半田付け方法および半田付け装置
【課題】部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品を確実に半田付けすることができる半田付け方法および半田付け装置を提供する。
【解決手段】電子部品11の上に溶融前の柱状半田50を載置するとともに、溶融前の柱状半田50の上に基板10を、基板10の下面10bが基材接触部材としての台座30の第1の凹部32の底面32aから離間する状態で載置する。そして、柱状半田50を溶融させることにより基板10を下動させて基板10の下面10bを台座30の第1の凹部32の底面32aに接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって電子部品11を基板10の下面10b側に持ち上げて基板10の下面10bに電子部品11を半田付けする。
【解決手段】電子部品11の上に溶融前の柱状半田50を載置するとともに、溶融前の柱状半田50の上に基板10を、基板10の下面10bが基材接触部材としての台座30の第1の凹部32の底面32aから離間する状態で載置する。そして、柱状半田50を溶融させることにより基板10を下動させて基板10の下面10bを台座30の第1の凹部32の底面32aに接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって電子部品11を基板10の下面10b側に持ち上げて基板10の下面10bに電子部品11を半田付けする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け方法および半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、平板状部材を実装用基材上に接着するための平板状部材の実装方法が開示されている。詳しくは、図13に示すように、平板状部材103の実装用治具(載置台)100は、平板状部材103及び実装用基材105を載置する2つの凹部101,102を備えている。第一凹部101は、実装用基材105をフェイスダウン姿勢で載置する開口を有している。第一凹部101の底部に開口する第二凹部102は、フェイスダウン姿勢の平板状部材103と平板状部材103上に載置した接着部材104とを、実装用基材105の接着位置に位置決めして載置する開口と平板状部材103の厚さより実装時の接着部材104の厚さ分だけ深い深さを有する。そして、第二凹部102にフェイスダウン姿勢で平板状部材103を載置し、平板状部材103上に接着部材104を載置し、第一凹部101に実装用基材105を載置する。次に、実装用基材105及び平板状部材103を載置した実装用治具100を加熱することにより、接着部材104を溶融させ、平板状部材103を実装用基材105に接着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−93205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、平板状部材103の厚さ寸法のばらつきに対応できなかった。また、対応するためには第二凹部102について深さが異なる実装用治具(載置台)100を多数用意する必要がある。
【0005】
一方、図14に示す手法を用いることが考えられる。図14(a)において、治具110の上面に形成した凹部111に電子部品112と半田113を載せるとともに治具110の上面に基板114を、半田113との間に空隙AGができる状態で配置する。そして、加熱により半田113が溶融したときに、図14(b)に示すように、半田113aの凝集により基板114に半田113aが接触し、半田113aの表面張力によって図14(c)に示すように電子部品112が持ち上げられて基板114の下面114aに電子部品112を半田付けする。
【0006】
ところが、電子部品112の位置決め用の治具110の寸法が決まっているため電子部品112の寸法公差が大きいと、うまく接合できない場合がある。これは、半田113と基板114との間の隙間の寸法L10(図14(a)参照)が変動するため、半田113と基板114との間の隙間の寸法L10が溶融した半田113aの高さH(図14(b)参照)よりも大きいときには持ち上げ力が働かずに半田付けされない場合や、隙間の寸法L10がゼロ未満となり、押し付け状態になって半田113aがはみ出す場合がある。
【0007】
特に、半導体素子に比べてその他の電子部品は寸法公差が大きく、隙間の寸法L10よりも電子部品112の厚さの寸法の公差が大きい。そのため、基板114の下面114aでの半田付けが困難となる。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品を確実に半田付けすることができる半田付け方法および半田付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明では、基材の下面に部品を半田付けする半田付け方法であって、前記部品の上に溶融前の半田を載置するとともに、当該溶融前の半田の上に前記基材を、前記基材の下面が基材接触部材から離間する状態で載置する第1工程と、前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記基材接触部材に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を前記基材の下面側に持ち上げる第2工程と、を有することを要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、第1工程において、部品の上に溶融前の半田が載置されるとともに、溶融前の半田の上に基材が、基材の下面が基材接触部材から離間する状態で載置される。第2工程において、半田を溶融させることにより基材が下動されて基材の下面が基材接触部材に接触させられるとともに溶融させた半田の表面張力によって部品が基材の下面側に持ち上げられる。
【0011】
これにより、部品の厚さがばらついても溶融前の半田の上端が基材の下面に接触し、また、溶融前の半田の下端が部品に接触しているので、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品が確実に半田付けされる。
【0012】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の半田付け方法において、前記基材の下面および上面に部品を同時に半田付けするとよい。
請求項3に記載のように、請求項1または2に記載の半田付け方法において、前記溶融前の半田は柱状半田であるとよい。
【0013】
請求項4に記載の発明では、基材の下面に部品を半田付けする半田付け装置であって、上面に、前記基材が配置される第1の凹部が形成されるとともに、前記第1の凹部の底面に、前記部品が配置される第2の凹部が形成され、溶融前の半田の下端が前記部品の上面に接触するとともに前記溶融前の半田の上端が前記基材の下面に接触し、かつ、前記基材の下面が前記第1の凹部の底面と離間する状態で配置される台座と、前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記第1の凹部の底面に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を基材の下面側に持ち上げるための加熱手段と、を備えたことを要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、台座において第1の凹部に基材が配置されるとともに第2の凹部に部品が配置され、溶融前の半田の下端が部品の上面に接触するとともに溶融前の半田の上端が基材の下面に接触し、かつ、基材の下面が第1の凹部の底面と離間する状態で配置される。加熱手段によって半田を溶融させることにより基材が下動して基材の下面が第1の凹部の底面に接触するとともに溶融させた半田の表面張力によって部品が基材の下面側に持ち上げられる。これにより、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品が確実に半田付けされる。
【0015】
請求項5に記載のように、請求項4に記載の半田付け装置において、前記溶融前の半田は柱状半田であるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品を確実に半田付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態における半田付け装置の分解図。
【図2】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図3】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図4】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図5】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図6】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図7】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図8】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図9】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図10】別例の半田付け装置の断面図。
【図11】別例の半田付け装置の断面図。
【図12】別例の半田付け装置の断面図。
【図13】背景技術における平板状部材の実装方法を説明するための断面図。
【図14】(a),(b),(c)は半田付け方法を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1には、本実施形態における半田付け装置20の分解図を示す。図2〜図5は本実施形態における半田付け方法を説明するための断面図である。半田付け装置20を用いて、図6に示すように基材としての基板10の下面10bに電子部品11を半田付けすることができる。つまり、基板10における上面10aの表面に対し裏面となる下面10bに電子部品11が半田付けされる。
【0019】
図1に示すように、半田付け装置20は、電子部品半田付け用治具としての台座(ブロック)30と、加熱手段としてのヒートプレート40とを備えている。台座30は上面30aに第1の凹部32が形成されている。第1の凹部32の内部には基板10を配置することができるとともに第1の凹部32の内部において基板10が上下に移動できるようになっている。第1の凹部32の底面32aが基板10の下面10bの接触面となる。
【0020】
台座30の第1の凹部32の底面32aには第2の凹部33が形成されている。第2の凹部33の内部には電子部品11を配置することができるとともに第2の凹部33の内部において電子部品11が上下に移動できるようになっている。第2の凹部33の底面33aが電子部品11の載置面となる。
【0021】
また、ヒートプレート40は通電により発熱する板状発熱体であり、ヒートプレート40により台座30、基板10等を加熱して柱状半田50を溶融することができるようになっている。
【0022】
次に、半田付け方法について説明する。
図2に示すように、台座30の第2の凹部33における底面33aに電子部品11を載置する。さらに、電子部品11の上面における中央部に、溶融前の柱状半田50を直立した状態で配置する。柱状半田50は円柱状または角柱状をなす。さらに、台座30の第1の凹部32に基板10を配置する。柱状半田50の下端50aが電子部品11の上面に接触し、柱状半田50の上端50bが基板10の下面10bに接触し、基板10の下面10bの中央に位置する柱状半田50で基板10が支えられている。
【0023】
詳しくは、半田付けしたい面の面積よりも小さく、かつ厚さ方向には大きな柱状半田50を半田付け部の中央に搭載する。この柱状半田50は、狙いの半田付け形状と同じ体積で、半田溶融時に電子部品11の持ち上げ力が電子部品11の重さよりも大きくなるような濡れ形状を形成できる投影面積(図3のA−A線における面積)の半田である。
【0024】
このとき、基板10の下面10bは第1の凹部32の底面32aと離間する状態で配置される。即ち、基板10の下面10bと第1の凹部32の底面32aとの間には空隙が形成されている。
【0025】
このようにして、第1工程として、電子部品11の上に溶融前の柱状半田50を載置するとともに、溶融前の柱状半田50の上に基板10を、基板10の下面10bが基材接触部材としての台座30の第1の凹部32の底面32aから離間する状態で載置する。
【0026】
そして、ヒートプレート40の作動(通電)によりヒートプレート40を発熱させ、柱状半田50を加熱によって溶融させる。これにより、図2の柱状半田50が溶融することによって図3に示すように流動化した溶融半田50cとなる。溶融させた半田50cにおいては、上下方向の中央がくびれた(絞られた)形状になる。柱状半田50の溶融により基板10はその重さにより下動して図4に示すように基板10の下面10bが第1の凹部32の底面32aに接触する。そして、溶融させた半田50cの表面張力により図5に示すように電子部品11が基板10の下面10b側に持ち上げられる(上動される)。
【0027】
つまり、加熱し柱状半田50が溶融すると、電子部品11と基板10に対して溶融半田50cが濡れ、液体の溶融半田50cの表面張力により持ち上げ力が発生する。詳しくは、図3において、電子部品11の持ち上げ力は、半田50cの表面張力、半田50cにおける基板10の濡れ角度θ、液体の溶融半田50cのメニスカス架橋半径r、基板10と電子部品11との距離L1で決定される。そして、持ち上げ力が電子部品11の重さよりも大きくなる形状になるように予め準備してあるため、電子部品11は持ち上げられる。
【0028】
電子部品11が持ち上げられることにより、電子部品11と基板10の間の距離L1が小さくなり、それに伴って溶融半田50cが濡れ広がり、最終的には電子部品11と基板10が所望の形状で半田付けされる。
【0029】
このようにして、第2工程として、半田を溶融させることにより基板10を下動させて基板10の下面10bを台座30の第1の凹部32の底面32aに接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって電子部品11を基板10の下面10b側に持ち上げる。
【0030】
その後、冷却すると、図6に示すように、基板10の下面10bに電子部品11が半田50dにより接合される(半田付けされる)。
図7,8,9を用いて電子部品11の厚さにばらつきがあった場合を説明する。
【0031】
図2に比べて図7に示すように電子部品11の厚さがΔtだけ薄くなった場合において、図2に比べて図7では基板10がΔtだけ下方に位置する。そして、加熱によって図8に示すように柱状半田50を溶融させて、半田50cの表面張力により図9に示すように電子部品11が持ち上げられる。その後、冷却すると、基板10の下面10bに電子部品11が半田付けされる。
【0032】
このようにして、図2,3,5と図7,8,9を比較すれば、いずれの場合も、加熱時に柱状半田50は上端50bが基板10の下面10bと接触するとともに下端50aが電子部品11と接触している。即ち、電子部品11の厚さにばらつきがあっても半田溶融前の状態において柱状半田50を基板10および電子部品11と接触させることができる。
【0033】
つまり、電子部品11の寸法ばらつきに対応でき、また、図14で説明した基板114と半田113との間に空隙AGがある手法に比べて、より大きな隙間がある場合(電子部品11の厚さに大きなばらつきがある場合)に対応できる。これにより、電子部品11の厚さ寸法のばらつきの許容値が緩くなる。
【0034】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)半田付け方法として、図2のように電子部品11上において柱状半田50により基板10を支える。このとき、基板10の下面10bは台座30の第1の凹部32の底面32aと離間している。そして、図3に示すように柱状半田50を溶融することによって図5に示すように半田の表面張力により電子部品11を持ち上げる。これにより、電子部品11の厚さがばらついても溶融前の半田50の上端50bが基板10の下面10bに接触し、また、溶融前の半田50の下端50aが電子部品11に接触しているので、電子部品11の厚さの影響を受けることなく基材としての基板10の下面10bに電子部品11を確実に半田付けすることができる。即ち、電子部品11の寸法公差の影響が無くなる。
【0035】
(2)半田付け装置の構成として、第1の凹部32および第2の凹部33が形成された台座30と、加熱手段としてのヒートプレート40を備え、台座30の第2の凹部33に電子部品11を配置するとともに第1の凹部32に基板10を配置し、かつ、基板10を電子部品11の上の柱状半田50で支え、ヒートプレート40により柱状半田50を溶融させて半田の表面張力により電子部品11を持ち上げる。この装置を用いて上記(1)の半田付け方法を行なうことができる。
【0036】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○図2に代わり図10に示すように、溶融前の半田として、上下方向において分割した半田51,52,53を用い、これら半田51,52,53を積層して使用してもよい。
【0037】
○図2に代わり図11に示すように、溶融前の半田として、曲げ等の形状加工が施された半田54を用いてもよい。図11の場合には板状の半田を半円状に曲げ加工して用いた場合を示している。
【0038】
○図2に代わり図12に示すように、一つの電子部品11の上に複数の柱状半田57,58を配置してもよい。
○加熱手段としてヒートプレート40(通電により発熱する板状発熱体)を用いたが、これに限るものではなく、他にも例えば、高周波誘導加熱装置や、ランプで光や赤外線を加熱すべき箇所に照射して加熱を行う加熱機器や、加熱炉の内部全体を加熱する装置であってもよい。
【0039】
○図1において仮想線で示すごとく基板10の上面10aに板半田55を介して電子部品15を載せて加熱により基板10の下面10bと同時に上面10aの半田付けを行なう場合に適用してもよい。即ち、基板10の下面10bおよび上面10aに部品(10,15)を同時に半田付けするようにしてもよい。
【0040】
○基材は基板10であったが、これに限るものでなく、基板10に代わり、例えばヒートシンク等の放熱部材(放熱板)を基材として、この放熱部材に部品を半田付けする場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…基板、10a…上面、10b…下面、11…電子部品、15…電子部品、20…半田付け装置、30…台座、32…第1の凹部、32a…底面、33…第2の凹部、40…ヒートプレート、50…柱状半田、51,52,53…半田、54…半田、57,58…柱状半田。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け方法および半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、平板状部材を実装用基材上に接着するための平板状部材の実装方法が開示されている。詳しくは、図13に示すように、平板状部材103の実装用治具(載置台)100は、平板状部材103及び実装用基材105を載置する2つの凹部101,102を備えている。第一凹部101は、実装用基材105をフェイスダウン姿勢で載置する開口を有している。第一凹部101の底部に開口する第二凹部102は、フェイスダウン姿勢の平板状部材103と平板状部材103上に載置した接着部材104とを、実装用基材105の接着位置に位置決めして載置する開口と平板状部材103の厚さより実装時の接着部材104の厚さ分だけ深い深さを有する。そして、第二凹部102にフェイスダウン姿勢で平板状部材103を載置し、平板状部材103上に接着部材104を載置し、第一凹部101に実装用基材105を載置する。次に、実装用基材105及び平板状部材103を載置した実装用治具100を加熱することにより、接着部材104を溶融させ、平板状部材103を実装用基材105に接着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−93205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、平板状部材103の厚さ寸法のばらつきに対応できなかった。また、対応するためには第二凹部102について深さが異なる実装用治具(載置台)100を多数用意する必要がある。
【0005】
一方、図14に示す手法を用いることが考えられる。図14(a)において、治具110の上面に形成した凹部111に電子部品112と半田113を載せるとともに治具110の上面に基板114を、半田113との間に空隙AGができる状態で配置する。そして、加熱により半田113が溶融したときに、図14(b)に示すように、半田113aの凝集により基板114に半田113aが接触し、半田113aの表面張力によって図14(c)に示すように電子部品112が持ち上げられて基板114の下面114aに電子部品112を半田付けする。
【0006】
ところが、電子部品112の位置決め用の治具110の寸法が決まっているため電子部品112の寸法公差が大きいと、うまく接合できない場合がある。これは、半田113と基板114との間の隙間の寸法L10(図14(a)参照)が変動するため、半田113と基板114との間の隙間の寸法L10が溶融した半田113aの高さH(図14(b)参照)よりも大きいときには持ち上げ力が働かずに半田付けされない場合や、隙間の寸法L10がゼロ未満となり、押し付け状態になって半田113aがはみ出す場合がある。
【0007】
特に、半導体素子に比べてその他の電子部品は寸法公差が大きく、隙間の寸法L10よりも電子部品112の厚さの寸法の公差が大きい。そのため、基板114の下面114aでの半田付けが困難となる。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品を確実に半田付けすることができる半田付け方法および半田付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明では、基材の下面に部品を半田付けする半田付け方法であって、前記部品の上に溶融前の半田を載置するとともに、当該溶融前の半田の上に前記基材を、前記基材の下面が基材接触部材から離間する状態で載置する第1工程と、前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記基材接触部材に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を前記基材の下面側に持ち上げる第2工程と、を有することを要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、第1工程において、部品の上に溶融前の半田が載置されるとともに、溶融前の半田の上に基材が、基材の下面が基材接触部材から離間する状態で載置される。第2工程において、半田を溶融させることにより基材が下動されて基材の下面が基材接触部材に接触させられるとともに溶融させた半田の表面張力によって部品が基材の下面側に持ち上げられる。
【0011】
これにより、部品の厚さがばらついても溶融前の半田の上端が基材の下面に接触し、また、溶融前の半田の下端が部品に接触しているので、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品が確実に半田付けされる。
【0012】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の半田付け方法において、前記基材の下面および上面に部品を同時に半田付けするとよい。
請求項3に記載のように、請求項1または2に記載の半田付け方法において、前記溶融前の半田は柱状半田であるとよい。
【0013】
請求項4に記載の発明では、基材の下面に部品を半田付けする半田付け装置であって、上面に、前記基材が配置される第1の凹部が形成されるとともに、前記第1の凹部の底面に、前記部品が配置される第2の凹部が形成され、溶融前の半田の下端が前記部品の上面に接触するとともに前記溶融前の半田の上端が前記基材の下面に接触し、かつ、前記基材の下面が前記第1の凹部の底面と離間する状態で配置される台座と、前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記第1の凹部の底面に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を基材の下面側に持ち上げるための加熱手段と、を備えたことを要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、台座において第1の凹部に基材が配置されるとともに第2の凹部に部品が配置され、溶融前の半田の下端が部品の上面に接触するとともに溶融前の半田の上端が基材の下面に接触し、かつ、基材の下面が第1の凹部の底面と離間する状態で配置される。加熱手段によって半田を溶融させることにより基材が下動して基材の下面が第1の凹部の底面に接触するとともに溶融させた半田の表面張力によって部品が基材の下面側に持ち上げられる。これにより、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品が確実に半田付けされる。
【0015】
請求項5に記載のように、請求項4に記載の半田付け装置において、前記溶融前の半田は柱状半田であるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品の厚さの影響を受けることなく基材の下面に部品を確実に半田付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態における半田付け装置の分解図。
【図2】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図3】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図4】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図5】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図6】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図7】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図8】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図9】実施形態における半田付け方法を説明するための断面図。
【図10】別例の半田付け装置の断面図。
【図11】別例の半田付け装置の断面図。
【図12】別例の半田付け装置の断面図。
【図13】背景技術における平板状部材の実装方法を説明するための断面図。
【図14】(a),(b),(c)は半田付け方法を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1には、本実施形態における半田付け装置20の分解図を示す。図2〜図5は本実施形態における半田付け方法を説明するための断面図である。半田付け装置20を用いて、図6に示すように基材としての基板10の下面10bに電子部品11を半田付けすることができる。つまり、基板10における上面10aの表面に対し裏面となる下面10bに電子部品11が半田付けされる。
【0019】
図1に示すように、半田付け装置20は、電子部品半田付け用治具としての台座(ブロック)30と、加熱手段としてのヒートプレート40とを備えている。台座30は上面30aに第1の凹部32が形成されている。第1の凹部32の内部には基板10を配置することができるとともに第1の凹部32の内部において基板10が上下に移動できるようになっている。第1の凹部32の底面32aが基板10の下面10bの接触面となる。
【0020】
台座30の第1の凹部32の底面32aには第2の凹部33が形成されている。第2の凹部33の内部には電子部品11を配置することができるとともに第2の凹部33の内部において電子部品11が上下に移動できるようになっている。第2の凹部33の底面33aが電子部品11の載置面となる。
【0021】
また、ヒートプレート40は通電により発熱する板状発熱体であり、ヒートプレート40により台座30、基板10等を加熱して柱状半田50を溶融することができるようになっている。
【0022】
次に、半田付け方法について説明する。
図2に示すように、台座30の第2の凹部33における底面33aに電子部品11を載置する。さらに、電子部品11の上面における中央部に、溶融前の柱状半田50を直立した状態で配置する。柱状半田50は円柱状または角柱状をなす。さらに、台座30の第1の凹部32に基板10を配置する。柱状半田50の下端50aが電子部品11の上面に接触し、柱状半田50の上端50bが基板10の下面10bに接触し、基板10の下面10bの中央に位置する柱状半田50で基板10が支えられている。
【0023】
詳しくは、半田付けしたい面の面積よりも小さく、かつ厚さ方向には大きな柱状半田50を半田付け部の中央に搭載する。この柱状半田50は、狙いの半田付け形状と同じ体積で、半田溶融時に電子部品11の持ち上げ力が電子部品11の重さよりも大きくなるような濡れ形状を形成できる投影面積(図3のA−A線における面積)の半田である。
【0024】
このとき、基板10の下面10bは第1の凹部32の底面32aと離間する状態で配置される。即ち、基板10の下面10bと第1の凹部32の底面32aとの間には空隙が形成されている。
【0025】
このようにして、第1工程として、電子部品11の上に溶融前の柱状半田50を載置するとともに、溶融前の柱状半田50の上に基板10を、基板10の下面10bが基材接触部材としての台座30の第1の凹部32の底面32aから離間する状態で載置する。
【0026】
そして、ヒートプレート40の作動(通電)によりヒートプレート40を発熱させ、柱状半田50を加熱によって溶融させる。これにより、図2の柱状半田50が溶融することによって図3に示すように流動化した溶融半田50cとなる。溶融させた半田50cにおいては、上下方向の中央がくびれた(絞られた)形状になる。柱状半田50の溶融により基板10はその重さにより下動して図4に示すように基板10の下面10bが第1の凹部32の底面32aに接触する。そして、溶融させた半田50cの表面張力により図5に示すように電子部品11が基板10の下面10b側に持ち上げられる(上動される)。
【0027】
つまり、加熱し柱状半田50が溶融すると、電子部品11と基板10に対して溶融半田50cが濡れ、液体の溶融半田50cの表面張力により持ち上げ力が発生する。詳しくは、図3において、電子部品11の持ち上げ力は、半田50cの表面張力、半田50cにおける基板10の濡れ角度θ、液体の溶融半田50cのメニスカス架橋半径r、基板10と電子部品11との距離L1で決定される。そして、持ち上げ力が電子部品11の重さよりも大きくなる形状になるように予め準備してあるため、電子部品11は持ち上げられる。
【0028】
電子部品11が持ち上げられることにより、電子部品11と基板10の間の距離L1が小さくなり、それに伴って溶融半田50cが濡れ広がり、最終的には電子部品11と基板10が所望の形状で半田付けされる。
【0029】
このようにして、第2工程として、半田を溶融させることにより基板10を下動させて基板10の下面10bを台座30の第1の凹部32の底面32aに接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって電子部品11を基板10の下面10b側に持ち上げる。
【0030】
その後、冷却すると、図6に示すように、基板10の下面10bに電子部品11が半田50dにより接合される(半田付けされる)。
図7,8,9を用いて電子部品11の厚さにばらつきがあった場合を説明する。
【0031】
図2に比べて図7に示すように電子部品11の厚さがΔtだけ薄くなった場合において、図2に比べて図7では基板10がΔtだけ下方に位置する。そして、加熱によって図8に示すように柱状半田50を溶融させて、半田50cの表面張力により図9に示すように電子部品11が持ち上げられる。その後、冷却すると、基板10の下面10bに電子部品11が半田付けされる。
【0032】
このようにして、図2,3,5と図7,8,9を比較すれば、いずれの場合も、加熱時に柱状半田50は上端50bが基板10の下面10bと接触するとともに下端50aが電子部品11と接触している。即ち、電子部品11の厚さにばらつきがあっても半田溶融前の状態において柱状半田50を基板10および電子部品11と接触させることができる。
【0033】
つまり、電子部品11の寸法ばらつきに対応でき、また、図14で説明した基板114と半田113との間に空隙AGがある手法に比べて、より大きな隙間がある場合(電子部品11の厚さに大きなばらつきがある場合)に対応できる。これにより、電子部品11の厚さ寸法のばらつきの許容値が緩くなる。
【0034】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)半田付け方法として、図2のように電子部品11上において柱状半田50により基板10を支える。このとき、基板10の下面10bは台座30の第1の凹部32の底面32aと離間している。そして、図3に示すように柱状半田50を溶融することによって図5に示すように半田の表面張力により電子部品11を持ち上げる。これにより、電子部品11の厚さがばらついても溶融前の半田50の上端50bが基板10の下面10bに接触し、また、溶融前の半田50の下端50aが電子部品11に接触しているので、電子部品11の厚さの影響を受けることなく基材としての基板10の下面10bに電子部品11を確実に半田付けすることができる。即ち、電子部品11の寸法公差の影響が無くなる。
【0035】
(2)半田付け装置の構成として、第1の凹部32および第2の凹部33が形成された台座30と、加熱手段としてのヒートプレート40を備え、台座30の第2の凹部33に電子部品11を配置するとともに第1の凹部32に基板10を配置し、かつ、基板10を電子部品11の上の柱状半田50で支え、ヒートプレート40により柱状半田50を溶融させて半田の表面張力により電子部品11を持ち上げる。この装置を用いて上記(1)の半田付け方法を行なうことができる。
【0036】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○図2に代わり図10に示すように、溶融前の半田として、上下方向において分割した半田51,52,53を用い、これら半田51,52,53を積層して使用してもよい。
【0037】
○図2に代わり図11に示すように、溶融前の半田として、曲げ等の形状加工が施された半田54を用いてもよい。図11の場合には板状の半田を半円状に曲げ加工して用いた場合を示している。
【0038】
○図2に代わり図12に示すように、一つの電子部品11の上に複数の柱状半田57,58を配置してもよい。
○加熱手段としてヒートプレート40(通電により発熱する板状発熱体)を用いたが、これに限るものではなく、他にも例えば、高周波誘導加熱装置や、ランプで光や赤外線を加熱すべき箇所に照射して加熱を行う加熱機器や、加熱炉の内部全体を加熱する装置であってもよい。
【0039】
○図1において仮想線で示すごとく基板10の上面10aに板半田55を介して電子部品15を載せて加熱により基板10の下面10bと同時に上面10aの半田付けを行なう場合に適用してもよい。即ち、基板10の下面10bおよび上面10aに部品(10,15)を同時に半田付けするようにしてもよい。
【0040】
○基材は基板10であったが、これに限るものでなく、基板10に代わり、例えばヒートシンク等の放熱部材(放熱板)を基材として、この放熱部材に部品を半田付けする場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…基板、10a…上面、10b…下面、11…電子部品、15…電子部品、20…半田付け装置、30…台座、32…第1の凹部、32a…底面、33…第2の凹部、40…ヒートプレート、50…柱状半田、51,52,53…半田、54…半田、57,58…柱状半田。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の下面に部品を半田付けする半田付け方法であって、
前記部品の上に溶融前の半田を載置するとともに、当該溶融前の半田の上に前記基材を、前記基材の下面が基材接触部材から離間する状態で載置する第1工程と、
前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記基材接触部材に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を前記基材の下面側に持ち上げる第2工程と、
を有することを特徴とする半田付け方法。
【請求項2】
前記基材の下面および上面に部品を同時に半田付けすることを特徴とする請求項1に記載の半田付け方法。
【請求項3】
前記溶融前の半田は柱状半田であることを特徴とする請求項1または2に記載の半田付け方法。
【請求項4】
基材の下面に部品を半田付けする半田付け装置であって、
上面に、前記基材が配置される第1の凹部が形成されるとともに、前記第1の凹部の底面に、前記部品が配置される第2の凹部が形成され、溶融前の半田の下端が前記部品の上面に接触するとともに前記溶融前の半田の上端が前記基材の下面に接触し、かつ、前記基材の下面が前記第1の凹部の底面と離間する状態で配置される台座と、
前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記第1の凹部の底面に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を基材の下面側に持ち上げるための加熱手段と、
を備えたことを特徴とする半田付け装置。
【請求項5】
前記溶融前の半田は柱状半田であることを特徴とする請求項4に記載の半田付け装置。
【請求項1】
基材の下面に部品を半田付けする半田付け方法であって、
前記部品の上に溶融前の半田を載置するとともに、当該溶融前の半田の上に前記基材を、前記基材の下面が基材接触部材から離間する状態で載置する第1工程と、
前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記基材接触部材に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を前記基材の下面側に持ち上げる第2工程と、
を有することを特徴とする半田付け方法。
【請求項2】
前記基材の下面および上面に部品を同時に半田付けすることを特徴とする請求項1に記載の半田付け方法。
【請求項3】
前記溶融前の半田は柱状半田であることを特徴とする請求項1または2に記載の半田付け方法。
【請求項4】
基材の下面に部品を半田付けする半田付け装置であって、
上面に、前記基材が配置される第1の凹部が形成されるとともに、前記第1の凹部の底面に、前記部品が配置される第2の凹部が形成され、溶融前の半田の下端が前記部品の上面に接触するとともに前記溶融前の半田の上端が前記基材の下面に接触し、かつ、前記基材の下面が前記第1の凹部の底面と離間する状態で配置される台座と、
前記半田を溶融させることにより前記基材を下動させて前記基材の下面を前記第1の凹部の底面に接触させるとともに溶融させた半田の表面張力によって前記部品を基材の下面側に持ち上げるための加熱手段と、
を備えたことを特徴とする半田付け装置。
【請求項5】
前記溶融前の半田は柱状半田であることを特徴とする請求項4に記載の半田付け装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−66359(P2011−66359A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218059(P2009−218059)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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