の効果を得ることができる。
また、シリコンや樹脂などの比誘電率が1よりも大きい材料を用いて周期構造を形成するよりも、比誘電率が1の空気により周期構造を形成した方が、プロセス上容易に形成可能である。
また、図6では、周期構造は円筒構造の集合体として表現されているが、円筒構造である必要はない。例えば、上面から見た場合に円ではなく三角や四角などの多角形でも良いし、楕円状などの形状でも良い。周期構造を備え、周期構造部分の比誘電率と誘電体部分の比誘電率とが異なる値であれば、ストップバンドが形成されるため、周期構造の形状は任意に設定可能である。
ただし、周期構造を円(円筒)状とした場合には、伝搬ノイズの抑制を均一に行うことができる。つまり、加害回路2からのノイズは図6のPort1から入りPort2の方向に向かうが、半導体チップ1の上辺や下辺に対して平行に通過するとは限らず、斜め方向に通過する場合もある。そのような場合に周期構造が多角形や楕円形状であると、ノイズの遮断が均一ではなくなる。そのため、円状の周期構造の場合が最も均一にノイズを遮断することができる。
図9は、図1に示す本発明に係る半導体装置の第一の実施例の変形例である。周期構造5を備えた誘電体4が半導体チップ1を貫通することなく内蔵される形で形成されている。誘電体4および周期構造5は図4のように半導体チップを貫通するように形成した方が、加害回路2から被害回路3への伝搬ノイズの抑制の観点からは効果が大きいが、図9のように加害回路2および電磁干渉を受ける被害回路3が半導体チップ表面に形成されている場合は、図9のように誘電体4を貫通させなくても電磁波の経路が表面に集中しているため、表面近くに周期構造によるストップバンドを形成すれば減衰効果が見込める。また、半導体装置の製造の観点からすると、図4のように間に誘電体4を挟んで両脇から複数の半導体チップ1を接着する必要がなく、従来の半導体装置の製造工程を一部変更することで対応可能なため、製造コストが安価になるという効果を奏する。
【実施例2】
【0034】
実施の形態1では、加害回路・被害回路ともに1回路ずつであり、ノイズは半導体チップの内部または上部を通るため、加害回路と被害回路との間に誘電体を配置していたが、加害回路が複数ある場合には、いずれの加害回路からのノイズも防ぐことが必要である。
【0035】
図10は、本発明に係る半導体装置の第二の実施例の説明図である。加害回路2が半導体チップ1上に複数ある場合には、すべての加害回路2からのノイズを遮断することが必要である。図10では、半導体チップ1の表面上の被害回路3の周囲に周期構造5を備えた誘電体4を配置することで、複数の加害回路2からのノイズが伝搬して被害回路3に電磁干渉することを防ぐことができる。
本願では、被害回路と加害回路との間に周期構造を備えた誘電体を配置することで、加害回路からの被害回路にノイズが伝搬することを防ぐことができればよく、必ずしも被害回路を周期構造を備えた誘電体が囲んでいることは必要ではない。例えば図18のように、複数の加害回路2と被害回路3との間に周期構造5を備えた誘電体4を配置してあればよく、誘電体4は1つである必要はない。
また、図19のように複数の加害回路2のそれぞれが、周期構造5を備えた誘電体4によって個別に分けられていても良い。本願では、加害回路2から発生するノイズが被害回路3に影響を与えるという前提で記載しているが、実際には、加害回路2が複数ある場合は加害回路2同士も干渉し、また、被害回路3同士も干渉するため、各回路へのノイズの相互の影響を考慮すると、すべての回路の組み合わせによる干渉を防ぐために、各回路を個別に分けることが望ましい。
【0036】
図10のように被害回路3を取り囲むように、誘電体4および周期構造5を形成した場合には、誘電体4および周期構造5が半導体チップ1上に占める割合を減らすことができる。
【実施例3】
【0037】
図11は本発明に係る半導体装置の第三の実施例の説明図である。被害回路3が半導体チップ1上に複数ある場合には、加害回路2を取り囲むように誘電体4、周期構造5を形成しても良い。この場合も、誘電体4および周期構造5が半導体チップ1上に占める割合が小さいことが望ましく、例えば図11のように加害回路2を囲むように周期構造5を備えた誘電体4を配置する。
【実施例4】
【0038】
図12は本発明に係る半導体装置の第四の実施例の説明図である。
BGA7を裏面に配置した半導体パッケージ基板6の表面に、複数枚積層した半導体積層チップ21を配置する。該半導体積層チップ21は、複数毎の半導体チップが積層されており、例えば、下から2層目の半導体チップが例えばディジタル信号処理回路のような加害半導体チップ23であり、上から2層目の半導体チップが例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害半導体チップ24である場合には、半導体積層チップ21を貫通して加害半導体チップ23と被害半導体チップ24とを接続する貫通ビア22をノイズ電流25が通ることで、被害半導体チップ24にノイズ13が伝搬する。
そこで、被害半導体チップ24の貫通ビア22周辺に誘電体4および周期構造5を設けることで、被害半導体チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
また、実施の形態1乃至3と同様に、加害半導体チップ23の層に周期構造を備えた誘電体を備えることによって、加害半導体チップ23から伝搬するノイズを他の層に伝搬させることなく遮断することも可能である。
ここでは、半導体積層チップ21は6層の半導体チップにより構成されているが、6層以外の半導体チップの枚数により構成されていても良い。
【実施例5】
【0039】
図13は本発明に係る半導体装置の第五の実施例の説明図である。
全体の構造は実施の形態4と同様で、BGA7を裏面に備えた半導体パッケージ基板6の表面に半導体積層チップ21が載置されている。図13では、半導体積層チップ21は6層の半導体チップから構成されている。上から2層目の半導体チップが例えばディジタル信号処理回路のような加害回路を持つ加害半導体チップ23であり、それ以外の半導体チップはすべて例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害回路を持つ被害半導体チップ24である。加害半導体チップ23と複数の被害半導体チップ24は、貫通ビア22により各々接続されており、加害半導体チップ23から発生するノイズが貫通ビア22を通って被害半導体チップ24に伝搬する。
そこで、本実施の形態では、加害半導体チップ23の貫通ビア22の周辺に誘電体4および周期構造5を設けることで、加害半導体チップ23からノイズが伝搬することを防ぎ、各被害半導体チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
この場合、周期構造5付き誘電体4の占める割合が多くなってはしまうが、各被害半導体チップ24の層において周期構造5を備えた誘電体4を配置しても良い。
【実施例6】
【0040】
図14は本発明に係る半導体装置の第六の実施例の説明図である。裏面にBGA7を備えた半導体パッケージ基板6の表面に半導体積層チップ21が配置されている。図14記載の半導体積層チップ21は3層からなり、半導体パッケージ基板6の表面に接する位置に、例えばディジタル信号処理回路のような加害回路を持つ加害半導体チップ23が配置され、該加害半導体チップ23に接して通常の半導体チップが配置され、該通常の半導体チップに接して該加害半導体チップ23とは反対側の面に、例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害回路を持つ被害半導体チップ24が積層されている。
また、各半導体チップは、ワイヤボンディング26−1、26−2、26−3により半導体パッケージ基板6にそれぞれ接続されている。
ここでは、加害半導体チップ23で発生したノイズ電流25が、加害半導体チップ23に接続されたワイヤボンディング26−2を通過することでワイヤボンディング26−2からノイズ13が放射され、被害半導体チップのワイヤボンディング26−3に干渉する。そこで、ワイヤボンディング26−3周辺の被害半導体チップ24に誘電体4および周期構造5を設けることで、被害チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
【実施例7】
【0041】
図15は本発明に係る半導体装置の第七の実施例の説明図である。構成は図14とほぼ同様であるが、3層に積層された半導体積層チップ21のうち、半導体パッケージ基板6に接して配置される半導体チップ23が例えばディジタル信号処理回路のような加害回路を持つ加害半導体チップ21であり、上の2層の半導体チップは例えばアナログRF回路のように電磁干渉を受ける被害回路を持つ被害半導体チップ24である。
このように被害半導体チップが複数ある場合には、加害半導体チップ23で発生したノイズ13が、加害半導体チップに接続されたワイヤボンディング26−2に伝搬するのを防ぐため、ワイヤボンディング26−2周辺の加害半導体チップ23に誘電体4および周期構造5を設けることで、各被害半導体チップ24へのノイズ伝搬を防ぐことができる。
【実施例8】
【0042】
図16は本発明に係る半導体装置の第八の実施例の説明図である。図16では、BGA7を裏面に有する半導体パッケージ基板6の表面に加害半導体チップ23と被害半導体チップ24とが配置されており、加害半導体チップ23の被害半導体チップ24側の辺に、周期構造5を備える誘電体4が配置されている。
ここでは、被害半導体チップ24と加害半導体チップ23との間を遮断するように周期構造5付き誘電体4が配置されているわけではなく、加害半導体チップ23の被害半導体チップ24側の一辺に配置している。
この場合は、ノイズ電流は加害半導体チップ23の誘電体4が配置された辺とは別の辺からも伝搬するため、ノイズ電流を完全に遮断することはできないが、最も多く伝搬すると思われる被害半導体チップ24に面した辺を誘電体4により遮断することで、半導体パッケージ基板6の表面に対する誘電体4の占める割合を増やさずに効率的にノイズ電流を抑制することが可能となる。
【実施例9】
【0043】
図17は本発明に係る半導体装置の第九の実施例の説明図である。構成は図16とほぼ同様であるが、周期構造5を備えた誘電体4が加害半導体チップ23ではなく、加害半導体チップ23と被害半導体チップ24との間の半導体パッケージ基板6上に配置されている点で異なる。
図17の構成によっても、図16と同様にノイズ伝搬を抑制する効果を得ることができる。
【実施例10】
【0044】
図20は、本発明に係る半導体装置の第一の実施例の変形例である。
図5は加害回路2と被害回路3との間に周期構造4を備えた誘電体5を配置する構造であるが、図20のように、半導体チップ1の表面のうち、加害回路2や被害回路3の配置されていない領域をすべて周期構造4付きの誘電体5により覆うことで、伝搬ノイズ遮断の効果を大きくすることができる。
【実施例11】
【0045】
図21は、本発明に係る半導体装置の第十の実施例の説明図である。
実施例1乃至10においては、シリコン等により構成される半導体チップ1上に加害回路2や被害回路3を設けて、それらの回路間に周期構造4付きの誘電体5を配置することにより、加害回路2から被害回路3へのノイズ伝搬を遮断した半導体装置が可能であるが、半導体チップ自体を周期構造付きの誘電体により構成しても良い。その場合は、比誘電率が所定の値以上の半導体チップを用いることにより、半導体チップ自体が誘電体としてノイズ遮断することが可能となるため、半導体製造の工程において、半導体チップ内に誘電体を内蔵させるステップが不要となる。
【符号の説明】
【0046】
1 半導体チップ、2 加害回路、3 被害回路、4 誘電体、5 周期構造、6 半導体パッケージ基板、7 BGA、10 電子回路基板、
11 ディジタル信号処理LSI、12 アナログRF処理LSI、13 ノイズ、21 半導体積層チップ、22 貫通ビア、23 加害チップ、24 被害チップ、25 ノイズ電流、26−1 ワイヤボンディング、26−2 ワイヤボンディング、26−3 ワイヤボンディング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップ上に配置されたディジタル部と、
前記半導体チップ上に配置されたアナログRF部と、
前記ディジタル部から伝播するノイズを遮断するような位置に配置された周期構造を有する誘電体と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記ディジタル部と前記アナログRF部との間に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記アナログRF部を囲むように配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記ディジタル部を囲むように配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記アナログRF部と前記ディジタル部との各々から実質的に等間隔の位置に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記半導体チップを貫通して備えられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体の比誘電率は53以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記誘電体はペロブスカイトであることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体チップは、裏面にBGAを備えた半導体基板の表面に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップ上に配置されたディジタル部と、
前記半導体チップ上に配置されたアナログRF部と、
前記ディジタル部から伝播するノイズを遮断するような位置に配置された周期構造を有する誘電体と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記ディジタル部と前記アナログRF部との間に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記アナログRF部を囲むように配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記ディジタル部を囲むように配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記アナログRF部と前記ディジタル部との各々から実質的に等間隔の位置に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体は、前記半導体チップを貫通して備えられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記誘電体の比誘電率は53以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記誘電体はペロブスカイトであることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体チップは、裏面にBGAを備えた半導体基板の表面に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−9463(P2012−9463A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141151(P2010−141151)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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