説明

半導体集積回路装置及びそれを用いた電源電圧監視システム

本発明に係る半導体集積回路装置であるリセットIC(1)は、入力電圧(Vin)を基準電圧と比較して入力電圧(Vin)の立ち上がり、立ち下がりを検出する検出回路(4)と、検出回路(4)からの立ち上がり検出信号を、接続端子(CT)を介して接続されたコンデンサ(C)を充電することにより遅延させるとともに第1電圧の出力信号(Vout)が与えられることによりコンデンサ(C)を放電する遅延回路(8)と、遅延回路(8)により遅延された立ち上がり検出信号を保持する保持回路(9)と、保持回路(9)で保持された立ち上がり検出信号により第1電圧となる出力信号(Vout)を生成するとともに検出回路(4)からの立ち下がり検出信号により第2電圧となる出力信号(Vout)を生成するドライバ(10)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)、DSP(Digital Signal Processor)、ロジック回路等の制御部を有する電子機器に搭載され、この電子機器に供給される電源電圧を監視し、設定された電圧を検出する半導体集積回路装置及びそれを用いた電源電圧監視システムに関するものであり、特に、前記電源電圧が設定電圧を超えたことを検出したときの出力信号を遅延させる遅延回路を備えた半導体集積回路装置及びそれを用いた電源電圧監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイコン、DSP、ロジック回路等の制御部を有する電子機器には、安定した動作を保証するために、この電子機器に供給される電源電圧が所定電圧以上になったときに、前記制御部をリセット解除して動作させるようにしているものがある。また、この電源電圧がダウンして前記制御部等が動作不能になる前に、データバックアップ等の所定の電源ダウン時の処理を行う必要がある場合もある。このため、多くの電子機器は、供給される電源電圧を監視して所定の電圧になったことを検出する電圧検出装置を搭載している。また、このような電圧検出装置には、前記電源電圧が所定の電圧以上になったことを検出した後に所定の遅延時間だけ出力信号を遅延させる遅延機能を備えたものがある。これは、供給される電源電圧は、通常、所定の電圧以上になった後も更に上昇し、その後安定するので、所定の電圧になったことを検出した後に、遅延させて前記電子機器の制御部を動作させた方が、よりいっそう前記電子機器の安定した動作が期待できるからである。
【0003】
図7は、このような電圧検出装置である従来のリセットIC(半導体集積回路装置)をを示す回路図である。図7において、1aはリセットICを示し、リセットIC1aは外部端子として、入力電圧Vinが入力される入力端子2と、入力電圧Vinが所定の電圧より大きいか小さいかを表す出力信号(監視信号)Voutを出力する出力端子3と、リセットIC1aの外部に取り付けられるコンデンサCの一端へ電気的に接続される接続端子CTを備えている。尚、コンデンサCの他端は、グランドGNDに接地されるようになっている。また、この入力電圧Vinは、通常、リセットIC1aが搭載される電子機器に供給される電源電圧であり、出力端子3からの出力信号Voutによって前記電子機器内部のマイコン、DSP、ロジック回路等の制御部がリセット状態とリセット解除状態とに切り換えられるようになっている。
【0004】
図7に示すリセットIC1aの内部は、入力端子2に分圧回路5が接続され、分圧回路5からの出力がコンパレータ(比較回路)11の反転入力端子(−)に与えられるようになっている。また、コンパレータ11の非反転入力端子(+)には基準電圧発生回路7からの基準電圧Vrefが与えられるようになっている。そして、コンパレータ11の出力端子はNチャンネル型のMOSトランジスタ(スイッチ)12のゲートに接続され、MOSトランジスタ12のドレインは充電抵抗Rを介して電源Vddに接続されるとともに、スレッショルド電圧にヒステリシスを有するアンプ13の入力端子に接続されている。また、MOSトランジスタ12のソースはグランドGNDに接続され、アンプ13の出力端子はバッファ用のインバータ14、15を介して出力端子3に接続されている。
【0005】
このような構成のリセットIC1aの動作を図8を参照して説明する。図8はリセットIC1aの各外部端子の電圧波形を示す波形図であり、上段に入力端子2に印加される入力電圧Vinの電圧波形、中段に接続端子CTの端子電圧Vctの電圧波形、下段に出力端子3からの出力信号Voutの電圧波形を示し、いずれも縦軸は電圧、横軸は時間を示している。また、図8に示すVDETはリセット検出電圧であり、VDET+ΔVDETはリセット解除電圧である。リセット検出電圧とは、出力信号Voutがハイレベル(以下、“H”という)からローレベル(以下、“L”という)に切り換わる電圧のことであり、リセット解除電圧とは、出力信号Voutが“L”から“H”に切り換わる電圧のことである。また、リセット検出電圧とリセット解除電圧との差であるΔVDETをヒステリシス電圧と呼ぶ。ヒステリシス電圧をもたせることにより、入力電圧Vinにノイズ等(ヒステリシス電圧内)がある場合の誤動作が防止できる。尚、図7に示す分圧回路5を、入力電圧Vinを所定の分圧比で分圧する分圧抵抗とコンパレータ11の出力に応じてオン/オフして前記分圧比を変えるようにしたスイッチ等で構成して、前記ヒステリシス電圧ΔVDETをもたせるようにすることが可能である。
【0006】
先ず、入力電圧Vinがスイープアップした場合の動作を説明する。図8に示すように、時間Tのときから入力電圧Vinが徐々に上昇、即ち、スイープアップを始める。この入力電圧Vinは図7に示す分圧回路5で分圧され、分圧回路5からの分圧電圧がコンパレータ11の反転入力端子(−)に与えられており、コンパレータ11はこの分圧電圧と基準電圧発生回路7からの基準電圧Vrefとを比較する。そして、この分圧電圧が基準電圧Vrefより小さいとき、即ち、入力電圧Vinがリセット解除電圧VDET+ΔVDETより小さいとき、コンパレータ11の出力は“H”になるので、MOSトランジスタ12はオンし、MOSトランジスタ12のドレインはグランドGNDの電位となる。従って、このとき、コンデンサCは放電状態であり、接続端子CTの端子電圧Vctは0Vである。また、アンプ13、インバータ14、15を通じて出力信号Voutは“L”の状態になっている。
【0007】
そして、時間Tのときに入力電圧Vinがリセット解除電圧VDET+ΔVDETに達すると、分圧回路5からの分圧電圧が基準電圧Vrefを超えるので、コンパレータ11の出力は“L”になり、MOSトランジスタ12はオフになる。すると、コンデンサCは電源Vddから充電抵抗Rで制限された充電電流により充電され始め、接続端子CTの端子電圧Vctは充電抵抗Rの抵抗値とコンデンサCの容量から成る時定数に応じて上昇する。
【0008】
そして、端子電圧Vctがアンプ13のスレッショルド電圧Vth(on)を超える時間Tのときにアンプ13の出力が“L”から“H”に反転し、出力信号Voutが“L”から“H”に切り換わる。出力信号Voutが“H”になることで、リセットIC1aが搭載された電子機器はリセット状態が解除され動作状態になる。ここで、時間Tと時間Tとの時間差が、入力電圧Vinの立ち上がり時に出力信号Voutが“L”から“H”に遅延して切り換わる遅延時間TPLHであり、入力電圧Vinが安定した後に前記電子機器のリセット状態を解除して動作させるために、出力信号Voutの“L”から“H”への遷移を遅らせる時間である。この遅延時間TPLHは、コンデンサCを異なった容量のコンデンサに変えることで任意の時間に設定できる。
【0009】
次に、入力電圧Vinがスイープダウンした場合の動作を説明する。図8に示すように、時間Tのときから入力電圧Vinが徐々に下降、即ち、スイープダウンを始める。入力電圧Vinがリセット検出電圧VDETより大きいとき、コンデンサCは充電状態であり、接続端子CTの端子電圧Vctは電源Vddの電位になっており、出力信号Voutは“H”である。その状態から入力電圧Vinがスイープダウンし、時間Tでリセット検出電圧VDETより小さくなったとき、分圧回路5からの分圧電圧が基準電圧Vrefより小さくなるので、コンパレータ11の出力は“H”になり、MOSトランジスタ12はオンになる。すると、コンデンサCはMOSトランジスタ12を通じて放電され、接続端子CTの端子電圧VctはMOSトランジスタ12のオン抵抗とコンデンサCの容量から成る時定数に応じて下降する。
【0010】
そして、端子電圧Vctがアンプ13のスレッショルド電圧Vth(off)より小さくなる時間Tのときにアンプ13の出力は“H”から“L”に反転し、出力信号Voutは“H”から“L”に切り換わる。出力信号Voutが“L”になることで、リセットIC1aが搭載された電子機器はリセット状態となり、前記電子機器へ供給される電源が低下することにより前記電子機器が誤動作や暴走を起こす前に、前記電子機器の動作を停止してそのような誤動作や暴走を防ぐことができる。また、前記電子機器にデータバックアップ等の電源ダウン時の処理を行わせることもできる。ここで、時間Tと時間Tとの時間差が、入力電圧Vinの立ち下がり時に出力信号Voutが“H”から“L”に遅延して切り換わる遅延時間TPHLである。入力電圧Vinの立ち上がり時の遅延時間TPLHを長くするためにコンデンサCの容量を大きくすると、この入力電圧Vinの立下り時の遅延時間TPHLも長くなる。
【0011】
また、電源電圧と規定の電圧値とを比較して電圧の立ち上がりあるいは立ち下がりを検出する電圧検出手段と、この電圧検出手段が電圧の立ち上がりを検出したときこの検出信号を所定の遅延時間だけ遅延させる信号遅延手段と、この信号遅延手段によって遅延された検出信号に基づいて回路のリセット制御を行うためのリセット制御信号を発生させるリセット出力部とを備えたリセット制御回路部であって、異なった遅延時間を有するリセット制御回路部を2組直列または並列に配置したリセット制御回路もある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−206811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
マイコン、DSP、ロジック回路等の制御部を有する電子機器に搭載され、この電子機器に供給される電源電圧を監視し、設定された電圧を検出する電圧検出装置は、前記電源電圧の立ち上がりを検出した場合には、前記電子機器を安定した電源電圧で動作させるために、所定の遅延時間後に出力信号を切り換え、前記電源電圧の立ち下がりを検出した場合には、前記電子機器の暴走や誤動作を防止するために即座に出力信号を切り換えることが望ましい。
【0013】
しかしながら、図7に示す従来のリセットIC1aの場合、入力電圧Vinの立ち上がり時の出力信号Voutの切り換え遅延時間TPLH(図8参照)を長くするために、コンデンサCの容量を大きくすると、入力電圧Vinの立ち下がり時の出力信号Voutの切り換え遅延時間TPHL(図8参照)も長くなり、この遅延時間TPHLが長いと、入力電圧Vinの下降が短い時間で行われた場合には、入力電圧VinがリセットIC1aの搭載される電子機器が正常動作不能な電圧にまで低下した後に出力信号Voutが切り換わるという現象が発生し、リセットIC1aを搭載した意味がなくなってしまうという問題があった。また、瞬時の停電等で入力電圧Vinが短い時間で下降及び上昇を行った場合、即ち、入力電圧が短い周期で周波数変動をした場合、コンデンサCの放電による前記遅延時間TPHLのために出力信号Voutが切り換わらず、入力電圧Vinの低下を検出できないという問題もあった。
【0014】
また、特許文献1に記載の従来技術では、遅延時間の異なる2組のリセット制御回路部を用いることにより、電源電圧の立ち上がり時には長い方の遅延時間を有するリセット制御回路部からリセット制御信号を出力させ、立ち下がり時には短い方の遅延時間を有するリセット制御回路部からリセット制御信号を出力させることができるが、立ち下がり時の出力信号の遅延時間が無くなることはないので、やはり電源電圧が短い周期で周波数変動をする場合に出力信号を追従させることができない。また、同様のリセット制御回路部を2組使用する必要があり、部品点数が増加し、装置が大型化するという問題があった。
【0015】
本発明は、上記の点に鑑み、入力電圧の立ち上がりを検出した場合には出力する監視信号の電圧を所定の遅延時間だけ遅延させて切り換え、入力電圧の立ち下がりを検出した場合には即座に前記監視信号の電圧を切り換えることにより、入力電圧の周波数変動に対する反応を向上させた半導体集積回路装置及びそれを用いた電源電圧監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、入力電圧を所定の電圧と比較することによって入力電圧を監視し、その比較結果を表す電圧を出力する半導体集積回路装置において、入力電圧と基準電圧との比較により入力電圧の立ち上がりを検出して入力電圧の検出信号を出力する検出回路と、前記検出回路からの検出信号を時定数調整方法により遅延させる遅延回路と、前記検出回路で入力電圧の立下りを検出したときに、直ちに、前記検出信号の出力を禁止するドライバとを備え、前記ドライバで生成された出力電圧を監視信号として出力することを特徴としている。
【0017】
この構成によると、入力電圧が立ち上がったときには、出力する監視信号の電圧を時定数調整方法により遅延して切り換え、入力電圧が立ち下がったときには、出力する監視信号の電圧を直ちに切り換えることができる。
【0018】
また、例えば、コンデンサが接続される接続端子と、前記検出回路の出力と前記遅延回路の出力が与えられるとともに前記遅延回路により遅延された前記検出信号を保持する保持回路とを備え、前記遅延回路は、前記検出回路からの検出信号を前記接続端子を介して前記コンデンサを充電することにより遅延させるとともに検出信号が出力されたことにより前記コンデンサを放電し、前記ドライバは、前記保持回路で保持された検出信号により第1電圧を生成するようにすると良い。
【0019】
この構成によると、入力電圧が立ち上がったときには、出力する監視信号を前記コンデンサの容量に応じた遅延時間だけ遅延して第2電圧から第1電圧に切り換え、前記入力電圧が立ち下がったときには、出力する監視信号を直ちに第1電圧から第2電圧に切り換えることができる。従って、前記入力電圧の周波数変動に対する前記監視信号の反応を向上させることができる。
【0020】
また、例えば、前記遅延回路は、直流電源と前記接続端子間に接続された充電抵抗と、前記接続端子とグランド間に接続された第1のスイッチと、前記検出回路からの検出信号が与えられ、且つ、第2電圧の前記監視信号が与えられているときに第1のスイッチをオフする論理ゲートと、前記接続端子の電圧に応じてハイレベル/ローレベルの信号を出力するアンプとから構成すると良い。
【0021】
この構成によると、入力電圧が立ち上がったときに前記論理ゲートが第1のスイッチをオフすることにより前記直流電源からの前記充電抵抗で制限された充電電流で前記コンデンサを充電し、前記コンデンサが充電されるに従って上昇する前記接続端子の電圧が、前記アンプがハイレベルの信号を出力する電圧に達するまでの時間だけ、前記検出回路からの検出信号を遅延させることができるとともに、前記監視信号が第1電圧であるときに前記論理ゲートが第1のスイッチをオンすることにより前記コンデンサを放電することができる。また、前記監視信号が第1電圧であるときは前記論理ゲートが第1のスイッチをオンして前記遅延回路の入力を低インピーダンスにしているので、ノイズ等により前記遅延回路が誤動作することを防止することができる。
【0022】
また、例えば、前記遅延回路は、前記直流電源と前記充電抵抗間に接続され第1のスイッチと反対のオン/オフ動作を行う第2のスイッチを有すると、第1のスイッチがオフしたときは第2のスイッチがオンして前記コンデンサを充電し、第1のスイッチがオンしたときは前記コンデンサを放電することができるとともに第2のスイッチがオフすることにより前記直流電源から前記充電抵抗及びオンしている第1のスイッチを通じてグランドへ無駄な電流が流れるのを防ぐことができる。また、第1のスイッチがオンして前記コンデンサが放電状態のときは、第2のスイッチがオフすることにより前記直流電源が切り離されているので、前記直流電源からノイズが混入することがなくなる。尚、前記コンデンサを充電する電源としての前記直流電源の代わりに前記入力電圧を用いても良い。また、第1、第2スイッチをMOSトランジスタで構成すると、消費電力を少なくし、前記コンデンサへの充放電電流による電力損失を少なくすることができる。
【0023】
また、例えば、前記保持回路が、前記遅延回路により遅延された検出信号がクロック入力されてセットされ前記検出回路で入力電圧の立下りを検出したときにリセットされるDラッチであると、入力電圧が立ち上がったときの前記遅延回路により遅延された検出信号を入力電圧が立ち下がるまで保持する保持回路が実現できる。
【0024】
また、例えば、前記保持回路が、前記検出回路の出力と前記監視信号とに応じて前記遅延回路と前記ドライバ間を接続/開放するスイッチ回路であると、入力電圧が立ち上がったときの前記遅延回路により遅延された検出信号を入力電圧が立ち下がるまで保持し、この保持した前記検出信号を前記ドライバに与える保持回路が実現できる。また、このようにすると保持回路を簡素化することができ、半導体集積回路装置の面積を小さくして小型化することができる。
【0025】
また、例えば、前記スイッチ回路は、前記監視信号が第1電圧であるときにオンする第3のスイッチと前記検出回路からの検出信号が与えられたときにオンする第4のスイッチとが前記遅延回路と前記ドライバ間に並列に接続された構成であると、入力電圧が立ち上がったときの前記遅延回路により遅延された検出信号を入力電圧が立ち下がるまで保持する保持回路が簡単な構成で実現できる。尚、第3、第4のスイッチをMOSトランジスタで構成すると、消費電力が少なく、前記遅延回路と前記ドライバ間を低抵抗で接続できるスイッチ回路にすることができる。
【0026】
また、本発明は、前記半導体集積回路装置と該半導体集積回路装置の接続端子に接続されたコンデンサとを備え、前記半導体集積回路装置により電子機器に供給される電源電圧を監視し、前記半導体集積回路装置から出力される監視信号に応じて前記電子機器の制御部をリセット状態とリセット解除状態とに切り換える電源電圧監視システムを提供する。
【0027】
この構成によると、前記電源電圧が立ち上がったときには所定の遅延時間だけ遅延させて前記電子機器の制御部をリセット解除状態にして前記電子機器を安定した電源電圧で動作させることができ、前記電源電圧が所定の電圧以下に立ち下がったときには即座に前記電子機器の制御部をリセット状態にして暴走や誤動作を防止することができ、また、前記電源電圧の周波数変動に対する反応を向上させた電源電圧監視システムを実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、入力電圧を所定の電圧と比較することによって入力電圧を監視し、その比較結果を表す電圧を出力する半導体集積回路装置において、入力電圧と基準電圧との比較により入力電圧の立ち上がりを検出して入力電圧の検出信号を出力する検出回路と、前記検出回路からの検出信号を時定数調整方法により遅延させる遅延回路と、前記検出回路で入力電圧の立下りを検出したときに、直ちに、前記検出信号の出力を禁止するドライバとを備え、前記ドライバで生成された出力電圧を監視信号として出力するようにしたので、入力電圧が立ち上がったときには、出力する監視信号の電圧を時定数調整方法により遅延して切り換え、入力電圧が立ち下がったときには、出力する監視信号の電圧を直ちに切り換えることができ、入力電圧の周波数変動に対する反応を向上させた半導体集積回路装置及びそれを用いた電源電圧監視システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態のリセットICの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すリセットICの具体的回路を示す回路図である。
【図3】図1に示すリセットICの他の具体的回路を示す回路図である。
【図4】図3に示すスイッチ回路の内部回路を示す回路図である。
【図5】図2及び図3に示すリセットICの各外部端子の電圧波形を示す波形図である。
【図6】本発明の一実施形態の電源監視システムを搭載した電子機器の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】従来のリセットICを示す回路図である。
【図8】図7に示すリセットICの各外部端子の電圧波形を示す波形図である。
【符号の説明】
【0030】
1 リセットIC(半導体集積回路装置)
2 入力端子
3 出力端子
4 検出回路
5 分圧回路
6 比較回路
7 基準電圧発生回路
8 遅延回路
9 保持回路
10 ドライバ
11 コンパレータ(比較回路)
12、29、41、42 MOSトランジスタ(スイッチ)
13 アンプ
14〜18、20、25〜28、33 インバータ
19 NANDゲート(論理ゲート)
21 NANDゲート
22 Dラッチ(保持回路)
23 NANDゲート(ドライバ)
24 インバータ(ドライバ)
30 スイッチ回路(保持回路)
30a、30b 端子
30c、30d 制御端子
31 定電流回路(ドライバ)
32 MOSトランジスタ(ドライバ)
60 電子機器
61 電源端子
62 グランド(GND)端子
63 マイコン(制御部)
64 リセット(RST)端子
C コンデンサ
CT 接続端子
R 充電抵抗
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。説明の便宜上、従来例の図7と同一の部分には同一の符号を付している。図1は、本発明の一実施形態のリセットIC(半導体集積回路装置)の電気的構成を示すブロック図である。図1において、1はリセットICを示し、リセットIC1は外部端子として、入力電圧Vinが入力される入力端子2と、入力電圧Vinが所定の電圧より大きいか小さいかを表す出力信号(監視信号)Voutを出力する出力端子3と、リセットIC1の外部に取り付けられるコンデンサCの一端へ電気的に接続される接続端子CTを備えている。尚、コンデンサCの他端は、グランドGNDに接続されるようになっている。また、この入力電圧Vinは、通常、リセットIC1が搭載される電子機器に供給される電源電圧であり、出力端子3からの出力信号Voutによって前記電子機器内部のマイコン、DSP、ロジック回路等の制御部がリセット状態とリセット解除状態とに切り換えられるようになっている。
【0032】
図1に示すリセットIC1は内部に、検出回路4、遅延回路8、保持回路9、ドライバ10を備えており、検出回路4は、分圧回路5、比較回路6、基準電圧発生回路7から構成されている。入力端子2から入力された入力電圧Vinが分圧回路5に与えられ、分圧回路5からの分圧電圧と基準電圧発生回路7からの基準電圧Vrefとが比較回路6で比較される。そして、前記分圧電圧が基準電圧Vrefよりも大きくなったときに比較回路6から出力される立ち上がり検出信号(入力電圧の検出信号)が遅延回路8により所定の遅延時間だけ遅延されて、保持回路9に与えられる。この遅延回路8の遅延動作は、接続端子CTを介して接続されたコンデンサCを充電することにより行われる。尚、分圧回路5はリセットIC1の外部に設けられていても良い。
【0033】
また、保持回路9は、遅延回路8からの立ち上がり検出信号が与えられると、この立ち上がり検出信号を保持し、この立ち上がり検出信号を保持している間はドライバ10からの出力信号Voutが“H”になるようにドライバ10を制御する。また、出力信号Voutは遅延回路8に入力されるようになっており、出力信号Voutが“H”になると、遅延回路8はコンデンサCを放電する。このとき、コンデンサCが放電すると、遅延回路8からの前記立ち上がり検出信号は出力されなくなるが、保持回路9は既にこの立ち上がり検出信号を保持しており、ドライバ10からの出力信号Voutが“H”になるようにドライバ10を制御するので、出力信号Voutは“H”のままである。また、前記分圧電圧が基準電圧Vrefよりも小さくなったときに比較回路6から出力される立ち下がり検出信号が保持回路9に与えられると、保持回路9は前記立ち上がり検出信号の保持を解除する。また、この立ち下がり検出信号はドライバ10にも与えられ、ドライバ10は出力信号Voutを“H”から“L”に切り換える。
【0034】
このような構成の図1に示すリセットIC1は、入力電圧Vinが立ち上がったときにはコンデンサCの容量に応じた遅延時間だけ遅延して出力信号Voutを“L”から“H”に切り換え、入力電圧Vinが立ち下がったときには即座に出力信号Voutを“H”から“L”に切り換える。従って、このリセットIC1により、リセットIC1が搭載される電子機器に与えられる電源電圧を監視し、リセットIC1の出力信号Voutにより、前記電子機器内部のマイコン、DSP、ロジック回路等の制御部のリセット状態/リセット解除状態を切り換えるようにすると、前記電子機器に与えられる電源電圧が上昇するときには、所定の電圧より大きくなったときから遅延時間後に前記制御部をリセット解除状態にし、前記電源電圧が下降するときには、所定の電圧より小さくなったときに即座に前記制御部をリセット状態にして前記電子機器の暴走や誤動作を防止することができる。
【0035】
また、前記電源電圧が瞬時の停電等の短い周期の周波数変動をした場合であっても、前記電源電圧が所定の電圧より小さくなったときには即座に出力信号Voutを“H”から“L”に切り換えることができるので、前記制御部を即座にリセット状態にすることができる。即ち、前記電源電圧の周波数変動に対して出力信号の反応を向上させたリセットICにすることができる。
【0036】
図2は、図1に示すリセットIC1の具体的回路を示す回路図である。図2に示すリセットIC1の各外部端子は図1に示すリセットIC1と同じであるので、その説明は省略する。図2に示すリセットIC1の内部は、入力端子2に分圧回路5が接続され、分圧回路5の出力がコンパレータ(比較回路)11の反転入力端子(−)に与えられるようになっている。また、コンパレータ11の非反転入力端子(+)には基準電圧発生回路7からの基準電圧Vrefが与えられるようになっている。そして、コンパレータ11の出力端子はインバータ16を介してNANDゲート(論理ゲート)19の2つの入力端子の一方の入力端子に接続されている。
【0037】
また、NANDゲート19の出力端子はNチャンネル型のMOSトランジスタ(スイッチ)12のゲートに接続され、MOSトランジスタ12のドレインは充電抵抗Rを介して電源Vddに接続されるとともに、スレッショルド電圧にヒステリシスを有するアンプ13の入力端子と接続端子CTに接続されている。また、MOSトランジスタ12のソースはグランドGNDに接続され、アンプ13の出力端子はインバータ20を介してNANDゲート21の2つの入力端子の一方の入力端子に接続されている。
【0038】
そして、NANDゲート21の出力端子はDラッチ(保持回路)22のクロック入力端子(C)に接続され、Dラッチ22の出力端子(Q)はNANDゲート(ドライバ)23の2つの入力端子の一方の入力端子に接続されている。また、Dラッチ22の反転出力端子とデータ入力端子(D)とが接続されている。また、NANDゲート23の出力端子はインバータ(ドライバ)24を介して出力端子3に接続され、出力端子3はインバータ25を介してNANDゲート19の他方の入力端子に接続されるとともに、インバータ26を介してNANDゲート21の他方の入力端子に接続されている。また、インバータ16の出力端子はインバータ27を介してDラッチ22のリセット入力端子に接続されるとともに、更に、インバータ28を介してNANDゲート23の他方の入力端子に接続されている。
【0039】
このような構成のリセットIC1の動作を図5を参照して説明する。図5は、図2に示すリセットIC1の各外部端子の電圧波形を示す波形図であり、上段に入力端子2に印加される入力電圧Vinの電圧波形、中段に接続端子CTの端子電圧Vctの電圧波形、下段に出力端子3からの出力信号Voutの電圧波形を示し、いずれも縦軸は電圧、横軸は時間を示している。
【0040】
先ず、入力電圧Vinがスイープアップした場合の動作を説明する。図5に示すように、時間T10のときから入力電圧Vinが徐々に上昇、即ち、スイープアップを始める。この入力電圧Vinは図2に示す分圧回路5で分圧され、分圧回路5からの分圧電圧がコンパレータ11の反転入力端子(−)に与えられており、コンパレータ11は、この分圧電圧と基準電圧発生回路7からの基準電圧Vrefとを比較する。そして、前記分圧電圧が基準電圧Vrefより小さいとき、即ち、入力電圧Vinがリセット解除電圧VDET+ΔVDETより小さいとき、コンパレータ11の出力は“H”になり、インバータ16を介してNANDゲート19の一方の入力端子は“L”となる。すると、NANDゲート19の出力は他方の入力端子の状態に関係なく“H”となるので、MOSトランジスタ12がオンし、MOSトランジスタ12のドレインはグランドGNDの電位となる。従って、コンデンサCは放電状態であり、接続端子CTの端子電圧Vctは0Vである。また、このときDラッチ22のリセット入力は“H”となるので、Dラッチ22はリセット状態であり、出力端子(Q)は“L”となり、NANDゲート23、インバータ24を介して出力電圧端子3の出力信号Voutは“L”の状態になっている。
【0041】
そして、時間T11のときに入力電圧Vinがリセット解除電圧VDET+ΔVDETに達すると、分圧回路5からの分圧電圧が基準電圧Vrefを超えるので、コンパレータ11の出力は“L”になる。すると、NANDゲート19の入力端子はいずれも“H”になるので、NANDゲート19の出力は“L”になり、MOSトランジスタ12はオフになる。すると、コンデンサCが電源Vddからの充電抵抗Rで制限された充電電流により充電され始め、接続端子CTの端子電圧Vctは充電抵抗Rの抵抗値とコンデンサCの容量から成る時定数に応じて上昇する。
【0042】
そして、端子電圧Vctがアンプ13のスレッショルド電圧Vth(on)を超える時間T12のときにアンプ13の出力が“L”から“H”に反転する。この“H”信号がインバータ20を介してNANDゲート21の一方の入力端子に入力されるので、NANDゲート21の出力、即ち、Dラッチ22のクロック入力が“H”になり、Dラッチ22の出力端子(Q)の出力は“H”になる。すると、NANDゲート23の入力端子はいずれも“H”になるので、出力信号Voutは“L”から“H”に切り換わる。ここで、時間T11とT12との時間差が、入力電圧Vinの立ち上がり時に出力信号Voutが“L”から“H”に遅延して切り換わる遅延時間TPLH1であり、図8に示す遅延時間TPLHと同様のものである。この遅延時間TPLH1は、コンデンサCを異なった容量のコンデンサに変えることで任意の時間に設定できる。
【0043】
そして、出力信号Voutが“H”になると、インバータ25を介してNANDゲート19の一方の入力端子が“L”になるので、NANDゲート19の出力は他方の入力端子の状態に関係なく“H”となり、MOSトランジスタ12はオンとなる。すると、MOSトランジスタ12のドレインがグランドGNDの電位となるので、コンデンサCは放電を開始する。そして、接続端子CTの端子電圧Vctがスレッショルド電圧Vth(off)より小さくなった時間Tの13ときにアンプ13の出力は“H”から“L”に反転するが、Dラッチ22のクロック入力は“H”のままであり、出力端子(Q)は“H”のまま変化しない。従って、出力信号Voutも“H”のまま変化しない。また、このとき、MOSトランジスタ12がオンしてアンプ13の入力端子が低インピーダンスになっているので、直流電源Vddからノイズ等が混入したとしても、アンプ13が誤動作することを防止することができる。
【0044】
次に、入力電圧Vinがスイープダウンした場合の動作を説明する。図5に示すように、時間T14のときから入力電圧Vinが徐々に下降、即ち、スイープダウンを始める。入力電圧Vinがリセット検出電圧VDETより大きいとき、NANDゲート23の入力端子はいずれも“H”であり出力は“L”である。そして、インバータ24を介した出力信号Voutは“H”である。その状態から入力電圧Vinがスイープダウンし、時間T15でリセット検出電圧VDETより小さくなったとき、分圧回路5からの分圧電圧が基準電圧Vrefより小さくなるので、コンパレータ11の出力は“H”になり、この“H”信号がインバータ16、27を介してDラッチ22のリセット端子に入力され、リセット入力が“H”であるのでDラッチ22はリセットされ、出力端子(Q)は“L”になる。また、このコンパレータ11の出力の“H”信号はインバータ16、27、28を介してNANDゲート23の一方の入力端子に入力され、NANDゲート23の出力は“H”になるので、インバータ24を介した出力信号Voutは“H”から“L”に切り換わる。このとき、図8に示す入力電圧Vinの立ち下がり時の出力信号Voutが“H”から“L”に切り換わる遅延時間TPHLに相当する遅延時間は存在せず、即座に出力信号Voutが“H”から“L”に切り換わる。
【0045】
このように、図2に示すリセットIC1は、入力電圧Vinが立ち上がったときにはコンデンサCの容量に応じた遅延時間だけ遅延して出力信号Voutを“L”から“H”に切り換え、入力電圧Vinが立ち下がったときには即座に出力信号Voutを“H”から“L”に切り換える。従って、このリセットIC1により、リセットIC1が搭載される電子機器に与えられる電源電圧を監視し、その出力信号Voutにより、前記電子機器内部の制御部のリセット状態/リセット解除状態を切り換えるようにすると、前記電子機器に与えられる電源電圧が上昇するときには、所定の電圧より大きくなったときから遅延時間後に前記制御部をリセット解除状態にし、前記電源電圧が下降するときには、所定の電圧より小さくなったときに即座に前記制御部をリセット状態にすることができる。
【0046】
図3は、図1に示すリセットIC1の他の具体的回路を示す回路図である。図3において、図2と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図3に示すリセットIC1が図2に示すリセットIC1と相違する点は、電源Vddと充電抵抗R間にPチャンネル型のMOSトランジスタ(スイッチ)29が設けられている点と、保持回路として図2に示すDラッチ22の代わりにスイッチ回路(保持回路)30が設けられている点と、出力信号Voutに所定の電圧を与えるためのドライバとして定電流源(ドライバ)31とNチャンネル型のMOSトランジスタ(ドライバ)32が設けられている点である。また、インバータ16の出力は、インバータ17、18を介してNANDゲート19の2つの入力端子の一方に接続されている。
【0047】
先ず、MOSトランジスタ29は、そのソースが電源Vddに接続され、ドレインが充電抵抗Rの一端に接続され、ゲートがMOSトランジスタ12のゲートとともにNANDゲート19の出力端子に接続されている。このような構成であると、NANDゲート19の出力が“L”のときは、MOSトランジスタ29がオン、MOSトランジスタ12がオフして電源Vddから充電抵抗R、接続端子CTを介してコンデンサCに充電電流が流れ、コンデンサを充電する。一方、NANDゲート19の出力が“H”のときは、MOSトランジスタ12がオンして接続端子CTを介してコンデンサCを放電するが、このとき、MOSトランジスタ29はオフするので、電源Vddから充電抵抗R及びオンしているMOSトランジスタ12を通じてグランドGNDに電流が流れなくなる。即ち、コンデンサCの放電時に電源Vddから充電抵抗Rを通じて流れる無駄な電流を無くすことができるので、リセットIC1の消費電力を低減することができる。尚、MOSトランジスタ29を図2に示すリセットIC1に設けることも可能である。
【0048】
次に、スイッチ回路30を説明する。スイッチ回路30は、例えば、図4に示すような回路で構成することができる。図4は、スイッチ回路30の内部回路を示す回路図である。スイッチ回路30は内部にNチャンネル型のMOSトランジスタ(スイッチ)41、42を有し、それぞれのドレインが共に端子30aに接続され、それぞれのソースが共に端子30bに接続されている。また、MOSトランジスタ41のゲートが制御端子30cに接続され、MOSトランジスタ42のゲートが制御端子30dに接続されている。このような構成のスイッチ回路30は、制御端子30c及び/または30dに“H”信号が入力されると端子30a、30b間を低抵抗で接続し、制御端子30c及び30dに“L”信号が入力されると端子30a、30b間を開放する。
【0049】
図3に示すリセットIC1において、スイッチ回路30の端子30aがアンプ13の出力端子に接続され、端子30bが出力端子3に接続されている。また、電源Vddに定電流源31の入力端子が接続され、その出力端子がMOSトランジスタ32のドレインと出力端子3とに接続されている。そして、MOSトランジスタ32のソースはグランドGNDに接続され、ゲートはスイッチ回路30の制御端子30dとインバータ17の出力端子に接続されている。また、出力端子3はインバータ33を介してスイッチ回路30の制御端子30cと、NANDゲート19の他方の入力端子に接続されている。
【0050】
このような構成の図3に示すリセットIC1の動作を先ほどと同じ図5を参照して説明する。先ず、入力電圧Vinがスイープアップした場合の動作を説明する。図5に示すように、T10のときから入力電圧Vinが徐々に上昇、即ち、スイープアップを始める。この入力電圧Vinは図3に示す分圧回路5で分圧され、分圧回路5からの分圧電圧がコンパレータ11の非反転入力端子(−)に与えられており、コンパレータ11は、この分圧電圧と基準電圧発生回路7からの基準電圧Vrefとを比較する。そして、入力電圧Vinがリセット解除電圧VDET+ΔVDETより小さいとき、コンパレータ11の出力は“H”になるので、インバータ16、17、18を介してNANDゲート19の一方の入力端子は“L”となり、NANDゲート19の出力は他方の入力端子の状態に関係なく“H”となるので、MOSトランジスタ12がオンし、MOSトランジスタ12のドレインはグランドGNDの電位となる。従って、コンデンサCは放電状態であり、接続端子CTの端子電圧Vctは0Vである。また、上述したように、このときMOSトランジスタ29はオフになり、電源Vddから充電抵抗R及びオンしているMOSトランジスタ12を通じてグランドGNDに無駄な電流が流れないようになっている。また、このとき、出力信号Voutは、MOSトランジスタ32のゲートが“H”入力でオンしているので“L”の状態になっている。また、スイッチ回路30は、制御端子30c、30dに共に“H”信号が入力され、端子30a、30b間が接続された状態である。
【0051】
そして、時間T11のときに入力電圧Vinがリセット解除電圧VDET+ΔVDETに達すると、分圧回路5からの分圧電圧が基準電圧Vrefを超えるので、コンパレータ11の出力は“L”になる。すると、NANDゲート19の2つの入力端子はいずれも“H”になるので、NANDゲート19の出力は“L”になり、MOSトランジスタ12はオフ、MOSトランジスタ29はオンになる。すると、コンデンサCが電源Vddから流れる充電抵抗Rで制限された充電電流により充電され始め、接続端子CTの端子電圧Vctは充電抵抗Rの抵抗値とコンデンサCの容量から成る時定数に応じて上昇する。このとき、MOSトランジスタ32のゲート入力は“L”になっており、MOSトランジスタ32はオフになるが、スイッチ回路30は制御端子30cの入力が“H”のままであるので、端子30a、30b間は接続された状態であり、アンプ13の出力端子が“L”なので、出力信号Voutは“L”のままである。
【0052】
そして、端子電圧Vctがアンプ13のスレッショルド電圧Vth(on)を超える時間T12のときにアンプ13の出力が“L”から“H”に反転するので、スイッチ回路30を介した出力信号Voutは“L”から“H”に切り換わる。すると、スイッチ回路30の制御端子30cの入力が“L”になるので端子30a、30b間が開放され、アンプ13の出力端子の状態に関係なく出力信号Voutは“H”に保持された状態になる。ここで、時間T11とT12との時間差が、入力電圧Vinの立ち上がり時に出力信号Voutが“L”から“H”に遅延して切り換わる遅延時間TPLH1であり、図8に示す遅延時間TPLHと同様のものである。この遅延時間TPLH1は、コンデンサCを異なった容量のコンデンサに変えることで任意の時間に設定できる。
【0053】
また、出力信号Voutが“H”になると、インバータ33を介してNANDゲート19の一方の入力端子が“L”になるので、NANDゲート19の出力は他方の入力端子の状態に関係なく“H”となり、MOSトランジスタ12はオンし、MOSトランジスタ12のドレインがグランドGNDの電位となるので、コンデンサCは放電を開始する。また、上述したように、このときMOSトランジスタ29はオフになり、電源Vddから充電抵抗R及びオンしているMOSトランジスタ12を通じてグランドGNDに無駄な電流が流れないようになっている。また、このようにMOSトランジスタ29がオフすることにより直流電源Vddから切り離されるので、直流電源Vddからのノイズ等の混入が防止されるとともに、MOSトランジスタ12がオンしてアンプ13の入力端子が低インピーダンスになっているので、アンプ13が誤動作することを防止することができる。そして、接続端子CTの端子電圧Vctがスレッショルド電圧Vth(off)より小さくなった時間T13のときにアンプ13の出力は“H”から“L”に反転するが、スイッチ回路30の端子30a、30b間が既に開放されているので、出力信号Voutは“H”のまま変化しない。
【0054】
次に、入力電圧Vinがスイープダウンした場合の動作を説明する。図5に示すように、時間T14のときから入力電圧Vinが徐々に下降、即ち、スイープダウンを始める。入力電圧Vinがリセット検出電圧VDETより大きいとき、上述したように、出力信号Voutは“H”である。その状態から入力電圧Vinがスイープダウンし、時間T15でリセット検出電圧VDETより小さくなったとき、分圧回路5からの分圧電圧が基準電圧Vrefより小さくなるので、コンパレータ11の出力は“H”になり、インバータ16、17を介した出力は“H”になる。すると、スイッチ回路30の制御端子30dが“H”になるので、端子30a、30b間が接続されるとともに、MOSトランジスタ32がオンするので、出力信号Voutは“H”から“L”に切り換わる。このとき、図8に示す入力電圧Vinの立ち下がり時の出力信号Voutが“H”から“L”に切り換わる遅延時間TPHLに相当する遅延時間は存在せず、即座に出力信号Voutが“H”から“L”に切り換わる。
【0055】
このように、図3に示すリセットIC1は、入力電圧Vinが立ち上がったときにはコンデンサCの容量に応じた遅延時間だけ遅延して出力信号Voutを“L”から“H”に切り換え、入力電圧Vinが立ち下がったときには即座に出力信号Voutを“H”から“L”に切り換える。また、図3に示すリセットIC1は、回路が簡素化されているので、部品点数が少なくなり、リセットIC1の面積を小さくすることができ、リセットIC1の電子機器等への搭載が容易となる。
【0056】
また、図2及び図3に示すリセットIC1において、直流電源Vddの代わりに入力電圧Vinを用いても構わない。そのようにすると、直流電源Vddが不要となり、リセットIC1を更に簡素化できる。
【0057】
また、以上説明した実施形態では、入力電圧Vinが立ち上がり、リセット解除電圧VDET+ΔVDETより大きくなったときに出力信号Voutを“L”から“H”に切り換え、入力電圧Vinが立ち下がり、リセット検出電圧VDETより小さくなったときに出力信号Voutを“H”から“L”に切り換えているが、この出力信号Voutの論理を逆にした回路にすることも可能である。また、本実施形態では、コンデンサCを充電/放電させるスイッチであるMOSトランジスタ12を駆動する論理ゲートとしてNANDゲートを用いているが、他のゲート素子を用いて同様の論理ゲートを構成することも可能である。
【0058】
次に、上述したようなリセットICを用いた電源監視システムを説明する。図6は、本発明の一実施形態の電源監視システムを搭載した電子機器の電気的構成を示すブロック図である。図6において、図1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図6において、60は、電源端子61とグランド(GND)端子62間に供給される電源電圧VDDにより動作する電子機器である。また、63は、電子機器60を制御するマイコン(制御部)であり、動作電源として電源電圧VDDが与えられている。尚、マイコン63の動作電源は電源電圧VDDではなく、電子機器60内部からの他の電源であっても良い。また、電子機器60の制御部はマイコンに限定されるものではなく、DSPやロジック回路であっても良い。
【0059】
また、電子機器60は上述したようなリセットIC1を備えており、リセットIC1の入力端子2が電源端子61に接続され、接続端子CTがコンデンサCを介してGND端子62に接続されている。そして、リセットIC1の出力端子3は、マイコン63のリセット(RST)端子64に接続されている。また、リセットIC1のグランドはGND端子62に接続されている。尚、このリセットIC1は、電源電圧VDDを動作電源としているが、別途、動作電源が与えられる構成であっても良い。
【0060】
次に、このような構成の電源監視システムの動作を説明する。電源電圧VDDがリセットIC1に予め設定されているリセット解除電圧VDET+ΔVDETより大きくなると、リセットIC1は、上述したように、コンデンサCの容量によって定まる所定の遅延時間TPLH1後に出力端子3の電圧を“L”から“H”に切り換える。そして、RST端子64に“H”電圧が与えられたマイコン63はリセット解除され電子機器60の制御を行うので、電子機器60は安定した電源電圧VDDを得て正常に動作する。
【0061】
一方、電源電圧VDDがリセットIC1に予め設定されているリセット検出電圧VDETより小さくなると、リセットIC1は、上述したように、出力端子3の電圧を“H”から“L”に即座に切り換える。そして、RST端子64に“L”電圧が与えられたマイコン63はリセット状態となり電子機器60の制御を中断するので、電子機器60は電源電圧VDDの電圧不足による暴走や誤動作を発生することなく即座に停止する。また、電源電圧VDDの周波数変動に対しても出力端子3の電圧を即座に切り換えて、マイコン63のリセット状態/リセット解除状態を切り換えることができる。
【0062】
このような電源監視システムであると、電源電圧VDDが立ち上がったときには所定の遅延時間だけ遅延させて電子機器60の制御部であるマイコン63をリセット解除状態にして電子機器60を安定した電源電圧VDDで動作させることができ、電源電圧VDDが所定の電圧以下に立ち下がったときには即座に電子機器60の制御部であるマイコン63をリセット状態にして電子機器60の暴走や誤動作を防止することができる。また、電源電圧VDDの周波数変動に対する反応を向上させた電源電圧監視システムにすることができる。
【0063】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各部の構成等を適宜に変更して実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によると、入力電圧が立ち上がったときには、出力する監視信号をコンデンサの容量に応じた遅延時間だけ遅延して第2電圧から第1電圧に切り換え、入力電圧が立ち下がったときには、即座に前記監視信号を第1電圧から第2電圧に切り換えることができる半導体集積回路装置が実現できるので、この半導体集積回路装置を、マイコン、DSP、ロジック回路等の制御部を有する電子機器に搭載され、この電子機器に供給される電源電圧を監視し、設定された電圧を検出する電圧検出装置として用いると、前記電源電圧の立ち上がりを検出した場合には、所定の遅延時間後に出力信号を切り換え、前記電子機器を安定した電源電圧で動作させることができるとともに、前記電源電圧の立ち下がりを検出した場合には、即座に出力信号を切り換え、前記電子機器の暴走や誤動作を防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を所定の電圧と比較することによって入力電圧を監視し、その比較結果を表す電圧を出力する半導体集積回路装置において、
入力電圧と基準電圧との比較により入力電圧の立ち上がりを検出して入力電圧の検出信号を出力する検出回路と、
前記検出回路からの検出信号を時定数調整方法により遅延させる遅延回路と、
前記検出回路で入力電圧の立下りを検出したときに、直ちに、前記検出信号の出力を禁止するドライバと、
を備え、前記ドライバで生成された出力電圧を監視信号として出力することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
コンデンサが接続される接続端子と、
前記検出回路の出力と前記遅延回路の出力が与えられるとともに前記遅延回路により遅延された前記検出信号を保持する保持回路と、
を備え、
前記遅延回路は、前記検出回路からの検出信号を前記接続端子を介して前記コンデンサを充電することにより遅延させるとともに検出信号が出力されたことにより前記コンデンサを放電し、
前記ドライバは、前記保持回路で保持された検出信号により第1電圧を生成することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記遅延回路は、
直流電源と前記接続端子間に接続された充電抵抗と、
前記接続端子とグランド間に接続された第1のスイッチと、
前記検出回路からの検出信号が与えられ、且つ、第2電圧の前記監視信号が与えられているときに第1のスイッチをオフする論理ゲートと、
前記接続端子の電圧に応じてハイレベル/ローレベルの信号を出力するアンプと、から成ることを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記遅延回路は、前記直流電源と前記充電抵抗間に接続され第1のスイッチと反対のオン/オフ動作を行う第2のスイッチを有することを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記保持回路が、前記遅延回路により遅延された検出信号がクロック入力されてセットされ前記検出回路で入力電圧の立下りを検出したときにリセットされるDラッチであることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記保持回路が、前記検出回路の出力と前記監視信号とに応じて前記遅延回路と前記ドライバ間を接続/開放するスイッチ回路であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項7】
前記スイッチ回路は、前記監視信号が第1電圧であるときにオンする第3のスイッチと前記検出回路からの検出信号が与えられたときにオンする第4のスイッチとが前記遅延回路と前記ドライバ間に並列に接続されて成ることを特徴とする請求項6に記載の半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の半導体集積回路装置と該半導体集積回路装置の接続端子に接続されたコンデンサとを備え、前記半導体集積回路装置により電子機器に供給される電源電圧を監視し、前記半導体集積回路装置から出力される監視信号に応じて前記電子機器の制御部をリセット状態とリセット解除状態とに切り換えることを特徴とする電源電圧監視システム。
【請求項9】
請求項5に記載の半導体集積回路装置と該半導体集積回路装置の接続端子に接続されたコンデンサとを備え、前記半導体集積回路装置により電子機器に供給される電源電圧を監視し、前記半導体集積回路装置から出力される監視信号に応じて前記電子機器の制御部をリセット状態とリセット解除状態とに切り換えることを特徴とする電源電圧監視システム。
【請求項10】
請求項6に記載の半導体集積回路装置と該半導体集積回路装置の接続端子に接続されたコンデンサとを備え、前記半導体集積回路装置により電子機器に供給される電源電圧を監視し、前記半導体集積回路装置から出力される監視信号に応じて前記電子機器の制御部をリセット状態とリセット解除状態とに切り換えることを特徴とする電源電圧監視システム。
【請求項11】
請求項7に記載の半導体集積回路装置と該半導体集積回路装置の接続端子に接続されたコンデンサとを備え、前記半導体集積回路装置により電子機器に供給される電源電圧を監視し、前記半導体集積回路装置から出力される監視信号に応じて前記電子機器の制御部をリセット状態とリセット解除状態とに切り換えることを特徴とする電源電圧監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/020437
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513291(P2005−513291)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011898
【国際出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】