説明

半生うどんの保存方法

【課題】保存剤を用いずに、風味を損なうことなく、長期に維持できる半生うどんの保存方法を提供すること。
【解決手段】半生うどんを、内表面部の少なくとも1%の面積を銀ゼオライトが占める包装材で包装し、かつ包装内部の酸素濃度を0.10%以下に維持することを特徴とする、半生うどんの保存方法を提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半生うどんの保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
うどんは、玉うどん、生うどん、半生うどん、干しうどん(乾麺)、冷凍うどん、フライうどんなどの形態で市場に流通している。うどんの風味は、食感、色、つや、香りなどによって評価される。これらのうどんの風味は、保存条件下において、水分、酸化性物質、並びに細菌やカビなどの微生物などの影響を受けやすい。
【0003】
半生うどんは、主としてゆで時間が所定の時間に設定されたうどんを指し、製麺後そのまま、若しくは表面に小麦粉等をまぶして包装された生うどんと、製麺後に乾燥工程を経由した干しうどんの中間の性質を有する。すなわち、半生うどんは、生うどんの水分の一部を乾燥したものであり、生うどんの風味を損なうことなく、干しうどんの保存性が加味された製品である。したがって、半生うどんは、保存に際して、生うどんと比して水分及び微生物の影響を低減させることができるが、水分を含む性質上、微生物汚染が生じにくい方法で保存することが望まれている。
【0004】
従来から、半生うどんの保存には、半生うどんに種々の保存剤を添加することにより微生物の増殖を抑え、半生うどんの保存期間を延長するという技術が用いられていた。保存剤としては、過酸化水素、エチルアルコール等のアルコール類、酢酸ナトリウム、アミノ酸類、酢酸、醸造酢等の有機酸塩類、リゾチーム等の酵素類が使用されてきた(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、これらの保存剤において、過酸化水素は発がん性の面から使用禁止となっている。アルコール類や酢酸ナトリウムなどのその他の保存剤は、その臭気によって半生うどんの風味を損なわせるという問題のみならず、身体への悪影響についても懸念されている。さらに、保存剤を使用する半生うどんの保存方法では、微生物以外の水分や酸化性物質などによる半生うどんの風味への影響を防ぐことができない。
【特許文献1】特開2001−178432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、上述した従来の問題点を解決するために、保存剤を用いずに、風味を損なうことなく、長期に維持できる半生うどんの保存方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、半生うどんの包装に内表面部の所定の面積を銀ゼオライトが占める包装材を用いれば、水分や酸化性物質などの半生うどんの風味を損なう物質を吸着することができ、さらに細菌やカビなどの微生物に対して抗菌性を発揮し得ることを見出した。さらに本発明者らは、該包装材に半生うどんを入れて、包装内部の酸素濃度を所定濃度以下に維持することにより、保存剤を用いずに、風味を損なうことなく、半生うどんを良好な状態で長期に保存することに成功した。
【0007】
したがって、本発明によれば、半生うどんを、内表面部の少なくとも1%の面積を銀ゼオライトが占める包装材で包装し、かつ包装内部の酸素濃度を0.10%以下に維持することを特徴とする、半生うどんの保存方法が提供される。
【0008】
本発明の好ましい態様は、半生うどんの水分活性値が0.89以下である。
【0009】
本発明の好ましい態様は、包装材の酸素透過率が4.16ml・m-2・h-1・atm-1以下である。
【0010】
本発明の好ましい態様は、銀ゼオライトが少なくとも0.5重量%の銀イオンを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期間に渡って、風味を損なうことなく、半生うどんを保存することができる。さらに、本発明によれば、内表面部の少なくとも1%の面積を銀ゼオライトが占める包装材を用いることにより、包装材中に他の余分な成分を含ませることなく、半生うどんを良好な状態で保存することができる。したがって、本発明の保存方法は、半生うどんに接触する物質の種類を最小限に抑えることで半生うどんの食としての安全性を確保しつつ、半生うどんを長期的に良好な状態で保存することができる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において使用される半生うどんは、特に制限されるものではなく、通常知られる製造工程で製造される半生うどんを使用できる。半生うどんの製造工程の具体例は、以下の通りである。
小麦粉100重量部に対して40重量部の水と0.8重量部の塩化ナトリウムを加えてミキサーで塊状の混合生地を調製する。所定温度・湿度環境で置いた混合生地を数回延伸により直径10mmの太さに成型する。これを2本の上下管間に懸架し、所定時間放置後に上下管間を広げ太さ3mmに成型する。この状態で水分量を25重量%程度まで乾燥させて半生めん状態にし、上下管部分を切断して半生うどんとする。
【0013】
本発明において使用される半生うどんの水分活性値は、本発明で使用する包装材の内表面部における銀ゼオライトが占める面積の比率に影響を受けるが、0.89以下が好ましく、0.87以下がより好ましく、0.85以下がさらに好ましく、0.77以下がなおさらに好ましい。ここで水分活性値とは食品中に含まれる水分のうち、微生物が生育するために利用できる水の割合を言い、水分活性計などの通常知られる装置及び方法で計測できる。食品中に含まれる水分は食品の構成成分であるタンパク質や炭水化物と強く結合した「結合水」と、周囲の温度・湿度により容易に蒸発や吸着がおこる「自由水」に分けられる。このうち微生物が自身の生育のために利用できるのは「自由水」であり、この比率により食品の微生物汚染の受けやすさ(耐微生物性)が変わる。一般的には、細菌類の生育は水分活性値が0.86〜0.97、酵母は0.88、真菌は0.80と言われている。
【0014】
本発明の保存方法において、包装材に添加する銀ゼオライトとは、抗菌性を有する銀を担持、好ましくは安定して担持するゼオライトを意味する。ここでゼオライトとしては、例えば、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、T型ゼオライト、高シリカゼオライト、ソーダライト、モルデナイト、アナルサイム、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイトなどの天然産出品、人工ゼオライトなどの半合成品及び化学合成品などを制限なく使用できる。なお銀を担持する抗菌剤としてゼオライト系物質以外に銀ガラス、銀リン酸ジルコニウム、銀シルカゲル、銀アパタイト、銀微粒子、プロテイン銀、スルファジアジン銀などがあるが、これらは効果が不安定若しくは弱い場合があり好ましくない。
【0015】
銀ゼオライトは、例えば、湿式法や乾式法で製造できる。湿式法は、予め調製した銀イオンを含む溶液にゼオライトを投入して、液相でゼオライト中のイオン交換可能なイオンと銀イオンを置換させる。投入時の液温は10〜70℃、好ましくは40〜60℃で3〜32時間、好ましくは10〜24時間バッチ式或いはカラム法など連続式に行うことができる。なお銀イオンを含む溶液のpHは3〜10、好ましくは5〜7に調整することが適当である。銀イオンを含む溶液は、通常いずれも銀塩として供給される。例えば、硝酸銀、硫酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、ジアンミン銀硝酸塩、ジアンミン銀硫酸塩等を用いることができる。
【0016】
乾式法は、ゼオライト粒子と銀塩粒子を混合した後に加熱処理することで、銀塩中の陰イオンを除去して銀イオン担持アルミノケイ酸塩を得る方法である。なお銀塩粒子の替わりに、少量の水で溶解した銀塩水溶液を用いてもよい。加熱処理は、銀塩中の陰イオンを除去して銀イオン担持アルミノケイ酸塩を得ることができれば適宜設定することができるが、例えば、加熱温度は200〜700℃が好ましく、400〜600℃がより好ましく、加熱時間は20〜120分間が好ましく、30〜50分間がより好ましい。銀塩としては、湿式法と同様なものが使用できる。
【0017】
銀ゼオライト中の銀イオンの濃度は、本発明の保存方法において微生物の増殖を抑制し得る濃度であれば特に制限されず、0.3〜5重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましく、0.5〜3重量%がさらに好ましい。銀イオンの濃度は、銀ゼオライト製造における銀イオンを含む溶液中の銀イオン濃度を変更することによって適宜調整できる。例えば、銀ゼオライトの製造において、溶液の銀イオン濃度を0.005M/L〜0.15M/Lとすることにより、0.1〜5.0重量%の銀を担持した銀ゼオライトを得ることができる。銀ゼオライトの製造に際して、ゼオライトと反応させる銀イオンを含む溶液の中に、銀以外の陽イオンを添加することもできる。銀以外の陽イオンとしては、例えば、亜鉛イオン、銅イオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンなどを挙げることができ、これらを添加することで銀を担持したゼオライトの化学的安定性を増すことができる。これら各種陽イオンを担持させる方法は、銀イオンを含む溶液にこれらイオンを追加する通常知られる方法である。
【0018】
銀ゼオライトの粒子径及び添加量は、半生うどんの水分を保持し、かつ包装材の強度を損なわない程度の径であれば特に制限されないが、包装材の内表面部への露出のし易さから、例えば、粒子径は0.2〜10μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、1.0〜10μmがさらに好ましく、3.0〜10μmがなおさらに好ましい。同様に、銀ゼオライトの添加量は包装材に対して0.8〜3.0重量%が好ましく、1.0〜3.0重量%がより好ましい。
【0019】
本発明の保存方法で使用する包装材は、包装材内表面部の抗菌機能及び吸着機能を発揮させるために、内表面部において銀ゼオライト粒子が均一に多くの面積を占めることが望ましく、例えば、内表面部における銀ゼオライトが占める面積の割合は1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましく、7%以上がなおさらに好ましい。
【0020】
本発明の保存方法で使用される包装材における銀ゼオライト中の銀イオン濃度、並びに銀ゼオライトの粒子径及び添加量の組み合わせは、銀ゼオライトが吸着機能及び抗菌機能を発揮できれば特に制限されないが、例えば、銀ゼオライト中の銀イオン濃度が0.8〜2.5重量%、銀ゼオライトの粒子径が0.5〜3.5μm、かつ銀ゼオライトの添加量が0.8〜2.0重量%である組み合わせが好ましい。したがって、内表面部における銀ゼオライトが占める面積の割合を考慮すると、本発明の保存方法で使用される包装材は、銀ゼオライト中の銀イオン濃度が0.8〜2.5重量%、銀ゼオライトの粒子径が0.5〜3.5μm、かつ銀ゼオライトの添加量が0.8〜2.0重量%であって、さらに銀ゼオライトが内表面部において少なくとも1%の面積を占める包装材であることがより好ましい。本発明の保存方法で使用される包装材は、従前の銀ゼオライトを含有する包装材に対して、銀ゼオライトの銀イオン濃度、粒子径及び添加量を低減することも可能であり、製造原価の低減に繋がり得るので、経済的に有利である。
【0021】
内表面部における銀ゼオライトが占める面積の割合は、以下の方法で計測する。
包装材の包装材加工面部(内表面部)の130×100μmを電子顕微鏡(倍率1000倍)を用いて5枚の写真を撮る。該写真における背景に対して明度の低い淡い白色部を銀ゼオライトが占める面積として計測し、全表面積に対する比率から、内表面部における銀ゼオライトが占める面積の割合を求める。銀ゼオライトが占める面積の計測は、目視又は画像解析装置を用いる。目視で計算する場合は、上記電子顕微鏡写真を例えば2〜5倍に拡大し、銀ゼオライトが占める面積を透明な方眼紙を用いて求める。
【0022】
包装材の内表面部に均一に多くの面積を占める銀ゼオライト粒子を存在させるためには、例えば、包装材の製造において延伸工程を追加し、包装材を引き伸ばすことにより異物である銀ゼオライト粒子を包装材の樹脂層表面に露出させやすくすることができる。本発明の保存方法で使用する包装材の製造方法としては、例えば、銀ゼオライトと高分子材料を混和する工程、得られた混和物を加熱混練して樹脂チップを作成する工程、得られた樹脂チップを押出し成形法等の方法でフィルム状に加工する工程を含む方法を挙げることができる。上記延伸工程は、樹脂チップをフィルム状に加工する際に、加熱された樹脂チップをローラに挟んでテンションを加えて引き伸ばすことにより実施することができる。該方法により得られる包装材は、内表面部に均一に多くの面積を占める銀ゼオライト粒子が存在し、ガスバリア性が高く、かつ高分子材料に実質的に銀ゼオライトのみを含み他成分は含んでいない包装材である。
【0023】
本発明において、銀ゼオライトを含む包装材としてはガスバリア性の高い包装用材を加工したものが良い。具体的には、ポリエチレン−塩化ビニリデンとの積層フィルム、ポリエチレン−ナイロンとの積層フィルム、ポリエチレン−塩化ビニリデンコートポリビニルアルコールとの積層フィルム、ポリエチレン−塩化ビニリデンコートポリプロピレンとの積層フィルム、ポリエチレン−塩化ビニリデンコートナイロンとの積層フィルム、ポリエチレン−塩化ビニリデンコートポリエステルとの積層フィルム、LLDPE−ナイロンとの積層フィルムなどを挙げることができる。これらガスバリア性の高い銀ゼオライト含有高分子材料の酸素透過率は、20℃で、100ml/m2・日・atm、すなわち、4.16ml・m-2・h-1・atm-1以下であることが好ましい。
【0024】
本発明において使用される包装材は、水分を含む食料品である半生うどんの保存に適した包装材である。一般的に、半生うどんの風味に影響を与える物質として、半生うどんの弾性及び粘性のバランスの指標となるグルテン中のSH基とSS基の比率(SH/SS比ともよぶ)を変化させ得る極性の高い水分、SH基の切断によってうどんの弾性減少をもたらす酸化性物質、グルテンの過剰な収斂をもたらし弾性を変化し得る水溶性ミネラルなどが挙げられる。これらの物質は、半生うどんに内在するもの、外部から取り込まれるもの、包装材に由来するもの、さらには半生うどんを基に増殖した微生物に由来するものもある。ゼオライトの一般的な性質として、結晶中に微細孔を持つ構造であることから、吸着機能、分子ふるい機能、触媒機能、イオン交換機能などを有することが知られている。さらに、抗菌性のある銀イオンをイオン交換機能によりゼオライト骨格構造中に結合させた銀ゼオライトは、抗菌力を有する(例えば、内田眞志、J. Antibact. Antifung. Agents, (1994), Vol.22, No.3, pp.163-169を参照)。したがって、本発明の保存方法に関していかなる推測にも拘泥されないが、銀ゼオライト粒子が内表面部に均一に多くの面積を占めるガスバリア性の高い包装材で半生うどんを包装し、かつ包装内の酸素濃度を一定レベル以下に維持することにより、水分、酸化性物質、水溶性ミネラル、微生物などの、半生うどんの風味を低下させる物質等の影響を低減させることができると推測される。
【0025】
本発明で用いられる包装材の具体例としては、銀ゼオライト中の銀量が2.0重量%、銀ゼオライトの添加量が1.0重量%、銀ゼオライトの粒子径が3.2μm、及び内表面部における銀ゼオライトが占める面積の割合が2.0%である、銀ゼオライトを含有するLLDPE(膜厚:50μm)+ナイロン(膜厚:25ミクロン)の積層袋を挙げることができる。
【0026】
本発明において、銀ゼオライトを含む包装材による半生うどんの包装は、該包装材に半生うどんを入れ、脱気後にヒートシール等で密封することが好ましい。さらに包装材内に脱酸素剤を同封して密封することが好ましい。脱酸素剤としては、市販されている鉄を主剤にしたものや有機化合物を主剤にしたものがあり、例えば、三菱ガス化学製商品名「エージレス」で呼ばれている製品を使用できる。本発明において、銀ゼオライト含有高分子材料の包装内部の酸素濃度は、微生物、特に真菌の増殖を抑制できる点から0.10%以下であることが好ましい。本発明の保存方法において、酸素濃度を0.10%以下に保つためには、例えば、上記したガスバリア性の高い包装材を用い、かつ包装体積当たり0.01g/cm3のエージレスを加えることにより達成できる。
以下の参考例、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0027】
[参考例]
銀ゼオライトの調製
銀ゼオライトは、市販のA型ゼオライト(Na2O・Al2O3・2SiO2・XH2O;平均粒子径1.5μm)を110℃で乾燥した粉体1kgに水を加えて、1.3Lのスラリーとし、その後撹拌した。適量の硝酸水溶液と水を添加してpH5〜7に調整した。次いで硝酸銀の0.075M/L水溶液3Lに投入し、50℃で24時間撹拌し続けて平衡状態に到達させた。反応終了後にアルミノケイ酸塩をろ過・水洗して過剰な銀イオンなどを除去した。得られたゼオライト相を110℃で乾燥して銀ゼオライトを得た。得られた銀ゼオライトの銀量は2.5重量%であり、銀ゼオライトの粒子径は1.5μmであった。
【実施例1】
【0028】
半生うどんは、小麦粉に対して30重量%の水と1重量%の食塩を混ぜ、混練した。次に混練した生地を圧延し、麺線切り出しをしてから乾燥して、その水分率が21.5重量%であった。半生うどんの水分活性値は0.84であった。対照として酢酸ナトリウム1.0重量%添加した半生うどんも同様に製造した。この水分率、水分活性値は同様値であった。
【0029】
銀ゼオライト含有高分子材料は、参考例で調製した銀ゼオライト1.0重量%を含有するLLDPE(厚さ50μm)+ナイロン(厚さ25μm)の積層フィルムで加工された包装袋で、大きさは145×300mmとした。内表面部の銀ゼオライトが占める面積の割合は2.1%であった。対照として銀ゼオライトを含有しない包装袋も同様に加工した。加工袋の20℃における酸素透過率は、72ml/m2・日・atm以下であった。
【0030】
銀ゼオライト含有高分子材料と無添加の包装袋に半生うどん100gを入れ、脱気後にヒートシールで密封した。包装袋内には脱酸素剤エージレスFYB−100R、1個を同封した。包装後室温25℃で3ヶ月間保存した。
【0031】
保存期間1ヶ月毎の酸素濃度及び一般生菌数の計測、並びに茹でたうどんの食味官能試験を実施した。酸素濃度は、横河電機製酸素濃度計OX102を用いて製造業者の指示に従い測定した。一般生菌数の測定は、常法(農林規格検査所編 JAS分析試験ハンドブック食品編他に記載)により標準寒天培地を用いて37℃で48時間培養後計数した。食味官能試験は20名のパネラーにより、色、つや(外観や舌触り)、食感(コシや粘り)、香りの4項目につき3段階法(良、普通、不良)で評価し、良(3)、普通(2)、不良(1)として平均値(スコア)で評価する方法を採用した。なお、官能検査値(平均)が2.0(普通)以下のものは、品質が劣化していると感じられた。
【0032】
(1)酸素濃度(単位:%)
酸素濃度の測定結果を表1に表す。表1に示されている通り、銀ゼオライトの含有の有無に限らず、LLDPE(厚さ50μm)+ナイロン(厚さ25μm)の積層フィルムで加工された包装袋にエージレスを加えることにより、包装内の酸素濃度を0.01%以下に維持することができた。
【表1】

【0033】
(2)一般生菌数(単位:cfu/ml)
一般生菌数の測定結果を表2に表す。表2に示されている通り、半生うどんを銀ゼオライト含有包装材で包装するか、又は半生うどんに酢酸塩を添加することにより、半生うどんにおける微生物の増殖を抑えることができた。
【表2】

【0034】
(3)食味官能結果・色(スコア)
食味官能結果のうち、色に関するスコアを表3にまとめた。表3に示されている通り、半生うどんを銀ゼオライト含有包装材で保存した半生うどんは、酢酸塩を添加して保存した半生うどんに比べて、保存後のうどんの色が優れていた。
【表3】

【0035】
(4)食味官能結果・つや(スコア)
食味官能結果のうち、つやに関するスコアを表4にまとめた。表4に示されている通り、半生うどんを銀ゼオライト含有包装材で保存した半生うどんは、酢酸塩を添加して保存した半生うどんに比べて、保存後のうどんのつやが優れていた。
【表4】

【0036】
(5)食味官能結果・食感(スコア)
食味官能結果のうち、食感に関するスコアを表5にまとめた。表5に示されている通り、半生うどんを銀ゼオライト含有包装材で保存した半生うどんは、酢酸塩を添加して保存した半生うどんに比べて、保存後のうどんの食感が優れていた。
【表5】

【0037】
(6)食味官能結果・香り(スコア)
食味官能結果のうち、香りに関するスコアを表6にまとめた。表6に示されている通り、半生うどんを銀ゼオライト含有包装材で保存した半生うどんは、酢酸塩を添加して保存した半生うどんに比べて、保存後のうどんの色が優れていた。
【表6】

【0038】
以上の結果から、銀ゼオライト含有高分子材料で包装した保存剤を添加しない半生うどんは、一般生菌数や種々の食味官能結果からほぼ6ヶ月まで初期の品質を保持していた。一方、銀ゼオライトを含まない包装材で包装したうどんや保存剤として酢酸塩を添加したうどんは、2〜3ヶ月で検査した項目の多くが低下した。
【実施例2】
【0039】
初期水分活性値が0.77である半生うどんを25℃で6ヶ月保存した後のうどんの食感について、表7に示す銀ゼオライト含有高分子材料(いずれも2倍延伸されたもの)で構成された包装材を評価した。包装内にエージレスを入れ、酸素濃度を0.01%以下に維持した。包装材1の電子顕微鏡写真を図1に示した。図1から、包装材1の内表面部における銀ゼオライトが占める面積の割合は約2.0%であった。
【表7】

【0040】
表7が示す通り、内表面部における銀ゼオライトが占める面積が1.6%以上の包装材で包装し、かつ酸素濃度を0.01%以下に維持することにより、6ヶ月保存後の半生うどんの食感は良好であった。なお、初期水分活性値が0.85である半生うどんを包装材1で保存した後のうどんの食感は2.5であった。
【比較例】
【0041】
実施例2と同様にして、表8に示す包装材(いずれも延伸工程なしで製造)で初期水分活性値が0.77又は0.85である半生うどんを25℃で6ヶ月保存した。包装材4の電子顕微鏡写真を図2に示した。図2から、包装材4の内表面部における銀ゼオライトが占める面積の割合は約0.2%であった。
【表8】

【0042】
保存後のうどんの食感を表9に示す。表9が示す通り、内表面部の銀ゼオライトの占有面積率が0.2%以下の包装材での半生うどんの保存は、食感を低下させた。
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、実施例2の包装材1の電気顕微鏡写真を示す。図中の矢印は面積の計測に用いた銀ゼオライトを示す。
【図2】図2は、比較例の包装材4の電気顕微鏡写真を示す。図中の矢印は面積の計測に用いた銀ゼオライトを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半生うどんを、内表面部の少なくとも1%の面積を銀ゼオライトが占める包装材で包装し、かつ包装内部の酸素濃度を0.10%以下に維持することを特徴とする、半生うどんの保存方法。
【請求項2】
半生うどんの水分活性値が0.89以下である請求項1に記載の保存方法。
【請求項3】
包装材の酸素透過率が4.16ml・m-2・h-1・atm-1以下である請求項1又は2に記載の保存方法。
【請求項4】
銀ゼオライトが少なくとも0.5重量%の銀イオンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−63425(P2010−63425A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234498(P2008−234498)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(399073377)石丸製麺株式会社 (2)
【出願人】(391031764)株式会社シナネンゼオミック (20)
【Fターム(参考)】