説明

半導体集積回路用梱包テープキャリア

【課題】 チップサイズを大きくすることなく半田ボール端子の損傷を防ぐことができる半導体集積回路用梱包テープキャリアを提供する。
【解決手段】 テープ35はポリスチレン樹脂によるテープであり、側縁に沿ってスプロケット穴11が形成されている。また、このテープ35には、一定間隔で正方形状の開口部36が形成され、該開口部36の下端縁にICチップ2aが収納される箱状のエンボス部31が連設されている。そして、各エンボス部31にICチップ2aが収納された後、上面を封止フィルム13によって封止される。エンボス部31は、その側面が底面に向かって内側に一定角度傾斜して形成され、かつ、その側面に、ICチップ2aの移動を制限する横ズレ防止壁33が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として超小型半導体集積回路パッケージを用いたIC(半導体集積回路)チップの梱包、搬送に用いて好適な半導体集積回路用梱包テープキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は超小型半導体集積回路パッケージ(以下、CSP(Chip Size Package)パッケージという)を用いたICチップの構造を示す平面図、側面図および裏面図である。この図において、符号2は上面が正方形状のICチップであり、上面の隅部に位置マーク3が付けられている。また、底面は封止樹脂6によって封止され、この封止樹脂6に正方形状に配置された9個の半田ボール端子が取り付けられている。
【0003】
図8は、従来から、このようなICチップの梱包、搬送に用いられているエンボステープキャリア9の構成を示す平面図および側面図である。このエンボステープキャリア9は帯状をなし、側縁に沿ってスプロケット穴11が形成され、また、裏面には一定間隔でICチップ2を収納するエンボス部14が形成されている。そして、各エンボス部14にICチップが収納された後、上面を封止フィルム13によって封止するようになっている。このエンボステープキャリア9はポリスチレン樹脂によって一体成型で製造され、また、封止フィルム13は熱圧着によって取り付けられる。
【0004】
図9はエンボステープキャリア9をテープリール17に巻いた状態を示す図である。プリント基板製造工程において、ICチップ2をプリント基板に実装するマウント機にテープリール17がセットされる。そして、マウント機を稼働させると、ICチップが自動的にプリント基板にマウントされる。エンボステープキャリア9の引き出しは、マウント機のスプロケットギヤがスプロケット穴11にかみ合い、同ギヤの回転によって行われる。
なお、従来のこの種のテープキャリアに関する文献として、特許文献1〜3が知られている。
【特許文献1】特開2000-33969号公報
【特許文献2】特開2002-68288号公報
【特許文献3】特開2003-26229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した図8および図9に示すエンボステープキャリア9には次の問題がある。すなわち、出荷輸送の過程で、ICチップ2がエンボス部14の内部で図10に矢印で示すように振動する。このため、ICチップ2の半田ボール端子5が、エンボス部14の底面との接触、摩擦によって損傷し、図11に示すように、高さが均一ではなくなる。そして、摩擦によって半田ボール端子が損傷した状態でICチップ2をプリント基板に半田付けすると、図12に示すように、半田ボール端子の高さが均一でないため接触不良が発生する。
【0006】
そこで、上述した問題を解決するため、保持棚型エンボステープキャリアが開発された。図13(a)は保持棚型エンボステープキャリアの平面図、(b)は側面図、(c)はエンボス部22にICチップ2を挿入したところを示す図である。これらの図に示すように、保持棚型エンボステープキャリア21は、エンボス部22の内壁に沿ってICチップ保持棚26を設けたもので、ICチップ2の周辺部がこの保持棚26によって保持され、これにより、半田ボール端子5がエンボス部22の底面に接触することがなく、この結果、半田ボール端子5の損傷を防ぐことができる。
【0007】
しかしながら、保持棚26によってICチップ2を保持するためには、ICチップ2の周辺部に一定幅のスペース、具体的には、図14に示すように、半田ボール端子5の中心から外周線までの距離SPとして少なくとも0.5mmが必要である。そして、周辺部にこのスペースをとると、半田ボール端子5のピッチ間隔が0.5mmと決まっていることから、同図に示すように、9個の端子を有するICチップ2の場合、縦、横寸法が共に2mmとなる。このように、保持棚26を設けると、縦、横のサイズが大きくなってしまい、また、サイズが大きくなることによってチップ単価が上昇する問題がある。
【0008】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、チップサイズを大きくすることなく半田ボール端子の損傷を防ぐことができる半導体集積回路用梱包テープキャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、所定の長さのテープ部材に一定間隔で開口部が形成され、該開口部にICチップが収納される箱状の収納部が連設された半導体集積回路用梱包テープキャリアにおいて、前記収納部の側面を該収納部の底面に向かって内側に一定角度傾斜して形成し、前記側面に、前記ICチップの移動を制限する横ズレ防止壁を設けたことを特徴とする半導体集積回路用梱包テープキャリアである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体集積回路用梱包テープキャリアにおいて、前記横ブレ防止壁は三角柱状をなし、その高さが、前記収納部に収納されたICチップの上面と前記開口部との間の長さより大であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ICチップの輸送中の摩擦による半田ボール端子の損傷を防ぐことができる効果がある。また、ICチップの周辺スペース幅に特段の制限がなく、これにより、半田ボール端子の損傷を防ぐためICチップのサイズを大きくする必要がない利点が得られる。また、ICチップのサイズを大きくする必要がないことから、ICチップのコストが上昇しない利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の一実施の形態によるエンボステープキャリア30の構成を示す平面図および側面図である。この図において、符号35はポリスチレン樹脂によるテープであり、側縁に沿ってスプロケット穴11が形成されている。また、このテープ35には、一定間隔で正方形状の開口部36が形成され、該開口部36の下端縁にICチップ2aが収納される箱状のエンボス部(収納部)31が連設されている。そして、各エンボス部31にICチップ2aが収納された後、上面を封止フィルム13によって封止するようになっている。このエンボステープキャリア31はポリスチレン樹脂によって一体成型で製造され、また、封止フィルム13は熱圧着によって取り付けられる。
【0013】
以上の構成において、エンボス部31以外の構成は、従来のエンボステープキャリアと同様であり、以下、エンボス部31について詳述する。
図2はエンボス部31の構成を示す側面図であり、この図に示すように、エンボス部31は4側面31aがいずれも内側に一定角度傾斜しており、底面31bの大きさが開口部より小さくなっている。これにより、エンボス部31内にICチップ2aを挿入すると、ICチップ2aの下面の周縁部が図に示すように側面31aに当接し(符号A参照)、これにより、半田ボール端子5がエンボス部31の底面31bに接触するのを防ぐことができる。
【0014】
図3はエンボス部31の側面31aが開口部36となす角αを説明するための図である。この実施形態において使用されるICチップ2aは、半田ボール端子5の中心から外周線までの長さSP=0.3mmである。他の寸法は従来のもの(図14)と同じであり、半田ボール端子5の直径D=0.3mm、半田ボール端子5の高さb=0.24mmである。また、半田ボール端子5の外周部からチップの外周線までの長さは、a=0.15mmである。そして、図に示すように、ICチップ2aの裏面の外周縁と、半田ボール端子5の最右端の接線および最下端の接線の交点Pとを結ぶ直線に側面31aを一致させれば、半田ボール端子5が側面31aに接触することがないことから、角度αはこの直線と側面31aが一致するように決められており、
α=arc(tanb/a)
なる式によって求められる。この式に
a=0.15
b=0.24
を代入すると、
α=57.9度
として求められる。
【0015】
しかし、単に側面31aを傾斜させただけでは、移動中の振動によって、図4に示すように、ICチップ2aが傾き、半田ボール端子5がエンボス部31の底面31bに接触してしまう。そこで、この実施形態においては、図1、図5に示すように、上述した側面31aの傾斜構造に加えて、さらに横ズレ防止壁33を4側面31aの各内面に形成している。この横ズレ防止壁33は、三角柱状をなし、その縦面がICチップ2aの側面と僅かの間隙をおいて形成され、横面が開口部36と平行に形成され、斜め面がエンボス部31の側面31aに合致している。また、その高さHは、ICチップ2aの上面とエンボス部31の開口部36との間の長さcより大きい長さに形成されている。高さHをこのような長さに形成されることによって、ICチップ2aが振動によって開口部36まで持ち上がっても横ズレ防止壁33を越えて横ズレすることを防ぐことができる。
【0016】
図6は、この実施形態において使用されるICチップ2aの構成を示す平面図、側面図および裏面図である。この図に示すように、この実施形態によればICチップ2aの半田ボール端子5の中心から外周線までの長さSPを0.3mmとすることができ、この結果、ICチップ2aの外形寸法を、
1.6mm×1.6mm
とすることができる。これにより、上述したICチップ2aは、従来の2.0mm×2.0mmのICチップ2に比較し、面積を36%縮小することができる。そして、チップサイズの縮小によりIC製造工程での良品歩留まり向上と製造コストの削減を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、主としてCSPパッケージを用いたICチップの製造工場において用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態によるエンボステープキャリアの構成を示す平面図および側面図である。
【図2】側面を傾斜させたエンボス部の構成を示す図である。
【図3】図2におけるエンボス部の側面と開口面とのなす角αを説明するための図である。
【図4】図2に示すエンボス部の問題点を説明するための図である。
【図5】図2に示すエンボス部をさらに改良した、図1に示すエンボス部31の側断面図である。
【図6】図1に示すエンボステープキャリアに収納されるICチップの構成を示す平面図、側面図および裏面図である。
【図7】従来のエンボステープキャリアに収納されるICチップの構成を示す平面図、側面図および裏面図である。
【図8】従来のエンボステープキャリアの構成を示す平面図および側面図である。
【図9】図8に示すエンボステープキャリアがテープリールに巻かれた状態を示す図である。
【図10】従来のエンボステープキャリアの問題点を説明するための図である。
【図11】従来のエンボステープキャリアの問題点を説明するための図である。
【図12】従来のエンボステープキャリアの問題点を説明するための図である。
【図13】図8に示すエンボステープキャリアを改良した保持棚型エンボステープキャリアの平面図、側面図およびエンボス部22にICチップ2を挿入したところを示す図である。
【図14】従来のエンボステープキャリアに収納されるICチップの寸法を示す平面図および裏面図である。
【符号の説明】
【0019】
2a…ICチップ、5…半田ボール端子、11…スプロケット穴、30…エンボステープキャリア、31…エンボス部、31a…側面、31b…底面、33…横ズレ防止壁、35テープ、36…開口部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さのテープ部材に一定間隔で開口部が形成され、該開口部にICチップが収納される箱状の収納部が連設された半導体集積回路用梱包テープキャリアにおいて、
前記収納部の側面を該収納部の底面に向かって内側に一定角度傾斜して形成し、
前記側面に、前記ICチップの移動を制限する横ズレ防止壁を設けた
ことを特徴とする半導体集積回路用梱包テープキャリア。
【請求項2】
前記横ブレ防止部材は三角柱状をなし、その高さが、前記収納部に収納されたICチップの上面と前記開口部との間の長さより大であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路用梱包テープキャリア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−151398(P2006−151398A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340159(P2004−340159)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】